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特許拒絶査定不服審判

2019-013736

生体特徴画像の有用性を検証する方法及び装置

審判番号
2019-013736
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-557149外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年10月15日
審決日
2020年08月17日
公報発行日
2021年02月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G06F) / P18 .575-Z (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第184条の4第1項、特許法第164条、特許法第36条、特許法第184条の12第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-557149「生体特徴画像の有用性を検証する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日国際公開,WO2015/160670,平成29年 6月29日国内公表,特表2017-517783〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。

理由

目次 ▾ 5項目
【理 由】

第1.手続の経緯

本願は,2015年4月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年4月14日 中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって,

平成28年9月13日付けで特許法184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成30年3月27日付けで審査請求がなされ,平成30年12月27日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成31年2月25日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,令和1年6月21日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;令和1年7月2日),これに対して令和1年10月15日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,令和1年11月7日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,令和2年1月14日付けで上申書の提出があったものである。

第2.令和1年10月15日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

令和1年10月15日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

令和1年10月15日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成31年2月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,

「 【請求項1】
1つまたは複数のコンピューティングデバイスにより実行される方法であって,
端末よりアップロードされた生体特徴画像を受信することと,
前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証することであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報及び/またはユーザ識別情報に基づいて生成される,ことと,
続きを表示(全66行)
前記検証の結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,ことと
を含む前記方法。
【請求項2】
前記デバイス識別情報は,前記端末のデバイス情報に基づいて,ハッシュアルゴリズムを使用して生成される,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記端末の前記デバイス情報は,前記端末の移動体装置識別番号,デバイス/プロセッサ種類,オペレーティングシステムバージョン情報,及び移動電話加入者識別番号のうちの1つまたは複数を含む,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子透かしを検証することはさらに,前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報に基づいて検証することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電子透かしを検証することはさらに,
前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報を取得することと,
前記生体特徴画像から前記電子透かしを抽出して,前記電子透かしの生成に使用されたデバイス識別情報及び/またはユーザ識別情報を取得することと,
前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報を,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報と比較することと
を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報と,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報との照合に成功したことに応じて,前記生体特徴画像が有用であると判定することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを検証する前に,前記生体特徴画像内に前記電子透かしが存在するか否かを判定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生体特徴画像内に電子透かしが存在しないと判定したことに応じて,前記生体特徴画像は有用ではないと判定することをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
実行可能命令を記憶する1つまたは複数のコンピュータ可読媒体であって,前記実行可能命令は1つまたは複数のプロセッサにより実行されると,前記1つまたは複数のプロセッサに,
端末において生成または記憶された生体特徴画像を取得することと,
前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証することであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報及び/またはユーザ識別情報に基づいて生成される,ことと,
前記検証の結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,ことと
を含む動作を実行させる,前記1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記デバイス識別情報は,前記端末のデバイス情報に基づいて,ハッシュアルゴリズム
を使用して生成される,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記端末の前記デバイス情報は,前記端末の移動体装置識別番号,デバイス/プロセッサ種類,オペレーティングシステムバージョン情報,及び移動電話加入者識別番号のうちの1つまたは複数を含む,請求項10に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記電子透かしを検証することはさらに,前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報に基づいて検証することを含む,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記電子透かしを検証することはさらに,
前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報を取得することと,
前記生体特徴画像から前記電子透かしを抽出して,前記電子透かしの生成に使用されたデバイス識別情報及び/またはユーザ識別情報を取得することと,
前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報を,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報と比較することと
を含む,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記動作はさらに,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報と,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報との照合に成功したことに応じて,前記生体特徴画像が有用であると判定することを含む,請求項13に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記動作はさらに,前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを検証する前に,前記生体特徴画像内に前記電子透かしが存在するか否かを判定することをさらに含む,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記動作はさらに,前記生体特徴画像内に電子透かしが存在しないと判定したことに応じて,前記生体特徴画像は前記端末において有用ではないと判定することをさらに含む,請求項15に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
1つまたは複数のプロセッサと,
メモリと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,端末によりアップロードされた生体特徴画像を受信する受信モジュールと
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証する検証モジュールであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報及び/またはユーザ識別情報に基づいて生成される,前記検証モジュールと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記検証モジュールにより得られた検証結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像は有用であると判定する判定モジュールであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,前記判定モジュールと
を含む装置。
【請求項18】
前記生体特徴画像内に前記電子透かしが存在するか否かを検出する検出モジュールをさらに備え,前記判定モジュールはさらに,前記検出モジュールが前記生体特徴画像内に電子透かしが存在しないことを検出した場合に前記生体特徴画像は有用ではないと判定するように構成される,請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記検証モジュールはさらに,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報を取得する取得サブモジュールと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記生体特徴画像から前記電子透かしを抽出して,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報を取得する抽出サブモジュールと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報を,前記端末の前記デバイス識別情報及び/または前記ユーザ識別情報と比較する比較サブモジュールと
を含む,請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記デバイス識別情報は,前記端末のデバイス情報に少なくとも一部基づいて生成され,前記端末の前記デバイス情報は,前記端末の移動体装置識別番号,デバイス/プロセッサ種類,オペレーティングシステムバージョン情報,及び移動電話加入者識別番号のうちの1つまたは複数を含む,請求項17に記載の装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
1つまたは複数のコンピューティングデバイスにより実行される方法であって,
端末よりアップロードされた生体特徴画像及び前記端末のデバイス識別情報を受信することと,
前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証することであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報に基づいて生成され,前記電子透かしを検証することは,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び前記端末の前記デバイス識別情報を比較することに基づいて行われる,ことと,
続きを表示(全63行)
前記検証の結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,ことと
を含む前記方法。
【請求項2】
前記デバイス識別情報は,前記端末のデバイス情報に基づいて,ハッシュアルゴリズムを使用して生成される,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記端末の前記デバイス情報は,前記端末の移動体装置識別番号,デバイス/プロセッサ種類,オペレーティングシステムバージョン情報,及び移動電話加入者識別番号のうちの1つまたは複数を含む,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子透かしを検証することはさらに,前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを,前記端末の前記デバイス識別情報に基づいて検証することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電子透かしを検証することはさらに,
前記端末の前記デバイス識別情報を取得することと,
前記生体特徴画像から前記電子透かしを抽出して,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報を取得することと
を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報と,前記端末の前記デバイス識別情報との照合に成功したことに応じて,前記生体特徴画像が有用であると判定することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを検証する前に,前記生体特徴画像内に前記電子透かしが存在するか否かを判定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生体特徴画像内に電子透かしが存在しないと判定したことに応じて,前記生体特徴画像は有用ではないと判定することをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
実行可能命令を記憶する1つまたは複数のコンピュータ可読媒体であって,前記実行可能命令は1つまたは複数のプロセッサにより実行されると,前記1つまたは複数のプロセッサに,
端末において生成または記憶された生体特徴画像と,前記端末のデバイス識別情報とを得することと,
前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証することであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報に基づいて生成され,前記電子透かしを検証することは,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び前記端末の前記デバイス識別情報を比較することに基づいて行われる,ことと,
前記検証の結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,ことと
を含む動作を実行させる,前記1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記デバイス識別情報は,前記端末のデバイス情報に基づいて,ハッシュアルゴリズムを使用して生成される,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記端末の前記デバイス情報は,前記端末の移動体装置識別番号,デバイス/プロセッサ種類,オペレーティングシステムバージョン情報,及び移動電話加入者識別番号のうちの1つまたは複数を含む,請求項10に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記電子透かしを検証することはさらに,前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを,前記端末の前記デバイス識別情報に基づいて検証することを含む,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記電子透かしを検証することはさらに,
前記端末の前記デバイス識別情報を取得することと,
前記生体特徴画像から前記電子透かしを抽出して,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報を取得することと
を含む,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記動作はさらに,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報と,前記端末の前記デバイス識別情報との照合に成功したことに応じて,前記生体特徴画像が有用であると判定することを含む,請求項13に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記動作はさらに,前記生体特徴画像に含まれる前記電子透かしを検証する前に,前記生体特徴画像内に前記電子透かしが存在するか否かを判定することをさらに含む,請求項9に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記動作はさらに,前記生体特徴画像内に電子透かしが存在しないと判定したことに応じて,前記生体特徴画像は前記端末において有用ではないと判定することをさらに含む,
請求項15に記載の1つまたは複数のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
1つまたは複数のプロセッサと,
メモリと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,端末によりアップロードされた生体特徴画像及び前記端末のデバイス識別情報を受信する受信モジュールと
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証する検証モジュールであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報に基づいて生成され,前記電子透かしを検証することは,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び前記端末の前記デバイス識別情報を比較することに基づいて行われる,前記検証モジュールと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記検証モジュールにより得られた検証結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像は有用であると判定する判定モジュールであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,前記判定モジュールと
を含む装置。
【請求項18】
前記生体特徴画像内に前記電子透かしが存在するか否かを検出する検出モジュールをさらに備え,前記判定モジュールはさらに,前記検出モジュールが前記生体特徴画像内に電子透かしが存在しないことを検出した場合に前記生体特徴画像は有用ではないと判定するように構成される,請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記検証モジュールはさらに,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記端末の前記デバイス識別情報を取得する取得サブモジュールと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサにより実行可能な,前記生体特徴画像から前記電子透かしを抽出して,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報を取得する抽出サブモジュールと
を含む,請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記デバイス識別情報は,前記端末のデバイス情報に少なくとも一部基づいて生成され,前記端末の前記デバイス情報は,前記端末の移動体装置識別番号,デバイス/プロセッサ種類,オペレーティングシステムバージョン情報,及び移動電話加入者識別番号のうちの1つまたは複数を含む,請求項17に記載の装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否

(1)新規事項,目的要件

本件手続補正は,平成28年9月13日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文(以下,これを「当初明細書等」という),及び,国際出願の願書に添付した図面に記載した事項の範囲内でなされたものであって,

特許請求の範囲の減縮(特許法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的としたものであって,

本件手続補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された全ての発明と,本件手続補正により補正された請求項に係る発明とが,発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであるので,

特許法184条の12第2項により読み替える同法17条の2第3項の規定,同法17条の2第4項の規定,及び,同法17条の2第5項の規定を満たすものである。

そこで,本件手続補正が,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際,独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(2)独立特許要件

ア.本件補正発明

補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「1つまたは複数のコンピューティングデバイスにより実行される方法であって,
端末よりアップロードされた生体特徴画像及び前記端末のデバイス識別情報を受信することと,
前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証することであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報に基づいて生成され,前記電子透かしを検証することは,前記電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び前記端末の前記デバイス識別情報を比較することに基づいて行われる,ことと,
前記検証の結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,ことと
を含む前記方法。」

イ.引用文献1に記載の事項及び引用発明

(ア)記載の事項

(ア)-1 平成30年12月27日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2008-108032号公報(2008年5月8日公開,以下,これを「引用文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0017】

図3は本実施形態の認証システムにおける認証処理の処理フローを示す図である。

次に本実施形態による認証処理の処理について説明する。なお,この説明においても指紋情報(生体情報)を一例として説明する。

この認証処理を行うためには,上述の登録処理が完了していることが前提となる。まず,ユーザによる認証指示がユーザ端末2に入力されると,制御部22の制御により生体情報読取装置3がユーザの指紋を光学読取機構の機能を用いて読み取る(ステップS201)。すると生体情報読取装置3は読み取った指紋情報をユーザ端末2に送信する。次にユーザ端末2の制御部22が指紋情報の受信を検知すると,ユーザ端末2の画面に入力欄を表示することでユーザからユーザ名とパスワードの入力を受付ける。また制御部22は生体情報読取装置3から指紋情報を受信すると,特徴点画像を生成するよう特徴点画像生成部25に通知する。そして特徴点画像生成部25が指紋情報に基づいて特徴点画像を生成する(ステップS202)。

【0018】

また制御部22は電子透かし付加処理部26に対して電子透かしの情報の生成と,当該情報の特徴点画像への付加処理を指示する。すると電子透かし付加処理部26は,ユーザからユーザ名とパスワードからなるユーザ識別情報の入力を受付け(ステップS203),当該入力を受けたユーザ名とパスワードを種情報として電子透かし情報を生成し(ステップS204),その電子透かし情報を特徴点画像へ付加する(ステップS205)。なお,種情報に基づく電子透かし情報の生成は,登録処理時の生成の処理と同様である。次に制御部22は認証要求部24へ認証処理を指示する。すると認証要求部24は電子透かし付加処理部26によって生成された電子透かし情報付加済みの特徴点画像と,ユーザから入力を受付けたユーザ名とパスワードとを格納した認証要求の情報を通信処理部21を介して認証サーバ1へ送信する(ステップS206)。

【0019】

次に認証要求を受信した認証サーバ1においては,制御部11の指示によりアクセスユーザ判定部15が認証要求に格納されているユーザ名とパスワードの組合せがユーザ識別情報データベース18に格納されているか否かを判定する(ステップS207)。そしてユーザ名とパスワードの組合せがユーザ識別情報データベース18に格納されていれば,アクセスユーザ判定部15は認証要求を行ったユーザが認証処理可能なユーザであると判定し制御部11へ通知する。ユーザが認証処理可能なユーザであると判定できない場合には,アクセスユーザ判定部15は,認証失敗の情報をユーザ端末2へ送信する(ステップS208)。

【0020】

次にユーザが認証処理可能なユーザであるという結果が得られた場合,制御部11は画像正当性判定部16へ処理の開始を指示する。すると画像正当性判定部16はユーザ名とパスワードの組合せに対応付けられユーザ識別情報データベース18に格納されているユーザIDに基づいて,生体情報データベース19から電子透かし情報付加済みの特徴点画像を読み取り,電子透かし情報を検出し,当該電子透かし情報から種情報算出し(ステップS209),これによりユーザ名とパスワード(ユーザ識別情報)を抽出する。そしてその抽出したユーザ名とパスワードの組合せ(ユーザ識別情報)がユーザ識別情報データベース18に格納されているユーザ名とパスワードの組合せと一致するか否かを判定し(ステップS210),一致しなければ認証失敗の情報をユーザ端末2へ送信し(ステップS211),また一致すればステップS212の処理に移行する。つまり,ステップS209からステップS211では,認証サーバ1に予め格納されている特徴点画像の認証サーバ1に格納された状態での改竄の有無を判定している。そしてその改竄の有無の判定で予め認証サーバ1で格納している特徴点画像が改竄されていないと判定された場合にのみ,次に画像正当性判定部16は認証要求に格納されている電子透かし情報付加済みの特徴点画像から,電子透かし情報を検出し,当該電子透かし情報から種情報を算出する(ステップS212)。そして画像正当性判定部16は,受信した認証要求に格納されていた特徴点画像からステップS212で抽出した種情報(ユーザ名とパスワードの組合せ)と,予め記憶した特徴点画像に付与された電子透かし情報からステップS209で抽出した種情報(ユーザ名とパスワードの組合せ)とを比較して,一致するか否かを判定する(ステップS213)。これによりユーザ端末から認証要求によって送信された特徴点画像の正当性を判定する。正当性の判定に失敗した場合には,画像正当性判定部16は認証失敗を示す情報をユーザ端末2へ送信する(ステップS214)。

【0021】

次に,特徴点画像の正当性が判定できた場合には,制御部11の指示に基づいて,ユーザ認証部11が認証要求から得られた特徴点画像と,生体情報データベース11から読み取った特徴点画像とを比較して一致するか否かを判定する(ステップS215)。そして特徴点画像の情報が一致すれば,ユーザ認証部11は認証成功と判定する(ステップS216)。なお,特徴点画像の正当性が判定できない場合には,ユーザ認証部11は認証失敗を示す情報をユーザ端末2へ送信する(ステップS217)。なお,ユーザ端末2を利用するユーザは認証失敗の情報を受信した場合には,再登録要求の処理の開始または終了の指示入力をユーザに促す為,画面などにその旨の情報を表示する(ステップS218)。そして,再登録要求の処理の開始をの指示を受付けた場合には,ユーザ端末2は生体情報読取装置3を制御して,ステップS101からの処理を繰り返す。」

(ア)-2 本願の第1国出願前に既に公知である,特開2004-303107号公報(2004年10月28日公開,以下,これを「周知技術文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

B.「【請求項4】

請求項1に記載のコンテンツ再生端末において,

前記コンテンツに電子透かしとして挿入されるデータが前記コンテンツの利用が可能な端末を特定するための端末IDであり,前記再生可否判定手段が,該端末IDと前記ライセンスに含まれる端末IDとを比較して前記コンテンツの再生可否判定をすることを特徴とするコンテンツ再生端末。」

(ア)-3 本願の第1国出願前に既に公知である、特開2009-004971号公報(2009年1月8日公開,以下,これを「周知技術文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

C.「【0085】

まず,第1通信部230は,タグ装置100によって送信された第2暗号データ1003とタグ認証データ1002とを受信する(ステップS11)。次に,第1復号化部201は,第2暗号データ1003を第2共通鍵109aで復号化し,サーバID108aと第1暗号データ1001とを抽出する(ステップS12)。なお,復号化方法は,タグ装置100の第2暗号化部104が用いた共通鍵暗号方式である。

【0086】

次に,タグ認証部202は,第1復号化部201によって抽出された第1暗号データ1001と,第2共通鍵記憶部221に記憶されている第2共通鍵109aとをハッシュ関数に入力してダイジェスト値を生成し,生成したダイジェスト値とタグ認証データ1002とが一致しているか否かを検証する(ステップS13)。なお,ハッシュ関数は,タグ装置100のタグ認証データ生成部103で用いられたハッシュ関数と同じである。

【0087】

第1暗号データ1001と第2共通鍵109aとに基づいて生成したダイジェスト値とタグ認証データ1002とが一致していない場合(ステップS13でNO),不正な第2暗号データであるため,タグ認証部202は,サーバID108a,第1暗号データ1001及びタグ認証データ1002を破棄する(ステップS14)。」

(ア)-4 本願の第1国出願前に既に公知である,特開2005-191765号公報(2005年7月14日公開,以下,これを「周知技術文献3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

D.「【0036】

次に,画像読取プログラム1410は透かし付き画像生成プログラム1420を起動する(ステップ6030)。透かし付き画像生成プログラム1420は,機器固有情報保持部1620から機器IDとシリアル番号を取得し,また累積読取回数保持部1610から累積読取回数を取得する。さらに透かし付き画像生成プログラム1420の電子透かし埋め込み部1421は,取得した機器ID,シリアル番号,および累積読取回数を,電子透かしとしてワークエリア1510にある原画像に埋め込む(ステップ6040)。電子透かしが埋め込まれた画像は,透かし付き画像になる。」

(イ)引用文献1に記載に記載の発明

(イ)-1 上記A中の段落【0017】の,

「指紋情報をユーザ端末2に送信する。次にユーザ端末2の制御部22が指紋情報の受信を検知すると,ユーザ端末2の画面に入力欄を表示することでユーザからユーザ名とパスワードの入力を受付ける。また制御部22は生体情報読取装置3から指紋情報を受信すると,特徴点画像を生成するよう特徴点画像生成部25に通知する。そして特徴点画像生成部25が指紋情報に基づいて特徴点画像を生成する(ステップS202)」,

という記載,上記A中の段落【0018】の,

「制御部22は電子透かし付加処理部26に対して電子透かしの情報の生成と,当該情報の特徴点画像への付加処理を指示する。すると電子透かし付加処理部26は,ユーザからユーザ名とパスワードからなるユーザ識別情報の入力を受付け(ステップS203),当該入力を受けたユーザ名とパスワードを種情報として電子透かし情報を生成し(ステップS204),その電子透かし情報を特徴点画像へ付加する(ステップS205)。なお,種情報に基づく電子透かし情報の生成は,登録処理時の生成の処理と同様である。次に制御部22は認証要求部24へ認証処理を指示する。すると認証要求部24は電子透かし付加処理部26によって生成された電子透かし情報付加済みの特徴点画像と,ユーザから入力を受付けたユーザ名とパスワードとを格納した認証要求の情報を通信処理部21を介して認証サーバ1へ送信する(ステップS206)」,

という記載から,引用文献1においては,

“ユーザ端末2が受付けたユーザ名とパスワードを種情報として生成された電子透かし情報を付加された,指紋情報に基づいて生成された特徴点画像と,ユーザ名とパスワードとを格納した認証要求の情報を,認証サーバ1に送信する”ものであることが読み取れる。

(イ)-2 上記A中の段落【0019】の,

「次に認証要求を受信した認証サーバ1においては」,

という記載,上記A中の段落【0020】の,

「画像正当性判定部16は認証要求に格納されている電子透かし情報付加済みの特徴点画像から,電子透かし情報を検出し,当該電子透かし情報から種情報を算出する(ステップS212)。そして画像正当性判定部16は,受信した認証要求に格納されていた特徴点画像からステップS212で抽出した種情報(ユーザ名とパスワードの組合せ)と,予め記憶した特徴点画像に付与された電子透かし情報からステップS209で抽出した種情報(ユーザ名とパスワードの組合せ)とを比較して,一致するか否かを判定する(ステップS213)。これによりユーザ端末から認証要求によって送信された特徴点画像の正当性を判定する。正当性の判定に失敗した場合には,画像正当性判定部16は認証失敗を示す情報をユーザ端末2へ送信する」,

という記載と,上記(イ)-1において検討した事項から,引用文献1においては,

“認証サーバ1は,ユーザ端末2から受信した,電子透かし情報付加済みの特徴点画像から,電子透かし情報を検出し,前記電子透かし情報から種情報を算出し,比較用の種情報と比較し,前記特徴点画像の正当性を判断する”ものであることが読み取れる。

(イ)-3 以上,上記(イ)-1,及び,(イ)-2において検討したことから,引用文献1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

“ユーザ端末2が受付けたユーザ名とパスワードを種情報として生成された電子透かし情報を付加された,指紋情報に基づいて生成された特徴点画像と,ユーザ名とパスワードとを格納した認証要求の情報を,認証サーバ1に送信し,

前記認証サーバ1は,前記ユーザ端末2から受信した,前記電子透かし情報付加済みの特徴点画像から,前記電子透かし情報を検出し,前記電子透かし情報から種情報を算出し,比較用の種情報と比較し,前記特徴点画像の正当性を判断する,方法。”

(ウ)本件補正発明と引用発明との対比

(ウ)-1 引用発明における「サーバ装置1」,及び,「ユーザ端末2」が,それぞれ,

本件補正発明における「コンピューティングデバイス」,及び,「端末」に相当し,

引用発明における「電子透かしを付加された,指紋情報に基づいて生成された特徴点画像」が,

本件補正発明における「生体特徴画像」に相当し,

引用発明における「種情報」と, 本件補正発明における「端末のデバイス識別情報」とは,

“電子透かしを検証する情報”である点で共通し,

引用発明における「方法」の一部である「正当性を判断する」処理は,

“認証サーバ1により実行される方法”であるから,

本件補正発明における「1つまたは複数のコンピューティングデバイスで実行される方法」に相当する。

また,引用発明において,「認証サーバ1」が,「端末2」から,「特徴点画像と,ユーザ名とパスワードとを格納した認証要求の情報を」受信することは,

“端末2からアップロードされた特徴点画像と,ユーザ名とパスワードとを格納した認証要求の情報を,認証サーバ1が受信する”ことと言いうるものであるから,

本件補正発明における「端末よりアップロードされた生体特徴画像及び前記端末のデバイス識別情報を受信する」こととは,

“端末よりアップロードされた生体特徴画像と電子透かしを検証する情報を受信する”ことである点で,共通する。

(ウ)-2 引用発明において,「電子透かし情報から種情報を算出し,比較用の種情報と比較」することは,“電子透かし情報の検証をする”ことに他ならず,引用発明における「電子透かし情報」は,「特徴点画像」に付加されたものであるから,当該「特徴点画像」に含まれるものである。

そうすると,引用発明における“電子透かし情報の検証をする”ことが,

本件補正発明における「生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証すること」に相当する。

(ウ)-3 引用発明において,「電子透かし情報」は,「ユーザ名とパスワードを種情報として生成された」ものである。

そして,上記(ウ)-1において検討したとおり,引用発明における「種情報」とは,「電子透かしを検証する情報」であるから,

引用発明における「ユーザ名とパスワードを種情報として生成された電子透かし情報」と,

本件補正発明における「電子透かしは前記端末のデバイス識別情報に基づいて生成され」ることとは,

“電子透かしは電子透かしを検証する情報に基づいて生成され”る点で共通する。

また,上記(ウ)-2で検討した,引用発明における「電子透かし情報から種情報を算出し,比較用の種情報と比較」することは,“電子透かし情報を検証する”ことに他ならないので,

引用発明においては,“電子透かし情報を検証することは,電子透かし情報から種情報を算出し,比較用の種情報と比較することに基づいて行われる”といえるので,

本件補正発明における「電子透かしを検証することは,電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び前記端末の前記デバイス識別情報を比較することに基づいて行われる」こととは,

“電子透かしを検証することは,電子透かしの生成に使用された電子透かしを検証する情報と,受信された電子透かしを検証する情報を比較することに基づいて行われる”ものである点で共通する。

(ウ)-4 引用発明において,「特徴点画像の有効性を判断する」ことは,「電子透かし情報」の検証の結果に基づくものであり,

引用発明における“「電子透かし情報」の検証の結果に基づくもの”が,

本件補正発明における「検証の結果に少なくとも一部基づいて」に相当するものであるから,

引用発明における“電子透かし情報の検証の結果に基づいて,特徴点画像の有効性を判断する”ことと,

本件補正発明における「検証の結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である」とは,

“検証の結果の少なくとも一部に基づいて,生体特徴画像が有用であるか否かを判定すること”である点で共通する。

(ウ)-5 以上,(ウ)-1~(ウ)-4において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]

1つまたは複数のコンピューティングデバイスで実行される方法であって,

端末よりアップロードされた生体特徴画像と電子透かしを検証する情報を受信することと,

生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証することであって,前記電子透かしは電子透かしを検証する情報に基づいて生成され,前記電子透かしを検証することは,前記電子透かしの生成に使用された前記電子透かしを検証する情報と,受信された前記電子透かしを検証する情報を比較することに基づいて行われ,

前記検証の結果の少なくとも一部に基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することと

を含む方法。

[相違点1]

“電子透かしを検証する情報”に関して,

本件補正発明においては,「端末のデバイス識別情報」であるのに対して,

引用発明においては,「ユーザ名とパスワード」である「種情報」である点。

[相違点2]

“電子透かしは電子透かしを検証する情報に基づいて生成され”ることに関して,

本件補正発明においては,「電子透かし」は,「端末のデバイス識別情報に基づいて生成され」るのに対して,

引用発明においては,「電子透かし情報」は,「ユーザ名とパスワードを種情報として生成された」ものである点。

[相違点3]

“電子透かしの生成に使用された前記電子透かしを検証する情報と,受信された前記電子透かしを検証する情報を比較することに基づいて行われ”ることに関して,

本件補正発明においては,「電子透かしの生成に使用された前記デバイス識別情報及び前記端末の前記デバイス識別情報を比較することに基づいて行われる」ものであるのに対して,引用発明においては,「デバイス識別情報」を比較する点についての言及がない点。

[相違点4]

“生体特徴画像が有用であるか否かを判定すること”に関して,

本件補正発明においては,「生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である」ものであるのに対して,

引用発明においては,「ユーザ端末2」においての「有用」性について,特に言及していない点。

(エ)相違点についての当審の判断

(エ)-1[相違点1]~[相違点3]について

上記Bに引用した周知技術文献1,及び,上記Dに引用した周知技術文献3に記載されているように,「電子透かし」の生成の際に,「端末ID」,或いは,「機器ID」(本件補正発明における「デバイス識別情報」に相当)を用いることは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項である。

加えて,送信されてきた“検証用データ”と,送信されてきた情報より生成した被検証データとを比較して,検証を行うことも,上記Cに引用した周知技術文献2に記載されているように,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項である。

しかも,周知技術文献1には,「電子透かし」に組み込まれた「端末ID」と,検証用の「端末ID」とを比較する点についても言及されていて,引用発明は,「電子透かし」に組み込まれた情報を用いて,当該「電子透かし」の検証を行うものであるから,

引用発明において,「電子透かし」に組み込まれる情報として,「端末ID」を用い,当該「端末ID」を用いて,「電子透かし」の検証を行うよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。

よって,[相違点1]~[相違点3]は,格別のものではない。

(エ)-2[相違点4]について

「電子透かし」が挿入された情報が,当該「電子透かし」に組み入れられた「機器ID」を検証することで,当該「機器ID」を有する「機器」によって,利用可能であることを検証することは,当業者にとって周知の技術事項である(必要であれば,周知技術文献1等を参照されたい)。

引用発明においても,「電子透かし情報」の有効性を検証して,「電子透かし情報」が組み込まれた「特徴点画像」の検証を行うことは,当該「電子透かし情報」の生成に用いた「ユーザ情報」に対応する「ユーザ」における,当該「特徴点画像」の有効性を検証することを含み得るので,上記(エ)-1において検討したように,「電子透かし情報」の生成に,「ユーザ」の使用する「端末」の「端末ID」を使用すれば,当該検証が,当該「端末」での,「特徴点画像」の有効性の検証につながることは明かである。

よって,[相違点4]は,格別のものではない。

(エ)-3 上記で検討したごとく,[相違点1]~[相違点4]はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって,本件補正発明は,引用発明,及び,周知技術文献1~周知技術文献3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規定により,特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび

したがって,本件手続補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について

令和1年10月15日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成31年2月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2.令和1年10月15日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「1つまたは複数のコンピューティングデバイスにより実行される方法であって,
端末よりアップロードされた生体特徴画像を受信することと,
前記生体特徴画像に含まれる電子透かしを検証することであって,前記電子透かしは前記端末のデバイス識別情報及び/またはユーザ識別情報に基づいて生成される,ことと,
前記検証の結果に少なくとも一部基づいて,前記生体特徴画像が有用であるか否かを判定することであって,前記生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である,ことと
を含む前記方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明

原審拒絶理由に引用され,上記「第2.令和1年10月15日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)独立特許要件」の「イ.引用文献1に記載の事項及び引用発明」において,引用文献1として引用された,特開2008-108032号公報(2008年5月8日公開)には,「イ.引用文献1に記載の事項及び引用発明」において認定したとおり,次の引用発明が記載されているものと認める。

“ユーザ端末2が受付けたユーザ名とパスワードを種情報として生成された電子透かし情報を付加された,指紋情報に基づいて生成された特徴点画像と,ユーザ名とパスワードとを格納した認証要求の情報を,認証サーバ1に送信し,

前記認証サーバ1は,前記ユーザ端末2から受信した,前記電子透かし情報付加済みの特徴点画像から,前記電子透かし情報を検出し,前記電子透かし情報から種情報を算出し,比較用の種情報と比較し,前記特徴点画像の正当性を判断する,方法。”

第5.本願発明と引用発明との対比

本願発明は,本件補正発明から,“アップロードされた端末のデバイス識別情報を受信する”という限定事項と,“電子透かしは前記端末のデバイス識別情報に基づいて生成される”という限定事項と,“電子透かしを検証することは,電子透かしの生成に使用されたデバイス識別情報及び端末のデバイス識別情報を比較することに基づいて行われる”という限定事項を取り除いたものであるから,

本願発明と,引用発明との相違点は,下記のとおりであり,その余の点で一致する。

[相違点]

“生体特徴画像が有用であるか否かを判定すること”に関して,

本願発明においては,「生体特徴画像は,前記端末が前記生体特徴画像を生成した端末に相当する場合のみ前記端末において有用である」ものであるのに対して,

引用発明においては,「ユーザ端末2」においての「有用」性について,特に言及していない点。

第6.相違点についての当審の判断

本願発明と,引用発明との[相違点」は,本件補正発明と,引用発明との[相違点4]と同じものであるから,上記「第2.令和1年10月15日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)独立特許要件」の「(エ)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,格別のものではない。

そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第7.むすび

したがって,本願発明は,本願の第1国への特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない

よって,結論のとおり審決する。

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2019-013736

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