特許拒絶査定不服審判
2019-009763
端末、端末の制御方法、ならびに、プログラム
- 審判番号
- 2019-009763
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-099301外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月05日
- 審決日
- 2020年09月25日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ドリコム
- 分類
- P18 .537-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018- 99301「端末、端末の制御方法、ならびに、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018-170012〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年5月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月13日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月28日付け:拒絶査定
令和 元年 7月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 3月18日付け:拒絶理由通知書
第2 本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1~16は、令和元年7月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である(下線部は補正箇所である。)。
「 【請求項1】
サーバから間欠的に板情報を取得する取得部、
仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集する編集部、
前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文が編集することに応じて、前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を、指し値の順に整列して画面に表示する表示部、
前記ユーザからの発注操作に基づいて、前記編集されている仮注文を前記サーバに発注する発注部
を備え、
前記表示部は、
前記売り注文を、第1体裁で表示し、
前記買い注文を、第2体裁で表示し、
前記仮注文を、前記仮注文に係る種類が、売りであれば、前記第1体裁で表示し、買いであれば、前記第2体裁で表示し、
前記画面はタッチスクリーンであり、
前記画面に表示された売り注文ならびに買い注文のいずれかが前記ユーザにタッチされると、前記編集部は、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた注文に係る指し値に基づいて編集し、
前記編集部は、
前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、
前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する
ことを特徴とする端末。
【請求項2】
前記ユーザからの発注操作があると、前記端末は、
前記仮注文に係る種類が売りであり、前記仮注文に係る指し値が前記板情報に含まれる買い注文のいずれの指し値よりも安い、もしくは、
前記仮注文に係る種類が買いであり、前記仮注文に係る指し値が前記板情報に含まれる売り注文のいずれの指し値よりも高い
場合、警告する
ことを特徴とする請求項1に記載の端末。
【請求項3】
前記ユーザからの発注操作があると、前記発注部は、
前記仮注文に係る種類が売りであり、前記仮注文に係る指し値が前記板情報に含まれる買い注文のいずれの指し値よりも安い、もしくは、
前記仮注文に係る種類が買いであり、前記仮注文に係る指し値が前記板情報に含まれる売り注文のいずれの指し値よりも高い
場合、前記仮注文を逆指し値により発注する
ことを特徴とする請求項1に記載の端末。
【請求項4】
前記編集部は、前記仮注文に係る売買の種類を、前記タッチされた注文が
売り注文であれば、売りに編集し、
買い注文であれば、買いに編集する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の端末。
【請求項5】
前記表示部は、前記仮注文を、前記第1体裁もしくは前記第2体裁で、強調して表示する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の端末。
【請求項6】
前記表示部は、
前記第1体裁では、第1色彩により注文を表示し、
前記第2体裁では、第2色彩により注文を表示する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の端末。
【請求項7】
前記表示部は、
前記第1体裁では、前記画面に表示される注文が並ぶ方向と直行する第1方向に、注文に係る指し値と量とを並べて表示し、
前記第2体裁では、前記第1方向とは逆向きの第2方向に、注文に係る指し値と量とを並べて表示する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の端末。
【請求項8】
前記表示部は、
前記第1体裁では、注文に係る量を前記第1方向もしくは第2方向に延びる棒グラフにより表示し、
前記第2体裁では、注文に係る量を前記第2方向もしくは第1方向に延びる棒グラフにより表示する
ことを特徴とする請求項7に記載の端末。
【請求項9】
端末が、
サーバから間欠的に板情報を取得し、
仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集し、
前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文が編集されることに応じて、前記仮注文と、
前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を、指し値の順に整列して画面に表示し、
前記ユーザからの発注操作に基づいて、前記編集されている仮注文を前記サーバへ発注する
制御方法であって、
前記売り注文を、第1体裁で表示し、
前記買い注文を、第2体裁で表示し、
前記仮注文を、前記仮注文に係る種類が、売りであれば、前記第1体裁で表示し、買いであれば、前記第2体裁で表示し、
前記画面はタッチスクリーンであり、
前記画面に表示された売り注文ならびに買い注文のいずれかが前記ユーザにタッチされると、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた注文に係る指し値に基づいて編集し、
前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、
前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する
ことを特徴とする端末の制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、
サーバから間欠的に板情報を取得する取得部、
仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集する編集部、
前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文が編集されることに応じて、前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を、指し値の順に整列する発注部
として機能させ、
前記表示部は、
前記売り注文を、第1体裁で表示し、
前記買い注文を、第2体裁で表示し、
前記仮注文を、前記仮注文に係る種類が、売りであれば、前記第1体裁で表示し、買いであれば、前記第2体裁で表示し、
前記画面はタッチスクリーンであり、
前記画面に表示された売り注文ならびに買い注文のいずれかが前記ユーザにタッチされると、前記編集部は、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた注文に係る指し値に基づいて編集し、
前記編集部は、
前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、
前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
サーバから間欠的に板情報を取得する取得部、
仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集する編集部、
前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文が編集されることに応じて、前記取得された板情報に含まれない前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を混ぜて、指し値の順に整列して画面に表示する表示部、
前記ユーザからの発注操作に基づいて、前記編集されている仮注文を前記サーバへ発注する発注部
を備え、
前記表示部は、
前記売り注文を、第1体裁で表示し、
前記買い注文を、前記第1体裁と相違する第2体裁で表示し、
前記仮注文を、前記仮注文に係る種類が、売りであれば、前記第1体裁で表示し、買いであれば、前記第2体裁で表示する
ことを特徴とする端末。
【請求項12】
前記表示部は、前記仮注文を、前記第1体裁もしくは前記第2体裁で、強調して表示する
ことを特徴とする請求項11に記載の端末。
【請求項13】
前記表示部は、
前記第1体裁では、第1色彩により売りの注文及び仮注文を表示し、
前記第2体裁では、前記第1色彩と相違する第2色彩により買いの注文及び仮注文を表示する
ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の端末。
【請求項14】
前記表示部は、
前記第1体裁では、売りの注文及び仮注文を、前記画面に表示される注文及び仮注文が並ぶ方向とほぼ平行な境界の一方側にある第1領域に少なくとも部分的に重畳しかつ該境界の他方側にある第2領域に重畳しないように表示し、
前記第2体裁では、買いの注文及び仮注文を、前記第2領域に少なくとも部分的に重畳しかつ前記第1領域に重畳しないように、表示する
ことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の端末。
【請求項15】
端末が、
サーバから間欠的に板情報を取得し、
仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集し、
前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文が編集されることに応じて、前記取得された板情報に含まれない前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を混ぜて、指し値の順に整列して画面に表示し、
前記ユーザからの発注操作に基づいて、前記編集されている仮注文を前記サーバへ発注する
制御方法であって、
前記売り注文を、第1体裁で表示し、
前記買い注文を、前記第1体裁と相違する第2体裁で表示し、
前記仮注文を、前記仮注文に係る種類が、売りであれば、前記第1体裁で表示し、買いであれば、前記第2体裁で表示する
ことを特徴とする端末の制御方法。
【請求項16】
コンピュータを、
サーバから間欠的に板情報を取得する取得部、
仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集する編集部、
前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文が編集されることに応じて、前記取得された板情報に含まれない前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を混ぜて、指し値の順に整列して画面に表示する表示部、
前記ユーザからの発注操作に基づいて、前記編集されている仮注文を前記サーバへ発注する発注部
として機能させ、
前記表示部は、
前記売り注文を、第1体裁で表示し、
前記買い注文を、前記第1体裁と相違する第2体裁で表示し、
前記仮注文を、前記仮注文に係る種類が、売りであれば、前記第1体裁で表示し、買いであれば、前記第2体裁で表示する
ことを特徴とするプログラム。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審の拒絶理由通知である、令和2年3月18日付け拒絶理由通知書の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりのものである。
[理由1]
・請求項1~8
(1)請求項1の「前記仮注文が編集することに応じて」との記載は、日本語として不明瞭である。(「前記仮注文が編集されることに応じて」ではないのか?)
(2)請求項1の「前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、」と記載されているが、係り受けが曖昧であるため、何と何に挟まれる値に編集するのか不明である。「前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する」についても、何と何に挟まれる値に編集するのか不明である。(たとえば、「前記画面に表示された売り注文ならびに買い注文のいずれかが前記ユーザにタッチされると、前記編集部は、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた注文に係る指し値に基づいて編集し、
前記編集部は、
その際、前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値とに挟まれる値になるように、前記仮注文に係る指し値を編集し、前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、前記タッチされた買い注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値とに挟まれる値に、前記仮注文に係る指し値を編集する」のように補正されたい。)
(3)請求項1を引用する請求項2~8についても不明確である。
・請求項9,10
(1)請求項1の(2)と同様である。
・請求項10
(1)請求項10には、「前記表示部」、「前記画面」との記載があるが、この記載よりも前に「表示部」「画面」の記載はなく、何を指しているのか不明である。
・請求項14
(1)「注文及び仮注文が並ぶ方向とほぼ平行な境界」と記載されているが何と何の境界であるのか具体的に記載されていないから、構成が不明確である。
(2)「少なくとも部分的に重畳し」と記載されているが、少なくとも部分的とは具体的にどのような状態をいうのか特定できないから、不明確である。
第4 本願の発明の詳細な説明の記載
1 発明の詳細な説明には、次の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
「【0038】
本実施形態では、表示部104は、売り注文を、第1体裁で表示し、買い注文を、第2体裁で表示する。たとえば、第1体裁と第2体裁とで、情報を表示する際の色彩(文字色、背景色)、フォント(サイズ、太さ、下線)などを変えることで、売り注文群と買い注文群を識別しやすくすることができる。日本では、売り注文を緑、買い注文を赤で表示し、欧米では、売り注文を赤、買い注文を緑で表示する体裁が広く採用されている。
【0039】
このほか、注文が上下方向に並べられる場合に、これに直交する左右方向に、売り注文と買い注文では指し値と量の順序を逆にして並べ、上下に並ぶ注文同士では、指し値の桁を揃えて表示することもできる。この態様では、注文を指し値順に整列して表示する際に、各行に示される注文の情報を3列に分ける。各注文の指し値は、中央の列に表示し、売り注文の量は、左の列に表示し、買い注文の量は、右の列に表示する。」
「【0042】
一方、編集部103は、仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集する。」
「【0048】
すなわち、表示部104は、板情報が取得され、もしくは、仮注文が編集されることに応じて、仮注文と、取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を、指し値の順に整列して画面に表示する。すなわち、本実施形態では、すでに発注がなされている買い注文と売り注文からなる板情報に対して、これから発注しようとする仮注文を追加して画面に表示することになる。」
「【0082】
なお、上記の表示例における板情報領域211やフォーム領域221の配置、フォーム領域221内における各要素の配置、板情報領域211において注文を並べる方向および体裁については、画面のサイズや向き等に応じて適宜変更が可能である。
【0083】
たとえば、板情報において、売り注文と買い注文を左右の2つの領域に分離し、その中で指し値順に整列して表示することができる。この場合であっても、仮注文は、右側の領域と、左側の領域の、いずれかに表示されることになるが、逆指し値に相当する額を指定した場合には、仮注文が属する領域のほかの注文の体裁と、仮注文そのものの体裁と、が異なるため、通常注文として発注すると誤発注になってしまうことが、容易にわかる。」
「【0132】
本実施形態によれば、タッチスクリーンに表示されている板情報の注文にタッチ、タップ等するだけで、指し値を入力することができる。
【0133】
また、本実施形態に係る端末において、前記編集部は、前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた売り注文に係る指し値から第1所定値を減算した値に編集し、前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値に第2所定値を加算した値に編集するように構成することができる。
【0134】
また、本実施形態に係る端末において、前記編集部は、前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、前記タッチされた買い注文に前記所定方向と逆方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集するように構成することができる。
【0135】
これらの実施形態によれば、タッチスクリーンに表示されている板情報の注文にタッチ、タップ等するだけで、その注文よりも優先(もしくは劣後)される指し値を入力することができる。」
【図3】
2 上記記載から、本願の発明の詳細な説明には以下の事項が記載されていると認められる。
A 前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文がユーザからの編集操作に基づいた編集部の編集より編集されることに応じて、前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を、指し値の順に整列して画面に表示する表示部(【0042】、【0048】)
B 前記編集部は、前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、前記タッチされた買い注文に前記所定方向と逆方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集するように構成することができる(【0134】)。
C 表示部は、注文を指し値順に整列して表示する際に、各行に示される注文の情報を3列に分け、各注文の指し値は、中央の列に表示し、売り注文の量は、左の列に表示し、買い注文の量は、右の列に表示する(【0039】、図3)
D 注文を並べる方向および体裁については、画面のサイズや向き等に応じて適宜変更が可能であり、板情報において、売り注文と買い注文を左右の2つの領域に分離し、その中で指し値順に整列して表示することができ、仮注文は、右側の領域と、左側の領域の、いずれかに表示される(【0082】~【0083】)。
第5 当審の判断
1 はじめに
特許を受けようとする発明が明確か否かは、特許請求の範囲だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そのため、本願発明に係る特許請求の範囲が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かについて、検討する。
2 [理由1]の請求項1~8の(1)について
(1)請求項1の記載について
「前記仮注文が編集することに応じて」との記載に関して、「仮注文」とは仮の注文であり、それ自体は単なる情報にすぎないから、そのような情報が主体となって、編集作業をおこなうとは日本語として不明な事項である。また、仮注文が何を編集するのかも不明である。
(2)発明の詳細な説明の記載について
「第4 本願の発明の詳細な説明の記載 2 A」に上記したとおり、発明の詳細な説明には「前記仮注文が…編集されることに応じて、…表示する表示部」が記載されていることから、請求項1の「前記仮注文が編集することに応じて」との記載は、正しくは「前記仮注文が編集されることに応じて」の誤記と解する余地がある。しかしながら、令和元年7月5日の手続補正は、補正前の請求項1の「・・・前記仮注文が編集されることに応じて、・・・」との記載を、「・・・前記仮注文が編集することに応じて、・・・」とする補正事項を含むものであり、誤記ではなく、意図的にそのように特定しているとも考えられることから、依然として「前記仮注文が編集することに応じて」の意味内容は不明確である。
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「前記仮注文が編集することに応じて」の意味内容を明確に特定することができず、請求項1に係る発明の技術的範囲を定めることができない。
そして、発明の技術的範囲を定めることができなければ、第三者の利益が不当に害されることは明らかである。
してみると、請求項1の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
3 [理由1]の請求項1~8の(2)について
(1)請求項1の記載について
「前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し」の記載は、「前記仮注文に係る指し値を」がどこに係るのか、その係り受け関係が不明である。その結果、「前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた売り注文に係る指し値」とは不明な値であり、そのような不明な値と、「前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値」もまた、どのような値であるのか不明である。
また、「前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する」との記載は、仮注文に係る指し値を、「前記タッチされた買い注文に係る指し値」と、どの値に挟まれる値に編集するのか不明である。
(2)発明の詳細な説明の記載について
(1)で上記した「前記仮注文に係る指し値を」の係り受け関係については、上記「第4 本願の発明の詳細な説明の記載 2 B」を参酌すると、発明の詳細な説明には、「前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、・・・」と記載されており(強調のため下線を付与した。)、「前記仮注文に係る指し値を」は「・・・に挟まれる値に編集し」に係ることが見て取れることから、請求項1の当該記載は、「前記仮注文に係る指し値を」の後に読点を打つのが望ましいものの、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。
一方、「前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する」との記載については、発明の詳細な説明に記載された事項である、「前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、前記タッチされた買い注文に前記所定方向と逆方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する」こと(上記「第4 本願の発明の詳細な説明の記載 2 B」を参照。)を上位概念化したものであると解される。しかしながら、請求項1には「前記タッチされた買い注文に係る指し値」と、どの値に挟まれる値に編集するのか何ら特定されていないため、請求項1の記載を離れて限定的に解釈することはできず、依然としてどの値に挟まれる値に編集するのか不明である。
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する」との記載の意味内容を明確に特定することができず、請求項1に係る発明の技術的範囲を定めることができない。
そして、発明の技術的範囲を定めることができなければ、第三者の利益が不当に害されることは明らかである。
してみると、請求項1の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
4 [理由1]の請求項1~8の(3)について
請求項1を引用する請求項2~8の記載ついても、上記2、3と同様の理由により、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
5 [理由1]の請求項9、10の(1)について
請求項9及び請求項10は、それぞれ請求項1に係る「端末」の発明に対応する、「方法」及び「プログラム」の発明であり、上記3と同様の理由により、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
6 [理由1]の請求項10の(1)
(1)請求項10の記載について
請求項10に係る発明を以下に再掲する(下線は当審が付与した。)。
「 【請求項10】
コンピュータを、
サーバから間欠的に板情報を取得する取得部、
仮注文に係る指し値、量、および、売買の種類を、ユーザからの編集操作に基づいて編集する編集部、
前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文が編集されることに応じて、前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を、指し値の順に整列する発注部
として機能させ、
前記表示部は、
前記売り注文を、第1体裁で表示し、
前記買い注文を、第2体裁で表示し、
前記仮注文を、前記仮注文に係る種類が、売りであれば、前記第1体裁で表示し、買いであれば、前記第2体裁で表示し、
前記画面はタッチスクリーンであり、
前記画面に表示された売り注文ならびに買い注文のいずれかが前記ユーザにタッチされると、前記編集部は、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた注文に係る指し値に基づいて編集し、
前記編集部は、
前記タッチされた注文が売り注文であれば、前記仮注文に係る指し値を前記タッチされた売り注文に係る指し値と、前記タッチされた売り注文に所定方向に隣接する注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集し、
前記タッチされた注文が買い注文であれば、前記仮注文に係る指し値を、前記タッチされた買い注文に係る指し値と、に挟まれる値に編集する
ことを特徴とするプログラム。」
請求項10には、「前記表示部」、「前記画面」との記載よりも前に「表示部」、「画面」の記載がなく、それぞれどの記載を指しているのかが不明である。そのため、「表示部」及び「画面」と他の機能部との関係も不明であり、表示部が表示し、画面に表示される「売り注文」及び「買い注文」が指し値の順に整列されたものかどうかも不明である。
(2)発明の詳細な説明の記載について
「第4 本願の発明の詳細な説明の記載 2 A」に上記したとおり、発明の詳細な説明には「前記板情報が取得され、もしくは、前記仮注文がユーザからの編集操作に基づいた編集部の編集より編集されることに応じて、前記仮注文と、前記取得された板情報に含まれる売り注文ならびに買い注文と、を、指し値の順に整列して画面に表示する表示部」が記載されていることから、「表示部」が「画面」に表示する「売り注文」及び「買い注文」は、指し値の順に整列後のものであることが見て取れる。しかしながら、請求項10の記載を離れて「表示部」、「画面」と他の機能部との関係を限定的に解釈することはできず、依然として(1)に上記のとおり、請求項10の記載は不明確である。
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「表示部」及び「画面」と他の機能部との関係、並びに、「表示部」が「画面」に表示する内容を明確に特定することができず、請求項10に係る発明の技術的範囲を定めることができない。
そして、発明の技術的範囲を定めることができなければ、第三者の利益が不当に害されることは明らかである。
してみると、請求項10の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
7 [理由1]の請求項14の(1)及び(2)について
(1)請求項14の記載について
請求項14に係る発明を以下に再掲する(下線は当審が付与した。)。
「 【請求項14】
前記表示部は、
前記第1体裁では、売りの注文及び仮注文を、前記画面に表示される注文及び仮注文が並ぶ方向とほぼ平行な境界の一方側にある第1領域に少なくとも部分的に重畳しかつ該境界の他方側にある第2領域に重畳しないように表示し、
前記第2体裁では、買いの注文及び仮注文を、前記第2領域に少なくとも部分的に重畳しかつ前記第1領域に重畳しないように、表示する
ことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の端末。」
請求項14の、「注文及び仮注文が並ぶ方向とほぼ平行な境界」について、何と何の境界なのか具体的に記載されていないため構成が不明確である。「第1領域」と「第2領域」との境界であるとしても、「少なくとも部分的に重畳し」とは具体的にどのような状態をいうのか特定できないから、構成が不明確である。すなわち、「少なくとも部分的に重畳」とは、a)全ての部分が重畳する場合、b)ある一部は重畳するが他の部分は重畳しない場合、の両方を含むが、b)の場合、他の部分がどこに重畳するのか不明である。この点について、請求項14にはそのような「第3の領域」ともいうべきものがあるのか、あるとしたらどこなのか何ら特定されていないため、請求項に係る発明が不明確である。
(2)発明の詳細な説明の記載について
「第4 本願の発明の詳細な説明の記載 2 C」及び「第4 本願の発明の詳細な説明の記載 2 D」に上記したとおり、発明の詳細な説明には「表示部は、注文を指し値順に整列して表示する際に、各行に示される注文の情報を3列に分け、各注文の指し値は、中央の列に表示し、売り注文の量は、左の列に表示し、買い注文の量は、右の列に表示する」こと、及び、「注文を並べる方向および体裁については、画面のサイズや向き等に応じて適宜変更が可能であり、板情報において、売り注文と買い注文を左右の2つの領域に分離し、その中で指し値順に整列して表示することができ、仮注文は、右側の領域と、左側の領域の、いずれかに表示される」こと、が記載されている。前者の「左の列」、「右の列」及び「中央の列」が、それぞれ、請求項14に記載の「第1の領域」、「第2の領域」及び「境界」の具体例であるとすれば、「境界」が「第3の領域」の役割を果たすことから、請求項14の構成を理解することが可能である。しかしながら、「境界」とは、通常、「物事のさかい」を意味しており、「境界」自体は面積を有する領域とは解されないため、「境界」を「第3の領域」と解することはできず、請求項14の記載は依然として不明確である。
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「注文及び仮注文が並ぶ方向とほぼ平行な境界」及び「少なくとも部分的に重畳し」との記載の意味内容を明確に特定することができず、請求項14に係る発明の技術的範囲を定めることができない。
そして、発明の技術的範囲を定めることができなければ、第三者の利益が不当に害されることは明らかである。
してみると、請求項14の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
8 特許出願人の対応
なお、この旨の拒絶理由を当審より期間を指定した上で通知したが、その期間内に、出願人は、意見書又は手続補正書を提出しなかった。
9 まとめ
よって,本願請求項1~10、14に係る発明について、特許請求の範囲の記載は,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
第6 むすび
以上のことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-009763