特許拒絶査定不服審判
2021-011375
お茶を美味しく提供する方法
- 審判番号
- 2021-011375
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-097333外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月26日
- 審決日
- 2023年04月24日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】今枝 滋洋
- 分類
- P18 .121-WZ (G06Q) / P18 .537-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 97333「お茶を美味しく提供する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月26日出願公開、特開2020-191035〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年5月24日に出願された特願2019-97333号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和2年 9月 3日付け:拒絶理由通知
令和3年 1月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年 5月20日付け:拒絶査定
令和3年 8月26日 :審判請求
令和4年10月 6日付け:拒絶理由通知
令和4年12月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲(令和4年12月6日提出の手続補正書による補正後の特許請求の範囲)の記載によれば、本願の請求項1の記載は、以下のとおりである。
「茶葉の商品銘柄ごとに、前もって、茶葉提供業者もしくは試験業者により、湯量、茶葉量、を固定して、抽出温度、抽出時間、を変化させて抽出し官能試験により一番美味しいお茶を選び、その一番すぐれた抽出条件となる抽出温度、抽出時間、を求め、
茶葉を商品として提供時に前記一番すぐれた抽出条件の情報を添付し、もしくは、商品購入後に前記一番すぐれた抽出条件の情報を提供し、
各家庭や職場や店で、前記一番すぐれた抽出条件の情報を用いて、湯量、茶葉量、抽出温度、抽出時間、を再現してお茶を入れ、官能試験で得られた一番美味しいお茶を再現することにより、
お茶を美味しく提供する方法。
ここで、お茶の抽出には電気急須もしくは急須電磁調理器を用いる。」
第3 当審拒絶理由
当審において令和4年10月6日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、次のとおりである。
1 理由1(明確性要件)
この出願の特許請求の範囲の記載は、請求項1の「お茶」を「提供する」及び「お茶の抽出には電気急須もしくは急須電磁調理器を用いる」の記載について、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 理由2(進歩性)
この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献>
1.特開2007-98008号公報
2.特表2016-521139号公報
第4 引用文献の記載
1 引用文献1
引用文献1は、本願の出願前である平成19年4月19日の出願公開に係る公開特許公報であり、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【0001】
本発明は、茶葉中に含まれる有効成分を湯中に効率的に抽出して美味しい風味等を備えた茶飲料を手軽に抽出するための茶飲料抽出装置に関する。」
「【0006】
また、良好な風味、濃度を備えた茶飲料を抽出するためには、使用する茶葉の種類、サイズ、茶葉量等の条件の違いに応じて、湯の量及び温度、蒸らし時間等を適切に管理、調整することが好ましいが、従来の茶飲料抽出装置においてはこのような理想的な茶飲料を抽出するために必要十分な工程の管理はなされていなかった。」
「【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、紅茶等の茶葉を収容した茶葉収容手段を湯中に浸漬して茶成分を抽出してから、茶葉収容手段を湯中から退避させる工程を自動化した茶飲料抽出装置において、縮んだ状態にある乾燥茶葉を湯中においてジャンピング動作させつつ展開させることにより、効率的に茶成分を抽出することを可能にした茶飲料抽出装置を提供することを目的としている。
【0009】
また、本発明は紅茶等の茶葉を用いた茶飲料抽出装置において、操作者の好みに応じて、自動操作モードによる飲料抽出、又は手動操作モードによる飲料抽出を選択的に実施できるようにした茶飲料抽出装置を提供することを目的としている。
【0010】
自動操作モードにおいては、表示部に表示される表示内容に従った簡単な設定を行うだけで、茶葉の種類、葉サイズ等の諸条件の違いに応じた最適な湯温、蒸らし時間による抽出工程を実施し、最適の風味、濃度を備えた茶飲料を抽出できるようにすることを目的としている。」
「【0024】
請求項4の発明では、自動操作モードでは、加熱温度、蒸らし温度等の抽出条件については、茶葉の種類、茶葉の重量やサイズ、水量との関係における濃度等の各種条件の違いに応じて最適の抽出条件を自動的に選定して抽出作業を自動的に実施する。その結果、各種条件の違いに応じた最適の風味、濃度を備えた茶飲料を得ることができる。
【0025】
茶葉は、種類、重量、サイズ、水量によって、抽出条件を異ならせる必要があるが、最適の抽出条件を個別に入力することは専門家以外には困難であるため、予め茶葉の種類等の諸条件に対応した最適の抽出条件を記憶しておき、茶葉や水量に関する条件の入力だけで最適の風味、濃度を有した茶飲料を自動的に抽出できるようにしている。
・・・
【0027】
請求項5の発明では、手動操作モードにおける加熱温度設定ステップでは、利用者の好みに応じて、加熱温度を設定することで、渋みを増減させたり、その他の風味の調整が可能となる。本発明では、モード設定部により加熱温度を変更可能とすることによりこの要請に対応している。沸点、或いは沸点に近い温度まで加熱されることにより水蒸気泡が発生した湯中に紅茶葉を浸漬することで蒸らし工程が始まる。蒸らし工程では、発泡によって茶葉を攪拌することにより縮んで小さく固まった乾燥状態の茶葉を開かせて、茶葉に含まれる茶成分を湯中に抽出する。紅茶飲料の抽出では2分間~2分30秒程度の蒸らし時間を設定するのが通常である。しかし、利用者の好み、茶葉の種類、茶葉サイズ等の諸条件に応じて、この蒸らし時間を延ばしたり短縮することで、渋みを増減させたり、その他の風味の調整が可能となる。本発明蒸らし時間設定ステップでは、モード設定部により蒸らし時間を変更可能とすることによりこの要請に対応している。」
「【0055】
モード設定部30により設定可能な自動操作モードには、例えば、一般的な抽出条件での抽出ステップや、茶葉の種類別に抽出条件を異ならせて成分抽出を実施する種類別抽出ステップや、茶葉サイズの違いに応じて抽出条件を異ならせる茶葉サイズ別抽出ステップ等の動作ステップが含まれている。
【0056】
モード設定部30により設定可能な手動操作モードには、例えば、ヒータ部25による抽出容器内の水の加熱温度を手動操作により調整可能とする加熱温度設定ステップや、茶葉の蒸らし時間を手動操作により調整可能とする蒸らし時間設定ステップ等の動作ステップが含まれている。」
「【0065】
次に、図5に基づいて自動操作モードによる操作手順の一例を説明する。
【0066】
茶飲料抽出装置の図示しない電源を投入すると、表示部31には、図5(a)に示すように抽出容器に水を充填して台座部15上にセットすべき旨の指示内容が初期表示される。抽出容器のセット、及び茶葉用ネットへの茶葉充填を終了して調整つまみ32をONすると、図5(b)の表示内容に切り替わる。
【0067】
図5(b)に示した表示部の表示内容では、例えば「1.AUTO 2.MANUAL」のように、自動操作と手動操作の何れかを選択すべき旨の指示がなされる。当初、「1.AUTO」側が点灯表示等によって選択された状態になっているとすれば、調整つまみ32を一回ONすることにより、「2.AUTO」が選択実行される。すると、図5(c)に示したように表示部31に「2.AUTO」に移行する旨と、調整つまみをONすべき旨の指示がなされる。なお、図5(b)において、調整つまみ32を下方へ一回傾けることにより点灯表示を「2.MANUAL」側に移動させることにより「2.MANUAL」を選択可能な状態となり、調整つまみ32をONすることにより、図7に示した手動操作モードに移行する。
【0068】
次に、図5(c)の表示状態において調整つまみ32がONされると、図5(d)に示すように抽出容器内に充填された水量を入力すべき旨の指示が表示される。例えば、1人分の水量が抽出容器内に充填されている場合には、調整つまみ32を用いて「1.1人分」を選択実行する。すると、図5(e)のように1人分の水量である旨と、「1.抽出実行 2.茶葉量設定」が表示される。ここで「1.抽出実行」を選択実行すると、予め設定された一般的な抽出条件(湯温、蒸らし時間)により1人分の茶飲料抽出工程が自動的に実行される。この場合に実施される抽出条件は、茶葉の種類と関係なく一般的に最適とされる湯温、蒸らし時間である。
【0069】
図5(e)において「2.茶葉量設定」を選択実行すると、例えば図示しないが「茶葉用ネットを蓋上に載せて茶葉量を計量し、調整下さい」と表示される。
【0070】
図5(f)は茶葉量を正確に計量する場合(茶葉量設定ステップ)の表示例を示し、既に入力されている水量に見合う茶葉の最適量(g)と、茶葉用ネット内の現在の茶葉量(g)が対比して表示される。このようにして茶葉量を調整してから調整つまみ32をONすることにより抽出が開始される。この場合に実施される抽出条件は、紅茶の茶葉の種類と関係なく一般的に最適とされる湯温、蒸らし時間である。
【0071】
なお、この茶葉量設定ステップは、図5(a)の容器に水を入れてセットすべき旨の表示と並列的に表示することにより、操作モード選択前に完了するようにしてもよい。
【0072】
図5(g)は抽出中である旨の表示例、(h)は抽出が終了した旨の表示例である。
【0073】
なお、紅茶は茶葉の種類(産地、収穫時期等)、茶葉のサイズに応じて最適の抽出条件が異なってくるため、図5(f)に示した茶葉量を計測するステップの前に茶葉の種類や茶葉サイズを入力するステップを設けても良い。
【0074】
即ち、図6(a)は、表示部31に茶葉の種類を入力させるための指示内容を表示している。例えば、「1.ダージリン系 2.アッサム系 3.その他」と表示し、何れかの茶葉が選択された場合には、図6(b)に示したように茶葉のサイズ「1.大葉、2.中葉、3.小葉」を選択させるための表示を行う。次いで、例えば調整つまみを用いて特定の茶葉サイズが選択されると、抽出工程が開始されるようにする。なお、ダージリン系、アッサム系以外の種類の茶葉を使用する場合には、「3.その他」を選択することによって表示される他の茶葉種から選択するように構成する。
【0075】
なお、図5(f)に示した茶葉量設定ステップの前に茶葉種類を入力するステップを設ける場合には、茶葉量設定ステップにおいては入力された紅茶葉の種類毎に最適重量を表示して、表示された重量分だけ茶葉用ネット内に投入させるように指示する。」
「【0076】
次に、手動操作モードでは、図5(a)に示した初期表示に続いて、図7(a)に示す表示例「1.AUTO 2.MANUAL」のように、自動操作と手動操作の何れかを選択すべき旨の指示がなされる。手動操作モードを選択する場合には、図5(b)について述べたのと同様な手順により、「2.MANUAL」を選択実行する。すると、図7(b)のようにMANUALに移行する旨と、調整つまみをONすべき旨が表示される。
【0077】
図7(b)において調整つまみをONすると、図7(c)の表示がなされて、茶葉量の計量、設定を行うべき旨が指示される。次いで、操作者は、図7(d)に示した表示部31に表示される現在の重量表示を確認しながら、好みの量の茶葉を投入することができる。
【0078】
茶葉量を設定してから調整つまみ32をONすると、図7(e)に示すように表示部31に湯温を設定すべき旨の指示と、現在温度が表示される。湯温の設定は、例えば調整つまみを回転させて希望の数値を表示させてからONすることにより決定することができる。
【0079】
図7(f)は湯温の設定後に表示される蒸らし時間設定のための表示例を示しており、この場合も例えば調整つまみを回転させて希望の数値を表示させてからONすることにより蒸らし時間を決定することができる。
【0080】
その後は、調整つまみをONすることにより抽出工程が開始され、図5(g)(h)に示した如き表示が順次なされて、抽出が完了する。
【0081】
以上のように、自動操作モードによる茶飲料抽出工程では、水量、茶葉重量、種類、サイズ等に応じて最適な濃度、風味等を備えた茶飲料を抽出するための各工程を自動的に実施したが、手動操作モードにおいては、表示部31に表示される手順、その他の指示内容に応じて所定の操作を順次実行することにより、茶葉量設定、温度設定、蒸らし時間等の管理を任意に行うことが可能となり、装置使用者の好みに応じた濃度、風味の茶飲料を抽出することが可能となる。」
「【0084】
次に、図8(a)は紅茶飲料抽出時の茶葉量管理条件の例を茶葉の種類別に示す図表であり、(b)は茶系飲料抽出時の湯温管理条件を示す図表である。茶葉の種類、葉量に応じた最適のむらし時間、温度による抽出動作のためのプログラムを制御部34に保持させることによって、自動操作モードによる抽出が可能となる。
【0085】
まず、図8(a)の紅茶葉量管理表に示すように、ダージリン系の紅茶葉が大葉であれば蒸らし工程によって茶葉が開いて成分抽出を完了する迄に2分30秒前後の蒸らし時間を要するが、小葉の場合には更に短い蒸らし時間であっても茶葉を開かせることができる。
【0086】
アッサム系の紅茶葉の場合には、小葉であっても乾燥葉を開いて成分抽出を完了すためには、2分30秒前後(±5秒)の蒸らし時間を要する。大葉の場合には更に長い蒸らし時間を要する。
【0087】
図8(b)は、紅茶を茶葉として用いる場合には95度の加熱温度(蒸らし温度)が最適であり、ウーロン茶の場合には85度、緑茶の場合には80度が最適であることを示している。
【0088】
本発明の茶飲料抽出装置における自動操作モードにおいて、図8(a)(b)に示された各種の茶葉に最適とされる条件による抽出作業を実施するための制御プログラムを制御部34に格納しておき、調整つまみを用いて茶葉の種類、葉量を入力、設定することによって、最適条件による茶飲料の抽出を自動的に実行させることができる。」
「【0112】
可動蓋12に茶葉用ネット2内の茶葉の重量を検知する重量センサ35を備えて茶葉量を任意の量に調整することができるので、抽出飲料の濃度、味等を一定にすることができる。
【0113】
制御部34は、モード設定部30により自動操作モードが設定された場合、抽出容器内の水中のカルキ、その他の風味阻害物質を除去するために、容器内の水を95℃以上で1分~1分30秒間程度沸騰継続するようにヒータ部25を制御するので、確実にカルキ等を除去することができる。
【0114】
制御部34は、モード設定部30により自動操作モードが設定された場合、抽出容器20内の紅茶葉を蒸らすために、抽出容器内の水を略95℃で2分~2分30秒間程度保温するようにヒータ部25を制御するので、乾燥茶葉を十分に蒸らして早い時間に茶葉からタンニンを抽出することができる。
【0115】
モード設定部30を操作することにより蒸らし時間を任意の時間に設定できるようにしたので、茶葉の種類、量、好みの味に応じた最適温度に設定することができる。
【0116】
モード設定部30を操作することにより抽出容器20内の水の温度が任意の値になるように設定可能としたので、好みに応じて最適な抽出温度に設定することができる。
【0117】
抽出容器20を加熱するためのヒータ部25に、抽出容器20内の水の温度を検出する温度センサ27を設置したので、温度センサ2 7 を直接抽出容器20内の水と接触させることなく水の温度をリアルタイムで検出することができる。
【0118】
茶葉用ネット2により抽出する茶葉としては、紅茶、ウーロン茶、緑茶などの乾燥葉を使用できるので、長期間の保存状態にあった茶葉の味を損なわずに抽出することができる。」
2 引用文献2
引用文献2は、本願の出願前である平成28年7月21日に公表された公表特許公報であり、以下の事項が記載されている。
「【0015】
・・・本明細書に開示されている発明は、コーヒー飲用者が、遠くの喫茶店に行ったり多くの時間を費やしたりする必要なしに自宅で便利に簡単にモデルコーヒー飲料の風味を再現することを可能にする。この再現性は、モデルコーヒー飲料を一連のブリューパラメータにより特性化すること及び、コーヒーを作る人々にそれらのパラメータを提供することによって実現される。」
第5 当審判断(理由1(特許法第36条第6項第2号)について)
1 「お茶」を「提供する」について
(1)当審拒絶理由
当審拒絶理由の理由1において、概略、次のア、エのとおり指摘した。
ア 請求項1の「お茶を美味しく提供する方法」の記載における「お茶」を「提供する」について、(A)商品である茶葉を消費者に提供することを示しているのか、(B)お茶を飲もうとする者に「お茶を急須で淹れる」ことで「お茶」を「提供する」ことを示しているのかが、明確でない。
明細書を参酌しても、いずれの意味であるかが特定されない。
エ 請求項1の「お茶を美味しく提供する方法」という方法発明を構成するステップが明確でなく、どのような者が使用する方法なのかが特定されるように記載されていない。特に、「茶葉提供業者もしくは試験業者」によって「一番すぐれた抽出条件」を「官能試験」によって求めることが「お茶を美味しく提供する」方法の発明を構成するステップなのか否か、「各家庭や職場や店」にいる者が「一番すぐれた抽出条件」の情報を用いて、官能試験で得られた一番美味しいお茶を再現することが、「お茶を美味しく提供する方法」の発明を構成するステップなのか否かが特定されるように記載されていない。
明細書を参酌しても、この点について「お茶を美味しく提供する方法」が、いずれの主体の動作についてのものであるかが明確でない。
(2)審判請求人の主張
当審拒絶理由における上記(1)の指摘に対し、審判請求人は、令和4年12月6日提出の意見書(以下「意見書」という。)において、「お茶」を「提供する」の記載によって、(A)商品である茶葉を消費者に提供することと(B)お茶を飲もうとする者に「お茶」を「提供する」ことの両方を示す旨を主張している。
また、審判請求人は、「茶葉提供業者もしくは試験業者」によって「一番すぐれた抽出条件」を「官能試験」によって求めること及び「再現する」ことは、いずれも「お茶」を「提供する」方法の方法発明を構成するステップであり、お茶を美味しく提供する方法の一連の流れの中に、「茶葉提供業者もしくは試験業者」と「各家庭や職場や店」にいる者が存在してそれぞれの役割を担っている旨主張している。
(3)当審の判断
請求項1の「茶葉の商品銘柄ごとに、前もって、茶葉提供業者もしくは試験業者により、湯量、茶葉量、を固定して、抽出温度、抽出時間、を変化させて抽出し官能試験により一番美味しいお茶を選び、その一番すぐれた抽出条件となる抽出温度、抽出時間、を求め、」は、「茶葉提供業者もしくは試験業者」が主体となって行うことである。
また、請求項1の「茶葉を商品として提供時に前記一番すぐれた抽出条件の情報を添付し、もしくは、商品購入後に前記一番すぐれた抽出条件の情報を提供し、」は、「茶葉提供業者」が主体となって行うことである。
一方、「各家庭や職場や店で、前記一番すぐれた抽出条件の情報を用いて、湯量、茶葉量、抽出温度、抽出時間、を再現してお茶を入れ、官能試験で得られた一番美味しいお茶を再現すること」は、茶葉提供業者から茶葉を購入した消費者が主体となって行うことである。
そうすると、茶葉提供業者等が、官能試験により一番すぐれた抽出条件を求め、商品である茶葉である「お茶」を消費者に「提供する」とともに、一番すぐれた抽出条件の情報を提供することと、茶葉を購入するとともに、一番すぐれた抽出条件の情報の提供を受けた消費者が各家庭や職場や店においてお茶を飲もうとする者に「お茶」を「提供する」こととは、協同関係にない異なる主体が行う異なる方法である。
すなわち、前者の「提供する」は、茶葉提供業者等が「茶葉を販売するとともに、一番すぐれた抽出条件を添付し、又は情報として提供する」ことを意味し、後者の「提供する」は、茶葉を購入した消費者が一番すぐれた抽出条件でお茶を抽出して「お茶を淹れる」ことを意味し、両者は、協同関係にない異なる主体が、時間と場所を異にして行う2つの方法である。
よって、当該2つの方法を「お茶を美味しく提供する方法」という一連の方法として解釈することはできず、特許請求の範囲において、2つの異なる方法について「提供する」という同じ文言で表現し、「お茶を美味しく提供する方法」として記載した本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、方法発明の記載として明確ではない。
そして、本願請求項1の記載は、茶葉を提供する第三者が、茶葉を販売するとともに、一番すぐれた抽出条件を添付し、又は情報として提供する行為が、特許請求の範囲に記載された方法に該当するのか否か、また、第三者である茶葉を購入した消費者が、一番すぐれた抽出条件でお茶を抽出してお茶を淹れるだけの行為が、特許請求の範囲に記載された方法に該当するのか否かを判断することを困難にするから、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえる。
2 「お茶の抽出には電気急須もしくは急須電磁調理器を用いる」について
(1)当審拒絶理由
当審拒絶理由の理由において、次のカのとおり指摘した。
カ 請求項1の「お茶の抽出には電気急須もしくは急須電磁調理器を用いる」の記載における「電気急須」「急須電磁調理器」の文言について、これらの文言の意味が特定されておらず、明確でない。
この点、明細書においては、「別件」の「特許出願」を引用してこれらの文言を定義しているが、別件の特許出願の記載は本件特許出願の記載でなく、明細書を参酌しても、これらの文言の意味は特定されない。
(2)当審の判断
この点、明細書には、「ここで、お茶の抽出には別件で特許出願した電気急須(特願2019-97300)、もしくは、別件で特許出願した急須電磁調理器(特願2019-97315)を用いる。」(段落【0009】)、「ここで、お茶の抽出には別件で特許出願した電気急須(特願2019-97300)、もしくは、別件で特許出願した急須電磁調理器(特願2019-97315)を用いる。電気急須、急須電磁調理器は、どちらも、急須の中でお湯を加熱するので、急須の中の抽出に用いるお湯の温度を正確にコントロールできる。また、タイマーもついていて、抽出時間も正確に計れる。」(段落【0014】)、「電気急須、急須電磁調理器にはIoT,インターネット機能がついている。もしくは、Bluetoohがついていて、スマートフォンと連携し、インターネットから情報が得られるようになっている。お茶に添付の識別番号若しくはQRコードを入力するだけで、お茶の抽出条件が自動的に得られるようにしてある。」(段落【0018】)と記載されている。
これらの明細書の記載では、「電気急須」「急須電磁調理器」は、「別件」の「特許出願」(特願2019-97300、特願2019-97315)の出願書類に記載されたものとして定義されているが、別件の特許出願の記載は本件特許出願の記載ではないから、明細書を参酌しても、「電気急須」「急須電磁調理器」の意味が特定されない。とりわけ、明細書の記載から、「電気急須もしくは急須電磁調理器」は、電気を用いてお茶を抽出するものであって、そのために、お湯の加熱が可能であり、お茶の抽出条件を踏まえたお湯の温度や抽出時間のコントロールが可能であることは理解できるものの、「別件」の「特許出願」を引用して定義されていることから、お茶の抽出条件を踏まえたお湯の温度や抽出時間のコントロールが可能であること以外の必須の属性が明確であるように記載されていない。
そして、特許請求の範囲に記載された「電気急須」「急須電磁調理器」について、本願明細書に明確な定義がないことは、第三者が、どのような属性の「電気急須」「急須電磁調理器」の使用をした場合に、特許請求の範囲に記載された方法に該当するのか否かを判断することを困難にするから、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえる。
第6 当審判断(理由2(特許法第29条第2項)について)
1 引用発明の認定
(1)引用文献1の記載(上記「第4」の「1」)によれば、次のことがいえる。
ア 段落【0001】の記載からみて、引用文献1の「茶飲料抽出装置」は、「茶葉中に含まれる有効成分を湯中に効率的に抽出して美味しい風味等を備えた茶飲料を手軽に抽出する」ためのものであり、段落【0010】の記載から、最適の抽出条件を選定して抽出作業を実施するから、引用文献1には、「茶飲料抽出装置を用いた茶葉中に含まれる有効成分を湯中に効率的に抽出して美味しい風味等を備えた茶飲料を手軽に抽出する方法」が記載されているといえる。
イ 段落【0008】の記載からみて、茶飲料抽出装置における抽出にあたって、紅茶等の茶葉を収容した茶葉収容手段を湯中に浸漬して茶成分を抽出してから、茶葉収容手段を湯中から退避させる工程が自動化されており、段落【0009】【0010】の記載からみて、茶飲料抽出装置における抽出にあたって、操作者の好みに応じて、茶葉の種類等の諸条件の違いに応じた最適な湯温や蒸らし時間による抽出工程を実施して最適の風味や濃度を備えた茶飲料を抽出できる自動操作モードによる飲料抽出又は手動操作モードによる飲料抽出を選択的に実施できる。
ウ 段落【0073】【0074】【0088】の記載によれば、上記イの自動操作モードにおいては、各種の茶葉に最適とされる条件による抽出作業を実施するための制御プログラムを制御部に格納しておき、茶葉の種類に番号が付された調整つまみを用いて茶葉の種類(産地、収穫時期等)等を入力し設定することによって、最適の抽出条件による茶飲料の抽出を自動的に実行させることができ、また、段落【0024】の記載によれば、加熱温度、蒸らし温度等の抽出条件については、茶葉の種類、茶葉の重量やサイズ、水量との関係における濃度等の各種条件の違いに応じて抽出条件を自動的に選定して抽出作業を自動的に実施するものである。
エ 段落【0056】の記載によれば、上記イの手動操作モードには、抽出容器内の水の加熱温度を手動操作により調整可能とする加熱温度設定ステップや、茶葉の蒸らし時間を手動操作により調整可能とする蒸らし時間設定ステップ等の動作ステップが含まれている。
(2)(1)を踏まえれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
茶飲料抽出装置を用いて茶葉中に含まれる有効成分を湯中に効率的に抽出して美味しい風味等を備えた茶飲料を手軽に抽出する方法であって、
この茶飲料抽出装置は、紅茶等の茶葉を収容した茶葉収容手段を湯中に浸漬して茶成分を抽出してから、茶葉収容手段を湯中から退避させる工程を自動化し、操作者の好みに応じて、茶葉の種類等の諸条件の違いに応じた最適な湯温や蒸らし時間による抽出工程を実施して最適の風味や濃度を備えた茶飲料を抽出できる自動操作モードによる飲料抽出又は手動操作モードによる飲料抽出を選択的に実施できるものであり、
自動操作モードにおいては、各種の茶葉に最適とされる条件による抽出作業を実施するための制御プログラムを制御部に格納しておき、茶葉の種類に番号が付された調整つまみを用いて茶葉の種類(産地、収穫時期等)等を入力し設定することによって、最適の抽出条件による茶飲料の抽出を自動的に実行させることができ、加熱温度、蒸らし温度等の抽出条件については、茶葉の種類、茶葉の重量やサイズ、水量との関係における濃度等の各種条件の違いに応じて抽出条件を自動的に選定して抽出作業を自動的に実施し、
手動操作モードには、抽出容器内の水の加熱温度を手動操作により調整可能とする加熱温度設定ステップや、茶葉の蒸らし時間を手動操作により調整可能とする蒸らし時間設定ステップ等の動作ステップが含まれている、
方法。
2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明では、制御プログラムを用いた自動操作モードのために、各種の茶葉についての茶葉の種類等の諸条件の違いに応じた最適な湯温や蒸らし時間(本願発明の「抽出時間」に相当)による抽出工程の実施による最適の風味や濃度を備えた茶飲料の抽出のための最適の抽出条件を何らかの試験によって予め求めることを前提としているところ、引用発明の最適な抽出条件となる「湯温」と「蒸らし時間」は、本願発明の「一番すぐれた抽出条件」となる「抽出温度」と「抽出時間」に相当し、このような抽出条件を求めるための試験を行う者は本願発明の「茶葉提供業者もしくは試験業者」に相当するといえる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、いずれも、「前もって、茶葉提供業者もしくは試験業者により、お茶の一番すぐれた抽出条件となる抽出温度、抽出時間、を求める」ものである点で共通するといえる。
(2)引用発明では、上記(1)の一番すぐれた抽出条件は、商品である茶葉の提供時に商品に添付されたり商品の購入後に提供されるのではなく制御プログラムとして提供されており、このことから、本願発明と引用発明とは、いずれも、「前記一番すぐれた抽出条件の情報を提供する」点で、共通するといえる。
(3)引用発明では、各家庭や職場や店に設置された茶飲料抽出装置を用いて美味しい風味等を備えた茶飲料を手軽に抽出するにあたって制御プログラムとして提供された最適の抽出条件を用いており、また、最適の風味や濃度を備えた茶飲料の抽出のために抽出温度と抽出時間の抽出条件においては、茶葉の種類、茶葉の重量やサイズ、水量との関係における濃度等の各種条件の違いに応じて抽出条件を自動的に選定するから、本願発明と引用発明とは、いずれも、「各家庭や職場や店で、一番すぐれた抽出条件の情報を用いて、湯量、茶葉量、抽出温度、抽出時間、を再現してお茶を入れることにより、お茶を美味しく提供する」点で、共通するといえる。
(4)引用発明で用いる「茶飲料抽出装置」は、温度調整機能を有し、抽出温度と抽出時間を設定可能なものであるから、引用発明の「茶飲料抽出装置」と本願発明の「電気急須もしくは急須電磁調理器」とは、いずれも、「茶飲料抽出器」である点で共通する。
(5)よって、本願発明と引用発明とは、次の点で一致するといえる。
<一致点>
前もって、茶葉提供業者もしくは試験業者により、お茶の一番すぐれた抽出条件となる抽出温度、抽出時間、を求め、
前記一番すぐれた抽出条件の情報を提供し、
各家庭や職場や店で、前記一番すぐれた抽出条件の情報を用いて、湯量、茶葉量、抽出温度、抽出時間、を再現してお茶を入れることにより、
お茶を美味しく提供する方法。
ここで、お茶の抽出には茶飲料抽出器を用いる。
(6)そして、両者は、次の相違点1~相違点4で相違する。
<相違点>
(相違点1)
本願発明では、一番すぐれた抽出条件となる抽出温度、抽出条件を求めるにあたって「茶葉の商品銘柄ごと」に「湯量、茶葉量、を固定して、抽出温度、抽出時間、を変化させて抽出し官能試験により一番美味しいお茶を選」ぶことによるのに対し、引用発明では、一番すぐれた抽出条件をどのように求めるかが明らかでない点
(相違点2)
本願発明では、「茶葉を商品として提供時に前記一番すぐれた抽出条件の情報を添付し、もしくは、商品購入後に前記一番すぐれた抽出条件の情報を提供」することから、一番すぐれた抽出条件の情報を提供するのが「(茶葉である)商品」の「購入後」であるのに対し、引用発明では、一番すぐれた抽出条件の情報を提供するのが「(茶葉である)商品」の「購入後」ではなく、茶飲料抽出装置の制御プログラムとして提供される点
(相違点3)
本願発明では「お茶を美味しく提供する」にあたって「官能試験で得られた一番美味しいお茶」を「再現する」のに対し、引用発明では「官能試験で得られた一番美味しいお茶」を「再現する」のか否かが明らかでない点
(相違点4)
お茶の抽出に用いる茶飲料抽出器が、本願発明では、「電気急須もしくは急須電磁調理器」であるのに対して、引用発明では「茶飲料抽出装置」である点
3 相違点の判断
上記相違点について、判断する。
(1)相違点1及び相違点3について
相違点1と相違点3は、関連しているので、まとめて検討する。
美味しいお茶を再現するための抽出条件を求めるための試験として官能試験を行うことを含め、一般に食品や飲料についての試験として官能試験を行うことは常識であり、また、茶葉の種類に応じて美味しいお茶を入れるための抽出温度及び抽出時間が異なることも、引用文献1の段落【0085】、【0086】にもアッサム系の紅茶とダージリン系の紅茶では、蒸らし時間が異なることが記載されているように常識であるから、美味しいお茶を再現するための抽出条件を求めるための官能試験にあたって、茶葉の商品銘柄ごとに、湯量及び茶葉量を固定し抽出温度及び抽出時間を変化させて抽出されたものの中から一番美味しいお茶を選ぶという試験方法も当業者が普通に想定できる範囲のものであって、官能試験において一般的に行われている事項であるといえる。
また、抽出条件が分かれば、その抽出条件を用いてお茶を淹れることは普通に行われる事項である。
このことを踏まえれば、相違点1及び相違点3は、当業者が適宜なし得たことである。
(2)相違点2及び相違点4について
相違点2と相違点4は、関連しているので、まとめて検討する。
引用発明の茶飲料抽出装置は、茶葉の種類等を示す調整つまみ等(引用文献1では「1.ダージリン系 2.アッサム系」として茶葉の種類に番号が付された調節つまみが例示されている。)を用いて入力された茶葉の種類等を踏まえた制御プログラムを用いた自動操作モードのみならず、抽出容器内の水の加熱温度を手動操作により調整可能とする加熱温度設定ステップや茶葉の蒸らし時間を手動操作により調整可能とする蒸らし時間設定ステップ等の動作ステップが含まれている手動操作モードによる飲料抽出を実施できるものであり、制御プログラムとして提供されていない加熱温度(抽出温度)及び蒸らし時間(抽出時間)に係る条件を、茶飲料を抽出しようとする者が設定できるものとなっている。このことから、引用発明の茶飲料抽出装置は、お茶の抽出のために用いられるものであって、その際、お茶の抽出条件が入力され、入力された抽出条件を踏まえたお湯の温度や抽出時間のコントロールが可能なものであることから、実質的に本願発明の「電気急須もしくは急須電磁調理器」に相当するといえる。
そして、一般に、食品や飲料の材料を用いて美味しく食品や飲料をつくるための情報を、材料とともにあるいは材料の提供の前後に、提供することは、通常行われていることであり(上記「第4」の2に示した引用文献2の記載にある、コーヒーを作る人々にモデルコーヒー飲料の風味を再現するためのブリューパラメータを提供することも、この例である。)、引用発明の制御プログラムを用いた自動操作モードも、このことを前提として美味しいお茶を入れるための情報を含む制御プログラムを用いることで、手動操作モードに比して自動化したものといえる。
このことを踏まえれば、自動操作モードの対象とされておらず制御プログラムとして提供されていない茶葉の種類についても美味しいお茶を入れるために手動操作モードで設定できるよう、抽出温度と抽出時間の条件を商品とともにあるいは商品販売後に提供するようにして、引用発明においても、「茶葉を商品として提供時に前記一番すぐれた抽出条件の情報を添付し、もしくは、商品購入後に前記一番すぐれた抽出条件の情報を提供」することは、当業者が適宜なし得たことである。
(3)効果について、小括
本願発明による効果(本願明細書の段落【0012】)は、要するに、官能試験によって求められた、一番すぐれた抽出条件となる抽出温度及び抽出時間を踏まえ、湯量、茶葉量、抽出温度、抽出時間を正確に再現したお茶を家庭で入れることができることであり、このような効果は、引用文献1の段落【0006】の「良好な風味、濃度を備えた茶飲料を抽出するためには、使用する茶葉の種類、サイズ、茶葉量等の条件の違いに応じて、湯の量及び温度、蒸らし時間等を適切に管理、調整することが好ましい」との記載から当業者が予測する範囲のものであって、格別なものではない。
以上によれば、本願発明は、引用発明と一般的な常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 審判請求人の主張について
審判請求人は、意見書において縷々主張するが、次のとおり、いずれの主張も採用できない。
(1)審判請求人は、引用文献1には、「抽出工程の実施による最適の風味や濃度を備えた茶飲料の抽出のための最適の抽出条件を何らかの試験によって予め求めることを前提」としていること、「前もって、茶葉提供業者もしくは試験業者により、お茶の一番すぐれた抽出条件となる抽出温度、抽出時間、を求める」ことについて、記載がない旨を主張している(意見書15頁15~30頁、16頁18~30行等)。
しかしながら、当審では、上記2(6)及び上記3(1)に示したように、一番すぐれた抽出条件となる抽出温度、抽出条件をどのように求めるかについて、本願発明が「官能試験」によるのに対し引用発明では明らかでないことを相違点1として認定判断している。そして、上記1(1)ウのとおり、引用文献1には、最適の抽出条件による茶飲料の抽出を自動的に実行させるための制御プログラムを制御部に格納する旨の記載があり、このことから、「抽出工程の実施による最適の風味や濃度を備えた茶飲料の抽出」のための「最適の抽出条件」を何らかの試験によって予め求め、これを踏まえた制御プログラムを格納していることが明らかである。
(2)審判請求人は、引用文献1に記載されているのは、茶飲料抽出装置の物の発明であって方法の発明でない旨(「請求人の考える相違点7」についての主張)を主張している。
しかしながら、上記1(1)アのとおり、引用文献1には、茶飲料抽出装置を用いた茶葉中に含まれる有効成分を湯中に効率的に抽出して美味しい風味等を備えた茶飲料を手軽に抽出する方法が記載されているといえる。
(3)審判請求人は、引用発明の茶葉飲料抽出装置には、上下動するカゴが付いており、カゴがお湯に浸かることにより、湯の温度が下がり、本願発明と異なる旨(「請求人の考える相違点1」についての主張)を主張している。
しかしながら、本願請求項1には「電子急須もしくは急須電磁調理器」が上下動するカゴによりお茶を抽出するものではないことは、請求項1において発明特定事項とされていないし、のみならず、「第5」の「2」において上記した明細書の記載においても示されていない。
(4)審判請求人は、本願発明が日本茶の抽出に関するものであり、引用発明は紅茶の抽出に関するものである旨(「請求人の考える相違点6」についての主張)を主張している。
しかしながら、本願請求項1の記載からみて「茶葉」が日本茶であることは発明特定事項とされておらず、他方、引用発明における「茶葉の種類等の諸条件の違いに応じた最適な湯温や蒸らし時間」を観念できる「茶葉」は紅茶に限られず、引用文献1の段落【0118】には、茶葉は緑茶でもよいことが示唆されているから、日本茶の抽出か紅茶の抽出かの点は相違点にならない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-011375