特許拒絶査定不服審判
2023-010833
支払処理
- 審判番号
- 2023-010833
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-522273外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月29日
- 審決日
- 2024年07月08日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジーピー ネットワーク アジア ピーティーイー. リミテッド
- 【請求人代理人】江部 武史
- 分類
- P18 .537-WZ (G06Q) / P18 .121-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-522273「支払処理」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日国際公開、WO2019/009803、令和 2年10月 1日国内公表、特表2020-529089〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年) 7月 2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年(平成29年) 7月 3日、インド)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 2月13日 :翻訳文、特許協力条約第34条補正の翻訳文の提出
令和 3年 7月 1日 :手続補正書、上申書の提出
令和 4年 8月24日付け:拒絶理由通知書
令和 4年11月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 3月13日付け:拒絶査定
令和 5年 6月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 6年 2月14日付け:拒絶理由通知書
その後、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。
第2 本願発明について
本願の請求項1~14に係る発明は、令和5年6月29日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
商業者の支払端末を操作する方法であって、
前記支払端末のプロセッサーによって、アクティブ化入力を受信する工程と、
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記アクティブ化入力に応答して、第1の無線信号および第2の無線信号を同時に出力する工程であって、
前記第1の無線信号は、NFC(近距離通信)対応カードまたはNFCを用いるスマートフォンと通信するためのものであり、前記第2の無線信号は、BLE(ブルートゥースローエナジー)対応スマートフォンと通信するためのものであり、
前記第1の無線信号および前記第2の無線信号は、互いに異なる第1のプロトコルおよび第2のプロトコルにそれぞれ対応するフォーマットにされている、前記出力する工程と、
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記第1の無線信号および前記第2の無線信号のいずれか一方に対する返信を受信する工程と、
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記返信を受信する工程に応答して、前記第1の無線信号および前記第2の無線信号の他方の出力を終了する工程と、を含み、
前記支払端末は、前記第2の無線信号に対する前記返信に応答して、前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間でのみ通信可能となるように、前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間で排他的な通信チャンネルを確立するよう構成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記NFC対応カードまたは前記NFCを用いるスマートフォンを認証するために前記返信を処理し、これにより、通信チャンネルを確立する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記NFC対応カード、前記NFCを用いるスマートフォン、または前記BLE対応スマートフォンを認証するために前記返信を処理する工程をさらに含み、
前記処理する工程の後に、前記終了する工程が実行される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記通信チャンネルから、ユーザーを示すデータを受信する工程と、
前記支払端末の前記プロセッサーによって、入力として、取引額を示すデータを受信する工程と、
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記ユーザーを示す前記データおよび前記取引額を示す前記データを、サーバーに送信する工程と、をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記通信チャンネルから、現在の取引を特定するためのワンタイム検証子を示すデータを受信する工程と、
前記ワンタイム検証子を示す前記データを、前記サーバーに送信する工程と、をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記支払端末の前記プロセッサーによって、前記通信チャンネルを介して、新たなワンタイム検証子を出力する工程をさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記支払端末の前記プロセッサーによって、応答された前記第1の無線信号および前記第2の無線信号のいずれかを示す情報をサーバーに通信する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
処理デバイスおよび命令を保持している記憶手段を有し、外部デバイスと無線通信するための商業者の支払端末であって、
前記命令は、前記処理デバイスを制御し、前記支払端末に、
アクティブ化入力に応答して、NFC(近距離通信)対応カードまたはNFCを用いるスマートフォンと通信するための第1の無線信号およびBLE(ブルートゥースローエナジー)対応スマートフォンと通信するための第2の無線信号を同時に出力させ、
前記処理デバイスは、前記第1の無線信号および前記第2の無線信号のいずれか一方に対する返信の受信に応答して、前記第1の無線信号および前記第2の無線信号の他方の出力を終了させる、よう構成されており、
前記第1の無線信号および前記第2の無線信号は、互いに異なる第1のプロトコルおよび第2のプロトコルにそれぞれ対応するフォーマットにされており、
前記支払端末は、前記第2の無線信号に対する前記返信に応答して、前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間でのみ通信可能となるように、前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間で排他的な通信チャンネルを確立するよう構成されていることを特徴とする支払端末。
【請求項9】
前記アクティブ化入力を提供するためのキーパッドと、前記処理デバイスの制御下において情報を表示するディスプレイと、サーバーと通信するための出力デバイスと、をさらに有する請求項8に記載の支払端末。
【請求項10】
前記第1の無線信号を出力するよう構成された第1の無線デバイスと、前記第2の無線信号を出力するよう構成された第2の無線デバイスと、をさらに有し、
前記第1の無線デバイスおよび前記第2の無線デバイスの双方は、前記処理デバイスの制御下にある請求項8に記載の支払端末。
【請求項11】
セキュリティ鍵用の記憶手段を含むセキュリティデバイスをさらに有し、
前記セキュリティデバイスは、前記支払端末による使用のために、前記セキュリティ鍵を用いて、データを暗号化または復号化するよう構成されている請求項8に記載の支払端末。
【請求項12】
前記第1の無線信号を出力するよう構成されたパーソナルエリアネットワークデバイスを有している請求項8に記載の支払端末。
【請求項13】
前記第2の無線信号を出力するよう構成された近距離通信デバイスを有している請求項8に記載の支払端末。
【請求項14】
プロセッサーによって実行された際に、前記プロセッサーに、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法を実行させる、コンピュータープログラム、コンピュータープログラム製品、または、その命令を保存する非一時的保存媒体。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和6年2月14日付け拒絶理由通知書により通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、以下の(1)~(4)の点で、請求項1~14に係る発明は明確とはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。
(1)請求項1に記載された「排他的な通信チャンネル」の意味が不明であるから、請求項1に係る発明は明確であるとはいえず、また、請求項1を引用する請求項2~7、14、請求項1と同様の記載がある請求項8、請求項8を引用する請求項9~13の各請求項に係る発明も、請求項1に係る発明と同様、明確であるとはいえない。
(2)請求項12に記載された「前記第1の無線信号」は、請求項12が引用する請求項8の記載と整合しておらず不明である。
(3)請求項13に記載された「前記第2の無線信号」は、請求項13が引用する請求項8の記載と整合しておらず不明である。
(4)請求項14に記載の「コンピュータープログラム製品」は、どのようなものを意味するものであるのか不明確である。
第4 当審における判断
1 特許法第36条第6項第2号について
上記第1のとおり、当審拒絶理由に対し、請求人からは指定の期間内に何らの応答もなかったため、上記第3に概略を示した当審拒絶理由に関しては、依然として解消していないものであるが、以下に、当審拒絶理由の妥当性について補足する。
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うなど第三者の利益が不当に害されることがあり得ることから、特許を受けようとする発明が明確であることを求めるものである。そして、その充足性の判断は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から行うべきものと解される。
2 判断
(1)特許請求の範囲の請求項1について
請求項1の記載は、上記第2の【請求項1】のとおりであるところ、「前記支払端末は、前記第2の無線信号に対する前記返信に応答して、前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間でのみ通信可能となるように、前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間で排他的な通信チャンネルを確立するよう構成されている」(下線は当審で付した。以下同様。)という記載は、「排他的な通信チャンネル」が如何なる意味で「排他的」であるのか不明である。
すなわち、「排他的な」という表現が、単に「前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間でのみ通信可能」であることを意味するために用いられているのか、それとも、「前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間」で確立される「通信チャンネル」について、「排他的」となるような何らかの特徴を有することを意味するのかが、技術的に明確に特定できない。
この点に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、次のような記載がある。
「【0125】
端末は、2つの電話と同時にペアリングできないように構成されている。1つの電話が端末とペアリングまたは接続されると、該電話と端末との間の通信チャンネルが排他的なものとなる。すなわち、それ以外の電話は、端末とペアリングまたは通信することができない。端末は、該電話に対して効果的にロックされ、アプリケーションによるか、または、支払端末を物理的にリセットするかのいずれかによってのみロック解除(電話からの接続が解除)され得る。」
「【0129】
ユーザーは、信号強度が第1のしきい値を超えるように、携帯電話を支払端末の近くに移動させ、図3Eの工程31において、スマートフォン104bは、ペアリングのために、リクエストを支払端末102に送信する。」
「【0139】
図3Eの工程32において、支払端末102は、ペアリングのためのリクエストを受信する。支払端末102は、リクエストを受信すると、既知のプロトコルを用いて、スマートフォン104bと連携(co-ordinate)し、ペアリングを成功させるか、リクエストを拒絶するかする。ペアリングが成功した場合、支払端末102は、第1の無線通信モジュール214(BLEモジュール214)を用いて、外部エンティティー104との通信チャンネル(BLEチャンネル)を確立する。よって、確立された通信チャンネルは、BLEチャンネルと称することができる。
【0140】
通信チャンネルが確立される(ペアリングが実行される)と、スマートフォンは、スマートフォン104bと支払端末102のパーソナルエリアネットワークモジュール214との間の信号強度が第1のしきい値を下回ったとしても、支払端末102のパーソナルエリアネットワーク102との通信を維持し続ける。実際、ユーザーは、スマートフォン104bを支払端末102に近づけ、スマートフォン104bに、支払端末102とのペアリングを実行させるであろう。その後、ユーザーは、スマートフォン104bを引き戻すであろうが、通信チャンネルは維持されることとなるため、ユーザー体験を向上させ、取引処理をより信頼性の高いものとすることができる。
【0141】
実施形態の1つにおいて、支払端末102またはスマートフォン104bの少なくとも1つは、スマートフォン104bと支払端末102のパーソナルエリアネットワークモジュール214との間のチャンネル内の信号強度が第2のしきい値を下回った場合に、確立された通信チャンネルを終了するよう構成されている。第2のしきい値は制御可能であってもよい。第2のしきい値は、遠隔に再設定可能またはデバイスで再設定可能であってもよい。」
発明の詳細な説明において、「排他的」という表現は段落【0125】のみに記載されており、段落【0125】には、「1つの電話が端末とペアリングまたは接続されると、該電話と端末との間の通信チャンネルが排他的なものとな」るとの記載があるものの、この「排他的なものとな」るとは、「それ以外の電話は、端末とペアリングまたは通信することができない」旨を示すものと明示的に説明されている。よって、段落【0125】においては、「前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間でのみ通信可能となるように、前記支払端末と前記BLE対応スマートフォンとの間で通信チャンネルを確立する」ことが記載されているにとどまり、この「通信チャンネル」として「排他的な通信チャンネル」を確立することの説明はなされていない。
また、段落【0139】の記載によれば、「支払端末102」が「ペアリング」を成功させる際は、「既知のプロトコル」を用いて(リクエストの送信元である)「スマートフォン104b」と「連携(co-ordinate)し」、「ペアリングが成功した場合、支払端末102は、第1の無線通信モジュール214(BLEモジュール214)を用いて、外部エンティティー104との通信チャンネル(BLEチャンネル)を確立する」ことが記載されているところ、「支払端末102」と「スマートフォン104b」の間で確立される「通信チャンネル」は、一般的な「BLEチャンネル」であり、両者の連携に用いるプロトコルも「既知のプロトコル」と記載されているにとどまる。よって、段落【0139】においても、「排他的な通信チャンネル」と「BLEチャンネル」や「既知のプロトコル」との異同が説明されていない。
してみると、発明の詳細な説明には、支払端末とBLE対応スマートフォンの間でペアリングが実行されると、それ以外の端末に対してペアリングまたは通信することができないことが記載されているのみで、例えば、ペアリングが実行された支払端末とスマートフォン以外の他の端末によってデータが傍受されることを防ぐための特徴に関しては、発明の詳細な説明に技術的な説明がされていないから、請求項1に記載の「排他的な」という表現が、如何なる技術的な特徴を意図して用いられたのか明確に特定できないし、本件出願時の技術常識を鑑みても、「排他的な通信チャンネル」が如何なるものを意味するのか技術的に明確に特定できない。
そして、現在の請求項1の記載のまま特許となった場合、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「BLE対応スマートフォン」との間で「BLEチャンネル」を確立することでこれとのみ通信可能となった「支払端末」に係る「商業者の支払端末を操作する方法」が技術的範囲に含まれるか否かが明らかでなく、そのため、請求項1に係る発明の独占権が及ぶ範囲が一義的に定まらず、独占権の予測可能性を第三者から奪うものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1に記載された「排他的な通信チャンネル」は、本願明細書の記載や、本件出願当時の当業者の技術常識を含めて検討しても不明確であるから、請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。
(2)特許請求の範囲の請求項2~14について
請求項2~14の記載は、上記第2の【請求項2】~【請求項14】のとおりであるところ、請求項2~7、14は請求項1を引用する請求項であり、これらの請求項に係る発明の「排他的な通信チャンネル」についても、如何なる意味で「排他的」であるのか不明である。
また、請求項8に係る発明は、請求項1に係る発明の「支払端末を操作する方法」を、「支払端末」に係る発明として表現したものであり、上記(1)で示した【請求項1】の記載と同じ「排他的な通信チャンネル」の記載を含むものであるから、上記(1)と同様の理由で不明であるし、請求項9~13は請求項8を引用する請求項であり、これらの請求項に係る発明の「排他的な通信チャンネル」についても、如何なる意味で「排他的」であるのか不明である。
さらに、請求項12に記載の「前記第1の無線信号」、請求項13に記載の「前記第2の無線信号」、請求項14に記載の「コンピュータープログラム製品」に関しても、明確であるとはいえない。
したがって、請求項2~14に係る発明は明確であるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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