特許拒絶査定不服審判
2019-009729
電気生理学システムのためのフィルタ回路
- 審判番号
- 2019-009729
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-533413外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月23日
- 審決日
- 2020年04月21日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-533413「電気生理学システムのためのフィルタ回路」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月 7日国際公開、WO2016/109207、平成30年 1月25日国内公表、特表2018-501874〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月16日(パリ条約による優先権主張 2014年12月31日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年7月6日付けで拒絶理由が通知され、同年10月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年3月25日付けで拒絶査定されたところ、令和元年7月23日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。
第2 令和元年7月23日の手続補正についての補正却下の決定
令和元年7月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、そのうち請求項1について、本件補正前(平成30年10月16日提出の手続補正書)の
「アブレーション発生器であって、
患者の組織に対してアブレーション処置を実行するのに適した周波数を有するRFアブレーション信号を生成するための回路と、
患者の組織のそれぞれのモニタリング信号を受信するための入力ポートと、
前記モニタリング信号を別のデバイスに供給するための出力ポートと、
前記入力ポートと前記出力ポートの間に配置されたフィルタリング回路と、を備え、
前記フィルタリング回路は、前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成されており、
前記フィルタリング回路は、複数個のLCトラップを備え、
前記複数個のLCトラップのうちの特定のLCトラップは、前記複数の異なる信号のうちの特定の信号の周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成されており、
各LCトラップは、コンデンサと並列なインダクタを備え、
前記複数個のLCトラップは、直列に配置されている、
アブレーション発生器。」(本件補正前の請求項1。以下「本願発明」という。)
を、
「アブレーション発生器であって、
患者の組織に対してアブレーション処置を実行するのに適した周波数を有するRFアブレーション信号を生成するための回路と、
患者の組織のそれぞれのモニタリング信号を受信するための入力ポートと、
前記モニタリング信号を別のデバイスに供給するための出力ポートと、
前記入力ポートと前記出力ポートの間に配置されたフィルタリング回路と、を備え、
前記フィルタリング回路は、前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成されており、
前記フィルタリング回路は、複数個のLCトラップを備え、
前記複数個のLCトラップのうちの特定のLCトラップは、前記複数の異なる信号のうちの特定の信号の周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成されており、
各LCトラップは、コンデンサと並列なインダクタを備え、
前記複数個のLCトラップは、直列に配置されており、
前記複数個のLCトラップのうちの第1群は、約6kHzと約8kHzの間の第1の同じピーク周波数に調整され、
前記複数個のLCトラップのうちの第2群は、約6kHzと約7kHzの間の第2の同じピーク周波数に調整される、
アブレーション発生器。」(本件補正後の請求項1。以下「本件補正発明」という。)
と補正することを含むものである。
(下線部は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
2 補正の適否
請求項1についての補正は、本願発明を特定するために必要な事項である「前記複数個のLCトラップ」について、「前記複数個のLCトラップのうちの第1群は、約6kHzと約8kHzの間の第1の同じピーク周波数に調整され」、「前記複数個のLCトラップのうちの第2群は、約6kHzと約7kHzの間の第2の同じピーク周波数に調整される」ことを限定することにより、請求項1の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。
(2)特許法第29条第2項について
ア 引用文献、引用発明
(ア)引用文献1
a 引用文献1の記載
原査定で引用された、引用文献1(米国特許第2014/0358038号明細書)には、次の記載がある。
(引1a)「[0026] Referring now to the drawings wherein like reference numerals are used to identify identical or similar components in the various views, FIG. 1 is a schematic view of an embodiment of a system 10 for automatically detecting a myocardial barotrauma (i.e., tissue pop) event during an ablation procedure. The system 10 includes an electronic control unit (ECU) 12 with an electronic processor 14 and a computer-readable memory 16 which itself includes ablation logic 18, detection logic 20, and data storage memory 22. The system 10 further includes an ablation generator 24, an ablation catheter 26, signal processing hardware 28, an electro-acoustic transducer 30, a user interface 32, and a barotrauma event notification 34.
(当審訳:ここで、様々な図において同一のまたは同様の構成要素を同じ参照番号を用いて同定している図面を参照すると、図1はアブレーション手技中に心筋の気圧性外傷(すなわち、組織ポップ)事象を自動的に検出するためのシステム10のある実施形態の概略図である。システム10は、電子プロセッサ14と、それ自身がアブレーション・ロジック18、検出ロジック20およびデータ保存メモリ22を含んでいるコンピュータ読み取り可能なメモリ16と、を備えた電子制御ユニット(ECU)12を含む。システム10はさらに、アブレーション発生機24と、アブレーション・カテーテル26と、信号処理ハードウェア28と、電気音響式トランスデューサ30と、ユーザ・インターフェース32と、気圧性外傷事象通知34と、を含む。)
[0027] The ablation catheter 26 is provided for treatment of a tissue in a patient such as, for example, cardiac tissue. The catheter 26 ablates tissue through the controlled application of RF energy or power through one or more electrodes. The ablation catheter 26 can be a conventional ablation device known in the art.
(当審訳:アブレーション・カテーテル26は、たとえば心臓組織など患者内の組織の治療のために提供されている。カテーテル26は、1つまたは複数の電極を通じてRFエネルギーまたはパワーを制御式に印加することを通じて組織をアブレーションする。アブレーション・カテーテル26は、当技術分野で周知の従来式のアブレーション・デバイスとすることが可能である。)
[0028] The ablation generator 24 generates,controls, and delivers RF energy for the ablation catheter 26. The generator 24includes an RF ablation signal source configured to generate an ablation signalthat is output across a pair of source connectors: a positive polarityconnector which can connect to an electrode on the catheter 26; and a negativepolarity connector which may be electrically connected by conductors or leadwires to patch electrodes on the patient's body (not shown). The generator 24is configured to generate an ablation signal at a predetermined frequency inaccordance with one or more user specified parameters (e.g., power, time, etc.)and under the control of various feedback sensing and control circuitry asknown in the art. For example, the ablation signal can have a frequency withina range of about 1 kHz to over 500 kHz or, more specifically, between about 450kHz and about 500 kHz. In an embodiment, the ablation signal has a frequency ofabout 485 kHz. RF ablation embodiments may and typically will include otherstructure(s) not shown in FIG. 1, such as one or more body surface electrodes(skin patches) for application onto the body of a patient (e.g., an RF dispersiveindifferent electrode/patch, shown diagrammatically in FIG. 5), and anirrigation fluid source (gravity feed or pump). RF ablation generator 24 maycomprise a commercially available unit sold under the model number IBI-1500T RFCardiac Ablation Generator, available from St. Jude Medical, Inc.
(当審訳:アブレーション発生機24は、アブレーション・カテーテル26に対するRFエネルギーの発生、制御および送達を行っている。発生機24は、1対のソース・コネクタの両端に出力されるアブレーション信号を発生させるように構成されたRFアブレーション信号ソースと、カテーテル26上の電極に対して接続可能な正極性コネクタと、患者の身体(図示せず)上のパッチ電極に対して導体またはリード・ワイヤによって電気的に接続し得る負極性コネクタと、を含む。発生機24は、1つまたは複数のユーザ指定のパラメータ(たとえば、パワー、時間、その他)に従うとともに様々なフィードバック検知および制御回路からの制御下で、当技術分野で周知のような所定の周波数でアブレーション信号を発生させるように構成されている。たとえばこのアブレーション信号は、約1kHzから500kHz超の範囲内、またより具体的には約450kHzから約500kHzの間の範囲内の周波数を有することが可能である。ある実施形態ではそのアブレーション信号は、約485kHzの周波数を有する。RFアブレーション実施形態には、患者の身体上に貼り付けるための1つまたは複数の身体表面電極(皮膚パッチ)(たとえば、図5に図で示したようなRF分散性不関電極/パッチ)や潅注流体ソース(重力フィードまたはポンプ)など、図1には示していないその他の構造(複数可)が含まれることがあり、また含まれるのが典型的である。RFアブレーション発生機24は、St.Jude Medical,Inc.からIBI-1500T RF Cardiac Ablation Generatorの型番で販売されている市販のユニットを備えることがある。)
[0029] The electro-acoustic transducer 30 is provided to translate acoustic activity inside the patient's body into an electrical signal (either digital or analog) that can be monitored for an indication of tissue pop. In various embodiments, the transducer 30 can be configured to be coupled to the exterior of the patient's body, advantageously allowing for non-invasive tissue pop detection. The transducer 30 can be part of any apparatus fit for this purpose such as, for example, a digital stethoscope or analog stethoscope. If digital, the transducer 30 should have a sufficiently high sampling rate to detect tissue pop such as, for example only, about one thousand hertz or more. In an embodiment, the transducer 30 may be a part of a digital stethoscope manufactured by Thinklabs Medical LLC of Centennial, Colo. The electro-acoustic transducer 30 can be incorporated into another apparatus or structure that is coupled to the patient's body.
(当審訳:電気音響式トランスデューサ30は、患者の身体内部の音響的活動を、組織ポップの兆候の有無を監視することが可能な電気信号(ディジタル式かアナログ式のいずれか)に変換するために設けられる。様々な実施形態ではそのトランスデューサ30は、非侵襲的な組織ポップ検出に有利に対応するように患者身体の外部に結合させるように構成することが可能である。トランスデューサ30は、たとえばディジタル式聴診器またはアナログ式聴診器などこの目的に適合した任意の装置の一部とすることが可能である。ディジタル式の場合にそのトランスデューサ30は、単に一例として約1000ヘルツ以上など組織ポップを検出するように十分に高いサンプリング・レートを有させるべきである。ある実施形態ではそのトランスデューサ30は、Thinklabs Medical LLC(Centennial,Colorado)によって製造されているディジタル式聴診器の一部とすることがある。電気音響式トランスデューサ30は、患者の身体に結合された別の装置または構造内に組み込むことが可能である。たとえばトランスデューサ30は、医用デバイス位置決めおよびナビゲーション・システムと一緒に使用するためにパッチの一部とすることが可能である。こうしたパッチの例示的な実施形態の1つを図6に示している。別の実施形態ではそのトランスデューサ30は、図5に図で示したようなアブレーション分散性パッチ内に組み込むことが可能である。さらに別の実施形態ではそのトランスデューサ30は、単に一例として専用パッチなど患者の身体上に配置させた機械的に独立した装置とすることが可能である。さらに別の実施形態ではそのトランスデューサ30は、患者の身体の内部に配置された細長い医用デバイスと結合させるように構成することがある。こうした実施形態についてはさらに図3に関連して説明することにする。)
[0030] Referring to FIG. 1, the electro-acoustic transducer 30 should be constructed, modified, and/or implemented such that it is viable for use in an operating room environment. For example, it should be capable of withstanding a defibrillation shock to the patient without becoming disabled and without transmitting the voltage from the shock to the ECU 12 or other electrical equipment.
(当審訳:図1を参照すると、電気音響式トランスデューサ30は手術室環境で使用できるようにして構築、修正および/または実装させるべきである。たとえば患者に対する除細動ショックに対して、無効となることなくかつそのショックからの電圧がECU12や別の電気式装置に伝わらないようにして耐えられるようにすべきである。)
[0031] The signal processing hardware 28 may be electrically coupled with the transducer 30 and with the ECU 12 and may be configured to perform one or more of a variety of signal processing functions on the signal generated by the transducer 30. The hardware 28 can receive a first signal generated by the transducer 30, perform at least one processing function on the first signal to create a second signal, and provide the second signal to the ECU 12. Processing functions can include, e.g., low-pass filtering, band-pass filtering, attenuation, and/or amplification. For example, the hardware 28 can low-pass filter the signal to eliminate frequencies of the ablation generator 24 and other components in the operating environment, such as excitation signals from a medical device mapping, positioning, and navigation system. The hardware can also high-pass filter the signal to eliminate frequencies of normal biological activity. An exemplary embodiment of the hardware 28 can include a tuned inductor-capacitor trap.
(当審訳:信号処理ハードウェア28はトランスデューサ30ならびにECU12と電気的に結合させることがあり、またトランスデューサ30が発生させた信号に対して多種多様な信号処理機能のうちの1つまたは幾つかを実行するように構成されることがある。ハードウェア28はトランスデューサ30が発生させた第1の信号を受け取り、この第1の信号に対して少なくとも1つの処理機能を実行して第2の信号を生成し、かつこの第2の信号をECU12に提供することが可能である。処理機能にはたとえば、低域通過フィルタ処理、帯域通過フィルタ処理、減衰および/または増幅を含むことが可能である。たとえば、ハードウェア28は、アブレーション発生機24や、その他医用デバイス・マッピング、ポジショニングおよびナビゲーション・システムからの励起信号などの周波数を排除するために、信号を低域通過フィルタ処理することが可能である。このハードウェアはまた、正常な生物学的活動の周波数を排除するために信号を高域通過フィルタ処理することが可能である。ハードウェア28の例示的な実施形態では、同調インダクタ-コンデンサ・トラップを含み得る。)
(引1b)「[0044] FIG. 3 is a schematic andblock diagram view of an embodiment of a system 11 for automatically detectinga tissue pop event during an ablation procedure. The system 11 includes an ECU121, an ablation generator 241, an ablation catheter 261,signal processing hardware 281, an electro-acoustic transducer 301,the user interface 32, and the barotrauma event notification output 34. Thecomponents of the system 11 have substantially the same elements and functionality as components with the same or similar numerals described abovewith respect to FIGS. 1-2, except as distinguished below.
(当審訳:図3は、アブレーション手技中に組織ポップ事象を自動的に検出するためのシステム11のある実施形態の概略ブロック図である。システム11は、ECU121と、アブレーション発生機241と、アブレーション・カテーテル261と、信号処理ハードウェア281と、電気音響式トランスデューサ301と、ユーザ・インターフェース32と、気圧性外傷事象通知出力34と、を含む。システム11の構成要素は、以下の点を除き、図1~2に関連して上で説明したものと同じまたは同様の番号を付けた構成要素と実質的に同じ要素および機能を有する。)
[0045]The electro-acoustic transducer 301is intended to be disposed within the body of a patient, and thus is coupledwith and/or within the ablation catheter 261. The transducer 301 may be coupled to any portion of the ablation catheter 261, such asa distal portion, a distal tip, or a proximal portion. In an embodiment, the electro-acoustic transducer 301 may be coupled to another medical device, such as a sheath, a diagnostic catheter, and the like.
(当審訳:電気音響式トランスデューサ301は患者の身体の内部に配置されることを意図したものであり、またしたがってアブレーション・カテーテル261と結合されるかつ/またはアブレーション・カテーテル261の内部にある。トランスデューサ301は、遠位部分、遠位先端または近位部分などアブレーション・カテーテル261の任意の部分に結合させることがある。ある実施形態ではその電気音響式トランスデューサ301は、被覆、診断用カテーテル、その他などの別の医用デバイスに結合させることがある。)
[0046] The ablation generator 241 may be configured to receive a signal indicative of acoustic activity from thetransducer 301 (e.g., by way of a common interface for ablationenergy, ablation-related signals, and one or more acoustic activity signals) or from the signal processing hardware 281 (as illustrated by phantomline 35). The ablation generator 241 may be configured to act as a pass-through for such acoustic activity signals (i.e., for the signals tocontinue to the ECU 121), such that the ECU 121 is not independentlyconnected to the transducer 301 or the signal processing hardware 281.
(当審訳:アブレーション発生機241は、トランスデューサ301から音響的活動を表した信号を(たとえば、アブレーション・エネルギー用の共通インターフェースによって、アブレーション関連の信号と1つまたは複数の音響的活動信号とを)受け取るように、あるいは信号処理ハードウェア281(仮想線35で示す)から受け取るように構成されることがある。アブレーション発生機241は、こうした音響的活動信号向けのパススルーの役割をするように(すなわち、信号がECU121まで続くように)構成され、これによってECU121がトランスデューサ301または信号処理ハードウェア281と独立に接続されないようにすることがある。)
[0047] The signal processing hardware 281and the ECU 121 may each be configured to process a signal indicative of acoustic activity obtained from within the patient's body. For example, the signal processing hardware 281 may be configured to filter, amplify, and/or attenuate a signal based on acoustic activity detected from closer to the source of the activity (i.e., from within the body, ratherthan from outside the body). The ECU 121 may be similarly configured to filter and/or monitor a signal (e.g., with an embodiment of detection logic20) based on acoustic activity detected from closer to the source of the activity.
(当審訳:信号処理ハードウェア281とECU121のそれぞれは、患者の身体内部から取得した音響的活動を表した信号を処理するように構成されることがある。たとえば信号処理ハードウェア281は、活動の発生元のより近くから(すなわち、身体の外部ではなく身体の内部から)検出された音響的活動に基づいて信号をフィルタ処理、増幅かつ/または減衰するように構成されることがある。ECU121も同様に、(たとえば、検出ロジック20のある実施形態によって)活動の発生元のより近くから検出された音響的活動に基づいて信号をフィルタ処理かつ/または監視するように構成されることがある。)」
(引1c)「[0060] FIG. 6 is a schematic and diagrammatic view of an exemplary embodiment of a portion of the system of FIG.1, designated system 50, for automatically detecting a tissue pop event in aheart 52 of a patient 54 during an ablation procedure. The system 50 includes an ablation catheter 26 with one or more electrodes 56, a system 58 forvisualization, mapping, and navigation of internal body structures, an ECU 124,a display device 60, and a number of patch electrodes 62B, 62X1,62X2, 62Y1, 62Y2, 62Z1, and 62Z2.
(当審訳:図6は、アブレーション手技中に患者54の心臓52内で組織ポップ事象を自動的に検出するための図1のシステムの一部分(システム50で示す)の例示的な一実施形態の概略図である。システム50は、1つまたは複数の電極56を備えたアブレーション・カテーテル26と、内部身体構造の視覚化、マッピングおよびナビゲーションのためのシステム58と、ECU124と、表示デバイス60と、多数のパッチ電極62B、62X1、62X2、62Y1、62Y2、62Z1および62Z2と、を含む。)
[0061] The electrodes 56 are provided for a variety of diagnostic and therapeutic purposes including, for example, electrophysiological studies, catheter identification and location, pacing, cardiac mapping, and ablation. In an embodiment, the catheter 26 can include an ablation tip electrode (not shown) at the distal end of the catheter 26, and one or more ring electrodes (illustrated diagrammatically as electrode 56). It should be understood, however, that the number, shape, orientation, and purpose of the electrodes 56 may vary.
(当審訳:電極56は、たとえば電気生理学的検査、カテーテルの識別および位置特定、ペーシング、心臓マッピング、およびアブレーションを含む多種多様な診断および治療目的のために設けられている。ある実施形態ではそのカテーテル26は、カテーテル26の遠位端にあるアブレーション先端電極(図示せず)と、1つまたは複数のリング電極(図式的に電極56で示す)と、を含むことが可能である。しかし、電極56の数、形状、向きおよび目的は様々とし得ることを理解すべきである。)
[0062] The system 58 is provided for visualization, mapping, and/or navigation of internal body structures and may be referred to herein as “the navigation system”・・・(以下略)
(当審訳:システム58は、内部身体構造に対する視覚化、マッピングおよび/またはナビゲーションのために設けられており、また本明細書では「ナビゲーション・システム」と呼ぶこともある。・・・)
[0063] With the exception of the patch electrode 62B called a “belly patch,” the patch electrodes 62 are provided to generate electrical signals used, for example, in determining the position and orientation of the catheter 26 and in the guidance thereof. In one embodiment,the patch electrodes 62 are placed generally or thogonally on the surface of the body 54 and are used to create axes-specific electric fields within the body 54. For instance, in one exemplary embodiment, patch electrodes 62X1,62X2 may be placed along a first (x) axis. Patch electrodes 62Y1,62Y2 may be placed along a second (y) axis, and patch electrodes 62Z1,62Z2 may be placed along a third (z) axis. Each of the patch electrodes 62 may be coupled to a multiplex switch (not shown). In an exemplary embodiment, the ECU 12 is configured, through appropriate software, to provide control signals to the multiplex switch to thereby sequentially couple pairs of electrodes 62 to a signal generator (also not shown). Excitation of each pair of electrodes 62 (e.g., in either orthogonal or non-orthogonal pairs) generatesan electrical field within the patient's body 54 and within an area of interest such as the heart 52. Voltage levels at non-excited electrodes 62, which are referenced to the belly patch 62B, are filtered and converted andprovided to ECU 12 for use as reference values.
(当審訳:「ベリー・パッチ(belly patch)」と呼ばれるパッチ電極62Bを除いて、パッチ電極62はたとえばカテーテル26の位置および向きの決定ならびにそのガイドにおいて使用する電気信号を発生させるために設けられている。一実施形態ではそのパッチ電極62は、身体54の表面上で概して直角に配置させており、また身体54の内部の軸特異的電界を生成させるために使用される。たとえば例示的な一実施形態では、パッチ電極62X1、62X2を第1の(x)軸に沿って配置させることがある。パッチ電極62Y1、62Y2を第2の(y)軸に沿って配置させることがあり、またパッチ電極62Z1、62Z2を第3の(z)軸に沿って配置させることがある。これらのパッチ電極62の各々は多重式スイッチ(図示せず)に結合させることがある。例示的な一実施形態ではそのECU12は、適当なソフトウェアを通じて多重式スイッチに制御信号を提供し、これにより電極62の対が信号発生器(同じく図示せず)に順次結合されるように構成されている。電極62の各対(たとえば、直角の対または非直角の対のいずれか)の励起によって、患者の身体54の内部ならびに心臓52などの関心エリアの内部に電界を発生させている。ベリー・パッチ62Bを基準とした非励起の電極62の位置における電圧レベルは、フィルタ処理および変換を受けるとともに、基準値として用いるためにECU12に提供される。)」
(引1d)「[0076] FIG. 8 is a flow chart illustrating acomputer-implementable method 100 of automatically detecting a tissue popevent. The method 100 may be stored as instructions or logic in computer-readable memory (such as memory 16) for execution by an electroniccontrol unit (such as any of ECU 12, 121, 122, 123,and 124). For example, the ECU 12 can execute an embodiment of detection logic 20 and an embodiment of ablation logic 18 to perform the steps of the method 100.
(当審訳:図8は、組織ポップ事象を自動的に検出するコンピュータ実現可能な方法100を示したフロー図である。方法100は、電子制御ユニット(ECU12、121、122、123および124のいずれかなど)によって実行させるために命令またはロジックをコンピュータ読み取り可能なメモリ(メモリ16など)内に保存することがある。たとえばECU12は、方法100の各ステップの実行のために、検出ロジック20のある実施形態およびアブレーション・ロジック18のある実施形態を実行することが可能である。)
[0077] The first step 102 of the method 100 includes receiving an electrical signal indicative of acoustic activity within a patient's body. The signal can be received from an electro-acoustic transducer, such as, for example only, a transducer 70 integrated into a patch or body surface electrode 62. Depending on the location of the tissue on which the ablation procedure is being performed, the transducer 70 may be placed in a variety of different locations on the body of the patient. For example, during an ablation procedure on the right atrium of the patient's heart, a transducer in a patch 62X1 on the patient's right side can be selected and used to monitor the acoustic activity in the heart. A transducer in a patch on the patient's left side, 62X2, chest, 62Z1, or back, 62Z2, could also be selected and used.
(当審訳:方法100の第1のステップ102は、患者の身体内部の音響的活動を表した電気信号を受け取ることを含む。この信号は、単に一例としてパッチまたは身体表面電極62内に組み込まれたトランスデューサ70などの電気音響式トランスデューサから受け取ることが可能である。アブレーション手技を実行する対象となる組織の箇所に応じてトランスデューサ70は、患者の身体上の多種多様な別の箇所に配置させることがある。たとえば、患者の心臓の右心房に対するアブレーション手技中に、患者の右側面上のパッチ62X1にあるトランスデューサは心臓内の音響的活動の監視のために選択して使用することが可能である。患者の左側面上のパッチにあるトランスデューサ62X2、胸部のトランスデューサ62Z1または背部のトランスデューサ62Z2もまた、選択して使用することが可能である。)
[0078] The next step 104 includes processing the received signal. The signal processing step 104 can include filtering, attenuating, and/or amplifying the signal and can be performed by hardware, software, or a combination of both. In an embodiment, the processing step 104 includes a first substep of applying a frequency filter to the signal and a second substep of applying an amplification algorithm to the filtered signal. The filtering substep can include eliminating one or more particular frequencies or frequency ranges in the received signal. For example, the received signal might have components caused by excitation signals from a navigation system (e.g., driven between electrodes in patches 62) and by the signal transmitted through an ablation catheter as ablation energy. In an embodiment, the excitation signals may have a frequency of about 5.68 kilohertz (kHz) or 8 kHz and the ablation signal may have a frequency of about 485 kHz. In contrast, the signal spike caused by a tissue pop event is generally detectable in frequencies of about 500 Hz. Thus, in an embodiment, the filtering sub-step can include applying a low-pass filter to eliminate components in the received electrical signal having a frequency above about 5 kHz and a high-pass filter to eliminate components in the received electrical signal having a frequency below about 300 Hz.
(当審訳:次のステップ104は受け取った信号を処理することを含む。信号処理ステップ104は、信号をフィルタ処理し、減衰しかつ/または増幅することを含むことが可能であるとともに、ハードウェア、ソフトウェアまたはこの両者の組合せによって実行させることが可能である。ある実施形態ではその処理ステップ104は、信号に対して周波数フィルタを適用する第1のサブステップと、フィルタ処理済みの信号に対して増幅アルゴリズムを適用する第2のサブステップと、を含む。このフィルタ処理のサブステップは、受け取った信号内で1つまたは複数の特定の周波数または周波数範囲を排除することを含むことが可能である。たとえば、受け取った信号はナビゲーション・システムからの励起信号(たとえば、パッチ62内の電極同士の間で駆動される)ならびにアブレーション・カテーテルを通してアブレーション・エネルギーとして送信される信号によって生じた成分を有することがあり得る。ある実施形態ではその励起信号は、約5.68キロヘルツ(kHz)または8kHzの周波数を有することがあり、またアブレーション信号は約485kHzの周波数を有することがある。これに対して組織ポップ事象によって生じる信号スパイクは一般に、約500Hzの周波数で検出可能である。したがってある実施形態ではそのフィルタ処理のサブステップは、受け取った電気信号の中から周波数が約5kHzを超える成分を排除するための低域通過フィルタと、受け取った電気信号の中から周波数が約300Hz未満の成分を排除する高域通過フィルタと、を適用することを含むことが可能である。)
」
(引1d)FIG.3(図3)には、次の図面が記載されている。
(引1e)FIG.6(図6)には、次の図面が記載されている。
b 引用文献1の記載事項の整理及び引用発明
上記摘記事項より、引用文献1には、特にFIG.3(図3)に関連して、次の事項が記載されている。
(a)システム
引用文献1の[0044]には、「アブレーション手技中に組織ポップ事象を自動的に検出するためのシステム11」が、「ECU121と、アブレーション発生機241と、アブレーション・カテーテル261と、信号処理ハードウェア281と、電気音響式トランスデューサ301と、ユーザ・インターフェース32と、気圧性外傷事象通知出力34と、を含む」ことが記載されている。
また、引用文献1の[0042]には、「システム11の構成要素は、以下の点を除き、図1~2に関連して上で説明したものと同じまたは同様の番号を付けた構成要素と実質的に同じ要素および機能を有する」ことが記載されていることから、引用文献1の[0060]に記載される「図1のシステムの一部分(システム50)」は、「アブレーション手技中に組織ポップ事象を自動的に検出するためのシステム11」も具備しているものといえる。
そして、引用文献1の[0060]には、「システムの一部分(システム50)」が、「1つまたは複数の電極56を備えたアブレーションカテーテル26」と、「内部身体構造の視覚化、マッピング及びナビゲーションのためのシステム」(マッピング・ナビゲーションシステム)と、ECU124と、多数のパッチ電極62B、62X1、62X2、62Y1、62Y2、62Z1および62Z2を含むことが記載されている。
(b)アブレーション発生機
引用文献1の[0046]には、アブレーション発生器241は、電気音響式トランスデューサ301から音響的活動信号を信号処理ハードウェアから受け取り、ECU121まで続くように構成されていることが記載されている。
また、引用文献1の[0042]には、「システム11の構成要素は、以下の点を除き、FIG.1~2に関連して上で説明したものと同じまたは同様の番号を付けた構成要素と実質的に同じ要素および機能を有する」ことが記載されている。そして、FIG.1の説明である[0028]には、アブレーション発生機が、1対のソース・コネクタの両端に出力されるアブレーション信号を発生させるように構成されたRFアブレーション信号ソースを含むことが記載されており、「システム11」の「アブレーション発生機241」も、1対のソース・コネクタの両端に出力されるアブレーション信号を発生させるように構成されたRFアブレーション信号ソースを含むものといえる。
(c)電気音響式トランスデューサ
引用文献1の[0045]には、電気音響式トランスデューサ301が、アブレーション・カテーテル261の内部にあることが記載されている。
また、引用文献1の[0042]には、「システム11の構成要素は、以下の点を除き、FIG.1~2に関連して上で説明したものと同じまたは同様の番号を付けた構成要素と実質的に同じ要素および機能を有する」ことが記載されている。そして、FIG.1の説明である[0029]には、電気音響式トランスデューサは、患者の身体内部の音響的活動を、組織ポップの兆候の有無を監視することが可能な電気信号に変換するために設けられることが記載されており、「システム11」の「電気音響式トランスデューサ301」も同様であるといえる。
(d)信号処理ハードウェア
引用文献1の[0042]には、「システム11の構成要素は、以下の点を除き、FIG.1~2に関連して上で説明したものと同じまたは同様の番号を付けた構成要素と実質的に同じ要素および機能を有する」ことが記載されている。そして、FIG.1の説明である[0028]には、「信号処理ハードウェア」が、マッピング・ナビゲーションシステムからの励起信号等の周波数を排除するために信号を低域通過フィルタ処理することが可能であり、例示的な実施形態として、同調インダクタ-コンデンサ・トラップを含むことが可能であることが記載されている。したがって、「システム11」の「信号処理ハードウェア」も、同様であるといえる。
また、引用文献1のFIG.3(図3)及び[0046]の記載より、信号処理ハードウェア281は、電気音響式トランスデューサ301とアブレーション発生機241との間に配置されることが見て取れる。
(e)マッピング・ナビゲーションシステム等
引用文献1の[0060]には、「システムの一部分(システム50)」が、「1つまたは複数の電極56を備えたアブレーションカテーテル26」と、「内部身体構造の視覚化、マッピング及びナビゲーションのためのシステム」(マッピング・ナビゲーションシステム)と、ECU124と、多数のパッチ電極62B、62X1、62X2、62Y1、62Y2、62Z1および62Z2を含むことが記載されている。
引用文献1のFig.6(図6)より、マッピング・ナビゲーションシステム58が、ECU124を含み、多数のパッチ電極62B、62X1、62X2、62Y1、62Y2、62Z1および62Z2及びアブレーション・カテーテル26の電極56と、電気的に接続されていることが見て取れる。
また、引用文献1の[0063]には、パッチ電極62は、身体54の表面上で概して直角に設けられ、パッチ電極62X1、62X2を第1の(x)軸に沿って配置させ、パッチ電極62Y1、62Y2を第2の(y)軸に沿って配置させ、パッチ電極62Z1、62Z2を第3の(z)軸に沿って配置させ、これらのパッチ電極62の各々は多重式スイッチに結合させ、ECU12は、適当なソフトウェアを通じて多重式スイッチに制御信号を提供し、電極62の対が信号発生器に順次結合するように構成され、電極62の直角の各対の励起によって、患者の身体54の内部ならびに心臓52などの関心エリアの内部に電界を発生させることが記載されている。
また、引用文献1の[0078]には、マッピング・ナビゲーションシステムの励起信号が、約5.68キロヘルツ(kHz)または8kHzの周波数を有することが記載されている。
上記摘記事項より、引用文献1には、次の発明が記載されている。
(図面番号・符号は、必要に応じて省略した。)
「(a)アブレーション手技中に組織ポップ事象を自動的に検出するためのシステムであって、
システムは、ECUと、アブレーション発生機と、1つ又は複数の電極を備えたアブレーション・カテーテルと、信号処理ハードウェアと、電気音響式トランスデューサと、ユーザ・インターフェースと、気圧性外傷事象通知出力と、マッピング・ナビゲーションシステムと、多数のパッチ電極を含み、
(b)アブレーション発生機は、1対のソース・コネクタの両端に出力されるアブレーション信号を発生させるように構成されたRFアブレーション信号ソースを含み、
電気音響式トランスデューサからの電気音響的活動信号を信号処理ハードウェアから受け取り、電気音響的活動信号がECUまで続くように構成され、
(c)電気音響式トランスデューサは、アブレーション・カテーテルの内部にあり、患者の身体内部の音響的活動を電気信号(電気音響的活動信号)に変換するために設けられ、
(d)信号処理ハードウェアは、電気音響式トランスデューサとアブレーション発生機との間に配置され、
マッピング・ナビゲーションシステムからの励起信号等の周波数を排除するために信号を低域通過フィルタ処理するための同調インダクタ-コンデンサ・トラップを含み、
(e)ECUを含むマッピング・ナビゲーションシステムは、パッチ電極及びアブレーション・カテーテルの電極と電気的に接続され、
パッチ電極は、身体の表面上で概して直角に設けられ、パッチ電極62X1、62X2を第1の(x)軸に沿って配置させ、パッチ電極62Y1、62Y2を第2の(y)軸に沿って配置させ、パッチ電極62Z1、62Z2を第3の(z)軸に沿って配置させ、これらのパッチ電極の各々は多重式スイッチに結合させ、ECUは多重式スイッチに制御信号を提供し、パッチ電極の対が信号発生器に順次結合するように構成され、パッチ電極の対(直角の対)の励起によって、患者の身体の内部ならびに心臓などの関心エリアの内部に電界を発生させ、
マッピング・ナビゲーションシステムの励起信号は、約5.68キロヘルツ(kHz)または8kHzの周波数である、
システム。」
(イ)引用文献2
原査定で引用された引用文献2の【図1】には、次の図面が記載されている。
当該図面より、無線周波カテーテル・アブレーションのための装置1の内部に、高周波フィルター15を設ける構成が見て取れる。
(ウ)引用文献3
原査定で引用された引用文献3の【図3】には、次の図面が記載されている。
【図3】
また、同文献には、次の記載がある。
「【0022】フィルター40は、以下の特徴を有する。 並列のノッチフィルターブロック60のブランチ54および56である。各々のブロックは、並列に接続されたインダクタおよびコンデンサーを備える受動ユニットである。これらのブロックは、RF切除の特定共振周波数に近い周波数の範囲において、高インピーダンスを有する。図面に示された例では、500kHzの中央周波数の周りの±50kHzの範囲にわたって、25kHz離間した、複数の重なり合うノッチを作成するために、インダクタおよびコンデンサーのコンポーネント値が選択される。 直列のノッチフィルターブロック58のブランチ52である。各々のブロックは、直列に接続されたインダクタおよびコンデンサーを備える受動ユニットである。これらのブロックは、特定共振周波数に近い周波数の範囲において、低インピーダンスを有しており、したがって、ブランチ54および56を貫通するいかなるRFエネルギーも短絡接地させる(shunt to ground)。ここでもブロック58は、500kHzの中央周波数の周りの±50kHzの範囲にわたって、25kHz離間した、複数の重なり合うノッチを作成する。 コモンモードチョーク50である。このコモンモードチョーク50は、もしも減衰させなければフィルター40のペースメーカー側に進む恐れがある、いかなる小さなコモンモードノイズも、減衰させる。」
【図3】及び【0022】の記載より、引用文献3には、「並列に接続されたインダクタ及びコンデンサを備える受動ユニット(LCトラップ)のブロックで、周波数が異なるものを複数個直列に接続したフィルターブロックのブランチ54,56の各々のブロックが、RF切除の特定共振周波数に近い周波数の範囲において、高インピーダンスを有すること」(以下、「技術事項3」という。)が記載されているといえる。
(エ)引用文献4
当審において周知技術として引用する引用文献4(特表2009-514617号公報)の【図50】には、次の図面が記載されている。
また、同文献の【0101】には、次の記載がある。
「【0101】
図50は、複数の「タンク」の直列構成に本発明を用いることを示している。3つの「タンク」回路T1、T2、及びT3が存在することが分る。「タンク」回路T1は、L1及びC1の並列組合せから成り、「タンク」T2は、L2及びC2の並列組合せから成り、「タンク」T3は、L3及びC3の並列組合せから成る。患者が一種類のみではないMRIシステムに露出されることを可能にすることが望ましいであろう。例えば、0.5テスラMRIシステムでは、パルスRF周波数は、21MHzである。次に、L1及びC1が21MHzで自己共鳴するように設計することが望ましい場合がある。1.5テスラMRIシステムのパルスRF周波数は、64MHzである。従って、「タンク」回路T2は、64MHzで自己共鳴することになるL2及びC2から成る並列誘導子及びコンデンサ配列を有することができる。現在典型的な3テスラのMRIシステムのパルスRF周波数は、128MHzである。従って、L3及びC3の並列組合せは、128MHzで自己共鳴するように設計することができる。これは、図50のシステムのインピーダンスが、点Aと点Bの間を測定すると、これらの選択したMRIRFパルス周波数の3つ全てで非常に高く、これらの種類のMRIシステムのいずれでも、リードワイヤ又は遠位TIP電極を過熱する恐れなく患者がMRIを受けることができることになることを意味するであろう。」
【図50】及び上記【0101】の記載より、引用文献4には、「複数の周波数に対してインピーダンスの高い回路とするために、共鳴周波数の異なる複数のLC並列回路を直列に接続すること」(以下、「技術事項4」という。)が記載されているといえる。
イ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のとおりである。
(ア)引用発明の「アブレーション発生機」は、本件補正発明の「アブレーション発生器」に相当する。
(イ)引用発明の「1対のソース・コネクタの両端に出力されるアブレーション信号を発生させるように構成されたRFアブレーション信号ソース」は、本件補正発明の「患者の組織に対してアブレーション処置を実行するのに適した周波数を有するRFアブレーション信号を生成するための回路」に相当する。
(ウ)引用発明の「患者の身体内部の音響的活動を」「電気音響トランスデューサにより」「変換した」「電気音響的活動信号」は、本件補正発明の「患者の組織のそれぞれのモニタリング信号」に相当する。
そして、引用発明の「電気音響式トランスデューサから電気音響的活動信号を信号処理ハードウェアから受け取」る「構成」は、本件補正発明の「患者の組織のそれぞれのモニタリング信号を受信するための受信ポート」に相当する。また、引用発明の「ECU」は、本件補正発明の「前記モニタリング信号」が「供給」される「別のデバイス」に相当する。そして、引用発明の「アブレーション発生機」は「電気音響的活動信号がECUまで続くように構成され」ているため、本件補正発明の「前記モニタリング信号を別のデバイスに供給するための出力ポート」を具備しているといえる。
(エ)引用発明の「信号処理ハードウェア」は、「信号を低域通過フィルタ処理」するものであり、本件補正発明の「フィルタリング回路」に相当する。
また、引用発明の「電気音響式トランスデューサとアブレーション発生機との間に配置され」た「信号処理ハードウェア」と、本件補正発明の「前記入力ポートと前記出力ポートの間に配置されたフィルタリング回路」とは、「システム内に配置されたフィルタリング回路」で共通する。
(オ)引用発明の「マッピング・ナビゲーションシステム」は、本件補正発明の「前記アブレーション発生器に関連づけられているマッピング・ナビゲーションシステム」に相当する。
そして、引用発明の「マッピング・ナビゲーションシステム」中の「ECU」は、「パッチ電極の対(直角の対)」を励起することが記載されている。そして、「直角の対」とは「パッチ電極62X1、62X2」、「パッチ電極62Y1、62Y2」、「パッチ電極62Z1、62Z2」をいうと解されるため、引用発明の「マッピング・ナビゲーションシステム」は、「複数の異なる信号を送信する」ものといえる。
(カ)前記(エ)、(オ)の検討を踏まえれば、引用発明の「マッピング・ナビゲーションシステムからの励起信号等の周波数を排除するために信号を低域通過フィルタ処理するための同調インダクタ-コンデンサ・トラップを含」む「信号処理ハードウェア」と、本件補正発明の「前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成され」ることとは、「前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号の少なくとも一つの信号の周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成される」ことで共通する。
(キ)引用発明の「同調インダクタ・コンデンサトラップ」は、本件補正発明の「LCトラップ」に相当する。
すると、引用発明の「同調インダクタ・コンデンサトラップを含」む「信号処理ハードウェア」と、本件補正発明の「複数個のLCトラップを備え」る「前記フィルタリング回路」とは、「少なくとも一つのLCトラップを備え」る「前記フィルタリング回路」で共通する。
(ク)したがって、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「アブレーション発生器であって、
患者の組織に対してアブレーション処置を実行するのに適した周波数を有するRFアブレーション信号を生成するための回路と、
患者の組織のそれぞれのモニタリング信号を受信するための入力ポートと、
前記モニタリング信号を別のデバイスに供給するための出力ポートと、
システム内に配置されたフィルタリング回路と、を備え、
前記フィルタリング回路は、前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号の少なくとも一つの周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成される、
アブレーション発生器。」
また、次の各点で相違する。
(相違点1)
「フィルタリング回路」の「配置」が、本件補正発明では「前記入力ポートと前記出力ポートの間」にあるのに対して、引用発明では「電気音響式トランスデューサ」と「アブレーション発生機」との間にある点。
(相違点2)
「フィルタリング回路」が「高いインピーダンスを示す周波数」が、
本件補正発明では「前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数」であるのに対して、
引用発明では「マッピング・ナビゲーションシステムからの励起信号等の周波数」である点。
(相違点3)
「フィルタリング回路」の「少なくとも一つのLCトラップ」
が、
本件補正発明では、
「特定のLCトラップは、前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成され」、
「各LCトラップは、コンデンサと並列なインダクタを備え」、
「前記複数個のLCトラップは、直列に配置されており、
前記複数個のLCトラップのうちの第1群は、約6kHzと約8kHzの間の第1の同じピーク周波数に調整され、
前記複数個のLCトラップのうちの第2群は、約6kHzと約7kHzの間の第2の同じピーク周波数に調整され」る、「複数個のLCトラップ」であるのに対して、
引用発明では、
「同調インダクタ・コンデンサトラップ」であり、
「マッピングおよびナビゲーションのためのシステム58からの励起信号などの周波数を排除する」ものである点。
ウ 判断
(ア)相違点1
前記相違点1について検討する。
前述のように、引用文献2には、「カテーテル上の電極により患者の生体信号のモニタリングを行う際に、信号のフィルタをアブレーションのための装置の内部に設ける構成」(技術事項2)が記載されている。
そして、引用発明において、「信号処理ハードウェア」の配置をどこにするかは、当業者が適宜設計可能であるから、引用発明において、技術事項2を適用し、アブレーションのための装置の内部、すなわち、「前記入力ポートと前記出力ポートの間」にすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(イ)相違点2
前記相違点2について検討する。
引用発明において、「マッピング・ナビゲーションシステム」の「ECU」が、xyzの各軸の信号を同一の周波数で励起すると、各軸において混信を起こすことは、当業者であれば明らかなことである。したがって、xyzの各軸の信号は、通常、混信を避けるため、「マッピング・ナビゲーションシステム」の「ECU」により、互いに異なる周波数の信号で励起される。よって、引用発明の「信号処理ハードウェア」において、マッピング・ナビゲーションシステムからの励起信号等の周波数を排除するために、xyz軸の信号の周波数の全てを「排除する」という課題を着想し、「前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数」を排除するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(ウ)相違点3
前記相違点3について検討する。
(イ)で検討したように、「前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数」を排除するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、引用発明の「同調インダクタ・コンデンサトラップ」として、「前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数において高いインピーダンスを示すように構成され」る「LCトラップ」を選択することは、当業者であれば、容易に想到し得ることである。
また、上記技術事項3及び上記技術事項4に示されるように、複数の周波数の信号の各々に対して高いインピーダンスを有する、複数種類の「コンデンサと並列なインダクタを備え」る「LCトラップ」を直列に配置することにより、複数の周波数の信号を排除することができることは、技術分野を問わず周知である。
したがって、引用発明の「信号処理ハードウェア」において、「前記アブレーション発生器に関連付けられているマッピング・ナビゲーションシステムが複数の異なる信号を送信する際の前記複数の異なる信号のそれぞれの周波数かその近くの周波数」を排除するように、引用発明の「同調インダクタ・コンデンサトラップ」に替えて、「マッピング・ナビゲーションシステム」の「ECU」が送信する、複数の異なる信号の各々の周波数に対して高いインピーダンスを有する、複数種類の「コンデンサと並列なインダクタを備え」る「LCトラップ」(「前記複数個のLCトラップのうちの第1群」及び「前記複数個のLCトラップのうちの第2群」)を直列に接続するようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、その際の「複数個のLCトラップのうちの第1群」の「ピーク周波数」の数値及び「複数個のLCトラップのうちの第2群」の「ピーク周波数」の数値は、「マッピング・ナビゲーションシステム」の「ECU」が送信する、複数の異なる信号の各々の周波数に合わせて、当業者が決定し得るものである。ここで、引用発明では、マッピング・ナビゲーションシステムの励起信号は、約5.68キロヘルツ(kHz)または8kHzの周波数であり、それに近い周波数の信号をマッピング・ナビゲーションシステムの励起信号として用いることができることは、当業者に明らかである。
すると、引用発明において、「LCトラップ」の各群の「ピーク周波数」として、約5.68kHz~8kHz程度の「マッピングナビゲーションシステム」の「励起信号」の「周波数」に合わせて「ピーク周波数」を選択することにより、「複数個のLCトラップのうち第1群」の「第1の同じピーク周波数」として「約6kHzと約8kHzの間」に調整し、「複数個のLCトラップのうち第2群」の「第2の同じピーク周波数」を「約6kHzと約7kHzの間」の「第2の同じピーク周波数」に調整することは、当業者であれば適宜なし得ることである。
(3)本願発明の効果
本願発明の効果は、引用文献1~4の記載から当業者が予測可能なものであり、格別顕著なものであるとはいえない。
(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明、技術事項2、及び技術事項3-4から導かれる周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 補正却下の決定についての結び
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そうすると、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、令和元年7月23日の手続補正書の特許請求の範囲に記載されたものであり、そのうち請求項1に係る発明(本願発明)は、上記第2で「補正前の請求項1」として記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶理由の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-7
・引用文献等 1、2
・請求項 4-7
・引用文献等 1-3
<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2014/0358038号明細書
2.特表2000-515774号公報
3.特開2009-291612号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及び3の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「前記複数個のLCトラップ」について、「前記複数個のLCトラップのうちの第1群は、約6kHzと約8kHzの間の第1の同じピーク周波数に調整され」、「前記複数個のLCトラップのうちの第2群は、約6kHzと約7kHzの間の第2の同じピーク周波数に調整される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記[理由]2(2)イの相違点1及び2で相違する。そして、前記第2の[理由]2(2)ウ(ア)、(イ)に記載したとおり、相違点1及び2に係る構成は、引用発明及び技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-009729