特許拒絶査定不服審判
2019-007933
水素エンジン装置
- 審判番号
- 2019-007933
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-143401外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年06月13日
- 審決日
- 2020年03月09日
- 公報発行日
- 2020年11月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】海老原 雄二
- 分類
- P18 .121-Z (F02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-143401「水素エンジン装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月25日出願公開、特開2018-13090〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月21日の出願であって、その手続きは以下のとおりである。
平成31年1月29日付け(発送日:同年2月5日):拒絶理由通知書
平成31年3月8日 :応対記録
平成31年3月11日 :応対記録
平成31年3月12日 :意見書の提出
平成31年4月22日付け(発送日:令和元年5月14日):拒絶査定
令和元年6月13日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「(請求項目1)水を燃料として、化学物質との反応により、水素などガス発生する手段、ガス制御部、電子制御部、燃焼部などにより構成される水素エンジンで、点火、爆発、噴射により動力を得る事を特徴とする。」
第3 拒絶査定の概要
平成31年4月22日付けの拒絶査定の概要は、以下のとおりのものである。
この出願については、平成31年1月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
●理由(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・引用文献等1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2012-46103号公報
2.特開2009-62215号公報(周知技術を示す文献)
また、平成31年1月29日付けの拒絶理由通知書により通知された拒絶理由の概要は、以下のとおりのものである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献等1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2012-46103号公報
2.特開2009-62215号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2012-46103号公報)には、「水素エネルギー車両」に関して、図面(特に図1ないし3を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
ア 「【0001】
本発明は、水素エネルギーで走行する水素エネルギー車両に関する。」
イ 「【0006】
一方、水素をエネルギーとして使用する車両として燃料電池電気自動車が知られており、燃料電池に水素と酸素を取り込んで化学反応を起こし電気を発生し、その電気でモータを回して走行するが、水素の供給や充填用の大型設備などインフレが必要となり、コストが嵩む。
このように、水素をエネルギー源とする車両への水素の供給や水素発生材料を比較的安く供給でき且つ取扱いが容易な水素発生材料が求められる。」
ウ 「【0025】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車両10は、前輪11及び後輪12を備える車体13に、前部座席14、後部座席15、荷台16を設けた乗用車である。
車体13の前部、すなわち前部座席14の前方に、動力発生部17が設けられ、この動力発生部17で前輪11が駆動される。
【0026】
動力発生部17は、内燃機関17aと、モータ(電動モータ)17bとを備えるハイブリッド型駆動部である。車両10はハイブリッド型車両である。このような車両10のルーフに、太陽光電池(ソーラーパネル)18を搭載し、この太陽光電池18で得た電力をバッテリ(図5、符号63)に貯えるようにすることが望ましい。太陽光電池18はボンネットにも搭載可能である。
【0027】
図2に示すように、車体13に、水を蓄える水貯留部21と、トルマリンを内蔵し水貯留部21から供給された水をトルマリンの電気的作用で活性水素水(H3O2)に変換する活性水素水生成部22と、この活性水素水生成部22で生成された活性水素水を蓄える活性水素水貯留部23と、アルミニウム合金の粉末を蓄えるアルミ粉貯留部24と、このアルミ粉貯留部24から供給されるアルミ粉と活性水素水貯留部23から供給される活性水素水とを混合して水素を発生させる水素発生部25とを備える。」
エ 「【0031】
水貯留部21へは、キャップ26を開けて、水道水などの水を補給すればよい。
同様に、アルミ粉貯留部24へは、キャップ27を開けて、アルミ粉を補給すればよい。アルミ粉は、純アルミニウムである必要はなく、アルミ缶を粉砕してなるアルミニウム合金の粉末であれば種類は問わない。」
オ 「【0035】
撹拌機33は、例えば、撹拌用モータ33aと、この撹拌用モータ33aで回される軸部材33bと、この軸部材33bから放射状に延ばされる複数の撹拌羽根(インペラー)33cとからなる。
円筒容器31に活性水素水38を満たし、この活性水素水38にアルミ粉35を混ぜ、撹拌機33の撹拌羽根33cで撹拌すると、次に述べる反応により、水素が発生する。
【0036】
【化1】
2Al+H3O2+OH → Al2O3+2H2」
カ 「【0037】
なお、反応促進剤40として、炭酸水素ナトリウム、酢酸などの、いわゆる食品添加物を添加すること望ましい。この食品添加物の量によって、水素発生量の制御を行うことができる。
【0038】
実験によれば、酢酸と炭酸水素ナトリウムとを反応させ、酢酸ナトリウム(CH3COONa)を生成させそれが、アルミニウム、活性水素水からの水素発生に効果があることがわかった。酢酸だけでは水素が発生しない。炭酸水素ナトリウムだけでも水素は発生しなかった。クエン酸だけでも水素は発生しなかった。 酢酸と炭酸水素ナトリウムとを反応させ、酢酸ナトリウム(CH3COONa)が発生精製され、それがアルミニウム、活性水素水と反応し、水素発生に至ると共に、化学反応による酸化アルミニウムの発生も見られた。
【0039】
実験から、活性水素水からの水素抽出はもちろん。促進効果としては、酢酸ナトリウム、酢酸(酢)、炭酸水素ナトリウムの添加が効果的なことが判明した。
【0040】
水素発生プロセスには、活性水素水と、アルミニウムと、酢酸ナトリウムのミキシング反応が有効である。また、ミキシング、回転速度、回転数を制御、及び、温度制御することで、反応速度、水素発生量を制御することができる。
【0041】
また、撹拌機33は、電動モータで撹拌し、この電動モータをインバータ制御により、回転数を変化させることで、水素発生量を調節するようにしても良い。」
キ 「【0042】
発生した水素(H2)は水素管37を通じて動力発生部へ送られる。水素管37は、水素ガスを運ぶ管であり、水素ガスは大気中の酸素に触れると激しく燃焼する。そのため、水素管37に漏れ対策を厳重に施し、不図示の水素検知センサも設置される。
【0043】
図2に示すように水素発生部25を動力発生部17にごく近づけて動力発生部17を収納するエンジンルーム内に配置することで水素管37の配管長さを最短化することができ、設備費等を下げることができる。
【0044】
酸化アルミニウム(Al2O3)は、円筒容器31の下部に付設したドレーンパイプ39から排出する。ドレーンパイプ39は弁を有し、メンテナンス時に排出自在に設けている。
【0045】
このように、アルミ粉と水を供給することで、車に積載した活性水素水発生装置22により、水が車上で活性水素水に変換される。生成された活性水素水をアルミニウムと反応させ、水素を発生させることが可能である。この水素を燃料として内燃機関17aやバッテリにより給電されるモータ17bにより駆動力を発生させ車両は走行する。バッテリは内燃機関17a及び太陽光電池(図1、符号18)で充電される。」
ク 上記カの記載事項からみて、水素発生量の制御部があるといえる。
ケ 上記カ及びクの記載事項並びに制御分野における技術常識からみて、水素発生量の制御を行う電子制御部があるといえる。
コ 上記キの記載事項及び車両における技術常識から、水素を燃焼する燃焼部があるといえる。また、内燃機関においては、点火、爆発により動力を得ることが技術常識である。
上記アないしコの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
「水を活性水素水に変換し、アルミ粉と前記活性水素水とを混合するとともに、炭酸水素ナトリウムを添加して水素を発生させる水素発生部25を有し、水素発生量の制御部、水素発生量の制御を行う電子制御部、水素を燃焼する燃焼部により構成される内燃機関で、点火、爆発により動力を得ること。」
2 引用文献2
同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2009-62215号)には、「水素発生材料、水素発生材料の製造方法、水素発生材料の容器、水素燃料車両、及び携帯用機器」に関して、次の記載がある。
「【0044】
本発明に係る水素発生材料は、高い水素放出量を有し、水素放出時に外部から供給する熱量が少なくてすむために、移動体に水素を供給するのに好適である。本発明の水素発生材料から水素を供給する移動体としては、例えば、固体高分子型燃料電池または固体酸化物型燃料電池等の水素を燃料とする燃料電池を動力源とする水素燃料車両や、水素燃料の内燃機関を動力源とする水素燃料車両が適している。また、水素燃料車両のみならず、燃料電池を電源とした電動カートや電動車椅子等の用途にも好適である。」
上記の記載事項からみて、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献2記載事項]
「水素燃料車両において、水素燃料の内燃機関を動力源とすること。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「水」及び「活性水素水」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、前者の「水」に相当し、以下同様に、「アルミ粉」及び「炭酸水素ナトリウム」は「化学物質」に、「水素発生量の制御部」は「ガス制御部」に、「水素発生量の制御を行う電子制御部」は「電子制御部」に、「水素を燃焼する燃焼部」は「燃焼部」に、それぞれ相当し、後者の「水素発生量の制御部」、「水素発生量の制御を行う電子制御部」、「水素を燃焼する燃焼部」により構成される「内燃機関」は前者の「水素エンジン」に相当する。
後者の「水素」は前者の「水素などガス」に相当するから、後者の「水素発生部25」は前者の「水素などガス発生する手段」に相当する。
そして、上記の相当関係を踏まえると、後者の「水を活性水素水に変換し、アルミ粉と前記活性水素水とを混合するとともに、炭酸水素ナトリウムを添加して水素を発生させる」ことは、水を原料として内燃機関の燃料である水素を生成することであるから、前者の「水を燃料として、化学物質との反応により、水素などガス発生する」ことに相当する。
後者の「点火、爆発により動力を得ること」と前者の「点火、爆発、噴射により動力を得る事」とは、「点火、爆発により動力を得る事」という限りで一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。
[一致点]
「水を燃料として、化学物質との反応により、水素などガス発生する手段、ガス制御部、電子制御部、燃焼部などにより構成される水素エンジンで、点火、爆発により動力を得る事を特徴とする。」
[相違点]
動力を得る事について、本願発明は、点火、爆発、「噴射」によるのに対して、引用発明は、点火、爆発による点。
2 判断
ア 相違点について
上記相違点について検討する。
引用文献2記載事項は、「水素燃料車両において、水素燃料の内燃機関を動力源とすること。」であり、このような水素燃料の内燃機関が、点火、爆発、噴射により動力を得るものを含むことは自明である。
そうすると、水素エンジンにおいて、点火、爆発、噴射により動力を得る事は、本願出願前における周知技術といえる(例えば、上記引用文献2記載事項、特開2011-153616号公報の段落【0075】ないし【0078】及び図4、特開2008-63955号公報の段落【0006】及び図1を参照。)。
そして、引用発明と上記周知技術とは、水素エンジンに関する技術である点で共通し、引用発明に上記周知技術を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。
そうすると、引用発明の内燃機関において、上記周知技術を考慮し、「点火、爆発、噴射により動力を得る事」として、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 効果について
本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
ウ まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 請求人の主張について
審判請求人は、令和元年6月13日の審判請求書において、次のように主張する。
1 「3.立証の趣旨 本願では水とナトリウム等の化合物を直接、反応させるのでより簡単な装置構成で行いるようにしている。それで
本願は反応手法、装置構成など文献1とは全く異なる。引用文献2は金属水素化合物と水素発生材料で加熱装置を小型化する
手法である。それで本願の様な加熱装置など必要としない水素発生手法とは全く異なったものである。」
2 「4.本願発明が特許されるべき理由 本願装置の水素エンジンで小型軽量化に一番重要な働きをしているのは従来のエンジンの
シリンダー、ピストン、モータ等の概念をなくし、簡素化した本願独自の手法、構成となっている。
本願の様な小型軽量の装置は同業者でも容易に考え実現出来るものではない。」
上記1について検討すると、本願の請求項1においては、水と「ナトリウム」とを直接、反応させることは特定されていない。また、加熱装置の有無も本願の請求項1においては特定されていない。したがって、請求人の主張は請求項の記載に基づくものではなく、当を得ない。
なお、水とナトリウムが化学的に反応して水素を発生することは、岩波理化学事典(第5版)の984ページ、特開2007-145686号公報の請求項7及び8に記載されるように、本願の出願前において技術常識であるから、仮に、本願の請求項1における「化学物質」がナトリウムを意味すると解釈した場合でも、引用発明において、上記技術常識を参酌して、「水を燃料として、化学物質との反応により、水素などガス発生する」ことは、当業者が容易になし得たことである。
また、上記「第5 1対比」で述べたとおり、後者の「水を活性水素水に変換し、アルミ粉と前記活性水素水とを混合するとともに、炭酸水素ナトリウムを添加して水素を発生させる」ことは、水を原料として内燃機関の燃料である水素を生成することであるから、前者の「水を燃料として、化学物質との反応により、水素などガス発生する」ことに相当するが、「水を燃料として」水素ガスを発生すること自体は、特開2002-227657号の段落【0012】に記載されるように、本願の出願前において周知の事項である。
上記2について検討すると、本願請求項1の記載から、シリンダー、ピストン、モータ等の有無や、簡素化した手法、構成や小型軽量の装置といった事項を特定することはできないから、請求人の主張は請求項1の記載に基づくものではなく、当を得ない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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