特許拒絶査定不服審判
2019-004902
防眩フィルム並びにその製造方法及び用途
- 審判番号
- 2019-004902
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-237148外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月12日
- 審決日
- 2020年06月17日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (G02B) / P18 .537-WZ (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-237148「防眩フィルム並びにその製造方法及び用途」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月27日出願公開、特開2019-105694〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2017-237148号(以下、「本件出願」という。)は、平成29年12月11日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年12月 5日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月22日提出:意見書、手続補正書
平成31年 1月31日付け:拒絶査定
平成31年 4月12日提出:審判請求書
平成31年 4月12日提出:手続補正書
令和 元年12月19日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月 6日提出:意見書、手続補正書
2 本願発明
本件出願の請求項1~請求項10に係る発明は、令和2年2月6日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~請求項10に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のものである。
「 視感度反射率が3~3.8%であり、0.5mm幅の光学櫛を使用した透過像鮮明度が1~25%であり、かつヘイズが40%以上である防眩フィルムを備え、かつ精細度150ppiを超えて300ppi以下である中型又は大型スクリーンの表示装置。」
3 当合議体の拒絶の理由
令和元年12月19日付け拒絶理由通知書によって当合議体が通知した拒絶の理由のうち「理由2(進歩性)」(以下、「当合議体の拒絶の理由」という。)は、概略、本件出願の請求項1~請求項12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において、頒布された刊行物である下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用例1:特開2014-6448号公報
引用例2:国際公開第2016/103685号
引用例3:国際公開第2017/141903号
(当合議体注:引用例1、引用例2あるいは引用例3が主引用例である。)
第2 当合議体の判断
1 引用例1の記載及び引用発明
(1) 引用例1の記載
当合議体の拒絶の理由において引用され、本件出願の出願前に日本国内または外国において、頒布された刊行物である、特開2014-6448号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある(当合議体注:下線は当合議体が付したものである。)
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子又は精密機器の表示部において、表示装置と組み合わせて用いられる光学フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)は、テレビ(TV)用途又は動画表示用途で、表示装置として目覚ましい進歩を遂げ、急速に普及が進んでいる。例えば、高速応答性を有する液晶材料の開発や、オーバードライブなどの駆動方式の改良により、従来、液晶が苦手としていた動画表示を克服するとともに、表示の大型化に対応した生産技術革新も進んでいる。
【0003】
これらのディスプレイにおいて、画質を重視するテレビやモニタなどの用途、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラなどの用途では、外光の映り込みを防止する処理が表面に施されるのが通例である。その手法の一つに防眩処理があり、例えば、通常、液晶ディスプレイの表面には防眩処理がなされている。防眩処理は、表面に微細な凹凸構造を形成することにより、表面反射光を散乱し、映り込み像をぼかす効果を発現させる処理であり、通常、LCDには、このような処理をした防眩性フィルムが配設されている。
・・・略・・・
【0005】
しかし、この防眩性シートでは、シリカ微粒子の割合が多いため、ハードコート層の機械的特性が低下する。また、多量のシリカ微粒子を凝集させるため、凝集剤が必要であり、ブリードアウトの原因となる。さらに、防眩性も充分ではなく、強い光が映り込む環境下で視認性を向上するのは困難である。
・・・略・・・
【0007】
しかし、この防眩性フィルムでは、エンボス板の調製が困難である上に、製造工程が煩雑であり、生産性が低い。さらに、防眩性も充分ではなく、強い光が映り込む環境下で視認性を向上するのは困難である。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、生産性が高く、防眩性に優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、映り込みを抑制でき、視認性に優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、耐擦傷性及び機械的特性にも優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
・・・略・・・
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明フィルムの上に形成されたハードコート層の表面に、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で微細な凹凸構造を形成することにより、防眩性に優れた光学フィルム(特に防眩フィルム)を高い生産性で製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の光学フィルムは、透明フィルムと、この透明フィルムの上に形成されたハードコート層とを含む光学フィルムであって、前記ハードコート層が、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成され、かつ前記ハードコート層の表面に、凹凸の平均間隔Sm5~40μm及び十点平均粗さRz0.8~2.5μmの凹凸構造が形成されている。
【0015】
本発明の光学フィルムは、反射散乱光プロファイルにおける散乱角0°の散乱光強度(I0)に対する散乱角10°の散乱光強度(I10)の比(I10/I0)が0.05~0.7、散乱角0°の散乱光強度(I0)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I0)が0.01~0.5の範囲にあってもよい。また、反射散乱光プロファイルにおける散乱角5°の散乱光強度(I5)に対する散乱角15°の散乱光強度(I15)の比(I15/I5)は0.3~0.8、散乱角5°の散乱光強度(I5)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I5)は0.2~0.6、散乱角5°の散乱光強度(I5)に対する散乱角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I5)は0.15~0.4の範囲にあってもよい。さらに、視感度反射率Yは4%以下であってもよい。
【0016】
本発明の光学フィルムにおいて、前記ナノファイバーはセルロースナノファイバーであってもよい。前記硬化性組成物は、さらに無機ナノ粒子(特に金属酸化物粒子)を含んでいてもよい。前記硬化性樹脂前駆体は、ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記ナノファイバーの割合は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.01~3重量部程度であってもよい。前記硬化性組成物は、さらにエチレン性不飽和結合を有さない高分子(特にセルロース誘導体)を含んでいてもよい。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0018】
本発明では、透明フィルムの上に形成されたハードコート層の表面が、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成された微細な凹凸構造を有するため、防眩性に優れた光学フィルムが高い生産性で得られる。特に、この光学フィルムは、細かい凹凸を有する表面の形状により反射率を低下できるとともに、反射散乱光を散乱角15°以上の広角側に散乱させることにより散乱角0~5°付近の散乱光強度が低いため、映り込みを抑制でき、視認性に優れており、強い光が映り込む環境下でも視認性に優れたディスプレイの表示が得られる。すなわち、周辺の環境が変化した場合でも安定した表示の視認性が得られるため、カーナビゲーション用ディスプレイ、スマートフォン、タブレットパーソナルコンピュータ(PC)等のディスプレイ表面として最適である。また、蛍光灯や窓等の強い光が映りこむような環境下に設置されても映り込みがほとんどないため、PCモニターやテレビを含む各種のディスプレイの表面シートとしても適している。
【0019】
また、ハードコート層を硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成されているため、耐擦傷性及び機械的特性も向上できる。さらに、凝集剤を配合することなく、優れた光学特性を発現する凹凸構造を形成できるため、凝集剤などのブリードアウトが抑制された光学フィルムが得られる。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0020】
[ハードコート層]
本発明の光学フィルムは、透明フィルムの上に形成されたハードコート層を含む。このハードコート層は、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成されており、表面に微細な凹凸構造を有している。
【0021】
(ハードコート層の表面構造)
具体的には、表面の凹凸構造は、凹凸の平均間隔Smが5~40μmであり、好ましくは8~38μm、さらに好ましくは10~35μm(特に12~32μm)程度であってもよい。Smが小さすぎると、防眩性が低下し、映り込みも発生し易く、Smが大きすぎると、ギラツキが発生し易くなる。
【0022】
前記凹凸構造の十点平均粗さRzは0.8~2.5μmであり、好ましくは0.85~2.3μm、さらに好ましくは0.9~2μm(特に1~1.8μm)程度であってもよい。Rzが小さすぎると、防眩性が低下し、映り込みも発生し易く、Rzが大きすぎると、画像の鮮明性が低下し、製造も困難となる。
【0023】
本発明では、Smが小さいにも拘わらず、比較的大きなRzを有しているため、反射率を低下できるとともに、反射散乱光を広角側に散乱できるため、映り込みを抑制でき、視認性に優れており、強い光が映り込む環境下でも視認性を向上できる。
【0024】
なお、本発明では、これらの凹凸の平均間隔Sm及び十点平均粗さRzは、JIS B0601に準拠した方法で測定できる。
【0025】
(硬化性組成物)
表面に前記凹凸構造が形成されたハードコート層は、透明で、かつ硬質な材料で形成されていればよく、光学特性及び機械的特性に優れたハードコート層を簡便に製造できる点から、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成されている。硬化性組成物の硬化物で形成されることにより耐擦傷性などの機械的特性を向上できるともに、ナノファイバーを含有することにより、光学特性を損なうことなく、簡便な方法で、前記凹凸構造を形成できる。
【0026】
(A)硬化性樹脂前駆体
硬化性樹脂前駆体としては、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物が使用できる。前記樹脂前駆体としては、例えば、・・・略・・・活性光線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。
・・・略・・・
【0032】
また、硬化性樹脂前駆体は、ヘイズを抑制できるとともに、屈折率も調整でき、視認性も向上できる点から、前記ケイ素非含有硬化性樹脂前駆体(特にケイ素非含有多官能(メタ)アクリレート)に加えて、ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
・・・略・・・
【0043】
(B)ナノファイバー
ナノファイバーは、無機繊維であってもよいが、調製し易い点などから、有機繊維が好ましい。有機繊維としては、天然繊維(例えば、セルロース、シルク、羊毛繊維など)、再生繊維(例えば、タンパク質又はポリペプチド繊維、アルギン酸繊維など)、瀝青炭質繊維(ピッチ系繊維など)、合成繊維(熱硬化性樹脂繊維、熱可塑性樹脂繊維など)などが挙げられる。これらの有機繊維のうち、繊維長が短いナノファイバーを調製し易い点から、セルロース繊維が好ましい。
・・・略・・・
【0046】
ナノファイバー(特にセルロースナノファイバー)の平均繊維径は、ナノメータサイズであれば特に限定されないが、例えば、10~500nmであり、好ましくは30~400nm、さらに好ましくは50~300nm(特に100~250nm)程度である。平均繊維径が小さすぎると、凹凸構造を形成するのが困難となる。平均繊維径が大きすぎると、微細な凹凸構造を形成するのが困難となる。本発明では、粒径の大きな粒子を用いることなく、ナノメータサイズのファイバーを用いて特定の条件で製造することにより、微細な凹凸構造を形成できる。
・・・略・・・
【0049】
ナノファイバー(特にセルロースナノファイバー)の平均繊維長は0.1~30μm程度であり、例えば、0.5~20μm(例えば、1~20μm)、好ましくは1~10μm、さらに好ましくは2~8μm(特に2.5~6μm)程度である。平均繊維長が小さすぎると、凹凸構造を形成するのが困難となる。平均繊維長が大きすぎると、凹凸構造が大きくなり過ぎて、反射率が高くなる。
・・・略・・・
【0055】
(C)エチレン性不飽和結合を有さない高分子
硬化性組成物は、柔軟性などの機械的特性を向上させるために、さらに硬化性樹脂前駆体の硬化反応に関与するエチレン性不飽和結合を有さない高分子を含んでいてもよい。
【0056】
このような高分子としては、例えば、オレフィン系樹脂、・・・略・・・セルロース誘導体・・・略・・・などが例示できる。これらの高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0057】
これらの高分子のうち、スチレン系樹脂、・・・略・・・セルロース誘導体などが汎用されるが、透明性及び耐熱性に優れるとともに、柔軟性などの機械的特性も向上できる点から、セルロース誘導体が好ましい。
【0061】
・・・略・・・なかでも、溶剤のへの溶解性が高く、塗工液の調製がし易い上に、少量の添加によって塗工液の粘度調節が容易にできるとともに、塗工液でのセルロースナノファイバーの凝集を抑制し、保存安定性を高めるため、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート・・・略・・・などのセルロースC2-4アシレート(特に、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテートC3-4アシレート)が好ましい。
・・・略・・・
【0063】
(D)無機粒子
硬化性組成物は、透明性などの光学特性を改良する点などから、さらに無機粒子を含んでいてもよい。
・・・略・・・
【0065】
無機粒子の平均一次粒径は、1~60nm(例えば、1~50nm)、好ましくは2~30nm、さらに好ましくは3~15nm(特に5~10nm)程度である。無機粒子の平均粒径が小さすぎると、ヘイズや反射率を低減する効果が低下する。無機粒子の平均粒径が大きすぎると、表面の凹凸構造に影響を与え、光学特性が低下する。
【0066】
無機粒子としては、例えば、金属単体、金属酸化物・・・略・・・などが挙げられる。・・・略・・・これらの無機粒子のうち、透明性などの点から、酸化チタンなどの金属酸化物粒子、酸化ケイ素などのケイ素化合物粒子、フッ化マグネシウムなどのフッ素化合物粒子などが好ましく、ヘイズを抑制でき、耐擦傷性にも優れる点から、金属酸化物粒子が特に好ましい。さらに、金属酸化物粒子は、低屈折率層などとの密着性も向上できる。
・・・略・・・
【0068】
これらの金属酸化物粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属酸化物粒子のうち、アンチモン、錫、亜鉛を含む金属酸化物、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン含有酸化錫(アンチモンドープ酸化錫)、酸化錫、酸化亜鉛などが好ましく、アンチモン含有酸化錫、酸化アンチモン、酸化錫及び酸化亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種で構成された微粒子(特にアンチモン含有酸化錫粒子(ATO粒子))が特に好ましい。
・・・略・・・
【0071】
(E)他の添加剤
硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
・・・略・・・
【0078】
ハードコート層の厚みは、例えば、0.5~30μm、好ましくは1~25μm、さらに好ましくは3~20μm(特に5~15μm)程度である。
【0079】
[透明フィルム]
透明フィルム(又は基材フィルム)としては、ガラス、セラミックスの他、樹脂シートが例示できる。
・・・略・・・
【0081】
光学的に等方性の透明フィルムには、ガラス、未延伸又は延伸プラスチックシート又はフィルムが例示でき、例えば、ポリエステル(PET、PBTなど)、セルロース誘導体類、特に、セルロースエステル類(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3-4アシレートなど)などで形成されたシート又はフィルムが好ましい。特に、ハードコート層の熱可塑性樹脂としてセルロース誘導体を使用した場合、透明フィルムとしてセルロース誘導体で構成されたフィルムを用いると、両者の密着性も向上できる。
【0082】
透明フィルムの厚みは、例えば、5~2000μm、好ましくは15~1000μm、さらに好ましくは20~500μm程度の範囲から選択できる。
【0083】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、前記ハードコート層を有することにより、反射散乱光を散乱角15°以上の広角側に散乱させることにより散乱角0~5°付近の散乱光強度が低いため、映り込みを抑制でき、視認性に優れている。
【0084】
すなわち、本発明の光学フィルムにおいて、反射散乱光プロファイルにおける散乱角0°の散乱光強度(I0)に対する散乱角10°の散乱光強度(I10)の比(I10/I0)は、例えば、0.05~0.7、好ましくは0.08~0.65、さらに好ましくは0.1~0.6程度である。
【0085】
散乱角0°の散乱光強度(I0)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I0)は、例えば、0.01~0.5、好ましくは0.04~0.45、さらに好ましくは0.1~0.42程度である。
【0086】
散乱角5°の散乱光強度(I5)に対する散乱角15°の散乱光強度(I15)の比(I15/I5)は、例えば、0.3~0.8、好ましくは0.4~0.7、さらに好ましくは0.45~0.65程度である。
【0087】
散乱角5°の散乱光強度(I5)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I5)は、例えば、0.2~0.6、好ましくは0.3~0.5、さらに好ましくは0.35~0.48程度である。
【0088】
散乱角5°の散乱光強度(I5)に対する散乱角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I5)は、例えば、0.15~0.4、好ましくは0.18~0.35、さらに好ましくは0.2~0.32程度である。
【0089】
本発明の光学フィルムは、微細な凹凸構造を有し、反射率を低下できるため、映り込みを抑制できる。すなわち、反射率(視感度反射率Y)は5%以下であってもよく、例えば、4%以下(例えば、3.5%以下)、好ましくは1~3.5%、さらに好ましくは1.5~3%(特に2~3%)程度であってもよい。
【0090】
本発明の光学フィルムは、高い防眩性を有するにも拘わらず、高い透明性も有しており、JIS K7136に準拠した全光線透過率は、例えば、80%以上であってもよく、例えば、85~99%、好ましくは90~98%、さらに好ましくは92~97%(特に93~96%)程度である。
【0091】
本発明の光学フィルムは、JIS K7136に準拠したヘイズは、例えば、10~80%、好ましくは20~75%、さらに好ましくは30~70%程度であってもよい。
【0092】
本発明の光学フィルムの透過像鮮明度は、0.125mm幅の光学櫛を使用した場合、すなわち、光学櫛幅0.125mmの透過像鮮明度は、例えば、1~30%、好ましくは2~20%、さらに好ましくは3~15%程度である。
【0093】
光学櫛幅0.25mmの透過像鮮明度は、例えば、1~30%、好ましくは2~20%、さらに好ましくは3~15%程度である。
【0094】
光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度は、例えば、1~30%、好ましくは2~20%、さらに好ましくは3~15%程度である。
【0095】
光学櫛幅1mmの透過像鮮明度は、例えば、2~40%、好ましくは3~30%、さらに好ましくは5~20%程度である。
【0096】
光学櫛幅2mmの透過像鮮明度は、例えば、2~60%、好ましくは3~50%、さらに好ましくは5~40%程度である。
【0097】
透過像鮮明度とは、膜を透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、膜からの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、膜が透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
【0098】
C(%)=[(M-m)/(M+m)]×100
【0099】
すなわち、Cの値が100%に近づく程、透明導電性膜による像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
・・・略・・・
【0101】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムは、ハードコート層の表面に前記凹凸構造を形成できる限り、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。ハードコート層が硬化性組成物の硬化物で形成されている場合、本発明の光学フィルムは、透明フィルムの上に、硬化性組成物を含む塗工液を塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射して硬化することにより得ることができる。
・・・略・・・
【0107】
本発明では、塗工液が凝集剤を含有していないにも拘わらず、塗工液中に分散したナノファイバーが硬化性組成物の硬化とともに適度に凝集し、核となって樹脂成分が隆起し、表面に微細な凹凸構造を形成すると推定できる。
【0108】
このような凹凸構造が形成されたハードコート層は、活性光線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、硬化樹脂を形成する。前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱、光照射などを組合せてもよい。これらのうち、特定の凹凸構造を形成し易い点から、光照射が好ましい。光照射は、光硬化成分などの種類に応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。」
ウ 「【実施例】
【0114】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた透明導電性膜を以下の項目で評価した。
【0115】
[ヘイズ及び全光線透過率(TPP)]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
【0116】
[透過像(写像)鮮明度]
光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.125~2mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。
【0117】
[反射率(視感度反射率Y)]
光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、積分球反射強度測定装置((株)日立ハイテクノロジーズ製、U-3300)を用いて、積分反射率(視感度換算)を測定した。
【0118】
[散乱強度]
測定サンプルの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、光散乱測定装置((株)村上色彩技術研究所製「変角光度計GP-200」)を用いて反射散乱光を測定した。入射光角度をフィルムの法線から-10°として、5mm径に絞られた白色光源をフィルムへ入射し、受光機を変角して表面反射散乱光を測定した。なお、受光角度は、反射光が0°を中心に略対称となるように、フィルム法線から10°の位置を0°とした。
【0119】
[凹凸の平均間隔Sm、十点平均粗さRz]
JIS B0601に準拠して、非接触表面形状測定システム((株)菱化システム製「VertScan2.0」を用いて、凹凸の平均間隔Sm、十点平均粗さRzを測定した。
【0120】
[鉛筆硬度]
JIS K5400に準拠し、荷重4.9Nで鉛筆硬度を測定した。
【0121】
[映り込みの評価]
表示面における映り込みの判定は、得られた光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、蛍光灯の光を映り込ませ、目視にて以下の基準で評価した。
【0122】
◎:蛍光灯の存在が確認できない
○:蛍光灯の存在がわずかに確認できる
×:蛍光灯の存在がはっきりと確認できる。
【0123】
[ギラツキの評価]
表示面におけるギラツキの判定は、6.4型XGA液晶ディスプレイ(画素数1024×768)上に、得られた光学フィルムを配設し、白表示として目視にて以下の基準で評価した。なお、用いたLCDディスプレイの表層側偏光板は、クリアタイプの偏光板であった。
【0124】
◎:ギラツキが感じられない
○:ギラツキが僅かに感じられる
×:ギラツキが感じられる。
【0125】
[塗工液の調製]
(ハードコート層塗工液:SNC-1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製「DPHA」、屈折率1.51)70重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製「PETIA」、屈折率1.51)30重量部及びセルロースプロピオネートアセテート(イーストマン社製「CAP-482-20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000)1.0重量部を、2-ブタノン(MEK)290重量部、1-メトキシ-2-プロパノール(MMPG)185重量部および1-ブタノール(BuOH)25重量部の混合液に溶解した。この溶液に、光重合開始剤A(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア184」)2重量部及び光重合開始剤B(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア907」)1重量部を加えて溶解した。さらに、この溶液に、セルロースナノファイバー((株)ダイセル製、平均繊維径約200nm、平均繊維長さ約5μm、2重量%のイソプロパノール分散液)を100重量部加え、30分間超音波をかけて分散を行い、ハードコート層塗工液:SNC-1を調製した。
【0126】
(ハードコート層塗工液:SNC-2)
さらにATO粒子[日揮触媒化成(株)製「ELCOM SH-1212ATV」、粒径8nm、20重量%のアルコール(エタノール/イソプロパノール=80/20(重量比)の混合溶媒)分散液]を5重量部添加する以外はSNC-1と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC-2を調製した。
【0127】
(ハードコート層塗工液:SNC-3)
さらにシリコーンアクリレート(六官能シリコーン含有アクリル系UV硬化モノマー、ダイセルサイテック(株)製「EBECRYL1360」)を0.02重量部添加する以外はSNC-2と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC-3を調製した。
【0128】
(ハードコート層塗工液:SNC-4)
シリコーンアクリレートの添加量を0.05重量部に変更する以外はSNC-3と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC-4を調製した。
・・・略・・・
【0138】
実施例1
透明フィルムとして、トリアセチルセルロールフィルム(富士フイルム(株)製「TAC」、厚み80μm)を用い、このフィルムの上に、ハードコート層塗工液SNC-1をバーコーター#18を用いて塗工した後、50℃で1分間乾燥させた。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層を形成した。得られた光学フィルムにおけるハードコート層の厚みは約8μmであった。
【0139】
実施例2~10及び比較例1~3
ハードコート層塗工液SNC-1の代わりに、ハードコート層塗工液SNC-2~10、AG1~3を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。なお、ハードコート層の厚みは、実施例2~10が約7μm、比較例1~3が約6μmであった。
【0140】
実施例及び比較例で得られた光学フィルムについて、各種特性を測定した結果を表1~3に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
表1~3の結果から明らかなように、実施例の光学フィルムは、光学特性及び機械的特性に優れる。一方、比較例の光学フィルムは、光学特性が低い。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の光学フィルムは、種々の表示装置、例えば、液晶表示(LCD)装置、陰極管表示装置、有機又は無機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル付き表示装置などの表示装置に利用される光学フィルムとして利用できる。
【0146】
これらのうち、本発明の光学フィルムは、PCモニターやテレビを含む各種のディスプレイに有用であり、周辺の環境に影響されずに防眩性を発揮できるため、カーナビゲーション用ディスプレイ、スマートフォン、タブレットパーソナルコンピュータ(PC)等のディスプレイ及びタッチパネル付き表示装置の防眩フィルムとして特に有用である。」
(2) 引用発明
ア 引用例1の【0114】~【0126】、【0138】、【0141】~【0143】(【表1】~【表3】)には、引用例1でいう「本発明」の「防眩性に優れた光学フィルム」(【0009】)を、具体的に実施した「実施例1」が開示されている。
イ また、引用例1でいう「本発明」の「光学フィルム」は、「PCモニターやテレビを含む各種のディスプレイに有用であ」り(【産業上の利用分野】【0146】)、「蛍光灯や窓等の強い光が映りこむような環境下に設置されても映り込みがほとんどないため、PCモニターやテレビを含む各種のディスプレイの表面シートとしても適している」(【発明の効果】【0018】)。
ウ 上記(1)、上記ア及びイより、引用例1には、「実施例1」の「防眩性に優れた光学フィルム」を「表面シート」として備えた「PCモニター」の発明(以下、「引用発明」という。)として、以下のものが記載されていると認められる。なお、ヘイズ等の数値については、【0141】~【0143】の【表1】~【表3】を参照するとともに、【0084】~【0088】及び【0115】~【0124】に記載の定義にしたがった。
「 防眩性に優れた光学フィルムを表面シートとして備えたPCモニターであって、
光学フィルムは、
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート30重量部及びセルロースプロピオネートアセテート1.0重量部を、2-ブタノン(MEK)290重量部、1-メトキシ-2-プロパノール(MMPG)185重量部および1-ブタノール(BuOH)25重量部の混合液に溶解し、この溶液に、光重合開始剤A(「イルガキュア184」)2重量部及び光重合開始剤B(「イルガキュア907」)1重量部を加えて溶解し、さらに、この溶液に、セルロースナノファイバー(平均繊維径約200nm、平均繊維長さ約5μm、2重量%のイソプロパノール分散液)を100重量部加え、30分間超音波をかけて分散を行い、ハードコート層塗工液SNC-1を調製し、
透明フィルムとして、トリアセチルセルロールフィルム(厚み80μm)を用い、このフィルムの上に、ハードコート層塗工液SNC-1を塗工した後、乾燥させ、紫外線硬化処理を行い、ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層を形成して、
得られたものであり、
光学フィルムにおけるハードコート層の厚みは約8μmであり、
光学フィルムのヘイズは64.30%、全光線透過率(TPP)は95.40%、光学櫛の幅が0.125mm、0.25mm、0.5mm、1mm及び2mmのときの透過像鮮明度は、それぞれ、4.9%、4.2%、4.2%、8.9%及び17.4%、反射率(視感度反射率Y)は3.13%であり、散乱角0°の散乱光強度I0、散乱角5°の散乱光強度I5、散乱角10°の散乱光強度I10、散乱角15°の散乱光強度I15、散乱角20°の散乱光強度I20、散乱角30°の散乱光強度I30、I10/I5、I15/I5、I20/I5、I30/I5、I10/I0、I20/I0及びI30/I0は、それぞれ、9.433、3.396、2.320、1.822、1.462、0.906、0.683、0.537、0.431、0.267、0.246、0.155及び0.096であり、
凹凸の平均間隔Smは38.54μm、十点平均粗さRzは2.22120μm、鉛筆硬度は2H、映り込みは◎、ギラツキは◎であり、
ここで、ヘイズ、全光線透過率(TPP)、透過像鮮明度、反射率(視感度反射率Y)、散乱光強度、凹凸の平均間隔Sm、十点平均粗さRz、鉛筆硬度、映り込み及びギラツキは、以下の測定、評価方法による、PCモニター。
[ヘイズ及び全光線透過率(TPP)の測定]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
[透過像鮮明度の測定]
光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.125~2mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。
[反射率(視感度反射率Y)の測定]
光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、積分球反射強度測定装置((株)日立ハイテクノロジーズ製、U-3300)を用いて、積分反射率(視感度換算)を測定した。
[散乱光強度の測定]
測定サンプルの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、光散乱測定装置((株)村上色彩技術研究所製「変角光度計GP-200」)を用いて反射散乱光を測定した。入射光角度をフィルムの法線から-10°として、5mm径に絞られた白色光源をフィルムへ入射し、受光機を変角して表面反射散乱光を測定した。なお、受光角度は、反射光が0°を中心に略対称となるように、フィルム法線から10°の位置を0°とした。
[凹凸の平均間隔Sm及び十点平均粗さRzの測定]
JIS B0601に準拠して、非接触表面形状測定システム((株)菱化システム製「VertScan2.0」を用いて、凹凸の平均間隔Sm、十点平均粗さRzを測定した。
[鉛筆硬度の測定]
JIS K5400に準拠し、荷重4.9Nで鉛筆硬度を測定した。
[映り込みの評価方法]
表示面における映り込みの判定は、得られた光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、蛍光灯の光を映り込ませ、目視にて以下の基準で評価した。
◎:蛍光灯の存在が確認できない
○:蛍光灯の存在がわずかに確認できる
×:蛍光灯の存在がはっきりと確認できる
[ギラツキの評価方法]
表示面におけるギラツキの判定は、6.4型XGA液晶ディスプレイ(画素数1024×768)上に、得られた光学フィルムを配設し、白表示として目視にて以下の基準で評価した。なお、用いたLCDディスプレイの表層側偏光板は、クリアタイプの偏光板であった。
◎:ギラツキが感じられない
○:ギラツキが僅かに感じられる
×:ギラツキが感じられる」
2 対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
(1) 「防眩フィルム」
引用発明の「光学フィルム」は、「防眩性に優れた」ものである。
そうすると、引用発明の「防眩性に優れたフィルム」は、本願発明の「防眩フィルム」に相当する。
(2) 「視感度反射率」
引用発明の「光学フィルム」の「反射率(視感度反射率Y)は3.13%であ」る。
また、引用発明の「反射率(視感度反射率Y)」は、「光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、積分球反射強度測定装置((株)日立ハイテクノロジーズ製、U-3300)を用いて、積分反射率(視感度換算)を測定した」ものである。
これに対して、本願発明でいう「視感度反射率」は、「JIS Z8701に準拠して分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U-3900H」)を用いて測定した。防眩フィルムは市販の黒色アクリル板に光学糊で貼り付け、裏面からの反射ができるだけ影響しないようにしたものを測定対象とした。」(【0101】)というものである。
そうすると、引用発明の「反射率(視感度反射率Y)」の値と、本願発明の「視感度反射率」の値とは、概ね同一視可能なものである。
したがって、引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の「防眩フィルム」における、「視感度反射率が3~3.8%であり」との要件を満たす。
(3) 「透過像鮮明度」
引用発明の「防眩性に優れた光学フィルム」の「光学櫛の幅が」「0.5mm」「の時の透過像鮮明度は」、「4.2%」である。
また、引用発明の「透過像鮮明度」は、「光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行」い、「写像測定器の光学櫛のうち、0.125~2mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した」ものである。
これに対して、本願発明でいう「透過像鮮明度」は、「防眩フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。」(【0104】)というものである。
そうすると、引用発明の「光学櫛の幅が」「0.5mm」「のときの透過像鮮明度」の値と、本願発明の「0.5mm幅の光学櫛を使用した透過像鮮明度」の値とは、概ね同一視可能なものである。
したがって、引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の「防眩フィルム」における、「0.5mm幅の光学櫛を使用した透過像鮮明度が1~25%であり」との要件を満たす。
(4) 「ヘイズ」
引用発明の「光学フィルム」の「ヘイズは64.30%」である。
また、引用発明の「ヘイズ」は、「ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した」ものである。
これに対して、本願発明でいう「ヘイズ」は、「ヘイズメーター(日本電色(株)製「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠し、凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置して測定した。」(【0102】)というものである。
そうすると、引用発明の「ヘイズ」の値と、本願発明の「ヘイズ」の値とは、概ね同一視可能なものである。
したがって、引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の「防眩フィルム」における、「ヘイズが40%以上である」との要件を満たす。
(5) 「表示装置」
引用発明の「PCモニター」は、「光学フィルムを」「備えた」ものである。
また、「PCモニター」とは、パーソナルコンピュター(「PC」)の出力表示装置である。
そうすると、上記(1)~(4)より、引用発明の「PCモニター」は、本願発明の「表示装置」に相当する。また、引用発明の「PCモニター」は、本願発明の「表示装置」における、「防眩フィルムを備え」との要件を満たす。
3 一致点及び相違点
(1) 一致点
本願発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 視感度反射率が3~3.8%であり、0.5mm幅の光学櫛を使用した透過像鮮明度が1~25%であり、かつヘイズが40%以上である防眩フィルムを備えた表示装置。」
(2) 相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
「表示装置」が、本願発明は、「精細度150ppiを超えて300ppi以下である中型又は大型スクリーンの」ものであるのに対して、引用発明は、その精細度及び表示面の大きさが不明である点。
4 判断
上記相違点1について検討する。
(1) 本件出願の出願前に、高精細なパーソナルコンピュータ用のモニターあるいはディスプレイとして、4K(3840×2160)の精細度で表示面の大きさが28インチ(157ppi)~22インチ(200ppi)~15インチ(294ppi)程度のもの、8K(7680×4320)の精細度で表示面の大きさが32インチ(275ppi)のもの、あるいは、FHD(1920×1080)の精細度で表示面の大きさが14インチ(157ppi)程度~10インチ(220ppi)程度のものは、既に市販され、周知のものである(当合議体注:「ppi」は、画素が正方形であるとして計算し、小数点以下を四捨五入して求めた値である。)。
そうしてみると、引用発明の「防眩性フィルムに優れた光学フィルムを表面シートとして備えたPCモニター」を、上記の精細度及び表示面の大きさのものとして具体化することは、本件出願の出願前の当業者が自然に試みることといえる。また、引用発明において、このような構成としたものは、上記相違点1に係る「精細度150ppiを超えて300ppi以下である中型又は大型スクリーンの」という本願発明の構成を具備したものとなる。
(当合議体注:本願発明でいう「中型」及び「大型」の基準は定かではないが、上記の表示面の大きさならば、「中型」ということができる。)
(2) あるいは、引用発明の「防眩性に優れた光学フィルム」は、「6.4型XGA液晶ディスプレイ(画素数1024×768)上に、得られた光学フィルムを配設し、白表示」を「目視」した時に、「ギラツキが感じられない」ものである。ここで、「6.4型XGA液晶ディスプレイ(画素数1024×768)」の精細度(当合議体注:XGAのアスペクト比は4.3である。)は200ppiである。
そうしてみると、上記引用発明の構成に接した当業者ならば、引用発明の「光学フィルム」は、200ppi程度の精細度のディスプレイに適用した際、ギラツキを抑制できる、あるいはギラツキの抑制が期待できると理解できる。
したがって、引用発明の「防眩性フィルムに優れた光学フィルムを表面シートとして備えたPCモニター」を、200ppi前後であって、かつ、表示面の大きさが20インチ~24インチの構成(例えば、4K(3840×2160)の精細度で表示面の大きさが24インチ(184ppi)、22インチ(200ppi)、20インチ(220ppi)の大きさ等のもの)として具体化することは、「ギラツキが感じられない」とされる引用発明の「光学フィルム」の特性に着目した当業者が、容易になし得たことである。また、引用発明において、このような構成としたものは、上記相違点1に係る「精細度150ppiを超えて300ppi以下である中型又は大型スクリーンの」という本願発明の構成を具備したものとなる。
(3) 本願発明の効果について
本件出願の明細書の【0014】には、【発明の効果】として、「本発明では、防眩フィルムの視感度反射率が3.8%以下であり、かつヘイズが40%以上であるため、反射防止性を向上できる。」、「本発明の防眩フィルムでは、反射率を低下させることにより目に入る光の量を低減し、眩しさを抑制できるが、ヘイズも高いため、蛍光灯などの映り込みをぼかして眩しさを抑制する防眩性も向上できる。」、「さらに、特定の硬化性組成物を湿式スピノーダル分解することにより、画像の視認性と透明性と防眩性とをいずれも充足できる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明が奏する効果であるか、あるいは、引用発明において、上記相違点1に係る構成としたものが奏する効果として、当業者が予測し得たものである。
(4) 令和2年2月6日提出の意見書の請求人の主張について
ア 請求人は、同意見書の「(3-2)本願発明と引用文献の発明との対比」において、「引用文献には、視感度反射率が3~3.8%であり、透過像鮮明度が1~25%であり、かつヘイズが40%以上である防眩フィルムを備え、かつ精細度150ppiを超えて300ppi以下である中型又は大型スクリーン表示装置については何ら開示も示唆もされていません。」、「本願発明の特徴は、中型又は大型スクリーン表示装置のなかでも、精細度が150ppiを超えて300ppi以下である表示装置に必要な視認性と透明性と防眩性とのバランスを取るために、高ヘイズの領域において、視感度反射率を特定の範囲に調整した点にあります。特に、高ヘイズの領域では、光が激しく散乱しますので、眩しさは低減できても、透明性は低下する上に、文字ボケも起こり易く、視認性は低下します。そのため、防眩性と透明性及び視認性とはトレードオフの関係にあります。特に、前記精細度を有する中型スクリーンの表示装置は、文字ボケし易く、視認性の向上が困難です。さらに、高ヘイズの領域では、反射も起こり易く、視感度反射率の低減自体も困難であり、反射光に対する視認性と防眩性との間でもトレードオフの関係があります。すなわち、精細度が150ppiを超えて300ppi以下である中型又は大型スクリーンの表示装置に要求される視認性と透明性と防眩性とを同時に充足するのは非常に困難であります。」、「引用文献1の実施例では、鉛筆硬度、映り込み、ギラツキが評価されていますが、本願発明のような文字ボケを抑制する視認性については評価されていません。」、「引用文献1では、防眩フィルムの用途について、中型又は大型スクリーンも一例として記載されていますが、好ましいディスプレイとして小型スクリーンであるカーナビゲーションやスマートフォンと同列に記載されているだけであり、精細度については記載されていません。さらに、実施例においては、ギラツキの評価において表示装置が使用されていますが、6.4型XGA液晶ディスプレイという小型スクリーンの表示装置が使用されています。しかも、この小型スクリーン表示装置は、ギラツキを評価するために使用されているにすぎず、文字ボケについては評価されていません。」、「すなわち、引用文献1では、本願発明のような精細度が150ppiを超えて300ppi以下である中型又は大型スクリーンの表示装置における使用は想定されておらず、このような用途において視認性と透明性と防眩性とを同時に充足させることを引用文献1から導き出すのは困難です。そのため、このような目的のために、視感度反射率を3~3.8%という特定の範囲に調整するのは困難であり、特定の視感度反射率と透過像鮮明度とヘイズとの組み合わせの技術的意義を容易に導き出すことはできません。」、「そして、本願発明では引用文献からは予測もできない顕著な(又は異質の)効果が得られます。すなわち、特定の精細度を有する中型又は大型スクリーンの表示装置や文字ボケを抑制することを想定していない引用文献から、特定の中型又は大型スクリーンの表示装置の効果を容易に予測できません。さらに、引用文献1の実施例ではギラツキの評価で小型スクリーンの表示装置が使用されていますが、小型スクリーンの表示装置で40%以上の高ヘイズの防眩フィルムを使用しますと、文字ボケが発生し易く、視認性を向上できません。この事実からも、本願発明の課題が、中型又は大型スクリーンの表示装置に特有の課題であり、かつトレードオフの関係にある困難な課題であることがご理解頂けると思われます。」、「これに対して、本願発明では、防眩フィルムの視感度反射率が3~3.8%であり、透過像鮮明度が1~25%であり、かつヘイズが40%以上でありますので、反射率を低下させることにより目に入る光の量を低減し、眩しさを抑制できることに加え、ヘイズも高いため、蛍光灯などの映り込みをぼかして眩しさを抑制する防眩性も向上でき、特に、表示装置のなかでも、精細度が150ppiを超えて300ppi以下である中型スクリーンの表示装置に対して、トレードオフの関係にある視認性と透明性と防眩性とのバランスを取ることができます。」旨主張している。
イ しかしながら、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることが、当業者が容易になし得たことであることは、上記(1)、(2)において既に述べたとおりである。
また、[1]防眩フィルムの光学特性として、防眩性やギラツキだけでなく文字ボケが発生しないことが求められること、[2]解像度200ppiの高精細液晶表示装置や、300ppiの高精細スマートフォンを用いてギラツキ及び文字ボケを目視にて評価できること、[3]高精細であればあるほどギラツキや文字ボケが発生しやすいことは技術常識である(例えば、特開2004-126495号公報の【0071】、特開2014-85371号公報の【0096】、特開2011-253106号公報の【0122】等を参照。)。
そうすると、請求人が主張する、文字ボケを抑制できるとの本願発明の効果は、当業者が期待する効果、あるいは、当業者が予測可能な効果にすぎない。さらに、トレードオフの関係にある視認性と透明性と防眩性とのバランスを取ることができるとの本願発明の効果についても、引用例1の記載や技術常識に基づき当業者が予測可能なことであって格別なものではない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
(5) 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第3 むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-004902