特許拒絶査定不服審判
2021-009888
カメラアダプタ
- 審判番号
- 2021-009888
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-521393外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月26日
- 審決日
- 2022年12月26日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ライカ カメラ アクチエンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】加藤 朝道
- 【請求人代理人】内田 潔人
- 分類
- P18 .121-WZ (G02B) / P18 .537-WZ (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-521393「カメラアダプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月 4日国際公開、WO2017/071686、平成30年11月 1日国内公表、特表2018-532162〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)10月25日(パリ条約による優先権主張 2015年10月26日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年 6月26日 :上申書、手続補正書の提出
令和 2年11月16日付け:拒絶理由の通知
令和 3年 1月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月17日付け:拒絶査定
令和 3年 7月26日 :審判請求書の提出
令和 3年 9月 8日 :審判請求書の手続補正書の提出
令和 4年 7月29日付け:拒絶理由の通知
令和 4年10月12日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和4年10月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、該ジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタであって、カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれた、前記接眼レンズ(3)の結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)と、
b)撮像センサ(12)を有するカメラハウジング(11)のための結合部を有し、前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能なスリーブ(10)と、を含み、
c)アダプタハウジング(16)には、シフト距離Δをジオプトリ単位Dptで表示する目盛りが配されている、
カメラアダプタ。」
第3 拒絶の理由
令和4年7月29日付けで当審が通知した請求項1に関する拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
[理由1](明確性)本件出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2](進歩性)本件出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
●理由1(明確性)について
請求項1には「接眼レンズ(3)の後側焦点距離を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)」、請求項1には「該後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能なスリーブ(10)」と記載されている。
しかしながら、接眼レンズ(3)は、焦点距離可変レンズのような特殊なレンズでない限り、一定の焦点距離を有するから、「後側焦点距離の変化」あるいは「焦点距離の変化」に関する記載は、どのようなことを意味しているのか不明であり、当該記載は不明確な記載である。
また、アダプタ対物レンズ(9)によって接眼レンズ(3)の後側焦点距離を変化させるとは、どのようなことを意味しているのか不明であるから、当該記載は不明確な記載である。
●理由2(進歩性)について
引用文献1.特開平9-43519号公報
第4 明確性について
請求項1には「カメラアダプタ内に位置固定的に嵌め込まれた、前記接眼レンズの結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ」、「前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能なスリーブ」と記載されている。
まず、光学の技術分野において、「結像システムの焦点距離の変化」とは、「結像システムの倍率の変化」とほぼ同義であることが技術常識であるところ、ジオプトリ補正によっては、焦点距離(もしくは倍率)はほぼ変化しないことが技術常識であるし、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズを用いて、焦点距離(もしくは倍率)の変化は補償できないことも技術常識である。
そうすると、請求項1の「ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償する」とは、どのようなことを意味するのかが理解できない。
したがって、請求項1の記載は、不明確である。
第5 進歩性について
1 引用文献について
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【0014】第1実施例
図1は、本実施例にかかる内視鏡撮像装置の構成を示す光軸に沿う断面図である。本実施例の内視鏡撮像装置は、TVカメラヘッド7を内視鏡1の接眼部に接続して使用する。TVカメラヘッド7以降を構成する撮像装置は従来例と同様であるため、ここでは省略する。TVカメラヘッド7は、結像レンズ系6と、この結像レンズ系6を保持しオートアイリス18を備えたアイリスユニット19と、CCD21と、CCD21の直前に配置されているフィルタ群10と、フィルタ群10及びCCD21を保持している枠部材23と、枠部材23に設けられているフォーカス調整ノブ20と、により構成されている。オートアイリス18は、開口の大きさを変えるための絞り羽根部と、この絞り羽根部を駆動するための図示しない駆動装置とにより構成されている。又、TVカメラヘッド7の前面(内視鏡1との接続面)には熱耐性を有するカバーガラス14が備えられている。そして、この撮像装置におけるフォーカシングは、フォーカス調整ノブ20を操作しCCD21を結像レンズ系6に対し光軸方向に沿って移動させることによって行われる。」
「【0019】内視鏡、特に硬性鏡では、対物レンズから接眼レンズまで、多数のレンズが配置されているが、各レンズの製造誤差,組立誤差等により、接眼レンズを覗いたときにピントが合うはずの物体位置が若干ずれている場合がある。図3はこの様子を説明するための図であり、(a)が正確にピントが合っている状態を示し、(b)がピントが合っていない状態を示している。同図(a)に示された状態では、点Pからの光が硬性鏡の対物レンズ,リレーレンズで伝送され、接眼レンズから平行光束として射出する(視度0m-1(ディオプタ))。これに対し、同図(b)でに示された状態では、点P’からの光が硬性鏡の対物レンズ,リレーレンズで伝送され、接眼レンズから平行光束として射出することになる。硬性鏡の接眼部に取付けられるTVカメラヘッドが、この平行光束をCCDに結像させる場合、図3(a)に示された硬性鏡1では点P、同図(b)に示された硬性鏡1’では点P’に位置する物体の像が最も明瞭に観察されることになる。即ち、最も明瞭に結像される物体の位置が硬性鏡毎に異なるのである。これが、製品毎のピントのばらつきである。これを補正してどの硬性鏡でも点Pの位置になる物体の像が最も明瞭に結像されるように調整する(CCDの位置を移動させる)のが、ここに云うピントのばらつきを補正するためのフォーカシングである。」
「【0022】更に、硬性鏡のピントのばらつきは、±0.5m-1の範囲内であればオートアイリスを用いることによって十分対応可能であり、どのような硬性鏡でもフォーカシングを不要とすることができる。この範囲を越えた場合には、フォーカシングが必要になる。即ち、例えば、図2に示した装置において、結像レンズ系6の焦点距離をfとすると、1m-1当たりの結像レンズ系6のフォーカシング移動量は、f2 /1000であり、このf2 /1000毎のステップ式のフォーカス調整機構を設けることが最良である。又、硬性鏡毎のばらつきは最大でも±1m-1であるので、TVカメラヘッドに備えられるフォーカス調整機構は、例えば図4(a)に示すようなダイヤル式に構成すると、非常に使い勝手のよいものとなる。
【0023】図4(a)に示すダイヤル25の近傍には、このダイヤル25に対して1m-1毎に指標26a,26b,26cが刻まれている。この指標26a~26cは、標準状態のフォーカス位置に対して(当審注:「フォーカス位置対して」は、「フォーカス位置に対して」の明らかな誤記であるので、誤記を正した上で摘記した。)最低±1m-1の位置に刻まれていれば、硬性鏡のピントのバラツキに十分対応することが可能である。又、この場合、指標は最低3点以上設けられていることが好ましい。尚、このダイヤル式のフォーカス調整機構は、図4(b)に示すように、TVカメラヘッド7の側面に設けられるものである。このダイヤル25を回転させることによって、図1に示された装置の場合にはCCD21を、図2に示された装置の場合には結像レンズ系6を、夫々光軸に沿って移動させることができるようになっている。」
図1、図4、図5は、以下のとおりである。
図1から、アイリスユニット19は、TVカメラヘッド7の外枠7aの所定位置に保持されていること、及び、接眼レンズ4、結像レンズ6、CCD21の順で配置されていることが、見て取れる。
【図1】
[図:0001397461000001.jpg]
【図4】
[図:0001397461000002.jpg]
【図5】
[図:0001397461000003.jpg]
(2)上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定の根拠とした箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
「内視鏡では、対物レンズから接眼レンズまで、多数のレンズが配置されているが、各レンズの製造誤差,組立誤差等により、接眼レンズを覗いたときにピントが合うはずの物体位置が若干ずれている場合があり、(【0019】)
TVカメラヘッド7は、結像レンズ系6と、この結像レンズ系6を保持しオートアイリス18を備えたアイリスユニット19と、CCD21と、CCD21の直前に配置されているフィルタ群10と、フィルタ群10及びCCD21を保持している枠部材23と、枠部材23に設けられているフォーカス調整ノブ20と、により構成され、TVカメラヘッド7を内視鏡1の接眼部に接続して使用するものであり、(【0014】)
接眼レンズ4、結像レンズ系6、CCD21の順で配置されており、
アイリスユニット19は、TVカメラヘッド7の外枠7aの所定位置に保持され、(図1)
フォーカシングは、フォーカス調整ノブ20を操作しCCD21を結像レンズ系6に対し光軸方向に沿って移動させることによって行われ、(【0014】)
結像レンズ系6の焦点距離をfとすると、1m-1当たりの結像レンズ系6のフォーカシング移動量は、f2 /1000であり、このf2 /1000毎のステップ式のフォーカス調整機構を設けることが最良であり、
TVカメラヘッド7に備えられるフォーカス調整機構は、ダイヤル式に構成すると、非常に使い勝手のよいものとなり、(【0022】)
ダイヤル25の近傍には、このダイヤル25に対して1m-1毎に指標26a,26b,26cが刻まれ、この指標26a~26cは、標準状態のフォーカス位置に対して最低±1m-1の位置に刻まれ、ピントのバラツキに十分対応することが可能であり、このダイヤル25を回転させることによって、CCD21を、夫々光軸に沿って移動させることができるようになっている(【0023】)
TVカメラヘッド7。(【0014】」
2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、該ジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタ」の構成について
引用発明の「TVカメラヘッド7」は、「内視鏡1の接眼部に接続して使用」するものであるので、アダプタの機能を有している。したがって、引用発明の「TVカメラヘッド7」は、本願発明の「カメラアダプタ」に、相当する。
引用発明の「内視鏡」は、本願発明の「光学的拡大装置」に相当する。
そして、引用発明の「対物レンズから接眼レンズまで、多数のレンズ」は、本願発明の「結像システム」に、引用発明の「接眼レンズ4」は、本願発明の「接眼レンズ」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「『対物レンズから接眼レンズまで、多数のレンズが配置されている』『内視鏡』『の接眼部に接続して使用する』『TVカメラヘッド7』」と、本願発明の「ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、該ジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタ」とは、「光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、カメラアダプタ」の点で一致する。
(2)本願発明の「a)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれた、前記接眼レンズ(3)の結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)」の構成について
引用発明の「結像レンズ系6」は、本願発明の「一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)」に、相当する。そして、引用発明の「結像レンズ系6」は、「アイリスユニット19」に「保持」され、引用発明の「アイリスユニット19は、TVカメラヘッド7の外枠7aの所定位置に保持され」ていることから、「結像レンズ系6」は、TVカメラヘッド7の所定位置に保持されているといえる。
さらに、引用発明は「接眼レンズ4、結像レンズ系6、CCD21の順で配置されて」いることから、接眼レンズ4の結像位置は、結像レンズ系6によって、変化しているものといえる。
したがって、引用発明は、TVカメラヘッド7の所定位置に保持され、接眼レンズ4の結像位置を変化させる、一定の焦点距離を有する結像レンズ系6を含むといえ、上記構成を備えているといえる。
(3)本願発明の「b)撮像センサ(12)を有するカメラハウジング(11)のための結合部を有し、前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能なスリーブ(10)」の構成について
ア まず、本願発明の「前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償する」の記載は、上記第4で説示したように不明確であるが、仮に、上記「前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償する」との記載は、「前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムから出射した光線がアダプタ対物レンズで結像する位置と接眼レンズとの距離の変化を補償する」ことであると解して、以下検討する。
イ 引用発明には「内視鏡では、対物レンズから接眼レンズまで、多数のレンズが配置されているが、各レンズの製造誤差,組立誤差等により、接眼レンズを覗いたときにピントが合うはずの物体位置が若干ずれている場合があり」と記載され、各レンズの製造誤差,組立誤差等により、「内視鏡」の複数のレンズを有するレンズ群から出射した光線が結像レンズ系6で結像する位置と接眼レンズとの間の距離は、変化するものといえる。
そして、引用発明の「TVカメラヘッド7は、結像レンズ系6と、この結像レンズ系6を保持しオートアイリス18を備えたアイリスユニット19と、CCD21と、CCD21の直前に配置されているフィルタ群10と、フィルタ群10及びCCD21を保持している枠部材23と、枠部材23に設けられているフォーカス調整ノブ20と、により構成され、」「フォーカシングは、フォーカス調整ノブ20を操作しCCD21を結像レンズ系6に対し光軸方向に沿って移動させることによって行われ」るものであることから、「内視鏡」の複数のレンズを有するレンズ群から出射した光線が結像レンズ系6で結像する位置に、フォーカス調整ノブ20を操作しCCD21を結像レンズ系6に対し光軸方向に沿って移動させているといえる。
そうすると、CCD21を結像レンズ系6に対し光軸方向に沿って移動させるために、CCD21を保持している枠部材23も、枠部材23に設けられているフォーカス調整ノブ20を操作し移動、すなわち、スライドさせているといえる。
したがって、引用発明の「結像レンズ系6に対し光軸方向に沿って移動させる」「CCD21を保持している枠部材23」と、本願発明の「b)撮像センサ(12)を有するカメラハウジング(11)のための結合部を有し、前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能なスリーブ(10)」とは、「b)前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能な部材」の点で一致する。
(4)本願発明の「c)アダプタハウジング(16)には、シフト距離Δをジオプトリ単位Dptで表示する目盛りが配されている」の構成について
引用発明の「TVカメラヘッド7」は、「結像レンズ系6の焦点距離をfとすると、1m-1当たりの結像レンズ系6のフォーカシング移動量は、f2 /1000であり、このf2 /1000毎のステップ式のフォーカス調整機構を設け」、「フォーカス調整機構」として「構成」された「ダイヤル25の近傍には、このダイヤル25に対して1m-1毎に指標26a,26b,26cが刻まれ、この指標26a~26cは、標準状態のフォーカス位置に対して最低±1m-1の位置に刻まれ、このダイヤル25を回転させることによって、CCD21を、夫々光軸に沿って移動させることができる」ものである。
ここで、引用文献1の【0019】には、正確にピントが合っている状態は視度0m-1(ディオプタ)である旨記載されていることから、標準状態は、視度0m-1(ディオプタ)といえ、指標26a~26cが標準状態、±1m-1の位置に刻まれていることは、f2 /1000毎のステップを、視度-1m-1(ディオプタ)、視度0m-1(ディオプタ)、視度1m-1(ディオプタ)に対応する指標26a~26cがTVカメラヘッド7の外枠7aに設けられているものといえる。
したがって、引用発明の「TVカメラヘッド7」の外枠7aは、シフト距離Δをディオプタの単位で表示する指標が配されているといえ、上記構成を備えているといえる。
(5)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、カメラアダプタであって、カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれた、前記接眼レンズ(3)の結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)と、
b)前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能な部材と、を含み、
c)アダプタハウジング(16)には、シフト距離Δをジオプトリ単位Dptで表示する目盛りが配されている、
カメラアダプタ。」
【相違点1】
本願発明は、ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するものであって、ジオプトリ補正の補償のための装置を備えたものであるのに対し、引用発明は、そのようなものでない点。
【相違点2】
光学的拡大装置の結像システムの後側焦点距離の変化が、本願発明は、ジオプトリ補正によって引き起こされるものであるのに対し、引用発明は、そのようなものでない点。
【相違点3】
結像システムの後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能な部材が、本願発明は、撮像センサ(12)を有するカメラハウジング(11)のための結合部を有する、スライド可能なスリーブ(10)であるのに対して、引用発明は、そのようなものでない点。
3 判断
(1)事案に鑑み、相違点1、2についてまとめて検討する。
ア まず、上記2(4)において示したように、引用発明の「フォーカス調整機構」は「視度(ディオプタ)」の単位でCCD21を光軸に沿って移動させるものである。
イ 次に、「光学的拡大装置」は、本願発明である「カメラアダプタ」とは別のものであると認められるところ、本願発明における「ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着する」、「ジオプトリ補正の補償のための装置を備えた」、「ジオプトリ補正によって引き起こされる」との特定(以下「ジオプトリ補正に関する特定」という。)が、「カメラアダプタ」というものを、どのように特定しているのかについて検討すると、ジオプトリ補正に関する特定とは「ジオプトリが変化しても、観察像を適切に撮像できる」ということ、言い換えれば、「結像位置の変化を補償することができる」ということを意味するとはいえるとしても、それ以上の意味はないものと認められる。すなわち、「ジオプトリ補正」自体は、「光学的拡大装置」が行うものであって、「光学的拡大装置」は、本願発明である「カメラアダプタ」とは別のものなのであるから、「ジオプトリ補正」が行われることそれ自体は、本願発明を何ら特定するものではない。
これを踏まえて、相違点1、2について検討するに、ジオプトリ補正に関する特定については、引用発明においても「フォーカシングは、」「フォーカス調整機構」の「フォーカス調整ノブ20を操作しCCD21を結像レンズ系6に対し光軸方向に沿って移動させることによって行われ」ているのであるから、実質的な相違であるとは認められない。
そうすると、相違点1、2は実質的な相違点ではない。
(2)相違点3について
部材を一体構成とするか別体で構成するかは、一般に設計的事項にすぎないところ、引用発明のCCD21は、スライド可能な枠部材23に直接保持されているが、引用発明の枠部材23を、枠部材23のCCD21を保持する部分とフォーカス調整ノブ20が設けられスライド可能な部分とを別体として、結合部を介して結合させ取り外し可能にするようになすことは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
(3)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(4)したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、令和4年10月12日付けの意見書において、
ア 「引用発明の「内視鏡1」は、それ自身が実行しない「ジオプトリ補正」のための、本願発明1における「光学的拡大装置」が有する「ジオプトリ補正用装置」を備えていない・・・(略)・・・本願発明における「ジオプトリ補正」とは、上記のとおり、光学的拡大装置の観察者の視力(正視、非正視(近視、遠視))に応じて夫々該光学的拡大装置のシャープネスを調節する(ないしピントを合わせる)ことであるのに対し、引用発明における「フォーカシング」とは内視鏡の各レンズの製造誤差、組立誤差等により生じる内視鏡毎のピントのばらつきの補正であるのであるから、引用発明は、本願発明の「ジオプトリ補正」を全く想定していないことは明らかである。」、
イ 「引用発明の「内視鏡撮像装置」においては、「内視鏡1」と「TVカメラヘッド7」とが直結されているのであり、「内視鏡1」と「TVカメラヘッド7」とを接続するための「アダプタ」は、そもそも、設けられていない。」、
ウ 「引用発明においては、スライド可能な「枠部材23」は「TVカメラヘッド7」の構成要素でありかつTVカメラヘッド7の内部に配置されているのであるから、この「枠部材23」をスライドさせても「TVカメラヘッド7」自体がスライドするなどということは論理的にあり得ない。」、
エ 「引用発明においては、本願発明の「ジオプトリ補正」を実行しないのであるから当然であるが、実行されない「ジオプトリ補正」によって「内視鏡1」の結像システムの後側焦点距離が変化されることは論理的にあり得ず、従って、そのような生じることのない後側焦点距離の変化が補償されることも論理的にあり得ない。」
旨主張している。
(2) 上記主張について検討する。
ア 上記(1)ア、エについて
上記3(1)で説示したとおりである。
イ 上記(1)イ、ウについて
上記2(1)で説示したように、引用発明の「TVカメラヘッド7」は、「内視鏡1の接眼部に接続して使用」するものであるので、アダプタの機能を有している。また、上記3(2)で説示したように、引用発明では、「枠部材23」がスライド可能なのであって、「TVカメラヘッド7」自体がスライド可能とは説示していない。そして、本願発明においても、「カメラアダプタ」自体をスライド可能とするものではなく、「カメラアダプタ」の「スリーブ」をスライド可能とするものである。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-009888