特許拒絶査定不服審判
2021-017482
光ファイバプラグ、光ファイバアダプタおよび光ファイバコネクタアセンブリ
- 審判番号
- 2021-017482
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-517379外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月17日
- 審決日
- 2023年02月24日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .537-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-517379「光ファイバプラグ、光ファイバアダプタおよび光ファイバコネクタアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日国際公開、WO2018/058508、令和 1年11月14日国内公表、特表2019-533191〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月30日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 2年 4月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 8月 6日付け:拒絶査定
令和 3年12月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 5月17日 :上申書の提出
第2 令和3年12月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年12月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項11の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項11】
ソケットを含む光ファイバアダプタであって、前記ソケットの一端の端面には光ファイバプラグのフェルールを収納するように構成されたキャビティが設けられ、前記ソケットの外壁には少なくとも1つのロックスロットが設けられ、前記ロックスロットは前記光ファイバプラグ上のロックブロックと係合されロックされるように構成され、
前記ロックスロットの開口部は角状であり、前記光ファイバアダプタは前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される回転可能な角度範囲が前記角状の開口部に対応するラジアンより小さい前記ロックブロックを有する前記光ファイバプラグと共に用いられ、前記角状の開口部に対応する前記ラジアンは30度から90度に設定され、前記光ファイバアダプタはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、前記光ファイバプラグのスリーブを前記光ファイバアダプタに対して周方向に位置合わせすることにより前記光ファイバプラグと前記光ファイバアダプタが相互接続されるとき、前記ロックブロックは前記角状の開口部の任意の位置で挿入されて前記ロックスロットの前記角状の開口部から前記ロックスロット上のロック位置に導かれることができる、光ファイバアダプタ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年3月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項12の記載は次のとおりである。
「【請求項12】
ソケットを含む光ファイバアダプタであって、前記ソケットの一端の端面には光ファイバプラグのフェルールを収納するように構成されたキャビティが設けられ、前記ソケットの外壁には少なくとも1つのロックスロットが設けられ、前記ロックスロットは前記光ファイバプラグ上のロックブロックと係合されロックされるように構成され、
前記ロックスロットの開口部は角状であり、前記角状の開口部に対応するラジアンは、前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される前記ロックブロックの回転可能な角度範囲以上であり、前記光ファイバプラグのスリーブを前記光ファイバアダプタに対して周方向に位置合わせすることにより前記光ファイバプラグと前記光ファイバアダプタが相互接続されるとき、前記ロックブロックは任意の範囲で挿入されて前記ロックスロットの前記角状の開口部から前記ロックスロット上のロック位置に導かれることができる、光ファイバアダプタ。」
2 補正の適否
本件補正のうち請求項11についての補正は、本件補正前の請求項12に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記角状の開口部に対応するラジアンは、前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される前記ロックブロックの回転可能な角度範囲以上であり、」を「前記光ファイバアダプタは前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される回転可能な角度範囲が前記角状の開口部に対応するラジアンより小さい前記ロックブロックを有する前記光ファイバプラグと共に用いられ、前記角状の開口部に対応する前記ラジアンは30度から90度に設定され、」と限定し、「光ファイバアダプタ」について、「前記光ファイバアダプタはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、」と限定し、「ロックブロックは任意の範囲で挿入され」について、「ロックブロックは前記角状の開口部の任意の位置で挿入され」と限定するものであって、本件補正前の請求項12に記載された発明と本件補正後の請求項11に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項11に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1)明確性について
請求項11は、「前記光ファイバアダプタはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、」と記載されている。
しかしながら、光ファイバアダプタがスリーブを有するとは、どのような構造なのか不明確である。
そこで、本願明細書を参酌すると、光ファイバプラグがスリーブを有することは記載されているものの、光ファイバアダプタがスリーブを有することは記載されておらず、本願明細書を参酌しても、上記記載は不明確である。
よって、請求項11に係る発明は、明確でない。
(2)進歩性について
ア 本件補正発明の認定
本件の請求項11の記載には、上記(1)で説示した明確性要件違反が存在しているが、「前記光ファイバアダプタはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、」は、「前記光ファイバプラグはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、」と解した上で、請求項11に係る発明を、認定する(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
a 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2015-537255号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【請求項8】
光ファイバーアダプタ(200)であって、
前記光ファイバーアダプタ(200)の一端部に配置されるソケット(201)を備え、光ファイバーを保持するよう構成された空洞(2011)およびスロット(2012)が前記ソケット(201)内に配置され、
前記空洞(2011)は、前記ソケット(201)の中部に位置し、かつ 前記スロット(2012)は、前記空洞(2011)の周りを囲み、および前記スロット(2012)がC形状断面を形成するように位置決めキー(2014)が前記ソケット(201)内に配置されている、光ファイバーアダプタ(200)。」
「【0027】
図2bは、光ファイバージョイント100の概略図である。図2bに示すように、外部構造から見て、光ファイバージョイント100は、光ファイバー110と、内側スリーブ部材140と、外側スリーブ部材130とを含む。内側スリーブ部材140は、内部に空洞を有し、光ケーブル110の外に延在する光ファイバーを空洞内に保持し、内側スリーブ部材140の一端部は、光ケーブル110に固定され、およびスリーブ180が他端部に配置される。外側スリーブ部材130は、内側スリーブ部材140の外側にスリーブがつけられ、かつ外側スリーブ部材130は、スリーブ180の周囲で軸回りに回転可能である。内側スリーブ部材140のスリーブ180は、外側スリーブ部材130の外に少なくとも部分的に突出し、かつスリーブ180の尾端部がC形状断面を形成するように、外側スリーブ部材130の外に突出するスリーブ180の尾端部は開口部を有する。C形状開口部を有するスリーブは、光ファイバーアダプタのC形状スロットにシームレスに接続される。このようにして、光ファイバージョイントのブラインド挿入が実行され、かつ操作がより簡単に、それにより光ファイバーコネクタのプラグ・アンド・プレイが実現する。」
「【0032】
図3aに示すように、光ファイバージョイント100は、末端フェルール120と、挿入コア150と、ロープ160と、ジョイント防塵キャップ170とをさらに含む。」
「【0051】
さらに、外側スリーブ部材130の内面の2つの対称なロック点1304がソケット201(図5a参照)の外面の2つの対称な第2摺動スロット2015固定され、それにより二重ロックおよび接続が実現する。光ファイバージョイント100を光ファイバーアダプタ200から取り外す必要がある場合、外側スリーブ部材130は、図4bの左側(a)に示された状態から図4bの右側(b)に示された状態に変化するように回される。この場合、挿入コア150のスナップ-ロック羽根1502は、外側スリーブ部材130の傾斜ボス1302によって圧縮され、それにより締め付けアンロックが実現する。その間、外側スリーブ部材130の内面の2つの対称なロック点1304がまた回転してソケット201の外面の2つの対称な第2摺動スロット2015から解放され、この場合、光ファイバージョイント100は光ファイバーアダプタ200から取り外すことができる。
【0052】
さらにこの実施形態においては、外側スリーブ部材130は、コネクタのロックおよびアンロック工程を実施するために、45度回転させることができる。外側スリーブ部材130の回転角度を制限するために、制限柱部1504が挿入コア150に配置され、左および右制限ステージ1306が外側スリーブ部材130に設計される。コネクタが図4bの左側(a)に示すような接続かつロック状態にある場合、制限柱部1504が左制限ステージ1306によって制限されて、さらに回転させることができず、およびコネクタが図4bの右側(b)に示すように解放状態にある場合は、制限柱部1504は、右制限ステージ1306によって制限されてさらに回転させることができない。」
「【0058】
図5aに示すように、第2摺動スロット2015がソケット201の周りに配置され、第2摺動スロット2015は、渦巻き形であり、かつ第2摺動スロット2015は、ソケット201の一端部からソケットに沿って円周方向に延在し、かつ延在する第2摺動スロット2015の端部の尾端部は、ロック点1304に固定される。この実施形態において、第2摺動スロット2015は、ジョイント防塵キャップ170の摺動スロット1704(図3a参照)と同じ形である。」
「【0061】
光ファイバージョイント100が光ファイバーアダプタ200に挿入される場合、内側スリーブ部材140のスリーブのホーン形状開口部が摺動スロットの位置決めキー2014を目標として挿入され、内側スリーブ部材140は、摺動スロット2012内に挿入され、その結果挿入コア150が空洞2011内に挿入され、光ファイバージョイントのロック点1304が光ファイバーアダプタの第2摺動スロット2015に滑り入り、かつロック点1304が第2摺動スロット2015の尾端部まで摺動するように光ファイバーソケット201が回転し、それによりロックが実現する。」
b 【0061】を参照しつつ図3bをみると、内側スリーブ部材(140)は、内側スリーブ部材(140)の一端に出っ張った部分が形成され、内側スリーブ部材(140)の他端から出っ張った部分近傍の位置までホーン形状開口部を有していることが、把握できる。
[図:0001399886000001.jpg]
c 【0061】を参照しつつ図5aをみると、第2摺動スロット(2015)の光ファイバージョイント(100)のロック点(1304)が滑り入る側は、略四角形の開口部であることが、把握できる。
[図:0001399886000002.jpg]
(イ)したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を括弧内に記載する。)。
「光ファイバーアダプタ(200)であって、 前記光ファイバーアダプタ(200)の一端部に配置されるソケット(201)を備え、光ファイバーを保持するよう構成された空洞(2011)およびスロット(2012)が前記ソケット(201)内に配置され、(請求項8)
第2摺動スロット(2015)がソケット(201)の周りに配置され、(【0058】)
第2摺動スロット(2015)の光ファイバージョイント(100)のロック点(1304)が滑り入る側は、略四角形の開口部であり、(【0061】、図5a))
光ファイバージョイント(100)は、光ファイバー(110)と、内側スリーブ部材(140)と、外側スリーブ部材(130)と、挿入コア(150)を含み、(【0027】、【0032】)
内側スリーブ部材(140)は、内側スリーブ部材(140)の一端に出っ張った部分が形成され、内側スリーブ部材(140)の他端から出っ張った部分近傍の位置までホーン形状開口部を有し、(【0061】、図3b)
外側スリーブ部材(130)の回転角度を制限するために、制限柱部(1504)が挿入コア(150)に配置され、左および右制限ステージ(1306)が外側スリーブ部材(130)に設計され、(【0052】)
光ファイバージョイント(100)が光ファイバーアダプタ(200)に挿入される場合、内側スリーブ部材(140)のスリーブのホーン形状開口部が摺動スロットの位置決めキー(2014)を目標として挿入され、内側スリーブ部材(140)は、摺動スロット(2012)内に挿入され、その結果挿入コア(150)が空洞(2011)内に挿入され、光ファイバージョイント(100)のロック点(1304)が光ファイバーアダプタ(200)の第2摺動スロット(2015)に滑り入り、かつロック点(1304)が第2摺動スロット(2015)の尾端部まで摺動するように光ファイバーソケット201が回転し、それによりロックが実現する(【0061】)
光ファイバーアダプタ(200)。(請求項8)」
ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ソケット(201)」は、本件補正発明の「ソケット」に、
引用発明の「光ファイバーアダプタ(200)」は、本件補正発明の「光ファイバアダプタ」に、
引用発明の「光ファイバージョイント(100)」は、本件補正発明の「光ファイバプラグ」に、
引用発明の「挿入コア(150)」は、本件補正発明の「フェルール」に、
引用発明の「空洞(2011)」は、本件補正発明の「キャビティ」に、
引用発明の「第2摺動スロット(2015)」は、本件補正発明の「ロックスロット」に、
引用発明の「ロック点(1304)」は、本件補正発明の「ロックブロック」に、
引用発明の「内側スリーブ部材(140)」は、本件補正発明の「スリーブ」に、
引用発明の「ホーン形状開口部」は、本件補正発明の「開口スロット」に、
引用発明の「第2摺動スロット(2015)の尾端部」は、本件補正発明の「ロックスロット上のロック位置」に、
それぞれ相当する。
(イ)本件補正発明の「ソケットを含む光ファイバアダプタであって、前記ソケットの一端の端面には光ファイバプラグのフェルールを収納するように構成されたキャビティが設けられ、前記ソケットの外壁には少なくとも1つのロックスロットが設けられ、前記ロックスロットは前記光ファイバプラグ上のロックブロックと係合されロックされるように構成され、」の構成について
引用発明は「前記光ファイバーアダプタ(200)の一端部に配置されるソケット(201)を備え、光ファイバーを保持するよう構成された空洞(2011)およびスロット(2012)が前記ソケット(201)内に配置され」ており、「挿入コア(150)が空洞(2011)内に挿入され、光ファイバージョイントのロック点(1304)が光ファイバーアダプタの第2摺動スロット(2015)に滑り入り、かつロック点(1304)が第2摺動スロット(2015)の尾端部まで摺動するように光ファイバーソケット201が回転し、それによりロックが実現」している。
そうすると、引用発明は上記構成を備えているといえる。
(ウ)本件補正発明の「前記ロックスロットの開口部は角状であり、」の構成について
引用発明の「第2摺動スロット(2015)の光ファイバージョイント(100)のロック点(1304)が滑り入る側は、略四角形の開口部であ」るので、引用発明は上記構成を備えているといえる。
(エ)本件補正発明の「前記光ファイバプラグはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、」の構成について
引用発明の「内側スリーブ部材(140)は、内側スリーブ部材(140)の一端に出っ張った部分が形成され、内側スリーブ部材(140)の他端から出っ張った部分近傍の位置までホーン形状開口部を有し」ているので、引用発明は上記構成を備えているといえる。
(オ)本件補正発明の「前記光ファイバプラグのスリーブを前記光ファイバアダプタに対して周方向に位置合わせすることにより前記光ファイバプラグと前記光ファイバアダプタが相互接続されるとき、前記ロックブロックは前記角状の開口部の任意の位置で挿入されて前記ロックスロットの前記角状の開口部から前記ロックスロット上のロック位置に導かれることができる、」の構成について
引用発明は、「光ファイバージョイント(100)が光ファイバーアダプタ(200)に挿入される場合、内側スリーブ部材(140)のスリーブのホーン形状開口部が摺動スロットの位置決めキー(2014)を目標として挿入され、内側スリーブ部材(140)は、摺動スロット(2012)内に挿入され、その結果挿入コア(150)が空洞(2011)内に挿入され、光ファイバージョイント(100)のロック点(1304)が光ファイバーアダプタ(200)の第2摺動スロット(2015)に滑り入り、かつロック点(1304)が第2摺動スロット(2015)の尾端部まで摺動するように光ファイバーソケット201が回転し、それによりロックが実現」している。
そうすると、引用発明は上記構成を備えているといえる。
(カ)以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「ソケットを含む光ファイバアダプタであって、前記ソケットの一端の端面には光ファイバプラグのフェルールを収納するように構成されたキャビティが設けられ、前記ソケットの外壁には少なくとも1つのロックスロットが設けられ、前記ロックスロットは前記光ファイバプラグ上のロックブロックと係合されロックされるように構成され、
前記ロックスロットの開口部は角状であり、前記光ファイバプラグはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、前記光ファイバプラグのスリーブを前記光ファイバアダプタに対して周方向に位置合わせすることにより前記光ファイバプラグと前記光ファイバアダプタが相互接続されるとき、前記ロックブロックは前記角状の開口部の任意の位置で挿入されて前記ロックスロットの前記角状の開口部から前記ロックスロット上のロック位置に導かれることができる、光ファイバアダプタ。」
【相違点】
本件補正発明では、「前記光ファイバアダプタは前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される回転可能な角度範囲が前記角状の開口部に対応するラジアンより小さい前記ロックブロックを有する前記光ファイバプラグと共に用いられ、前記角状の開口部に対応する前記ラジアンは30度から90度に設定され」ものであるのに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。
エ 判断
以下、上記相違点について検討する。
(ア)相違点について
a 「光ファイバプラグ」は、本件補正発明の「光ファイバアダプタ」とは別ものであると認められるところ、本件補正発明の「前記光ファイバアダプタは前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される回転可能な角度範囲が前記角状の開口部に対応するラジアンより小さい前記ロックブロックを有する前記光ファイバプラグと共に用いられ、」との特定は、実質的に光ファイバアダプタにつき、「角状の開口部に対応するラジアンが所定の値になるよう設定されている」ということを特定するに過ぎず、それ以上のことを特定するとはいえない。
b そして、ロック点が滑り入りやすくすることを考慮して、引用発明の「第2摺動スロット(2015)の光ファイバージョイント(100)のロック点(1304)が滑り入る側の開口部」に対応する角度範囲として30度から90度ものを選択することは、設計的事項にすぎない。
(イ)したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
オ 審判請求人の主張について
(ア)本件審判請求人は、令和3年12月17日付けで提出された審判請求書において、「補正後の請求項1の「ストップロッドは前記外向きフランジの外壁に配置され、前記ストップロッドは、前記ロックキャップが前記2つのストップブロックにより限定される角度範囲内で前記スリーブに対して相対的に回転する」という事項は、引用文献1~4に開示されていない。そして、「補正後の独立請求項11および14は、独立請求項1と同一ではありませんが類似する要素を記載するように補正しました。したがって、請求項1に関して上記で説明したのと同じ理由で、請求項11および14、ならびに請求項11の従属請求項に関して拒絶理由が解消したものと思料致します。」旨主張している。
(イ)上記主張について、以下検討する。
しかしながら、「ストップロッドは前記外向きフランジの外壁に配置され」ることについて補正後の独立請求項11である本件補正発明には特定されていない。したがって、請求項1と同じ理由で請求項11に関しての拒絶理由が解消しているとする当該主張は、本件補正発明の構成に基づかない主張である。
以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
(3)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年12月17日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年3月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項12に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項12に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項12に係る発明の拒絶の理由の概略は、(1)この出願は、特許請求の範囲の請求項12の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、(2)また、この出願の請求項12に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
(1)請求項12には、光ファイバアダプタについて「前記ロックスロットの開口部は角状であり、前記角状の開口部に対応するラジアンは、前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される前記ロックブロックの回転可能な角度範囲以上」であることが記載されている。しかしながら、当該記載において、「角状の開口部に対応するラジアン」の角度範囲は、光ファイバアダプタではなく、光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定されるロックブロックの回転可能な角度範囲を基準として規定されている。すると、基準とする光ファイバプラグによって、光ファイバアダプタの「角状の開口部に対応するラジアン」の角度範囲は変化しうるため、いずれの角度範囲以上であれば、請求項12に係る発明の範囲であるか不明となっている。
よって、請求項12に係る発明は、明確でない。
(2)
引用文献1.特表2015-537255号公報
引用文献3.特開2001-267006号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2006-236777号公報(周知技術を示す文献)
3 明確性について
請求項12には、光ファイバアダプタについて「前記ロックスロットの開口部は角状であり、前記角状の開口部に対応するラジアンは、前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される前記ロックブロックの回転可能な角度範囲以上」であることが記載されている。
しかしながら、当該記載において、「角状の開口部に対応するラジアン」の角度範囲は、光ファイバアダプタではなく、光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定されるロックブロックの回転可能な角度範囲を基準として規定されている。
そうすると、光ファイバアダプタの構成要素でない光ファイバプラグによって、光ファイバアダプタの「角状の開口部に対応するラジアン」の角度範囲は変化しうるため、いずれの角度範囲以上であれば、請求項12に係る発明の範囲であるか不明となっている。
よって、本願発明は、明確でない。
4 進歩性について
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)イで記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「前記光ファイバアダプタは前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される回転可能な角度範囲が前記角状の開口部に対応するラジアンより小さい前記ロックブロックを有する前記光ファイバプラグと共に用いられ、前記角状の開口部に対応する前記ラジアンは30度から90度に設定され、」と限定されていたものを「前記角状の開口部に対応するラジアンは、前記光ファイバプラグの2つのストップブロックにより限定される前記ロックブロックの回転可能な角度範囲以上であり、」とし、本件補正発明の「ロックブロックは前記角状の開口部の任意の位置で挿入され」と限定されていたものを「ロックブロックは任意の範囲で挿入され」とし、本件補正発明から「前記光ファイバアダプタはスリーブを有し、前記スリーブの一端に外向きフランジが配置され、前記スリーブの他端に開口スロットが配置され、前記開口スロットは前記外向きフランジ近傍の位置まで軸方向に延出し、」の限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由2]2(2)ウ、エに記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-017482