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特許拒絶査定不服審判

2019-000703

フルオロオレフィンを含む組成物およびそれらの使用

審判番号
2019-000703
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-104996外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年01月18日
審決日
2020年07月22日
公報発行日
2021年02月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C09K) / P18 .537-WZ (C09K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号特許法49条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-104996「フルオロオレフィンを含む組成物およびそれらの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-186567〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 7項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2006年10月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年11月1日 (US)アメリカ合衆国、2006年7月13日 (US)アメリカ合衆国、2006年10月30日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2008-539005号の一部を平成25年3月14日に新たな特許出願とした特願2013-52151号の一部を平成26年6月19日に新たな特許出願とした特願2014-126347号の一部を平成28年1月29日に新たな特許出願とした特願2016-16602号の一部を平成29年5月26日に新たな特許出願としたものであって、同年5月29日に上申書が提出され、平成30年5月28日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年9月5日に意見書が提出され、同年9月12日付けで拒絶査定され、これに対し、平成31年1月18日に拒絶査定不服審判が請求され、令和元年10月24日付けで当審から拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年3月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和2年3月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「  【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)を含むトレーサーを含むことを特徴とする、冷媒または伝熱流体組成物であって、前記トレーサーは、50ppm~1000ppmの合計濃度で前記組成物中に存在している、冷媒または伝熱流体組成物。」

第3 令和元年10月24日付けの当審拒絶理由の内容

当審において通知した拒絶理由は次のとおりである。

1 (進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された後記刊行物1、2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 (サポート要件)本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 当審の判断

1 理由1(進歩性)について

(1)刊行物及びその記載事項

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ア 引用刊行物

刊行物1:国際公開第2005/083027号
刊行物2:特開平4-110388号公報

イ 刊行物の記載

(ア)刊行物1の記載事項

本願優先日前に頒布された刊行物1には、以下の事項が記載されている。なお、便宜上、当該刊行物1の記載の摘示にあたっては、パテントファミリーである特表2007-525585号公報を訳文として使用し、当該公報の対応箇所を示すこととした。

(1a)「【特許請求の範囲】

【請求項1】

トレーサ含有組成物であって、前記組成物が冷却/加熱流体および少なくとも1つのトレーサ化合物を有し、前記トレーサ化合物が分析的に検出可能であり、ハイドロフルオロカーボン、重水素化ハイドロフルオロカーボン、重水素化炭化水素、ペルフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ化化合物、アルコール、アルデヒドおよびケトン、亜酸化窒素、並びに、それらの組み合わせからなる群から選択され、ただし前記冷却/加熱流体が前記トレーサ化合物と異なることを特徴とするトレーサ含有組成物。

・・・

【請求項7】

前記組成物が約50ppm~約1000ppmの範囲の量のトレーサ化合物またはトレーサブレンドを含むことを特徴とする請求項1に記載のトレーサ含有組成物。

・・・

【請求項10】

前記トレーサ化合物が、PFC-116、PFC-C216、PFC-218、PFC-C318、PFC-31-10mc、PFC-31-10my、PFC-C51-12mycm、PFC-C51-12mym、トランス、PFC-C51-12mym、シス、HFOC-125E、HFOC-134aE、HFOC-143aE、HFOC-227eaE、HFOC-236faE、HFOC-245faEβγまたはHFOC-245faEαβ、HFOC-245cbEβγまたはHFOC-245cbαβ、HFE-42-11mcc(またはフレオン(Freon(登録商標))E1)、フレオン(Freon(登録商標))E2、HFC-23、HFC-161、HFC-152a、HFC-134、HFC-227ea、HFC-227ca、HFC-236cb、HFC-236ea、HFC-236fa、HFC-245cb、HFC-245fa、HFC-254cb、HFC-254eb、HFC-263fb、HFC-272ca、HFC-281ea、HFC-281fa、HFC-329p、HFC-329mmz、HFC-338mf、HFC-338pcc、HFC-347s、HFC-43-10mee、PFC-116、PFC-C216、PFC-218、PFC-C318、PFC-31-10mc、PFC-31-10my、PFC-C51-12mycm、PFC-C51-12mym、トランス、PFC-C51-12mym、シス、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロ-ヘキサン、ペルフルオロジメチルシクロ-ヘキサン(オルト、メタ、またはパラ)、ペルフルオロエチルシクロヘキサン、ペルフルオロインダン、ペルフルオロトリメチルシクロ-ヘキサンおよびその異性体、ペルフルオロイソプロピルシクロ-ヘキサン、シス-ペルフルオロデカリン、トランス-ペルフルオロデカリン、シス-またはトランス-ペルフルオロメチルデカリンおよびその異性体、ブロモメタン、ブロモフルオロメタン、ブロモジフルオロメタン、ジブロモフルオロメタン、トリブロモメタン、ブロモエタン、ブロモエテン、1,2-ジブロモエタン、1-ブロモ-1,2-ジフルオロエテン、ヨードトリフルオロメタン、ジフルオロヨードメタン、フルオロヨードメタン、1,1,2-トリフルオロ-1-ヨードエタン、1,1,2,2-テトラフルオロ-1-ヨードエタン、1,1,2,2-テトラフルオロ-1,2-ジヨードエタン、ヨードペンタフルオロベンゼン、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、アセトン(2-プロパノン)、n-プロパナール、n-ブタナール、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、亜酸化窒素、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのトレーサ化合物であることを特徴とする請求項1に記載のトレーサ含有組成物。」(下線は当審で付した。以下同様。)

(1b)「【0015】

本発明の冷却/加熱流体は、冷却産業で使用される任意の一般的な冷却/加熱流体でよい。そのような冷却/加熱流体は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ペルフルオロカーボン(PFC)、フルオロカーボンエーテル(HFE)、炭化水素、二酸化炭素(CO2)、アンモニア(NH3)、またはそれらの混合物であってよい。フッ素化された冷却/加熱流体、HFC、HCFC、HFE、およびPFCは、フルオロカーボン冷媒と称してよい。」

(1c)「【0018】

さらに、本発明のフルオロカーボン冷媒は、一般式CwF2w-xHxOzで表され、ここでwは3~8、xは0~17、およびzは0~2に等しく、さらにここで、2w-xは正の整数である。そのようなフルオロカーボン冷媒は、CF3(CF2)3CH=CH2(ペルフルオロブチルエチレン、PFBE)、CF3CF2C(O)CF(CF3)2(ペルフルオロエチルイソプロピルケトン、PEIK)、およびCF3C(O)CF(CF3)2(ペルフルオロメチルイソプロピルケトン、PMIK)などの不飽和化合物および他の官能化フルオロカーボンが挙げられる。」

(イ)刊行物2の記載事項

本願優先日前に頒布された刊行物2には、以下の事項が記載されている。

(2a)「特許請求の範囲

1.分子式:C3HmFn

(但し、m=1~5、n=1~5且つm+n=6)で示され且つ分子構造中に二重結合を1個有する有機化合物からなる熱媒体。」

(2b)「実施例5

熱媒体としてF3C-CF=CH2を使用する以外は実施例1と同様にして、ヒートポンプの運転を行なったところ、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。」(第4ページ右下欄第8~12行)

(2)刊行物1に記載された発明

刊行物1の請求項1には「トレーサ含有組成物であって、前記組成物が冷却/加熱流体および少なくとも1つのトレーサ化合物を有し、前記トレーサ化合物が分析的に検出可能であり、ハイドロフルオロカーボン、重水素化ハイドロフルオロカーボン、重水素化炭化水素、ペルフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ化化合物、アルコール、アルデヒドおよびケトン、亜酸化窒素、並びに、それらの組み合わせからなる群から選択され、ただし前記冷却/加熱流体が前記トレーサ化合物と異なることを特徴とするトレーサ含有組成物。」と記載され、請求項7には「約50ppm~約1000ppmの範囲の量のトレーサ化合物またはトレーサブレンドを含む」と記載され、請求項10には「前記トレーサ化合物が・・・HFC-254eb・・・から選択される少なくとも1つのトレーサ化合物であることを特徴とする請求項1に記載のトレーサ含有組成物。」と記載されている(摘記1a参照)。

そうすると、刊行物1には、「冷却/加熱流体およびHFC-254ebを含むトレーサを含むものであって、前記トレーサは、50ppm~1000ppmの濃度で含む、トレーサ含有組成物」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・判断

ア 本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「冷却/加熱流体」は、本願発明の「冷媒または伝熱流体」にあたるものであり、引用発明の「トレーサ含有組成物」は、当該「冷却/加熱流体」を有しているから、本願発明の「冷媒または伝熱流体組成物」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明は、「冷媒または伝熱流体およびHFC-254ebを含むトレーサーを含むことを特徴とする、冷媒または伝熱流体組成物であって、前記トレーサーは、50ppm~1000ppmの合計濃度で前記組成物中に存在している、冷媒または伝熱流体組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)

本願発明は冷媒または伝熱流体が2,3,3,3-テトラフルオロプロペンであるのに対し、引用発明は冷却/加熱流体(冷媒または伝熱流体)が特定されていない点。

イ 相違点について検討する。

引用発明において、冷却/加熱流体は、冷却産業で使用される任意の一般的なものでよく、例えば、ハイドロフルオロカーボン、さらには、CwF2w-xHxOz(ここでwは3~8、xは0~17、およびzは0~2に等しく、さらにここで、2w-xは正の整数である。)で表される不飽和化合物であってよいとされているところ(摘記1b、1c参照)、刊行物2には、熱媒体としてハイドロフルオロカーボン(不飽和化合物)であるF3C-CF=CH2が記載されており(摘記2a、2b参照)、ここで、熱媒体は冷却/加熱流体であり、F3C-CF=CH2は2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである。

そうすると、引用発明において、冷却/加熱流体として2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、この点により、本願発明が格別の作用効果を奏したものとも認められない。

(4)請求人の主張について

請求人は、令和2年3月30日付けの意見書において、CwF2w-xHxOzには複数の異性体があり、刊行物1ではHCFCの使用も開示しているのに対し、刊行物2ではHCFCの使用を禁じていることから、刊行物1をみた当業者は刊行物2を参照することはなく、刊行物1に刊行物2を適用する動機付けはない旨を主張する。

しかし、上記(1)~(3)のとおり、引用発明においては、冷却/加熱媒体としては、冷却産業で使用される任意の一般的な冷却/加熱流体でよく、そのような冷却/加熱流体としてハイドロフルオロカーボン(HFC)がまず例示されており(段落【0015】)、Clを含まないHFCの実施例も記載されていることから、たとえHCFCの実施例が記載されているとしても、その記載のみからただちにHCFCの使用を禁止している刊行物2を参照することはないとする根拠が見いだせない。そして、刊行物1には、引用発明においてはCwF2w-xHxOzで表されるハイドロフルオロカーボンは何でも使用することが記載されているのであるから、当業者であれば、刊行物2に記載の分子式:C3HmFnで示される熱媒体を参照し、当該ハイドロフルオロカーボンとして広く知られた2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを引用発明に適用しようとする動機は十分にあると解される。

したがって、上記請求人の主張は採用することができない。

(5)進歩性についてのまとめ

上記のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1、2の記載に基いて当業者が容易に想到し得るものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

2 理由2(サポート要件)について

(1)サポート要件について

特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。

以下、この観点に立って、判断する。

(2)特許請求の範囲の記載

特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記第2に記載したとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載

発明の詳細な説明には、本願発明に関連して、以下の事項が記載されている。

ア「【0008】

本発明は、低またはゼロオゾン破壊係数および現在の冷媒と比してより低い地球温暖化係数の要件を満たす固有の特徴をもたらす新規な冷媒組成物および伝熱流体組成物を提供することを目的とする。」

イ「【0011】

本発明は、冷媒または伝熱流体組成物を冷凍、空調、またはヒートポンプ装置において用いる方法にさらに関し、前記方法は、前記組成物を(a)遠心コンプレッサ;(b)多段遠心コンプレッサ、または(c)シングルスラブ/シングルパス熱交換器を有する前記装置に供給する工程を含み;ここで、前記冷凍組成物または伝熱組成物は、前記装置において、加熱または冷却をもたらすために用いられ;および前記冷凍組成物または伝熱組成物は:

・・・2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(CF3CF=CH2)・・・およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるフルオロオレフィン;

からなる群から選択される少なくとも1種のフルオロオレフィンを含む。」

ウ「【0068】

冷媒または伝熱流体として有用である本発明の組成物は:

・・・2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(CF3CF=CH2)・・・からなる群から選択されるフルオロオレフィン;

からなる群から選択される少なくとも1種のフルオロオレフィンを含む。

【0069】

本発明は、少なくとも1種のフルオロオレフィンおよび少なくとも1種の可燃性冷媒または伝熱流体を含む組成物にさらに関し、式中、フルオロオレフィンは:

・・・2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(CF3CF=CH2)・・・からなる群から選択されるフルオロオレフィン;

からなる群から選択される。」

エ「【0086】

本発明の可燃性冷媒は、特に限定されないが:・・・2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFC-1234yf)・・・を含むフルオロオレフィンをさらに含む。」

オ「【0127】

本発明の組成物は、トレーサーである化合物または組成物をさらに含み得、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明において用いられるトレーサーは、冷媒または伝熱流体として用いられるものとは異なる組成物であり、2005年2月18日に出願された米国特許公報(特許文献2)に記載のとおり、冷媒および伝熱組成物に、組成物の希釈、汚染または他の変性のいずれかも検出可能である既定の量で添加される。

【0128】

本組成物において用いられるための典型的なトレーサー化合物が表5に列挙されている。

・・・

【0130】

【表13】

」

カ「【0186】

本開示は、冷凍、空調、またはヒートポンプ装置における加熱またはもたらす方法にさらに関し、前記方法は、冷媒または伝熱流体組成物を(a)遠心コンプレッサ;(b)多段遠心コンプレッサ、または(c)シングルスラブ/シングルパス熱交換器;を有する前記装置に導入する工程を含み、ここで、前記冷媒または伝熱流体組成物は:

・・・2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(CF3CF=CH2)・・・およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるフルオロオレフィン;

からなる群から選択される少なくとも1種のフルオロオレフィンを含む。」

キ「【0209】

交換する必要があり得る、本発明のハイドロフルオロカーボン冷媒としては、特に限定されないが:・・・CH3CHFCF3(HFC-254eb)・・・が挙げられる。これらのハイドロフルオロカーボン冷媒は、商業的に入手可能であるか、または当該技術分野において公知である方法により調製され得る。」

ク「【0216】

本発明は、元の冷媒または伝熱流体組成物を交換する方法にさらに関し、前記元の組成物が冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR152a(HFC-152a、1,1-ジフルオロエタン、CHF2CH3)であり、ここで、前記方法は、R152aを、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf)、およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物と置き換える工程を含む。

【0217】

本発明は、冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR227ea(HFC-227ea、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)を交換する方法にさらに関し、ここで、前記方法は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf)、およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む組成物を代替として提供する工程を含む。」

ケ「【0229】

本発明は、元の冷媒または伝熱流体組成物を交換する方法にさらに関し、前記元の組成物が冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR409Aであり、ここで、前記方法は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物を置き換える工程を含む。R409Aは、約60重量パーセントHCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHF2Cl)、約25重量パーセントHCFC-124(2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CHClF)、および約15重量パーセントHCFC-142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、CF2ClCH3)を含有する冷媒ブレンドについてのASHRAE種別である。

【0230】

本発明は、元の冷媒または伝熱流体組成物を交換する方法にさらに関し、前記元の組成物が冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR409Bであり、ここで、前記方法は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または

伝熱流体組成物を置き換える工程を含む。R409Bは、約65重量パーセントHCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHF2Cl)、約25重量パーセントHCFC-124(2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CHClF)、および約10重量パーセントHCFC-142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、CF2ClCH3)を含有する冷媒ブレンドについてのASHRAE種別である。

【0231】

本発明は、元の冷媒または伝熱流体組成物を交換する方法にさらに関し、前記元の組成物が冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR414Bであり、ここで、前記方法は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf)、およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物を置き換える工程を含む。R414Bは、約50重量パーセントHCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHF2Cl)、約39重量パーセントHCFC-124(2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CHClF)、約1.5重量パーセントイソブタン(R600a、CH3CH(CH3)CH3)および約9.5重量パーセントHCFC-142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、CF2ClCH3)を含有する冷媒ブレンドについてのASHRAE種別である。

【0232】

本発明は、元の冷媒または伝熱流体組成物を交換する方法にさらに関し、前記元の組成物が冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR416Aであり、ここで、前記方法は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物を置き換える工程を含む。R416Aは、約59重量パーセントのHFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CH2F))、約39.5重量パーセントHCFC-124(2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CHClF)、および約1.5重量パーセントn-ブタン(CH3CH2CH2CH3)を含有する冷媒ブレンドについてのASHRAE種別である。

【0233】

本発明は、元の冷媒または伝熱流体組成物を交換する方法にさらに関し、前記元の組成物が冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR12(CFC-12、ジクロロジフルオロメタン、CF2Cl2)であり、ここで、前記方法は、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物を置き換える工程を含む。

【0234】

本発明は、元の冷媒または伝熱流体組成物を交換する方法にさらに関し、前記元の組成物が冷凍装置、空調装置、またはヒートポンプ装置中のR500であり、ここで、前記方法は、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物を置き換える工程を含む。R500は、約73.8重量パーセントR12((CFC-12、ジクロロジフルオロメタン、CF2Cl2)および約26.2重量パーセントR152a(HFC-152a、1,1-ジフルオロエタン、CHF2CH3)を含有する共沸冷媒ブレンドについてのASHRAE種別である。」

コ「【0262】

(実施例5)

(性能データ)

表11は、HFC-134a、HFC-152a、およびHFC-227eaに比した本発明の化合物についての冷凍性能を、エバポレータ(Evap)およびコンデンサ(Cond)、排出温度(Disch T)、エネルギー効率(COP)、およびキャパシティ(Cap)における圧力として示す。データは以下の条件に基づいている。

【0263】

エバポレータ温度 40.0°F(4.4℃)

コンデンサ温度 110.0°F(43.3℃)

過冷却温度 10.0°F(5.5℃)

戻りガス温度 75.0°F(23.8℃)

コンプレッサ効率は70%である。

【0264】

【表23】

」

サ「【0304】

組成物は、低い排出温度を維持しながら、R22、R407C、R417A、およびR410Aに匹敵するエネルギー効率(EER)を有する。表17に列挙された組成物についてのキャパシティはまたR22、R407CおよびR417Aとも類似しており、これらの組成物は、冷凍および空調においてR22、R407CまたはR417Aについての代替冷媒であることが可能であることを示している。

本発明は以下の実施の態様を含むものである。

・・・

5.冷凍、空調、またはヒートポンプ装置において加熱または冷却をもたらす方法であ

って、冷媒または伝熱流体組成物を(a)遠心コンプレッサ;(b)多段遠心コンプレッサ、または(c)シングルスラブ/シングルパス熱交換器を有する前記装置に供給する工程を含み;ここで、前記冷媒または伝熱流体組成物が:

・・・2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(CF3CF=CH2)・・・およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるフルオロオレフィン;

からなる群から選択される少なくとも1種のフルオロオレフィンを含むことを特徴とする方法。

11.元の冷媒または伝熱流体組成物を、第2の冷媒または伝熱流体組成物で置き換える方法であって、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む組成物を第2の冷媒または伝熱流体組成物として提供する工程を含む方法であって、

前記元の冷媒または伝熱流体組成物が:

・・・

(ii)1,1-ジフルオロエタン(R152a)であって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf)、およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR152a;

(iii)1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227ea)であって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf)、およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR227ea;

・・・

(xiii)R401Aであって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR401A;

(xiv)R401Bであって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR401B;

(xv)R409Aであって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR409A;

(xvi)R409Bであって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR409B;

(xvii)R414Bであって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR414B;

(xviii)R416Aであって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR416A;

(xix)ジクロロジフルオロメタン(R12)であって、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロ

ペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR12;および

(xx)R500であって、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf);3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf);およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR500;

からなる群から選択されることを特徴とする方法。

・・・」

(4)本願発明の課題

【0008】及び明細書全体の記載からみて、本願発明の課題は、低またはゼロオゾン破壊係数および現在の冷媒と比してより低い地球温暖化係数の要件を満たす固有の特徴をもたらす新規な冷媒組成物および伝熱流体組成物を提供することにあるものと認める。

(5)判断

ア 前提

上記(4)で述べたとおり、本願発明の課題は、低またはゼロオゾン破壊係数および現在の冷媒と比してより低い地球温暖化係数の要件を満たす固有の特徴をもたらす新規な冷媒組成物および伝熱流体組成物を提供することにあるから、本願発明に係る記載がサポート要件に適合するには、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、本願発明に係る2,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)を含むトレーサーを含むことを特徴とする、冷媒または伝熱流体組成物であって、前記トレーサーは、50ppm~1000ppmの合計濃度で前記組成物中に存在している、冷媒または伝熱流体組成物全般にわたって、低またはゼロオゾン破壊係数および現在の冷媒と比してより低い地球温暖化係数の要件を満たす固有の特徴をもたらす新規な冷媒組成物および伝熱流体組成物を提供できることを当業者が理解できることが必要である。

以下、この点について検討する。

イ 判断

確かに、実施例の記載および出願時の技術常識から、冷媒または伝熱流体として2,3,3,3-テトラフルオロプロペン単独冷媒の場合については、特定の既存冷媒の代替冷媒として相応の効用を発現し、上記課題を解決できることを当業者は理解できるといえるかもしれない。

しかしながら、本願発明は、請求項1の記載から明らかなとおり、冷媒または伝熱流体として2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外のものを含むものも包含する(例えば、他のフルオロオレフィンとの混合物はもとより、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が極めて高いR12が大半を占めるような混合物をも包含する。)。

また、冷媒または伝熱流体として2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外のものを含むものについては他のフルオロオレフィンとの混合物について一般的な記載はあるものの((3)ア~サ参照。)、R12が大半を占めるような混合物をはじめ、本願発明が包含する広範な混合物についての具体的な記載はないし、実施例として記載されているものは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン単独冷媒の場合のみであって、上記のような広範な混合物が新規冷媒として機能すること(冷媒性能)示す実施例の記載はない。そして、当該実施例と一般的な記載から、上記請求項1で特定される組成物全般にわたって、発明の詳細な説明に冷媒性能が記載されているというに足りる技術常識もないから、当該請求項1で特定される組成物について、実施例として記載のある2,3,3,3-テトラフルオロプロペン単独冷媒と同様の作用効果を奏するかは不明である。

そうすると、本願出願時の技術常識からして、冷媒組成物および伝熱流体組成物として、例えば、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が極めて高いR12が大半を占める混合冷媒を用いる場合、低またはゼロオゾン破壊係数および現在の冷媒と比してより低い地球温暖化係数の要件を満たす固有の特徴をもたらす新規な冷媒組成物および伝熱流体組成物を提供する課題を解決できないことは明らかであるから、請求項1が特定する、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)を含むトレーサーを含む冷媒または伝熱流体組成物全般にわたって上記課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえない。加えて、新規冷媒の探求はたやすいものではないという技術常識に照らすと、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン単独冷媒以外の広範な組成物を包含する請求項1に係る組成物が、その全般にわたって、冷凍、空調、ヒートポンプなどの用途において使用可能な新規な冷媒組成物(伝熱流体組成物)となり得るとまでは到底いえない。

したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えていると認められる。

よって、本願は、サポート要件に適合するものではない。

(6)請求人の主張について

請求人は、令和2年3月30日付けの意見書において、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのオゾン破壊係数は、ゼロであり、地球温暖化係数は、1未満であり、「2,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)を含むトレーサーを含む冷媒または伝熱流体組成物」のオゾン破壊係数および地球温暖化係数も、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと同等のオゾン破壊係数(ゼロ)、地球温暖化係数(1未満)を有することは明らかである旨を主張する。

しかし、たとえ2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのオゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が1未満であったとしても、本願発明は冷媒または伝熱流体として2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外のものを含む組成物として特定されていることから、上記主張は本願発明の発明特定事項に基づかないものである。

したがって、請求人の上記主張は採用できず、本願がサポート要件を充足していないのは、上記(5)のとおりである。

(7)サポート要件についてのまとめ

以上のとおりであるから、本願発明は、この出願の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであり、また、本願の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、同法第49条の規定により、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2019-000703

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