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特許拒絶査定不服審判

2017-015177

液晶媒体

審判番号
2017-015177
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-501467外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年10月11日
審決日
2019年06月24日
公報発行日
2019年12月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C09K) / P18 .537-WZ (C09K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-501467「液晶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/130380、平成26年 7月10日国内公表、特表2014-516366〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)3月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年3月29日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 3月 7日付け:拒絶理由の通知 平成28年 9月15日  :意見書、手続補正書の提出 平成28年10月27日付け:拒絶理由の通知 平成29年 4月28日  :意見書、手続補正書の提出 平成29年 6月 9日付け:拒絶査定 平成29年10月11日  :審判請求書、手続補正書の提出 平成30年 8月 1日付け:当審による拒絶理由の通知 平成31年 2月 6日  :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明について 本願の請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明18」という。まとめて、「本願発明」ということもある。)は、平成31年2月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は、以下のとおりのものである。 なお、例えば、本願発明1における「式Iの少なくとも1種類の化合物」を「化合物I」ということがある。その他の「式○○の少なくとも1種類の化合物」等の記載も、同様に「化合物○○」と省略して記載することがある。 「[請求項1] 式Iの少なくとも1種類の化合物を1~30%の量で、 式IIA、IIBおよびIICの化合物群より選択される1種類以上の化合物を、式IIAおよび/またはIIBの化合物を含有するときは合計で20%以上の量で、式IICの化合物を含有するときは3%以上の量で、および CC-3-Vで示される化合物を10%以上の量で含む(但し、化合物の量は、液晶媒体の重量に基づく)ことを特徴とする極性化合物の混合物を基礎とする液晶媒体; [化1] (式中、 R1およびR1*は、それぞれ互いに独立に、1~15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、 Z1は、-CH2O-または-OCH2-を表し、 aは、0、1または2を表し、 bは、1または2を表し、 [化2] L1およびL2は、Fを表す。) [化3] (式中、 R2A、R2BおよびR2Cは、それぞれ互いに独立に、15個までのC原子を有する無置換のアルキル基を表し、 L1~4は、Fを表し、 Z2およびZ2’は、単結合を表し、 pは、1または2を表し、 qは、0または1を表し、および vは、1~6を表す。) [化4] 但し、次の(a)~(e)の液晶媒体を除く; (a)下式: [化5] (式中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X1およびX2は、一方が水素であり、他方がフッ素である。) で表される化合物を液晶媒体中に5重量%以上の量で含有する液晶媒体; (b)下式: [化6] (R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4-シクロへキシレン、または1,4-フェニレンであり;Z2およびZ3は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;pおよびqは独立して、0、1、2、または3であり、そしてpとqとの和が3以下である。) で表される化合物を液晶媒体中に5重量%以上の量で含有する液晶媒体; (c)下式: [化7] (式中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から11のアルケニルオキシ、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X1およびX2は独立して、水素、フッ素、または塩素であり;X3およびX4は独立して、フッ素または塩素であり;Z1は、単結合、エチレン、メチレンオキシ、オキシメチレン、カルボニルオキシ、またはオキシカルボニルであり;mは0または1である。) で表される化合物を液晶媒体中に5重量%以上の量で含有する液晶媒体; (d)それぞれ、次の化合物からなる例2、例4、例5および例6で示される液晶媒体 [例2] 5-H1OB(2CL,3F)-O2   (1-2-1)   4% 3-HH1OB(2CL,3F)-O2  (1-4-1)   5% 5-HH1OB(2CL,3F)-O2  (1-4-1)   5% 3-DhHB(2F,3F)-O2    (2-2-1)   8% V-HH-3              (3-1-1)  22% V-HHB-1             (3-5-1)   5% 3-B(F)BB-2          (3-8-1)   5% 3-HHEBH-3           (3-10-1)  4% 3-HHEBH-4           (3-10-1)  4% 3-HB(2F,3F)-O2      (4-1-1-1) 6% 5-HB(2F,3F)-O2      (4-1-1-1) 6% 3-H2B(2F,3F)-O2     (4-1-2-1) 6% 5-H2B(2F,3F)-O2     (4-1-2-1) 6% V-HHB(2F,3F)-O2     (4-1-4-1) 7% V-HHB(2F,3F)-O4     (4-1-4-1) 7% [例4] 5-H1OB(2CL,3F)-O2   (1-2-1)   5% 5-HH1OB(2CL,3F)-O2  (1-4-1)   5% 3-H2B(2CL,3F)-O2    (1-8-1)   5% 3-HH2B(2CL,3F)-O2   (1-10-1)  5% 3-dhBB(2F,3F)-O2    (2-4-1)   5% V-HH-3              (3-1-1)  21% VFF-HH-3            (3-1)     5% 5-HB-O2             (3-2-1)   6% 5-HBB-2             (3-6-1)   3% 3-HB(F)HH-5         (3-9-1)   3% 5-HB(F)HH-V         (3-9-1)   3% 1V2-HB(2F,3F)-O2    (4-1-1-1) 5% 3-H2B(2F,3F)-O2     (4-1-2-1) 6% 1V2-HHB(2F,3F)-O2   (4-1-4-1) 6% 3-HH2B(2F,3F)-O2    (4-1-5-1) 6% 3-HBB(2F,3F)-O2     (4-1-7-1) 5% 3-H1OCro(7F,8F)-5   (4-2-2-1) 3% 3-HH1OCro(7F,8F)-5  (4-2-4-1) 3% [例5] 3-HH1OB(2F,3CL)-O2  (1-3-1)   4% 3-HB1OB(2F,3CL)-O2  (1-5-1)   4% 3-HH2B(2F,3CL)-O2   (1-9-1)   4% 3-HB2B(2F,3CL)-O2   (1-11-1)  4% 3-HDhB(2F,3F)-O2    (2-3-1)   7% 2-HH-3              (3-1-1)  17% V-HH-3              (3-1-1)  11% V2-BB-1             (3-3-1)   7% 1-BB(F)B-2V         (3-7-1)   3% 5-B(F)BB-2          (3-8-1)   3% 5-HBB(F)B-2         (3-13-1)  3% 5-HBB(F)B-3         (3-13-1)  3% 3-HB(2F,3F)-O2      (4-1-1-1) 5% 5-HB(2F,3F)-O2      (4-1-1-1) 5% 3-HHB(2F,3F)-O2     (4-1-4-1) 5% 5-HHB(2F,3F)-O2     (4-1-4-1) 5% 3-HBB(2F,3F)-O2     (4-1-7-1) 5% 5-HBB(2F,3F)-O2     (4-1-7-1) 5% [例6] 3-HH1OB(2CL,3F)-O2  (1-4-1)   4% 3-HB1OB(2CL,3F)-O2  (1-6-1)   4% 3-HH2B(2CL,3F)-O2   (1-10-1)  3% 3-HB2B(2CL,3F)-O2   (1-12-1)  3% 3-DhHB(2F,3F)-O2    (2-2-1)   3% V-DhHB(2F,3F)-O2    (2-2-1)   3% V-HH-3              (3-1-1)  25% 1V-HH-3             (3-1-1)   5% V-HHB-1             (3-5-1)  10% 5-HB(3F)BH-3        (3-12-1)  3% 3-HB(2F,3F)-O2      (4-1-1-1) 5% 3-HB(2F,3F)-O4      (4-1-1-1) 5% 3-H1OB(2F,3F)-O2    (4-1-3-1) 4% 3-HH1OB(2F,3F)-O2   (4-1-6-1) 3% 3-HH1OB(2F,3F)-1    (4-1-6-1) 3% 3-HBB(2F,3F)-O2     (4-1-7-1) 4% 5-HBB(2F,3F)-O2     (4-1-7-1) 4% 3-H2Cro(7F,8F)-5    (4-2-1-1) 3% 3-HB1OCro(7F,8F)-5  (4-2-5-1) 3% 3-HH2(2F,3F,6Me)-O2 (-)       3% 但し、化合物の記号は次の表により示される: [表1] ; (e)それぞれ、次の化合物からなる例1、4、5、6、7で示される液晶媒体 (例1) [化8] (例4) [化9] (例5) [化10] (例6) [化11] (例7) [化12] 。 但し、次の(a’)~(e’)の液晶媒体を除く; (a’)下式: [化13] (ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Z1は、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;X1およびX4は独立して、フッ素または塩素であり;X2およびX3のいずれか一方は水素であり、他方はフッ素または塩素であり;mは1または2である。) で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶媒体; (b’)下式: [化14] (ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。) (c’)次の化合物からなる[実施例8]で示される液晶媒体: [表2] 但し、化合物の記号は次の表により示される: [表3] (d’)次の化合物からなる[実施例1]で示される液晶媒体: [表4] 但し、化合物の記号は次の表により示される: [表5] (e’)それぞれ、次の化合物からなる実施例1、比較例3および実施例4で示される 液晶媒体: [表6] [表7] [表8] 但し、化合物の記号は次の表により示される: [表9] 」 第3 当審拒絶理由について 当審が平成30年8月1日付けで通知した拒絶理由のうち、理由III(進歩性、引用文献3を主引用例とする場合)及び理由VI(サポート要件)は、概略、以下のとおりである。 理由III(進歩性) この出願の請求項1~18に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献3~5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 3.国際公開第2011/024666号 4.国際公開第2010/072370号 (なお、日本語のパテントファミリーとして、特表2012-513483号公報が存在する。) 5.特開2009-102639号公報 理由VI(サポート要件) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 本願明細書に記載された具体例における主たる粘度低減効果は多量の「CC-3-V」により得られているとも解され、また、「一般式Iの極性化合物」の有無による粘度の変化を比較できる対照実験のデータが示されていないから、「一般式Iの極性化合物」を使用することと課題解決との関係を理解することはできない。 また、具体例で用いられた配合組成は、本願発明1に記載されている化合物I、化合物IIA~IIC及びCC-3Vの組合せに包含される液晶媒体のうちのごく一部にすぎないが、本願出願時における技術常識を参酌すると、広範な本願発明1の範囲において、発明の課題を解決することができるものと理解することはできない。 本願発明2~18も同様である。 よって、本願発明1~18は、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 当審の判断 1.理由III(進歩性:引用文献3を主引用例とする場合)について (1)引用文献及びその記載事項 引用文献3(国際公開第2011/024666号)には、以下の事項が記載されている。 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (3-1)「[請求項1] 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。 ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;mは1または2である。 [請求項2] 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から60重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲である請求項1に記載の液晶組成物。 [請求項3] 第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有する、請求項1または2に記載の液晶組成物。 ここで、R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z1は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;jは、0、1、または2である。 [請求項4] 第三成分が式(3-1)から式(3-10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項3に記載の液晶組成物。 ここで、R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ [請求項9] 液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が20重量%から70重量%の範囲である請求項3から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [請求項10] 第四成分として式(4-1)および式(4-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。 ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4-シクロへキシレン、または1,4-フェニレンであり;Z2およびZ3は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;kは、1、2、または3であり;pおよびqは独立して、0、1、2、または3であり、そしてpとqとの和が3以下である。 [請求項11] 第四成分が、式(4-1-1)から式(4-1-2)、および式(4-2-1)から式(4-2-4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項10に記載の液晶組成物。 ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環D1、環D2、環E1、および環E2は独立して、1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり;Z2およびZ3は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシである。 ・・・ [請求項15] 液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から40重量%の範囲である請求項10から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。 ・・・ [請求項17] 請求項1から16のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。 [請求項18] 液晶表示素子の動作モードが、VAモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項17に記載の液晶表示素子。」 (3-2)「[0009] 本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、小さな光学異方性、または大きな光学異方性である適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。」 (3-3)「[0060] 第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性な化合物が組成物に混合される。このような化合物の例は、化合物(5-1)から化合物(5-4)である。光学活性な化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。」 (3-4)「[0066] PSA(polymer sustained alignment)モードの素子に適合させるために重合可能な化合物が組成物に混合される。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。特に好ましい例は、アクリレート、またはメタクリレートの誘導体である。重合可能な化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、約0.05重量%以上であり、表示不良を防ぐために10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から2重量%の範囲である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、またはDarocure1173(登録商標)(Ciba Japan K.K.)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合可能な化合物の約0.1重量%から約5重量%の範囲であり、特に好ましい割合は、約1重量%から約3重量%の範囲である。」 (3-5)「[0068] 組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。」 (3-6)「[0070] この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。IPSまたはVAモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン-TFT素子または多結晶シリコン-TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。」 (3-7)「[0090] 表3 」 (3-8)「[0097] [実施例1] 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (1-2)     6% 5-HH1OB(2F,3F)-O2 (1-2)     6% 3-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)    10% 5-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)    10% V-HH-3            (3-1-1)  33% 1V-HH-3           (3-1-1)   7% 3-HB-O2           (3-2-1)   3% 1V-HBB-2          (3-6-1)   4% V-HB(2F,3F)-O2    (4-1-1-1) 6% V-HB(2F,3F)-O4    (4-1-1-1) 5% 3-H2Cro(7F,8F)-5  (4-2-1-1) 3% 3-H1OCro(7F,8F)-5 (4-2-1-2) 4% 3-HHCro(7F,8F)-5  (4-2-3-1) 3% NI=77.2℃;Tc≦-20℃;Δn=0.087;η=10.9mPa・s;Δε=-2.8;τ=8.6ms;VHR-1=99.0%;VHR-2=98.1%;VHR-3=98.1%.」 (3-9)「[0100] [実施例4] 3-H1OB(2F,3F)-O2  (1-1)     5% 5-H1OB(2F,3F)-O2  (1-1)     5% 3-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     7% 4-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     6% 5-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     7% V-HH-3            (3-1-1)  40% 3-HHB-3           (3-5-1)   4% 3-HHEBH-5         (3-7-1)   4% 3-HB(2F,3F)-O2    (4-1-1-1) 5% 5-HB(2F,3F)-O2    (4-1-1-1) 5% 3-H2Cro(7F,8F)-3  (4-2-1-1) 3% 3-H2Cro(7F,8F)-5  (4-2-1-1) 3% 2O-Cro(7F,8F)HH-5 (4-2-4-1) 3% 3-Cro(7F,8F)2HH-5 (4-2-4-2) 3% NI=73.7℃;Tc≦-20℃;Δn=0.082;η=11.4mPa・s;Δε=-2.8;τ=8.6ms;VHR-1=99.1%;VHR-2=98.0%;VHR-3=98.0%.」 (3-10)「[0101] [実施例5] 3-H1OB(2F,3F)-O2  (1-1)     6% 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (1-2)     5% 3-HH1OB(2F,3F)-O4 (1-2)     5% 3-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     7% 5-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     7% 3-HH-VFF          (3-1)     5% V-HH-3            (3-1-1)  28% 1V2-BB-1          (3-3-1)   4% V-HHB-1           (3-5-1)   6% 3-HB(2F,3F)-O2    (4-1-1-1) 5% 3-HB(2F,3F)-O4    (4-1-1-1) 5% 3-HHB(2F,3F)-O2   (4-1-2-1) 6% 2-Cro(7F,8F)2H-3  (4-2-2-1) 3% 2O-Cro(7F,8F)2H-3 (4-2-2-1) 3% 3-HH1OCro(7F,8F)-5(4-2-3-3) 5% NI=77.4℃;Tc≦-20℃;Δn=0.088;η=12.6mPa・s;Δε=-2.3;τ=8.8ms;VHR-1=99.1%;VHR-2=98.0%;VHR-3=98.1%.」 (3-11)「[0103] [実施例7] 3-H1OB(2F,3F)-O2  (1-1)     6% 4-H1OB(2F,3F)-O2  (1-1)     6% 5-H1OB(2F,3F)-O2  (1-1)     6% 3-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     9% 4-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     3% 5-HBB(2F,3F)-O2   (2-1)     9% V-HH-3            (3-1-1)  30% V-HH-5            (3-1-1)   5% 1V-HH-3           (3-1-1)   7% VFF-HHB-1         (3-5)     3% VFF2-HHB-1        (3-5)     3% 5-HBB(F)B-2       (3-10-1)  2% 5-HBB(F)B-3       (3-10-1)  2% 3-HH2Cro(7F,8F)-5 (4-2-3-2) 3% 3-HBCro(7F,8F)-5  (4-2-3-4) 3% 3-BBCro(7F,8F)-5  (4-2-3-5) 3% NI=89.5℃;Tc≦-20℃;Δn=0.102;η=11.7mPa・s;Δε=-2.8;τ=8.7ms;VHR-1=99.2%;VHR-2=98.1%;VHR-3=98.1%.」 (2)引用文献3に記載された発明 引用文献3の特許請求の範囲(摘記3-1)には、第一成分として化合物(1)、第二成分として化合物(2)を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物が記載されており(化合物(1)及び化合物(2)の定義は、摘記3-1の請求項1を参照。)、第三成分として化合物(3)をさらに含有すること(化合物(3)の定義は、摘記3-1の請求項3を参照。)、第四成分として化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)をさらに含有すること(各化合物の定義は、摘記3-1の請求項10を参照。)、液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から60重量%の範囲、第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲、第三成分の割合が20重量%から70重量%の範囲、第四成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であること(摘記3-1の請求項2、9、15)が記載されている。 また、摘記3-3には、組成物に混合してもよい添加物として、「光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤など」が記載されており、さらに、摘記3-4には、PSA(polymer sustained alignment)モードの素子に適合させるために重合可能な化合物が組成物に混合されることが記載されており、好ましい割合は約0.05重量%以上、10重量%以下であることが記載されている。 そうすると、引用文献3には、以下の発明が記載されているものと認められる。 「第一成分として化合物(1)、第二成分として化合物(2)、第三成分として化合物(3)、第四成分として化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)を含有し(各化合物の定義は、摘記3-1を参照。)、液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から60重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、第三成分の割合が20重量%から70重量%の範囲であり、第四成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、任意に重合可能な化合物を0.05重量%以上、10重量%以下の範囲で含有することができ、その他の任意添加物として光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤及び/又は重合開始剤を含有することができ、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。」(以下、「引用発明3a」という。) (3)本願発明1について ア 本願発明1と引用発明3aとの対比 本願発明1と引用発明3aとを対比すると、 引用発明3aにおける「第一成分として化合物(1)」は、その化学構造式及び定義からみて、明らかに本願発明1における「化合物I」と重複するものであり、引用発明3aにおける「第一成分の割合が5重量%から60重量%の範囲」は、本願発明1における「式I・・・1~30%の量」と重複しており、 引用発明3aにおける「第二成分として化合物(2)」は、その化学構造式及び定義からみて、明らかに本願発明1における「化合物IIB」と重複するものであり、引用発明3aにおける「第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲」は、本願発明1における「式IIAおよび/またはIIBの化合物を含有するときは合計で20%以上の量」と重複しており、 引用発明3aにおける「第四成分として化合物(4-1)」は、その化学構造式及び定義からみて、明らかに本願発明1における「化合物IIA」と重複するものであり、引用発明3aにおける「第四成分の割合が5重量%から40重量%の範囲」は、本願発明1における「式IIAおよび/またはIIBの化合物を含有するときは合計で20%以上の量」と重複しており、 引用発明3aにおける「第三成分として化合物(3)」は、その化学構造式及び定義からみて、明らかに本願発明1における「CC-3-Vで示される化合物」を包含し、引用発明3aにおける「第三成分の割合が20重量%から70重量%の範囲」は、本願発明1における「CC-3-V」の含有量である「10%以上の量」と重複している。 また、引用発明3aにおける「第一成分として化合物(1)」、「第二成分として化合物(2)」及び「第四成分として化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)」は、置換基としてフッ素又は塩素を有するから、「極性化合物」に相当し、引用発明3aにおける「液晶組成物」は、本願発明1における「液晶媒体」に相当する。 そうすると、両者は、本願発明1の表記を用いて記載すると、 「極性化合物の混合物を基礎とする液晶媒体」の点で一致し、 相違点1”-I:本願発明1は、「化合物Iを1~30%の量で」含むのに対し、引用発明3aは、「第一成分として化合物(1)」を「5重量%から60重量%の範囲」で含むものである点 相違点1”-II:本願発明1は、「化合物IIA、化合物IIB及び/又は化合物IICを、化合物IIA及び/又は化合物IIBを含有するときは合計で20%以上の量で、化合物IICを含有するときは3%以上の量で」含むのに対し、引用発明3aは、「第二成分として化合物(2)」を「5重量%から40重量%の範囲」で含み、かつ「第四成分として化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)」を「5重量%から40重量%の範囲」で含むものである点 相違点2”:本願発明1は、「CC-3-Vで示される化合物を10%以上の量で含む」のに対し、引用発明3aは「第三成分として化合物(3)」を「20重量%から70重量%の範囲」で含むものである点 相違点3”:本願発明1は、「次の(a)~(e)の液晶媒体を除く;((a)~(e)は省略。)。」及び「次の(a’)~(e’)の液晶媒体を除く;((a’)~(e’)は省略。)。」(以下、それぞれ「除外規定(a)」~「除外規定(e’)」という。)ものであるのに対し、引用発明3aにおいてはそのようなことが特定されていない点 で相違する。そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点1”-I、相違点1”-II、相違点2”及び相違点3”について (ア)引用文献3の実施例1について 引用文献3の摘記3-8には、引用発明3aの具体例の一つとして実施例1の液晶組成物が記載されており、 「3-HH1OB(2F,3F)-O2(1-2)6%」及び「5-HH1OB(2F,3F)-O2(1-2)6%」は、本願発明1における「化合物I」に相当し、「1~30%の量で」含むという要件を満たしており、 「3-HBB(2F,3F)-O2(2-1)10%」及び「5-HBB(2F,3F)-O2(2-1)10%」は、本願発明1における「化合物IIB」に相当し、「化合物IIA及び/又は化合物IIBを含有するときは合計で20%以上の量で」含むという要件を満たしており、 「V-HH-3(3-1-1)33%」は、本願発明1における「CC-3-V」に相当し、「10%以上の量で」含むという要件を満たしている。 そうすると、実施例1を参酌すると、相違点1”-I、相違点1”-II及び相違点2”は、実質的な相違点ではないか、当業者が容易に想到し得たことといえる。 ここで、引用文献3の実施例1は、「3-H2Cro(7F,8F)-5(4-2-1-1)3%」、「3-H1OCro(7F,8F)-5(4-2-1-2)4%」及び「3-HHCro(7F,8F)-5(4-2-3-1)3%」という、引用発明3aにおける「第四成分として・・・化合物(4-2)」を合計で10重量%するものであるから、上記相違点3”に係る本願発明1の除外規定(b)に反している。 しかし、引用発明3aにおける第四成分は「化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)」であり、「化合物(4-2)」と同等の化合物として「化合物(4-1)」を用いることができるものとされているから、実施例1における上記「化合物(4-2)」に相当する化合物に代えて、「化合物(4-1)」に相当するもの(本願発明1における「化合物IIA」に相当する。)を用いて、本願発明1の除外規定(b)に抵触しない組成物とすること、それにより上記相違点3”に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願明細書の記載を参酌しても、除外規定(b)により本願発明1が格別顕著な効果ないし異質の効果を備えたものになるとは認められない。 よって、本願発明1は引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)引用文献3の実施例4について 引用文献3の摘記3-9には、引用発明3aの具体例の一つとして実施例4の液晶組成物が記載されており、 「3-H1OB(2F,3F)-O2(1-1)5%」及び「5-H1OB(2F,3F)-O2(1-1)5%」は、本願発明1における「化合物I」に相当し、「1~30%の量で」含むという要件を満たしており、 「3-HBB(2F,3F)-O2(2-1)7%」、「4-HBB(2F,3F)-O2(2-1)6%」及び「5-HBB(2F,3F)-O2(2-1)7%」は、本願発明1における「化合物IIB」に相当し、 「3-HB(2F,3F)-O2(4-1-1-1)5%」及び「5-HB(2F,3F)-O2(4-1-1-1)5%」は、本願発明1における「化合物IIA」に相当し、 これらは「化合物IIA及び/又は化合物IIBを含有するときは合計で20%以上の量で」含むという要件を満たしており、 「V-HH-3(3-1-1)40%」は、本願発明1における「CC-3-V」に相当し、「10%以上の量で」含むという要件を満たしている。 そうすると、実施例4を参酌すると、相違点1”-I、相違点1”-II及び相違点2”は、実質的な相違点ではないか、当業者が容易に想到し得たことといえる。 ここで、引用文献3の実施例4は、「3-H2Cro(7F,8F)-3(4-2-1-1)3%」、「3-H2Cro(7F,8F)-5(4-2-1-1)3%」、「2O-Cro(7F,8F)HH-5(4-2-4-1)3%」及び「3-Cro(7F,8F)2HH-5(4-2-4-2)3%」という、引用発明3aにおける「第四成分として・・・化合物(4-2)」を合計で12重量%するものであるから、上記相違点3”に係る本願発明1の除外規定(b)に反している。 しかし、引用発明3aにおける第四成分は「化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)」であり、「化合物(4-2)」と同等の化合物として「化合物(4-1)」を用いることができるものとされているから、実施例4における上記「化合物(4-2)」に相当する化合物に代えて、「化合物(4-1)」に相当するもの(本願発明1における「化合物IIA」に相当する。)を用いて、本願発明1の除外規定(b)に抵触しない組成物とすること、それにより上記相違点3”に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願明細書の記載を参酌しても、除外規定(b)により本願発明1が格別顕著な効果ないし異質の効果を備えたものになるとは認められない。 よって、本願発明1は引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ)引用文献3の実施例5について 引用文献3の摘記3-10には、引用発明3aの具体例の一つとして実施例5の液晶組成物が記載されており、 「3-H1OB(2F,3F)-O2(1-1)6%」、「3-HH1OB(2F,3F)-O2(1-2)5%」及び「3-HH1OB(2F,3F)-O4(1-2)5%」は、本願発明1における「化合物I」に相当し、「1~30%の量で」含むという要件を満たしており、 「3-HBB(2F,3F)-O2(2-1)7%」及び「5-HBB(2F,3F)-O2(2-1)7%」は、本願発明1における「化合物IIB」に相当し、 「3-HB(2F,3F)-O2(4-1-1-1)5%」、「3-HB(2F,3F)-O4(4-1-1-1)5%」及び「3-HHB(2F,3F)-O2(4-1-2-1)6%」は、本願発明1における「化合物IIA」に相当し、 これらは「化合物IIA及び/又は化合物IIBを含有するときは合計で20%以上の量で」含むという要件を満たしており、 「V-HH-3(3-1-1)28%」は、本願発明1における「CC-3-V」に相当し、「10%以上の量で」含むという要件を満たしている。 そうすると、実施例5を参酌すると、相違点1”-I、相違点1”-II及び相違点2”は、実質的な相違点ではないか、当業者が容易に想到し得たことといえる。 ここで、引用文献3の実施例5は、「2-Cro(7F,8F)2H-3(4-2-2-1)3%」、「2O-Cro(7F,8F)2H-3(4-2-2-1)3%」及び「3-HH1OCro(7F,8F)-5(4-2-3-3)5%」という、引用発明3aにおける「第四成分として・・・化合物(4-2)」を合計で11重量%するものであるから、上記相違点3”に係る本願発明1の除外規定(b)に反している。 しかし、引用発明3aにおける第四成分は「化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)」であり、「化合物(4-2)」と同等の化合物として「化合物(4-1)」を用いることができるものとされているから、実施例5における上記「化合物(4-2)」に相当する化合物に代えて、「化合物(4-1)」に相当するもの(本願発明1における「化合物IIA」に相当する。)を用いて、本願発明1の除外規定(b)に抵触しない組成物とすること、それにより上記相違点3”に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願明細書の記載を参酌しても、除外規定(b)により本願発明1が格別顕著な効果ないし異質の効果を備えたものになるとは認められない。 よって、本願発明1は引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (エ)引用文献3の実施例7について 引用文献3の摘記3-11には、引用発明3aの具体例の一つとして実施例7の液晶組成物が記載されており、 「3-H1OB(2F,3F)-O2(1-1)6%」、「4-H1OB(2F,3F)-O2(1-1)6%」及び「5-H1OB(2F,3F)-O2(1-1)6%」は、本願発明1における「化合物I」に相当し、「1~30%の量で」含むという要件を満たしており、 「3-HBB(2F,3F)-O2(2-1)9%」、「4-HBB(2F,3F)-O2(2-1)3%」及び「5-HBB(2F,3F)-O2(2-1)9%」は、本願発明1における「化合物IIB」に相当し、「化合物IIA及び/又は化合物IIBを含有するときは合計で20%以上の量で」含むという要件を満たしており、 「V-HH-3(3-1-1)30%」は、本願発明1における「CC-3-V」に相当し、「10%以上の量で」含むという要件を満たしている。 そうすると、実施例7を参酌すると、相違点1”-I、相違点1”-II及び相違点2”は、実質的な相違点ではないか、当業者が容易に想到し得たことといえる。 ここで、引用文献3の実施例7は、「3-HH2Cro(7F,8F)-5(4-2-3-2)3%」、「3-HBCro(7F,8F)-5(4-2-3-4)3%」及び「3-BBCro(7F,8F)-5(4-2-3-5)3%」という、引用発明3aにおける「第四成分として・・・化合物(4-2)」を合計で9重量%するものであるから、上記相違点3”に係る本願発明1の除外規定(b)に反している。 しかし、引用発明3aにおける第四成分は「化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)」であり、「化合物(4-2)」と同等の化合物として「化合物(4-1)」を用いることができるものとされているから、実施例7における上記「化合物(4-2)」に相当する化合物に代えて、「化合物(4-1)」に相当するもの(本願発明1における「化合物IIA」に相当する。)を用いて、本願発明1の除外規定(b)に抵触しない組成物とすること、それにより上記相違点3”に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願明細書の記載を参酌しても、除外規定(b)により本願発明1が格別顕著な効果ないし異質の効果を備えたものになるとは認められない。 よって、本願発明1は引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 請求人の主張について 請求人は、平成31年2月6日に提出した意見書の「5.拒絶理由IIおよびIII(新規性および進歩性)について」の「[引用文献3]」において、「引用文献3の請求項10には式(4-2)の化合物が記載されており、当該化合物は既に本願請求項1から除かれています。 ・・・ そして上記式(4-2)の化合物は、引用文献3の実施例1、4、5および7の全てで採用されていることから当該引用発明において主要な構成要件であると考えられます。 ・・・引用文献3の実施例1において、流動粘度ηは10.9mPa・sです。そして流動粘度ηは回転粘度γ1とは異なる物性値であるため単純に本願発明と比較することは困難ですが、標準的な液晶媒体の流動粘度ηが10~20mPa・s程度であるのと比較すれば引用文献3の実施例1における流動粘度ηの10.9mPa・sは通常程度の品位であると推察され、本願発明で実現される低粘度を特に示唆するものではありません。」と主張し、引用文献3の実施例4、5、7についても同様のことを主張している。 しかし、上記第4 1.(3)イ(ア)「引用文献3の実施例1について」~同(エ)「引用文献3の実施例7について」に記載したとおり、引用発明3aにおける第四成分は「化合物(4-1)及び/又は化合物(4-2)」であり、化合物(4-2)と同等の化合物として化合物(4-1)を用いることができるものとされているから、引用文献3に記載された実施例1、4、5及び7における「化合物(4-2)」に代えて、化合物(4-1)(本願発明1における「化合物IIA」に相当する。)を用いるようにすることにより、本願発明1の除外規定(b)に抵触しない組成物とすること、それにより上記相違点3”に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、請求人は、本願発明で低粘度が実現される旨を主張しているが、本願明細書に記載された実施例のうち、本願発明1の要件を満たし、その回転粘度の実験データが開示されているものは4例しかなく(<例M9>、<例M14>、<例M16>及び<例M17>)、かつ、これらの例で用いられた配合組成は、本願発明1に記載されている化合物I、化合物IIA~IIC及びCC-3Vの組合せに包含される液晶媒体のうちのごく一部にすぎない。例えば、液晶媒体の粘度は、「CC-3-V」のような2環化合物の配合量比により大きく変化すると考えられるが、本願発明1における「CC-3-V」の配合量比は「10%以上」であり、上記実施例における配合量比(34.00%~39.00%)と比べて少ない場合を包含しており、一概に本願発明1の液晶媒体の回転粘度が低くなるとは予測できない。また、一般に、液晶組成物の分野においては、液晶化合物の環の数や置換基の種類によって、粘度、誘電率異方性等の様々な特性が変化することが知られており、さらに、化学構造が異なる液晶化合物を組み合わせて用いる場合、液晶組成物全体としての特性がどのようなものになるか、及び表示素子として実用的な特性を有するものになるかを予測することは困難であるというのが本願出願時における技術常識であるから、本願明細書に記載された上記実施例の記載及び技術常識を参酌しても、本願発明1が回転粘度の点で引用発明3aよりも優れた性質を備えていると理解することはできない。 よって、請求人の主張は採用することができない。 エ 小括 以上のことから、本願発明1は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本願発明2~18について検討するまでもなく、本願は理由III(進歩性:引用文献3を主引用例とする場合)により拒絶すべきものである。 2.理由VI(サポート要件)について (1)本願発明1について 本願明細書[0027]には、従来技術の課題として、「非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾電圧を有しており、これらのおかげで各種の中間調(灰色遮光)を生成することができるMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。」こと、及び「PS-VAおよびPSAディスプレイにおいては、重合性成分を含む液晶媒体はMLCディスプレイ中に適切なプレチルトを確立できなければならず、比較的高い電圧保持率(voltage holding ratio:VHRまたはHR)を有していなければならない。」ことが記載されており、このため、本願発明は、[0030]に記載されているように、「特に、IPS、FFS、VAと、また、PS-VAとの両者のディスプレイにおいて用いることができ、特に、モニターおよびテレビ用途に適しており、上で示した不具合を有していないか、低減された程度にのみ有する液晶媒体を提供する」こと、及び「特に、極度の高温および極度の低温においてもモニターおよびテレビが動作し、同時に短い応答時間を有し、同時に改良された信頼性挙動を有し、特に、長い動作時間後に画像の固着を示さないか、著しく低減されていることが保証され」ることを課題とするものと解される。 また、当該課題を解決する手段について、[0031]には、「驚くべきことに、液晶混合物中において、特に、負の誘電異方性を有するLC混合物中において、好ましくは、VAディスプレイ用に一般式Iの極性化合物を使用すれば、回転粘度、よって、応答時間を改良することが可能である。」ことが記載されている。 これに対して、本願明細書には、本願発明1の要件を満たす液晶媒体の具体例として、[0443]の<例M9>、[0448]の<例M14>、[0450]の<例M16>、[0451]の<例M17>が記載されているが、上記のいずれの例においても、二環化合物である「CC-3-V」が34.00%~39.0%、最多成分として含まれているから、主たる粘度低減効果は多量の「CC-3-V」により得られているとも解され、また、「一般式Iの極性化合物」の有無による粘度の変化を比較できる対照実験のデータが示されていないから、「一般式Iの極性化合物」を使用することと課題解決との関係を理解することはできない。 また、本願明細書の[0031]には、「更に驚くべきことに、本発明による液晶媒体をPS-VAおよびPSAディスプレイにおいて使用することで、特に、低いプレチルト角および所望のチルト角を迅速に確立できることが見出された。これは、本発明による媒体の場合において、プレチルトを測定することで示された。特に、光開始剤を添加することなく、プレチルトを達成することが可能であった。加えて、プレチルト角の曝露時間依存性を測定することで示された通り、先行技術から既知の材料と比較して、本発明による媒体は、プレチルト角の著しく迅速な生成を示す。」ことが記載されている。 しかし、上記<例M9>~<例M17>については、いずれも反応性メソゲンを添加し、重合させて、重合後の液晶媒体の特性を評価した実験データは示されていないから、これらの具体例の組成物が、実際にPS-VA、PSA等の重合性化合物を使用する場合の課題を解決することができるものであることを理解することはできない。 さらに、仮に、上記<例9>~<例M17>が上記の課題を解決し得るものであるとしても、これらの例で用いられた配合組成は、本願発明1に記載されている化合物I、化合物IIA~IIC及びCC-3Vの組合せに包含される液晶媒体のうちのごく一部にすぎない。一般に、液晶組成物の分野においては、液晶化合物の環の数や置換基の種類によって、粘度、誘電率異方性等の様々な特性が変化することが知られており、また、化学構造が異なる液晶化合物を組み合わせて用いる場合、液晶組成物全体としての特性がどのようなものになるか、及び表示素子として実用的な特性を有するものになるかを予測することは困難であるというのが本願出願時における技術常識であるから、このような場合に、本願発明1の記載が明細書のサポート要件に適合するためには、発明の詳細な説明は、本願発明1に記載された各化合物の式が示す化合物の化学構造の範囲、及び本願発明1に記載された各化合物の配合量比の範囲内での組合せと、得られる効果との関係の技術的な意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、本願発明1に記載された化合物の組合せの範囲内であれば所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要するものと解される。 しかし、上記<例M9>~<例M17>の記載及び技術常識を参酌しても、これら限られた実験データから、どの配合成分が上記課題の解決にどの程度寄与しているのか把握することは困難であるし、さらに、これらの例とは異なる化合物を異なる割合で含み得る本願発明1に相当する液晶組成物全般が、一律に上記課題を解決し得るものであると理解することも困難である。 そうすると、本願発明1は、本願明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決し得ると認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)請求人の主張について 請求人は、平成31年2月6日に提出した意見書の「7.拒絶理由VI(サポート要件)について」において、例M16及び例M17の実験データを根拠として、「本願式Iの化合物は動力学的な観点から予想される粘度増加と比較すれば実際の粘度増加は小さく、回転粘度の低下などの本願発明の効果に貢献している蓋然性は高いと言い得ると思料します。 要するに本願実施例である例M9、M14、M16およびM17のいずれにおいてもCC-3-Vが多量に使用され、最も含有量の高い化合物はCC-3-Vであって本願式Iの化合物ではないからといって、この事実をもって本願式Iの化合物が回転粘度の低下などに与える本願発明の効果を否定し本願を拒絶するには足り得ないと思料する次第です。」と主張している。 しかし、例M17に含まれる本願発明1の化合物1に相当する化合物は「CCOY-3-O2」という1種類の3環化合物だけであるのに対し、本願発明1における化合物Iの定義には、2~5環化合物が含まれ、両末端のアルキル基の長さはそれぞれ炭素数1~15の範囲であり得るから、例M17の「CCOY-3-O2」に比べて環の数や末端基の構造等の粘度に影響を与え得る化学構造が幅広く変化し得るから、本願発明1の化合物1が、一概に「動力学的な観点から予想される粘度増加と比較すれば実際の粘度増加は小さく、回転粘度の低下などの本願発明の効果に貢献している蓋然性は高い」ものであるとはいえない。 また、本願発明1における化合物1の配合量比は「1~30%」と規定されているところ、例M17における「CCOY-3-O2」の配合量比は4%であるから、配合量比がより高く30%に近い場合にも液晶媒体の粘度増加が小さく抑制されるとまでは直ちに予測できるものではない。 さらに、液晶組成物の分野においては、化学構造が異なる液晶化合物を組み合わせて用いる場合、液晶組成物全体としての特性がどのようなものになるか、及び表示素子として実用的な特性を有するものになるかを予測することは困難であるというのが本願出願時における技術常識であるから、例M17という特定の液晶媒体において「CCOY-3-O2」の効果が確認されたとしても、直ちに他の液晶成分との組合せにおいても同様の効果が得られるとはいえない。 そうすると、本願発明1における化合物の組合せ(化合物I、化合物IIA~IIC及びCC-3V)に包含される広範な液晶媒体が、一律に粘度増加の抑制を含む上記課題を解決することができるものと理解することはできない。 よって、請求人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のことから、本願発明1は、本願明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決し得ると認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、本願発明2~18について検討するまでもなく、本願は理由VI(サポート要件)により拒絶すべきものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本願発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-015177

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