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特許拒絶査定不服審判

2016-012734

ハロオレフィン類組成物

審判番号
2016-012734
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-157937外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年08月24日
審決日
2018年10月22日
公報発行日
2019年02月22日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (C09K) / P18 .121-WZ (C09K) / P18 .537-WZ (C09K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-157937「ハロオレフィン類組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 69634〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成27年8月10日(優先権主張 平成26年9月26日)を出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は、概略、以下のとおりのものである。 平成27年10月7日付け  拒絶理由通知書 同年12月14日   意見書・手続補正書 平成28年5月20日付け  拒絶査定 同年8月24日    審判請求書・手続補正書 同年10月31日付け 前置報告書 同年12月8日    上申書 平成29年8月9日付け   拒絶理由通知(1回目) 同年10月16日   意見書・手続補正書 平成30年1月15日付け  拒絶理由通知書(2回目) 同年3月16日    意見書 同年5月24日付け  拒絶理由通知書(3回目) 同年7月27日    意見書・手続補正書・手続補足書(参考文献              1、2) 第2 本願発明の認定 本願の請求項1~3に係る発明は、平成30年7月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1及び3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び3に記載される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (a)HFO-1234yfと、 (b)HFO-1234ze、HFC-254eb、HFO-1243zf、HFC-245eb、HFC-245cb、HFC-236ea、HFC-236fa、HFO-1225ye、3,3,3-トリフルオロプロピン、HFC-23、HFC-32、HFC-125、HFC-143a、HFC-134a、FC-1216、HCFO-1233xf、HCFO-1233zd、HCFO-1232xf、HCFO-1223xd及びクロロメタンの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、 (c)水と、 (d)酸素と、 を含み、前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下であり、 前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(b)の化合物の含有量が0.1重量ppm以上10000ppm未満であり、 前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量が0.35mol%以下である、ハロオレフィン類組成物。 ・・・・・・・ 【請求項3】 (a)HFO-1234yfと、 (c)水と、 (d)酸素と、 (e)ポリアルキレングリコール及びポリオールエステルの少なくとも一方と、 を含み、前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下であり、 前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量が0.35mol%以下である、ハロオレフィン類組成物。」 第3 平成30年5月24日付け拒絶理由の概要 平成30年5月24日付け拒絶理由は、以下のとおりである。 理由1 本願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2 本願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である引用例1~8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由3 本願請求項1~3に記載された発明は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものでなく、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 当審の判断 1 特許法第29条第1項第3号(理由1)及び同法同条第2項(理由2)について (1)引用例1~8の記載 ア 引用例1 本願優先日前に頒布された「AHRI Standard700、2011年発行、1~16頁」(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、引用例1は英語であるため、訳文は、当審によるものである。 (ア1)「フルオロカーボン冷媒の仕様に関する2011年規格」(表紙)(ア2)「1.1 目的 この基準の目的は、AHRIの範囲内で、新規および既存の冷媒および空調製品を使用するために、フルオロカーボン冷媒の供給源に関わらず(新規、再生品および/または再充填品)、純度の仕様を確定すること、成分を確認すること、許容性に関する試験方法を規定することである。」(1頁) (ア3)「2.1 範囲 この基準では、フルオロカーボン冷媒(以下、冷媒という。)の供給源に関わらず、不純物の許容レベル(純度要求)および好ましい試験方法を明記する。これらの冷媒は、・・・・・・;R-1234yf;・・・・・・であり、ANSI/ASHRAE Standard 34より参照される。」(1頁) (ア4)「5.4 含水量 5.4.1 方法 冷媒の含水量を決定するために、AppendixCに記載されているカールフィッシャー電量滴定法が用いられる。この方法は、室温において液体または気体の冷媒を使用することができる。全ての冷媒において、水分析用の試料は、試験容器の液相から採取しなければならない。 5.4.2 制限 含水量の値は、重量百万分率(重量ppm)で表記し、表1A、1B、1Cの最大値を超えてはならない。」(3頁) (ア5)「5.10 非凝縮性成分 5.10.1 方法 気相試料は、非凝縮性成分の決定のために使用される必要がある。非凝縮性ガスは、主に冷媒の気相に溜まった空気からなり、冷媒の液相への空気の溶解度は極めて低く、空気は液相内の混入物質として重要でない。非凝縮性ガスが存在すると、冷媒を貯蔵タンクやシリンダーに移した際に、品質管理が低下する懸念がある。試験方法は、AHRI Standard 700 AppendixCに記載の熱伝導率検出器を備えたガスクロマトグラフィーで行わなければならない。 5.10.2 制限 試験試料の気相における非凝縮性物の最大許容量は、表1A、1B、1Cに記載の25℃における最大値を超えてはならない。」(4頁) (ア6)「 ┌───────────────────────────────┐ │表1A 単一成分の冷媒の特性とこれらの冷媒における不純物最大の│ │    許容レベル(続き)                  │ ├────────────┬────┬────┬────────┤ │            │単位  │    │R-1234yf│ ├────────────┼────┼────┼────────┤ │特性          │    │    │        │ ├────────────┼────┼────┼────────┤ │(省略)        │(省略)│(省略)│        │ │            │    │    │        │ ├────────────┼────┼────┼────────┤ │気相における不純物   │    │    │        │ ├────────────┼────┼────┼────────┤ │空気その他の非凝集性ガス│体積%@│(省略)│  1.5   │ │            │25℃ │    │        │ ├────────────┼────┼────┼────────┤ │液相における不純物   │    │    │        │ ├────────────┼────┼────┼────────┤ │水           │重量  │    │   10   │ │            │ppm │    │        │ ├────────────┼────┼────┼────────┤ │(省略)        │(省略)│(省略)│        │ ├────────────┴────┴────┼────────┤ │(省略)                  │        │ └──────────────────────┴────────┘ 」(7頁の表1A 注:引用例7には、「7」と表記される頁が2つあるが、「R-1234yf」がある頁を示す。) イ 引用例2 本願優先日前に頒布された特表2013-529717号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (イ1)「【請求項1】 ポリオールエステル(POE)をベースとする少なくとも一種の潤滑剤と、少なくとも99.8重量%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、0.5~500ppmの1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンと、0.5~500ppmの3,3,3-トリフルオロプロピンと、1~1500ppmの2個または3個の炭素原子を含み、必要に応じてさらにオレフィン結合を含む化合物(HFO-1225yeおよび3,3,3-トリフルオロプロピンを除く)とから成る冷媒Fとを含む組成物。」(特許請求の範囲) (イ2)「【0014】 ポリオールエステルはポリオール(少なくとも2つのヒドロキシル基-OHを有するアルコール)と、単官能性または多官能性のカルボン酸または単官能性のカルボン酸の混合物との反応で得られる。この反応で生じる水は逆反応(すなわち加水分解)を防ぐために除去される。これは、ポリオールエステルが、ある条件下で水と反応して、ポリオールを再生できることによる。 【0015】 本発明者は、この先入観にもかかわらず、湿気侵入のリスクがより高い空調、特に自動車空調で冷媒FをPOEと一緒に使用できることを見出した。一般に、自動車空調回路は水分のレベルが約1000ppmを超えないように乾燥フィルタを有する。」 (イ3)「【0025】 実験部分 熱安定性試験はASHRAE規格 97-2007:「冷媒システムで使用する材料の化学安定性をテストするための密封ガラス・チューブ法」に従って実行した。 テスト条件は以下の通り: 流体Fの重量:2.2g 潤滑剤の重量:5g 温度:200℃ 時間:14日間 【0026】 42.2mlのガラス管に一定長さの鋼と潤滑剤とを入れる。ガラス管を真空減圧してから流体Fを加える。ガラス管を溶接、密封し、200℃で14日間、乾燥器中に置く。 【0027】 テスト終了時に各種分析を行う: (1)気相を回収し、ガスクロマトグラフィで分析する:主たる不純物をGC/MSで同定した(ガスクロマトグラフィをマススペクトロメトリに連結)。流体Fから来る不純物と潤滑剤から来る不純物とを含む。 (2)鋼を秤量(腐食速度の測定)し、顕微鏡で観察する。 (3)潤滑剤は色(分光測色法(Labomat DR Lange LICO220 Model MLG131)で)、含水率(カール・フィッシャー・クーロメトリ(Mettler DL37)で)および酸価(0.01N メタノール水酸化カリウムで定量分析)を分析した。 【0028】 2つの商用潤滑剤:PAG ND8およびPOE Ze-GLES RB68をテストした。これらの潤滑剤は初期含水率がそれぞれ510および50ppmである。 【0029】 次いで、各潤滑剤の含水率が1000ppmに達するように水を添加して試験した。これらの試験で用いた流体Fは99.85重量%のHFO-1234yfと、213ppmの3,3,3-トリフルオロプロピンと、30ppmのHFO-1225yeと、1257ppmの2個または3個の炭素原子を含み、必要に応じてさらにオレフィン結合を含む化合物とを含む。 【0030】 【表1】 【0031】 同じ含水率の存在下では、流体FはPOEの存在下で、より安定である点に注意されたい。」 ウ 引用例3 本願優先日前に頒布された特開2010-37343号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ウ1)「【請求項17】 少なくとも約99.9重量%の2,3,3,3-テトラフルオロプロパンを含み、極微量~0.1重量%以下の他の化合物を含む、高純度の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン製品。 【請求項18】 総計で、極微量以上であるが約0.1重量%未満の1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、および1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンの1種または複数をさらに含む、請求項17に記載の高純度の2,3,3,3-テトラフルオロプロパン製品。」(特許請求の範囲) (ウ2)「【0003】 クロロフルオロカーボン類(CFCs)などの含塩素化合物は、冷媒、泡沫発泡剤、洗浄剤、溶媒、熱伝達媒体、滅菌剤、エアゾール噴射剤、誘電体、消火剤、および電力サイクル作動流体として用いられている。そのような含塩素化合物は、地球のオゾン層に有害であることが判明している。CFC類の代用品として使用されるハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の多くは、地球温暖化の一因となることが見出されている。これらの理由から、環境により優しく、同時に、性能の観点から、同様に効果的、またはより効果的な新規化合物を開発する努力が世界的に行われている。 【0004】 特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)を含む、フッ素化オレフィンを含有する化合物は、前述の用途で使用するために開発された材料である。さらに、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)は、フルオロポリマーおよび高分子化合物の合成のための供給原料モノマーとして使用され得る。」 (ウ3)「【0032】 実施例4:1234yfの精製 1234yf粗生成物約45.36kg(100.0lbs)を、37.85リットル(10ガロン)のリボイラー、内径5.08cm(2インチ)×3.048m(10フィート)のプロパック塔、およびシェル・アンド・チューブ式(多管式)凝縮器からなる蒸留釜中に投入する。該塔は、理論段約30段を有する。蒸留釜は、温度、圧力、および差圧トランスミッターを備えている。蒸留は、約85psigの圧力で実施する。留出物を、規則的な間隔で、GCによってサンプリングし分析する。1234yfを、その1234yf純度が≧99.9%である期間の間に収集する。結局、精製生成物34.25kg(75.5lbs)を得る。最終生成物のGC分析は、それが1225ye100ppmおよびトリフルオロプロピン10ppmを含有することを示す。」 エ 引用例4 本願優先日前に頒布された特表2011-520016号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。 (エ1)「【請求項1】 HFO-1234yfと、HFO-1234ze、HFC-254eb、HFC-254fb、HFO-1243zf、HFC-245eb、HFC-245fa、HFC-245cb、HFC-236cb、HFC-236ea、HFC-236fa、HFC-227ea、HFC-227ca、HFO-1225yc、HFO-1225zc、HFO-1225ye、3,3,3-トリフルオロプロピン、メタン、エタン、プロパン、HFC-23、HFC-143a、HFC-134、HFC-134a、HFO-1132aおよびFC-1216からなる群から選択される少なくとも1つの追加的な化合物とを含む組成物。 【請求項2】 約1重量%未満の前記少なくとも1つの追加的な化合物を含有する請求項1に記載の組成物。」(特許請求の範囲) (エ2)「【0002】 本開示は、伝熱組成物、エアゾール噴射剤、発泡剤(foaming agent)、発泡剤(blowing agent)、溶媒、洗浄剤、分散媒、置換乾燥剤、バフ研磨剤、重合媒体、ポリオレフィンおよびポリウレタンのための膨張剤、ガス状誘電体、消火剤、ならびに液体状またはガス状の火災鎮圧剤として有用であろう組成物の分野に関する。特に、本開示は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yfまたは1234yf)などの伝熱組成物、あるいはHFO-1234yfを製造する方法で有用である1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245ebまたは245eb)を含む組成物として有用であろう組成物に関する。 【0003】 新しい環境規制によって、冷凍、空気調節および熱ポンプ装置用の新規組成物の必要性が導かれた。地球温暖化の可能性の低い化合物は特に興味深い。」 (エ3)「【0078】 実施例3 HFC-245ebからHFC-1234yfへの液体相脱フッ化水素 3つ口の2リットルフラスコに水氷冷却器、熱電対およびオーバーヘッドスターラーを備えた。冷却器の排出物を乾燥CaSO4に通し、次いで、活性化分子篩と、ドライアイス/アセトンに浸漬したディップチューブを備えたステンレス鋼トラップに通した。ステンレス鋼トラップの出口にあるKrytox(登録商標)の商標でDuPont(Wilmington,Delaware)により販売されるペルフッ素化ポリエーテル製のオイルバブラーによって、捕捉された生成物の水分による汚染を防いだ。 【0079】 このフラスコに、水(736mL)、テトラヒドロフラン(200mL)と、KOHペレット(180グラム、3.21モル)と、Aliquat(登録商標)336の商標で販売されており、相間移動触媒として機能するメチルトリオクチルアンモニウムクロリド、四級アンモニウム塩(3.13グラム、7.74×10-3モル)とを加えた。力強く撹拌しながら、CF3CHFCH2F(HFC-245eb)を約100sccmの速度で添加した。塩基性水溶液のpHは、約13であった。フラスコに2つの相が存在した。約247グラムの粗製生成物を回収した。これは、96.1%の1234yf、0.5%のZ-1234ze、0.1%のE1234ze、および2.9%の未反応HFC-245ebを含有した。HFC-245ebを供給する間、非常にわずかな発熱が観察された。」 オ 引用例5 本願優先日前に頒布された国際公開第2010/098451号公報(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。 (オ1)「[0024]  本発明の冷媒組成物は、用途によってハイドロフルオロプロペンに加えて冷凍機油を含んでいてもよい。冷凍機油としては、公知のものを用いることができる。例えば、ポリ(オキシ)アルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリフェニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、ポリオールエステル類、ポリカーボネート類、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル類、鉱油、オレフィン重合体、アルキルジフェニルアルカン類、アルキルナフタレン類、アルキルベンゼン類等が挙げられる。これらの冷凍機油の中でも、特にポリ(オキシ)アルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリオールエステル類の少なくとも1種が好ましい。」 カ 引用例6 本願優先日前に頒布された特許第4699758号公報(以下、「引用例6」という。)には、以下の事項が記載されている。 (カ1)「【請求項1】 化学式(II) 【化1】 (式中、各々のRは独立にF,またはHであり、 R’は(CR2)nYであり、 YはCF3であり、 nは0であり、かつ、 不飽和な末端炭素上のRの少なくとも1つはHであり、残るRのうち少なくとも1つはFである) の少なくとも1つの化合物と、ポリオールエステル及びポリアルキレングリコールから選択される少なくとも1つの潤滑剤とを含む熱移動組成物。」(特許請求の範囲) キ 引用例7 本願優先日前に頒布された特開2013-209592号公報(以下、「引用例7」という。)には、以下の事項が記載されている。 (キ1)「【0048】 次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。 〔実施例1~10および比較例1~5〕 表1、2に示す配合組成の潤滑油組成物を調製し、以下に示す熱安定性試験により組成物の熱的・化学的安定性を評価した。 【0049】 <熱安定性試験> 内容積200mLのオートクレーブに、組成物/冷媒(30g/30gの比率、組成物中の水分500質量ppm)と、鉄、銅およびアルミニウムからなる金属触媒を充填して封管し(空気25mL)、温度175℃の条件にて168時間保持後、酸価を測定した。 なお、酸価は、JIS K2501に規定される「潤滑油中和試験方法」に準拠し、電位差法により測定した。 冷媒としては、HFO1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)を用いた。 【0050】 【表1】 【0051】 【表2】(省略) 【0052】 用いた基油は以下の通りである。 PAG:ポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、100℃動粘度:9.25mm2/s PVE:ポリビニルエーテル、100℃動粘度:15.97mm2/s ECP:ポリビニルエーテル-ポリアルキレングリコール共重合物(モル比1:1)、100℃動粘度:9.56mm2/s POE:ポリオールエステル)、40℃動粘度:68.5mm2/s」 ク 引用例8 本願優先日前に頒布された特開2014-47267号公報(以下、「引用例8」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ク1)「【0050】 [実施例1~8、比較例1~6] 実施例1~8及び比較例1~6においては、それぞれ以下に示す潤滑油基油及び添加剤を用いて、表1、2に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。なお、表1、2中の添加剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準とした含有量である。 【0051】 (A)潤滑油基油 (A1)ポリオールエステル(POE):ペンタエリスリトールと2-エチルヘキサン酸と3,5,5-トリメチルヘキサン酸が質量比で1:1の混合酸とのエステル(40℃における動粘度68.0mm2/s、粘度指数90、流動点-40℃、引火点260℃) (A2)ジエステル(DE):ジオクチルセバケート(40℃における動粘度11.6mm2/s、粘度指数150、流動点-50℃、引火点220℃) (A3)ポリアルキレングリコール(PAG):両末端がメチル基でエーテル封鎖されたポリオキシプロピレン(平均分子量1000、40℃における動粘度46.0mm2/s、粘度指数190、流動点-45℃、引火点218℃) (A4)鉱油:パラフィン系精製鉱油(40℃における動粘度22.0mm2/s、粘度指数95、流動点-15℃、引火点210℃) (A5)菜種油:精製菜種油、(40℃における動粘度32.0mm2/s、粘度指数200、流動点-25℃、引火点330℃) なお、動粘度はJIS K2283、流動点はJIS K2269、引火点はJIS K2265に準拠して測定した。」 (ク2)「【0057】 (熱安定性試験) 実施例1~8及び比較例1~6の潤滑油組成物を試料油として、以下の方法で熱安定性試験を実施した。 含有水分量を1000ppmに調整した試料油90gをオートクレーブに秤取し、触媒(鉄、銅、アルミの線、いずれも外径1.6mm×50mm)とHFO-1234yf冷媒10g、空気50ccを封入した後、175℃に加熱し、100時間後の試料油の外観と酸価を測定した(JIS C2101)。熱安定性試験前の試料油(新油)の酸価並びに熱安定性試験後の試料油の外観及び酸価を表1、2に示す。 【0058】 【表1】 」 (2)引用発明 引用例1には、フルオロカーボン冷媒の使用に関する2011年規格(基準)が記載されているところ(上記(1)(ア1))、上記(1)(ア2)には、この基準の目的は、AHRIの範囲内で、新規および既存の冷凍および空調製品を使用するために、フルオロカーボン冷媒の供給源に関わらず、純度の仕様を確定すること、成分を確認すること、許容性に関する試験方法を規定することであることが記載され、上記(1)(ア3)には、この基準では、フルオロカーボン冷媒の供給源に関わらず、不純物の許容レベルおよび好ましい試験方法を明記することが記載され、上記(1)(ア4)の「5.4.2」には、含水量の値は、重量ppmで表記し、表1A、1B、1Cの最大値を超えてはならないことが記載され、上記(1)(ア5)の「5.10.1」には、非凝縮性成分の決定のためには、気相サンプルを用いる必要があり、非凝縮性ガスは、主に冷媒の気相に溜った空気からなり、冷媒の液相への空気の溶解度は極めて低く、空気は液相内の混入物資としては重要ではなく、非凝縮性ガスが存在すると、冷媒を貯蔵タンクやシリンダーに移した際に、品質管理が低下する懸念がある旨記載され、同「5.10.2」には、試験試料の気相における非凝縮性物の最大許容量は、表1A、1B、1Cに記載の25℃における最大値を超えてはならないことが記載され、上記(1)(ア6)の「表1A」には、単一成分の冷媒の特性とこれらの冷媒における不純物の最大許容レベルと題し、R-1234yfにおける不純物の最大許容レベルについて、気相における不純物である「空気その他の非凝縮性ガス」は「25℃において1.5体積%」、液相における不純物である「水」は「10重量ppm」であることが記載されている。 上記記載から、次の発明を認めることができる。 「冷凍及び空調製品において冷媒として使用されるR-1234yfであって、気相における不純物である空気その他の非凝縮性ガスの最大許容レベルが25℃において1.5体積%に、液相における不純物である水の最大許容レベルが10重量ppmに、それぞれ管理されたもの」(以下、「引用発明」という。) (3)本願発明1と引用発明との対比・判断 ア 特許法第29条第1項第3号(理由1)について (ア)本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「R-1234yf」は、「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」のことであるから、本願発明1の「(a)HFO-1234yf」に相当する。また、引用発明の「冷凍及び空調製品において冷媒として使用されるR-1234yf」は、HFO-1234yfと水および酸素を含むハロオレフィン類組成物にあたるものであるから、両者は、次の点で一応相違し、その余の点で一致するといえる。 <相違点1> 本願発明1は、「HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」であると特定し、さらに「(d)酸素」を含み、その含有量について、「前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量が0.35mol%以下」であると特定しているのに対して、引用発明は、水に関し「液相における不純物である水の最大許容レベルが10質量ppm」と特定し、酸素に関し「気相における不純物である空気その他の非凝縮性ガスの最大許容レベルが25℃において1.5体積%」と特定している点。 <相違点2> HFO-1234yfに対する微量成分として、本願発明1は、「(b)HFO-1234ze、HFC-254eb、HFO-1243zf、HFC-245eb、HFC-245cb、HFC-236ea、HFC-236fa、HFO-1225ye、3,3,3-トリフルオロプロピン、HFC-23、HFC-32、HFC-125、HFC-143a、HFC-134a、FC-1216、HCFO-1233xf、HCFO-1233zd、HCFO-1232xf、HCFO-1223xd及びクロロメタンの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物」を含み、その含有量について、「前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(b)の化合物の含有量が0.1重量ppm以上10000ppm未満」であるのに対して、引用発明には、そのような特定がない点。 (イ)相違点1について 引用発明は、水と酸素の含有量の最大許容レベルのみを規定するものであるが、製造コストについても考慮する当業者は、これらの含有量を極限まで低減する必要性(要請)がなければ、最大許容レベルに近いレベルまでの脱水工程、脱酸素工程とし、当該工程のコストの低減を図る(不必要にコストのかかる工程は選択しない)と考えるのが合理的である。 また、引用発明は、確かに、上記最大許容レベルのみしか規定されていないため、当該発明が内包する具体的な形態の詳細が不明であるといわざるを得ない。しかしながら、当該最大許容レベル近傍の数値に調製・管理された態様を含むと解するのが相当である(最大許容レベル近傍の態様が存在するからこそ、最大許容レベルを規定する意味があるのであって、当該最大許容レベルよりもはるかに低い水・酸素含有量の態様しか存在しないのであれば、当該最大許容レベルを規定する意味がない。)。 したがって、引用発明は、HFO-1234yfに含まれる水の含有量が10重量ppm、酸素の含有量が0.3mol%(「空気その他の非凝集性ガス」の含有量は1.5体積%、すなわち、約1.5mol%であり、その大半を占める空気のうち、酸素の含有量は約0.3(=1.5×0.2)mol%である。)に近い態様を内包するものといえる。 そうすると、本願発明1は、「HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量」が「0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」、「HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量」が「0.35mol%以下」と特定していることから、本願発明1と引用発明は、「HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量」について「0.1重量ppm以上、10重量ppm以下」及び「HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量」について「0.3mol%以下」の範囲で重複する。 よって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 (ウ)相違点2について 一般に、HFO-1234yfなどのハロオレフィン類には、その製造工程で生成する副生成物や、製造原料に由来する1個~3個の炭素原子を有する微量成分を含むことが当業者において技術常識として認識されている(必要なら、引用例2(上記(1)イ(イ1))、引用例3(上記(1)ウ(ウ1)~(ウ3))、引用例4(上記(1)エ(エ1)、(エ3))を参照)。 そうすると、引用発明のHFO-1234yfについても、明示的に特定されていないが、HFO-1234yfに微量成分を含むことは当然の前提となる技術常識であるといえる。 そして、当該微量成分の含有量についても、例えば、引用例2には、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)に対して、「0.5~500ppmの1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンと、0.5~500ppmの3,3,3-トリフルオロプロピンと、1~1500ppmの2個または3個の炭素原子を含み、必要に応じてさらにオレフィン結合を含む化合物(HFO-1225yeおよび3,3,3-トリフルオロプロピンを除く)」を含むこと(引用例2の(イ1))、引用例3には、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)に対して、「極微量~0.1重量%以下の他の化合物を含」み、他の化合物が「極微量以上であるが約0.1重量%未満の1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、および1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンの1種または複数をさらに含む」こと(引用例3の(ウ1)~(ウ3))、引用例4には、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)に対して、「HFO-1234ze、HFC-254eb、HFC-254fb、HFO-1243zf、HFC-245eb、HFC-245fa、HFC-245cb、HFC-236cb、HFC-236ea、HFC-236fa、HFC-227ea、HFC-227ca、HFO-1225yc、HFO-1225zc、HFO-1225ye、3,3,3-トリフルオロプロピン、メタン、エタン、プロパン、HFC-23、HFC-143a、HFC-134、HFC-134a、HFO-1132aおよびFC-1216からなる群から選択される少なくとも1つの追加的な化合物」を「約1重量%未満」含むこと(引用例4の(エ1)、(エ3))が、それぞれ記載されていることからみて、本願発明1の「0.1重量ppm以上10000ppm未満」の範囲内であると評される。 また、本願発明1では、(b)成分として21種類の微量成分を特定しているが、これらの成分は、本願明細書【0013】~【0015】、【0040】において、ハロオレフィン類の製造における副生成物であることが記載されており、上記技術常識を裏付けているといえる。 よって、上記相違点2は、実質的な相違点となるものではない。 (エ)平成30年7月27日付け意見書の主張について 審判請求人は、上記意見書において、1)引用発明では、水及び酸素はいずれも不純物として含まれる成分であることから、当業者は水及び酸素がHFO-1234yf中に含まれていないことが好ましいと認識するはずであり、審判官の「引用発明は、水と酸素の含有量の最大許容レベルのみを規定するものであるが、製造コストについても考慮する当業者は、これらの含有量を極限まで低減する必要性(要請)がなければ、最大許容レベルに近いレベルまでの脱水工程、脱酸素工程とし、当該工程のコストの低減を図る(不必要にコストのかかる工程は選択しない)と考えるのが合理的である」との認定は妥当でない。しかも、本願出願時において、HFO-1234yf中の水の含有量を検出限界以下(例えば0.1重量ppm未満)にする技術は参考文献1及び参考文献2等により広く知られており、引用発明に接した当業者は、HFO-1234yf中に含まれる水の量は、公知の水の除去方法に準じて0.1重量ppm未満にされたものであると理解するはずであり、審判官の「引用発明は、HFO-1234yfに含まれる水の含有量が10重量ppm、・・・に近い態様を内包する」との認定に承服できない。そもそも引用例1には、保管時における水の最大許容レベルが示されているに過ぎない文献であって、実際に引用例1には、本願発明1のようにHFO-1234yfの全量に対して、特定量の水を積極的に含ませることを全く意図しないものであり、このような引用例1に対して、本願発明1で特定する構成が記載されている旨の認定をするべきでない旨の主張(主張1)、及び、2)引用例1には、気相部の酸素量のみ分析したものであって、液相部を考慮した酸素量が全く開示されておらず、酸素の含有量に関する上記認定にも承服することができない旨の主張(主張2)をしている。 主張1について、引用例1には、審判請求人も認めているように「HFO-1234yfに含まれる水の最大許容レベルが示されている」のであるから、当業者であれば、その許容レベルの範囲の中で、水の含有量について、上記(イ)のように考えることに何ら不合理な点があるとは認められず、また、例え、HFO-1234yfの全量に対して、水を検出限界以下とする技術が当業者に知られていたとしても、必ずしも当業者が多大なコストをかけてまで、当該検出限界以下の純度を求めるとは考えにくいことから、引用例1の記載(引用発明)を審判請求人が主張するように解釈することは妥当ではない。 主張2について、引用例1の上記ア5には、「非凝縮性ガスは、主に冷媒の気相に溜まった空気からなり、冷媒の液相への空気の溶解度は極めて低く、空気は液相内の混入物質として重要でない。」と記載されている。 すなわち、冷媒の液相への空気の溶解度は極めて低いことから、空気は液相内の混入物質として重要でないものであり、加えて、酸素は、空気中に約1/5含まれているという技術常識も参酌すれば、液相に溶解する可能性のある酸素の割合はさらに低いと考えられる。 そうすると、酸素の含有量について、上記(イ)のように判断したとしても、結論において、何ら影響を与えるものとも認められないから、上記主張2は、採用することができない。 (オ)小括 したがって、上記相違点1~2は、実質的な相違点ではないから、本願発明1は、引用例1に記載された発明である。 イ 特許法第29条第2項(理由2)について 以下、仮に、本願発明1と引用例1に記載された発明が同一でない場合について検討する。 (ア)相違点1について、上記ア(イ)の相違点1の検討及び上記ア(エ)の審判請求人の主張に対する検討において、引用発明が内包する具体的な形態は不明であるが、引用発明の水と酸素の含有量の最大許容レベルの規定は、製造コスト等も含めて考慮すると、最大許容レベル近傍の数値を選択することが自然であることを踏まえると、引用発明の水と酸素の含有量の最大許容レベルを含む範囲を選択し特定することは、当業者が適宜行うことに過ぎない。 (イ)相違点2ついて、上記ア(ウ)で指摘した技術常識が存在するとまではいえないとしても、上記ア(ウ)で指摘した引用例2(上記(1)イ(イ1))、引用例3(上記(1)ウ(ウ1)~(ウ3))、引用例4(上記(1)エ(エ1)、(エ3))の記載に基づいて、HFO-1234yfに含まれる微量成分及びその含有量を特定のものとすることは、当業者が通常行うことに過ぎない。 (ウ)効果について 引用例2~4に記載されたHFO-1234yfに含まれる微量成分及びその含有量は、HFO-1234yfを含む組成物全体の物性に対して許容できる微量成分及びその含有量の範囲であるといえるから、これらの微量成分及びその含有量の範囲では、HFO-1234yfを含む組成物全体の物性等に影響を与えるものでないか、その影響が極めて少ないと認められるから、本願発明1における微量成分及びその含有量についても同様と認められる。実際、本願明細書の実施例などを見ても、当該微量成分による有利な効果は認められない。 また、本願明細書の【0048】の【表1】には、確かに、HFO-1234yfに対する「水の添加量(含有量に相当)」及び「酸素の添加量(含有量に相当)」に対する酸分の含有量が示されている。しかしながら、引用発明は、上記ア(イ)で指摘したとおり、本願発明1と「HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量」について「0.1重量ppm以上、10重量ppm以下」及び「HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量」について「0.3mol%以下」の範囲で重複していることから、本願発明1と引用発明は、重複している範囲において、同様の効果を奏するものといえ、本願発明1は、引用発明の有する効果とは異質な、あるいは同質であるが際だって優れた効果を有するものではなく、単にその効果を確認したに過ぎない。したがって、本願発明1の「水の含有量」及び「酸素の含有量」は、それぞれの全範囲について、引用発明から予測できない格別顕著な効果を奏するとは認められない。 (エ)平成30年7月27日付け意見書の主張について 審判請求人は、上記意見書において、「相違点1は実質的な相違点として認められるべきものある」旨、「水の含有量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下のすべての範囲に、本願発明の効果が認められると評価されるべきである」旨などを主張している。 しかしながら、相違点1が実質的な相違点でないか、そうであるとしても適宜設定しうる事項であることは、上記ア(イ)及び上記(ア)ですでに、検討したとおりであり、また、効果の点についても、上記(ウ)で検討したとおりであるから、審判請求人の上記主張は、採用することができない。 (オ)小括 したがって、本願発明1は、引用例1及び引用例2~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 (4)本願発明3と引用発明との対比・判断 ア 特許法第29条第1項第3号(理由1)について (ア)本願発明3と引用発明とを対比すると、引用発明の「R-1234yf」は、「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」のことであるから、本願発明3の「(a)HFO-1234yf」に相当する。また、引用発明の「冷凍及び空調製品において冷媒として使用されるR-1234yf」は、HFO-1234yfと水および酸素を含むハロオレフィン類組成物にあたるものであるから、両者は、次の点で相違し、その余の点で一致するといえる。 <相違点3> 本願発明3は、「HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」であると特定し、さらに「(d)酸素」を含み、その含有量について、「前記(a)HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量が0.35mol%以下」であると特定しているのに対して、引用発明は、水に関し「液相における不純物である水の最大許容レベルが10質量ppm」と特定し、酸素に関し「気相における不純物である空気その他の非凝縮性ガスの最大許容レベルが25℃において1.5体積%」と特定している点。 <相違点4> 本願発明3は、「(e)ポリアルキレングリコール及びポリオールエーテルの少なくとも一方」を含むのに対して、引用発明には、そのような特定がない点。 (イ)相違点3について 相違点3は、上記(3)ア(ア)の相違点1と同じであり、相違点1については、上記(3)ア(イ)で、すでに検討したとおりであるから、本願発明3と引用発明は、「HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量」について「0.1重量ppm以上、10重量ppm以下」及び「HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量」について「0.3mol%以下」の範囲で重複する。 よって、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。 (ウ)相違点4について 一般に、HFO-1234yfなどのハロオレフィン類は、冷媒や作動性流体として使用されることが当業者における技術常識であり、その際、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステルなどの潤滑油成分を混合することも、当業者が当然に認識している技術常識である。 そうすると、引用発明のHFO-1234yfについても、冷媒として使用される以上、明示的に特定されていないが、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステルなどの潤滑油成分を混合して使用することを当然の前提とするものといえる。例えば、冷媒の技術分野において、「HFO-1234yf」を含むハロオレフィン類組成物に「ポリアルキレングリコール」や「ポリオールエステル」などの潤滑油基油を添加することは、引用例5(上記(1)オ1)、引用例6(上記(1)カ1)、引用例7(上記(1)キ1)および引用例8(上記(1)ク1~ク2)に記載されているように周知の技術的事項に過ぎない。 したがって、上記相違点4は、実質的な相違点となるものではない。 (エ)平成30年7月27日付け意見書の主張について 上記(3)ア(エ)で検討したとおりであり、審判請求人の主張を採用することはできない。 (オ)小括 したがって、上記相違点3~4は、実質的な相違点ではないから、本願発明3は、引用例1に記載された発明である。 イ 特許法第29条第2項(理由2)について 以下、仮に、本願発明3と引用例1に記載された発明が同一でない場合について検討する。 (ア)相違点3について、相違点3は、上記(3)ア(ア)の相違点1と同じであり、相違点1については、上記(3)イ(ア)で、すでに検討したとおり、HFO-1234yfに含まれる「水の含有量」と「酸素の含有量」の含有量の最大許容レベルを含む範囲を選択し特定することは、当業者が適宜行うことに過ぎない。 (イ)相違点4について、 仮に、上記(4)ア(ウ)における技術常識が存在するとまでいえないとしても、上記(4)ア(ウ)で指摘したように、冷媒の技術分野において、「HFO-1234yf」を含むハロオレフィン類組成物に「ポリアルキレングリコール」や「ポリオールエステル」などの潤滑油基油を添加することは、引用例5(上記(1)オ1)、引用例6(上記(1)カ1)、引用例7(上記(1)キ1)および引用例8(上記(1)ク1~ク2)に記載されているように周知の技術的事項に過ぎない。 したがって、本願発明3は、引用例1に記載された発明及び周知技術(引用例5~8)に基いて、当業者が容易に想到し得るものと認められる。 (ウ)効果について 本願明細書の【0048】の【表1】には、確かに、HFO-1234yfに対する「水の添加量(含有量に相当)」及び「酸素の添加量(含有量に相当)」に対する酸分の含有量が示されている。しかしながら、引用発明には、上記(4)ア(イ)で指摘したとおり、本願発明3と「HFO-1234yfの全量に対して、前記(c)水の含有量」について「0.1重量ppm以上、10重量ppm以下」及び「HFO-1234yfの全量に対して、前記(d)酸素の含有量」について「0.3mol%以下」の範囲で重複していることから、本願発明3と引用発明は、重複している範囲において、同様の効果を奏するものといえ、本願発明3は、引用発明の有する効果とは異質な、あるいは同質であるが際だって優れた効果を有するものではなく、単にその効果を確認したに過ぎない。 また、HFO-1234yfを含む組成物に対する「(e)ポリアルキレングリコール及びポリオールエーテルの少なくとも一方」を含む効果は、周知の技術的事項(引用例5~8)から当業者が予測できる効果であり、この点に格別顕著な効果を奏すると認めることができない。 (エ)平成30年7月27日付け意見書の主張について 上記(3)イ(エ)で検討したとおりであり、審判請求人の主張を採用することはできない。 (オ)小括 したがって、本願発明3は、引用例1に記載された発明及び周知技術(引用例5~8)に基いて当業者が容易に想到し得るものと認められる。 2 特許法第36条第6項第1号(理由3)について (1)特許請求の範囲の記載 上記第2で指摘したとおりである。 (以下、「本願発明1」及び「本願発明3」をまとめて「本願発明」ということがある。) (2)発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたとおりであり、以下の点を開示するものと認められる。 ア「【0006】 ・・・・・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記の方法では、フェノール化合物の作用によりHFO-1234yfの安定性が向上するものの、配合時のハンドリング性の観点からは課題が残るものである。また、上記のようにフェノール化合物を添加して安定性を向上させる方法では、フェノール化合物の作用によってフルオロプロペン類そのものの性能を低下させるおそれもあり、性能を維持しつつ安定性を向上させるという点においても問題が残るものであった。 【0008】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、分解や酸化が抑制された、安定性の高いハロオレフィン類組成物を提供することを目的とする。 ・・・・・・・ 【0010】 ・・・・・・・ 【発明の効果】 【0011】 本発明に係るハロオレフィン類組成物によれば、水分を含むことで、組成物中の含まれるハロオレフィン類の安定性が向上する。すなわち、ハロオレフィン類の分子内二重結合が安定に存在することができ、また、ハロオレフィン類の酸化も起こりにくくなるので、ハロオレフィン類が有する性能が長期間にわたって損なわれにくい。」 イ「【0023】 水の種類としては特に限定されず、蒸留水、イオン交換水、濾過水、水道水、その他、市販の純水生成機等で得られる超純水等の精製水等を使用することができる。ただし、水にHCl等の酸分が含まれると、設備を腐食させたり、ハロオレフィン類を安定化させる効果が低減したりするおそれがあるので、通常採用される分析手法において検出限界以下となる程度にまでにHCl等を除去しておくことが好ましい。この場合の酸分の含有量は、組成物中に含まれる(a)の成分、(b)の成分及び(c)の成分の全量に対して、好ましくは10重量ppm以下、より好ましくは1重量ppm以下である。 【0024】 水のpHについては、特に限定されないが通常は6~8の範囲内であればよい。水に含まれる酸分が上記範囲内にあれば、水のpHは通常この範囲内に入るはずである。 【0025】 組成物に含まれる水の含有量は、(a)ハロオレフィン類の全量に対して200重量ppm以下であることが好ましい。この場合、ハロオレフィン類を安定化させる作用が充分に発揮される。また、水の含有量がハロオレフィン類の全量に対して200重量ppm以下、より好ましくは30重量ppm未満であれば、機器を腐食させたり、ハロオレフィン類の分解を逆に促進させたりするのを防止しやすくなる。組成物に含まれる水の含有量の下限値は、本発明の効果が発揮される限り限定はされないが、例えば、0.1重量ppmとすることができ、より好ましくは3重量ppmとすることができる。この範囲であれば、組成物中におけるハロオレフィン類の安定性がさらに向上する。 【0026】 組成物に含まれる水の含有量は、3重量ppmを超え、30重量ppm未満であることが特に好まく、この場合、組成物中におけるハロオレフィン類の安定性がさらに向上する。また、組成物に含まれる水の含有量が30重量ppm未満であることで、冷媒性能が阻害されるのも抑制される。 【0027】 組成物に含まれる(b)の成分の含有量は、ハロオレフィン類の全量に対して0.1重量ppm以上10000重量ppm未満含まれていることが好ましく、この範囲であれば、ハロオレフィン類の安定化作用が阻害されるおそれは小さい。 ・・・・・・・ 【0030】 上記の組成物では、水が存在することによって、ハロオレフィン類の二重結合が安定に存在し、酸化等も起こりにくいので、ハロオレフィン類の安定性が高い。そのため、通常のハロオレフィン類に比べて長期間の保存ができるようになる。しかも、ハロオレフィン類の安定性が高いことで、ハロオレフィン類が有する性能が損なわれるおそれも小さい。そのため、例えば、組成物を冷媒や熱媒体に使用したとしても、ハロオレフィン類の安定性が高いことで、冷媒や熱媒体としての性能が優れたものとなる。」 【0031】 上記組成物はさらに(d)酸素を含むこともできる。組成物が(d)酸素を含む場合、(d)酸素の含有量は(a)ハロオレフィン類の全量に対して0.35mol%以下であることが好ましい。酸素の含有量この範囲であれば、組成物中におけるハロオレフィン類の安定性がさらに向上する。この観点から、組成物における酸素の含有量は少ないほど好ましいが、上述のように組成物は水を含んでいるので、上記の範囲内の酸素量であれば、その水の作用によって、ハロオレフィン類の安定性は保持され得る。組成物における酸素の含有量の下限値は、例えば、ガスクロマトグラフィーの検出限界である1ppmとすることができる。」 ウ「【0040】 (実施例1) 2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(以下「HFO-1234yf」と略記する)と、水とを準備し、これらを配合することで、HFO-1234yfに対して水の含有量が10重量ppm、200重量ppm、10000重量ppmの3種類のハロオレフィン類組成物を調製した。なお、上記HFO-1234yfは、たとえば、特開2012-500182号公報の実施例1、特開2009-126803号公報に示されるような方法で製造した。このとき生成するHFは水洗塔、NaOH水溶液のアルカリ塔により脱酸した。得られたハロオレフィン類組成物は、HFO-1234yfの製造において生成した副生成物(例えば、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、すなわち(b)の成分)が含まれ得る。 ・・・・・・・ 【0042】 (比較例1) 水を配合しなかったこと以外は実施例1と同様の方法にてハロオレフィン類組成物を得た。 【0043】 (比較例2) 水を配合しなかったこと以外は実施例2と同様の方法にてハロオレフィン類組成物を得た。 【0044】 (ハロオレフィン類の安定性試験1) 上記実施例及び比較例で得られたハロオレフィン類組成物の各々について、以下のようにハロオレフィン類の安定性試験を行った。片側を溶封済みのガラス製チューブ(ID8mmΦ×OD12mmΦ×L300mm)に、ハロオレフィン類組成物をハロオレフィン類の含有量が0.01molとなるように加えた。チューブは溶封により密閉状態とした。このチューブを150℃の雰囲気下の恒温槽内に静置させ、この状態で1週間保持した。その後、恒温槽から取り出して冷却し、チューブ内のガス中の酸分の分析を行うことで、ハロオレフィン類の安定性を評価した。 【0045】 (ハロオレフィン類の安定性試験2) 上記実施例及び比較例で得られたハロオレフィン類組成物の各々について、以下のようにハロオレフィン類の安定性試験を行った。片側を溶封済みのガラス製チューブ(ID8mmΦ×OD12mmΦ×L300mm)にハロオレフィン類組成物をハロオレフィン類の含有量が0.01molとなるように加えた。次いで、酸素濃度がハロオレフィン類の充填モル数に対し所定のモル濃度(0.010モル%、0.115モル%又は0.345モル%)になるように調整して酸素をチューブ内に封入した。このチューブを150℃の雰囲気下の恒温槽内に静置させ、この状態で1週間保持した。その後、恒温槽から取り出して冷却し、チューブ内のガス中の酸分の分析を行うことで、ハロオレフィン類の安定性を評価した。 【0046】 ここで、ガス中の酸分の分析は次のような方法で行った。上記冷却後のチューブを、液体窒素を用いて、チューブ内に滞留するガスを完全に凝固させた。その後、チューブを開封し、徐々に解凍してガスをテドラーバッグに回収した。このテドラーバッグに純水5gを注入し、回収ガスとよく接触させながら酸分を純水に抽出するようにした。抽出液をイオンクロマトグラフィーにて検出して、フッ化物イオン(F-)及びトリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)の含有量(重量ppm)を測定した。 【0047】 表1に試験結果を示す。尚、表1中「yf」及び「ze(E)」はそれぞれ、「HFO-1234yf」及び「HFO-1234ze」を示す。また、「ze(E)」における(E)は、HFO-1234zeがE体であることを示す。 【0048】 【表1】 【0049】 表1のNo.5~8はいずれも酸素の添加量を0.010モル%としたものであるが、No.5では、水を含有しない組成物であるので、水を含有するNo.6~8に比べると酸分の含有量が多くなっていることがわかる。つまり、No.5では、酸分の含有量が多いことから、ハロオレフィン類であるHFO-1234yfの分解や酸化がNo.6~8に比べて促進していることがわかる。この結果から、水を含有する組成物では、ハロオレフィン類であるHFO-1234yfが安定化していることがわかる。また、No.9~12はいずれも酸素の添加量を0.115モル%、No.13~16はいずれも酸素の添加量を0.345モル%としたものであるが、酸素の添加量を0.115モル%の場合と同様の傾向が見られた。さらに、ハロオレフィン類がHFO-1234zeの場合においても(No.21~24,25~28,29~32)同様の傾向が見られた。尚、No.1~4及びNo.17~20ではいずれも、酸分の含有量は1重量ppmを下回っており、ハロオレフィン類の分解はほとんど進行していないことがわかる。これは、系内へ酸素を添加しなかったので、酸化等が起こらなかったためであると考えられる。従って、酸素がほとんど存在しない系では、組成物中に水が含まれるか否かによらず、いずれのハロオレフィン類も安定な状態である。 【0050】 以上より、本発明のように、組成物に含まれる水がハロオレフィン類を安定化していることは明らかである。」 エ 本願発明が解決しようとする課題について 本願発明は、上記アの記載によれば、「分解や酸化が抑制された、安定性の高いハロオレフィン類組成物を提供すること」(【0008】)を本願発明が解決しようとする課題としている。 オ 発明の詳細な説明の記載について 本願発明は、上記エとおり、分解や酸化が抑制された、安定性の高いハロオレフィン類組成物を提供を課題とするところ、本願明細書には、上記イの記載によれば、分解や酸化を抑制するものとしては、水を用いることが記載され、その種類が特に限定されないが、酸分が検出限界以下であること(【0023】)、水のpHが6~8の範囲内であること(【0024】)、組成物に含まれる水の含有量は、(a)ハロオレフィン類の全量に対して200重量ppm以下であることが好ましく、この場合、ハロオレフィン類を安定化させる作用が充分に発揮される。また、水の含有量がハロオレフィン類の全量に対して200重量ppm以下、より好ましくは30重量ppm未満であれば、機器を腐食させたり、ハロオレフィン類の分解を逆に促進させたりするのを防止しやすくなり、組成物に含まれる水の含有量の下限値について、効果が発揮される限り限定されないが、例えば、0.1重量ppmで、この範囲であれば、組成物中におけるハロオレフィン類の安定性がさらに向上する(【0025】)と記載されている。 また、上記組成物については、さらに(d)酸素を含むこともでき、組成物が(d)酸素を含む場合、(d)酸素の含有量は(a)ハロオレフィン類の全量に対して0.35mol%以下であること、酸素の含有量がこの範囲であれば、組成物中におけるハロオレフィン類の安定性がさらに向上すること、この観点から、組成物における酸素の含有量は少ないほど好ましく、前記のように組成物は水を含んでいるので、この範囲内の酸素量であれば、その水の作用によって、ハロオレフィン類の安定性は保持され得ること(【0031】)が記載されている。 カ 実施例について 本願明細書の実施例には、上記ウの記載によれば、ハロオレフィン類として2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を用い(副生成物として、例えば、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含み得ることが記載されているが、その含有量についての記載はない。)、前記のハロオレフィン類に対して、酸素の添加量を0モル%、0.010モル%、0.115モル%、0.345モル%の4段階で、水の含有量を0重量ppm(N.D.)、10重量ppm、200重量ppm、10000重量ppmの4段階で添加して、ハロオレフィン類組成物を調製(16種のハロオレフィン類組成物)し、これらを安定性試験1,2に供して得られるガス中の酸分の含有量を安定性の評価指標とした結果(【表1】)が記載されている。 (3)検討、判断 上記(2)エより、本願発明が解決しようとする課題は、「分解や酸化が抑制された、安定性の高いハロオレフィン類組成物を提供する」ことであり、その効果は、上記(2)カより、当該ハロオレフィン類組成物において、水を少なくとも10重量ppm含むことにより、所定量の酸素を含む場合においても、組成物中の含まれるハロオレフィン類の分子内二重結合が安定に存在することができ、また、ハロオレフィン類の酸化も起こりにくくなることで、ハロオレフィン類が有する性能が長期間にわたって損なわれにくいという効果を奏するものと認められる。 しかしながら、本願発明では、当該「水の含有量」について、「0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」であることが特定されているが、本願発明が解決しようとする課題の効果を奏すると認められない「10重量ppm」未満の範囲、すなわち、「0.1重量ppm以上、10重量ppm未満」が依然として包含されている。 確かに、上記(2)オに「組成物に含まれる水の含有量の下限値について、効果が発揮される限り限定されないが、例えば、0.1重量ppmで、この範囲であれば、組成物中におけるハロオレフィン類の安定性がさらに向上する」旨の記載が認められるものの、一方で、上記1(1)アで提示した引用例1に記載されているように、本願発明の優先日前には、HFO-1234yfの全量に対する水の含有量として「10重量ppm以下」含むものが普通に知られていることからすると、当業者間において「0.1重量ppm以上、10重量ppm未満」の水を含有すればハロオレフィン類組成物に安定性をもたらすという技術常識は存しないというべきである。 そうすると、当業者は、上記記載からだけでは、「水の含有量」について本願発明の「0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」の全ての範囲において、本願発明の課題を解決できるとは認識できず、少なくとも「水の含有量」が「10重量ppm」という従来から知られていた範囲を越えた含有量の場合に、本願発明の課題が解決できると認識するものと考えるのが妥当である。 したがって、本願発明の「水の含有量」が「0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」であることを特定した記載は、本願の発明の詳細な説明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載された範囲を超える発明が記載されていることになるから、特許法第36条第6項第1号のサポート要件を満たしていない。 (4)平成30年7月27日付け意見書の主張について 審判請求人は、上記意見書において、「補正によって本願発明における水の含有量の下限値が0.1重量ppmに限定されていること、及び、前述のように本願発明の優先日前には、HFO-1234yfの全量に対する水の含有量として「10重量ppm以下」含むものが知られていないこと(少なくとも引用発明においても、水の含有量が0.1重量ppm以上10重量ppm以下である点は認められないこと)から、上記審判官殿の認定に承服することができません。 また、前述の「5.理由2について」の(1)のd)でも述べたように、本願の出願当初の明細書の[表1]、本願明細書の段落[0025]の記載等からしても、本願発明の効果は、少なくとも「HFO-1234yfの全量に対して、水の含有量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」のすべての範囲に認められると評価されるべきであると思料します」と主張している。 しかしながら、上記(3)のとおり、本願発明の優先日前には、HFO-1234yfの全量に対する水の含有量として「10重量ppm以下」を含むものは引用例1に記載のとおり知られており、この範囲において本件発明が解決できるものとは認められないので、水の含有量を「0.1重量ppm以上、200重量ppm以下」と特定したところで、本願発明が解決しようとする課題が全ての範囲において認められないことに変わりはなく、上記審判請求人の主張を採用することはできない。 (5)小括 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載された発明であるか、引用例1及び引用例2~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、また、本願発明3は、引用例1に記載された発明であるか、引用例1に記載された発明及び周知技術(引用例5~8)に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、本願の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-012734

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