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特許異議申立

2018-700707

造粒茶葉及びその製造方法

審判番号
2018-700707
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-167579
登録番号
特許第6313889号(P6313889)
請求日
2018年08月31日
審決日
2019年12月17日
公報発行日
2020年03月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】松谷化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】田中 順也
  • 【権利者代理人】水谷 馨也
  • 【異議申立人】市東 勇
審判長/審判官
  • 審判長 山崎 勝司
  • 審判官 井上 哲男
  • 審判官 槙原 進
分類
P1651.537-YAA(A23F) / P1651.536-YAA(A23F) / P1651.121-YAA(A23F) / P1651.113-YAA(A23F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6313889号発明「造粒茶葉及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6313889号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1,2〕,3について訂正することを認める。 特許第6313889号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6313889号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年8月31日を出願日とする出願であって、平成30年3月30日に特許権が設定登録され、同年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後、同年8月31日に特許異議申立人市東勇(以下、「申立人」という。)により請求項1ないし3に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、当審において、平成31年1月9日付けで取消理由を通知したところ、同年3月5日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、令和元年6月25日付けで申立人より意見書が提出された。 その後、当審において、同年7月12日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、特許権者より、同年9月11日に意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)が提出され、申立人より同年10月24日に意見書(以下、「意見書」という。)が提出された。 なお、平成31年3月5日提出の訂正請求書による訂正は、本件訂正の請求により、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。 第2 本件訂正の適否 1.本件訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである(なお、下線は訂正箇所である。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「緑茶の粉末茶葉を90重量%以上含有し」と記載されているのを、「平均粒子径が10~30μmである緑茶の粉末茶葉を90重量%以上含有し」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「且つ平均粒径が80~180μmである」と記載されているのを「平均粒子径が80~180μmであり、造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%、106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上、且つ250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%である」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に「緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmである」と記載されているのを、「緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が19.0~30μmである」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に「緑茶の粉末茶葉を90質量%以上含む原料粉末を湿式造粒し、平均粒子径が80~180μmである造粒茶葉を得る工程を有し」と記載されているのを、「平均粒子径が19.0~30μmである緑茶の粉末茶葉を90質量%以上含む原料粉末を湿式造粒し、平均粒子径が80~180μmである造粒茶葉を得る工程を有し」に訂正する。 2.訂正の適否の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1の緑茶の粉末茶葉について、「平均粒子径が10~30μmである」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0011】には、「即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。(1)粉末茶葉を90質量%以上含有し、且つ平均粒子径が80~180μmである造粒茶葉。(2)粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmである、(1)に記載の造粒茶葉。」との記載が、また、段落【0017】には、「粉末茶葉の平均粒子径については、特に制限されないが、例えば、5~40μmが挙げられる。より一層優れた分散性を備えさせるという観点から、粉末茶葉の平均粒子径として、好ましくは10~40μm、更に好ましくは20~30μmが挙げられる。」との記載があり、訂正事項1はこの記載に基づくものであるから、新規事項を付加するものではなく、また、発明のカテゴリー、対象、及び目的に変更はなく、特許請求の範囲の記載を拡張・変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項1の造粒茶葉について「造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%、106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上、且つ250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%である」という特定事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0024】には、「本発明の造粒茶葉の粒度分布については、前述する平均粒子径を満たす限り、特に制限されないが、造粒茶葉の総重量に対する106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率として、例えば、20%以上、具体的には20%以上35%未満が挙げられる。」との記載があり、また、段落【0039】の【表2】において、造粒茶葉の総重量に対する106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率は、いずれの実施例においても20%以上であるから、本件特許明細書には、造粒茶葉の総重量に対する106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上であることが記載されているといえる。 また、本件特許明細書の段落【0039】の【表2】において、造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率は、最も低い実施例4及び5が3.0%であり、最も高い実施例2が12.4%であるから、本件特許明細書には、造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%であることが記載されているといえる。 さらに、本件特許明細書の段落【0039】の【表2】において、造粒茶葉の総重量に対する250μm以上の造粒茶葉の重量の比率は、最も低い実施例1が2.2%であり、最も高い実施例5が31.4%であるから、本件特許明細書には、造粒茶葉の総重量に対する250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%であることが記載されているといえる。 よって、訂正事項2は、新規事項を付加するものではなく、また、発明のカテゴリー、対象、及び目的に変更はなく、特許請求の範囲の記載を拡張・変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項2に「緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmである」と記載されているのを「緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が19.0~30μmである」と数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0017】には、「粉末茶葉の平均粒子径については、特に制限されないが、例えば、5~40μmが挙げられる。より一層優れた分散性を備えさせるという観点から、粉末茶葉の平均粒子径として、好ましくは10~40μm、更に好ましくは20~30μmが挙げられる。」との記載があり、また、本件特許明細書の段落【0037】の【表1】及び段落【0045】の【表4】記載のいずれの実施例においても、緑茶の粉末茶葉である原料抹茶の平均粒子径は19.0又は29.7μmであるから、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径を19.0~30μmとする訂正事項3は、新規事項を付加するものではなく、また、発明のカテゴリー、対象、及び目的に変更はなく、特許請求の範囲の記載を拡張・変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項3記載の緑茶の粉末茶葉について、「平均粒子径が19.0~30μmである」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0017】には、「粉末茶葉の平均粒子径については、特に制限されないが、例えば、5~40μmが挙げられる。より一層優れた分散性を備えさせるという観点から、粉末茶葉の平均粒子径として、好ましくは10~40μm、更に好ましくは20~30μmが挙げられる。」との記載があり、また、本件特許明細書の段落【0037】の【表1】及び段落【0045】の【表4】記載のいずれの実施例においても、緑茶の粉末茶葉である原料抹茶の平均粒子径は19.0又は29.7μmであるから、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径を19.0~30μmとする訂正事項4は、新規事項を付加するものではなく、また、発明のカテゴリー、対象、及び目的に変更はなく、特許請求の範囲の記載を拡張・変更するものでもない。 (5)一群の請求項に係る訂正について 訂正前の請求項1及び2について、請求項2は、独立請求項である請求項1を引用するものであり、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正事項3は当該請求項1を引用する請求項2のみを訂正するものである。 また、訂正事項4は独立請求項である請求項3を訂正するものである。 よって、本件訂正は一群の請求項〔1,2〕,3ごとになされたものである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1,2〕,3について本件訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 上記のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。 【請求項1】 平均粒子径が10~30μmである緑茶の粉末茶葉を90質量%以上含有し、平均粒子径が80~180μmであり、造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%、106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上、且つ250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%である造粒茶葉。 【請求項2】 緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が19.0~30μmである、請求項1に記載の造粒茶葉。 【請求項3】 造粒茶葉の製造方法であって、 平均粒子径が19.0~30μmである緑茶の粉末茶葉を90質量%以上含む原料粉末を湿式造粒し、平均粒子径が80~180μmである造粒茶葉を得る工程を有し、 前記湿式造粒が流動層造粒によって行われ、 バインダー液の噴霧条件が、下記式に従って算出される水分上昇速度が1.03~2.62%/分であり、且つバインダー液の噴霧終了時の造粒茶葉の水分量が24~35%となるように設定して造粒される、製造方法。 【数1】 水分上昇速度(%/分)={バインダー液の噴霧終了時の造粒茶葉の水分量(%)-バインダー液を噴霧する前の原料粉末の水分量(%)}/バインダー液の噴霧時間(分) 2 取消理由の内容 本件特許に対して通知した、令和元年7月12日付け取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由」という。)の概要は、次のとおりである。 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記(1)~(3)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)請求項1に係る発明は、造粒茶葉について、ア.緑茶の粉末茶葉を90質量%以上含有し(以下、「発明特定事項1」という。)、イ.平均粒子径が80~180μmである(以下、「発明特定事項2」という。)ことのみにより、「水に対しても優れた分散性を示す造粒茶葉を提供する」(本件特許明細書の段落【0009】参照。)という課題を解決することができるとするものである。 ここで、例えば、本件特許明細書の試験例1の比較例1ないし3のいずれかと比較例4を1:1の割合で混ぜたものは、国産碾茶微粉末(すなわち、緑茶の粉末茶葉)の含有割合が100質量%であるから発明特定事項1を満たす。 また、比較例1と4を1:1の割合で混ぜたものは、造粒茶葉の平均粒子径が(53.3+248.6)÷2=150.95μmであり、比較例2と4を1:1の割合で混ぜたものは、造粒茶葉の平均粒子径が(68.6+248.6)÷2=158.6μmであり、比較例3と4を1:1の割合で混ぜたものは、造粒茶葉の平均粒子径が(69.4+248.6)÷2=159μmであるからいずれも発明特定事項2を満たす。 しかし、比較例1ないし4の20℃及び60℃における分散性の評価結果はいずれも×であり(本件特許明細書の段落【0043】の【表3】参照。)、通常、分散性の評価結果が×のもの同士を混ぜ合わせることのみにより分散性が向上するとは考えられないから、比較例1ないし3のいずれかと比較例4を1:1の割合で混ぜたものの分散性の評価結果はいずれも×になるものと認められ、上記課題が解決できることを当業者が認識できるとはいえない。 してみれば、上記試験例1の比較例1ないし3のいずれかと比較例4を1:1の割合で混ぜたもののように、発明特定事項1及び2の双方を満たすものであっても、発明の課題が解決できることを当業者が認識できないものを請求項1に係る発明は含むから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明を本件請求項1に記載された範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 よって、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 (2)請求項2に係る発明は、請求項1の発明特定事項に加えて、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmであるとするものである。 しかし、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が19.0μmと29.7μmの実施例が記載されるのみで、請求項2で特定する平均粒子径が10~30μmのすべての範囲において上記発明の課題を解決できることを、当業者は認識することができない。 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明を本件請求項2に記載された範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 よって、請求項2に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 (3)本件特許の明細書には実施例として、平均粒子径が19.0μm又は29.7μmの原料抹茶を、バインダー液の噴霧条件が、水分上昇速度(%/分)={バインダー液の噴霧終了時の造粒茶葉の水分量(%)-バインダー液を噴霧する前の原料粉末の水分量(%)}/バインダー液の噴霧時間(分)の式に従って算出される水分上昇速度が1.03~2.62%/分であり、且つバインダー液の噴霧終了時の造粒茶葉の水分量が24~35%となるように設定して流動層造粒する造粒茶葉の製造方法が記載されているのみであり(段落【0034】~【0052】参照。)、造粒茶葉が水中で溶けて分散する際に、造粒茶葉を構成する原料粉末の平均粒子径が、分散性に影響することは明らかであるから、平均粒子径の異なる他の原料粉末を用いた場合でも、「水に対しても優れた分散性を示す造粒茶葉を提供する」(本件特許明細書の段落【0009】参照。)という課題を解決することができる造粒茶葉を製造できることを、本件特許の明細書から当業者は認識することができない。 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明を本件請求項3に記載された範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 よって、請求項3に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 なお、この点は、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径を特定していない請求項1に係る発明についても同様である。 3 取消理由に対する当審の判断 (1)取消理由の理由(1)について 本件訂正により、本件発明1は、ア.平均粒子径が10~30μmである緑茶の粉末茶葉を90質量%以上含有し(以下、「発明特定事項1’」という。)、イ.平均粒子径が80~180μmであり(「発明特定事項2」)、且つ、ウ.造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%、106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上、且つ250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%である(以下、「発明特定事項3」という。)という構成を備えるものとなり、これら構成を備えることにより、「水に対しても優れた分散性を示す造粒茶葉を提供する」(本件特許明細書の段落【0009】参照。)という課題を解決することができるとするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0003】の「平均粒径10μmとするためのコストは非常に高く分散性は非常に低いため、利便性に劣る。」の記載、及び段落【0037】~【0052】に記載した実施例において、上記発明特定事項1’、発明特定事項2及び発明特定事項3の要件を満たす実施例1~10が当該要件を満たさない比較例1~7に比して分散性の評価が良い点に照らせば、本件特許明細書から、本件発明1が上記発明特定事項1’、発明特定事項2及び発明特定事項3に係る構成を採用することにより、「水に対しても優れた分散性を示す造粒茶葉を提供する」という課題が解決できることを理解できるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 これに対して、申立人は、a.特定の実施例と特定の比較例(発明特定事項2及び3を満たさない)を特定の割合で混合したもの、b.特定の比較例(発明特定事項2及び3を満たさない)と想定比較例(発明特定事項2及び3を満たさない)を混合したもの及びc.特定の実施例と想定比較例(発明特定事項2及び3を満たさない)を混合したものは、上記発明特定事項1’、発明特定事項2及び発明特定事項3を満たす一方で、本件特許の課題を解決できることを当業者が認識できない旨主張している(意見書4頁9行~8頁20行参照。)。 しかし、本件特許明細書において、造粒茶葉の分散性評価は、下記のように行われている(本件特許明細書の段落【0040】参照。)。 「3.造粒茶葉の分散性評価 20℃及び60℃の水100mlに造粒茶葉0.5gを撹拌しながら加え、10秒間攪拌後、懸濁液の分散性を目視で観察し、下記判定基準に従って分散性を評価した。 (分散性の判定基準) ◎:ダマが発生しない 〇:発生するダマの数が10個未満 ×:発生するダマの数が10個以上 なお、5mm以上の塊を「ダマ」とした。」 そして、上記分散性評価に従って、上記a.~c.のものの分散性を評価した場合に、上記分散性評価においては、造粒茶葉と水を一定の割合(水100mlに造粒茶葉0.5g)で混ぜて発生するダマの数が10個以上を「×」として評価しているが、同様の評価を行った場合に、半分程度「×」評価の造粒茶葉を含む混合物のダマの数が10個以上となり、全体としての分散性評価が「×」評価になるとはいえない。 また、申立人は、d.不適切な粒度分布の設定をしたものでも、上記発明特定事項1’、発明特定事項2及び発明特定事項3を満たす一方で、本件特許の課題を解決できることを当業者が認識できない旨主張している(意見書8頁21行~9頁2行参照。)。 しかし、この申立人の主張は、1000μmという極めて粒子径の大きい造粒茶葉が9%存在すれば「水に対しても優れた分散性を示す造粒茶葉を提供する」ことはできないということを前提とする主張であるが、造粒茶葉を水に加えた場合に大きな造粒茶葉がどのように崩れるかは明らかでなく、大きな造粒茶葉ほど「ダマ」を生じさせやすいという技術常識があるわけではない。また、本件発明1は造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率及び250μm以上の造粒茶葉の重量の比率を特定することにより、極端に小さな造粒茶葉の重量の比率及び極端に大きな造粒茶葉の重量の比率を限定することにより、「ダマ」の発生を防止しているといえ、250μmを大きく超える1000μmの粒子径の造粒茶葉が9%存在したからといって、上記分散性評価で「ダマ」を10個以上構成し、評価が「×」になるとはいえない。 よって、申立人の主張する仮定に基づき混合した上記造粒茶葉が「水に対しても優れた分散性を示す造粒茶葉を提供する」課題を解決できないとすることはできず、申立人の主張を採用することはできない。 (2)取消理由の理由(2)について 本件訂正により、本件訂正前の請求項2記載の「緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmである」との構成は、本件訂正後の請求項1に加入された。 そこで、本件特許明細書には、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が19.0μmと29.7μmの実施例が記載されるのみであるのに、本件発明1のように、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmのすべての範囲において、本件発明の課題を解決できることを当業者は認識することができるといえるか、以下検討する。 本件特許の出願当初の明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0003】には、「一方、そのような抽出残渣の廃棄を必要としない飲用のお茶として、上記乾燥した茶葉をジェットミル等で平均粒径10μm未満の粉末茶としたものをそのまま熱水に分散させ、茶筅等で撹拌懸濁して飲用するものもある。しかし、このような粉末茶では、平均粒径10μmとするためのコストは非常に高く分散性は非常に低いため、利便性に劣る。」の記載があり、平均粒径10μm未満の粉末茶は分散性が悪いことが当初から認識されていたといえる。 また、当初明細書の段落【0011】には、「即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。(1)粉末茶葉を90質量%以上含有し、且つ平均粒子径が80~180μmである造粒茶葉。(2)粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmである、(1)に記載の造粒茶葉。」の記載があり、本件発明は出願当初から粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmとするものであったといえる。 そして、粉末茶葉の水に対する分散性において、平均粒子径が10μm以上19.0μm以下で格別の変化が生じるという技術常識は存在しない。 してみれば、本件発明は、当初から緑茶の粉末茶葉の平均粒子径を10~30μmとすることにより分散性の課題を解決しようとしていたものと認められ、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が19.0μmと29.7μmの実施例の記載しかなかったとしても、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が10~30μmのすべての範囲において、本件発明の課題を解決できることを当業者は認識することができたといえるものである。 よって、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。 なお、本件発明2及び3では、緑茶の粉末茶葉の平均粒子径が19.0~30μmとさらに限定されており、本件発明2及び3が本件発明の課題を解決できることを当業者が認識することができることは明らかである。 (3)取消理由の理由(3)について 本件訂正により、請求項3に緑茶の粉末茶葉が「平均粒子径が19.0~30μmである」との構成が加入されたことにより、造粒茶葉を構成する原料粉末の分散性に対して影響を与える構成が特定された。 また、請求項1についても、緑茶の粉末茶葉が「平均粒子径が10~30μmである」との構成が加入されたことにより、造粒茶葉を構成する原料粉末の分散性に対して影響を与える構成が特定された。 よって、取消理由の理由(3)は、本件訂正により解消された。 4.取消理由において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 (1)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について 申立人は、特許異議申立書(24頁14行~26頁1行参照。)で、本件発明3について、発明の効果に影響を与える他の要素を一定にした上で試験がなされているとはいえない旨主張している。 しかし、発明の効果に影響を与える要素が何であるかをすべて特定することは不可能である。そして、本件特許においては、申立人が主張する水分上昇速度について、試験例1では噴霧した水の量を揃えて、また、試験例2では水の噴霧速度及び水噴霧前の水分量を揃えて、種々の試験を行った上で、平均粒子径が80~180μmの造粒茶葉で最適な分散性を得るための水分上昇速度を求めているのであるから、発明の効果に影響を与える要素を一定にした上での試験がなされているといえる。 (2)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について 申立人は、特許異議申立書(26頁2行~29頁15行参照。)で、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が、本件特許発明の全体につき実施をすることができる程度の記載がない旨主張している。 しかし、本件特許明細書の段落【0034】~【0052】には、試験例1~3について造粒茶葉の製造の態様及び造粒茶葉の平均粒子径、粒度分布及び分散性の評価について具体的な装置の名称を付しての説明があり、これを評価結果に照らして考察すれば、当業者であれば再現実験を行うことが困難であるとは認められないから、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が、本件発明全体につき実施をすることができるように記載されている。 (3)新規性(特許法第29条第1項第3号)及び進歩性(特許法第29条第2項)について ア.甲号証記載の発明 (ア)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の段落【0001】,【0004】,【0006】,【0008】,【0010】~【0015】及び【0016】~【0026】の記載からすれば、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「茶を平均粒子径が10~50μmとなるように粉砕し、流動層造粒機で加水し、乾燥させた、平均粒子径が50~500μmである植物粉末。」(以下、「甲1発明」という。) 「茶を平均粒子径が10~50μmとなるように粉砕した予備粉末を、流動層造粒機で加水しながら造粒し、平均粒子径が50~500μmとなるように造粒される、植物粉末の製造方法。」(以下、「甲1方法発明」という。) (イ)甲第2号証に記載された発明 甲第2号証の段落【0001】,【0007】,【0013】,【0020】~【0024】及び【0033】~【0035】の記載からすれば、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「碾茶を粒子径が0.1~50μm以下となるように石臼で挽いた抹茶を、安息角が45度未満となるように造粒した茶葉顆粒。」(以下、「甲2発明」という。) 「碾茶を粒子径が0.1~50μm以下となるように石臼で挽いた抹茶1000gを、流動層造粒機で上水400g(温度:45℃)を2分間かけて噴霧してから1分間の造粒と乾燥を1サイクルとして、15分間この造粒サイクルを繰り返し、造粒する茶葉顆粒の製造方法。」(以下、「甲2方法発明」という。) (ウ)甲第3号証に記載された発明 甲第3号証の段落【0001】,【0005】,【0007】,【0010】~【0012】及び【0013】~【0015】の記載からすれば、甲第3号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「メジアン粒子径が5~15ミクロンの粉末茶の粉末を、平均粒子径が10~30ミクロンの範囲となるように造粒した粉末茶。」(以下、「甲3発明」という。) 「メジアン粒子径が10.7μmの粉末茶の粉末3kg(水分含量3.2%)を、流動層造粒コーティング装置を用いて、結合剤を含まない常温の水からなるバインダー液を1800mlを50℃の排気温度で21分間噴霧し、その後70℃の排気温度で33分間噴霧した後、90℃の排気温度で9分間乾燥する、平均粒子径24ミクロンの粉末茶(顆粒状)(水分含量2.6%)の製造方法。」(以下、「甲3方法発明」という。) イ.本件発明1,2と甲1~甲3発明の対比・判断 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明においても茶は粉砕されている以上、両者は「茶の粉末茶葉」を含有する点で一致する。 また、甲1発明は、「茶」を「粉砕し」、「加水」、「乾燥」するものであるから、粉末茶葉は90質量%以上含有されているものと認められる。 また、甲1発明において、流動層造粒機で加水、乾燥された植物粉末は、造粒茶葉となるものと認められる。 してみれば、本件発明1と甲1発明は次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 茶の粉末茶葉を90質量%以上含有した造粒茶葉。 【相違点】 1.茶として、本件発明1は平均粒子径が10~30μmである緑茶を用いているのに対して、甲1発明は平均粒子径が10~50μmの茶を用いている点。 2.造粒茶葉の平均粒子径が、本件発明1は80~180μmであるのに対して、甲1発明は50~500μmである点。 3.本件発明1は、造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%、106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上、且つ250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%であるのに対し、甲1発明にはそのような限定がない点。 上記相違点について検討すると、 本件発明1は、実験結果に基づき分散性評価を行い、粉末茶葉の平均粒子径、造粒茶葉の平均粒子径及び造粒茶葉の総重量に対する特定のサイズの造粒茶葉の重量比率について特定しているのであり、上記相違点1~3に係る数値が相互に関連することにより、水に対する分散性に優れた造粒茶葉を提供しているものと認められるから、これらの数値の限定を設計的事項ということはできない。 そして、甲1発明は、粉末茶葉及び造粒茶葉の平均粒子径について、本件発明1より広い範囲で特定したものであり、さらに、「造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%、106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上、且つ250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%としている」点については特定されていない。 よって、本件発明1が甲1発明であるとはいえず、また、本件発明1を甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 また、甲2及び甲3発明は、甲1発明同様、粉末茶葉の平均粒子径について一部重複しているものの、造粒茶葉の平均粒子径を80~180μmにする点についての記載はなく、また、甲1発明同様、造粒茶葉の総重量に対する53μm未満の造粒茶葉の重量の比率が3.0~12.4%、106μm以上150μm未満の造粒茶葉の重量の比率が20%以上、且つ250μm以上の造粒茶葉の重量の比率が2.2~31.4%とするものではないから、本件発明1が甲2又は甲3発明であるとはいえず、また、本件発明1を甲2及び甲3発明から当業者が容易に発明をすることができたということもできない。 更に、本件発明2は、粉末茶葉の平均粒子径について、本件発明1に更に限定を加えるものであるから、本件発明1同様、甲1~甲3発明であるとか、甲1~甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 よって、本件発明1,2が甲1~甲3発明であるとか、本件発明1,2が甲1~甲3発明から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 ウ.本件発明3と甲1~甲3方法発明の対比・判断 本件発明3は、緑茶の粉末茶葉の造粒にあたって、水分上昇速度及び造粒茶葉の水分量を特定することにより、平均粒子径が10~30μmである緑茶の粉末茶葉を90質量%以上含む原料粉末を湿式造粒して、平均粒子径が80~180μmである造粒茶葉を得たものと認められるところ、甲1~甲3方法発明には、流動層造粒を行うにあたっての水分上昇速度及び造粒茶葉の水分量についての開示はなく、また、甲1~甲3方法発明は上記イ.で指摘したとおり、造粒茶葉の平均粒子径について特定していないか、又はより広い範囲で特定したものであるから、製造された造粒茶葉の平均粒子径に基づいて、当該水分上昇速度及び造粒茶葉の水分量を特定できたともいえない。 よって、本件発明3が甲1~甲3方法発明であるとか、本件発明3が甲1~甲3方法発明から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号、同条第4項第1号、同法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してなされたものとは認められず、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された理由によって、取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700707

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