特許異議申立
2018-700627
空気調和装置
- 審判番号
- 2018-700627
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-023042
- 登録番号
- 特許第6271053号(P6271053)
- 請求日
- 2018年07月30日
- 審決日
- 2018年10月18日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人きさ特許商標事務所
- 【異議申立人】一條 淳
- 審判長/審判官
- 審判長 松下 聡
- 審判官 槙原 進
- 審判官 井上 哲男
- 分類
- P1651.121-Y (F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6271053号発明「空気調和装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6271053号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6271053号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2015年9月2日(優先権主張2014年11月18日、日本国)を国際出願日とする特願2016-515162号の一部を平成28年8月5日に新たな特許出願とした特願2016-154833号の一部を、さらに平成29年2月10日に新たな特許出願としたものであって、平成30年1月12日にその特許権の設定登録(特許掲載公報の発行日:平成30年1月31日)がされ、その後、本件特許の請求項1ないし6に係る特許について、平成30年7月30日に特許異議申立人 一條 淳(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
冷媒を循環させる冷凍サイクルと、
少なくとも前記冷凍サイクルの室内熱交換器を収容し、室内空間に設置される室内機と、
前記室内機を制御する制御部と、を有する空気調和装置であって、
前記冷媒は、大気圧下において空気よりも密度の大きい可燃性冷媒であり、
前記室内機は床置形であり、
前記室内機は、送風ファンと、筐体の下部から前記室内空間の空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口よりも上方に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有しており、
前記制御部は、前記冷媒の漏洩を検知したときに前記送風ファンを運転させるものであり、
前記冷凍サイクルにおける前記冷媒の封入量をM[kg]とし、前記冷媒の燃焼下限濃度をLFL[kg/m3]とし、前記室内空間の床面積をA[m2]とし、前記室内空間の床面からの前記吹出口の高さをHo[m]としたとき、
前記封入量M、前記燃焼下限濃度LFL、前記床面積A及び前記高さHoは、
M<LFL×A×Ho
の関係を満たす空気調和装置。
【請求項2】
前記室内機は、冷媒検知手段を有しており、
前記制御部は、前記冷媒検知手段で検知される冷媒濃度が前記燃焼下限濃度の1/4まで上昇したときに前記送風ファンの運転を開始するものである請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記室内機は、冷媒検知手段を有しており、
前記室内熱交換器は、継手部を介して延長配管に接続されており、
前記冷媒検知手段は、前記室内機の筐体の内部であって前記室内熱交換器及び前記継手部よりも下方に設けられている請求項1又は請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
冷媒を循環させる冷凍サイクルと、
少なくとも前記冷凍サイクルの室内熱交換器を収容し、室内空間に設置される室内機と、を有し、
前記冷媒は、大気圧下において空気よりも密度の大きい可燃性冷媒であり、
前記室内機は床置形であり、
前記室内機は、送風ファンと、筐体の下部から前記室内空間の空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口よりも上方に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有しており、
前記送風ファンの運転により漏洩冷媒を希釈させる空気調和装置であって、
前記冷凍サイクルにおける前記冷媒の封入量をM[kg]とし、前記冷媒の燃焼下限濃度をLFL[kg/m3]とし、前記室内空間の床面積をA[m2]とし、前記室内空間の床面からの前記吹出口の高さをHo[m]としたとき、
前記封入量M、前記燃焼下限濃度LFL、前記床面積A及び前記高さHoは、
M<LFL×A×Ho
の関係を満たす空気調和装置。
【請求項5】
前記床面積は、前記空気調和装置又は前記室内機の仕様としての適用床面積である請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記吹出口からの空気の吹出方向は水平方向である請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の空気調和装置。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、下記2の証拠方法を提出し、概ね下記1の特許異議の申立ての理由を主張する。
1 申立ての理由(進歩性)
本件発明1、2、4ないし6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証に係る発明及び甲第2ないし6に係る技術に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、また、本件発明3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証に係る発明、甲第2ないし6に係る技術及び甲第7号証に係る技術に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 証拠方法
(1)甲第1号証:特開平8-61702号公報(以下、「甲1」という。)
(2)甲第2号証:永翁龍一,”可燃性冷媒の漏洩に対する安全性評価と数値モデリング”,安全工学,2014年8月,第53巻,第4号,p.234-243(以下、「甲2」という。)
(3)甲第3号証:O.Kataoka,外2名,”Allowable Charge Ca1culation Method for Flammable Refrigerants”,「Eighth International Refrigeration Conference at Purdue University,West Lafayette,IN,USA - July 25-28,2000(第8回国際冷凍空調会議、於パデュー大学、ウェストラファイエット、インディアナ州、米国-2000年7月25~28日)」,(米),2000,p.383-390(以下、「甲3」という。)
甲第3号証(翻訳):甲第3号証の日本語による翻訳文(以下、「甲3訳」という。)
(4)甲第4号証:特開2014-142141号公報(以下、「甲4」という。)
(5)甲第5号証:”微燃性冷媒リスク評価研究会 平成24年度 プログレスレポート”,公益社団法人日本冷凍空調学会,平成25年3月,インターネット<URL:https://www.jsrae.or.jp/info/2012progress_report_j.pdf>,p.1-86(以下、「甲5」という。)
(6)甲第6号証:”- 高効率ノンフロン型空調機器技術の開発 - 中間評価分科会説明資料 議題5 プロジェクトの概要説明 (公開)”,NEDO環境部,平成25年6月20日,インターネット<URL:http://www.nedo.go.jp/content/100548081.pdf>,p.1/37-37/37,p.[○1-1/46(当審注:○付き数字を”○数字”のように表記した。以下同様。)]-[○1-46/46],p.[○2-1/10]-[○2-10/10],p.[○3-1/70]-[○3-70/70](以下、「甲6」という。)
(7)甲第7号証:特開2002-98393号公報(以下、「甲7」という。)
第4 甲各号証の記載
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷凍サイクルの冷媒としてプロパン等の可燃性ガスを配合した除湿機や縦型エアコン等の一体型空気調和機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の一体型空気調和機の構造について図5を参照しながら説明する。
【0003】図5は従来の一体型空気調和機の断面図で、図5において、一体型空気調和機本体1には、可燃性ガスでない冷媒が使用されていた。また本体1上部には、冷凍サイクル部5の一部である熱交換器6と送風機8を有する通風路9が隣接して配設され、前記通風路9の背面部には電気制御部11が具備されていた。また、冷凍サイクル部5を配設した側壁の上部には、圧縮機7の放熱のための開口部を設けていたり、または全く開口部は設けられていなかった。
【0004】また、従来は通風路9として吸入グリル部3、熱交換器6および吹出グリル部4が連結して配置され、特に圧縮機7がある冷凍サイクル部5は必ずしも通風路9と連通される構造とはなっていなかった。
【0005】さらに、従来は可燃性ガスである冷媒ガスを検知するガスセンサは具備されていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような構成では、プロパン等の可燃性ガスを冷凍サイクルの冷媒として使用した場合、冷媒は空気より重いガスであるため、例えば熱交換器6の上部で冷媒漏れが発生した場合、特に火花を発生する恐れがある接点リレーを有する電気制御部11に冷媒ガスが到達し、爆発を起こす危険性があった。また、開口部がなく、冷凍サイクル部5が機外の空気に連通していない場合には、本体1下部に漏れた可燃性ガスが高濃度に充満して早期に爆発する危険性があった。
【0007】また、特に圧縮機7がある冷凍サイクル部5は、必ずしも通風路9と連通される構造とはなっていなかったため、送風機8の運転により漏れた冷媒ガスを吸引して機外に放出して、爆発を回避させることができなかった。
【0008】また、可燃性ガスである冷媒ガスを検知するガスセンサが具備されていなかったため、万が一、冷媒漏れが発生した場合には検知できないため、可燃性ガスの冷媒漏れに気づかず、爆発にいたるという恐れがあった。
【0009】本発明は上記従来例の課題を解決するもので、冷凍サイクル部から漏れた可燃性ガスを機外に流出させて可燃性ガスの高濃度化を防ぎ、爆発防止を目的とするものである。
【0010】また、冷凍サイクル部から漏れた可燃性ガスをガスセンサにより早期に検知し、ガス漏れを報知させるとともに、爆発防止を目的とするものである。」
イ 「【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、冷凍サイクル部を配設した底面または側壁の下部に機外の空気と連通する外箱開口部を配設し、かつ、電気制御部を冷凍サイクル部より上方に配置したものである。
【0012】また、本発明は、冷凍サイクル部を配設した底面または側壁の下部に設けた外箱開口部に近接して、冷媒ガスを検知するガスセンサを配置したものである。
【0013】また、本発明は、冷凍サイクル部を配設した底面または側壁の下部に設けた外箱開口部と、送風機によって外箱開口部より吸引される空気の流れが冷凍サイクル内を通過するべく水受け皿に水受け皿開口部を設けたものである。
【0014】また、本発明は、通風路内に冷媒ガスを検知するガスセンサを配置したものである。
【0015】
【作用】本発明は上記した構成において、電気制御部を冷凍サイクル部より上方に配置したことにより、可燃性ガスは空気より重いガスであるため、例えば熱交換器の上部で冷媒漏れが発生した場合、特に火花を発生する恐れがある接点リレーを有する電気制御部に冷媒ガスが到達しにくいため、爆発を起こす危険性は少なくなる。また下方に流出した冷媒ガスを底面または側壁の外箱開口部より機外に自然流出して、本体内で可燃性ガスが高濃度化することを防ぎ、爆発を防止することができる。
【0016】また、冷凍サイクル部を配設した底面または側壁の下部に設けた外箱開口部に近接して、冷媒ガスを検知するガスセンサを配置したことにより、漏れた空気より重い冷媒ガスが下方に流出した場合、本体下部に溜まりだし、さらに底面または側壁の下部に設けた外箱開口部に流れだそうとするため、この外箱開口部に近接されたガスセンサが確実に検知して、報知するとともに爆発防止の手段を講じることができる。
【0017】また、冷凍サイクル部を配設した底面または側壁の下部に設けた外箱開口部を、送風機によって外箱開口部より吸引される空気の流れが冷凍サイクル内を通過するべく水受け皿に水受け皿開口部を設けたことにより、送風機の運転により漏れた冷媒ガスを吸引して、通風路を介して、強制的に機外に放出し、ガス濃度を希薄にして、爆発を防止できる。」
ウ 「【0019】
【実施例】
(実施例1)以下、本発明の第1の実施例について図1を参照しながら説明する。なお、従来例で説明したものと同一構成部材には同一番号を用いる。
【0020】図1は本発明の第1の実施例の一体型空気調和機の断面図である。図1において、1は一体型空気調和機の本体で、外箱2には吸入グリル部3および吹出グリル部4を形成し、内部にはプロパン等の可燃性ガスを冷媒として使用した冷凍サイクル部5を構成し、熱交換器6、圧縮機7、さらに送風機8を有する通風路9、水受け皿10を具備している。電気制御部11は冷凍サイクル部5より上方の本体1上部に配置されている。そして圧縮機7近傍の底面または側壁の下部には外箱開口部12が設けられている。
【0021】上記構成において、例えば熱交換器6で冷媒漏れが発生した場合、冷媒は空気より重いガスであるため、本体運転停止時には、漏れた冷媒ガスの流れは下方に流出し、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部の外箱開口部12より機外に自然流出して、本体1内で可燃性ガスが高濃度化することを防ぎ、爆発を防止することができる。そして特に火花を発生する恐れがある接点リレーを有する電気制御部11は冷凍サイクル部5より上方に配置されているために、冷媒ガスが到達しにくく、爆発の危険性は小さい。
【0022】(実施例2)本発明の第2の実施例について図2を参照しながら説明する。なお、第1の実施例で説明したものと同一構成部材には同一番号を用いる。
【0023】図2は本発明の第2の実施例の一体型空気調和機の断面図である。図2において、13は可燃性ガスである冷媒ガスを検知するガスセンサであり、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部の外箱開口部12に近接して設けられている。
【0024】上記構成において、漏れた空気より重い冷媒ガスが下方に流出した場合、本体1下部に溜まりだし、さらに外箱開口部12に流れだそうとするため、この外箱開口部12に近接されたガスセンサ13が確実に検知して、報知するとともに爆発防止の手段を講じることができる。
【0025】(実施例3)本発明の第3の実施例について図3を参照しながら説明する。なお、第1の実施例で説明したものと同一構成部材には同一番号を用いる。
【0026】図3は本発明の第3の実施例の一体型空気調和機の断面図である。図3において、吸入グリル部3、熱交換器6および通風路9が連結して配置され、それらの下部にある水受け皿10には吸入グリル部3と圧縮機7部空間を連通する水受け皿開口部14が設けられている。また圧縮機7近傍の底面または側壁の下部の外箱開口部12は圧縮機7部に対して、前記水受け皿開口部14と相反する位置に配置されている。
【0027】上記構成において、圧縮機7近傍の冷凍サイクル部5で冷媒漏れが発生した場合、冷媒は空気より重いガスであるため、下方に滞留しようとするが、本体運転時には、送風機の運転により底面または側壁の下部の外箱開口部12より吸引される空気の流れが冷凍サイクル部5内を通過し、漏れた冷媒ガスを合わせて、水受け皿開口部14、さらに通風路9を介して、強制的に吹出グリル部4より機外に放出し、ガス濃度を希薄にして爆発を防止できる。」
(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)ア及びウ並びに図2及び3の記載によれば、甲1には、一体型空気調和機が記載されていることが分かる。
イ 上記(1)ウ並びに図2及び3の記載によれば、一体型空気調和機は、冷凍サイクル部5を有することが分かる。
ここで、冷凍サイクル部5が冷媒を循環させるものであることは明らかである。
ウ 上記(1)ウ並びに図2及び3の記載によれば、一体型空気調和機は、少なくとも前記冷凍サイクル部5の熱交換器6を収容する一体型空気調和機の本体1を有することが分かる。
ここで、一体型空気調和機1の本体は、上部に室内熱交換器6を通過した空気を吹き出す吹出グリル部4が形成されているから、室内空間に設置されることは明らかである。
エ 上記(1)ウ並びに図2及び3の記載によれば、一体型空気調和機は接点リレーを有する電気制御部11を有することが分かる。
オ 上記(1)イ及びウ(特に、段落【0015】、【0016】、【0021】、【0024】及び【0027】)の記載によれば、冷媒は、空気より重い可燃性の冷媒ガスであることが分かる。
カ 上記(1)ウ及び図1ないし3(特に、図1ないし3)の記載によれば、一体型空気調和機の本体1には、上部に吹出グリル部4が形成されているとともに、底面に脚部が形成されているから、一体型空気調和機の本体1は床に置かれるものであることが分かる。
キ 上記(1)ウ及び図2(特に、段落【0022】ないし【0024】及び図2)の記載によれば、一体型空気調和機に本体1は、送風機8と、前記室内空間の空気を吸い込む吸入グリル部3と、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12と、前記外箱開口部12よりも上方に設けられ、吸入グリル部3から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出グリル部4と、を有していることが分かる。
ク 上記(1)ウ及び図2(特に、段落【0024】及び図2)の記載によれば、一体型空気調和機は、漏れた冷媒ガスが下方に流出したことを外箱開口部12に近接されたガスセンサ13が検知したときに、報知するとともに爆発防止の手段を講じることが分かる。
ケ 上記(1)ウ及び図3(特に、段落【0025】ないし【0027】及び図3)の記載によれば、一体型空気調和機の本体1は、送風機8と、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12と、前記外箱開口部12よりも上方に設けられ、吸入グリル部3及び前記外箱開口部12から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出グリル部4と、を有していることが分かる。
コ 上記(1)ウ及び図3(特に、段落【0027】及び図3)の記載によれば、一体型空気調和機は、送風機8の運転により、外箱開口部12より吸引される空気の流れが、漏れた冷媒ガスを合わせて、強制的に吹出グリル部4より機外に放出し、ガス濃度を希薄にする
(3)甲1発明A
図2に係る実施例2に着目して、上記(1)及び(2)を総合すると、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認める。
「冷媒を循環させる冷凍サイクル部5と、
少なくとも前記冷凍サイクル部5の熱交換器6を収容し、室内空間に設置される一体型空気調和機の本体1と、
接点リレーを有する電気制御部11と、を有する一体型空気調和機であって、
前記冷媒は、空気より重い可燃性の冷媒ガスであり、
前記一体型空気調和機の本体1は、床に置かれるものであり、
前記一体型空気調和機の本体1は、送風機8と、前記室内空間の空気を吸い込む吸入グリル部3と、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12と、前記外箱開口部12よりも上方に設けられ、前記吸入グリル部3から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出グリル部4と、を有しており、
漏れた冷媒ガスが下方に流出したことを前記外箱開口部12に近接されたガスセンサ13が検知したときに、報知するとともに爆発防止の手段を講じる、
一体型空気調和機。」
(4)甲1発明B
図3に係る実施例3に着目して、上記(1)及び(2)を総合すると、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認める。
「冷媒を循環させる冷凍サイクル部5と、
少なくとも前記冷凍サイクル部5の熱交換器6を収容し、室内空間に設置される一体型空気調和機の本体1と、を有し、
前記冷媒は、空気より重い可燃性の冷媒ガスであり、
前記一体型空気調和機の本体1は、床に置かれるものであり、
前記一体型空気調和機の本体1は、送風機8と、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12と、前記外箱開口部12よりも上方に設けられ、吸入グリル部3及び前記外箱開口部12から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出グリル部4と、を有しており、
前記送風機8の運転により、前記外箱開口部12より吸引される空気の流れが、漏れた冷媒ガスを合わせて、強制的に前記吹出グリル部4より機外に放出し、ガス濃度を希薄にする一体型空気調和機。」
2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「一方,可燃性冷媒の搭載上限量Mは,ISO 817の規格に従うと
M= 2.5・(LFL)5/4・ho・A1/2 (7)
で規定される2)24).ここでLFLは燃焼下限界,hoは漏洩口の高さ,Aは床面積である」(241頁右欄8ないし12行)
3 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
ア 「
」(383頁21ないし30行)
翻訳文:「
」(甲3訳の2頁)
イ 「
」(386頁29行ないし387頁1行)
翻訳文:「
」(甲3訳の6頁)
ウ 「
」(387頁17ないし28行)
翻訳文:「
」(甲3訳の6ないし7頁)
4 甲4について
甲4には、図面と共に以下の記載がある。
ア 「【0002】
従来における空気調和装置としては、室内機と室外機からなり可燃性冷媒を使用する空気調和装置において、室内機を使用する部屋の床面積を入力する入力手段と、この入力手段に入力された床面積の入力値と予め設定された設定値を比較する比較手段と、室外機に設けられ比較手段の比較結果に基づいて余剰冷媒を貯溜する余剰冷媒貯溜装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この特許文献1には、空気調和装置の冷媒充填量Mは、下限燃焼限界LFL、設置高さH、床面積Aとの間で次の式(1)の関係を満たすようにすることが好ましい旨も記載されている。
M=2.55×(LFL)^1.25×H×A^0.5 ・・・ 式(1)
(なお、この式において「x^y」の表記は、xのy乗を表している。以下の記載においても同じである。)」
イ 「【0013】
図1において、1は、空気調和装置の室内機である。この室内機1は、空気調和の対象となる部屋の室内に設置されている。室内機1は、当該部屋の床面2から所定の高さ位置に配設される。また、当該部屋の外には、室外機3が設置されている。
【0014】
空気調和装置には、冷凍サイクル装置4が内蔵されている。冷凍サイクル装置4は、室内機1と室外機3との間で循環的に設けられた冷媒配管5を備えている。この冷媒配管5は、室内機1と室外機3との間での冷媒の循環経路の一部を構成している。冷媒配管5内には冷媒ガスが封入されている。冷凍サイクル装置4は、室内機1及び室外機3のそれぞれと冷媒配管内の冷媒との間で熱交換を行うことにより、室内機1と室外機3との間で熱を移動させるヒートポンプとして働く。
【0015】
冷媒配管5内に封入される冷媒ガスは、可燃性(より正確には微燃性)のガスである。また、この冷媒ガスは空気よりも平均分子量が大きく(空気に対する比重が1よりも大きく)、空気中では重力方向の下方へと沈んでいく性質を持っている。この冷媒として、具体的に例えば、ジフルオロメタン(CH2F2:R32)、テトラフルオロプロパン(CF3CF=CH2:HFO-1234yf)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、エタン(R170)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、1.1.1.2-テトラフルオロエタン(C2H2F4:R134a)、ペンタフルオロエタン(C2HF5:R125)、1.3.3.3-テトラフルオロ-1-プロペン(CF3-CH=CHF:HFO-1234ze)等の中から選ばれる1つ以上の冷媒からなる(混合)冷媒を用いることができる。ここでは、冷媒配管5内には、冷媒としてR32(ジフルオロメタン:CH2F2)が封入されているとして説明を続ける。
【0016】
冷凍サイクル装置4の運転動作は、室内機1が備える運転制御手段6により制御される。運転制御手段6は、冷凍サイクル装置4が備える例えばコンプレッサーの運転制御、及び/又は、冷媒配管5の中途に介挿された電磁弁5aの開閉制御等を行うことで、冷凍サイクル装置4の運転を制御する。
【0017】
室内機1の底部には、高さセンサ7が設けられている。この高さセンサ7は、室内機1から床面2まで距離に応じた信号を出力するものである。高さセンサ7としては、具体的に例えば、レーザー光、超音波又は赤外線等を利用して対象までの距離を検出するものを用いることができる。なお、レーザー光を用いた距離計としては、例えば、波長635(nm)のレーザーダイオードを使用したものを用いることができる。
【0018】
室内機1には、さらに、高さ測定手段8、監視手段9及び高さ閾値設定手段10が備えられている。高さ測定手段8は、高さセンサ7から出力された信号を処理して、室内機1と床面2との距離、すなわち、室内機1の床面2に対する設置高さを測定する。
【0019】
監視手段9は、高さ測定手段8により測定された室内機1の設置高さが、高さ閾値以下となったか否かを監視するものである。この監視手段9において監視基準として用いられる高さ閾値は、高さ閾値設定手段10により設定される。すなわち、高さ閾値設定手段10は、監視手段9による室内機1の設置高さの測定値の監視に先立って、高さ閾値を設定する。」
ウ 「【0023】
続いて、第3の方法は、当該室内機1が設置されている部屋の床面積を検出する広さセンサ13を設け、この広さセンサ13の検出結果に基づいて高さ閾値を設定する方法である。特許文献1の式(1)にも示されるように、冷媒の充填量と、冷媒の下限燃焼限界と、室内機1の床面2からの設置高さと、室内機1が設置される部屋の床面積とは一定の関係が成立している。
【0024】
ここで、冷媒の充填量は、一度冷媒を冷凍サイクル装置4に充填した後は原則としてあまり変化することがないため、予め定められた量であると見なすことができる。冷媒の下限燃焼限界についても、用いる冷媒種(ここではR32)が決まれば定まる量である。
【0025】
したがって、冷媒の充填量と下限燃焼限界が定数であるとした場合、前記一定の関係を成立させる室内機1の設置高さは、部屋の床面積に応じて変化する。そこで、室内機1に、当該室内機1が設置されている部屋の床面積を検出する広さセンサ13を設け、この広さセンサ13の検出結果に基づいて高さ閾値設定手段10は、高さ閾値を設定する。
【0026】
ここで、広さセンサ13により検出された床面積から高さ閾値を設定する際に、前記一定の関係を利用する場合、冷媒の充填量及び下限燃焼限界については、記憶手段11に予め記憶しておいてもよいし、入力手段12から入力するようにしてもよい。このような第3の方法によれば、室内機1が設置される部屋の床面積を自動的に検出して適切な高さ閾値を設定することができる。
【0027】
なお、広さセンサ13は、高さ閾値設定手段10における高さ閾値の決定のための専用のセンサを室内機1に備えるようにしてもよいし、室内機1が室内の温度分布を検出するために備えた温度センサと兼用するようにしてもよい。広さセンサ13として専用のセンサを用いる場合には、高さセンサ7と同様、レーザー光、超音波又は赤外線等を利用して部屋の壁面までの距離を検出することで、部屋の床面積を算出することができる。
【0028】
また、広さセンサ13を温度センサと兼用する場合、温度センサにより検出された室内の温度分布に基づいて、部屋の壁面等の位置を検出することで、部屋の床面積を算出することができる。この際、温度センサが、室内機1の吹部口のルーバー部分に取り付けられ、ルーバーの向きを変化させることで温度センサの検出方向を一定範囲内で走査できるようにされたものであれば、この温度センサを広さセンサ13として利用する際にも一定範囲内で走査して壁面までの距離を検出するようにすることで、より精度よく床面積を求めることができる。」
エ 「【0042】
図3は、高さ閾値の決定方法を説明する図であり、高さ閾値の設定値の決定に用いる評価実験装置を示すものである。この図3において、密閉空間20は、内寸法が2(m)×2(m)×2.5(m)の気密に形成された空間である。この密閉空間20は、例えば、9(mm)厚のベニヤ板を組み合わせ、ベニヤ板の接合部分にシリコン接着剤でコーキングを施すことにより作成することができる。
【0043】
密閉空間20における壁面部の1箇所には、幅900(mm)の開閉扉を設けられており、ここから密閉空間20内に出入りすることができるようになっている。また、この開閉扉に、適当な大きさのアクリル窓を備え、この窓を通じて中の状態を見ることができるようにしてもよい。なお、このアクリル窓の周辺についても、シリコン接着剤でコーキングを施しておく。
【0044】
密閉空間20内の側壁における所定の高さ位置には、室内機1が設置される。ここでは、室内機1の設置高さは、0.1(m)、0.6(m)、1.0(m)及び1.8(m)の高さに、室内機1の吹出口がくるように、それぞれ設置できるようにする。
【0045】
冷媒ボンベ21内には、室内機1で用いられるものと同じ冷媒が充填されている(ここでは、冷媒ボンベ21内にはR32が液相で充填されているものとする)。冷媒ボンベ21からは冷媒供給管22が延びている。この冷媒供給管22の先端部は、銅細管22aが接続される。銅細管22aの先端は、室内機1の内部で開放されている。ここでは、銅細管22aの開放端は、室内機1の内部における熱交換機の近傍に配置されている。銅細管22aの開放端は、鉛直下向きに向けられている。
【0046】
銅細管22aとしては、ここでは、A:φ6.3(mm)×3(mL)、B:φ0.6(mm)×1000(mmL)、C:φ0.5(mm)×15(mL)の3種類を交換して用いることができるようにしている。これらA~C、3種類の銅細管22aを交換して用いることで、冷媒の漏洩速度を変えることができる。以下、これらA~Cの銅細管22aを用いた場合の条件をそれぞれ、条件A、条件B、条件Cという。
【0047】
なお、冷媒供給管22と銅細管22aとの接続箇所は、密閉空間20の外側に形成されている。また、冷媒供給管22の径は、φ0.6(mm)より大きい。このようにして、室内機1の内部における冷媒ガスの漏洩を仮想的に実現している。
【0048】
冷媒ボンベ21は、台秤23の上に載せられている。台秤23による冷媒ボンベ21の重量の測定値は、測定用端末24へと送られる。冷媒ボンベ21のバルブを開き、冷媒が密閉空間20内に漏洩するに従い冷媒ボンベの重量は低下する。この際の冷媒ボンベ21の重量の時間変化を測定用端末24にて計測することで、冷媒ボンベ21から密閉空間20内への冷媒漏洩速度(g/min)を求めることができる。
【0049】
なお、前述した条件A~Cで実際に測定した結果、条件A:500(g/min)、条件B:100(g/min)、条件C:10(g/min)となった。
【0050】
密閉空間20内の中央部には、床上50(mm)、150(mm)、300(mm)、450(mm)、600(mm)及び750(mm)の位置に、それぞれ酸素センサ25を取り付けたスタンドが備えられている。これらの酸素センサ25からは、酸素濃度に応じた信号が出力される。これらの酸素センサ25からの出力は、測定用端末24へと送られる。
【0051】
密閉空間内の酸素量の初期状態は、密閉空間20内の空気に対して21.0(体積%)とする。冷媒の漏洩によって密閉空間20内に存在する全ての気体に対して空気が占める相対的な割合が減少する。密閉空間20内における空気の割合が減少すれば、密閉空間20内の酸素濃度は低下する。しかし、密閉空間20内の空気に対する酸素の割合は変わらない。したがって、各酸素センサ25により測定された密閉空間内の酸素濃度(体積%)を0.21で除することで空気濃度が算出され、これを100(体積%)から減じることで、密閉空間20内の各高さ位置における冷媒濃度を求めることができる。
【0052】
例えば、室内機1の吹出口が床上1.0(m)になるように密閉空間20内に据え付け、条件AでR32冷媒を計1.3(kg)漏洩させた場合における、密閉空間20内の各高さ位置におけるR32の濃度の時間変化を、図4に示す。この図4中における下矢印(↓)は、各測定点における最高濃度を指している。
【0053】
R32は空気より重たいため、酸素センサ25の位置(測定点)が低い程、R32の濃度は高くなる。すなわち、各測定点における最高濃度同士を比較すると、床から最も低い床上50(mm)の位置の測定点において、最も高い濃度となることがわかる。なお、床上50(mm)未満の位置には酸素センサ25を配置していないため、床上50(mm)未満における冷媒濃度は測定していない。ここでは、床上50(mm)未満の領域においては、実際上危険がおきないものとしている。
【0054】
そして、今度は、冷媒の漏洩速度は条件Aとしたまま、室内機1の吹出口の据付高さを0.1(m)、0.6(m)、1.0(m)、1.8(m)と変化させて同様の実験を行った場合における、床から最も低い床上50(mm)の位置の測定点R32の最高濃度をプロットした結果が、図5である。
【0055】
この図5からわかるように、冷媒の漏洩速度を一定にした場合、室内機1の吹出口の据付高さが低くなるほど冷媒の最高濃度は高くなり、逆に室内機1の吹出口の据付高さが高くなるほど冷媒の最高濃度は低くなる。冷媒の漏洩速度の条件Aという条件は、前述したA~Cの3条件の中で、冷媒の漏洩速度が最も大きいものである。そして、このような条件下で、冷媒の最高濃度が冷媒の燃焼下限濃度(LFL)に達し得る室内機1の設置高さの最大値を、図5のグラフから読み取ることで、漏洩した冷媒の最高濃度が冷媒の燃焼下限濃度に達する蓋然性が低い室内機1の設置高さの下限Hminを決めることができる。
【0056】
具体的に、図5に示した例で説明すると、プロットされた4点を通るように多項式近似した曲線とLFLとの交点から、室内機1の設置高さの下限Hminを求めることができる。ここで、冷媒がR32の場合、LFL=14.4(体積%)である。したがって、図5の例では、Hminは、おおよそ0.7~0.8(m)となる。記憶手段11に予め記憶する、あるいは、入力手段12から直接入力する高さ閾値としては、このHminに安全係数として例えば1.2を乗じたものを用いる。
【0057】
さらに、密閉空間20の床面積、冷媒の漏洩量及び冷媒の漏洩速度のそれぞれを変化させて、以上の実験を繰り返した結果、密閉空間20の床面積が小さいほど、冷媒の漏洩量が多いほど、また、冷媒の漏洩速度が大きいほど、Hminは小さくなることを確認した。
【0058】
また、床面積と漏洩冷媒量については、実寸法(実際の量)で実験しなくとも、実験した床面積と漏洩冷媒量との比から、実寸法(実際の量)でのHminを推算することができることも確認した。すなわち、ある床面積と漏洩冷媒量におけるHminを実験により求めておけば、この実験から求めたHminに基づいて、実験時とは異なる床面積及び/又は漏洩冷媒量におけるHminを算出することが可能である。
【0059】
一般的に、エアコン(空気調和装置)の商品カタログには、その能力と設置する部屋の床面積目安が記載されている。空気調和装置の冷媒充填量は、空気調和装置の機種と延長配管長さ等にもよるが、おおむねその能力に相関すると考えることができる。具体的に例えば、能力が2.2kWの場合、冷媒充填量は750gくらいであり、床面積目安は6畳(2畳=3.3(m^2)として、9.9(m^2))となっている。
【0060】
したがって、これらの製品仕様から冷媒充填量W(kg)及び対象部屋床面積S(m^2)を推定することができる。こうして推定したW及びSと、実験から求めたHminと、当該実験時の冷媒充填量及び床面積とから、(安全係数も考慮して)高さ閾値を決定する。そして、高さ閾値設定手段10における高さ閾値の設定方法として前述した第1の方法を用いる場合には、こうして決定した高さ閾値を、製品出荷時等に予め記憶手段11に記憶させておく。また、前述した第2の方法を用いる場合には、こうして決定した高さ閾値を入力手段12により入力する。
【0061】
なお、Hminの値を実験により決定する際に、冷媒漏洩速度は、実際想定される挙動と安全との関係から、100~500(g/min)の範囲で実施することが望ましい。また、冷媒充填量W(kg)は、製品において想定されるものより大きいデータから推算した方が、より安全側に傾いた高さ閾値を設定することができる(残存冷媒量が少なくなると、内圧が下がって漏洩速度が小さくなるため)。
【0062】
ところで、前述した高さ閾値設定手段10における高さ閾値を設定する方法においては、特許文献1に記載された式(1)の関係を用いて行う例について説明したが、この式(1)の関係に代えて、以上に述べた実験結果に基づいて高さ閾値を決定することがより好ましい。
【0063】
具体的に例えば、予め実験結果として得られたHminの値及びその実験時における条件(床面積及び冷媒漏洩量)を記憶手段11に予め記憶しておく。また、室内機1の冷媒充填量及び安全係数についても記憶手段11に予め記憶しておく。そして、高さ閾値設定手段10は、室内機1が設置された部屋の床面積として入力手段12に入力された値又は広さセンサ13により検出された値を用いるとともに、記憶手段11に記憶された情報を用いることで、適切な高さ閾値を算出して設定することができるようになる。
【0064】
加えて、高さ閾値設定手段10により設定される高さ閾値は、0.7~1.5(m)の範囲内に限定されるようにすることが、より望ましい。すなわち、具体的に例えば、入力手段12から0.7~1.5(m)の範囲を外れた値が入力された場合には、高さ閾値設定手段10は、強制的に0.7~1.5(m)の範囲内の値を高さ閾値に設定する。
【0065】
高さ閾値を限定する範囲を、0.7~1.5(m)とする理由は次の通りである。すなわち、特に日本国内においては、空気調和装置の推奨設置面積が守られて使用されるケースがほとんどであって、空気調和装置が設置される環境は、比較的に狭い密閉空間が多いと見なすことができる。したがって、室内機1が設置される部屋の床面積3~6畳で、冷媒充填量0.7~1.5(kg)の場合が大部分を占める。そして、このような環境下においては、以上に述べた実験結果を踏まえると、高さ閾値の範囲を0.7~1.5(m)とすることが最もよいということをこの発明の発明者は見いだした。このように、高さ閾値を0.7~1.5(m)の範囲内に限定することで、高さ閾値が誤って設定されることを未然に防止することができる。」
5 甲5について
甲第5号証には、以下の記載がある。
ア 「3.1.2.2 計算方法と計算モデル
冷媒拡散現象の数値シミュレーションには,汎用熱流体解析コードSTAR-CD3.1.4)を用いた.差分法には有限体積法が用いられている.
計算方法は非定常流れとし,密度の計算には理想気体の状態方程式を用いた.計算アルゴリズムにはPISO法等を用いた.対流項の離散化にはUDとMARS,乱流モデルには標準k-εモデルを使用した.境界条件として冷媒の流入条件は一定流量の流入条件,流出条件は大気圧相当の圧力境界等を用い,壁境界には壁法則を用いた.家庭用ルームエアコン(以下,RAC.)の計算条件はTable 3.1.2に,ビル用マルチエアコン(以下,VRF)の計算条件はTable 3.1.3にまとめた.」(12頁右欄18行ないし13頁5行)
イ 「
」(13頁左欄)
ウ 「(4)ビル用マルチエアコンからの漏えい
VRFの設置位置はオフィスルームを想定し,その寸法は床面積が外寸6.5m×6.5mで高さ2.7mである.部屋の天井面にはVRFが1台設置されており,吹き出し口の大きさは450mm×64.5mm , 吸い込み口の大きさはφ370であり,吹き出し口と吸い込み口から冷媒が真下に漏えいする.また,天井面には寸法が200mm×200mmの給気口と排気口があり,さらに,壁面にはドアが設置されており,その下部には寸法1500mm×10mmの隙間が存在する.格子数は約15万であり,吹き出し口,吸い込み口,給排気口,ドア下隙間付近には要素を集中させている.Fig. 3.1.5にVRFの計算モデルを示す.
」(13頁右欄ないし14頁左欄)
エ 「空調機の国際安全規格ISO51494.2.3)の改訂作業においては,A2L冷媒を用いたビル用マルチを安全に使うための要求事項が検討されており,日本冷凍空調工業会(以下,日冷工と記す)からも多くの提案を行ってきた4.2.4).改訂案中に記されている要求事項を,表4.2.3,表4.2.4に示す.全冷媒量Mを室内機設置部屋の容積Vで割った濃度がLFLの1/5倍(RCL)を超えると,その部屋における何らかの安全対策の実施が要求される.図4.2.7の事務所モデルで必要とされる安全対策を表4.2.2に示す.
図4.2.8には,R32,R1234yfの冷媒量上限を示し,事務室1と事務室2のポイントも示した.
」(66頁右欄)
オ 「
」(67頁左欄)
6 甲6について
甲6には、以下の記載がある。
ア 「
」(○3-56/70頁)
イ 「
」(○3-56/70頁)
ウ 「
」(○3-57/70頁)
エ 「
」(○3-58/70頁)
7 甲7について
甲7には、図面と共に以下の記載がある。
「【0021】図1に示すように、室外機(図示せず)と室内機1との間で冷媒を循環させるための一対の連絡配管10が、ケーシング2の左側板2aの下部に設けられた穴31を通して室内機1内部に導入されている。この連絡配管10は、図示を省略しているが、熱交換器3の伝熱管6に接続されている。この空気調和機では、冷媒としてR32からなる可燃性冷媒が採用されている。」
第5 判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明Aとを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「冷凍サイクル部5」は、前者の「冷凍サイクル」に相当し、以下同様に、「熱交換器6」は「室内熱交換器」に、「接点リレーを有する電気制御部11」は「室内機を制御する制御部」に、「一体型空気調和機」は「空気調和装置」に、「空気より重い可燃性の冷媒ガス」は「大気圧下において空気よりも密度の大きい可燃性冷媒」に、「送風機8」は「送風ファン」に、それぞれ相当する。
・前者の「室内機」は、室外機と室内機に分離した空気調和装置における室内機に限らず、文言上、空気調和装置を構成する機器が室内空間に設置されたものを意味すると解せるから、後者の「一体型空気調和機の本体1」は、前者の「室内機」に相当する。
・後者の「一体型空気調和機の本体1は、床に置かれるものであり」は、前者の「室内機は床置形であり」に相当する。
・後者の「前記一体型空気調和機の本体1は、送風機8と、前記室内空間の空気を吸い込む吸入グリル部3と、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12と、前記外箱開口部12よりも上方に設けられ、前記吸入グリル部3から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出グリル部4と、を有しており」は、前者の「前記室内機は、送風ファンと、筐体の下部から前記室内空間の空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口よりも上方に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有しており」に、「室内機は、送風ファンと、室内空間の空気を吸い込む吸込口と、吸込口から吸い込まれた空気を室内空間に吹き出す吹出口と、を有しており」という限りにおいて、相当する。
・後者の「漏れた冷媒ガスが下方に流出したことを前記外箱開口部12に近接されたガスセンサ13が検知したときに、報知するとともに爆発防止の手段を講じる」は、電気制御部11により行われることは明らかであるから、前者の「前記制御部は、前記冷媒の漏洩を検知したときに前記送風ファンを運転させる」に、「制御部は、冷媒の漏洩を検知したときに所定の爆発防止のための動作をさせる」という限りにおいて、相当する。
したがって、両者は、
「冷媒を循環させる冷凍サイクルと、
少なくとも前記冷凍サイクルの室内熱交換器を収容し、室内空間に設置される室内機と、
前記室内機を制御する制御部と、を有する空気調和装置であって、
前記冷媒は、大気圧下において空気よりも密度の大きい可燃性冷媒であり、
前記室内機は床置形であり、
前記室内機は、送風ファンと、前記室内空間の空気を吸い込む吸込口と、吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有しており
前記制御部は、前記冷媒の漏洩を検知したときに所定の爆発防止のための動作をさせる空気調和装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点A1]
本件発明1においては、「室内機」が「送風ファンと、筐体の下部から前記室内空間の空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口よりも上方に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有して」いるのに対して、甲1発明Aにおいては、「一体型空気調和機の本体1」が、「送風機8と、前記室内空間の空気を吸い込む吸入グリル部3と、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12と、前記外箱開口部12よりも上方に設けられ、前記吸入グリル部3から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出グリル部4と、を有して」いるものであり、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に外箱開口部12が設けられているものの、外箱開口部12が室内空間の空気を吸い込む吸込口であるかは不明である点。
[相違点A2]
本件発明1においては、「制御部」が、「前記冷媒の漏洩を検知したときに前記送風ファンを運転させる」ものであるのに対して、甲1発明Aにおいては、「漏れた冷媒ガスが下方に流出したことを前記外箱開口部12に近接されたガスセンサ13が検知したときに、報知するとともに爆発防止の手段を講じる」ものであり、制御部が冷媒の漏洩を検知したときに所定の爆発防止ための動作をさせるものといえるものの、冷媒の漏洩を検知したときに送風ファンを運転させるものであるかは不明である点。
[相違点A3]
本件発明1においては、「前記冷凍サイクルにおける前記冷媒の封入量をM[kg]とし、前記冷媒の燃焼下限濃度をLFL[kg/m3]とし、前記室内空間の床面積をA[m2]とし、前記室内空間の床面からの前記吹出口の高さをHo[m]としたとき、
前記封入量M、前記燃焼下限濃度LFL、前記床面積A及び前記高さHoは、
M<LFL×A×Ho
の関係を満たす」ものであるのに対して、甲1発明Aにおいては、そのような特定はされていない点。
(2)検討
本件発明1の課題は、「封入冷媒量が過多の場合には、室内機送風ファンによって漏洩冷媒と室内空気とを攪拌しても、室内空間に可燃濃度域が形成されてしまう可能性があるという問題点」を解決することであり、「万一、可燃性冷媒が漏洩したとしても、室内空間に可燃濃度域が形成されてしまうことを抑制できる空気調和装置を提供することを目的とする。」というものである。
そこで、本件発明1の課題と最も関連性がある相違点A1及びA3について検討する。
上記相違点A1及びA3に係る本件発明1の発明特定事項は、空気調和装置において、「送風ファンと、筐体の下部から室内空間の空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口よりも上方に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有し」、前記送風ファンの運転により漏洩した冷媒を拡散させることができる床置形の室内機(以下、単に「床置形の室内機」という。)を用いることを前提として、「M<LFL×A×Ho」(ここで、「M」は冷媒の封入量、「LFL」は冷媒の燃焼下限濃度、「A」は室内空間の床面積、「Ho」は室内空間の床面からの前記吹出口の高さである。)という関係(この関係の式を、以下、「本件発明の関係式」という。)を満たすというものであり、これにより、可燃性冷媒が漏洩したとしても、室内空間に可燃濃度域が形成されてしまうことを抑制できるものである。
この相違点A1とA3を併せたものに係る本件発明1の発明特定事項が、甲2ないし6に記載ないし示唆されているか以下に検討する。
・甲2には、上記第4の2によると、可燃性冷媒の搭載上限量Mが、ISO817の規格に従うと、「M=2.5・(LFL)5/4・ho・A1/2」(ここで、LFLは燃焼下限界、hoは漏洩口の高さ、Aは床面積である。)の関係式で規定される旨が記載されており、これより、可燃性冷媒の搭載量を同じくMとした場合に、「M≦2.5・(LFL)5/4・ho・A1/2」という関係式(以下、「甲2の関係式」という。)を導くことができる。
しかしながら、甲2の関係式は、床置形の室内機を前提としたものではなく、しかも、本件発明の関係式とは異なっている。
・甲3には、上記第4の3によると、可燃性冷媒の許容冷媒充填量mmaxを「mmax=2/3・LFL・A・h」(ここで、LFLは可燃下限、Aは床面積、hは有効高さである。)とする旨が記載されており、これより、可燃性冷媒の充填量をmとした場合に、「m≦2/3・LFL・A・h」の関係式(以下、「甲3の関係式」という。)を導くことができる。
しかしながら、甲3の関係式は、床置形の室内機を前提としたものではなく、しかも、甲3の関係式におけるhは有効高さであって、床置形の室内機における室内空間の床面からの吹出口の高さとは異なるから、本件発明の関係式とは異なっている。
ところで、有効高さhが、甲3の図3に示される様に放出高さhoより小さい値となることが示されているとしても、有効高さhを放出高さhoにする動機付けはない。
・甲4には、上記第4の4(特に、段落【0003】)によると、空気調和装置の冷媒充填量Mを「M=2.55×(LFL)^1.25×H×A^0.5」(ここで、LFLは下限燃焼限界、Hは設置高さ、Aは床面積である。)の関係(この関係の式を、以下、「甲4の関係式」という。)を満たすようにすることが好ましい旨が記載されている。
しかしながら、甲4の関係式は、床置形の室内機を前提としたものではなく、しかも、本件発明の関係式とは異なっている。
・甲5の上記第4の5においては、微燃性冷媒の冷媒量に関する記載があるものの、床置形の室内機を前提とするものではなく、微燃性冷媒の冷媒量を規定する関係式は記載も示唆もされていない。
・甲6の上記第4の6においては、微燃性冷媒の冷媒量に関する記載があるものの、床置形の室内機を前提とするものではなく、微燃性冷媒の冷媒量を規定する関係式は記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2ないし6には、空気調和装置において、床置形の室内機を前提として、可燃性冷媒の冷媒量を本件発明の関係式を満たすようにする技術は記載も示唆もされていないから、甲1発明Aにおいて、甲2ないし6に係る技術を適用して、上記相違点A1及びA3に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たとすることはできない。
そして、本件発明1は、「万一、可燃性冷媒が漏洩したとしても、室内空間に可燃濃度域が形成されてしまうことを抑制できる。」(【0014】)という効果を奏するものである。
(3)小括
したがって、本件発明1は、上記相違点A2について検討するまでもなく、甲1発明A及び甲2ないし6に係る技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものである。
したがって、上記1の検討を踏まえると、本件発明2は、甲1発明A及び甲2ないし6に係る技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものである。
そして、甲7には、上記第4の7によると、R32からなる可燃性冷媒を採用した空気調和機において、室外機と室内機1との間で冷媒を循環させるための一対の連絡配管10が、ケーシング2の左側板2aの下部に設けられた穴31を通して室内機1内部に導入されており、この連絡配管10は、熱交換器3の伝熱管6に接続されていることが記載されており、本件発明3において本件発明1に対して更に限定した事項に対応する技術が記載されているといえるものの、床置形の室内機を前提として、可燃性冷媒の冷媒量を本件発明の関係式を満たすようにする技術は記載も示唆もされていない。
したがって、上記1及び2の検討を踏まえると、本件発明3は、甲1発明A、甲2ないし6に係る技術及び甲7に係る技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 本件発明4について
(1)対比
本件発明4と甲1発明Bとを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「冷凍サイクル部5」は、前者の「冷凍サイクル」に相当し、以下同様に、「熱交換器6」は「室内熱交換器」に、「一体型空気調和機」は「空気調和装置」に、「空気より重い可燃性の冷媒ガス」は「大気圧下において空気よりも密度の大きい可燃性冷媒」に、「送風機8」は「送風ファン」に、それぞれ相当する。
・前者の「室内機」は、室外機と室内機に分離した空気調和装置における室内機に限らず、文言上、空気調和装置を構成する機器が室内空間に設置されたものを意味すると解せるから、後者の「一体型空気調和機の本体1」は、前者の「室内機」に相当する。
・後者の「一体型空気調和機の本体1は、床に置かれるものであり」は、前者の「室内機は床置形であり」に相当する。
・後者の「圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12」は、一体型空気調和機の本体1の外箱2の下部から室内空間の空気を吸い込むことになるから、前者の「筐体の下部から前記室内空間の空気を吸い込む吸込口」に相当する。
そうすると、後者の「前記一体型空気調和機の本体1は、送風機8と、圧縮機7近傍の底面または側壁の下部に設けられた外箱開口部12と、前記外箱開口部12よりも上方に設けられ、吸入グリル部3及び前記外箱開口部12から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出グリル部4と、を有しており」は、前者の「前記室内機は、送風ファンと、筐体の下部から前記室内空間の空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口よりも上方に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有しており」に相当する。
・後者の「前記送風機8の運転により、前記外箱開口部12より吸引される空気の流れが、漏れた冷媒ガスを合わせて、強制的に前記吹出グリル部4より機外に放出し、ガス濃度を希薄にする」は、前者の「前記送風ファンの運転により漏洩冷媒を希釈させる」に相当する。
したがって、両者は、
「冷媒を循環させる冷凍サイクルと、
少なくとも前記冷凍サイクルの室内熱交換器を収容し、室内空間に設置される室内機と、を有し、
前記冷媒は、大気圧下において空気よりも密度の大きい可燃性冷媒であり、
前記室内機は床置形であり、
前記室内機は、送風ファンと、筐体の下部から前記室内空間の空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口よりも上方に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記室内空間に吹き出す吹出口と、を有しており、
前記送風ファンの運転により漏洩冷媒を希釈させる空気調和装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点B1]
本件発明4においては、「前記冷凍サイクルにおける前記冷媒の封入量をM[kg]とし、前記冷媒の燃焼下限濃度をLFL[kg/m3]とし、前記室内空間の床面積をA[m2]とし、前記室内空間の床面からの前記吹出口の高さをHo[m]としたとき、
前記封入量M、前記燃焼下限濃度LFL、前記床面積A及び前記高さHoは、
M<LFL×A×Ho
の関係を満たす」ものであるのに対して、甲1発明Bにおいては、そのような特定はされていない点。
(2)検討
相違点B1について検討すると、上記1(2)で検討したとおり、甲2ないし6には、空気調和装置において、床置形の室内機を前提として、可燃性冷媒の冷媒量を本件発明の関係式を満たすようにする技術は記載も示唆もされていないから、甲1発明Bにおいて、甲2ないし6に係る技術を適用して、上記相違点B1に係る本件発明4の発明特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たとすることはできない。
そして、本件発明4は、「万一、可燃性冷媒が漏洩したとしても、室内空間に可燃濃度域が形成されてしまうことを抑制できる。」(【0014】)という効果を奏するものである。
(3)小括
したがって、本件発明4は、甲1発明B及び甲2ないし6に係る技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものである。
したがって、上記1ないし4の検討を踏まえると、本件発明5は、甲1発明A又は甲1発明B、甲2ないし6に係る技術並びに甲7に係る技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
6 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1ないし5のいずれかの発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものである。
したがって、上記1ないし5の検討を踏まえると、本件発明6は、甲1発明A又は甲1発明B、甲2ないし6に係る技術並びに甲7に係る技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
6 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700627