特許異議申立
2018-700618
包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びに包装用小袋レーザー印字体
- 審判番号
- 2018-700618
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-201214
- 登録番号
- 特許第6268873号(P6268873)
- 請求日
- 2018年07月26日
- 審決日
- 2019年02月14日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】結田 純次
- 【権利者代理人】竹林 則幸
- 【異議申立人】白澤 榮樹
- 審判長/審判官
- 審判長 渡邊 豊英
- 審判官 蓮井 雅之
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6268873号発明「包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びに包装用小袋レーザー印字体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6268873号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第6268873号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6268873号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成25年9月27日の出願であって、平成30年1月12日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報 平成30年1月31日発行)、その後、特許異議の申立て期間内である平成30年7月26日に特許異議申立人白澤榮樹(以下「申立人」という。)により請求項1~4に係る特許について特許異議の申立てがされ、平成30年9月19日付けで取消理由が通知され、平成30年11月19日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたものである。
なお、特許権者による訂正の請求について、申立人に意見を提出する機会を与えたが、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6268873号の明細書、特許請求の範囲及び図面を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所を下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「樹脂フィルム基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な下地白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、
樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく、視認側となる該基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面にのみレーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる包装用積層小袋材。」と記載されているのを、
「樹脂フィルム基材、絵柄印刷層と印刷用白色インキ下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、印刷層が絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、
樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく、視認側となる該樹脂フィルム基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面にのみレーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる包装用積層小袋材。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~4についても同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1または2に記載の包装用積層小袋材あるいは請求項3に記載の小袋に、YAGまたはYVO4レーザー光を樹脂フィルム基材側から照射することにより、炭化した白色インキの変色域が前記基材及び前記印刷用下地層の境界に広がり、レーザー印字画像を有するレーザー印字小袋体。」と記載されているのを、
「請求項1または2に記載の包装用積層小袋材あるいは請求項3に記載の小袋に、YAGまたはYVO4レーザー光を樹脂フィルム基材側から照射することにより、炭化した白色インキの変色域が前記樹脂フィルム基材及び前記印刷用白色インキ下地層の境界に広がり、レーザー印字画像を有するレーザー印字小袋体。」と訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0018】~【0020】及び【0056】の記載並びに【図1】及び【図2】を削除する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項1は、請求項1において、「印刷用下地層」を「印刷用白色インキ下地層」に訂正し(訂正事項1-1)、最初の「絵柄印刷層」の前に「印刷層が」を挿入し(訂正事項1-2)、「下地白色インキ」を「白色インキ」に訂正し(訂正事項1-3)、「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」を「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」に訂正し(訂正事項1-4)、「該基材」を「該樹脂フィルム基材」に訂正(訂正事項1-5)するものである。
訂正事項1-1、訂正事項1-3及び訂正事項1-5は、使用する用語を統一することによって、「印刷用下地層」が「印刷用白色インキ下地層」であることを、「下地白色インキ」が「白色インキ」であることを、「該基材」が「該樹脂フィルム基材」であることをそれぞれ明確にするための訂正である。
また、訂正事項1-2は、ふたつの領域を有するのが「印刷層」であることを、明確にするための訂正である。
さらに訂正事項1-4は、「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」という記載では、「該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度」及び「絵柄印刷層とのラミネート強度」がそれぞれいかなる部材とのラミネート強度を指しているのかが明確でなかったものを、当該部材がいずれもが「樹脂フィルム基材」であることを明確にしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項1は、用語を統一し、ふたつの領域が印刷層であることを明確にし、ラミネートの相手側を特定することにより、明瞭でない記載の釈明をするものであって、当該訂正により訂正前の請求項に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1のうち、訂正事項1-1、1-3及び1-5は、用語を統一するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項1-2は、本件特許明細書の「そして、本発明は、包装用積層小袋材及び包装用積層小袋において、以下の点によりレーザー印字を可能にしたものである。
1.基材層、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となる印刷用下地層とが重なりあった領域と印刷用下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、印刷用下地層は、レーザー光により印字可能な白色インキ層であり、印刷用下地層のみの領域をレーザー印字用領域とする包装用積層小袋材としたものである。・・・」(段落【0013】)との記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項1-4は、本件特許明細書の「本発明において、基材層は、その使用目的、用途等に応じた樹脂フィルムであって、且つ、印刷層を積層した際に、該印刷下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より幾分小さい任意の樹脂フィルムを使用することができる。・・・」(段落【0021】)、「・・・本発明において、印刷層は、それぞれ同じかまたは異なるインキからなる印刷層を、2層またはそれ以上積層した構成であってもよい。ここで、基材層と接する側の印刷層を形成する印刷下地インキは、該基材層との間のラミネート強度が、包装用積層小袋材を構成する印刷層中で最も弱くなるように、例えば、1.8~3.5N/15mmの範囲となるように、バインダ樹脂の種類、含有量、積層方法等を選択する。・・・」(段落【0033】)との記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
上記訂正事項2は、請求項4において、使用する用語を統一することによって、「前記基材」が「前記樹脂フィルム基材」であり、「前記印刷用下地層」が「前記印刷用白色インキ下地層」であること明確にするための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項2は、使用する用語を統一し、明瞭でない記載の釈明をするものであって、当該訂正により訂正前の請求項に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、使用する用語を統一し、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
上記訂正事項3は、明細書の段落【0018】~【0020】及び【0056】段落の記載並びに【図1】及び【図2】の記載が、本件発明1~4を正確に理解する妨げになっていることを解消するため、これらの記載を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3は、明細書中の記載及び図面を削除する訂正であって、当該訂正により訂正前の請求項に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3は、明細書中の記載及び図面を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)一群の請求項及び明細書の訂正に係る請求項について
訂正前の請求項2~4は、訂正前の請求項1を引用するものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものである。
また、訂正事項3に係る明細書及び図面の訂正は、請求項1~4について行われたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
3.小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1~4」という。また、本件発明1~4をまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
樹脂フィルム基材、絵柄印刷層と印刷用白色インキ下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、印刷層が絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する包装用積層小袋材において、
樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく、視認側となる該樹脂フィルム基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層ルム基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面にのみレーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる包装用積層小袋材。
【請求項2】
前記白色インキが、少なくともチタン酸化物を含む樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の包装用積層小袋材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の包装用積層小袋材を用いた小袋。
【請求項4】
請求項1または2に記載の包装用積層小袋材あるいは請求項3に記載の小袋に、YAGまたはYVO4レーザー光を樹脂フィルム基材側から照射することにより、炭化した白色インキの変色域が前記樹脂フィルム基材及び前記印刷用白色インキ下地層の境界に広がり、レーザー印字画像を有するレーザー印字小袋体。」
2.取消理由の概要
本件発明1~4に対して平成30年9月19日付けで通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
[理由1] 本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1)特許請求の範囲の請求項1~4で、用語が統一されていない。また、明細書に記載された用語との対応関係も不明りょうである。
「印刷用下地層」(請求項1、4)と「印刷用白色インキ下地層」(請求項1)と「印刷下地層」(段落【0043】等)
「下地白色インキ」(請求項1)と「白色インキ」(請求項2)
「基材」(請求項1、4)と「樹脂フィルム基材」(請求項1、4)と「基材層」(段落【0021】等)
(2)請求項1の「樹脂フィルム基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な下地白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する」の記載は、以下のア、イの点で、不明りょうで、包装用積層小袋材の層構造が不明である。(請求項1を引用する請求項2~4についても同様。)
ア (「印刷用白色インキ下地層」が「印刷下地層」と違う層を指す場合)「印刷用白色インキ下地層」と「印刷層」(絵柄印刷層と印刷下地層からなる)と関係(層構成や位置)が不明である。
イ 「絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な下地白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する」の記載が、どういう構成を特定しようとしているのかが不明である。
(3)請求項1の「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく、視認側となる該基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面にのみレーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる」の記載は、以下のア、イの点で、不明りょうで、どういう構成を特定しようとしているのかが不明である。(請求項1を引用する請求項2~4についても同様。)
ア 「該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度」、「絵柄印刷層とのラミネート強度」が、それぞれ相手側が特定されていないので、「該印刷用白色インキ下地層」とどの層とのラミネート強度、「絵柄印刷層」とどの層とのラミネート強度、を指しているかが不明である。
イ 「視認側となる該基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面にのみレーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる」の「該基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面」の記載について、「印刷用白色インキ下地層」が「印刷用下地層」と同じ層を指す場合は、「印刷用白色インキ下地層」は「絵柄印刷層」とともに「印刷層」を構成するから、「印刷用白色インキ下地層」は基材と印刷層との間にないといえるし、「印刷用白色インキ下地層」が「印刷用下地層」と違う層を指す場合は、「印刷用白色インキ下地層」は「印刷層」とは別の構成となるが、「印刷用白色インキ下地層」により絵柄印刷層が視認できなくなってしまうから、いずれの場合にも、当該記載は、不明りょうな記載である。
(4)請求項4の「前記基材及び前記印刷用下地層の境界」が、どの部分を指しているのかが不明である。
(5)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下のア、イの点で、本件発明1~4について当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
ア 本件発明1~4の「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」は、上記(3)で示したように不明りょうであり、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を正確に理解し、その実施ができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
イ 発明の詳細な説明には、本件発明1~4のレーザーによる印字のしくみが記載されておらず、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を正確に理解し、その実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
(6)図1、図2及び【0018】~【0020】には、図1及び図2に示される包装用積層小袋材が、「絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な下地白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する」要件を満たしている説明がされていないので、本件発明1~4の実施例とは認められず、当該記載は、当業者が本件発明1~4を正確に理解する妨げとなっている。
(7)本件特許明細書【0020】に「図3に示されるように、」とあるが、図3は願書に添付されていないので、当該記載は不明りょうである。
2 取消理由についての判断
(1) 理由1(特許法第36条第4項第1号及び同条第6項2号)について
ア 理由1の(1)について
本件訂正により、特許請求の範囲の請求項1~4で、「印刷用下地層」と「印刷用白色インキ下地層」は「印刷用白色インキ下地層」に統一され、「下地白色インキ」と「白色インキ」は「白色インキ」に統一され、「基材」と「樹脂フィルム基材」は「樹脂フィルム基材」に統一されたので、用語が統一されてないとの記載不備は解消された。
また、明細書の「印刷下地層」(段落【0043】等)について、段落【0043】には「(ラミネート強度)本発明の包装用積層小袋材において、基材層と印刷層との間のラミネート強度は・・・であり、且つ、印刷層とシーラント層との間のラミネート強度が基材層と印刷下地層との間のラミネート強度より大きい必要があり、・・・」と記載されており、この記載から、「印刷下地層」が、請求項1の「印刷用白色インキ下地層」と同じ層を指していることは、当業者は明りょうに理解できるものとなった。
また、「基材層」(段落【0021】等)については、段落【0026】には「本発明において、基材層を形成する樹脂フィルムとしては、・・・」と記載されており、段落【0021】には「(基材層)本発明において、基材層は、その使用目的、用途等に応じた樹脂フィルムであって、且つ、印刷層を積層した際に、該印刷下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より幾分小さい任意の樹脂フィルムを使用することができる。 ・・・」と記載されており、これらの記載から、「基材層」が、請求項1の「樹脂フィルム基材」の層を指していることは、当業者は明りょうに理解できるものとなった。
よって、理由1の(1)の記載不備は、解消された。
イ 理由1の(2)について
本件訂正により、請求項1の「樹脂フィルム基材、絵柄印刷層と印刷用下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な下地白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する」との記載は、「樹脂フィルム基材、絵柄印刷層と印刷用白色インキ下地層からなる印刷層及びシーラント層を備える包装用積層小袋材であって、印刷層が絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する」に訂正された。それによって、「印刷用白色インキ下地層」と「印刷下地層」が、同じ「印刷用白色インキ下地層」を指すことが明確になった。また、「絵柄印刷層とレーザー印字層となるレーザー光により印字可能な白色インキを用いた印刷用白色インキ下地層とが重なりあった領域と印刷用白色インキ下地層のみの領域を有する」のは、「印刷層」であることが明確になった。
よって、理由1の(2)の記載不備は解消された。
ウ 理由1の(3)について
本件訂正により、請求項1の「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく、視認側となる該樹脂フィルム基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面にのみレーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる」との記載は、「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく、視認側となる該樹脂フィルム基材と印刷層との間の印刷用白色インキ下地層の表面にのみレーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる」に訂正された。
それにより、「該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度」、「絵柄印刷層とのラミネート強度」のそれぞれの相手方が、「樹脂フィルム基材」であることが明確になった。
また、「印刷用白色インキ下地層」と「印刷用下地層」が、同じ「印刷用白色インキ下地層」を指すことが明確になったので、請求項1の印刷層は「絵柄印刷層と印刷用白色インキ下地層」からなっているものであり、「印刷用白色インキ下地層」は「印刷層」の一部であるから、「樹脂フィルム基材と印刷層との間」にあるのは「印刷用白色インキ下地層の表面」であることが明確になった。そして、この「印刷用白色インキ下地層の表面」にのみ「レーザーにより炭化したインキ成分が広がることによりレーザーによる印字変色域を形成できる」ことが明確になった。
よって、理由1の(3)の記載不備は、解消された。
エ 理由1の(4)について
本件訂正により、請求項4の「前記樹脂基材及び前記印刷用下地層の境界」との記載は、「前記樹脂フィルム基材及び前記印刷用白色インキ下地層の境界」に訂正された。
上記「前記樹脂フィルム基材及び前記印刷用白色インキ下地層の境界」との記載は、印刷層において、「印刷用白色インキ下地層のみの領域」、すなわち「樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とが直接接している」部分において、「樹脂フィルム基材及び印刷用白色インキ下地層」の間、言い換えれば、印刷用白色インキ下地層の表面の部分、を意味していることは、当業者に明確に理解できるものとなった。
よって、理由1の(4)の記載不備は解消された。
オ 理由1の(5)について
本件訂正により、本件発明1~4の「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」との記載は、「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」に訂正された。
本願明細書の段落【0021】の「(基材層)
本発明において、基材層は、その使用目的、用途等に応じた樹脂フィルムであって、且つ、印刷層を積層した際に、該印刷下地層とのラミネート強度が絵柄印刷層とのラミネート強度より幾分小さい任意の樹脂フィルムを使用することができる。・・・」との記載、段落【0029】~【0030】の「本発明の印刷下地層の白色インキを、必要に応じて慣用の溶剤で希釈し、基材層上に印刷または塗布することにより、印刷層を形成することができる。・・・
インキを構成するバインダ樹脂としては、従来公知のものであって、基材層上に積層した際に、該基材層とのラミネート強度が比較的小さい、1.8~3.5N/15mmとなる任意のバインダ樹脂を使用することができる。
具体的には、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。・・・」との記載、及び段落【0033】の「本発明において、印刷層は、それぞれ同じかまたは異なるインキからなる印刷層を、2層またはそれ以上積層した構成であってもよい。ここで、基材層と接する側の印刷層を形成する印刷下地インキは、該基材層との間のラミネート強度が、包装用積層小袋材を構成する印刷層中で最も弱くなるように、例えば、1.8~3.5N/15mmの範囲となるように、バインダ樹脂の種類、含有量、積層方法等を選択する。・・・」との記載によれば、発明の詳細な説明には、本件発明1~4の「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」について、当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (なお、取消理由通知で指摘した、明細書の段落【0041】~【0044】や段落【0050】~【0052】の記載は、印刷層とシーラント層とのラミネート強度等に関する記載であるところ、同記載は、本件訂正により訂正された本件発明1~4の「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さく」なる記載とは無関係なものとなった。)
また、本件発明1~4のレーザーによる印字のしくみについては、本願明細書の段落【0045】~【0047】の「(レーザー光による印字)
本発明において、印字は、YAG(イットリウム(Y)・アルミニウム(A)・ガーネット(G))レーザー光線(波長=1.064μm)、または、YVO4(イットリウム・バナデート)レーザー光線(波長=1.064μm)を用いて行うことが好ましい。・・・
これらのレーザーを、包装用積層小袋材の基材層側から照射することにより、包装用積層小袋材において低出力で、フィルムに与えるダメージを最小限に抑えつつ、印刷層のインキ成分をガス化及び炭化させて、基材層と印刷層との間に変色域を形成し、印刷層表面に、レーザー印字画像を効率よく形成することができるものが得られる。
そして、レーザー印字画像が、白色インキの印刷下地層表面に形成されることにより、基材層側からの視認性に優れたものが得られる。
本発明において、このような印字を行うパルス条件としては、例えば、YVO4レーザー機(キーエンス製MD-V9600)にて平均出力0.8~5W、より好ましくは2~4W、Qスイッチ周波数10~30KHz、スキャンスピード300~4000mm/s、より好ましくは1500~2500mm/sのパルス条件が使用される。この条件下で印字を行うことにより、レーザー印字用多層積層フィルムに穴をあけることなく、高速印字が可能であり、且つ、明瞭な印字画像が得られる。
(レーザー光による印字体)
本発明のレーザー印字用多層積層フィルムへの印字工程において、レーザーの平均出力を低く設定しても、または、スキャンスピードを速く設定しても、鮮明な印字画像、例えば太くて明瞭な文字を印字することができる。
本発明の印字体において、レーザーのスポット照射により、基材層と印刷層との間に形成される空隙の直径は、望ましくは40μm~1mm、より好ましくは400~700μmである。この空隙に炭化したインキ成分が広がって、印刷下地層の白色インキを背景とすることで鮮明な印字画像が得られる。空隙の直径がこれよりも小さいと、印字画像の欠損や、線幅の細りが発生し、視認性を欠く。逆にこれよりも大きいと、画像がつぶれる等のため好ましくない。・・・」との記載、及び、レーザー印字がインキ成分をガス化及び炭化させて印字すること、酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物を主成分とする白色インキを使用した場合にガス化及び炭化するインキ成分が、有機化合物であるバインダ樹脂であることは、特許権者が提出した参考資料1(特開2010-47681号公報、段落【0015】参照)にも記載されているとおり、当業者の技術常識であることを踏まえれば、発明の詳細な説明には、本件発明1~4のレーザーによる印字のしくみについて、当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
よって、理由1の(5)の記載不備は、解消された。
カ 理由1の(6)について
本件訂正により、段落【0018】~【0020】の記載、図1及び図2は削除されたので、理由1の(6)の記載不備は、解消された。
キ 理由1の(7)について
本件訂正により、段落【0020】の記載は削除されたので、理由1の(7)の記載不備は、解消された。
ク 小括
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~4について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
また、本件発明1~4に係る請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
よって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第113条第4号に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)[理由2]特許法第29条第1項第3号
本件発明1~4は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)[理由3]特許法第29条第2項
本件発明1~4は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
以下、甲第1号証等を、以下「甲1」等という。また、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項を、以下それぞれ、「甲1発明」、「甲2記載事項」という。
<刊行物等一覧>
甲1:特開2013-146880号公報
甲2:特許第4905612号公報
[理由2]
本件発明1~4は、甲1発明である。
[理由3]
本件発明1~4は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に想到し得た発明である。
2 上記特許異議申立理由についての判断
(1)刊行物記載事項及び刊行物発明
ア 甲1
甲1(特に、【請求項1】、【0001】、【0004】、【0010】、【0012】~【0016】、【0020】、【0022】、【0027】~【0028】、図1~図4))には、以下の甲1発明が記載されている。
「表層、絵柄等の印刷層と白色インキ層からなる印刷層、及びシール層を備える、食品等を包装する包装フィルムを用いた包装体であって、
グラビア印刷などによる絵柄、文字情報の印刷層が形成され、さらにその上に白インキによる白色インキ層が形成されて見栄えを良くしている領域と、個別情報の印刷を読みやすくする為、レーザマーキング用に白色インキ層のみの領域を有すること、
白色インキ層の成分を黒色変化させることで白地に黒色のマーキングが可能であり、白色インキ層の一部にレーザーマーキング方法による印字を行うことができ、表層越しにマーキングを視認できること、
当該包装体を用いて筒状に成形された個別の包装体を製造すること、
白色の印刷層としては、酸化チタンを含有する白色インキを用いること、
YAGレーザ、YVO4レーザ等を表層側から照射することにより、レーザ光が表面の表層を透過して、白色のインキ層の成分を黒色変化させ、レーザーマーキングされた、包装体。」
イ 甲2
甲2(特に、【請求項1】、【請求項4】、【0001】、【0009】、【0016】、【0020】~【0021】、【0026】~【0029】、【0033】~【0034】、【0036】~【0038】、【0045】~【0047】、【0053】の[実施例1]、図1)には、以下の甲2記載事項が記載されている。
「基材フィルム、白色の下地層、レーザーマーキング用インキ層、透明乃至半透明の保護層の順序に積層されたレーザーマーキングフィルムをヒートシールすることにより、貼り合わせた袋状容器からなる包装体であって、
保護層7上のレーザーマーキング像を形成する部分以外の場所に、インキジェット印刷等により、加飾性を高めるための印刷像を形成することができること、
白色の下地層が、酸化チタンを含有するウレタン系樹脂から成ること、
レーザーマーキング用インキに使用される樹脂バインダーには、白色下地層との接着性を考慮して、下地層用のインキに使用される樹脂バインダーと同種のものを使用することがよく、実験例1には、ウレタン系樹脂を含有するレーザーマーク用インキを用いた、包装体。」
(2)[理由2](特許法第29条第1項第3号)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「包装体」、「表層、絵柄等の印刷層と白色インキ層からなる印刷層、及びシール層を備える、食品等を包装する包装フィルム」は、それぞれ、本件発明1の「包装用積層個袋体」、「樹脂フィルム基材、絵柄印刷層と印刷用白色インキ下地層からなる印刷層及びシーラント層」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さいのに対して、甲1発明では、表層と印刷層とのラミネート強度については不明である点。
この相違点1に関して、申立人は、特許異議申立書(11頁(ウ)相違点について)で、「甲第1号証には、樹脂フィルム基材に対する、それぞれ印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度、及び絵柄印刷層とのラミネート強度については記載されていないが、本件特許発明1(当審注:本件発明1)と同様に、甲第1号証においても、白色インキ下地層にのみレーザーマーキングによる印字がなされ、当該印字が視認されることが記載されている以上、本件特許発明1と同様のラミネート強度を有するものと推認される。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証記載の発明と格別相違しない。」と主張している。
しかしながら、樹脂フィルム基材と印刷層とのラミネート強度については、本件特許明細書段落【0021】~【0033】に記載されているように、樹脂フィルム基材の表面処理や印刷層のインキを構成するバインダ樹脂の選択等によって調整が可能であるが、甲1には、樹脂フィルム基材と印刷層とのラミネート強度について、何ら記載されておらず、また、申立人は、なぜ推認されるのかについて具体的な理由を示していない。ゆえに、甲1において、「白色インキ下地層にのみレーザーマーキングによる印字がなされ、当該印字が視認されること」が記載されているからといって、「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さい」を示すとはただちにはいえない。したがって、請求人の主張は採用できない。
よって、上記相違点1は実質的なものであり、本件発明1は、甲1発明ではない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲1発明ではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1~4は、甲1発明ではない。
よって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号には該当せず、特許法第113条第2号に該当せず、理由2によっては、取り消されるべきものとすることはできない。
(3)[理由3](特許法第29条第2項)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1で相違する。
上記相違点1について検討する。
甲1発明は、「読みやすい表示をおこない、年齢を重ねた人でも食品の情報が分かりやすい表示による日付、製造者記号などを印字する包装フィルムへのレーザマーキング方法、及びレーザマーキングされた包装体を提供すること」(甲1【0004】)を課題とするもので、甲1には、「樹脂フィルム基材と印刷層を積層した際に、該樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層とのラミネート強度が該樹脂フィルム基材と絵柄印刷層とのラミネート強度より小さい」点は、記載されていないし示唆もない。また、甲2にも、その点は記載されていないし、示唆もない。
一方、本件発明1は、「レーザー照射により変色する特殊インキを用いることなく、安価な材料からなり、製造が容易であり、印字位置の変更が容易であって、かつ、ベースとなるフィルムにダメージを与えない程度の低出力のレーザーを照射することにより、適当な太さを有し読み取り易い印字線が得られる、付加情報を適切かつ正確に、任意の位置にかつ鮮明に印字し、視認性を向上させた包装用積層小袋材及びそれを用いた小袋並びに印字体を提供すること」(本件特許明細書【0010】)を課題とするもので、相違点1に係る構成を有することにより、レーザーにより樹脂フィルム基材と印刷用白色インキ下地層との間で若干の剥離が生じることで、「本発明は、包装体の印刷時の下地として普通に用いられる白色インキを、付加情報をレーザー印字する印刷層を形成するための下地背景層として及び絵柄印刷層の下地層としても用いることができ、安価な材料から包装用小袋を製造することができる。」(本件特許明細書【0014】)、「下地としての白色インキ下地とのコントラストにより基材層側からの視認性に優れたレーザー印字画像を鮮明に形成することができる。・・・本発明の印字体は、レーザー印字画像が、そのフィルム表面ではなく、内部、すなわち基材層と印刷層との間に施される。したがって、この画像は、耐摩耗性に優れることから擦れ等による消失を効果的に防止することができ、且つ、その付加情報の変更を防止することができる。」(本件特許明細書【0015】)及び「レーザーを、包装用積層小袋材の基材層側から照射することにより、包装用積層小袋材において低出力で、フィルムに与えるダメージを最小限に抑えつつ、印刷層のインキ成分をガス化及び炭化させて、基材層と印刷層との間に変色域を形成し、印刷層表面に、レーザー印字画像を効率よく形成することができるものが得られる。」(本件特許明細書【0045】)という作用効果を奏する。
したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1~4は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、特許法第113条第2号に該当せず、理由3によっては、取り消されるべきものとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-700618