特許異議申立
2018-700552
積層フィルム
- 審判番号
- 2018-700552
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-544593外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月10日
- 審決日
- 2019年04月09日
- 公報発行日
- 2019年07月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6256002号発明「積層フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6256002号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3-16〕について訂正することを認める。
特許第6256002号の請求項1、3~13、15及び16に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6256002号の請求項1~15に係る特許についての出願は、2013年9月24日(パリ条約による優先権主張 2012年10月17日 日本国、2013年7月5日 日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年12月15日に特許権の設定登録がされ、平成30年1月10日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年7月10日:特許異議申立人中野和子(以下「申立人」という。)による請求項1、3~13及び15に係る特許についての特許異議の申立て
平成30年8月30日付け:取消理由通知
平成30年10月29日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
平成30年12月5日:申立人による意見書の提出
平成31年1月18日付け:取消理由通知(決定の予告)
平成31年3月13日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
なお、平成31年3月13日の訂正の請求における訂正事項は、平成30年10月29日の訂正の請求における訂正事項に、実質的にすべて含まれるものであって、その平成30年10月29日の訂正の請求については、申立人に訂正の請求があった旨の通知を送付して意見書を提出する機会を与えているから、平成31年3月13日の訂正の請求については、特許法第120条に5第5項に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事情があるときに該当すると認められるため、申立人に意見書を提出する機会を与えなかった。
第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
平成31年3月13日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6256002号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、3~16について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
なお、平成30年10月29日の訂正の請求は、本件訂正請求がされたことにより、特許法第120条の5第7項の規定に従い、取り下げられたものとみなす。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「両面の表面粗さSRaが50nm以上3,000nm以下である、積層フィルム。」とあるのを、「両面の表面粗さSRaが50nm以上3,000nm以下であり、前記A層のガラス転移温度が130℃以上150℃以下である、積層フィルム。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3~15も同様に訂正する。)
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~2、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項2~3、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1、3~4のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1、3~4、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~6、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~7、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項7)
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~7のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~7、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項8)
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~9、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項9)
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~10、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項10)
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~11、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項11)
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1~11のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項1~11、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項12)
特許請求の範囲の請求項14に「請求項5~13のいずれかに記載の積層フィルム。」とあるのを、「請求項5~13、16のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する。
(訂正事項13)
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1~14のいずれかに記載の積層フィルム」とあるのを、「請求項1~14、16のいずれかに記載の積層フィルム」に訂正する。
(訂正事項14)
新たに、特許請求の範囲の請求項16として、「環状オレフィン系樹脂を主成分とするA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を主成分とするB層を有し、両面の表面粗さSRaが50nm以上3,000nm以下であり、120℃における貯蔵弾性率が101MPa以上3,000MPa以下であり、170℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である、積層フィルム。」を追加する。(請求項16の記載を引用する請求項3~5、7~15も同様に訂正する。)
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、環状オレフィン系樹脂を主成分とするA層について、「ガラス転移温度が130℃以上150℃以下である」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4及び本件特許明細書の段落【0037】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項14について
ア 訂正の目的
上記訂正事項14は、訂正前の請求項6において、請求項1~5を引用するものを請求項1のみ引用するものに限定するとともに、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項14は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項14は、訂正前の請求項6の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1または2を引用し、請求項4、6により引用されていることを踏まえて、訂正事項1及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、訂正前の請求項1~4、6の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項3について
ア 訂正の目的
上記訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1~3を引用し、請求項6により引用されていることを踏まえて、訂正事項1、訂正事項2及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3は、訂正前の請求項1~4、6の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(8)訂正事項4について
ア 訂正の目的
上記訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1、3~4を引用し、請求項6により引用されていることを踏まえて、訂正事項1~訂正事項3及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項4は、訂正前の請求項1、3~6の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項5について
ア 訂正の目的
上記訂正事項5は、訂正前の請求項7が請求項1~6を引用していることを踏まえて、訂正事項1~訂正事項4、訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項5は、訂正前の請求項1~7の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(10)訂正事項6について
ア 訂正の目的
上記訂正事項6は、訂正前の請求項8が請求項1~7を引用していることを踏まえて、訂正事項1~訂正事項5及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項6は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項6は、訂正前の請求項1~8の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(11)訂正事項7について
ア 訂正の目的
上記訂正事項7は、訂正前の請求項9が請求項1~7を引用していることを踏まえて、訂正事項1~訂正事項5及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項7は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項7は、訂正前の請求項1~7、9の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(12)訂正事項8について
ア 訂正の目的
上記訂正事項8は、訂正前の請求項10が請求項1~9を引用していることを踏まえて、訂正事項1~訂正事項7及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項8は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項8は、訂正前の請求項1~10の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(13)訂正事項9について
ア 訂正の目的
上記訂正事項9は、訂正前の請求項11が請求項1~10を引用することを踏まえて、訂正事項1~訂正事項8及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項9は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項9は、訂正前の請求項1~11の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(14)訂正事項10及び訂正事項11について
ア 訂正の目的
上記訂正事項10及び訂正事項11は、訂正前の請求項12及び13が請求項1~11を引用することを踏まえて、訂正事項1~訂正事項9及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項10及び訂正事項11は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項10及び訂正事項11は、訂正前の請求項1~13の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(15)訂正事項12について
ア 訂正の目的
上記訂正事項12は、訂正前の請求項14が請求項5~13を引用することを踏まえて、訂正事項1~訂正事項11及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項12は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項12は、訂正前の請求項1~14の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
請求項14に係る訂正事項1による訂正は、特許異議の申立てがされていない請求項について、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件について、検討する。
請求項14に係る発明は、「エチレン系共重合樹脂の密度が、0.84g/cm3以上0.86g/cm3以下である」ことを発明特定事項とするものであるが、以下の甲第1号証~甲第7号証には記載も示唆もされておらず、これらの証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、他に請求項14を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、請求項14に係る発明は、特許法第120条の5第9項の規定によって読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。
(16)訂正事項13について
ア 訂正の目的
上記訂正事項13は、訂正前の請求項15が請求項1~14を引用することを踏まえて、訂正事項1~訂正事項12及び訂正事項14に伴い引用関係を整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項13は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項13は、訂正前の請求項1~15の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(17)一群の請求項について
訂正前の請求項1、3~15は、当該請求項3~15が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正後の請求項16は、訂正前の請求項6において、請求項1を引用する記載を当該請求項1を引用しない記載とするものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1、3~16について請求されたものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、3~16〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~16に係る発明(以下「本件発明1~16」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
環状オレフィン系樹脂を主成分とするA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を主成分とするB層を有し、両面の表面粗さSRaが50nm以上3,000nm以下であり、前記A層のガラス転移温度が130℃以上150℃以下である、積層フィルム。
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂を主成分とするA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を主成分とするB層を有し、前記A層が、A層の全成分の合計を100質量%として、エチレン系共重合樹脂を15質量%以上40質量%以下含み、エチレン系共重合樹脂の密度が、0.84g/cm3以上0.86g/cm3以下である、積層フィルム。
【請求項3】
前記A層の両面に、B層を有する、請求項1~2、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記A層のガラス転移温度が130℃以上150℃以下である、請求項2~3、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記A層が、A層の全成分の合計を100質量%として、エチレン系共重合樹脂を15質量%以上40質量%以下含むことを特徴とする、請求項1、3~4、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
120℃における貯蔵弾性率が101MPa以上3,000MPa以下であり、170℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である、請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記B層の表面自由エネルギーが、25mN/m以上35mN/m以下である請求項1~6、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記B層が、ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、
さらに石油樹脂を含む請求項1~7、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記B層が、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、
該ポリエチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、又は、高密度ポリエチレンである、請求項1~7、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
ヘイズが65%以上90%以下である、請求項1~9、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項11】
色調L値が75以上100以下である、請求項1~10、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項12】
積層比(B層の合計厚み(μm)/A層の厚み(μm))が0.1以上0.15以下であり、フィルムの総厚みが40μm以上300μm以下である、請求項1~11、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項13】
積層比(B層の合計厚み(μm)/A層の厚み(μm))が0.25以上2以下であり、フィルムの総厚みが40μm以上300μm以下である、請求項1~11、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項14】
エチレン系共重合樹脂の密度が、0.84g/cm3以上0.86g/cm3以下である、請求項5~13、16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項15】
請求項1~14、16のいずれかに記載の積層フィルムを有する、包装用フィルム。
【請求項16】
環状オレフィン系樹脂を主成分とするA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を主成分とするB層を有し、両面の表面粗さSRaが50nm以上3,000nm以下であり、120℃における貯蔵弾性率が101MPa以上3,000MPa以下であり、170℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である、積層フィルム。」
第4 当審の判断
1 平成30年8月30日付け取消理由の概要
本件訂正前の請求項に対して通知した、平成30年8月30日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)本件請求項1、3、5、8~13、15に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
<刊行物>
甲第1号証:特開平11-77924号公報
甲第2号証:特開2010-209208号公報
甲第3号証:特開2010-77230号公報
甲第4号証:特開2001-106804号公報
甲第5号証:特開2012-153420号公報
甲第6号証:特表2005-535481号公報
甲第7号証:特開2003-326642号公報
2 平成30年8月30日付け取消理由についての判断
本件訂正後の請求項1は、実質的に本件訂正前の請求項1を引用する請求項4であるから、本件発明1は、平成30年8月30日付け取消理由通知において、実質的に取消理由を通知していない発明である。
また、本件訂正後の請求項16は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項6であるから、本件発明16は、当該取消理由において、実質的に取消理由を通知していない発明である。
そして、本件発明2~15は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本件発明2~15は、当該取消理由によっては、取り消すことはできない。
3 平成31年1月16日付け取消理由(決定の予告)における追加の取消理由について
平成31年1月16日付け取消理由(決定の予告)で通知した取消の対象となる請求項は、平成30年10月29日の訂正の請求が、特許法第120所の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされたことにより、平成31年1月16日付け取消理由(決定の予告)はその対象が存在しないものとなったことにより、理由のないものとなった。
4 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
前記2の取消理由においては、本件発明1(訂正前の請求項4)、本件発明6及び16(訂正前の請求項6)、並びに本件発明7(訂正前の請求項7)について取消理由を通知していない。
(1)本件発明1(訂正前の請求項4)について
ア 甲第1号証記載の事項及び発明について
(ア)甲第1号証記載の事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
A 「【請求項1】 環状オレフィン系樹脂40~90重量%とポリエチレン系樹脂10~60重量%とが配合された組成物からなる基材層(A)の両面に、エチレン系(共)重合体からなる表面層(B)が積層され、基材層(A)の厚さ(TA)が総厚さ(T0)の30~80%の範囲内にある、捻り包装用積層フィルム。」
B 「【0005】
【発明の目的】本発明は、捻り包装材料としてセロハンに代わり得る包装材料を提供することを目的としている。」
C 「【0009】本発明の積層フィルムにおいて基材層(A)は、環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂とからなる。本発明の積層フィルムの基材層(A)を形成する環状オレフィン系樹脂は、エチレンと式[I]または[II]で表される環状オレフィンとのランダム共重合体(環状オレフィンランダム共重合体)、式[I]または[II]で表される環状オレフィンの開環重合体または共重合体は、上記式[I]または[II]で表される環状オレフィンの開環(共)重合体の水素化物、または、上記(共)重合体のグラフト変性物等である。
【0010】本発明で使用される環状オレフィン系樹脂のうち、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体は、エチレンと、下記式[I]または[II]で表される環状オレフィンとを、好ましくはエチレン/環状オレフィン(モル比)で20~95/80~5で共重合させて得られる共重合体である。」
D 「【0015】本発明で使用することができる環状オレフィン系樹脂を形成する環状オレフィンの例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.22,7.09,14]-3-ヘプタデセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン誘導体などを挙げることができる。このような環状オレフィンは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0016】上記のような環状オレフィンはエチレンとランダムに共重合することにより環状オレフィン系ランダム共重合体を形成する。このような環状オレフィン系ランダム共重合体には、環状オレフィンおよびエチレンの他に、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクダデセンおよび1-エイコセン等の炭素数3~20のα-オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、3a,5,6,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン等のシクロオレフィン、1,4-ヘキサジエン、4-メチル-4-ヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等の非共役ジエン;ノルボルネン-2、5-クロロノルボルネン等のノルボルネン等が共重合していてもよい。」
E 「【0019】また環状オレフィン系樹脂層には、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、特定波長の光だけを吸収する染料、顔料、天然油、合成油、ワックスまたは可透光性の充填剤などの添加剤が含有されていてもよい。」
F 「【0021】また、上記のような環状オレフィン系樹脂についてサーマル・メカニカルアナライザーで測定した軟化温度(TMA)は通常は60℃以上、好ましくは70℃以上であり、ガラス転移点(Tg)は、通常は30℃以上、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70~230℃である。」
G 「【0027】このような環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂とからなる基材層(A)の厚さ(TA)は、通常は10~50μm、好ましくは15~30μmである。本発明の捻り包装用積層フィルムは、上記のような基材層(A)の両面にエチレン系(共)重合体からなる表面層(B)が積層されている。上記のような環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂とからなる層だけでは捻り包装性、即ち捻り包装した時に捻った形態がそのまま維持されるという特性は発現するが、この層単独でなる包装材料は、剛性が充分ではなく、例えば角張った食品等を捻り包装すると、角部でフィルムが裂けることがある。さらに、環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムは、耐溶剤性がそれほど高くないので包装材料表面への印刷が制限をうける。また、環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムには、スリップ剤、帯電防止剤を安定に配合してもその発現効果が低い傾向があるので、こうした環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムを用いて環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムを用いて実際に捻り包装を行おうとしても、こうしたフィルムは包装装置内を流れにくくなる。
【0028】本発明では、上記のような環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムを捻り包装に使用するに際して、この環状オレフィン系樹脂を主成分とする基材層(A)の両面にエチレン系(共)重合体からなる表面層(B)を積層することにより、捻り包装用フィルムとしてセロハンに匹敵する特性を得ているのである。
【0029】ここで、表面層(B)を形成する樹脂は、エチレン系(共)重合体であり、エチレンの単独重合体、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体を使用することができるが、特に本発明においては密度が通常は0.870~0.945g/cm3、好ましくは0.900~0.940g/cm3の範囲内にあり、190℃におけるメルトインデックスが通常は0.1~30g/10分、好ましくは0.5~10g/10分の範囲内にあるエチレン系(共)重合体が好適に使用される。さらに、こうしたエチレン系(共)重合体の中でも、密度が0.870~0.945g/cm3、好ましくは0.920~0.940g/cm3の範囲内にあり、190℃におけるメルトインデックスが0.1~30g/10分、好ましくは0.5~10g/10分の範囲内にある線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用することが特に好ましい。このようなエチレン系(共)重合体で形成される表面層(B)は、基材層(A)の両面に形成されるが、両面に形成される表面層(B)は同一の樹脂で形成することを特に必要とするものではないが、表面層を形成する樹脂が異なる場合、フィルムがカールすることが多く、従って、本発明においては、表面層(B)は同一の樹脂で形成することが好ましい。
【0030】この表面層(B)を形成するエチレン系(共)重合体中には、スリップ剤および帯電防止剤、さらに必要によりアンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、防曇剤、核剤、滑剤、特定波長の光だけを吸収する染料、顔料、天然油、合成油、ワックスまたは可透光性の充填剤などの添加剤等を配合することが好ましい。このような添加剤は、エチレン系(共)重合体からなる表面層(B)には均一に、かつ安定に配合することができる。このような添加剤は、エチレン系(共)重合体中に通常は10重量%以下、好ましく7重量%以下の量で配合される。本発明の包装フィルムを用いて食品等を捻り包装する際に上記のような添加剤を表面層(B)を形成するエチレン系(共)重合体中に配合することにより、本発明のフィルムを安定して包装装置に供給し続けることができる。」
H 「【0033】本発明の捻り包装用積層フィルムにおいて、上記表面層(B)のそれぞれの厚さ(TB,TB) は、通常は1~30μm、好ましくは5~15μmの範囲内にある。そして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(B)の3層構造を有する本発明の捻り包装用積層フィルムの全体の厚さ(T0)は通常は20~60μm、好ましくは25~40μmの範囲内にある。こうした本発明の捻り包装用積層フィルムの全厚さ(T0)中(100%)で、基材層(A)の占める厚さ(TA)は、通常は30~80%、好ましくは50~70%であり、さらに好ましくは50~60%であり、従って、それぞれの表面層(B)の占める厚さ(TB,TB)は、通常は20~70%、好ましくは30~50%、さらに好ましくは40~50%である。本発明の積層フィルム中における基材層(A)の占める厚さ(TA) の割合が上記範囲を逸脱して大きいと、必然的に表面層(B)の占める厚さ(TB,TB) の割合が小さくなり、セロハンに匹敵する強度が得られないことがある。また、積層フィルム中における基材層(A)の占める厚さ(TA) の割合が上記範囲を逸脱して小さいと、必然的に表面層(B)の占める厚さ(TB,TB) の割合が大きくなり、捻り包装性が低くなり、捻り包装したときの捻った状態が維持されないことがある。」
I 「【0049】
【実施例1】上記のフィルム成形方法及びフィルム物性評価方法に従い、積層フィルムの成形と各評価を行った。
【0050】結果を表1に示す。以下に本発明の実施例での樹脂の種類及びフィルム構成を示す。
基材層(A)形成樹脂:
環状オレフィン系樹脂(Ac)
(Ac-1)市販のエチレン-環状オレフィンランダム共重合体、
MFR(at260℃):40g/10分、ガラス転移温度:80℃
ポリエチレン系樹脂(Ap)
(Ap-1)市販の線状低密度ポリエチレン樹脂、
MFR(at190℃):2.1g/10分、密度:0.940g/cm3
配合比率:
(Ac-1)80重量%
(Ap-1)20重量%
表面層(B)形成樹脂:
線状低密度ポリエチレン樹脂(Bp)
(Bp-1)市販の線状低密度ポリエチレン樹脂、
MFR(at190℃):2.1g/10分、密度:0.940g/cm3
表面層形成樹脂への添加剤(Ba)
(Ba-1)市販のスリップ、アンチブロッキングマスターバッチ
(Ba-2)市販の静防剤マスターバッチ
配合比率:
(Bp-1)95重量%、
(Ba-1)2重量%、
(Ba-2)3重量%フィルム構成:」
(イ)甲第1号証記載の発明
甲第1号証の上記記載事項を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「環状オレフィン系樹脂40~90重量%とポリエチレン系樹脂10~60重量%とが配合された組成物からなる基材層(A)の両面に、エチレン系(共)重合体からなる表面層(B)が積層され、
基材層(A)は、ガラス転移点(Tg)が、70~230℃であり、
環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂とからなり、エチレン/環状オレフィン(モル比)で20~95/80~5で共重合させて得られる共重合体であり、
表面層(B)を形成する樹脂は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、
積層フィルム中基材層(A)の占める厚さ(TA)が、30~80%である
包装用積層フィルム。」
イ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比するに、甲1発明の「環状オレフィン系樹脂40~90重量%とポリエチレン系樹脂10~60重量%とが配合された組成物からなる基材層(A)」は、本件発明1の「環状オレフィン系樹脂を主成分とするA層」に相当し、同様に、「線状低密度ポリエチレン(LLDPE)であ」る「エチレン系(共)重合体からなる表面層(B)」は「ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を主成分とするB層」に、「包装用積層フィルム」は「積層フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「環状オレフィン系樹脂を主成分とするA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を主成分とするB層を有する、積層フィルム。」
<相違点1>
本件発明1は、「両面の表面粗さSRaが50nm以上3,000nm以下である」のに対して、甲1発明は、表面粗さが不明である点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記A層のガラス転移温度が130℃以上150℃以下である」のに対して、甲1発明は、基材層(A)のガラス転移温度が不明である点。
ウ 判断
そこで、相違点について以下検討する。
<相違点1について>
甲第2号証(【0019】)には、折りシワの抑制、熱プレス時の圧力のばらつきや接着剤のにじみ出しの観点から、離型層表面を三次元中心面平均粗さSRaを0.3~10μmとすることが記載されており、甲第3号証(【0031】)には、フィルムのしわの発生、蛇行及び巻きズレの観点から、フィルムの平均表面粗さSRaを0.3~0.11μmとすることが記載されており、甲第4号証(【0010】)には、フィルムとフィルムのブロッキングの観点から、フィルムの表裏両面の中心線粗さRaを0.05~0.3μmとすることが記載されている。
そして、甲第1号証の【0030】、【0049】~【0050】の【実施例1】には、アンチブロッキング剤を用いることが記載されているところ、甲1発明の積層フィルムにおいて、折りシワ、熱プレス時の圧力のばらつきや接着剤のにじみ出し、しわの発生、蛇行、巻きズレ、フィルムとフィルムのブロッキングを防止することは当然の課題であるから、上記甲第2~4号証記載の事項を適用して、上記相違点1に係る本件発明1の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点2について>
甲第1号証の【0021】には、環状オレフィン系樹脂について、「ガラス転移点(Tg)は、通常は30℃以上、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70~230℃である。」と記載されており、実施例において80℃のものが記載されている(【0050】)。
また、甲第5号証には、「また、前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)のガラス転移点(Tg)は、得られる蓋材の耐熱性及び高剛性の点から100℃以上であることが好ましく、共押出積層法での製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点からは、Tgが200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは105℃~180℃である。」(【0016】)及び「(実施例1)
樹脂層(A)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:145℃;以下、「COC(1)」という。〕を用いた。」(【0053】)の記載があるが、飲料やゼリーなどの液体充填容器の口を密封する蓋材に関するものであり(【0001】)、機能性樹脂層の転写に用いることは記載されていない。
一方、本件特許明細書には、「本発明の積層フィルムのA層は、加工工程での寸法安定性を良好とする点、および回路部材等へ適用する際のプレス工程での過度の変形を抑制する点から、ガラス転移温度が130℃以上であることが好ましく、130℃以上180℃以下であることがより好ましく、130℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。A層のガラス転移温度が130℃未満であると、コーティング、ラミネート、印刷、蒸着といった加工工程で、本発明の積層フィルムの寸法変化抑制が不十分となり、加工したフィルムの平面性等が不十分となる場合がある。また、A層のガラス転移温度が150℃を超える場合、本発明の積層フィルムの成型性が不十分となったり、環状オレフィン系樹脂を構成する鎖状オレフィン由来成分が少なくなることにより、B層の主成分であるポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂との密着点が減少し、A層/B層の相間密着性が不十分になる場合がある。」(【0037】)と記載されている。
そうすると、甲第1号証には、ガラス転移点(Tg)が70~230℃である環状オレフィン系樹脂90重量%とポリエチレン系樹脂10重量%とが配合された組成物からなる基材層(A)を用いることの示唆があるといえるが、甲第5号証を参照しても、甲1発明において、加工工程での寸法安定性を良好とする点、および回路部材等へ適用する際のプレス工程での過度の変形を抑制する点から、ガラス転移温度を130℃以上150℃以下とする動機はない。
そして、甲第2号証~甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証には、ガラス転移温度に関する記載はない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項の規定により、本件発明1に係る特許を取り消すべきであるとはいえない。
(2)本件発明6及び本件発明16(訂正前の請求項6)について
申立人は、平成30年12月5日の意見書において、請求項6及び請求項16に係る発明は、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである旨主張する。
本件発明6については、上記2において検討済みであるので、以下、本件発明16について、検討する。
ア 対比
本件発明16と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明16は、「両面の表面粗さSRaが50nm以上3,000nm以下である」のに対して、甲1発明は、表面粗さが不明である点。
<相違点4>
本件発明16は、「120℃における貯蔵弾性率が101MPa以上3,000MPa以下であり、170℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である」のに対して、甲1発明は、貯蔵弾性率が不明である点。
イ 判断
そこで、相違点について以下検討する。
<相違点3について>
相違点3は、上記(1)イの<相違点1>と実質的に同じであるから、上記(1)ウの<相違点1について>と同じ理由で、甲1発明の積層フィルムにおいて、甲第2~4号証記載の事項を適用して、上記相違点1に係る本件発明16の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点4について>
本件特許明細書には、「本発明の積層フィルムは、加工適性、成型性の観点から、120℃における貯蔵弾性率が101MPa以上3,000MPa以下であることが好ましい。120℃における貯蔵弾性率を101MPa以上とすることで、例えば機能性樹脂層をコーティング後に乾燥したり、金属蒸着加工を行う工程において、フィルムの変形等を生じさせず、良好な加工適性が得られる。特に、コーティング後の乾燥温度を高温に設定することで、乾燥時のライン速度を速くすることができ、加工コストを低減できるメリットを有する。120℃における貯蔵弾性率は高いほど寸法安定性が優れるため好ましいが、3,000MPaより高くしようとすると成型性が低下してしまう場合がある。」(【0129】)及び「本発明の積層フィルムは、成型性の観点から170℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であることが好ましい。170℃における貯蔵弾性率が100MPa以下とすると、少なくとも成型温度を170℃以上に設定することで優れた成型性を達成できるため好ましい。」(【0132】)と記載されている。
そして、甲第1号証~甲第7号証のいずれにも、貯蔵弾性率に関する記載はないから、甲1発明において、上記相違点4に係る本件発明16の事項とすることを当業者が容易に想到し得たとする理由はない。
申立人は、本件特許明細書の【0134】に「本発明の積層フィルムにおいて、170℃における貯蔵弾性率を上記100MPa以下とする方法としては、A層のガラス転移温度を調整する方法などが挙げられる。」と記載されているから、甲1発明において、甲第5号証の実施例2のガラス転移温度145℃の樹脂層(A)用樹脂(COC(1))を適用することで、相違点4に係る本件発明16の事項を満たす蓋然性が高い旨主張する。
しかし、上記(1)ウ<相違点2について>で検討したのと同様に、甲第5号証は、飲料やゼリーなどの液体充填容器の口を密封する蓋材に関するものであり(【0001】)、機能性樹脂層の転写に用いることは記載されておらず、甲1発明において、加工適性、成型性の観点、貯蔵弾性率を相違点4に係る本件発明16の範囲とする動機はない。
(3)本件発明7(訂正前の請求項7)について
本件発明7は、本件発明1、本件発明2又は本件発明16の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであって、本件発明1又は本件発明16は、上記(1)又は(2)で検討したとおり甲1発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえず、本件発明2は、取り消すべき理由はないのだから、本件発明7に係る特許は、取り消すべきであるとはいえない。
さらに、申立人は、甲1発明の表面層(B)の表面自由エネルギーが、25mN/m以上35mN/m以下である蓋然性が高い旨主張する。
しかし、甲第1号証の【0030】に表面層(B)に「滑剤」を用いることが記載されており、滑剤を用いることで表面自由エネルギーが低下するすることが技術常識であるとしても、甲1発明の表面層(B)に「滑剤」を用いた場合の表面自由エネルギーがどの程度のものであるかは不明であるから、申立人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1、3~13、15及び16に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明1、3~13、15及び16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700552