特許異議申立
2018-700446
粘着剤組成物及び光学部材表面保護フィルム
- 審判番号
- 2018-700446
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-037407外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年06月04日
- 審決日
- 2019年08月05日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本カーバイド工業株式会社
- 【権利者代理人】中島 淳
- 【権利者代理人】加藤 和詳
- 【権利者代理人】福田 浩志
- 【異議申立人】綜研化学 株式会社
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6246020号発明「粘着剤組成物及び光学部材表面保護フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6246020号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6246020号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6246020号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成26年2月27日に特願2014-37407号として特許出願されたものであって、平成29年11月24日に特許権の設定登録がされ、同年12月13日にその特許公報が発行され、その請求項1~5に係る発明の特許に対し、平成30年6月4日に綜研化学株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 8月29日付け 取消理由通知
同年10月30日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年11月21日付け 訂正請求があった旨の通知
平成31年 2月18日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月 2日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 4月23日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、特許異議申立人は、平成30年11月21日付け及び平成31年4月23日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。
第2 訂正の適否
1.訂正請求の趣旨及び内容
平成30年10月30日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされるところ、
平成31年4月2日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6246020号の特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1において「ポリイソシアネート化合物である架橋剤と、を含み、
前記架橋剤に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物の質量比(ジメチルポリシロキサン化合物/架橋剤)が、1/100~20/100であり、」とあるのを
訂正後の請求項1において「ポリイソシアネート化合物である架橋剤と、を含み、
前記(メタ)アクリル共重合体が、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位及び前記水酸基を有する単量体に由来する構造単位を有し、さらに、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有し、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、
前記架橋剤に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物の質量比(ジメチルポリシロキサン化合物/架橋剤)が、1/100~20/100であり、」に訂正するとともに、
訂正前の請求項1において「前記(メタ)アクリル共重合体の酸価が、0を超えて1.0以下である、粘着剤組成物。」とあるのを
訂正後の請求項1において「前記(メタ)アクリル共重合体の酸価が、0を超えて1.0以下である、粘着剤組成物。
〔一般式(1)において、Lは下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。〕
〔一般式(2a)及び(2b)中、R21~R24はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキレン基又は炭素数6~10のアリーレン基を示す。nは0~10の数を示し、mは1~10の数を示す。〕」に訂正する。
2.訂正事項1の適否
(1)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体」の範囲を「前記(メタ)アクリル共重合体が、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位及び前記水酸基を有する単量体に由来する構造単位を有し、さらに、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有し、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位を含」むものに限定するものであって、訂正後の請求項1を直接又は間接に引用する請求項2~5も同様に特許請求の範囲が減縮されることになる。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)拡張又は変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体」の範囲を「前記(メタ)アクリル共重合体が、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位及び前記水酸基を有する単量体に由来する構造単位を有し、さらに、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有し、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位を含」むものに限定することにより特許請求の範囲を減縮するものであって、訂正後の請求項1を直接又は間接に引用する請求項2~5についても同様に特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)新規事項の有無
本件特許明細書の段落0023には「特定(メタ)アクリル共重合体は、酸性基を有する第一の構造単位、及び水酸基を有する第二の構造単位を含む。」との記載があるから、訂正事項1の前段の「前記(メタ)アクリル共重合体が、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位及び前記水酸基を有する単量体に由来する構造単位を有し、」という事項の導入は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、
同段落0053には「特定(メタ)アクリル共重合体は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する第三の構造単位を1種単独で含んでいても2種以上含んでいてもよく、2種以上含んでいることが好ましい。特定(メタ)アクリル共重合体が第三の構造単位を2種含む場合、一方が炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であって、他方は炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましく、」との記載があるから、訂正事項1の中段の「さらに、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有し、」という事項の導入は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、
同段落0030には「一般式(1)におけるLで示される2価の連結基は、帯電防止性及び被着体に対する汚染性の観点から、下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基であることが好ましい。」との記載があり、同段落0024~0025には、その一般式(1)で表される構造単位の記載とともに「R1は水素原子又はメチル基を示す。」との記載があり、同段落0031~0032には、その一般式(2a)及び一般式(2b)で表される構造単位の記載とともに「一般式(2a)及び(2b)中、R21~R24はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキレン基又は炭素数6~10のアリーレン基を示す。nは0~10の数を示し、mは1~10の数を示す。」との記載があるから、訂正事項1の後段の「
〔一般式(1)において、Lは下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。〕
〔一般式(2a)及び(2b)中、R21~R24はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキレン基又は炭素数6~10のアリーレン基を示す。nは0~10の数を示し、mは1~10の数を示す。〕」という事項の導入は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、上記前段及び後段の事項を導入する訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(4)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~5について、その請求項2~5はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
3.訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項1による本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~5に係る発明(以下「本1発明」~「本5発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体と、
反応性基として水酸基を有するジメチルポリシロキサン化合物と、
ポリイソシアネート化合物である架橋剤と、を含み、
前記(メタ)アクリル共重合体が、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位及び前記水酸基を有する単量体に由来する構造単位を有し、さらに、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有し、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、
前記架橋剤に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物の質量比(ジメチルポリシロキサン化合物/架橋剤)が、1/100~20/100であり、
前記(メタ)アクリル共重合体の酸価が、0を超えて1.0以下である、粘着剤組成物。
〔一般式(1)において、Lは下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。〕
〔一般式(2a)及び(2b)中、R21~R24はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキレン基又は炭素数6~10のアリーレン基を示す。nは0~10の数を示し、mは1~10の数を示す。〕
【請求項2】前記(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して、前記ジメチルポリシロキサン化合物を0.01質量部~1質量部含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】前記(メタ)アクリル共重合体の官能基量に対する架橋剤の官能基量の当量比(架橋剤/(メタ)アクリル共重合体)が、0.1~1.5である、請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】光学部材表面保護フィルムに用いる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】基材と、
前記基材の上に設けられ、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物に由来する粘着剤層と、
を備える光学部材表面保護フィルム。」
第4 当審の判断
1.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
ア.平成30年8月29日付けの取消理由通知の概要
訂正前の請求項1~5に係る発明の特許に対して、平成30年8月29日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「理由1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである。
理由2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである。
記
…
1 刊行物
甲第1号証:特開2013-216756号公報
甲第2号証:特開2013-221042号公報
甲第5号証:特開2013-241615号公報
なお、甲第3号証は、綜研化学株式会社分析・試験センター塚田武広による「シリコーンオイルKF-353のIR測定」の結果の報告書であり、甲第4号証は、綜研化学株式会社樹脂生産部品質管理グループ狭山検査チーム池田誠之助による「シリコーンオイルKF-353の水酸基価測定」の結果の報告書である。」
イ.平成31年2月18日付けの取消理由通知〈決定の予告〉の概要
平成30年10月30日付けの訂正請求による訂正後の請求項1~5に係る発明の特許に対して、平成31年2月18日付けの取消理由通知〈決定の予告〉で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「1.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1~5に係る発明の特許に対して平成30年8月29日付けで特許権者に通知した取消理由には、次の理由2が含まれている。
「理由2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである。」
(2)引用刊行物及びその記載事項
取消理由通知において引用した甲第1、2及び5号証の刊行物、及び本願出願日前の技術水準を示すための参考文献、並びにこれら刊行物の記載事項は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2013-216756号公報
甲第2号証:特開2013-221042号公報
甲第5号証:特開2013-241615号公報
参考文献A:国際公開第2012/133343号」
(2)引用刊行物の記載事項
平成30年8月29日付け及び平成31年2月18日付けの取消理由通知において引用した甲第1、2及び5号証の刊行物、並びに平成31年2月18日付けの取消理由通知において引用した本件特許の出願日前の技術水準を示すための参考文献Aの記載事項は、以下のとおりである。
ア.甲第1号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1及び3~5
「【請求項1】原料モノマーとして、少なくとも、炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーから構成される(メタ)アクリル系ポリマー、アルカリ金属塩、及び、鉄を活性中心とする触媒を含有する粘着剤組成物であって、前記炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対して、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを6重量部以上含有することを特徴とする粘着剤組成物。…
【請求項3】オキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤を0.01~10重量部含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】前記(メタ)アクリル系ポリマーが、原料モノマーとして、更に、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーから構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物。」
摘記1b:段落0026~0027
「【0026】本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、原料モノマーの主成分として、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いるものであり、好ましくは、炭素数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いるものである。前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を主成分として使用することができる。
【0027】前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。」
摘記1c:段落0035
「【0035】前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。」
摘記1d:段落0067~0068
「【0067】また、本発明における前記オルガノポリシロキサンとしては、たとえば、以下のような構成を使用することができる。…上記ポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンのなかでも、ヒドロキシル基末端を有するポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンが相溶性のバランスがとりやすいと推測されるため好ましい。
【化4】
【0068】上記オルガノポリシロキサンの具体例としては、たとえば、市販品としての商品名…KF-353…(以上、信越化学工業社製)SF8428、FZ-2162…(以上、東レ・ダウコーニング社製)…などがあげられる。」
摘記1e:0093
「【0093】…本発明の粘着シートは、上記いずれかに記載の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、基材(支持フィルム、支持体)の少なくとも片面に形成してなることが好ましい。本発明の粘着シートによると、上記の如き作用効果を奏する粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を備えるため、剥離した際に帯電防止されていない被着体(被保護体)への帯電防止が図れ、被着体への汚染が低減された粘着シートとなる。このため、帯電や汚染が特に深刻な問題となる光学・電子部品関連の技術分野における帯電防止性粘着シート(表面保護フィルム)として非常に有用となる。」
摘記1f:段落0128、0131~0132及び0156
「【0128】<(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10重量部、アクリル酸(AA)0.01重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、酢酸エチル157重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40重量%)を調製した。前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は54万、ガラス転移温度(Tg)は、-67℃であった。…
【0131】<実施例1>
〔粘着剤溶液の調製〕
上記(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液500重量部(固形分100重量部)に、オキシアルキレン基を側鎖に有するオルガノポリシロキサン(商品名:KF-353、信越シリコーン(株)製、HLB値:10)を酢酸エチルで10%に希釈した溶液2重量部(固形分0.2重量部)、帯電防止剤であるアルカリ金属塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2:LiTFSI、東京化成工業社製)を酢酸エチルで1%に希釈した溶液5重量部(固形分0.05重量部)、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)1.5重量部(固形分1.5重量部)、架橋触媒(鉄を活性中心とする触媒)として、トリス(アセチルアセトナト)鉄(Fe(AcAc)3、東京化成工業社製、1重量%酢酸エチル溶液)0.5重量部(固形分0.005重量部)、アセチルアセトン0.25重量部を加えて、混合攪拌を行い、粘着剤溶液を調製した。
【0132】〔粘着シートの作製〕
上記粘着剤溶液を、上記の帯電防止処理フィルムの帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、粘着シートを作製した。…
【0156】表2及び表3の評価結果より、全ての実施例において、粘着剤組成物(溶液)について、ポットライフに優れ、更に得られた粘着シートについては、帯電防止性、及び、粘着特性に優れ、特に高速剥離時における軽剥離性(再剥離性)に優れることが確認でき、光学用途等の表面保護用途に適用できることが確認できた。」
イ.甲第2号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記2a:段落0051
「【0051】…前記ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、ポリシロキサンの側鎖にポリエーテル基を導入した構造を有する側鎖型(ペンダント型)であることが好ましい。前記側鎖型のポリエーテル変性シリコーン化合物としては、…下記一般式(1)で表されるシリコーン化合物が好ましい。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、l、m、n、p、及びqは、自然数(0を除く)であり、l+m+n<2,000、p+q<100を満たす。…市販品としては、…KF-353(前記一般式(1)で表されるシリコーン系界面活性剤)…が挙げられる。」
ウ.甲第5号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記5a:段落0061
「【0061】…ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX)」
エ.上記参考文献Aには、次の記載がある。
摘記A1:請求項1及び4
「[請求項1]炭素数1~5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を40質量%~80質量%、炭素数6~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を10質量%~59.9質量%、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を0.1質量%~10質量%含有するアクリル系共重合体(A)と、
アルキレンオキシド単位の平均付加モル数が20以上であるポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位及び前記ポリオキシアルキレン基含有単量体以外の単量体に由来する構成単位を含み、前記ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位の含有率が60質量%以下であり、重量平均分子量が3,000~100,000であるポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)と、
アルカリ金属塩(C)と、
分子内にポリオキシアルキレン基を有し、HLB値が9以下であるジメチルポリシロキサン化合物(D)と、
を含有する粘着剤組成物。…
[請求項4]前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物(D)の含有量が0.01質量部~1.0質量部である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。」
摘記A2:段落0021
「[0021]上記アクリル系共重合体(A)は、炭素数1~5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を40質量%~80質量%の含有率で含む。これにより、光学部材の表面保護が必要とされる間、該部材の表面上でずれを生じたり表面から脱落したりすることがない程度にその表面に粘着する粘着力を有する。」
摘記A3:段落0031~0032、0034及び0038
「[0031]上記アクリル系共重合体(A)は、炭素数1~5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、炭素数6~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位に加えて、必要に応じてこれら以外のその他の単量体に由来する構成単位を更に含んでいてもよい。…
[0032]その他の単量体としては、…例えば、カルボキシ基含有単量体…を挙げることができる。…
[0034]カルボキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。…
[0038]上記アクリル系共重合体(A)が、その他の単量体に由来する構成単位を更に含む場合、その含有率は、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。」
摘記A4:段落0083及び0086
「[0083]…上記粘着剤組成物は、架橋剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。…
[0086]上記粘着剤組成物におけるこれらイソシアネート化合物の含有量は、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部~15質量部であることが好ましく、0.5質量部~5.0質量部であることがより好ましい。」
摘記A5:段落0109
「[0109]…N-3300:住化バイエルウレタン(株)製ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造を有するイソシアネート化合物、商品名:デスモジュールN3300、有効成分100質量%、架橋剤(イソシアネート化合物)…
SH-3773M:東レ・ダウ(株)製、側鎖にポリオキシアルキレン基を導入したジメチルシロキサン化合物、ポリオキシアルキレン基の末端は水酸基、HLB値=8、ジメチルポリシロキサン化合物(D)成分」
(3)甲第1号証に記載された発明
摘記1aの「原料モノマーとして、少なくとも、炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーから構成される(メタ)アクリル系ポリマー…を含有する粘着剤組成物であって、…オキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンを含有すること…架橋剤を0.01~10重量部含有すること…原料モノマーとして、更に、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーから構成されることを特徴とする…粘着剤組成物。」との記載、
摘記1bの「本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、…前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、…2種以上を主成分として使用することができ…前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、たとえば、…n-ブチル(メタ)アクリレート、…2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、…などがあげられる。」との記載、
摘記1dの「上記ポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンのなかでも、ヒドロキシル基末端を有するポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンが相溶性のバランスがとりやすいと推測されるため好ましい。…具体例としては…商品名…KF-353…(…信越化学工業社製)…があげられる。」との記載、
摘記1eの「本発明の…粘着剤組成物…光学・電子部品関連の技術分野における帯電防止性粘着シート(表面保護フィルム)として非常に有用となる。」との記載、及び
摘記1fの「2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10重量部、アクリル酸(AA)0.01重量部…を仕込み、…6時間重合反応を行い、(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40重量%)を調製した。…<実施例1>…上記(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40重量%)を…希釈し、この溶液500重量部(固形分100重量部)に、オキシアルキレン基を側鎖に有するオルガノポリシロキサン(商品名:KF-353、信越シリコーン(株)製、HLB値:10)を…希釈した溶液2重量部(固形分0.2重量部)…架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)1.5重量部(固形分1.5重量部)…を加えて、混合攪拌を行い、粘着剤溶液を調製した。…全ての実施例において、粘着剤組成物(溶液)について、ポットライフに優れ、更に得られた粘着シートについては、帯電防止性、及び、粘着特性に優れ、特に高速剥離時における軽剥離性(再剥離性)に優れることが確認でき、光学用途等の表面保護用途に適用できることが確認できた。」との記載からみて、甲第1号証には、
「炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしての2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100重量部、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしての4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10重量部、及びカルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーとしてのアクリル酸(AA)0.01重量部から構成される(メタ)アクリル系ポリマー100重量部(固形分)、並びにオキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサン(商品名:KF-353)0.2重量部(固形分)、及び架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX)1.5重量部(固形分)を含む、光学・電子部品関連の表面保護フィルムとして非常に有用となる粘着剤組成物。」についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(4)対比
ア 本1発明と甲1発明とを対比する。
イ 甲1発明の「炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしての2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100重量部、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしての4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10重量部、及びカルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーとしてのアクリル酸(AA)0.01重量部から構成される(メタ)アクリル系ポリマー」は、そのカルボキシル基を含有する「AA」のモノマーに由来する酸性基と、そのヒドロキシル基を有する「4HBA」のモノマーに由来する水酸基とを有する共重合体であることが明らかであるから、本1発明の「酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体」に相当する。
ウ 甲1発明の「カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーとしてのアクリル酸(AA)」と「ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしての4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)」と「炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしての2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)」の各々は、本1発明の「前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位」と「前記水酸基を有する単量体に由来する構造単位」と「炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位」の各々に相当する。
エ 甲1発明の「オキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサン(商品名:KF-353)」は、摘記1dの「上記ポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンのなかでも、ヒドロキシル基末端を有するポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンが相溶性のバランスがとりやすいと推測されるため好ましい。…具体例として…商品名…KF-353…(以上、信越化学工業社製)SF8428、FZ-2162…(以上、東レ・ダウコーニング社製)…などがあげられる。」との記載、摘記2aの「KF-353(前記一般式(1)で表されるシリコーン系界面活性剤)」のポリオキシアルキレン側鎖の末端が水酸基を有している旨の記載、並びに摘記1dにおいて「KF-353」と同列に記載されている「SF8428」及び「FZ-2162」の市販品が、本件特許明細書の段落0084の「一般式(3)で表される特定ポリシロキサン化合物の具体例」として例示されていることからみて、本1発明の「反応性基として水酸基を有するジメチルポリシロキサン化合物」に相当する。
オ 甲1発明の「架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX)」は、ジイソシアネートのイソシアヌレート体というポリイソシアネート化合物の架橋剤であるから、本1発明の「ポリイソシアネート化合物である架橋剤」に相当する。
カ 甲1発明の「オキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサン(商品名:KF-353)0.2重量部(固形分)、及び架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX)1.5重量部(固形分)を含む」は、その「0.2重量部/1.5重量部」の重量比を換算すると「13.3/100」となることから、本1発明の「前記架橋剤に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物の質量比(ジメチルポリシロキサン化合物/架橋剤)が、1/100~20/100」に相当する。
キ 甲1発明の「光学・電子部品関連の表面保護フィルムとして非常に有用となる粘着剤組成物」は、本1発明の「粘着剤組成物」に相当する。
ク してみると、本1発明と甲1発明は「酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体と、反応性基として水酸基を有するジメチルポリシロキサン化合物と、ポリイソシアネート化合物である架橋剤と、を含み、
前記(メタ)アクリル共重合体が、前記酸性基を有する単量体に由来する構造単位及び前記水酸基を有する単量体に由来する構造単位を有し、さらに、炭素数6~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有し、
前記架橋剤に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物の質量比(ジメチルポリシロキサン化合物/架橋剤)が、1/100~20/100である、粘着剤組成物。」である点において一致し、次の〔相違点α〕~〔相違点γ〕において一応相違する。
〔相違点α〕(メタ)アクリル共重合体が、本1発明においては「炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位」を更に有するのに対して、甲1発明においては「炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位」を更に有するものではない点。
〔相違点β〕(メタ)アクリル共重合体の酸価が、本1発明においては「0を超えて1.0以下」であるのに対して、甲1発明においては「酸価」の値が不明である点。
〔相違点γ〕酸性基を有する単量体に由来する構造単位が、本1発明においては、例えば本件特許明細書の段落0120の「ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート」のような「酸性基を有する単量体」に由来する下記一般式(1)で表される構造単位「
〔一般式(1)において、Lは下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。〕
〔一般式(2a)及び(2b)中、R21~R24はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキレン基又は炭素数6~10のアリーレン基を示す。nは0~10の数を示し、mは1~10の数を示す。〕」を有するのに対して、甲1発明においては「アクリル酸」を「酸性基を有する単量体」として用いるものであって、上記一般式(1)で表される構造単位を有するものではない点。
(5)判断
事案に鑑み、上記〔相違点γ〕について、先に検討する。
本1発明は、本件特許明細書の段落0030の「一般式(1)におけるLで示される2価の連結基は、帯電防止性及び被着体に対する汚染性の観点から、下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基であることが好ましい。」との記載にあるように、一般式(1)におけるLが一般式(2a)又は(2b)で表される2価の連結基であることにより「帯電防止性及び被着体に対する汚染性」が優れるという顕著な効果を奏するものといえるものである。
これに対して、甲第1号証の刊行物には、酸性基を有する単量体としては「アクリル酸(AA)」が記載されているに過ぎず、本1発明の「一般式(1)で表される構造単位」を与えられる「酸性基を有する単量体」については示唆を含めて記載がない。
また、甲第2号証及び甲第5号証の刊行物にも、本1発明の「一般式(1)で表される構造単位」を与えられる「酸性基を有する単量体」については示唆を含めて記載がない。
さらに、甲第3号証及び甲第4号証は、甲第1号証の【0131】に記載された「オキシアルキレン基を側鎖に有するオルガノポリシロキサン(商品名:KF-353、信越シリコーン(株)製、HLB値:10)」について、それぞれ、IR(フーリエ変換赤外分光分析)スペクトル及び水酸基価を測定した実験報告書であるところ、この実験報告書にも、本1発明の「一般式(1)で表される構造単位」を与えられる「酸性基を有する単量体」については示唆を含めて記載がない。
したがって、甲第1~5号証に記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、本1発明の「一般式(1)で表される構造単位」を与えられる「酸性基を有する単量体」の構成を容易に想到できるとはいえない。
そして、当審が職権で提示した参考文献Aの段落0034(摘記A3)には「カルボキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。」との記載があり、そのうちの「ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート」のみが、本1発明の「一般式(1)で表される構造単位」を与えられる「酸性基を有する単量体」に相当するが、参考文献Aの刊行物には、カルボキシ基含有単量体として当該「ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート」を用いた場合に、本件特許明細書の段落0030の「帯電防止性及び被着体に対する汚染性の観点から…好ましい」という作用効果が得られることについて示唆を含めて記載がなく、これを実際に使用した実施例の記載もない。
このため、参考文献Aの段落0034(摘記A3)に列挙される「カルボキシ基含有単量体」の多数の選択肢の中から、当該「ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート」を選び出し、甲1発明の「カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーとしてのアクリル酸(AA)」に置き換えることに、必然性や動機付けがあるとはいえないので、上記〔相違点γ〕の構成を導き出すことが、当業者にとって容易に想到し得ることとは認められない。
加えて、本件特許明細書の段落0112、0115及び0120には、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(M-5300)を用いた製造例1の「樹脂A」と、M-5300に変えて、アクリル酸(AA)を用いて同様に製造した製造例4の「樹脂H」が記載され、同段落0125~0126及び0131には、本1発明の一般式(1)で表される構造単位(M-5300)を有する「樹脂A」を用いた実施例1のものの剥離性が「0.34N/25mm」であり、一般式(1)の構造単位を有さない「樹脂H」を用いた実施例7(訂正後の本1発明の範囲外)のものの剥離性が「0.40N/25mm」であるという試験結果、即ち「高速剥離時の粘着力をもとに剥離性を評価」した場合に、本1発明の「樹脂A」が、本1発明の範囲外の「樹脂H」よりも優れた「剥離性」の性能を有することが具体的に示されており、甲第1及び2~5号証の刊行物、甲第3及び4号証の実験報告書、並びに参考文献Aの全ての記載を総合しても、このような優れた「剥離性」の効果を容易に予測できるとはいえない。
してみると、上記〔相違点γ〕は、実質的な差異であり、その構成を想到し、効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記〔相違点α〕及び〔相違点β〕について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1号証の刊行物に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
また、甲第1~2及び5号証の刊行物並びに参考文献Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
(6)本2~5発明について
本2~5発明は、本1発明を引用し、さらに限定したものであるから、本1発明が甲第1号証の刊行物に記載された発明であるといえない以上、本2~5発明が甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、本1発明が甲第1~2及び5号証の刊行物並びに参考文献Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本2~5発明が甲第1~2及び5号証の刊行物並びに参考文献Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本2~5発明は、甲第1号証の刊行物に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
また、本2~5発明は、甲第1~2及び5号証の刊行物並びに参考文献Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、上記第4 1.(1)ア.の項に示したとおりの甲第1~5号証を提示し、本1~本5発明は、甲1発明と同一、又は、甲1発明に基いて当業者が容易想到である旨を主張している。
ここで、甲第3号証及び甲第4号証は、甲第1号証の【0131】に記載された「オキシアルキレン基を側鎖に有するオルガノポリシロキサン(商品名:KF-353、信越シリコーン(株)製、HLB値:10)」について、それぞれ、IR(フーリエ変換赤外分光分析)スペクトル及び水酸基価を測定した実験報告書であると認められるところ、甲第3号証及び甲第4号証の記載は、上記1.(4)クにおける一致点及び相違点の認定、並びに、上記1.(5)における「〔相違点γ〕」についての判断を左右するものではない。
そうすると、上記特許異議申立理由は、当審が特許権者に通知した取消理由と実質的に同じものであるから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。
第5 まとめ
以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1~本5発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本1~本5発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700446