特許異議申立
2018-700342
段ボール原紙の製造方法
- 審判番号
- 2018-700342
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-074344
- 登録番号
- 特許第6217497号(P6217497)
- 請求日
- 2018年04月25日
- 審決日
- 2018年11月29日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】金谷 宥
- 【異議申立人】目黒 茂
- 審判長/審判官
- 審判長 渡邊 豊英
- 審判官 竹下 晋司
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.121-YAA(D21F) / P1651.537-YAA(D21F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6217497号発明「段ボール原紙の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6217497号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第6217497号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
特許第6217497号の請求項3についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第6217497号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成26年3月31日の出願であって、平成29年10月6日にその特許権の設定登録がされ(平成29年10月25日特許掲載公報発行)、その後、平成30年4月25日に特許異議申立人目黒茂(以下「異議申立人」という。)より請求項1~3に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、平成30年6月28日付けで取消理由が通知され、平成30年8月23日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)がされ、平成30年9月28日に異議申立人から意見書が提出されたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~4からなるものである。それぞれの訂正事項について、訂正箇所に下線を付して示すと次のとおりである。
ア.訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「段ボール原紙の製造方法であって、古紙パルプを80質量%以上含む原料パルプと紙力増強剤としてのポリアクリルアミドとを含む紙料を、ワイヤーパートにおいてシェーキング装置を使用してシェーキング装置の振幅の範囲20~30mmでシェーキングナンバーを3,000~6,500の範囲に設定して抄紙することを特徴とする、段ボール原紙の製造方法。」とあるのを、
「単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であり、古紙パルプを80質量%以上含む原料パルプと紙力増強剤としてのポリアクリルアミドとを含む紙料を、ワイヤーパートにおいてシェーキング装置を使用してシェーキング装置の振幅の範囲20~30mmでシェーキングナンバーを3,000~6,500の範囲に設定して抄紙することを特徴とする、段ボール原紙の製造方法。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2についても、同様に訂正する。
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ウ.訂正事項3
本件訂正前の明細書の段落【0013】に、
「[1]段ボール原紙の製造方法であって、古紙パルプを80質量%以上含む原料パルプと紙力増強剤としてのポリアクリルアミドとを含む紙料を、ワイヤーパートにおいてシェーキング装置を使用してシェーキング装置の振幅の範囲20~30mmでシェーキングナンバーを3,000~6,500の範囲に設定して抄紙することを特徴とする、段ボール原紙の製造方法。
[2]前記段ボール原紙の坪量が100g/m2以上であることを特徴とする、[1]に記載の段ボール原紙の製造方法。」
[3]前記段ボール原紙が、多層抄き合せフォーマーによって抄紙される段ボール原紙を構成する層の中で最も坪量の大きい層であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の段ボール原紙の製造方法。」とあるのを、
「[1]単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であり、古紙パルプを80質量%以上含む原料パルプと紙力増強剤としてのポリアクリルアミドとを含む紙料を、ワイヤーパートにおいてシェーキング装置を使用してシェーキング装置の振幅の範囲20~30mmでシェーキングナンバーを3,000~6,500の範囲に設定して抄紙することを特徴とする、段ボール原紙の製造方法。
[2]前記段ボール原紙の坪量が100g/m2以上であることを特徴とする、[1]に記載の段ボール原紙の製造方法。
[3](削除)」に訂正する。
エ.訂正事項4
本件訂正前の明細書の段落【0068】に、
「以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
また、これらの例は、段ボール原紙のうち、中芯原紙の製造例を示すものであるが、本発明により得られる段ボール原紙からライナーを除外することを意図するものではない。」とあるのを、
「以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。」に訂正する。
(2)一群の請求項等
本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1及び2による訂正は当該一群の請求項1~3に対してなされたものである。
また、訂正事項3及び4による訂正は、当該訂正に係る前記一群の請求項について行うものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定及び同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1
訂正事項1による一つめの訂正(以下「訂正事項1-1」という。)は、訂正前の請求項1における「段ボール原紙の製造方法」について、「単層抄きのフォーマーによる」製造方法であると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-1は、本件特許明細書の段落【0070】の「(抄紙)得られた紙料をヘッドボックスによりワイヤーパートのワイヤー上へ供給した。ワイヤーパートは、単層抄きのオントップ型フォーマーであり、・・・」と記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
訂正事項1による二つめの訂正(以下「訂正事項1-2」という。)は、訂正前の請求項1における「段ボール原紙」について、「中芯原紙」であると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-2は、本件特許明細書の段落【0069】~【0081】における「中芯原紙」の製造に関する記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
請求項1を引用する請求項2についての訂正も同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項2
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ.訂正事項3
訂正事項3による一つめの訂正は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の段落【0013】の記載を整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
訂正事項3による二つめの訂正は、訂正前の明細書の段落【0013】の「・・・[2]前記段ボール原紙の坪量が100g/m2以上であることを特徴とする、[1]に記載の段ボール原紙の製造方法。」・・・」(注:下線は当審が付した。)という記載における余分な『」』を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ.訂正事項4
訂正事項4は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の段落【0068】の記載を整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1~3」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であり、古紙パルプを80質量%以上含む原料パルプと紙力増強剤としてのポリアクリルアミドとを含む紙料を、ワイヤーパートにおいてシェーキング装置を使用してシェーキング装置の振幅の範囲20~30mmでシェーキングナンバーを3,000~6,500の範囲に設定して抄紙することを特徴とする、段ボール原紙の製造方法。
【請求項2】
前記段ボール原紙の坪量が100g/m2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の段ボール原紙の製造方法。
【請求項3】(削除)
(2)取消理由の概要
当審において、本件発明の特許に対して、平成30年6月28日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
なお、異議申立人が申立てた全ての理由は通知された。
理由1 本件発明1及び2は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
<刊行物一覧>
甲1:特開2014-12908号公報
甲2:特開2012-224952号公報
甲3:近藤 和奈、「シェーキング装置の操業経験(岩国工場6マシン) 」、第56回-2013年 紙パルプ技術協会年次大会 講演要旨 集、紙パルプ技術協会、平成25年10月9-11日、p.191 -195
甲4:高野 行範、「既存設備改善の提案“デュオシェイク”」、紙パル プ技術タイムス 第48巻 第1号、平成17年1月1日、p.2 9-33
甲5:濱 毅、「ワイヤーシェーキング装置(フォームマスター)導入に よるクラフト紙の紙質改善」、紙パ技協誌 第63巻第11号、紙 パルプ技術協会、2009年11月1日、p.18-21
甲6:JIS P3902-1985 「段ボール用ライナ」
甲7:Nuttall,G.H.、「マシン操業百科(上巻)」、王子三 社文献委員会監修 紙パルプ技術文献特集号NO.45-1、中外 産業調査会、1970年、p.209-213
甲8:特開2011-21283号公報
甲1~8は、各々、特許異議申立書に添付された甲第1~8号証である。
ア.理由1について
本件発明1は、甲1に記載された発明、甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2は、甲1に記載された発明、甲2~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ.理由2について
請求項3の「前記段ボール原紙が、多層抄き合せフォーマーによって抄紙される段ボール原紙を構成する層の中で最も坪量の大きい層である・・・」という記載は不明確である。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)取消理由についての判断
ア.理由1について
(ア)刊行物に記載された発明
a.甲1について
甲1には、以下の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は、段ボール用ライナーに関する。」
(b)「【0019】
当該段ボール用ライナーは、三層以上の紙層を有する。・・・」
(c)「【0020】
この多層構造は、パルプを主成分とするパルプスラリーを多層抄き等することによって形成することができる。・・・」
(d)「【0021】
なお、リサイクル性の点からは、古紙パルプを用いることが好ましい。全パルプに対する古紙パルプの使用量として、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。・・・」
(e)「【0023】
(内添紙力増強剤)
上記パルプスラリーには、上記原料パルプの他に紙力増強剤を更に添加するとよい。内紙力増強剤としては、乾燥紙力増強剤や湿潤紙力増強剤があり、乾燥紙力増強剤としては、例えばカチオン澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられ、湿潤紙力増強剤としては、例えばポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等が挙げられる。これらのうち、歩留りの優れるポリアクリルアミドが好ましい。」
(f)「【0056】
(段ボール用ライナーの製造方法)
当該段ボール用ライナーは、上述のように各紙層に対応する原料パルプスラリーを抄紙することによって得ることができる。当該段ボール用ライナーは、一般に製紙に用いられるシステムで製造することができ、具体的には、例えばワイヤーパート、・・・を含む製紙システム等を用いることができる。・・・」
以上より、甲1には、「多層抄きの段ボール用ライナーの製造方法であって、古紙パルプを80質量%以上含むパルプと内添紙力増強剤としてのポリアクリルアミドとを含むパルプスラリーを、ワイヤーパートを含む製紙システムを使用して抄紙することを特徴とする、段ボール用ライナーの製造方法。」という発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
b.甲2について
甲2には、以下の記載がある。
(a)「【0023】
縦横比は抄紙機の操業条件によって決定されるため、抄紙機の操作を適正にする必要がある。・・・特に、ワイヤーパートにおいて、振動数や振幅を自在に変更できるワイヤーシェーキング装置を用いてワイヤーを流れ方向と水平かつ直角方向に摺動させつつ抄紙を行うと、パルプ繊維の方向がランダム配向化するので好ましい。・・・」
以上より、甲2には、「抄紙機のワイヤーパートにおいて、ワイヤーシェーキング装置を用いる。」(以下「甲2事項」という。)ということが記載されているといえる。
c.甲3について
甲3には、以下の記載がある。
(a)「これら上質紙、産業用紙原紙における品質要求への対応と、他社製品との競争力を持つため、地合改善、T/Y比改善を図る事としてシェーキング装置を導入した。」(第192ページ第4行~第5行)
(b)「表3 デュオシェーク装置仕様
機械型式 DuoShake 250Nm
振幅 0-25 mm
振動数 150-600 strokes/min
シェーキング・ロッド耐荷重 Max. 50 kN」
(第192ページ表3)
(c)「なお、SKZとはシェーキングNo.を示し、下記の式(1)で示す。
SKZ=n2×S÷Vwire・・・・・(1)
n:振動数(1/min)
S:振幅(mm)
Vwire:ワイヤー速度(m/min)
図3より、地合は振動数、振幅とも高くなるほど良くなる傾向にあり、特に振幅が大きいほど地合は良くなる結果であった。図4より、T/Y比も地合と同様で、振幅による影響度が高い結果となった。」(第193ページ第5行~第12行)
(d)「
」(第193ページ図3及び4)
(a)より、甲3には、「産業用紙原紙の製造に、シェーキング装置を用いる。」(以下「甲3-1事項」という。)ということが記載されているといえる。
また(b)より、使用するシェーキング装置において、振幅が0-25mmの間で設定可能であることが把握される。
そして(c)より、シェーキングナンバーの定義と、振幅との関係が把握される。
さらに(d)より、振幅を5mm、15mm、25mmに設定することと、振幅25mmにした場合にシェーキングナンバーを約500、約4000、又は約6000に設定するということが把握される。
よって、(b)~(d)より、甲3には、「シェーキング装置において、振幅を5~25mmの間で設定すること、及び、振幅25mmにした場合にシェーキングナンバーを約500~約6000に設定する。」(以下「甲3-2事項」という。)ということが記載されているといえる。
d.甲4について
甲4には、以下の記載がある。
(a)「現在一般的に使用されているシェーキング装置の場合,ストロークは最大30mm前後だが,・・・」(第30ページ左欄第10行~第12行)
(b)「図7
」(第31ページ図7)
(c)「図9
」(第32ページ図9)
(d)「5.板紙への導入
近年,板紙抄紙機も中芯原紙などでギャップフォーマーが採用されるなど,高速化が進んでいるが,印刷・筆記用紙などに比較して今でも低速で操業されている抄紙機が多数存在する.したがって,今までもシェーキング装置を採用している例が多数あった.板紙で特に重要視される強度についても,シェーキング装置の適用で改善することが可能であるからである(図11,図12).」(第32ページ左欄第3行~第13行)
(e)「デュオシェイクは先に説明した通り,そのユニークな原理のおかげで,強固な基礎が不要である.すなわち、マルチフォードリニアの表層・中層などのように建屋基礎にシェーキング装置を設置することが難しいレイアウトでも容易に設置が可能である.」(第30ページ左欄第19行~第25行)
(a)より、シェーキング装置において、ストロークを最大30mm前後とすることが把握される。
そして(b)及び(c)より、坪量が120g/m2である場合に、シェーキング数が3000~6500の範囲は、3000未満の範囲に比べて、地合の値もT/Y比も小さいということが把握される。
よって、(a)~(c)より、甲4には、「シェーキング装置において、ストロークを最大30mm前後で設定すること、及び、坪量が120g/m2である場合にシェーキング数が3000~6500の範囲が地合の値もT/Y比も良好であること。」(以下「甲4-1事項」という。)が記載されているといえる。
(d)より、甲4には、「従来より、中芯原紙でシェーキング装置を採用している抄紙機が存在する。」(以下「甲4-2」事項という。)ということが記載されているといえる。
(e)において、「デュオシェイク」はシェーキング装置の一種であるから、甲4には、「段ボール原紙の製造方法において、シェーキング装置を使用すること。」(以下「甲4-3事項」という。)が記載されているといえる。
e.甲5について
甲5には、以下の記載がある。
(a)「4.2 フォームマスター仕様
・シェーキング能力:最大60kN
・シェーキング周波数:可変 最大600rpm
・シェーキングストローク:可変 最大30mm
・シェーキング駆動電動機容量:7.5kW 1台
・油圧ポンプ容量:4kW 1台」(第19ページ右欄第4行~第9行)
(b)「5. フォームマスター導入後の操業状況と品質改善結果
5.1 地合について
3号マシンは地合向上対策として,ダンディロールを一部品種で使用している。このダンディロールとシェーキング装置による地合改善効果についてテストした。
表2にダンディロールとシェーキング装置による地合比較を示す。
ワイヤーシェーキング装置導入により,ダンディロール使用時と同等の地合が得られると言える。
シェーキング装置使用により,繊紺の絡みが改善され地合指数が向上したと考える。ただし,ダンディロールを使用した方が同じ地合指数でもフロックが細かくなるため,地合も綺麗に見える。
また,シェーキング装置使用により,引張T/Y比の減少,伸びの向上が見られる。
5.2 シェーキング条件変更に伴う品質の変化についてシェーキングNo.と紙質の関係について,図3に示した(75g/m2でのテスト結果)。
○1(当審注:○の中にアラビア数字の1) 引張強度:ストロークの増加とともに縦引張は向上し横引張は低下している。一方,周波数を変化させても引張強度には大きく影響しなかった。
○2(当審注:○の中にアラビア数字の2) 引裂強度:ストロークの増加とともに縦・横引張とも一旦低下しその後向上している。一方,周波数を変化させても引張強度には大きく影響しなかった。
○3(当審注:○の中にアラビア数字の3) 伸び:縦伸びはテストデータを見る限りはストロークには影響されないが,横伸びはストロークの増加に伴い向上している。ただし実操業では縦伸びの向上は見られた。また,周波数の増加に伴い縦・横伸びは低下している。
○4(当審注:○の中にアラビア数字の4) 地合指数:ストロークの影響を大きく受けており、ストロークの増加に伴い地合指数も向上している。ただし周波数についてはそれ程影響されていない。」(第19ページ右欄第16行~第20ページ右欄第15行)
(a)より、シェーキング装置において、ストロークを最大30mmとすることが把握される。
そして(b)より、シェーキング装置の使用の際、ストロークの増加に伴い横伸び及び地合指数が向上するということが把握される。
以上より、甲5には、「シェーキングにおいて、ストロークを最大30mmとすること、及び、ストロークの増加に伴い横伸び及び地合指数が向上する。」(以下「甲5事項」という。)ということが記載されているといえる。
f.甲6について
甲6には、以下の記載がある。
(a)「2.種類 ライナは,比圧縮強さ(横)及び比破裂強さによって、AA,A,B,Cの4級に分け,各級の表示坪量は表1のとおりとする。」(第403ページ)
(b)「
」(第403ページ表1)
(a)より、甲6には、「段ボール用ライナは、比圧縮強さ(横)により、その強度が定まる。」(以下「甲6-1事項」という。)ということが記載されているといえる。
また(a)及び(b)より、甲6には、「段ボール用ライナにおいて、坪量が160g/m2以上とする。」(以下「甲6-2事項」という。)ということが記載されているといえる。
g.甲7について
甲7には、以下の記載がある。
(a)「(g) シェーキングのサイクルに対して振幅を増すと密度や平均の紙の強さが増大するように影響する。」(第210ページ右欄第14行~第17行)
以上より、甲7には、「シェーキングにおいて、振幅を増やすことで紙の強さを上げる。」(以下「甲7事項」という。)ということが記載されているといえる。
h.甲8について
甲8には、以下の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は、板紙及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、古紙パルプを主成分としながらも、水濡れや湿気、擦れによる表面汚れ(色落ち)が少なく、パルプ素材の風合いを備えた、例えば製袋用や段ボールケース用に好適な板紙及びその製造方法に関する。」
(b)「【0080】
かくして得られる本発明の板紙の坪量は、特に限定されるものではないが、JIS P 8124(1998)「紙及び板紙-坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定して、80~320g/m2、さらには120~280g/m2であることが好ましい。坪量が80g/m2未満であると、本発明の板紙を例えば段ボール原紙に加工する際に、その強度を確保することが困難になる場合がある。逆に坪量が320g/m2を超えると、過剰品質となるだけでなく、製造コストが高くなる恐れがある。」
以上より、甲8には、「段ボールケース用に好適な板紙において、坪量が80g/m2以上が好ましい。」(以下「甲8事項」という。)ということが記載されているといえる。
(イ)本件発明1について
a.本件発明1は、上記3.(1)において示したとおりのものである。
b.本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
本件発明1の「段ボール原紙」は、ライナーと中芯原紙とをともに包含する用語である(本件明細書の段落【0015】を参照。)から、甲1発明の「段ボール用ライナー」は本件発明1の「段ボール原紙」の一種であるといえる。
甲1発明の「パルプ」は段ボール用ライナーの原料となるものであるから、本件発明1の「原料パルプ」に相当する。
甲1発明の「内添紙力増強剤」は、本件発明1の「紙力増強剤」に相当する。
甲1発明の「パルプスラリー」は、パルプを含んだスラリーであり、その後に抄紙されるものであるから、本件発明1の「紙料」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は、以下の構成において一致する。
「段ボール原紙の製造方法であって、古紙パルプを80質量%以上含む原料パルプと紙力増強剤としてのポリアクリルアミドとを含む紙料を抄紙することを特徴とする、段ボール原紙の製造方法。」
そして、本件発明1と甲1発明は、以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明1は、「単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であ」るのに対し、甲1発明は、多層抄きの段ボール用ライナーの製造方法である点。
・相違点2
本件発明1は、「ワイヤーパートにおいてシェーキング装置を使用してシェーキング装置の振幅の範囲20~30mmでシェーキングナンバーを3,000~6,500の範囲に設定して抄紙することを特徴とする」のに対し、甲1発明は、ワイヤーパートを含む製紙システムを使用して抄紙することは明らかであるものの、シェーキング装置を使用するかが不明である点。
c.相違点1について検討する。
単層抄きのフォーマーによる中芯原紙の製造方法は、異議申立人から提出された証拠である甲2~8には示されていない。
そして、甲1発明の解決しようとする課題は、「薬品等の塗工によらず、良好な接着剤水溶液の吸水性が発現され、高速貼合性に優れる段ボール用ライナーを提供すること」(甲1の段落【0007】を参照。)であり、当該課題を解決するために、「裏面に位置する第一紙層及びこの第一紙層の表面に積層される第二紙層を含む3層以上の紙層を有する段ボール用ライナー」において、「裏面に位置する第一紙層に、ある程度の厚みをもたせ、かつ、低密度」とすることで、「裏層が物理的に所定量の水溶液を吸収しやすい構造」としたものである(甲1の段落【0008】~【0009】を参照。)。
そのため、多層抄きの段ボール用ライナーの製造方法であることは、甲1発明の解決しようとする課題の解決のために欠くことのできない構成要素であり、甲1発明を単層抄きのフォーマーによる中芯原紙の製造方法とすることの動機付けは見当たらない。
よって、相違点1は実質的な相違点であって、甲1発明を「単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であ」るようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
一方で、本件発明1は「単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であ」ることによって、「原料パルプとして古紙パルプを使用しながらも、強度と貼合性に優れる段ボール原紙を製造することができ」、「特に、古紙パルプの配合率の高い段ボール原紙の製造において、紙力増強剤を紙料に多量添加することなく、所望とする強度を有する段ボール原紙を製造することができる」(本件明細書の段落【0014】)という効果を発揮するものである。
d.以上より、本件発明1は、甲1発明及び甲2~8事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
e.異議申立人は平成30年9月28日付け意見書において、甲第9号証(特開2005-273103号公報)及び甲第10号証(「紙パルプ技術便覧」、紙パルプ技術協会、1992年1月30日、p.293、p305)を例に挙げ、「単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であ」ることは周知であるから、甲1発明を「単層抄きのフォーマーによる段ボール原紙の製造方法であって、前記段ボール原紙が中芯原紙であ」るようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであると主張している。
また、異議申立人は同意見書において、上記(ア)d.(d)で摘示した甲4の記載に基づき、従来より、中芯原紙などを抄造する板紙抄紙機に対して、シェーキング装置を採用して強度について改善が試みられてきたとも主張している。
しかし、上記c.で述べたとおり、多層抄きの段ボール用ライナーの製造方法であることは、甲1発明において欠くことのできない構成要素であるから、甲1発明を単層抄きのフォーマーによる中芯原紙の製造に適用し、本件発明の製造方法とすることの動機付けは見当たらない。
したがって、異議申立人の上記主張は当を得たものではなく、採用できない。
(ウ)本件発明2について
本件発明2は本件発明1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものである。
よって、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2も、甲1発明及び甲2~8事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)本件発明3について
上記3.(1)において示したとおり、請求項3は、本件訂正により削除された。
したがって、請求項3に対する理由1については、対象となる請求項に係る特許が存在しないものとなった。
イ.理由2について
上記3.(1)において示したとおり、請求項3は、本件訂正により削除された。
したがって、理由2については、対象となる請求項に係る特許が存在しないものとなった。
ウ.小括
以上のとおり、本件発明1ないし2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項3は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項3についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項3についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法135条の規定により、却下すべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
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2018-700342