特許異議申立
2018-700284
球状結晶性シリカ粒子およびその製造方法
- 審判番号
- 2018-700284
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-545549外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年04月03日
- 審決日
- 2019年02月08日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B) / P1651.853-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6207753号発明「球状結晶性シリカ粒子およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6207753号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~9〕について訂正することを認める。
特許第6207753号の請求項1~4、6、7、9に係る特許を維持する。
特許第6207753号の請求項5、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6207753号の請求項1~9に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2015年(平成27年) 8月25日(優先権主張 平成26年 8月25日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年 9月15日に特許権の設定登録がされ、同年10月 4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成30年 4月 3日付けで特許異議申立人 大井四郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年 6月 6日付けで取消理由が通知され、同年 8月 7日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、その訂正の請求に対して、申立人から同年10月 2日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
平成30年 8月 7日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項(1)~(12)からなるものである(下線部は、訂正箇所)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の訂正前の請求項1に、
「400~5000ppmのアルミニウムを含み、結晶相を80%以上含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むことを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子。」
とあるのを、
「400~5000ppmのアルミニウムを含み、結晶相を80%以上含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含み、平均粒径(D50)が1~100μmであることを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の訂正前の請求項6に、
「アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。」
とあるのを、
「アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の訂正前の請求項7に、
「400~5000ppmのアルミニウムを含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むようにシリカ粉末を調製し、
調製されたシリカ粉末を溶射し、
溶射された球状シリカ粒子を1100~1600℃で1~12時間の保定し、
冷却された球状シリカ粒子が、80%以上の結晶相を有することを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子を製造する方法。」
とあるのを、
「400~5000ppmのアルミニウムを含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むようにシリカ粉末を調製し、
調製されたシリカ粉末を溶射し、
溶射された球状シリカ粒子の平均粒径(D50)が1~100μmであり、
溶射された球状シリカ粒子を1100~1600℃で1~12時間の保定し、
冷却された球状シリカ粒子が、80%以上の結晶相を有することを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子を製造する方法。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の訂正前の請求項9に、
「アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含むように前記シリカ粉末を調整することを特徴とする、請求項7~8のいずれか1項に記載の方法。」
とあるのを、
「アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含むように前記シリカ粉末を調整することを特徴とする、請求項7に記載の方法。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
本件明細書の訂正前の段落【0017】に、
「本発明により、以下の態様が提供される。
[1]
400~5000ppmのアルミニウムを含み、結晶相を80%以上含むことを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子。
[2]
結晶相を90%以上含むことを特徴とする、項目1に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[3]
結晶相の95~100%がクリストバライト結晶相であることを特徴とする、項目1または2に記載の球状結晶性シリカ粒子
[4]
クリストバライト結晶相の相転移開始温度が220~245℃であることを特徴とする、項目1~3のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[5]
平均粒径(D50)が1~100μmであることを特徴とする、項目1~4のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[6]
アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含む、項目1~5のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[7]
アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含む、項目1~6のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[8]
400~5000ppmのアルミニウムを含むようにシリカ粉末を調製し、
調製されたシリカ粉末を溶射し、
溶射された球状シリカ粒子を1100~1600℃で1~12時間の保定し、
冷却された球状シリカ粒子が、80%以上の結晶相を有することを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子を製造する方法。
[9]
溶射された球状シリカ粒子の平均粒径(D50)が1~100μmであることを特徴とする、項目8に記載の方法。
[10]
アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含むように前記シリカ粉末を調整することを特徴とする、項目8~9のいずれか1項に記載の方法。
[11]
アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むように前記シリカ粉末を調整することを特徴とする、項目8~10のいずれか1項に記載の方法。」
とあるのを、
「 本発明により、以下の態様が提供される。
[1]
400~5000ppmのアルミニウムを含み、結晶相を80%以上含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm以下含み、平均粒径(D50)が1~100μmであることを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子。
[2]
結晶相を90%以上含むことを特徴とする、項目1に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[3]
結晶相の95~100%がクリストバライト結晶相であることを特徴とする、項目1または2に記載の球状結晶性シリカ粒子
[4]
クリストバライト結晶相の相転移開始温度が220~245℃であることを特徴とする、項目1~3のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[5]
(削除)
[6]
アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含む、項目1~4のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
[7]
400~5000ppmのアルミニウムを含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むようにシリカ粉末を調製し、
調製されたシリカ粉末を溶射し、
溶射された球状シリカ粒子の平均粒径(D50)が1~100μmであり、
溶射された球状シリカ粒子を1100~1600℃で1~12時間の保定し、
冷却された球状シリカ粒子が、80%以上の結晶相を有することを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子を製造する方法。
[8]
(削除)
[9]
アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含むように前記シリカ粉末を調整することを特徴とする、項目7に記載の方法。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
本件明細書の訂正前の段落【0050】の【表3】において、「実施例」とあるのを、「参考例」 に訂正する。
(9)訂正事項9
本件明細書の訂正前の段落【0052】の【表4】において、上から1行目、右から2列目の欄に「実施例」とあるのを、「参考例」 に訂正する。
(10)訂正事項10
本件明細書の訂正前の段落【0054】の【表5】において、「比較例」及び「実施例」とあるのを、「参考例」 に訂正する。
(11)訂正事項11
本件明細書の訂正前の段落【0056】の【表6】において、「比較例」及び「実施例」とあるのを、「参考例」 に訂正する。
(12)訂正事項12
本件明細書の訂正前の段落【0058】の【表7】において、「比較例」及び「実施例」とあるのを、「参考例」 に訂正する。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1において、球状結晶性シリカ粒子について「平均粒径(D50)が1~100μmである」ことを特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項1の球状結晶性シリカ粒子の粒径の特定は、本件明細書の段落【0025】の「本発明のシリカ粒子は、平均粒径(D50)が1~100μmであってもよい。」の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1によって、訂正前の請求項1には包含されていなかった球状結晶性シリカ粒子が新たに加わるということはないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項2は、請求項5を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項6において、選択的に引用した請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項3は、選択的に引用した請求項の一部を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内に範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項7において、溶射された球状シリカ粒子について「溶射された球状シリカ粒子の平均粒径(D50)が1~100μmであり、」と特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項4の球状結晶性シリカ粒子の粒径の特定は、本件明細書の段落【0035】の「溶射して得られた球状シリカ粒子は、平均粒径(D50)が1~100μmであってもよい。」の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4によって、訂正前の請求項7には包含されていなかった溶射された球状シリカ粒子が新たに加わるということはないから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項5は、請求項8を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、請求項9において、選択的に引用した請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項6は、選択的に引用した請求項の一部を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正事項1~3、4~6により特許請求の範囲を訂正したことに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、本件明細書の段落【0017】の記載を特許請求の範囲の訂正と同様に訂正するものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項7は、訂正事項1~3、4~6の特許請求の範囲の訂正と同様に訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(8)訂正事項8、9について
ア 訂正の目的について
訂正事項8、9は、特許請求の範囲において「アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含む」と特定しているところ、本件明細書の段落【0050】【表3】のC1~C3、段落【0052】【表4】のD4のアルカリ金属が当該特定事項の範囲外であるので、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、各表において「実施例」の記載を「参考例」に訂正するものである。
したがって、訂正事項8、9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項8、9は、特許請求の範囲の記載との整合を図るために訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8、9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(9)訂正事項10~12について
ア 訂正の目的について
訂正事項10~12は、特許請求の範囲において「アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含む」と特定しているところ、本件明細書の段落【0054】【表5】のE1~E15、段落【0056】【表6】のF1~F7及び段落【0058】【表7】G1~G4は、アルカリ金属が特定されていないので、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、それぞれの表において「実施例」及び「比較例」の記載を「参考例」に訂正するものである。
したがって、訂正事項10~12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項10~12は、特許請求の範囲の記載との整合を図るために訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項10~12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項2~6は、直接的又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、訂正前の請求項8、9は、直接的又は間接的に請求項7を引用するものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項1と訂正事項4とを含む本件訂正請求は、それらの一群の請求項に対してされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
4 明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項7~12は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、一群の請求項1~6及び請求項7~9の全てに関係する訂正である。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
5 独立特許要件について
本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、訂正前の請求項1~9に係る訂正事項1~6については、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件についての規定は適用はされない。
6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~9〕について訂正を認める。
第3 特許異議申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4、6、7、9に係る発明(以下、それぞれ本件発明1~4、6、7、9といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4、6、7、9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所)。
【請求項1】
400~5000ppmのアルミニウムを含み、結晶相を80%以上含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含み、平均粒径(D50)が1~100μmであることを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子。
【請求項2】
結晶相を90%以上含むことを特徴とする、請求項1に記載の球状結晶性シリカ粒子。
【請求項3】
結晶相の95~100%がクリストバライト結晶相であることを特徴とする、請求項1または2に記載の球状結晶性シリカ粒子。
【請求項4】
クリストバライト結晶相の相転移開始温度が220~245℃であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の球状結晶性シリカ粒子。
【請求項7】
400~5000ppmのアルミニウムを含み、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むようにシリカ粉末を調製し、
調製されたシリカ粉末を溶射し、
溶射された球状シリカ粒子の平均粒径(D50)が1~100μmであり、
溶射された球状シリカ粒子を1100~1600℃で1~12時間の保定し、
冷却された球状シリカ粒子が、80%以上の結晶相を有することを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子を製造する方法。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
アルカリ成分を金属換算で300ppm以下含むように前記シリカ粉末を調整することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~9に係る特許に対して平成30年 6月 6日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
・取消理由1 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
・取消理由2 本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
記
(1)取消理由1
請求項1~4、6、7、9
本件明細書の実施例2の表4において、比較例D11のシリカ粒子は、請求項1~4、6、7、9で規定するAl及びアルカリ金属の含有量並びに結晶相の割合を充足すると認められるが、凝集したものであって、球状の粒子ではない。
そうすると、請求項1~4、6、7、9に係る発明は、高分散性、高充填性などを有する球状結晶性シリカ粒子を提供するという本件発明の課題を達成することができない場合を含むから、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
(2)取消理由1、2
請求項1~9
本件明細書の発明の詳細な説明において、請求項1~9に係る発明は、「アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含む」という特定事項により「アルカリ成分が含有されている方が結晶化が進む効果が得られる」ことが記載されている。
しかし、表4の実施例D4は、上記特定事項を充足しないにもかかわらず、結晶化率は高く、また、比較例D1~D3は、当該特定事項を充足するか否かにかかわらず結晶化率が低くなっている。さらに、【実施例3】~【実施例5】の結果を示す表5~表7の実施例は、アルカリ成分について記載がない。
そうすると、請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、また、発明の詳細な説明は、請求項1~9に係る発明の技術上の意義を明らかにしたものであるとはいえない。
3 取消理由についての判断
(1)「(1) 取消理由1」について
本件訂正請求により、本件発明において、球状結晶性シリカ粒子は、平均粒径(D50)が1~100μmであることが特定され、平均粒径(D50)が0.5μmであって凝集したシリカ粒子を含む比較例D11は、本件発明の比較例であることが明らかとなったから、本件発明は、球状であるために、高流動性、高分散性、高充填性を有する球状結晶性シリカ粒子を提供することにより本件発明の課題を解決できると認識できるものとなった。
したがって、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。
(2)「(2) 取消理由1、2」について
本件発明は、本件明細書の段落【0020】に「・・・球状結晶性シリカ粒子の製造方法において、原料のシリカ粒子粉末にアルミニウムを混合して、原料中にアルミニウムを400~5000ppm含むようにし、当該原料を溶射して生じたシリカ粒子は、驚くべきことに、その後の結晶化に必要な熱処理が、従来よりも緩やかな条件、すなわち、熱処理温度が1100℃~1600℃と低い温度域で処理しても、また、熱処理時間が1~12時間と短い時間間隔で処理しても、出来上がった球状シリカ粒子中の結晶相の割合を80%~100%とすることができ、従来のシリカ粒子製造方法よりも、生産性が高く、製造コストを低くすることができることを見出した。更に、このようにして製造された、『400~5000ppmのアルミニウムを含み、結晶相を80%以上含むことを特徴とする、球状結晶性シリカ粒子』によって、結晶化率が高いために、高熱膨張率、高熱伝導率を有し、球状で有るために、高流動性、高分散性、高充填性、低摩耗性を有し、半導体分野にも適用可能な、球状結晶性シリカ粒子を実現できることを見出した。」と記載されているように、アルミニウムを400~5000ppm含むことを前提とする発明である。
そうすると、本件発明において、上記のようにアルミニウムの含有量が規定されているところ、比較例D1~D3は、アルミニウムをそれぞれ43、79、122ppm含むものであって、本件発明のアルミニウムの含有量を充足しないから、各比較例は、アルカリ成分の含有量によらず結晶化率が低くなり、本件発明に対する比較例であることが認識できる。
また、本件発明において、「アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含む」と特定されているため、表4において、訂正前は「実施例」と記載されていたサンプルD4は、アルミニウムを521ppm含み本件発明のアルミニウム含有量を充足するが、アルカリ成分が11ppmであり本件発明のアルカリ成分の含有量を充足しないため、本件訂正により「参考例」D4とされた。
さらに、本件訂正により、アルカリ成分の含有量が本件発明の上限を超える表3に記載の具体例C1~C3、及びアルカリ成分について記載のない表5~表7に記載の具体例は、すべて「参考例」とされた。
したがって、本件発明と、本件明細書の「実施例」の欄の記載とは整合しているといえる。
そして、本件明細書の段落【0029】に「アルカリ成分が含有されている方が結晶化が進む効果が得られるため、本発明の球状結晶性シリカ粒子は、20~300ppmのアルカリ成分を含んでもよい。20ppmより少ないアルカリ成分では、20ppm以上アルカリ成分を含む場合よりも結晶化の度合いが低くなるため、20ppm以上のアルカリ成分を含むことが望ましい。」と記載され、表4において、上記参考例D4の結晶性シリカ粒子は、アモルファス相を含んでいるのに対して、アルミニウムが544ppmであって参考例D4と同程度のアルミニウムを含み、アルカリ成分が29ppmであり本件発明のアルカリ成分の含有量を充足する実施例D5の結晶性シリカ粒子は、結晶相が100%でありアモルファス相は存在しないことが示されている。
そうすると、上記段落【0029】に記載された「20ppmより少ないアルカリ成分では、20ppm以上アルカリ成分を含む場合よりも結晶化の度合いが低くなる」という作用効果は、参考例D4と実施例D5とを比較対照することにより、具体的に裏付けられていることが認識できるといえる。
また、本件発明のアルカリ成分の上限300ppmについては、本件明細書の段落【0029】に「また、本発明の球状結晶性シリカ粒子は、樹脂と混合して半導体用の封止材料等に用いることができるが、アルカリ成分を多く含まないことが望ましい。これは、アルカリ成分が多いと、樹脂の硬化を阻害したり、半導体の封止材として使用した際、腐食が発生して半導体の性能を劣化させる原因となる。また、アルカリ成分が300ppmを超えて含まれると結晶化の熱処理(保定)の際に粒子の軟化温度が下がるため、粒子同士がくっついて、円形度を低下させてしまう。このため、シリカ粒子に含まれるアルカリの量は300ppm以下であることが望ましい。」と記載されているから、本件発明のアルカリ成分の含有量の上限を規定した理由について説明されているといえる。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、また、発明の詳細な説明は、本件発明の技術上の意義を明らかにしたものであるといえる。
(3) まとめ
上記(1)、(2)に記載のとおり、 「(1) 取消理由1」及び「(2) 取消理由1、2」の取消理由は、いずれも理由がない。
4 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)採用しなかった申立理由
申立人は、上記「(2) 取消理由1、2」の他に、甲第1号証~甲第6号証(以下、「甲1」~「甲6」という。)を提出して、以下の理由を申し立てた。
ア 訂正前の請求項1~9に係る発明は、甲2~甲4の記載を参酌すると、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲1若しくは甲1及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
イ 訂正前の請求項1~9に係る発明は、甲6に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2) 証拠方法
上記甲1~甲6は、以下のとおりである。
甲1:特開2008-162849号公報
甲2:特開2001-172472号公報
甲3:特開2015-44939号公報
甲4:特開2015-44940号公報
甲5:特開昭63-233008号公報
甲6:特開平10-251042号公報
(3)甲1~甲6の記載事項
甲1~甲6には、それぞれ次の事項が記載されている。
ア 甲1
1a 「【請求項1】
表面の一部又は全面にアルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属及び/又はその酸化物が、金属換算で200~2,000ppm存在する高純度クリストバライト粒子。
【請求項2】
ウラン及びトリウムのそれぞれの含有量が1ppb以下、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のそれぞれの含有量が10ppm以下、最大粒径が200μm以下である請求項1記載の高純度クリストバライト粒子。
【請求項3】
クリストバライト粒子が球状である請求項1又は2記載の高純度クリストバライト粒子。」
1b 「【請求項4】
ウラン及びトリウムのそれぞれの含有量が1ppb以下、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のそれぞれの含有量が10ppm以下、最大粒径が200μm以下の高純度非晶質シリカを、アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属を含有する有機金属化合物又は該有機金属化合物のゾルもしくはスラリーで表面処理した後、1,000~1,600℃で加熱処理することを特徴とする高純度クリストバライト粒子の製造方法。」
1c 「【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ウラン及びトリウムの含有量が少なく、かつアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が少ない高純度のクリストバライト粒子、及びこのクリストバライト粒子を短時間で効率よく、しかも経済的に製造する方法を提供することを目的とする。」
1d 「【0012】
本発明で使用する原料となる高純度非晶質シリカは、合成又は天然に存在する高純度水晶や結晶シリカを粉砕し所定の粒度に調整したものや、この粒度調整した粉砕粒子を火炎中に通し溶融球状化させることで得られる球状非晶質シリカである。必要とする粒度に調整するために異なる粒度の球状シリカをブレンドしても良い。」
1e 「【0014】
また、本発明で使用する高純度非晶質シリカは、ウラン及びトリウムのそれぞれの含有量(金属元素質量換算、以下同じ)が1ppb以下、好ましくは0.5ppb以下、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のそれぞれの含有量が10ppm以下、好ましくは5ppm以下のものを使用する。 ・・・・・ また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が多いと半導体封止用樹脂組成物の充填剤に使用した場合、半導体素子の電極が腐食する問題がある。 ・・・・・ 」
1f 「【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、下記の例において、不純物及び金属含有量は、ICP-AES、ICP-MS等の装置により予め濃度既知の試料を用いて作成しておいた検量線から求めたものである。測定方法としては、原料(シリカ又はクリストバライト)0.50gをポリテトラフルオロエチレン容器に精秤し、1mLの硫酸と5mLのフッ化水素酸を加えて200℃で加熱し、シリカ又はクリストバライトを揮散除去した。乾固の後、0.5mLの硝酸と数滴の過酸化水素を加えた。過酸化水素の発泡が穏やかになった後、15mLのポリプロピレン容器に移して純水を加えて5mLの定容とした。そのままもしくはその0.15mLを希硝酸溶液で3.0mLに希釈してICP-AESに供して金属不純物元素を測定した。・・・・・
また、平均粒径及び最大粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した値を示し、比表面積はBET法により測定した値を示す。
【0027】
表1に本発明の実施例、比較例で使用した原料である高純度シリカ(シリカA~C)、及び通常のシリカ(シリカD)中の不純物含有量、並びに粒度について示した。
【0028】
【表1】
【0029】
表2に本発明の実施例、比較例で表面処理に使用した有機金属化合物、該化合物のゾル又はスラリー中の金属元素の含有量を示した。なお、下記表中、%は質量%である。
【0030】
【表2】
」
1g「【0031】
[実施例1~7、比較例1]
1kgの表1で示されるシリカを高速混合装置に入れ、高速で混合しながら表2で示されるアルミニウム、チタン又はマグネシウム化合物溶液をスプレーで塗布し、シリカの表面処理を10分間行った。表面処理量を下記表3に示す。表面処理したシリカを100℃で5時間乾燥させた後、1次粒子に解砕した。
解砕した1次粒子を常温から1,400℃まで6時間かけて昇温し、1,400℃で6時間維持、その後1,400℃から600℃まで6時間、600℃から200℃まで4時間かけて下げた。200℃から室温までは自然放冷した。
得られたクリストバライト粒子について、金属含有量、最大粒径及びクリストバライト化率を測定した。なお、クリストバライト化率の算出方法は、下記に示す。これらの結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
表3の結果から明らかなように、実施例1~5で得られたクリストバライト表面には、XMA(X線マイクロアナライザー)による分析で、いずれもアルミニウム元素が観測された。また、実施例6のクリストバライト表面にはチタン元素が確認された。実施例7のクリストバライト表面にはマグネシウム元素が確認された。」
イ 甲2
2a 「【0019】ここで、上記球状クリストバライトは、従来公知の製法で製造された球状溶融シリカのクリストラバイト化により得ることができるが、原料としての球状溶融シリカとしては、平均粒径が0.3~50μm、特に0.3~30μm、とりわけ0.3~20μmで最大粒径が150μm以下、特に100μm以下、とりわけ75μm以下のものが望ましい。
・・・・・
【0020】また、球状溶融シリカは、不純物として含まれるアルカリ金属やハロゲン元素量がそれぞれ20ppm以下、特に10ppm以下であることが好ましい。いずれかの不純物量が20ppmを超える球状溶融シリカをクリストバライト化したものを充填剤として使用すると、耐湿性低下が生ずる場合がある。なお、上記アルカリ金属やハロゲン元素量は、具体的には、試料10gを250ccのプラスティック容器に入れ、純水100ccを加え、30分間振とう後、95℃の恒温槽で20時間放置し、次いで試料を分離した後の抽出水のアルカリ金属やハロゲン元素量をイオンクロマトグラフィーにより測定した値である。」
ウ 甲3
3a 「【0019】
(B)無機充填剤
本発明において無機充填剤の種類は特に制限されず、半導体封止用樹脂組成物の無機充填剤として公知のものを使用できる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等のシリカ類・・・・・が挙げられる。・・・・・中でも、シリコンに近い熱膨張係数を得るためには、溶融シリカが好ましく、形状は球状のものが好適である。無機充填剤の平均粒径は0.1~40μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~15μmであるのがよい。該平均粒径は、例えばレーザー光回折法等による重量平均値(又はメディアン径)等として求めることができる。
【0020】
無機充填剤は、120℃、2.1気圧でサンプル5g/水50gの抽出条件で抽出される不純物として塩素イオンが10ppm以下、ナトリウムイオンが10ppm以下であることが好適である。10ppmを超えると組成物で封止された半導体装置の耐湿特性が低下する場合がある。」
エ 甲4
4a 「【0024】
(C)無機充填剤
本発明において無機充填剤の種類は特に制限されず、半導体封止用樹脂組成物の無機充填剤として公知のものを使用できる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等のシリカ類・・・・・が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒径や形状は、用途に応じて選択されればよい。中でも、シリコンに近い熱膨張係数を得るためには、溶融シリカが好ましく、形状は球状のものが好適である。無機充填剤の平均粒径は0.1~40μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~15μmであるのがよい。該平均粒径は、例えばレーザー光回折法等による重量平均値(又はメディアン径)等として求めることができる。
【0025】
無機充填剤は、120℃、2.1気圧でサンプル5g/水50gの抽出条件で抽出される不純物として塩素イオンが10ppm以下、ナトリウムイオンが10ppm以下であることが好適である。10ppmを超えると組成物で封止された半導体装置の耐湿特性が低下する場合がある。」
オ 甲5
5a 「【特許請求の範囲】
1) 非晶質シリカをアルカリ成分の存在下で加熱してクリストバライト化するにあたり、比表面積(BET法)が50m2/g以上である非晶質シリカを、該シリカに対して5~600ppmの範囲のアルカリ金属元素の存在下で、温度1000~1300℃の範囲で加熱して部分的ないしは完全にクリストバライト化し、ついで1300℃を超える温度で加熱して脱アルカリを行うことを特徴とする非焼結クリストバライト化シリカの製造方法。」
5b 「以下、本発明について詳述する。本発明の実施態様は、次の3工程から構成される。
・工程-1:(アルカリ成分調整工程)
原料シリカに対するアルカリ成分濃度を調整する。
・工程-2:(クリストバライト化工程)
アルカリ成分濃度を調整したシリカを、1000~1300℃の温度範囲で加熱処理し、部分的ないしは完全にクリストバライト化したシリカを非焼結ないしは凝集状態で得る。
・工程-3:(脱アルカリ工程)
ついで、得られたクリストバライト化シリカを1300℃を超える温度で加熱処理して脱アルカリすることにより、クリストバライト化低アルカリシリカを非焼結ないし凝集状態で得る。」(2ページ左下欄1行~15行)
5c 「〔工程-1:(アルカリ成分調整工程)〕
本発明の方法で用いられる原料シリカは、比表面積(BET法)が50m2/g以上である非晶質シリカであれば、その製法は限定されず、何れの方法で得られたものであってもよい。このようなシリカは、・・・・・などの明細書に記載の方法によって得ることができる。
・・・・・
上記方法によって、アルカリ金属元素や塩素のほか、ウランなど放射性を有する物質、更には、Al, Feなと各種の不純物含有率がいずれも1ppm以下と極めて少なく、更に、任意の比表面積を有する高純度シリカを得ることができる。
また、別の方法としてアルコキシシランを加水分解することによっても得ることができる。
半導体分野に用いられる透明石英ガラス製造用の原料シリカは、不純物ができるだけ少ない方がよく、Al, P, B, アルカリ金属元素・・・・・などの遷移金属元素などそれぞれの含有率が1ppm以下であることが望まれている。
・・・・・従って、たとえば前記のような方法によって得られる、Al含有率の少ない合成シリカは半導体分野向けの高純度石英ガラス製造用原料として有利である。
・・・・・
本発明の方法でアルカリ金属元素とは、Na,K,Liからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素をいう。これらの元素は少量で非晶質シリカのクリストバライト化速度を増大させると共に、クリストバライト化後の脱アルカリが容易である。
本発明の方法においては、シリカに対する前記アルカリ金属元素の濃度が5~600ppm・・・・・更に好ましくは5~100ppmの範囲となるよう調整する。アルカリ金属元素の濃度が、5ppm未満の場合には非晶質シリカのクリストバライト化速度を増大させる度合いが小さくて実用的でなく、また一方、600ppmを超えると脱アルカリに長時間を要するので好ましくない。」(2ページ右下欄2行~3ページ左下欄12行)
5d 「〔工程-2:(クリストバライト化工程)〕
工程-1で得られたアルカリ成分調整シリカを本工程において、温度1000~1300℃・・・・・の範囲で加熱処理し、クリストバライト化する。
・・・・・
クリストバライト化速度は処理温度の上昇と共に増大するので、本工程においては1000~1300℃の温度範囲で1300℃にできるだけ近い温度で処理するのが有利である。
本工程における加熱処理時間は、20分以上、好ましくは1~10時間の範囲である。
・・・・・
本発明の方法において加熱処理を行う際の雰囲気としては、酸素や炭酸ガスなどでもよいし、必要によっては窒素やアルゴンなどの不活性ガスを用いることもできる。実用的には空気とするのがよい、加熱処理を行う装置としてはシリカを所定の温度に維持することができればよく、管状炉,箱型炉,トンネル炉などの他、流動焼成炉などを使用することができ、加熱方式としては、電熱,燃焼ガスなどによればよい。
〔工程-3: (脱アルカリ処理)〕
本工程においては熱拡散による脱アルカリ処理を行う、工程-2で得られた部分的ないし完全にクリストバライト化した粒子状のシリカはクリストバライトの融点近くまで焼結性を示さなくなる。
よって、本発明の方法においてはクリストバライト化に際して添加したアルカリ成分を除去する為に、1300℃を超え、得られたクリストバライト化シリカが焼結性を示す温度より低い温度範囲で加熱処理する。
本工程において処理時間が長い程脱アルカリが進むが、実用的には6~20時間程度である。
粒子状クリストバライト化シリカは、クリストバライト化シリカ焼結体に比較して熱拡散による脱アルカリが容易である。飛散するアルカリ成分を除去するためには通風状態で加熱処理することが好ましく、特に本発明の方法のように少ないアルカリ添加量でクリストバライト化したシリカの場合にはその効果が顕著である。」(4ページ左上欄4行~4ページ左下欄20行)
5e 「実施例-1
比表面積:779m2/g(BET法),粒径範囲:30~400μm,Al,Na,K,Li がそれぞれ1ppm以下であるシリカ乾粉(水分8%含有)を原料とした。
NaOH 1/100規定水溶液8ccをイオン交換水905ccに添加してアルカリ成分(Na)含浸用溶液を調製し、温度50℃に保持した該液中に上記シリカ87gを浸漬して、50℃で撹拌しながら1時間アルカリ処理した。アルカリ処理の後、遠心分離器で液分を分離した後150℃で1夜乾燥した。
乾燥前Na含浸シリカは乾燥シリカ基準で含液率が約 150%,Na吸着量は20 ppm、乾燥して得られたNa含浸シリカの重量は86.5gであった。
次いで、Na含浸シリカ30gをアルミナ製ルツボ(6mmφ ×7.5 mmH)に充填し、1290℃で2時間加熱した後、温度1400℃で更に8時間加熱した。
得られた粒子状シリカは、真比重:2.33,X線回折の結果からもクリストバライト化シリカであることが確認された。また、シリカ中の不純物が、Al<1ppm, K<0.1ppm,Li<0.1ppm,Na:0.6ppmである非焼結クリストバライト化高純度シリカであった。」(5ページ左上欄1行~右上欄2行)
5f 「参考例-1,および比較例-1,
実施例-1に準じて調製して得られたアルカリ含浸シリカ乾粉を、それぞれ800,1200,1300,1400℃の各温度でおのおの7時間づつ第1段階の加熱処理を行い、表-1に示す結果を得た。
表-1,第1段階加熱処理温度の影響;
*1・・・原料シリカに対する値.
参考例ではX線回折の結果は、いづれもクリストバライト化シリカであることが確認され、また非焼結体ないしは凝集体で得られた。
比較例1-1では、非晶質のままでクリストバライト化していない、また、比較例1-2ではクリストバライト化しているが強い焼結性が認められ、粉砕装置を用いないと粒子状にすることができなかった。」(5ページ左下欄13行~右下欄末行)
5g 「実施例-5,および比較例-2.
粒径が30~400 μmで比表面積の異なる、アルカリ金属元素の濃度がそれぞれ1ppm以下である高純度シリカに実施例-1と同様にしてNa含浸ならびに加熱処理を行い、表-3に示す結果を得た。
表-3. 原料シリカ比表面積の影響;
*1・・・原料シリカに対する値.
実施例ではいづれも、X線回折の結果はクリストバライト化シリカであることが確認され、また非焼結体ないしは凝集体であった。
比較例では、いづれも非晶質のままで焼結体となり脱アルカリが妨げられている。」(6ページ右上欄1行~末行)
カ 甲6の記載事項
6a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 結晶性シリカ粒子の表面に、酸化アルミニウム系セラミックからなる被膜が形成されてなることを特徴とするシリカフィラー粉末。
【請求項2】 結晶性シリカ粒子が、クリストバライトを主結晶とすることを特徴とする請求項1のシリカフィラー粉末。
【請求項3】 結晶性シリカ粒子が、球状であることを特徴とする請求項1のシリカフィラー粉末。」
6b 「【0014】次に、上記シリカ粉末の製造方法の一例を以下に説明する。
【0015】まず非晶質シリカ粒子と、アルミナ微粉、ムライト微粉等の酸化アルミニウム系セラミック微粉を混合する。ここで球状のフィラーを得たい場合は、球状の非晶質シリカ粒子を使用すればよい。・・・・・
【0016】次いで混合粉末を焼成する。焼成は1300~1600℃で5~20時間、好ましくは約1400~1500℃で5~10時間焼成する。焼成温度が1300℃よりも低いとクリストバライト等の結晶の生成がきわめて緩慢になり、焼成に著しく時間がかかるので好ましくない。1600℃よりも高くなると堅く焼結するため、表面に被膜を有するシリカフィラー粉末を得ることが困難になる。混合粉末を焼成すると、非晶質シリカ粒子が結晶化して、クリストバライト等を主結晶とする結晶性シリカ粒子となり、また粒子表面に微粉が固着して被膜を形成する。焼成条件によっては、さらに結晶性シリカ粒子同士が微粉を介して軽く凝集し、脆い塊となる。この場合は、軽く解砕し、分級することにより、表面に被膜が形成されたシリカフィラー粉末を得ることができる。
【0017】また、上記以外の製造方法として、例えば非晶質シリカ粒子の表面に、アルミン酸ナトリウム等のAlを含む液体を塗布し、乾燥後、加熱して粒子表面に酸化アルミニウム系セラミックを生成させた後、焼成する方法等が使用できる。」
6c 「【0023】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0024】(実施例1)表1は、本発明のシリカフィラー粉末(試料No.1~7)を示している。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】各試料は次のようにして調製した。
【0028】まず、出発原料として球状の非晶質シリカ粒子(ICパッケージ用プラスチック封止材に用いられる市販の充填材)を用意した。この非晶質シリカ粒子は、最大45μmで結晶3%以下のものであり、粉末X線回折では非晶質を示すブロードなピークのみで、結晶のピークは見られなかった。またアルミナ微紛として、市販のアエロジルを用いた。
【0029】次に両者を振動混合器で充分に混合した後、1450℃で10時間焼成した。得られた焼成物のうち、試料No.2~7は粉末状であった。また試料No.1は軽く凝集していたため、解砕器で解砕した。その後、目開き45μmの篩を通過させ、試料を得た。
【0030】このようにして得られた各試料について、析出結晶、真球度、被膜の膜厚、熱膨張係数、及びα線放出量について評価した。結果を表1に示す。
【0031】表から明らかなように、本発明の実施例である試料No.1、2、5~7は、クリストバライトを主結晶とする結晶性シリカ粒子の表面に、ムライトからなる被膜が形成されていることが確認された。試料No.3、4は、クリストバライトを主結晶とする結晶性シリカ粒子の表面に、ムライト及びアルミナ(コランダム)からなる被膜が形成されていた。各試料は、結晶性シリカ粒子の真球度が0.3~1.0、被膜の膜厚が結晶性シリカ粒子の長径の1~9%であり・・・・・」
(4)採用しなかった申立理由についての判断
ア 「(1)ア」について
本件発明1~4、6、7、9が、甲1に記載された発明であるか、または、甲1若しくは甲1及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかどうかについて検討する。
(ア)甲1に記載された発明
記載事項1a、1bによると、甲1には、高純度クリストバライト粒子及びその製造方法について記載されており、記載事項1gの表3によると、比較例1のクリストバライト粒子は、表面のAlは870ppmであり、また、Na+は1ppm、K+は2ppm含み、クリストバライト化率は97%である。
また、上記表3によると、上記クリストバライト粒子は最大粒径が5μmである(なお、記載事項1gに「1kgの表1で示されるシリカを・・・」(段落【0031】)と記載され、記載事項1fの表1のシリカ粒子を使用してクリストバライト粒子を得ている。当該クリストバライト粒子は、表面処理後に解砕されたものであって、上記表1において、シリカD(比較例1)と同じ粒度(平均粒径、最大粒径、及び比表面積)であるシリカBを用いた、上記表3の実施例3は、比較例1と同様な解砕処理を行ったことで、クリストバライト粒子の最大粒径が75μmとなっているから、上記表3の比較例1の最大粒径「5μm」の記載は、「75μm」の誤記である可能性はあるが、以下の判断には影響しないので、上記表3に記載のとおり最大粒径は5μmであると認定した)。
以上のことから、本件請求項1の記載に沿って整理すると、甲1には、
「表面に870ppmのアルミニウムを含み、クリストバライト化率が97%であり、アルカリ成分をNa+として1ppm、K+として2ppm含み、最大粒径が5μmである、球状クリストバライト粒子。」
の発明(以下、「甲1A発明」という。)が記載されているといえる。
また、記載事項1b、記載事項1fの表1、2及び記載事項1gの表3などによると、比較例1は、Alを30ppm、Naを10ppm及びKを12ppm含むシリカDを使用し、これに表2のIIの有機アルミニウム化合物で表面処理を行った後、1400℃で6時間維持することを含む加熱処理を行うことにより、球状クリストバライト粒子を得ている。
以上のことから、本件請求項7の記載に沿って整理すると、甲1には、
「アルミニウムを30ppm、アルカリ成分をNaとして10ppm、Kとして12ppm含むシリカを有機アルミニウム化合物により表面処理し、 表面処理されたシリカの平均粒径が18μmであり、
表面処理されたシリカを1400℃で6時間維持して加熱処理し、
自然放冷した球状クリストバライト粒子が、クリストバライト化率が97%である、球状クリストバライト粒子の製造方法。」
の発明(以下、「甲1B発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)発明の対比・判断
(i)本件発明1について
本件発明1と甲1A発明とを対比する。
甲1A発明の「クリストバライト」とは、シリカの結晶構造の一つであるから、甲1A発明の「クリストバライト化率が97%」であることは、本件発明1の「結晶相を80%以上」含むことに相当する。
また、甲1A発明の「球状クリストバライト粒子」は、本件発明1の「球状結晶性シリカ粒子」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1A発明とは、
「アルミニウムを含み、結晶相を80%以上含み、アルカリ成分を含む、球状結晶性シリカ粒子。」
の点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:本件発明1は、400~5000ppmのアルミニウムを含むことが特定されているのに対して、甲1A発明は、クリストバライト粒子の表面に870ppmのアルミニウムを含む点。
相違点2:本件発明1は、平均粒径(D50)が1~100μmであること特定されているのに対して、甲1A発明は、最大粒径が5μmであることが規定されている点。
相違点3:本件発明1は、アルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むこと特定されているのに対して、甲1A発明は、アルカリ成分をNa+として1ppm、K+として2ppm含むことが規定されている点。
申立人は、上記相違点3に関して、記載事項1gの「比較例1」に係るシリカ粒子の「アルカリ成分をNa+として1ppm、K+として2ppm含む」点は、甲2の記載事項2a、甲3の記載事項3a及び甲4の記載事項4aによると、シリカ粒子から溶出する金属イオンの量であって、粒子に含有されるNaとKの量ではなく、当該「比較例1」に係るクリストバライト粒子のアルカリ含有量は、記載事項1fの表1の原料であるシリカDのNaとKの量(Naが10ppm、Kが12ppm)がそのまま引き継がれ、22ppmとなる蓋然性が高いから、本件発明1と、「比較例1」から認定されるクリストバライト粒子の発明とは、アルカリ成分の含有量の点は差異がないと主張している(特許異議申立書10/19ページ6行~13/19ページ6行)。
そこで、この主張について検討すると、甲1A発明の認定に用いた甲1の「比較例1」は、記載事項1f、1gによると、Naを10ppm、Kを12ppm含有する原料であるシリカDを、Na及びKを不純物として含む有機アルミニウム化合物で表面処理した後、乾燥させ1次粒子に解砕し、解砕した1次粒子を、1400℃で6時間維持することを含む加熱処理を行ってクリストバライト化してクリストバライト粒子を得たものである。
一方、甲5には、記載事項5a~5dによると、アルカリ金属元素の濃度を5~600ppmとした非晶質シリカを1000~1300℃で加熱し、次いで1300℃を超える温度で加熱して脱アルカリするクリストバライト化シリカの製造方法について記載されている。そして、記載事項5e、5fによると、1400℃で7時間加熱処理することによりシリカ粒子の脱アルカリ及びクリストバライト化が進行し、また、記載事項5gによると、「実施例5,および比較例2」は、1400℃で8時間加熱処理することにより、原料シリカの比表面積によって脱アルカリ量は変動するものの、比表面積が小さい場合であっても、シリカに含まれるアルカリ量は減少していることが把握できる。
そうすると、甲1の「比較例1」における1400℃で6時間維持する熱処理は、甲5に記載された脱アルカリ工程と同じ温度で同程度の長時間の熱処理を行っているといえ、当該熱処理によりクリストバライト粒子のアルカリ成分は減少すると推認できるから、甲1A発明に係るクリストバライト粒子は、原料のアルカリ成分が維持されて、本件発明1と同じ20ppm以上のアルカリ成分を含んでいるとは必ずしもいうことはできない。
したがって、相違点3に係る甲1A発明のアルカリ成分濃度は、溶出する金属イオンの量を示すとしても、本件発明1のアルカリ成分の含有量が、甲1A発明と一致するとはいえない。
次に、甲1において、記載事項1c、1eによると、アルカリ金属の含有量が少ない高純度のクリストバライト粒子を提供することを目的とし、原料となる非晶質シリカ粒子のアルカリ成分は、10ppm以下、好ましくは5ppm以下であるものを使用することとされ、クリストバライト粒子はアルカリ成分を含有することは望ましくないものとされているから、甲1には、クリストバライト粒子のアルカリ成分を20ppm以上にするという動機はない。
一方、甲5には、記載事項5aなどによると、非晶質シリカのアルカリ成分濃度を5~600ppmに調製してクリストバライト化を行うことが記載されているが、記載事項5c,5eによると、原料シリカ及びクリストバライト化シリカのアルミニウムの含有量は1ppm以下に維持するものであるといえる。
そうすると、甲5の記載を参照しても、甲1A発明において、アルミニウムを含有したままクリストバライト粒子のアルカリ成分を20ppm以上とする動機があるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明といえず、また、甲1又は甲1及び甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ii)本件発明2~4、6について
本件発明2~4、6は、本件発明1の特定事項の全てを含むものであるから、上記(i)と同様の理由により、本件発明2~4、6は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1又は甲1及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(iii)本件発明7について
本件発明7と甲1B発明とを対比すると、本件発明7は、少なくともアルミニウム成分及びアルカリ成分の含有量を調製したシリカ粉末を溶射する点で、甲1B発明と相違している。
そして、甲1、甲5の記載事項をみても、上記シリカ粉末を溶射する点は、記載も示唆もされていない。
また、アルミニウム及びアルカリ成分を調製されたシリカ粉末を、熱処理前に溶射するという当該相違点に係る本件発明7の発明特定事項が、本件優先日前に周知慣用技術であったともいえない。
なお、甲1の記載事項1dには、球状非晶質シリカを得る際に、粉砕粒子を火炎中に通し溶融球状化させること、すなわち溶射することについて記載されているが、これは、有機アルミニウム化合物などで表面処理するための原料となる球状非晶質シリカの調製について記載したものであって、本件発明7のように、アルミニウム及びアルカリ成分の含有量を調製したシリカ粉末を溶射することを示唆するものとはいえない。
また、申立人は、甲5の4ページ右上欄13行目~左下欄1行目において、「・・・加熱方式としては・・・燃焼ガスなどによればよい。」との開示があり、前記「燃焼ガス」の記載は、本件明細書の【0032】の「溶射では、粒子を火炎中に通すことにより・・・」における「火炎」に相当すると主張している(特許異議申立書14/19ページ10~17行)。
しかし、記載事項5dによると、上記「燃焼ガス」は、シリカの加熱処理を行う装置として、管状炉などの加熱方式を記載しているにすぎず、シリカを燃焼ガス中に通すことが示唆されているわけではないから、この主張は採用できない。
よって、本件発明7は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1又は甲1及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(iv)本件発明9について
本件発明9は、本件発明7の特定事項の全てを含むものであるから、上記(iii)と同様の理由により、本件発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1又は甲1及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 「(1)イ」について
本件発明1~4、6、7、9が、甲6に記載された発明であるか、または、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかどうかについて検討する。
甲6の記載事項6a~6cをみると、酸化アルミニウム系セラミックからなる被膜が表面に形成され、クリストバライトを主結晶とし、球状である結晶性シリカ粒子からなるシリカフィラー粉末、及び非晶質シリカ粒子の表面に酸化アルミニウム系セラミックからなる被膜を形成した後、1300~1600℃で5~10時間焼成する上記シリカフィラー粉末を製造する方法について記載されていると認められる。
しかし、特に上記シリカフィラー粉末がアルカリ成分を金属換算で20~300ppm含むこと、及び当該アルカリ成分を含むようにシリカ粉末を調製して、調製されたシリカ粉末を溶射することについて、甲6には、何ら記載も示唆もされていない。
よって、本件発明1~4、6に係る球状結晶性シリカ粒子の発明及び本件発明7、9に係る球状結晶性シリカ粒子を製造する方法の発明は、甲6に記載された発明とはいえず、また、甲6に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
5 申立人の意見について
申立人は、平成30年10月 2日付けの意見書において、本件発明は、依然として下記取消理由を有すると主張しているので、以下に検討する。
(1) 特許法第36条第4項第1号
特許権者の意見書において、アルカリ成分が少ない参考例D4は、アモルファス相を含むことから、アルカリ成分の意義が裏付けられたとしているが、甲1をみるとアルミニウム含有量が多い範囲では、アルミニウムの作用だけで結晶化度の高いクリストバライトが得られるから、アルカリ成分を存在させる意義が充分に示されていないと、申立人は主張している。
しかし、上記「3(2)」に記載したとおり、本件明細書の段落【0029】を参照すると、本件発明の球状結晶性シリカのアルカリ成分を300ppmを上限として存在させる理由は明らかであるから、申立人の当該主張に理由はない。
(2) 特許法第29条第2項
甲1には、アルカリ成分の含有量にかかわらず、アルミニウムの含有量が200~2000ppmの範囲であれば高い結晶化度のクリストバライトが得られることが開示され、また、甲5には、アルカリ成分(アルカリ金属)を5~600ppm含有させることで結晶化度の高いクリストバライト化シリカが得られることが開示さているから、高い結晶化度を実現するために甲1と甲5を組み合わせることに困難性はなく、また、甲5のアルカリ成分を30ppm含有する「参考例1-2」は高い結晶化度が実現できているから、本件発明は顕著な効果を奏するものでもないと、申立人は主張している。
しかし、上記「4(4)ア(イ)(i)」の本件発明1の対比・判断において記載したとおりであって、甲1では、クリストバライト粒子のアルカリ金属の含有量が10ppm以下などと規定するものであり、本件発明のようにクリストバライト粒子のアルカリ成分を20ppm以上とする動機は存在せず、また、甲5では、Alはできるだけ少ない方がよく、1ppm未満に規定されるものであって、本件発明のようにアルミニウムを400ppm以上とする動機は存在しないから、甲1及び甲5の記載に基づいて、アルミニウム及びアルカリ成分の含有量を本件発明のように設定することは、容易になし得るものであるとはいえない。
よって、申立人の当該主張に理由はない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、当審で通知した取消理由、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1~4、6、7、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4、6、7、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項5、8に係る特許は、訂正により削除されたため、これらの特許に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700284