特許異議申立
2018-700141
画像表示装置
- 審判番号
- 2018-700141
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-028257外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月22日
- 審決日
- 2018年12月18日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】鈴木 美香
- 分類
- P1651.121-YAA(G02F) / P1651.537-YAA(G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6182891号発明「画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6182891号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第6182891号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6182891号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成25年2月15日の出願であって、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、同年8月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年2月22日に特許異議申立人鈴木美香により特許異議の申立てがされたものである。
以後の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年 4月 4日:取消理由通知(4月6日発送)
同年 6月 5日:訂正請求書・意見書
同年 6月14日:通知書(6月19日発送)
同年 7月19日:意見書(特許異議申立人)
同年 8月13日:取消理由通知(8月16日発送)
同年10月15日:訂正請求書・意見書
同年10月26日:通知書(10月30日発送)
同年11月29日:意見書(特許異議申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
平成30年10月15日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第6182891号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるものである。
2 訂正請求の内容
本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項について請求されたものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸は、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸と略平行又は略垂直である、」と記載されているのを
「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が15度~30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、」に訂正する(なお、下線は、当審で付した。以下、同じ。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上である、請求項1に記載の画像表示装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が60度~80度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が20度~30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、項番を請求項4に改め、
「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上である、
請求項2に記載の画像表示装置。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件特許明細書の【0013】に、
「なお、図1においては、視認側偏光板(5)の視認側に設ける機能層としてタッチパネル(6)を記載したが、タッチパネルに限定されるものではなく、フィルムを有する層であればどのような層であってもよい。また、タッチパネルとして、抵抗膜式のタッチパネルを記載したが、投影型静電容量式等の他の方式のタッチパネルを使用することも可能である。図1のタッチパネルは、透明導電性フィルムを2枚有する構造であるが、タッチパネルの構造はこれに限定されず、例えば、透明導電性フィルム及び/又は飛散防止フィルムの数は1枚であってもよい。液晶表示装置(1)において、飛散防止フィルムは、タッチパネル(6)の両側に必ず配置しなければならないわけではなく、どちらか一方に配置した構成でもよいし、又は両側に飛散防止フィルムを配置しない構成でもよい。飛散防止フィルムは、接着層を介してタッチパネル上に配置されてもよく、接着層を介さずにタッチパネル上に配置されても良い。」と記載されているのを、
「なお、図1においては、視認側偏光板(5)の視認側に設ける機能層としてタッチパネル(6)を記載した。また、タッチパネルとして、抵抗膜式のタッチパネルを記載したが、投影型静電容量式等の他の方式のタッチパネルを使用することも可能である。図1のタッチパネルは、透明導電性フィルムを2枚有する構造であるが、タッチパネルの構造はこれに限定されず、例えば、透明導電性フィルムの数は1枚であってもよい。液晶表示装置(1)において、飛散防止フィルムは、タッチパネル(6)の両側に必ず配置しなければならないわけではなく、どちらか一方に配置した構成でもよい。」に訂正する。
3 訂正の適否
訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1
ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、下記(ア)ないし(カ)の事項を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(ア)偏光子保護フィルムと視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であること。
(イ)光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであること。
(ウ)偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であること。
(エ)光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が15度~30度であること。
(オ)光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されていること。
(カ)視認側飛散防止フィルムは、(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであること。
イ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記ア(ア)に関連する記載
「【0007】
……
項2.
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上である、項1に記載の画像表示装置。
項3.
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、項1又は2に記載の画像表示装置。」
(イ)上記ア(イ)に関連する記載
「【0028】
低リタデーション配向フィルムのリタデーションは、3000nm未満であれば特に制限されない。低リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、それを単独で用いた場合に虹斑が生じ得るという観点から、好ましくは50nm以上、好ましくは100nm以上、好ましくは200nm以上、好ましくは300nm以上、好ましくは400nm以上、又は好ましくは500nm以上である。…。」
(ウ)上記ア(ウ)に関連する記載
「【0022】
2枚の高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムの配向主軸の向きと視認側偏光子の偏光軸の向きとの関係は任意であるが、虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)が、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角は、45度±30度以下であり、…好ましくは45度である。」
(エ)上記ア(エ)に関連する記載
「【0020】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が高リタデーション配向フィルム(2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合は、より高いリタデーションを有する方)の配向主軸と略平行又は略垂直であることが好ましい。ここで、略平行であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角(低リタデーション配向フィルムと高リタデーション配向フィルムとが同一平面上にあると仮定する)が、好ましくは0度±30度以下、好ましくは0度±20度以下、好ましくは0度±15度以下、好ましくは0度±10度以下、好ましくは0度±7度以下、好ましくは0度±5度以下、好ましくは0度±3度以下であることを意味する。…。」
(オ)上記ア(オ)及び(カ)に関連する記載
「【0012】
…透明導電性フィルム(11,12)は、基材フィルム(11a,12a)と透明導電層(11b,12b)とを積層したものである。また、タッチパネル(6)の光源側及び視認側には、接着層を介して、透明基体である飛散防止フィルム(14,15)が設けられている。」
「【0057】
…基材フィルムには、高リタデーション配向フィルム、低リタデーション配向フィルム、又は従来から基材フィルムとして用いられる他のフィルム若しくはガラス板等の剛性板を用いることができる。」
「【0069】
配向フィルムを画像表示装置の表面カバー板の飛散防止フィルムとして使用する場合、配向フィルムの配置は表面カバー板の光源側であっても視認側であっても良い。…。」
「【0095】
<画像表示装置の構成>
……
(6)タッチパネル:ガラス基材の上にITOからなる透明導電層を設けたITOガラスを用いて作製した抵抗膜方式タッチパネル
(7)視認側飛散防止フィルム:後述する配向フィルム1又は2」
(カ)上記(ア)ないし(オ)からして、
上記訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったところ、その請求項間の引用関係を解消して、独立形式の記載に改めるための訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ また、訂正前の請求項2に係る発明は、「偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上である」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明に、上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)の事項に加えて、下記の事項を特定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
「光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が60度~80度であること。」(以下「追加事項1」という。)
ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)に関連する記載
上記「(1)訂正事項1 イ」で検討したとおり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められる。
(イ)上記「追加事項1」に関連する記載
「【0020】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が高リタデーション配向フィルム(2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合は、より高いリタデーションを有する方)の配向主軸と略平行又は略垂直であることが好ましい。…略垂直であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角が、好ましくは90度±30度以下、好ましくは90度±20度以下、好ましくは90度±15度以下、好ましくは90度±10度以下、好ましくは90度±7度以下、好ましくは90度±5度以下、好ましくは90度±3度以下であることを意味する。」
(ウ)上記(ア)及び(イ)からして、
上記訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったところ、請求項2の記載を引用しないものとした上で、請求項1の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の記載に改めるための訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ また、訂正前の請求項3に係る発明は、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明に、上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)の事項に加えて、下記の事項を特定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
「偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであること。」(以下「追加事項2」という。)
「偏光子保護フィルムと視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上であること。」(以下「追加事項3」という。)
「光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が20度~30度であること。」(以下「追加事項4」という。)
ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)に関連する記載
上記「(1)訂正事項1 イ」で検討したとおり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められる。
(イ)上記「追加事項2」に関連する記載
「【0025】
高リタデーション配向フィルムのリタデーションは、虹斑を低減するという観点から、3000nm以上150000nm以下であることが好ましい。高リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、好ましくは4500nm以上、好ましくは6000nm以上、好ましくは8000nm以上、好ましくは10000nm以上である。…。」
(ウ)上記「追加事項3」に関連する記載
「【0019】
…2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションが異なる場合、その差は、例えば、1800nm以上、好ましくは2000nm以上、好ましくは3000nm以上、好ましくは4000nm以上である。」
(エ)上記「追加事項4」に関連する記載
「【0020】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が高リタデーション配向フィルム(2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合は、より高いリタデーションを有する方)の配向主軸と略平行又は略垂直であることが好ましい。ここで、略平行であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角(低リタデーション配向フィルムと高リタデーション配向フィルムとが同一平面上にあると仮定する)が、好ましくは0度±30度以下、好ましくは0度±20度以下、好ましくは0度±15度以下、好ましくは0度±10度以下、好ましくは0度±7度以下、好ましくは0度±5度以下、好ましくは0度±3度以下であることを意味する。…。」
(オ)上記(ア)ないし(エ)からして、
上記訂正事項3は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったところ、請求項1の記載を引用しないものとした訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ また、訂正前の請求項3に係る発明は、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項4は、訂正前の請求項3に係る発明に、上記「(3)訂正事項3 イ」で検討した、「追加事項2」及び「追加事項3」を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(3)訂正事項3 イ」で検討した、「追加事項2」及び「追加事項3」に関連する記載
上記「(3)訂正事項3 ウ」を参照。
(イ)上記(ア)からして、
上記訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ よって、訂正事項4は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正事項5は、記載の一部を削除することにより、「飛散防止フィルム」の意味を明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 上記訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
4 訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項[1-4]について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正は、上記「第2 訂正の適否についての判断」で検討したように認められるものであるから、本件訂正により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が15度~30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項2】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が60度~80度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項3】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が20度~30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項4】
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上である、
請求項2に記載の画像表示装置。」
第4 取消理由通知の取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1ないし3に係る発明の特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「【理由1】(進歩性欠如)
本件の請求項1ないし請求項3に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
文献
(1)甲第1号証:国際公開第2011/162198号
(2)甲第2号証:特開2005-157082号公報
(3)甲第3号証:特開2008-192620号公報
(4)甲第4号証:オリンパス株式会社のホームページ
「[第2回]偏光解析の基礎」
液晶表示装置等の表示装置において、表示装置に含まれるガラス等が飛散することを抑制するために飛散防止フィルムを用いることは、当業者に周知の事項であることを証明するための文献(特許異議申立書第27ないし29頁)
周知文献1:特開2013-20130号公報
周知文献2:特開2011-168652号公報
周知文献3:特開2010-85453号公報
周知文献4:特開2008-216913号公報
周知文献5:特開2000-263702号公報
周知文献6:国際公開第2008/047785号
周知文献7:国際公開第2012/049977号
周知文献8:韓国公開特許公報10-2010-0048187号
なお、甲第5号証は、上記周知文献8(韓国公開特許公報10-2010-0048187号)の日本語訳である。
【理由2】(進歩性欠如)
本件発明1ないし本件発明3は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
文献
甲第1号証:国際公開第2011/162198号
周知文献A:特開2013-20135号公報(【0010】)
周知文献B:特開2010-132526号公報(【要約】)
周知文献C:特開2008-276729号公報(【0037】及び
図6)
周知文献D:特開平4-18628号公報(「作用」の欄及び第3図)
周知文献E:国際公開第2012/161078号(【0113】及び
図15)
【理由3】(明確性要件違反)
本件発明1ないし本件発明3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
2 当審の判断
(1)【理由1】及び【理由2】について
ア 甲第1号証(国際公開第2011/162198号)には、以下の記載がある。
(ア)「請求の範囲
[請求項1] バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は白色発光ダイオードであり、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つは3000~30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。
[請求項2] 前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000~30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなるフィルムである、請求項1に記載の液晶表示装置。
[請求項3] ……
……
[請求項4] 前記白色発光ダイオードが、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される、請求項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。」
(イ)「[0001] 本発明は、液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。詳しくは、視認性が良好で、薄型化に適した液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。
[0002]
……
[0005] ポリエステルフィルムは、TACフィルムに比べ耐久性に優れるが、TACフィルムと異なり複屈折性を有するため、これを偏光子保護フィルムとして用いた場合、光学的歪みにより画質が低下するという問題があった。すなわち、複屈折性を有するポリエステルフィルムは所定の光学異方性(リタデーション)を有することから、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察すると虹状の色斑が生じ、画質が低下する。そのため、特許文献1~3では、ポリエステルとして共重合ポリエステルを用いることで、リタデーションを小さくする対策がなされている。しかし、その場合であっても虹状の色斑を完全になくすことはできなかった。
[0006] 本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、液晶表示装置の薄型化に対応可能(即ち、十分な機械的強度を有する)であり、且つ虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない、液晶表示装置および偏光子保護フィルムを提供することである。」
(ウ)「[0019] これに対して、白色発光ダイオードでは、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有する。そのため、複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目すると、ポリエステルフィルムのレタデーションを制御することで、光源の発光スペクトルと相似なスペクトルを得ることが可能となる。このように、光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで、虹状の色斑が発生せずに、視認性が顕著に改善すると考えられる。
[0020] 以上のように、本発明では幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを光源に用いるため、比較的簡便な構成のみで透過光のスペクトルの包絡線形状を光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。
[0021] 上記効果を奏するために、偏光子保護フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、3000~30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが3000nm未満では、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察した時に強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、次に好ましい下限値は5000nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。
[0022] 一方、リタデーションの上限は30000nmである。それ以上のリタデーションを有するポリエステルフィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか、フィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。」
(エ)「[0057](4)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に後述する方法で作成したポリエステルフィルムを偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置の出射光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。この液晶表示装置は、液晶セルの入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する。液晶表示装置の偏光板の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。」
イ 甲第1号証に記載された発明
(ア)上記ア(ア)及び(イ)の記載からして、甲1号証には、
「バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される白色発光ダイオードであり、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000~30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。」(請求項1-2-4)が記載されているものと認められる。
(イ)上記ア(ウ)の記載からして、
上記(ア)の「白色発光ダイオード」は、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有するものと認められる。
(ウ)また、上記ア(ウ)の記載からして、
上記(ア)の「3000~30000nmのリタデーション」における、より更に好ましい下限値は10000nmであることから、「10000~30000nmのリタデーション」であってもよいものと認められる。
(エ)さらに、上記ア(エ)の記載からして、
上記(ア)の「(射出光側の)偏光子保護フィルムの配向主軸」と「(出射光側に配される偏光板の)偏光子の吸収軸」とは、垂直になるように貼り付けられていることが理解できる。
(オ)上記(ア)ないし(エ)より、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される白色発光ダイオードであって、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有し、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムは、10000~30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。」
ウ 本件訂正発明1について
(ア)対比
a 本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件訂正発明1は、
(a)「偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び 光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、を有し」、
(b)「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり」、
(c)「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であ」るのに対して、
引用発明は、上記(a)ないし(c)に係る構成を備えていない点。
(イ)判断
a 上記<相違点1>のうち、(c)について検討する。
まず、引用発明において、「偏光子保護フィルム」の配向主軸と「偏光子」の偏光軸とが形成する角を「45度±30度以下」とすることが容易になし得ることであるか否かについて検討する。
(a)甲第1号証の記載によれば、引用発明は、液晶表示装置の斜め方向から目視観察した際の虹斑の解消を目的とするものであって、その効果は、[0057]の「虹斑の評価」に関する記載からして、「偏光子保護フィルム」の配向主軸を「偏光子」の吸収軸に対して「垂直」となるように配置することで得られるものと認められる。
そして、甲第1号証には、上記「垂直」以外の配置関係については特段記載されておらず、甲第1号証の記載に接した当業者は、虹斑の解消のためには、両者を「垂直」となるように配置する必要があると理解する。
(b)一方、特許異議申立人の提出した甲第2号証ないし甲第4号証及び平成30年11月29日付け意見書において提出した甲第6号証ないし甲第8号証(特開2011-59488号公報、特開2010-107892号公報、特開2011-107198号公報)には、液晶表示装置を斜め方向から目視観察した際の色ムラ(干渉ムラ)を低減するために、偏光子保護フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角を45度±30度以下とすることは記載されていない。
また、周知文献1ないし8及び周知文献AないしEにも、上記の点は記載されていない。
(c)そうすると、引用発明において、「偏光子保護フィルム」の配向主軸と「偏光子」の偏光軸とのなす角を「45度±30度以下」に設定する動機が生じるものでもない(なお、甲第5号証は、周知文献8(韓国公報)の日本語訳である。)。
(d)よって、引用発明において、上記<相違点1>のうち、(c)の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
b 以上のことから、本件訂正発明1は、上記<相違点1>の、(a)及び(b)について検討するまでもなく、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)まとめ
本件訂正発明1は、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件訂正発明2ないし本件訂正発明4について
(ア)本件訂正発明2ないし本件訂正発明4と引用発明とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件訂正発明2ないし本件訂正発明4は、
(a)「偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び 光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、を有し」、
(b)「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であ」るのに対して、
引用発明は、上記(a)及び(b)に係る構成を備えていない点。
(イ)判断
a 上記<相違点2>について検討する。
上記「ウ 本件訂正発明1について(イ)判断」を参照。
b 上記<相違点2>は、上記<相違点1>の(a)及び(c)と同じであることから、本件訂正発明1と同様の理由により、本件訂正発明2ないし本件訂正発明4は、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)まとめ
本件訂正発明2ないし本件訂正発明4は、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 【理由1】及び【理由2】についてのまとめ
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4に係る特許は、【理由1】及び【理由2】によっては取り消すことはできない。
(2)【理由3】について
ア 特許異議申立人が主張する理由は、おおよそ、以下のものである。
(ア)理由3-1
訂正前の明細書の【0013】には「……飛散防止フィルムは、接着層を介してタッチパネル上に配置されてもよく、接着層を介さずにタッチパネル上に配置されても良い。」と記載されており、接着層を介さない場合に、如何なる構成を有することにより、飛散防止効果が発揮されるのか理解できない。
(イ)理由3-2
本件発明1における、リタデーションが如何なる波長のリタデーションを意味するのか不明である。
イ 判断
(ア)理由3-1について
a 本件訂正(訂正事項5)により、訂正前の明細書の【0013】の記載から、「が、タッチパネルに限定されるものではなく、フィルムを有する層であればどのような層であってもよい」及び「し、又は両側に飛散防止フィルムを配置しない構成でもよい。飛散防止フィルムは、接着層を介してタッチパネル上に配置されてもよく、接着層を介さずにタッチパネル上に配置されても良い。」との記載が削除された。
また、本件訂正(訂正事項1ないし4)により、本件訂正発明1ないし4における「光源側飛散防止フィルム」及び「視認側飛散防止フィルム」は、接着層を介して「透明導電層を有するガラス基材」に積層されることが特定された。
b 上記訂正により、本件訂正発明1ないし本件訂正発明4の「飛散防止フィルム」の意味が明確になったものと認められる。
(イ)理由3-2について
特許権者が提出した乙第1号証ないし乙第3号証によれば、リタデーションは、ナトリウムD線(589.3nm)の波長で測定することが技術常識であると認められる。
ウ 【理由3】についてのまとめ
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4に係る特許は、【理由3】によっては、取り消すことはできない。
3 平成30年11月29日提出の意見書について
特許異議申立人は、意見書において、以下のように主張することから、この点について検討する。
「偏光フィルタを介した観察と、目視観察とは、虹斑の程度が異なるのみで、その原理は同じであり、課題としては同一であるため、当業者は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)に対して、甲第2号証及び甲第8号証に記載された課題解決手段(偏光子の吸収軸に対して、配向フィルムの遅相軸を略45度に配置)を適用する動機付けがある。」(第5頁中段)
(1)甲第1号証に記載された発明は、液晶表示装置の斜め方向から目視観察した際の、虹斑の発生に着目したものであり、【0057】の記載からして、配向フィルムは、直線偏光に対して無作用である。
一方、甲第2号証(特開2005-157082号公報)及び甲第8号証(特開2011-107198号公報)に記載された発明は、偏光サングラスを介して観察した際の虹斑の発生に着目したものであり、配向フィルムは、直線偏光を解消するものであって、液晶表示装置を斜め方向から目視観察した際に虹斑の発生を解消できることまでは記載されていない。
(2)そうすると、甲第1号証に記載された発明において、敢えて、配向フィルムを直線偏光を解消するように配置を変更する動機がない。
(3)よって、特許異議申立人の主張は、上記「2 当審の判断」の判断を左右するものではない。
4 当審の判断のまとめ
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4の特許は、【理由1】ないし【理由3】によっては、取り消すことはできない。
第5 むすび
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4に係る特許は、取消理由通知書に記載された理由、つまり、特許異議申立書に記載された理由によっては取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700141