特許異議申立
2018-700050
光画像計測装置
- 審判番号
- 2018-700050
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-135983外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月19日
- 審決日
- 2018年07月25日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(A61B) / P1651.121-YAA(A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6165935号発明「光画像計測装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6165935号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第6165935号の請求項1ないし8、11、12に係る特許を維持する。
特許第6165935号の請求項9及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6165935号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成24年11月19日を出願日とする特願2012-253281号の一部を平成28年7月8日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月30日に設定登録がされ、その後、平成30年1月19日に、本件特許の請求項1ないし12に係る特許に対し、異議申立人向山正一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
その後、当審より同年3月13日付けで取消理由が通知したところ、その指定期間内である同年5月14日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求がなされ、その訂正請求に対して申立人から同年6月27日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年5月14日付けの訂正請求書でした訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、同訂正請求書の記載によれば、以下のとおりである。
(1) 請求項1に係る訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記合成断層像形成部は、前記2以上の断層像のそれぞれについて、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む当該断層像の部分画像を特定する部分画像特定部を含み、特定された2以上の前記部分画像を合成することにより前記合成断層像を形成することを特徴とする光画像計測装置。」とあるのを、「前記合成断層像形成部は、前記2以上の断層像のそれぞれについて、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む当該断層像の部分画像を特定する部分画像特定部を含み、特定された2以上の前記部分画像を合成することにより前記合成断層像を形成し、前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、前記平行四辺形状部分画像は、前記信号光のスキャン動作期間中に変更された各合焦位置に対して深くなる方向及び浅くなる方向に等距離の幅を有することを特徴とする光画像計測装置。」に訂正する。
(2) 請求項1に係る訂正に伴う訂正事項
請求項1に係る上記の訂正に伴い、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8、11、12も訂正された。
(3) 請求項9に係る訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(4) 請求項10に係る訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(5) 請求項11に係る訂正事項4
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~請求項10のいずれか一項に記載」とあるのを「請求項1~請求項8のいずれか一項に記載」に訂正する。
(6) 請求項12に係る訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~請求項10のいずれか一項に記載」とあるのを「請求項1~請求項8のいずれか一項に記載」に訂正する。
(7) 明細書についての訂正事項6
願書に最初に添付した明細書の段落【0009】に「前記合成断層像形成部は、前記2以上の断層像のそれぞれについて、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む当該断層像の部分画像を特定する部分画像特定部を含み、特定された2以上の前記部分画像を合成することにより前記合成断層像を形成することを特徴とする。」とあるのを、「前記合成断層像形成部は、前記2以上の断層像のそれぞれについて、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む当該断層像の部分画像を特定する部分画像特定部を含み、特定された2以上の前記部分画像を合成することにより前記合成断層像を形成し、前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、前記平行四辺形状部分画像は、前記信号光のスキャン動作期間中に変更された各合焦位置に対して深くなる方向及び浅くなる方向に等距離の幅を有することを特徴とする。」に訂正する。
2 新規事項の有無、訂正の目的の適否、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 請求項1に係る訂正事項1
ア 新規事項の有無について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0052】には、「合焦駆動部31Aは、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。合焦駆動部43Aは、主制御部211の制御を受けて、合焦レンズ43を光軸に沿って移動する。それにより、OCT計測用の光学系の合焦位置が変更される。・・・」と記載され、段落【0142】には、「(変形例3) 上記実施形態では、反復的なスキャンにおいて合焦位置を段階的に変更しているが(図9参照)、合焦位置の変更態様はこれには限定されない。たとえば、反復的なスキャンにおいて合焦位置を連続的に変更することができる。・・・」と記載され、段落【0143】には、「合焦位置は、・・・直線状のグラフTF2に示すように連続的に変更される。・・・」と記載され、段落【0145】には、「・・・この変形例では、断層像内の平行四辺形状の部分領域を用いて合成断層像を形成する。・・・」と記載され、段落【0146】には、「・・・グラフTF2は単調な直線グラフ(つまり傾きが一定のグラフ)であるから、各部分画像PJiは平行四辺形状の画像領域となる。・・・」と記載され、段落【0147】には、「・・・合成断層像形成部234は、このような平行四辺形状部分画像PJ1~PJnを合成することで合成断層像を形成する。・・・」と記載されていることから、訂正事項1のうち、「前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成」する点は、本件特許明細書等の記載の範囲内の事項である。
また、段落【0146】には、「・・・各部分画像PJinは、対応する斜線部分TSの期間における合焦位置のグラフ(に相当する画像領域)TF2に対して±z方向に等距離だけ幅を有する画像領域である。・・・」と記載されていることから、訂正事項1のうち、「前記平行四辺形状部分画像は、前記信号光のスキャン動作期間中に変更された各合焦位置に対して深くなる方向及び浅くなる方向に等距離の幅を有する」点は、本件特許明細書等の記載の範囲内の事項である。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、制御部の制御内容と合成断層像形成部の処理内容を特定することによって特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項1に係る訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 請求項1に係る訂正のまとめ
以上のことから、請求項1に係る訂正事項1の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(2) 請求項1に係る訂正に伴う訂正事項
請求項1に係る上記の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2ないし8、11、12も訂正された。
そして、請求項1に係る訂正事項1は、上記「(1) 請求項1に係る訂正事項」「エ 請求項1に係る訂正のまとめ」のとおりであり、また、訂正事項1による訂正によって、請求項2ないし8、11、12に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
よって、請求項2ないし8、11、12に係る訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(3) 請求項9に係る訂正事項2、及び、請求項10に係る訂正事項3
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項9を削除するものであり、訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2及び3の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(4) 請求項11に係る訂正事項4、及び、請求項12に係る訂正事項5
請求項11に係る訂正事項5、及び、請求項12に係る訂正事項6の訂正は、訂正前の請求項9及び10が削除されたことに伴い、請求項の引用関係を訂正したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項5及び6の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(5) 明細書に係る訂正事項6
明細書に係る訂正事項6は、訂正事項1に伴う訂正後の特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1と同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項の引用関係からみて、訂正事項1ないし5は、請求項1ないし12を一群の請求項として請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
なお、特許権者は、訂正請求書の6(3)ウ「別の訂正単位とする求め」(第10頁第11行ないし第13行)において、「訂正後の請求項11、12については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。」と別の訂正単位とする求めを行っているが、訂正後の請求項11及び12は、「請求項1ないし請求項8のいずれか一項」の記載を引用した請求項であって、訂正請求書の第3頁第2行ないし第3行には、「請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8、11~12も同様に訂正する。」と記載されていることから、別の訂正単位とする求めを行う意義が不明である。特許権者に、この件に関して問い合わせたところ、上記「別の訂正単位とする求め」は、錯誤に基づくものである旨の回答があった。以上のことから、訂正請求書の6(3)ウの「別の訂正単位とする求め」は、なかったものとする。
また、訂正事項6に関して、本件訂正請求による訂正は、請求項1ないし12についての訂正であるから、明細書又は図面の訂正に係る請求項1ないし12を含む一群の請求項の全てについて行っており、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合する。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定された次のとおりのものである。
「【請求項1】
対象物に対する信号光の照射位置を変更する走査部と、信号光の合焦位置を変更する合焦位置変更部とを含み、各信号光の対象物からの戻り光と参照光との干渉光を検出する光学系と、
信号光の複数の照射位置に対応する複数の干渉光の検出結果に基づいて断層像を形成する画像形成部と、
前記光学系を制御することにより、前記合焦位置を変更させつつ前記複数の照射位置に対して信号光を反復的に照射させる制御部と、
反復的な信号光の照射の結果に基づき前記画像形成部により形成された2以上の断層像に基づいて、1の合成断層像を形成する合成断層像形成部と
を有し、
前記合成断層像形成部は、
前記2以上の断層像のそれぞれについて、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む当該断層像の部分画像を特定する部分画像特定部を含み、
特定された2以上の前記部分画像を合成することにより前記合成断層像を形成し、
前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、
前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、
前記平行四辺形状部分画像は、前記信号光のスキャン動作期間中に変更された各合焦位置に対して深くなる方向及び浅くなる方向に等距離の幅を有する
ことを特徴とする光画像計測装置。
【請求項2】
前記合成断層像形成部は、
前記2以上の部分画像を解析することにより、前記2以上の部分画像の相対位置を調整する位置調整部を含み、
相対位置の調整がなされた前記2以上の部分画像を合成することにより前記合成断層像を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の光画像計測装置。
【請求項3】
前記位置調整部は、
前記2以上の部分画像のそれぞれを解析することにより、対象物の特徴部位に相当する特徴画像領域を特定する特徴画像領域特定部を含み、
特定された特徴画像領域に基づいて前記2以上の部分画像の相対位置を調整する
ことを特徴とする請求項2に記載の光画像計測装置。
【請求項4】
反復的な信号光の照射の間における前記光学系と対象物との変位を検出する変位検出部を有し、
前記制御部は、検出された変位に基づいて、反復的な信号光の照射を新たに実行させ、
前記合成断層像形成部は、新たに実行された反復的な信号光の照射の結果に基づき形成された2以上の新たな断層像に基づいて、前記合成断層像を形成する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光画像計測装置。
【請求項5】
反復的な信号光の照射の間における前記光学系と対象物との変位を検出する変位検出部を有し、
前記制御部は、検出された変位に基づいて、報知部に報知情報を出力させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光画像計測装置。
【請求項6】
予め取得された対象物の所定層の厚さに基づいて、反復的な信号光の照射における反復回数を決定する反復回数決定部を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の光画像計測装置。
【請求項7】
反復的な信号光の照射の前に取得された断層像を解析することにより、前記所定層の厚さを算出する層厚算出部を有することを特徴とする請求項6に記載の光画像計測装置。
【請求項8】
前記光学系は、開口数を変更する開口数変更部を含み、
焦点深度が前記所定層の厚さ未満となるように開口数の値を決定する開口数決定部を有し、
前記制御部は、前記開口数変更部を制御して、開口数を決定された値に設定する
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光画像計測装置。
【請求項9】 (削除)
【請求項10】 (削除)
【請求項11】
前記合成断層像形成部は、
前記2以上の断層像のそれぞれをトリミングして部分画像を形成する部分画像形成部と、
前記2以上の断層像から得られた2以上の部分画像をタイリングすることにより前記合成断層像の形成を行う合成処理部と
を含むことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の光画像計測装置。
【請求項12】
前記合成断層像形成部は、
前記2以上の断層像のそれぞれについて、当該断層像の画素に重み付けを行う重み付け部と、
画素に重み付けがなされた前記2以上の断層像を重ね合わせることにより前記合成断層像の形成を行う合成処理部と
を含むことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の光画像計測装置。」
そして、そのうち、本件特許発明1について、分説してA)ないしD-4)の符号を付与すると、以下のとおりである。
「【請求項1】
A) 対象物に対する信号光の照射位置を変更する走査部と、信号光の合焦位置を変更する合焦位置変更部とを含み、各信号光の対象物からの戻り光と参照光との干渉光を検出する光学系と、
B) 信号光の複数の照射位置に対応する複数の干渉光の検出結果に基づいて断層像を形成する画像形成部と、
C) 前記光学系を制御することにより、前記合焦位置を変更させつつ前記複数の照射位置に対して信号光を反復的に照射させる制御部と、
D) 反復的な信号光の照射の結果に基づき前記画像形成部により形成された2以上の断層像に基づいて、1の合成断層像を形成する合成断層像形成部と
を有し、
前記合成断層像形成部は、
D-1) 前記2以上の断層像のそれぞれについて、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む当該断層像の部分画像を特定する部分画像特定部を含み、
D-2) 特定された2以上の前記部分画像を合成することにより前記合成断層像を形成し、
D-3) 前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、
前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、
D-4) 前記平行四辺形状部分画像は、前記信号光のスキャン動作期間中に変更された各合焦位置に対して深くなる方向及び浅くなる方向に等距離の幅を有する
ことを特徴とする光画像計測装置。」
第4 特許異議の申立てについて
1 申立理由について
申立人は、下記甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
なお、申立人から提出された各甲号証を、以下、甲1などと省略して表記する。
甲1:特開2011-62301号公報
甲2:特開2008-298767号公報
甲3:特開2011-104126号公報
甲4:特開2011-95005号公報
甲5:特開2010-249740号公報
そして、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)の第6頁「3 申立ての理由」「(3) 申立ての根拠」の項、第65頁「(5) むすび」の項に記載された条文に鑑み、申立理由を整理すると、次の申立理由を申立人は主張している。
申立理由1
本件特許の請求項1、2、3、6、7、8、9、11、12に係る発明は、甲1、甲2又は甲3に記載された発明である。
申立理由2
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、甲1ないし甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 取消理由の概要
平成30年3月13日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次の通りである。
(1) 刊行物等一覧
上記甲1ないし甲5
(2) 特許法第29条第1項第3号に関して
本件特許発明1ないし3、6ないし9、11、12は、本件特許の原出願前日本国内または外国において頒布された甲1又は甲2又は甲3に記載された発明であって、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。
(3) 特許法第29条第2項に関して
本件特許発明1ないし12に係る発明は、本件特許の原出願前日本国内または外国において頒布された甲1ないし甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1ないし12に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが本来できないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 刊行物の記載事項
(1)甲1の記載事項及び甲1発明
取消理由で通知した甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審により付加した。以下同様。)。
(甲1-ア)
「【0001】
本発明は光構造像観察装置、その構造情報処理方法及び光構造像観察装置を備えた内視鏡装置に係り、特に光構造情報の情報処理に特徴のある光構造像観察装置、その構造情報処理方法及び光構造像観察装置を備えた内視鏡装置に関する。」
(甲1-イ)
「【0038】
また、OCTプローブ600は、エイミング光Leと合波されプローブ側光ファイバFB1から出射された測定光L1を測定対象Sに2次元走査して照射する走査手段及び照射/集光手段としての測定光学系601と、測定光学系601において測定光L1を2次元走査するため、また測定光L1の焦点位置を可変させるための焦点駆動手段としての光学系駆動機構602を備えている。」
(甲1-ウ)
「【0040】
干渉光検出部20は、光ファイバFB6および光ファイバFB7と接続されており、光ファイバカプラ14で参照光L2と戻り光L3とを合波して生成された干渉光L4およびL5を干渉信号として検出する干渉手段を構成する。」
(甲1-エ)
「【0043】
処理部22は、複数の異なる焦点位置における干渉光検出部20で抽出した干渉信号から光構造情報を取得し、取得した光構造情報に基づいて光断層構造像及び光立体構造像を生成すると共に、この光立体構造像に対して各種処理を施した画像をモニタ装置500へ出力する。処理部22の詳細な構成は後述する。」
(甲1-オ)
「【0060】
焦点位置指定部230は、光構造情報検出部220に対して測定光L1の異なる複数の焦点位置を指定するものであって、焦点位置指定手段を構成する。
【0061】
光構造情報検出部220は、焦点位置指定部230から指定された焦点位置において、干渉光検出部20で検出した干渉信号から光構造情報を検出するものである。この光構造情報検出部220は、焦点位置指定部230から指定された焦点位置に基づいて、OCTプローブ600の光学系駆動機構602を制御する。
【0062】
断層構造情報生成部225は、光構造情報検出部220が検出した光構造情報に基づき、測定光L1の異なる複数の焦点位置毎の断層構造情報(断層画像データ)を生成するものであって断層構造情報生成手段を構成する。
【0063】
メモリ231は、断層構造情報生成部225が生成した断層構造情報(断層画像データ)を異なる複数の焦点位置毎に格納するものである。
【0064】
複数焦点画像合成部221は、メモリ231に格納された異なる複数の焦点位置毎の断層構造情報(断層画像データ)に基づいた合成断層画像を生成する断層画像生成手段であり、複数焦点画像合成部221が生成する合成断層画像については後述する。」
(甲1-カ)
「【0082】
このように本実施形態では、複数の異なる焦点位置を指定し、指定した異なる焦点位置毎の断層構造情報(断層画像データ)を取得し、これらの断層構造情報(断層画像データ)を合成することで、浅い位置から深い位置まで高いS/N比と適切な解像度を有する断層画像を生成することができる。」
以上のことから、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「a-1) プローブ側光ファイバFB1から出射された測定光L1を測定対象Sに2次元走査して照射する走査手段及び照射/集光手段としての測定光学系601と、測定光学系601において測定光L1を2次元走査するため、また測定光L1の焦点位置を可変させるための焦点駆動手段としての光学系駆動機構602を備えたOCTプローブ600と(【0038】)、
a-2) 参照光L2と戻り光L3とを合波して生成された干渉光L4およびL5を干渉信号として検出する干渉手段を構成する干渉光検出部20と(【0040】)、
b) 複数の異なる焦点位置における干渉光検出部20で抽出した干渉信号から光構造情報を取得し、取得した光構造情報に基づいて光断層構造像及び光立体構造像を生成する処理部22と(【0043】)、
c) 測定光L1の異なる複数の焦点位置を指定し、指定された焦点位置に基づいて、OCTプローブ600の光学系駆動機構602を制御し、指定された焦点位置において、干渉光検出部20で検出した干渉信号から光構造情報を検出する光構造情報検出部220と(【0060】、【0061】、【0062】)、
d) 異なる複数の焦点位置毎の断層構造情報(断層画像データ)に基づいた合成断層画像を生成する断層画像生成手段である複数焦点画像合成部221を備え(【0064】)、
複数の異なる焦点位置を指定し、指定した異なる焦点位置毎の断層構造情報(断層画像データ)を取得し、これらの断層構造情報(断層画像データ)を合成する(【0082】)、
光構造像観察装置。」
(2)甲2の記載事項及び甲2発明
取消理由で通知した甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2-ア)
「【0001】
本発明は、光干渉断層計を用いた画像形成方法及び光干渉断層装置に関する。」
(甲2-イ)
「【0021】
第1の本発明に係る光干渉断層法を用いた画像形成方法は、
被検査物に光を入射する方向である光軸方向に関して、第1の焦点の位置における該被検査物の第1の画像情報を取得する第1の画像情報取得工程と、
前記光軸方向に関して、前記第1の焦点の位置から該第1の焦点とは異なる第2の焦点の位置まで、ダイナミックフォーカシングにより焦点の位置を変える工程と、
前記第2の焦点の位置における前記被検査物の第2の画像情報を取得する第2の画像情報取得工程と、
前記被検査物の断層画像情報であって、且つ前記第1の焦点あるいは前記第2の焦点の少なくとも一方の焦点の位置における該被検査物の断層像を含む第3の画像情報をフーリエドメイン法により取得する工程とを含み、
前記第3の画像情報を用いて、前記第1の画像情報と前記第2の画像情報との前記光軸方向に関する位置関係を関連付けて、前記被検査物の断層像または三次元像を形成することを特徴とする。」
以上のことから、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「被検査物に光を入射する方向である光軸方向に関して、第1の焦点の位置における該被検査物の第1の画像情報を取得する手段と、
前記光軸方向に関して、前記第1の焦点の位置から該第1の焦点とは異なる第2の焦点の位置まで、ダイナミックフォーカシングにより焦点の位置を変える手段と、
前記第2の焦点の位置における前記被検査物の第2の画像情報を取得する手段と、
前記被検査物の断層画像情報であって、且つ前記第1の焦点あるいは前記第2の焦点の少なくとも一方の焦点の位置における該被検査物の断層像を含む第3の画像情報をフーリエドメイン法により取得する手段とを含み、
前記第3の画像情報を用いて、前記第1の画像情報と前記第2の画像情報との前記光軸方向に関する位置関係を関連付けて、前記被検査物の断層像または三次元像を形成する光干渉断層装置。」
(3)甲3の記載事項及び甲3発明
取消理由で通知した甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3-ア)
「【0001】
本発明は、補償光学系を備えた光画像撮像装置の制御方法、そのプログラム、記憶媒体および光画像撮像装置に関する。
特に、被検眼の収差を測定して補正する機能を有し、複数の分解能で撮像することが可能な眼底撮像装置の制御方法および光画像撮像装置に関する。」
(甲3-イ)
「【0026】
[実施例2]
実施例2として、図2を用いて本発明を適用した補償光学系を備えたOCTによる光画像撮像装置およびその制御方法について説明する。
図2において、101は光源であり、波長840nmのSLD光源を用いた。光源101は低干渉性のものであれば良く、波長幅30nm以上のSLDが好適に用いられる。
また、チタンサファイアレーザなどの超短パルスレーザなどを光源に用いることもできる。
光源101から照射された光は、単一モード光ファイバー102を通って、ファイバーカプラー120まで導光される。
ファイバーカプラー120によって、信号光経路121と参照光経路122に分岐される。ファイバーカプラーは10:90の分岐比のものを使用し、投入光量の10%が信号光経路121に行くように構成する。
信号光経路121を通った光は、コリメータ103により、平行光線として照射される。
コリメータ103以降の構成は実施例1と同様であり、補償光学系や走査光学系を通して眼111に照射し、眼111からの反射散乱光は再度同様の経路をたどって光ファイバー121に導光されてファイバーカプラー120に到達する。
【0027】
一方、参照光経路122を通った参照光はコリメータ123で出射され、光路長可変部124で反射して再度ファイバーカプラー120に戻る。
ファイバーカプラー120に到達した信号光と参照光は合波され、光ファイバー125を通して分光器142に導光される。
分光器142によって分光された干渉光情報をもとに、制御部118によって眼底の断層像が構成される。制御部118は光路長可変部124を制御し、所望の深さ位置の画像を取得できる。
実施例1と同様に波面センサー115で波面を測定し、その波面収差をキャンセルするように波面補正デバイス108を駆動する。
また、補正結果の報知、分解能の変更を実施例1と同様の処理によって行うことにより、被検眼の収差と装置の性能に応じた適切な分解能で撮像することが可能となる。
OCTでは、複数の断層画像(Bスキャン)や平面画像(Cスキャン)を連続撮像する場合や、3次元画像の取得を行う場合があるが、そのような場合には本実施例の処理を繰り返し行っても良い。
OCTでは断層画像が得られるが、入射光のNAを大きくして分解能を高めると被写界深度が浅くなり、一つの断層画像中に合焦している部分と合焦していない部分が出来てしまう。
そこで、深さ方向の撮像範囲を被写界深度程度の幅に分割して撮像した後に、個々の深さの画像を結合し、全範囲でフォーカスが合った断層画像を得るという方法を取ることも可能である。
この場合、図4のステップS114やS116で変更された分解能に応じて1回の撮像で取得する深さ方向の範囲を変更することにより、合焦範囲の広い画像を速く容易に撮像することが可能となる。」
以上のことから、甲3には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「 OCTによる光画像撮像装置であって、
光源101から照射された光は、単一モード光ファイバー102を通って、ファイバーカプラー120まで導光され、ファイバーカプラー120によって、信号光経路121と参照光経路122に分岐され、信号光経路121を通った光は、コリメータ103により、平行光線として照射され、補償光学系や走査光学系を通して眼111に照射し、眼111からの反射散乱光は再度同様の経路をたどって光ファイバー121に導光されてファイバーカプラー120に到達し、
一方、参照光経路122を通った参照光はコリメータ123で出射され、光路長可変部124で反射して再度ファイバーカプラー120に戻り、ファイバーカプラー120に到達した信号光と参照光は合波され、光ファイバー125を通して分光器142に導光され、
分光器142によって分光された干渉光情報をもとに、制御部118によって眼底の断層像が構成され、制御部118は光路長可変部124を制御し、所望の深さ位置の画像を取得するものであり、
深さ方向の撮像範囲を被写界深度程度の幅に分割して撮像した後に、個々の深さの画像を結合し、全範囲でフォーカスが合った断層画像を得る光画像撮像装置。」
(4)甲4の記載事項
取消理由で通知した甲4には、以下の事項が記載されている。
(甲4-ア)
「【0001】
この発明は、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いて被測定物体の画像を形成する光画像計測装置に関する。」
(甲4-イ)
「【0071】
更に、平均処理部231は、選択された断層像を位置合わせして画素値を平均化することにより一枚の断層像(平均化断層像)を形成する。断層像の位置合わせ処理は、たとえば、画像相関演算を行った際に実行された位置合わせ結果を適用できる。また、各断層像中の特徴部位(たとえば眼底表面、凹凸、血管など)を特定し、これらの位置が一致させるようにして行うこともできる。平均処理部231は、位置合わせがなされた断層像について、各画素位置における画素値を加算し、選択された断層像の個数で当該和の値を除算する。この商の値が当該画素位置における平均画素値となる。この処理を各画素位置において行い、平均画素値を有する画素を画素位置に応じて配列させることにより平均化断層像が得られる。」
以上のことから、甲4には、以下の事項が記載されている。
「OCTを用いて被測定物体の画像を形成する光画像計測装置において、選択された断層像を位置合わせして画素値を平均化することにより一枚の断層像(平均化断層像)を形成する点。」
(5)甲5の記載事項
取消理由で通知した甲5には、以下の事項が記載されている。
(甲5-ア)
「【0001】
この発明は、被測定物体を光ビームで走査し、その反射光の干渉を用いて被測定物体の画像を形成する光画像計測装置及びその制御方法に関する。」
(甲5-イ)
「【0025】
この発明によれば、干渉光の検出中に画像の異常の検出を行うことができる。これにより、被測定物体の走査と平行して異常画像の発生の検出が可能となる。したがって、異常画像の発生を迅速に把握することができ、3次元画像の形成処理の処理時間を短縮できることが可能となる。また、装置のリソースの有効活用が可能となる。
【0026】
また、この発明によれば、干渉光の検出と断層画像の形成とを並行して行うことができる。これにより、被検眼の全フレームの走査の完了を待たずに、断層画像の形成を行うことが可能となり、装置のリソースの有効活用及び3次元画像の形成処理に掛る時間の短縮が可能となる。したがって、被測定物体の検査の時間短縮に寄与することが可能となる。
【0027】
また、この発明によれば、干渉光の検出と断層画像の形成とを並行して行うとともに、断層画像の異常を検出した場合に、異常画像が発生した場所に戻って、その場所から再度被測定物体の走査を再開することができる。これにより、装置のリソースの有効活用及び3次元画像の形成処理に掛る時間の短縮が可能になる。」
(甲5-ウ)
「【0086】
(異常検出部)
異常検出部250は、画像形成部220により形成された断層画像の画像データに対してその断層画像に異常が発生しているか否かを検出する。本実施形態では、断層画像の異常とは、たとえば、検査対象である被検眼の動きにより、撮像したい部分(具体的には、眼底Ef)が断層画像の中央付近から動いてしまい断層画像に向かって断層画像の上端もしくは下端の方に撮像されてしまうことを指す。ここで、断層画像の上端とは深さ方向(z方向)に向かって浅い位置を指し、断層画像の下端とは深さ方向(z方向)に向かって深い位置を指す。断層画像の上端もしくは下端では解像度が低下するなどの理由から、撮像したい部分が端に位置してしまうと正確な診断を行うことができなくなるおそれがある。例えば、異常検出部250は、断層画像に含まれる各ピクセルの輝度値などを基に検査対象となっている画像の位置を把握し、画像の中央からのずれを求め、そのずれと予め決まっている閾値とを比較し、ずれが予め決まっている閾値より大きいと判断されたときに断層画像の異常を検出する。ただし、この画像の位置の求め方は特に制限はなく他の方法を用いてもよい。また、本実施形態では画像の位置で異常を検出したが、他の画像状態を基に異常を検出してもよく、例えばノイズによる画像の乱れを基に異常を検出してもよい。この異常検出部250が本発明における「異常検出手段」にあたる。」
以上のことから、甲5には、以下の事項が記載されている。
「被測定物体を光ビームで走査し、その反射光の干渉を用いて被測定物体の画像を形成する光画像計測装置において、干渉光の検出中に断層画像に異常が発生しているか否かを検出することを可能とする技術。」
4 当審の判断
(1) 甲1発明に基づく特許法第29条第1項第3号
本件特許発明1と、甲1発明とを対比すると、甲1発明は、少なくとも、本件特許発明1の、「D-3) 前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、」に相当する構成を有していない。
そして、上記の構成が、本件特許の原出願前において周知であったとはいえず、単なる設計的事項であるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
また、本件特許発明1を引用して特定され、上記構成を有する本件特許発明2、3、6ないし8、11、12も、同様に、甲1発明ではない。
(2) 甲2発明又は甲3発明に基づく特許法第29条第1項第3号
本件特許発明1と、甲2発明及び甲3発明とを対比すると、甲2発明及び甲3発明は、甲1発明と同様に、少なくとも、本件特許発明1の、「D-3) 前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、」に相当する構成を有していない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明又は甲3発明ではない。
また、本件特許発明1を引用して特定され、上記構成を有する本件特許発明2、3、6ないし8、11、12も、同様に、甲2発明又は甲3発明ではない。
(3) 特許法第29条第2項
a 甲1発明を主引例とした場合について
本件特許発明1と、甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の相違点を有する。
<相違点>
合成断層像を形成するにあたって、本件特許発明1は、「D-3) 前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成」するのに対して、甲1発明は、そのような構成とされていない点。
上記相違点について以下に検討する
上記相違点に係る構成は、申立人が示した甲2ないし5のいずれにも記載されておらず、また、その点が本件特許の原出願前において周知であったとはいえず、単なる設計的事項であるともいえない。
してみると、甲1ないし甲5に接した当業者といえども、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を想起することはできない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲2ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明2ないし8、11、12は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明、及び、甲2ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
b 甲2発明又は甲3発明を主引例とした場合について
本件特許発明1と甲2発明とを対比した場合、及び、本件特許発明1と、甲3発明とを対比した場合においても、両者は、少なくとも、上記相違点と同様の相違点を有する。
そして、上記相違点に係る構成は、申立人が示した甲1ないし5のいずれにも記載されておらず、また、その点が本件特許の原出願前において周知であったとはいえず、単なる設計的事項であるともいえない。
したがって、甲2発明又は甲3発明を主引例とした場合であっても、本件特許発明1は、甲1ないし甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明2ないし8、11、12は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲1ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 小括
以上のことから、本件特許発明1ないし8、11、12は、甲1ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 申立人の意見について
申立人は、平成30年6月27日付けの意見書において、(1)進歩性違反について、(2)訂正要件違反についての2点について主張している。
以下、申立人の主張について検討する。
(1) 進歩性違反について
申立人は、本件特許発明1に関して、本件訂正の訂正部分を、
「(A)前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、」
「(B)前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、前記平行四辺形状部分画像は、前記信号光のスキャン動作期間中に変更された各合焦位置に対して深くなる方向及び浅くなる方向に等距離の幅を有する」
と区分し、上記の(A)部分と(B)部分について各甲号証の記載事項との対比を行っている。
しかしながら、上記訂正部分は、「合焦位置を連続的に変更させ」ることによって「平行四辺形状部分画像」が形成されるのであるから、「前記制御部は、反復的な信号光の照射において単位時間あたりの変更量が一定になるように前記合焦位置を連続的に変更させ、」との記載によって特定される構成と、「前記合成断層像形成部は、各断層像において、対応する合焦位置に相当する画像領域を含む平行四辺形状部分画像に基づいて、前記合成断層像を形成し、」との記載によって特定される構成とは相互に関連するものであって、一体として検討すべき事項であると認められ、申立人の上記の(A)部分と(B)部分に区分して行った各甲号証の記載事項との対比についての主張は採用できない。
なお、上記(B)部分に関して、申立人による、上記意見書の第7頁下4行~第8頁第4行に記載された「本件特許発明1の構成では部分画像が合焦位置から外れないにもかかわらず、甲第1号証ではなぜ部分画像から合焦位置が外れるのか、理解できない。甲第1号証においても、本件と同様に、合焦位置毎に部分画像を設定しており(例えば、「断層構造情報生成部225は、光構造情報検出部220が検出した光構造情報に基づき、測定光L1の異なる複数の焦点位置毎の断層構造情報(断層画像データ)を生成するものであって断層構造情報生成手段を構成する。」(段落0062)を参照)、部分画像から合焦位置が外れないことは、当業者には明らかである。」の主張は、部分画像が合焦位置を中心に形成されるという技術常識に鑑みれば理由があり、特許権者の主張に誤りがあると認められるが、そのことが本件特許の取消理由にはならず、結論に影響を与えるものではない。
(2) 訂正要件違反について
申立人は、上記意見書において、上記訂正部分に関して、「各合焦位置に対して深くなる方向と浅くなる方向に等距離の幅を有する」「平行四辺形状部分画像」を実現する具体的な構成及び手段について何ら開示がない旨を主張している。
しかしながら、本件特許発明1は、本件特許明細書等の段落【0013】に記載されているように、フーリエドメインタイプのOCTであることから、「各合焦位置に対して深くなる方向と浅くなる方向に等距離の幅を有する」「部分画像」をどのように実現するかは、当業者にとって技術常識である。
また、その幅をどの程度に設定するかは、当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎない。
したがって、この点に関する申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1ないし8、11、12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし8、11、12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項9及び10に対してなされた特許異議の申立てについては、請求項9及び10が訂正により削除され、申立ての対象となる請求項が存在しないものとなったから、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-700050