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特許異議申立

2018-700026

塗工液、塗工膜、及び複合材料

審判番号
2018-700026
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-171188
登録番号
特許第6166235号(P6166235)
請求日
2018年01月12日
審決日
2018年12月25日
公報発行日
2019年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日精化工業株式会社
  • 【権利者代理人】近藤 利英子
  • 【権利者代理人】菅野 重慶
  • 【権利者代理人】山田 龍也
  • 【権利者代理人】岡田 薫
  • 【異議申立人】加藤 加津子
  • 【異議申立人】大野 芙美
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 秀次
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6166235号発明「塗工液、塗工膜、及び複合材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6166235号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~22〕について訂正することを認める。 特許第6166235号の請求項1~22に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6166235号の請求項1~22に係る特許についての出願は、平成26年8月26日に特願2014-171188号として特許出願され、平成29年6月30日に特許権の設定登録がされ、平成29年7月19日にその特許公報が発行され、その請求項1~22に係る発明の特許に対し、平成30年1月12日に加藤加津子(以下「特許異議申立人A」という。)により、その請求項1~2、4~16及び19~22に係る発明の特許に対し、平成30年1月18日に大野芙美(以下「特許異議申立人B」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。 平成30年 3月 9日付け 取消理由通知 同年 5月10日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 5月14日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 6月12日   意見書(特許異議申立人A) 同年 7月23日付け 取消理由通知 同年 9月25日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年10月15日付け 訂正請求があった旨の通知 なお、特許異議申立人Bは、平成30年5月14日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。 また、特許異議申立人A及びBは、平成30年10月15日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。 第2 訂正の適否 1.訂正請求の趣旨及び内容 平成30年5月10日付けの訂正請求は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされるところ、 平成30年9月25日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6166235号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~12のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付した。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1に 「極性溶媒と、親水性ポリマーと、ポリフッ化ビニリデンと、を含有し、 前記親水性ポリマーが、キトサン誘導体、デンプン誘導体、未変性ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であり、 前記キトサン誘導体が、ヒドロキシアルキルキトサンであり、 前記デンプン誘導体が、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、及びヒドロキシブチルデンプンからなる群より選択される少なくとも1種であり、 前記未変性ポリビニルアルコールの鹸化度が、98モル%以下であり、 前記変性ポリビニルアルコールが、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変成ポリビニルアルコール、及びアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である塗工液。」とあるのを 「極性溶媒と、親水性ポリマーと、ポリフッ化ビニリデンと、を含有し、 前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する、前記親水性ポリマーの含有量が、5質量部以上10.4質量部以下であり、 前記親水性ポリマーが、キトサン誘導体及びデンプン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、 前記キトサン誘導体が、ヒドロキシアルキルキトサンであり、 前記デンプン誘導体が、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、及びヒドロキシブチルデンプンからなる群より選択される少なくとも1種であり、 全量を100質量部とした場合に、前記ポリフッ化ビニリデンの含有量が、5質量部以下であり、 固形分の含有量が、1~35質量%である塗工液。」に訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の明細書の段落0011に 「[1]極性溶媒と、親水性ポリマーと、ポリフッ化ビニリデンと、を含有し、前記親水性ポリマーが、キトサン誘導体、デンプン誘導体、未変性ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記キトサン誘導体が、ヒドロキシアルキルキトサンであり、前記デンプン誘導体が、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、及びヒドロキシブチルデンプンからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記未変性ポリビニルアルコールの鹸化度が、98モル%以下であり、前記変性ポリビニルアルコールが、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変成ポリビニルアルコール、及びアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である塗工液。」とあるのを 「[1]極性溶媒と、親水性ポリマーと、ポリフッ化ビニリデンと、を含有し、前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する、前記親水性ポリマーの含有量が、5質量部以上10.4質量部以下であり、前記親水性ポリマーが、キトサン誘導体及びデンプン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記キトサン誘導体が、ヒドロキシアルキルキトサンであり、前記デンプン誘導体が、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、及びヒドロキシブチルデンプンからなる群より選択される少なくとも1種であり、全量を100質量部とした場合に、前記ポリフッ化ビニリデンの含有量が、5質量部以下であり、固形分の含有量が、1~35質量%である塗工液。」に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の明細書の段落0109に「(実施例2~7、11~20、参考例8~10、比較例1~2)」とあるのを「(実施例2、3、5~7、11、12、参考例4、8~10、13~20、比較例1~2)」に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の明細書の段落0110の表I-2に「実施例4」、「参考例8」、「参考例9」、「参考例10」、「実施例13」、「実施例14」、「実施例15」、「実施例16」、「実施例17」、「実施例18」、「実施例19」及び「実施例20」とあるのを「参考例4」、「参考例8」、「参考例9」、「参考例10」、「参考例13」、「参考例14」、「参考例15」、「参考例16」、「参考例17」、「参考例18」、「参考例19」及び「参考例20」に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前の明細書の段落0117に「(実施例22~24、26、参考例25、比較例3~4)」とあるのを「(実施例22~24、参考例25、26、比較例3~4)」に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前の明細書の段落0118の表I-3に「参考例25」及び「実施例26」とあるのを「参考例25」及び「参考例26」に訂正する。 (7)訂正事項7 訂正前の明細書の段落0124に「(実施例28、31、32、参考例29、30)」とあるのを「(参考例28~32)」に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の明細書の段落0125に「実施例27、28、31、32、参考例29、30のキャパシタ」とあるのを「実施例27、参考例28~32のキャパシタ」に訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の明細書の段落0126の表I-4に「実施例28」、「参考例29」、「参考例30」、「実施例31」及び「実施例32」並びに「実施例4」、「参考例8」、「参考例10」、「実施例15」及び「実施例20」とあるのを「参考例28」、「参考例29」、「参考例30」、「参考例31」及び「参考例32」並びに「実施例4」、「参考例8」、「参考例10」、「参考例15」及び「参考例20」に訂正する。 (10)訂正事項10 訂正前の明細書の段落0130に「(実施例34~39、43~52、参考例40~42、比較例6~7、参考例1)」とあるのを「(実施例34、35、37~39、43、44、参考例36、40~42、45~52、比較例6~7、参考例1)」に訂正する。 (11)訂正事項11 訂正前の明細書の段落0131の表II-1に「実施例36」、「参考例40」、「参考例41」、「参考例42」、「実施例45」、「実施例46」、「実施例47」、「実施例48」、「実施例49」、「実施例50」、「実施例51」及び「実施例52」とあるのを「参考例36」、「参考例40」、「参考例41」、「参考例42」、「参考例45」、「参考例46」、「参考例47」、「参考例48」、「参考例49」、「参考例50」、「参考例51」及び「参考例52」に訂正する。 (12)訂正事項12 訂正前の明細書の段落0132に「実施例33~39、43~52、参考例40~42の塗工膜」とあるのを「実施例33~35、37~39、43、44、参考例36、40~42、45~52の塗工膜」に訂正する。 2.訂正事項1~12の適否 (1)訂正事項1 ア.訂正の目的 訂正事項1において、訂正前の請求項1の「を含有し、前記親水性ポリマーが」との記載部分を「を含有し、前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する、前記親水性ポリマーの含有量が、5質量部以上10.4質量部以下であり、前記親水性ポリマーが」との記載に改める訂正は、その「親水性ポリマーの含有量」を「前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部」に対して「5質量部以上10.4質量部以下」の範囲に限定することにより「特許請求の範囲の減縮」をしようとするものである。 また、訂正前の請求項1の「キトサン誘導体、デンプン誘導体、未変性ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種」との記載部分を「キトサン誘導体及びデンプン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種」との記載に改めるとともに「前記未変性ポリビニルアルコールの鹸化度が、98モル%以下であり、前記変性ポリビニルアルコールが、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変成ポリビニルアルコール、及びアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種」との記載部分を削除する訂正は、その「親水性ポリマー」の選択肢の範囲から「未変性ポリビニルアルコール」及び「変性ポリビニルアルコール」の選択肢を削除するとともに当該削除された選択肢に関する記載を削除することにより「特許請求の範囲の減縮」をしようとするものである。 そして、訂正前の請求項1の「であり、…である塗工液」との記載部分を「であり、全量を100質量部とした場合に、前記ポリフッ化ビニリデンの含有量が、5質量部以下であり、固形分の含有量が、1~35質量%である塗工液」との記載に改める訂正は、その「ポリフッ化ビニリデンの含有量」を「全量を100質量部とした場合」に「5質量部以下」の範囲に限定するとともに、その「塗工液」を「固形分の含有量が、1~35質量%」であるものに限定することにより「特許請求の範囲の減縮」をしようとするものである。 したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、訂正後の請求項1を直接又は間接に引用する請求項2~22についても同様に特許請求の範囲が減縮されることになるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項1は、上記「ア.」に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 本件特許明細書の段落0056には「親水性ポリマーの含有量が0.1質量部未満であると、形成される塗工膜の強度や密着性が不足し、塗工膜から塗工膜中の成分が脱落しやすくなる。一方、親水性ポリマーの含有量が40質量部を超えると、均一な溶液が得られなくなる。」との記載があり、同段落0104の表I-1には、極性溶媒90質量部、親水性ポリマー5質量部、及びポリフッ化ビニリデン5質量部の合計100質量部に対する、親水性ポリマーの含有量が、5質量部である「例I-3」の具体例と、極性溶媒85質量部、親水性ポリマー9.9質量部、及びポリフッ化ビニリデン0.1質量部の合計100質量部に対する、親水性ポリマーの含有量が、10.4質量部である「例I-7」の具体例が記載されているので、訂正事項1の「親水性ポリマーの含有量」を「前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部」に対して「5質量部以上10.4質量部以下」に限定する訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。 また、複数の選択肢のうちの一部の選択肢を削除することによって新たな技術的事項が導入されないことは明らかであるから、訂正事項1の「親水性ポリマー」の選択肢から「未変性ポリビニルアルコール」及び「変性ポリビニルアルコール」の選択肢を削除するとともに当該削除された選択肢に関する記載を削除する訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。 さらに、本件特許明細書の段落0056には「PVDFの含有量が40質量部を超えると、均一な溶液が得られなくなる。」との記載があり、同段落0104の表I-1には、極性溶媒90質量部、親水性ポリマー5質量部、及びポリフッ化ビニリデン5質量部の合計100質量部に対する、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の含有量が、5質量部である「例I-3」の具体例と、これより少ないPVDF含有量の具体例が記載されているので、訂正事項1の「ポリフッ化ビニリデンの含有量」を「全量を100質量部とした場合」に「5質量部以下」に限定する訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。 そして、本件特許明細書の段落0055には「塗工液中の固形分の含有量は、1~35質量%であることが好ましい。」との記載があるので、訂正事項1の「塗工液」を「固形分の含有量が、1~35質量%」であるものに限定する訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (2)訂正事項2 ア.訂正の目的 訂正事項2は、訂正事項1にともない特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項2は、訂正事項1にともない特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、上記「(1)イ.」に示したのと同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項2は、訂正事項1にともない特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、上記「(1)ウ.」に示したのと同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (3)訂正事項3~12 ア.訂正の目的 訂正事項3~12は、本件特許明細書中の実施例のうち訂正事項1により実施例に該当しなくなったものを参考例に改め、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、訂正事項3~12は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項3~12は、本件特許明細書中の実施例に該当しなくなったものを参考例に改めるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項3~12は、本件特許明細書中の実施例に該当しなくなったものを参考例に改めるものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (4)一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~22について、その請求項2~22はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~22に対応する訂正後の請求項1~22は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 (5)明細書又は図面の訂正と関連する請求項について 訂正事項2~12による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~22であるから、訂正事項2~12と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。 したがって、訂正事項2~12による本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。 3.訂正の適否のまとめ 以上総括するに、訂正事項1~12による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~22〕について訂正を認める。 第3 本件発明 上記「第2」のとおり本件訂正は容認し得るものであるから、本件訂正により訂正された請求項1~22に係る発明(以下「本1発明」~「本22発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~22に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】極性溶媒と、親水性ポリマーと、ポリフッ化ビニリデンと、を含有し、 前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する、前記親水性ポリマーの含有量が、5質量部以上10.4質量部以下であり、 前記親水性ポリマーが、キトサン誘導体及びデンプン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、 前記キトサン誘導体が、ヒドロキシアルキルキトサンであり、 前記デンプン誘導体が、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、及びヒドロキシブチルデンプンからなる群より選択される少なくとも1種であり、 全量を100質量部とした場合に、前記ポリフッ化ビニリデンの含有量が、5質量部以下であり、 固形分の含有量が、1~35質量%である塗工液。 【請求項2】前記極性溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、及びβ-アルコキシプロピオンアミド類からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の塗工液。 【請求項3】前記ヒドロキシアルキルキトサンが、ヒドロキシエチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシブチルキトサン、及びジヒドロキシプロピルキトサンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の塗工液。 【請求項4】さらに多塩基酸を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の塗工液。 【請求項5】さらに導電性材料を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の塗工液。 【請求項6】前記導電性材料が、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、ファーネスブラック、単層カーボンナノファイバー、多層カーボンナノファイバー、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項5に記載の塗工液。 【請求項7】請求項1~6のいずれか一項に記載の塗工液を用いて形成される塗工膜。 【請求項8】JIS R3257に準拠して測定される接触角が70°以上である請求項7に記載の塗工膜。 【請求項9】請求項1~6のいずれか一項に記載の塗工液を80℃以上に加熱する工程を含む塗工膜の形成方法。 【請求項10】基材と、前記基材上に一体的に配設された請求項7又は8に記載の塗工膜と、を備える複合材料。 【請求項11】前記基材が、金属、ガラス、天然樹脂、合成樹脂、セラミックス、木材、紙、繊維、不織布、織布、及び皮革からなる群より選択される少なくとも一種である請求項10に記載の複合材料。 【請求項12】前記金属が、アルミニウム、銅、ニッケル、及びステンレスからなる群より選択される少なくとも一種である請求項11に記載の複合材料。 【請求項13】集電体と、前記集電体の表面上に配設された、請求項5に記載の塗工液からなる塗工膜と、を備える電極板用部材。 【請求項14】請求項13に記載の電極板用部材と、 前記電極板用部材を構成する前記塗工膜の表面上に配設された電極層と、を備える蓄電装置用電極板。 【請求項15】前記塗工膜の膜厚が0.1~10μmである請求項14に記載の蓄電装置用電極板。 【請求項16】前記電極用部材を構成する前記集電体がアルミニウム箔であり、 前記電極層が正極活物質を含有する請求項14又は15に記載の蓄電装置用電極板。 【請求項17】前記電極用部材を構成する前記集電体が銅箔であり、 前記電極層が負極活物質を含有する請求項14又は15に記載の蓄電装置用電極板。 【請求項18】前記電極用部材を構成する前記集電体がアルミニウム箔であり、 前記電極層が分極性電極である請求項14又は15に記載の蓄電装置用電極板。 【請求項19】請求項5に記載の塗工液を集電体の表面に塗布して塗工膜を形成した後、前記塗工膜の表面上に電極層を形成する工程を有する蓄電装置用電極板の製造方法。 【請求項20】前記塗工液を塗布し、次いで、 前記塗工液中の前記極性溶媒を加熱して除去した後、又は除去しながら、100~250℃で1秒~60分加熱処理して前記塗工膜を形成する請求項19に記載の蓄電装置用電極板の製造方法。 【請求項21】請求項14~18のいずれか一項に記載の蓄電装置用電極板を備える蓄電装置。 【請求項22】二次電池又はキャパシタである請求項21に記載の蓄電装置。」 第4 特許異議申立て及び取消理由通知の概要について 1.特許異議申立人Aの証拠と主張の概要 特許異議申立人Aは、証拠として以下の甲第1号証~甲第6号証(以下「甲1A」~「甲6A」ともいう。)を提出し、以下の取消理由1及び2により、本件特許の請求項1~22に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであるとの主張をしている。 甲第1号証:特許第5454725号公報 甲第2号証:特開2008-60060号公報 甲第3号証:国際公開2009/147989号 甲第4号証:特許第4240157号公報 甲第5号証:特開2010-61932号公報 甲第6号証:共立出版株式会社「化学大辞典5」、昭和56年10月15日縮刷版第26刷、624頁 取消理由1:特許法第29条第1項第3号(請求項1~2、5~7、9~13) 取消理由2:特許法第29条第2項(請求項1~22) 2.特許異議申立人Bの証拠と主張の概要 特許異議申立人Bは、証拠として以下の甲第1号証~甲第6号証(以下「甲1B」~「甲6B」ともいう。)を提出し、以下の取消理由1及び2により、本件特許の請求項1、2、4~16及び19~22に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであるとの主張をしている。 甲第1号証:特許第5454725号公報 甲第2号証:特開2004-363018号公報 甲第3号証:特開2005-239929号公報 甲第4号証:特開2001-181862号公報 甲第5号証:特開2009-123463号公報 甲第6号証:特開2010-61996号公報 取消理由1:特許法第29条第1項第3号(請求項1~2、5~13) 取消理由2:特許法第29条第2項(請求項1、2、4~16、19~22) 3.取消理由通知の概要 訂正前の請求項1~22に係る特許に対して平成30年3月9日付け及び同年7月23日付けで特許権者に通知した取消理由1及び2の要旨は、次のとおりである。 〔理由1〕本件特許の請求項1~2及び5~13に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 〔理由2〕本件特許の請求項1~22に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1~6に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 〔引用刊行物一覧〕 刊行物1:特許第5454725号公報(甲1A及び甲1Bに同じ。) 刊行物2:特開2008-60060号公報(甲2Aに同じ。) 刊行物3:国際公開第2009/147989号(甲3Aに同じ。) 刊行物4:特開2009-123463号公報(甲5Bに同じ。) 刊行物5:特開2004-363018号公報(甲2Bに同じ。) 刊行物6:特開2010-61996号公報(甲6Bに同じ。) また、平成30年5月10日付けの訂正請求による訂正後の請求項1~22に係る特許に対して平成30年7月23日付けで特許権者に通知した取消理由3の要旨は、次のとおりである。 〔理由3〕本件特許の請求項1~22に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 (い)訂正後の請求項1に導入された「前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する、前記親水性ポリマーの含有量が、5質量部以上」という上限値を規定しない数値範囲の全てが、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 (ろ)塗工液の全量100質量部に対するポリフッ化ビニリデン(PVDF)の含有量が、訂正後の実施例における最大値(5質量部)を超える範囲にあるのもの全てが、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 (は)本件特許明細書の段落0055の「塗工液中の固形分の含有量は、1~35質量%である」との記載にある固形分含有量の数値範囲の範囲外にあるもの全てが、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 第5 当審の判断 1.取消理由通知の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について (1)刊行物1~6の記載事項 ア.刊行物1の記載事項 摘記1a:特許請求の範囲 「【請求項1】カーボンブラックと、分散剤としてのポリビニルアルコール樹脂と、溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドンとを含んでなるカーボンブラック分散液であって、ポリビニルアルコール樹脂のけん化度が、60~85mol%であり、カーボンブラックのBET比表面積をXm2/g、カーボンブラック1gに対するポリビニルアルコール樹脂の添加量をaXgとした場合に、aが0.00017≦a≦0.00256の範囲であり、カーボンブラック100重量部に対するポリビニルアルコール樹脂が2重量部以上、8重量部以下であることを特徴とするカーボンブラック分散液。 【請求項2】請求項1記載のカーボンブラック分散液に、さらに、正極活物質または負極活物質を含有してなる電池用カーボンブラック分散液。 【請求項3】請求項1記載のカーボンブラック分散液または請求項2記載の電池用カーボンブラック分散液を塗布してなる電池電極合材層。 【請求項4】集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウムイオン二次電池であって、正極および負極の少なくとも一方が、請求項3記載の電池電極合材層を具備してなるリチウムイオン二次電池。」 摘記1b:背景技術と発明の効果 「【0007】…現在、リチウムイオン二次電池用電極の生産においては、電極を形成するために特に好適な結合剤としてポリフッ化ビニリデンが、…溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンが、一般に用いられている。… 【0017】本発明により、従来公知の樹脂型分散剤を用いた場合よりも、顕著に低粘度なカーボンブラック分散液を得ることができ、カーボンブラック濃度を高くすることが可能となる。その結果、従来よりも高濃度なカーボンブラック分散液を提供できるようになり、N-メチル-2-ピロリドン溶剤の使用量を大幅に低減できると共に、塗工した塗膜の乾燥プロセスも大幅に短縮することが出来るようになる。また、カーボンブラックの分散性と分散液の貯蔵安定性に優れた、N-メチル-2-ピロリドンを溶剤とするカーボンブラック分散液を提供することが可能となる。 【0018】また、該分散体を用いて二次電池用電極合材液を調製した場合、低粘度であることから活物質粉体の添加や混練が容易になり、さらに、各電極成分が高濃度な電極合材液を用いても、均質で良好な塗膜を得ることが出来るため、表面抵抗の低い電池電極合材層を得る事が可能となる。」 摘記1c:ポリビニルアルコール樹脂 「【0026】本発明で使用するポリビニルアルコール樹脂は、ポリビニルエステル、特にポリ酢酸ビニルをけん化することによって得られるポリビニルアルコール樹脂が専ら使用されるが、これに限定されない。また、けん化度は60~85mol%のものが使用される。上記けん化度のポリビニルアルコール樹脂であれば、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。 【0027】また、上記けん化度の範囲内であれば、水酸基、酢酸基以外の官能基として、例えば、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基を導入されたものや、各種の塩によって変性されたもの、その他アニオンあるいはカチオン変性されたもの、アルデヒド類によってアセタール変性(ブチラール変性等)されたものなども、本発明で使用するけん化度が60~85mol%であるポリビニルアルコール樹脂の範囲に含まれ、これらは、単独もしくは2種類以上併せて使用することができる。」 摘記1d:従来公知の樹脂(キトサン類)と添加剤(有機酸) 「【0047】本発明では、上記課題に支障を及ぼさない範囲で、塗膜物性等の調整等の目的で、従来公知の分散剤や樹脂、添加剤等を併用しても良い。…また樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、…キトサン類、デンプン等が挙げられる。また添加剤としては、リン化合物、硫黄化合物、有機酸…等が挙げられる。」 摘記1e:刊行物1記載の発明の用途 「【0048】<カーボンブラック分散液の用途> 本発明のカーボンブラック分散液の利用分野としては、特に制限はないが、遮光性、導電性、耐久性、漆黒性等が要求される分野、例えば、グラビアインキ、オフセットインキ、磁気記録媒体用バックコート、静電トナー、インクジェット、自動車塗料、繊維・プラスチック形成材料、電池用電極、電子写真用シームレスベルトにおいて、安定かつ均一な組成物を提供し得るものである。中でも、NMPを使用すること、ポリフッ化ビニリデンやポリイミド前駆体などと相溶すること、および形成される塗膜や成型物の強度、柔軟性が良好なことから、リチウムイオン二次電池用電極、電気二重層キャパシタ用電極、リチウムイオンキャパシタ用電極、電子写真用シームレスベルトに好適などに用いられる。」 摘記1f:実施例 「【0050】以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例中、部は重量部を、%は重量%を、それぞれ表す。 実施例及び比較例で使用したカーボンブラック(「CB」と略記することがある)、ポリビニルアルコール樹脂(「PVA」と略記することがある)、バインダー、電極活物質等を以下に示す。また、各表には、各原料の組成のみを記載しているが、特に記載の無い残りの成分は、全てN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。 【0051】<カーボンブラック> ・#30(三菱化学社製):ファーネスブラック、平均一次粒子径30nm、比表面積74m2/g、以下#30と略記する。… ・デンカブラックHS-100(電気化学工業社製):アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m2/g、以下HS-100と略記する。… 【0053】<ポリビニルアルコール樹脂> ・クラレポバール L-8(クラレ社製):ポリビニルアルコール樹脂、けん化度71mol%、平均重合度1000以下、4%水溶液粘度5.5mPa・s、以下L-8と略記する。… 【0054】<バインダー> ・KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、以下、PVDFと略記する。… 【0055】<活物質> ・HLC-22(本荘ケミカル社製):正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)、平均粒径6.6μm、比表面積0.62m2/g、以下、LCOと略記する。… 【0063】<バインダーを含むカーボンブラック分散液の調製> [実施例2-1~実施例2-4、実施例2-9、実施例2-10、実施例2-12、実施例2-17、実施例2-18] 表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと各種ポリビニルアルコール樹脂と各種バインダーを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、各種カーボンブラックを加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。いずれも粗大粒子がなく、かつ低粘度であり、貯蔵安定性も良好であった。… 【0066】[比較例2-1~比較例2-5] 表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと、各種ポリビニルアルコール樹脂とPVDFを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、各種カーボンブラックを加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。… 【0068】<正極活物質または負極活物質を含むカーボンブラック分散液の調製> [実施例3-1~実施例3-3、実施例3-9、実施例3-10、実施例3-12] 表3に示す組成に従い、実施例2-1~実施例2-3および実施例2-9、実施例2-10、実施例2-12で得たバインダーを含有するカーボンブラック分散液に対し、正極活物質であるLCOを仕込み、ディスパーにより充分に混合し、各混合液を得た。… 【0071】[比較例3-1~比較例3-3] 表3に示す組成に従い、比較例2-3~比較例2-5で得た、バインダーを含有するカーボンブラック分散液に対し、正極活物質であるLCOを仕込み、ディスパーにより充分に混合し、各混合液を得た。… 【0073】<電池電極合材層の作製> 上記の各実施例、比較例で得られた正極活物質または負極活物質を含むカーボンブラック分散液を電池電極合材液として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、乾燥後膜厚100μmの塗膜(電池電極合材層)を作製した。… 【0076】<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て> [実施例5-1~実施例5-3、実施例5-8、実施例5-9、実施例5-11、比較例5-1~比較例5-3] 先に調製した電池電極合材液(実施例3-1~実施例3-3、実施例3-9、実施例3-10、実施例3-12、比較例3-1~比較例3-3の正極合材液)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧下120℃で加熱乾燥した後、ローラープレス機にて圧延処理し、厚さ100μmの正極合材層を作製した。これを直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。… 【0083】【表2】 【0084】【表3】 」 イ.刊行物2の記載事項 摘記2a:請求項1~6及び15~16 「【請求項1】非プロトン性極性溶媒中にヒドロキシアルキルキトサンと有機酸および/またはその誘導体とを含む溶液に、活物質を添加して混練してなることを特徴とする電極板を製造するための塗工液。 【請求項2】ヒドロキシアルキルキトサンが、ヒドロキシエチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシブチルキトサンおよびグリセリル化キトサンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の塗工液。 【請求項3】さらに導電助剤としてアセチレンブラック、ケッチェンブラック、その他の炭素系導電助剤のいずれかを含む請求項1に記載の塗工液。 【請求項4】非プロトン性極性溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ビニルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の塗工液。 【請求項5】有機酸が、多塩基酸である請求項1に記載の塗工液。 【請求項6】多塩基酸が、ピロメリット酸および/またはトリメリット酸である請求項5に記載の塗工液。… 【請求項15】集電体が、アルミニウム箔であり、活物質が正極活物質であり、電極板が正極である請求項13に記載の製造方法。 【請求項16】集電体が、銅箔であり、活物質が負極活物質であり、電極板が負極である請求項13に記載の製造方法。」 摘記2b:刊行物2記載の発明の効果 「【0014】本発明によれば、活物質層の結着剤としてヒドロキシアルキルキトサン溶液を使用して活物質層を形成し、該層を加熱してヒドロキシアルキルキトサンを有機酸および/またはその誘導体で架橋させることによって、架橋されたヒドロキシアルキルキトサンは、電解液に溶解・膨潤することがなく、活物質層が集電体に対して密着性が優れ、集電体に対する接触抵抗が顕著に低減され、また、活物質層が良好な可撓性を有しているので、電池またはキャパシタの組立工程および充放電時に、活物質層の剥離、脱落、ひび割れなどが生じない電極板、電池およびキャパシタが得られる。… 【0016】…キトサンの誘導体であるヒドロキシアルキルキトサン…ヒドロキシアルキルキトサンの水溶液を電極板を製造するための塗工液の結着剤として使用してみたところ、該水溶液と活物質および導電助剤との馴染みが低く、基材である集電体との密着性が低く、従来技術の課題は解決されなかった。」 摘記2c:塗工液の固形分と密着性と運搬コストなどの観点 「【0030】本発明で用いるヒドロキシアルキルキトサン溶液中のヒドロキシアルキルキトサンの濃度は、塗布適性や運搬コストなどの観点から1~40質量%が好ましく、より好ましくは5~10質量%である。上記濃度が1質量%未満であると安定した活物質層が得にくく、かつ運搬コストの点でも不利であり、一方、上記濃度が40質量%を超えると均一な溶液を得にくくなる。… 【0033】本発明の塗工液は、前記ヒドロキシアルキルキトサンと有機酸および/またはその誘導体とを含む有機溶剤溶液に、前記活物質と必要に応じて前記導電助剤とを添加して混練することによって得られる。該塗工液における各成分の割合は活物質を100質量部とした場合、ヒドロキシアルキルキトサンが1~10質量部、有機酸および/またはその誘導体が0.5~30質量部、および導電助剤(使用する場合)が1~15質量部であることが好ましい。また、塗工液の固形分は10~80質量%であることが好ましい。 【0034】上記において、ヒドロキシアルキルキトサンの使用量が1質量部未満であると、形成される活物質層の強度および集電体に対する密着性が不足する場合がある。一方、ヒドロキシアルキルキトサンの使用量が10質量部を超えると形成される活物質層の導電性が低下する場合がある。」 ウ.刊行物3の記載事項 摘記3a:トリメリット酸などの有機酸 「[0020]本発明者らは、水酸基含有樹脂から形成される皮膜の耐有機溶剤性を改善すべく検討し、水酸基含有樹脂を有機酸および/またはその誘導体とともに特定の有機溶剤に加えて形成した溶液が、金属材料表面に優れた密着性と耐溶剤性を有する皮膜を与えることを見いだした。また、該有機溶剤溶液を活物質層の結着剤として使用して活物質層を形成すると、加熱乾燥時に有機酸および/またはその誘導体が水酸基含有樹脂の架橋剤として作用し、水酸基含有樹脂からなる皮膜が有機溶剤や電解液に対する溶解性・膨潤性がなくなり、金属材料表面や集電体に対して優れた密着性および耐溶剤性を有する活物質層が形成されることを見いだした。… [0030]本発明で使用する有機酸またはその誘導体としては…トリメリット酸、…ピロメリット酸…などの有機酸が挙げられる。… [0032]前記水酸基含有樹脂の架橋性の面から、特に3価以上の多塩基酸である…トリメリット酸、ピロメリット酸…が好ましい。本発明では有機酸および/またはその誘導体の使用量は、水酸基含有樹脂100質量部当たり1~150質量部であり、2~100質量部が好ましい。上記有機酸および/またはその誘導体の使用量が1質量部未満であると、架橋ポリマーの架橋密度が低く、形成される活物質層の集電体に対する密着性および架橋ポリマーの電解液に対する不溶解性、非膨潤性、電気化学的安定性の点で不十分であり、一方、上記使用量が150質量部を超えると形成される皮膜あるいは活物質層の可撓性が低下するとともに不経済である。」 摘記3b:塗布適性や運搬コストなどの観点からの組成 「[0036]本発明の塗工液中のポリマーの濃度は、塗布適性や運搬コストなどの観点から1~40質量%が好ましく、より好ましくは5~10質量%である。上記濃度が1質量%未満であると安定した皮膜あるいは活物質層が得にくく、かつ運搬コストの点でも不利であり、一方、上記濃度が40質量%を超えると均一な溶液を得にくくなる。」 エ.刊行物4の記載事項 摘記4a:硫黄やリンを含む化合物 「【0015】本発明によれば、硫黄(S)やリン(P)を含む化合物と、主結着剤となる高分子と、所定の異種高分子を併用することとしたため、正極合剤層の均一性、耐久性及び生産性に優れたリチウムイオン二次電池用正極、その製造方法及び当該正極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。… 【0021】…硫黄含有化合物としては、例えば、硫酸…及び有機硫酸塩などが挙げられる。…リン含有化合物としては、リン酸…及び有機リン酸塩などが挙げられる。」 オ.刊行物5の記載事項 摘記5a:PVDFの撥水性 「【0046】水に対する接触角が80°以上の撥水性物質としては…ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂…などがある」 カ.刊行物6の記載事項 摘記6a:リチウム二次電池 「【0174】リチウム二次電池は、集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備する。前記正極合剤層と前記集電体との間や、前記負極合剤層と前記集電体との間には、電極下地層が形成されていてもよい。 【0175】電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、好ましい。又、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状のものも使用できる。 【0176】集電体上に電極下地層を形成する方法としては、前述の電極下地ペーストを電極集電体に塗布、乾燥する方法が挙げられる。電極下地層の膜厚としては、導電性及び密着性が保たれる範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.05μm以上、20μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、10μm以下である。 【0177】集電体上に電極合剤層を形成する方法としては、集電体上に上述の電極合剤ペーストを直接塗布し乾燥する方法、及び集電体上に電極下地層を形成した後に電極合剤ペーストを塗布し乾燥する方法等が挙げられる。又、電極下地層の上に電極合剤層を形成する場合、集電体上に電極下地ペーストを塗布した後、湿潤状態のうちに電極合剤ペーストを重ねて塗布し、乾燥を行っても良い。電極合剤層の厚みとしては、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。」 (2)刊行物1に記載された発明 ア.刊1発明 摘記1aの「カーボンブラックと、分散剤としてのポリビニルアルコール樹脂と、溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドンとを含んでなるカーボンブラック分散液であって…請求項1記載のカーボンブラック分散液に、さらに、正極活物質または負極活物質を含有してなる電池用カーボンブラック分散液。」との記載、並びに 摘記1fの「本実施例中、部は重量部を、%は重量%を、それぞれ表す。実施例及び比較例で使用したカーボンブラック(「CB」と略記することがある)、ポリビニルアルコール樹脂(「PVA」と略記することがある)、バインダー、電極活物質等を以下に示す。…特に記載の無い残りの成分は、全てN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。… <カーボンブラック>…デンカブラックHS-100(電気化学工業社製):アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m2/g、以下HS-100と略記する。… <ポリビニルアルコール樹脂>…クラレポバール L-8(クラレ社製):ポリビニルアルコール樹脂、けん化度71mol%、平均重合度1000以下、4%水溶液粘度5.5mPa・s、以下L-8と略記する。… <バインダー>…KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、以下、PVDFと略記する。… <活物質>…正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)…以下、LCOと略記する。… 実施例2-10…表2に示す組成に従い、…各カーボンブラック分散液を得た。…実施例3-10…表3に示す組成に従い、…実施例2-10…で得たバインダーを含有するカーボンブラック分散液に対し、正極活物質であるLCOを仕込み、ディスパーにより充分に混合し、各混合液を得た。…先に調製した電池電極合材液(…実施例3-10…の正極合材液)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した」との記載、並びに「表2」の「実施例2-10」及び「表3」の「実施例3-10」の記載からみて、刊行物1には、 『カーボンブラック(デンカブラックHS-100(電気化学工業社製):平均一次粒子径48nm、比表面積39m2/gのアセチレンブラック)12重量%と、バインダーとしてのPVDF(KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン)6重量%(固形成分量)と、分散剤としてのポリビニルアルコール樹脂(クラレポバール L-8(クラレ社製):けん化度71mol%、平均重合度1000以下、4%水溶液粘度5.5mPa・sのポリビニルアルコール樹脂)0.96重量%と、溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とからなるカーボンブラック分散液を、カーボンブラック(CB)の含有量が2.67重量%、正極活物質であるLCO(正極活物質コバルト酸リチウム)の含有量が62.7重量%になるように仕込んだドクターブレードを用いて塗布する電池用カーボンブラック分散液。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。 (3)対比・判断 ア.対比 本1発明と刊1発明とを対比する。 刊1発明の「溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)」は、本件特許の請求項2の「前記極性溶媒が…N-メチル-2-ピロリドン…より選択される」との記載にあるとおりの「極性溶媒」に該当することが明らかであるから、本1発明の「極性溶媒」に相当する。 刊1発明の「分散剤としてのポリビニルアルコール樹脂(クラレポバール L-8(クラレ社製):けん化度71mol%、平均重合度1000以下、4%水溶液粘度5.5mPa・sのポリビニルアルコール樹脂)0.96重量%」は、その「4%水溶液粘度」との記載からみて、親水性のポリマー樹脂であることが明らかであるから、本1発明の「親水性ポリマー」に相当する。 刊1発明の「バインダーとしてのPVDF(KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン)6重量%(固形成分量)」は、本1発明の「ポリフッ化ビニリデン」に相当する。 刊1発明の「ドクターブレードを用いて塗布する電池用カーボンブラック分散液」は、その「塗布する…分散液」との記載にあるように「塗布」に供される「液」であることが明らかであるから、本1発明の「塗工液」に相当する。 そして、刊1発明の「カーボンブラック(…)12重量%と、…PVDF(…ポリフッ化ビニリデン)6重量%(固形成分量)と、…ポリビニルアルコール樹脂(…)0.96重量%と、溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とを含んでなるカーボンブラック分散液を、カーボンブラック(CB)の含有量が2.67重量%、正極活物質であるLCO(正極活物質コバルト酸リチウム)の含有量が62.7重量%になるように仕込んだ…分散液」は、 溶剤(NMP)81.04重量部(=100-12-6-0.96)と、親水性ポリマー(ポリビニルアルコール樹脂)0.96重量部と、ポリフッ化ビニリデン6重量部の合計88重量部を基準にして、 親水性ポリマー(ポリビニルアルコール樹脂)0.96重量部の含有量が、本1発明の「前記極性溶媒、前記親水性ポリマー、及び前記ポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する、前記親水性ポリマーの含有量」に換算して0.96÷88×100=1.09重量部となり、 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)6重量部の含有量が、本1発明の「全量を100質量部とした場合」に換算して6÷88×100=6.82重量部となり、 カーボンブラック(CB)12重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)6重量%、及びポリビニルアルコール(PVA)0.96重量%を含むカーボンブラック分散液を、カーボンブラック(CB)2.67重量%、コバルト酸リチウム(LCO)62.7重量%になるように仕込んだ分散液の固形分濃度が、(6+0.96)×2.67/12+2.67+62.7=66.9重量%となる。 してみると、本1発明と刊1発明は、両者とも『極性溶媒と、親水性ポリマーと、ポリフッ化ビニリデンと、を含有する塗工液。』である点において一致し、次の相違点α~δにおいて相違する。 相違点α:極性溶媒、親水性ポリマー、及びポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する「親水性ポリマーの含有量」が、本1発明においては「5質量部以上10.4質量部以下」であるのに対して、刊1発明においては「1.09重量部」である点。 相違点β:親水性ポリマーが、本1発明においては「キトサン誘導体及びデンプン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種」であるのに対して、刊1発明においては「ポリビニルアルコール」である点。 相違点γ:全量を100質量部とした場合の「ポリフッ化ビニリデンの含有量」が、本1発明においては「5質量部以下」であるのに対して、刊1発明においては「6.82重量部」である点。 相違点δ:塗工液の「固形分の含有量」が、本1発明においては「1~35質量%」であるのに対して、刊1発明においては「66.9重量%」である点。 イ.判断 (ア)相違点αについて 刊行物1に記載された発明は、刊行物1の請求項1(摘記1a)の「カーボンブラックと、分散剤としてのポリビニルアルコール樹脂と、溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドンとを含んでなるカーボンブラック分散液であって、…カーボンブラック100重量部に対するポリビニルアルコール樹脂が2重量部以上、8重量部以下であることを特徴とするカーボンブラック分散液。」との記載にあるように、その「ポリビニルアルコール樹脂」を「バインダー」としてではなく「分散剤」として含むものであって、その含有量は、カーボンブラック100重量部に対して「2重量部以上、8重量部以下」として、その上限値を「8重量部」に設定しているものである。 してみると、刊1発明は「CB100部に対するPVAの量」が「8.0部」という上限値での配合となっている(刊行物1の表2の「実施例2-10」を参照)ので、刊1発明の親水性ポリマーの含有量を、刊行物1に記載された発明における上限値を超えた範囲に設定することには阻害事由があるといえ、動機付けがあるとはいえない。 また、本件特許明細書の段落0080の「バインダーである親水性ポリマー及びPVDF」との記載にあるように、本1発明の「5質量部以上10.4質量部以下」という「親水性ポリマーの含有量」の数値範囲は、バインダーとしての好適値を設定したものであるところ、刊1発明の「分散剤としてのポリビニルアルコール樹脂」の含有量を、バインダーとしての観点から好適化することに、動機付けがあるとはいえない。 そして、刊1発明の含有量の上限値をより大きな範囲に設定する動機付けが存在しないので、刊行物2(甲2A)の段落0030(摘記2c)に「ヒドロキシアルキルキトサン溶液中のヒドロキシアルキルキトサンの濃度は…より好ましくは5~10質量%」である」との記載があり、刊行物3(甲3A)の段落0036(摘記3b)に「塗工液中のポリマー濃度は…より好ましくは5~10質量%である」との記載があるとしても、刊1発明の含有量の範囲を、刊行物2~3に記載された濃度範囲にすることが、当業者にとって容易であるとはいえない。 さらに、甲4A(特許第4240157号公報)には「電池用組成物」についての発明が記載され、甲5A(特開2010-61932号公報)には「電池用組成物」についての発明が記載され、甲6A(化学大辞典5)には「多塩基酸」についての説明が記載され、刊行物5として引用した甲2B(特開2004-363018号公報)には「固体高分子型燃料電池用多孔質電極基材」についての発明が記載され、甲3B(特開2005-239929号公報)には「コーティング用組成物」についての発明が記載され、甲4B(特開2001-181862号公報)には「基材への防汚性付与方法及び防汚性部材」についての発明が記載され、刊行物4として引用した甲5B(特開2009-123463号公報)には「リチウムイオン二次電池用正極、その製造方法及びリチウムイオン二次電池」についての発明が記載され、刊行物6として引用した甲6B(特開2010-61996号公報)には「電池用組成物」についての発明が記載されているところ、これらの刊行物には、塗工液において、極性溶媒、親水性ポリマー、及びポリフッ化ビニリデンの合計100質量部に対する、親水性ポリマーの含有量を「5質量部以上10.4質量部以下」とすることについて、示唆を含めて記載がない。 このため、本件特許の出願日当時の技術常識ないし甲4A~甲6A及び甲2B~甲6Bの刊行物の記載を参酌しても、刊1発明の含有量の範囲を、本1発明の範囲にすることが、当業者にとって容易であるとはいえない。 加えて、刊行物1に記載された発明は、刊行物1の段落0017(摘記1b)の記載にあるように「溶剤の使用量を大幅に低減」することを課題とした発明であって、取消理由通知に示した『カーボンブラック72重量部と、ポリフッ化ビニリデン(バインダー)6重量部と、ポリビニルアルコール樹脂(分散剤)5.76重量部と、NMP(溶剤)16.24重量部とからなる分散液。』のような組成からなるものを除外するものではないものの、本1発明は「固形分の含有量が、1~35質量%である塗工液」に関するものとされたから、本1発明の「固形分の含有量」の条件を満たした上で、刊1発明の「親水性ポリマーの含有量」を「5質量部以上10.4質量部以下」に設定することが、当業者にとって容易であるとはいえない。 そして、本件特許明細書の段落0056の「親水性ポリマーの含有量が0.1質量部未満であると、形成される塗工膜の強度や密着性が不足し、塗工膜から塗工膜中の成分が脱落しやすくなる。一方、親水性ポリマーの含有量が40質量部を超えると、均一な溶液が得られなくなる。」との記載にあるように、本1発明は「親水性ポリマーの含有量」を好適な範囲に設定することによって、塗工膜の強度や密着性が十分で、均一な溶液が得られるようになるものであり、同段落0104の表I-1において、その下限値(5質量部)の「例I-3」の具体例と、その上限値(10.4質量部)の「例I-7」の具体例によって、格別顕著な効果が裏付けられている。 したがって、上記相違点αについての構成及び効果を想到することが、当業者にとって容易であるとはいえない。 (イ)相違点δについて 刊行物1に記載された発明は、刊行物1の段落0017(摘記1b)の記載にあるように「溶剤の使用量を大幅に低減」することを課題とした発明であるから、刊1発明の「66.9重量%」という固形分量の「ドクターブレードを用いて塗布する電池用カーボンブラック分散液」について、その溶剤の使用量を増大させて、本1発明の「固形分の含有量が、1~35質量%である塗工液」と同様な固形分量のものにすることには阻害事由があるといえ、動機付けがあるとはいえない。 そして、本件特許明細書の段落0055の「塗工液中の固形分の含有量は、1~35質量%であることが好ましい。」との記載からみて、本1発明は「固形分の含有量」を「1~35質量%」の範囲に設定することによって、塗工膜の強度や密着性が十分で、均一な溶液が得られるようになるものと自然には解される。 したがって、上記相違点δについての構成及び効果を想到することが、当業者にとって容易であるとはいえない。 (ウ)まとめ 以上のとおり、本1発明と刊1発明は、上記相違点α及びδにおいて実質的に相違しており、これらの相違点が実質的な差異ではないといえる事情も見当たらないので、相違点β及びγについて検討するまでもなく、本1発明は、刊行物1(甲1A及び甲1B)に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 また、相違点α及びδについて当業者が容易に想到することができるとはいえないので、相違点β及びγについて検討するまでもなく、本1発明は、刊行物1~6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 したがって、取消理由通知において示した理由1及び2には理由がなく、本1発明~本22発明に係る特許が、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。 2.取消理由通知の理由3(サポート要件)について (1)理由3(い)について 理由3の(い)の記載不備についての指摘は、平成30年5月10日付けの訂正請求による訂正後の請求項1に導入された「親水性ポリマーの含有量が、5質量部以上」という上限値を規定しない数値範囲の全てが、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められないということを趣旨とするものであるところ、本件訂正による訂正後の請求項1の関連記載は「親水性ポリマーの含有量が、5質量部以上10.4質量部以下」に改められたので、上記(い)の記載不備は解消している。 したがって、取消理由通知において示した理由3(い)には理由がない。 (2)理由3(ろ)について 理由3の(ろ)の記載不備についての指摘は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の含有量が大きい範囲のものが、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められないということを趣旨とするものであるところ、本件訂正による訂正後の請求項1の関連記載は「ポリフッ化ビニリデンの含有量が、5質量部以下」に改められたので、上記(ろ)の記載不備は解消している。 したがって、取消理由通知において示した理由3(い)には理由がない。 (3)理由3(は)について 理由3の(は)の記載不備についての指摘は、塗工液中の「固形分の含有量」が特定されないもの全てが、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められないということを趣旨とするものであるところ、本件訂正による訂正後の請求項1の関連記載は「固形分の含有量が、1~35質量%」に改められたので、上記(は)の記載不備は解消している。 したがって、取消理由通知において示した理由3(は)には理由がない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1並びに当該請求項1を直接又は間接に引用する請求項2~22の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとはいえない。 したがって、取消理由通知において示した理由3には理由がなく、本1発明~本22発明に係る特許が、特許法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。 3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許異議申立人Aの申立て理由について 特許異議申立人Aは、証拠として甲1A~甲6Aを提出し、理由1として、本件特許の請求項1~2、5~7、9~13に係る発明は甲1A(刊行物1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、理由2として、本件特許の請求項1~22に係る発明は甲1A記載の発明並びに甲2A(刊行物2)及び周知技術/技術常識から容易想到であるから、特許法第29条第2項に違反するとの主張をしている。 しかしながら、上記「1.(3)イ.(ウ)」に示したように、本1発明~本22発明に係る特許が特許法第29条の規定に違反してなされたものであるとはいえない。 (2)特許異議申立人Bの申立て理由について 特許異議申立人Bは、証拠として甲1B~甲6Bを提出し、理由1として、本件特許の請求項1~2及び5~13に係る発明は甲1B(刊行物1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、理由2として、本件特許の請求項1、2、4~16及び19~22に係る発明は甲1B、甲5B(刊行物4)、及び甲6B(刊行物6)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に違反するとの主張をしている。 しかしながら、上記「1.(3)イ.(ウ)」に示したように、本1発明~本22発明に係る特許が特許法第29条の規定に違反してなされたものであるとはいえない。 4.むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人A及びBが申し立てた理由及び証拠によっては、本1発明~本22発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、この他に本1発明~本22発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700026

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