特許訂正審判
2018-390157
合成繊維用処理剤、合成繊維の処理方法及び合成繊維
- 審判番号
- 2018-390157
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2013-169769外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月05日
- 審決日
- 2018年11月21日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P141 .852-Y (D06M) / P141 .854-Y (D06M) / P141 .855-Y (D06M) / P141 .856-Y (D06M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第3項、特許法第126条第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5500745号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5500745号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-10]について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許5500745号(以下、「本件特許」という。)は、平成25年8月19日の出願であって、平成26年3月20日に特許権の設定登録がされ、平成30年10月5日に本件訂正審判の請求がされたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるというものである。
請求人が求めている具体的な訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1、2のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「平滑剤に下記のリン酸化合物Aと下記のリン酸化合物Bを配合して成ることを特徴とする合成繊維用処理剤。
リン酸化合物A:下記の化1で示されるリン酸エステル及び下記の化1で示されるリン酸エステルの有機アミン塩から選ばれる一つ又は二つ以上
【化1】
(化1において、
R1:炭素数8~24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~24の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基
R2:水素原子、炭素数8~24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~24の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基
n:2又は3の整数)
リン酸化合物B:下記の化2で示されるリン酸エステル、下記の化2で示されるリン酸エステルの有機アミン塩、下記の化3で示されるリン酸エステル及び下記の化3で示されるリン酸エステルの有機アミン塩から選ばれる一つ又は二つ以上。
【化2】
【化3】
(化2及び化3において、
R3,R4,R5:炭素数8~24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~24の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基)」
と記載されているのを、
「平滑剤に下記のリン酸化合物Aと下記のリン酸化合物Bを配合して成ることを特徴とする合成繊維用処理剤。
リン酸化合物A:下記の化1で示されるリン酸エステル及び下記の化1で示されるリン酸エステルの有機アミン塩から選ばれる一つ又は二つ以上
【化1】
(化1において、
R1:炭素数8~24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~24の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基
R2:水素原子、炭素数8~24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~24の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基
n:2又は3の整数)
リン酸化合物B:下記の化2で示されるリン酸エステル、下記の化2で示されるリン酸エステルの有機アミン塩、下記の化3で示されるリン酸エステル及び下記の化3で示されるリン酸エステルの有機アミン塩から選ばれる一つ又は二つ以上。
【化2】
【化3】
(化2及び化3において、
R3,R4,R5:炭素数8~24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数8~24の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1~20モル付加したものから水酸基を除いた残基)」
に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0008】に
「【化1】
」
と記載されているのを、
「【化1】
」
に訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)一群の請求項ごとに訂正請求がされているかについて
訂正事項1は、訂正前の請求項1を訂正するものであるところ、訂正前の請求項2~10は当該訂正前の請求項1を直接または間接に引用しているから、訂正事項1は、一群の請求項ごとに訂正を請求するものである。
ゆえに、訂正事項1は、特許法第126条第3項の規定に適合する。
(2)訂正の目的が該当するかについて
訂正前の請求項1には、リン酸化合物Aの【化1】で示される化学式について、
と記載されている。
これに関して、本件特許明細書の段落【0015】には、「リン酸化合物Aとしては、1)前記した化1で示されるモノドデシルピロホスフェート、ジドデシルピロホスフェート、モノオレイルピロホスフェート、ジオレイルピロホスフェート、ドデシルオレイルピロホスフェート、ジオレイルポリホスフェート等のリン酸エステル、2)前記した化1で示されるモノドデシルピロホスフェート、ジドデシルピロホスフェート、モノオレイルピロホスフェート、ジオレイルピロホスフェート、ドデシルオレイルピロホスフェート、ジオレイルポリホスフェート等のリン酸エステルの有機アミン塩が挙げられる。モノドデシルピロホスフェート、ジドデシルピロホスフェート、モノオレイルピロホスフェート、ジオレイルピロホスフェート、ジオレイルポリホスフェート等のリン酸エステルのアルカリ金属塩は耐熱性を悪化させるので好ましくない。」と記載されている。この記載を踏まえると、【化1】に示されるべき化合物は、ピロリン酸又はポリリン酸のエステルであるといえる。
ここで、ピロリン酸とは、2個の四面体型のPO4が頂点のO原子を共有して結合した[(HO)2(O=)P-O-P(=O)(OH)2]であるのが技術常識であり(例えば、化学辞典(第2版)(森北出版株式会社 2009年12月16日発行)の第1025頁「二リン酸(塩)」欄参照)、ポリリン酸とは、2個以上のPO4四面体が頂点の酸素原子を共有して、直鎖状に連なった構造であるのが技術常識である(例えば、化学辞典(第1版)(株式会社東京化学同人 1994年10月1日発行)の第1375頁「ポリリン酸」欄参照)。
そうすると、本来、【化1】に示されるべき化合物は、PO4がO原子を共有して結合した構造、すなわち
である。
また、本件特許明細書の【0035】、【0036】には、
「試験区分1(リン酸化合物の調製)
・リン酸化合物(P-1)の調製
反応容器にオレイルアルコール381部を仕込み、120℃で0.05MPa以下の条件下に2時間脱水処理した後、常圧に戻し、撹拌しながら60±5℃で五酸化二燐81部を1時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、ジブチルエタノールアミン543部を50℃で滴下して中和を行ない、リン酸化合物(P-1)を調製した。」、
「 ・リン酸化合物(P-1)のP核積分比率の算出
リン酸化合物(P-1)に過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、31P-NMRを用いてP核積分比率を算出したところ、化1で示されるリン酸エステルが30%、化2で示されるリン酸エステルが35%、化3で示されるリン酸エステルが35%であった。」
と記載されている。
ここで、リン酸源である五酸化二燐は、PO4のP=O以外の3個のO原子が隣接するP原子に共有された構造であるのが技術常識である(例えば、化学辞典(第2版)(森北出版株式会社 2009年12月16日発行)の第493頁「五酸化二リン」欄参照)。
このことからも、本来、【化1】に示されるべき化合物は、
である。
しかしながら、訂正前の【化1】に示された化学式によると、P原子同士が直接結合する構造となっており、当該訂正前の【化1】に示された化学式は、「[]」の中に含めるべき「O」が「[]」の外に出された誤記であるといえる。
したがって、訂正事項1は、請求項1の【化1】に示される化学式について、誤記を正しい表記に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更になるかについて
上記(2)で述べたとおり、本件特許明細書の段落【0015】、【0035】、【0036】の記載及び上記(2)で述べた技術常識を踏まえると、訂正前の請求項1の【化1】は、
の誤記であることは、本件特許明細書に接した当業者に読み取れることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、請求項1の【化1】に示される化学式ついて、明らかな誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされているかについて
本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0011】、【0035】、【0036】の記載(それぞれ、本件特許明細書の上記(2)で示した【0015】、【0035】、【0036】と同一の記載である。)と上記(2)で述べた技術常識を踏まえると、上記(2)で検討したとおり、本件訂正後の【化1】で示される化学式が示されているといえる。
したがって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされたものであるといえ、特許法第126条第5項括弧書きの規定に適合するものである。
(5)特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて
後記2(5)であわせて検討する。
2 訂正事項2について
(1)明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われているかについて
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0008】の【化1】に示される化学式の訂正であるところ、訂正前の請求項1は、【化1】を発明特定事項とするものであり、訂正前の請求項2~10は当該請求項1を直接または間接に引用するものであるから、一群の請求項1~10全てに関係する訂正である。
ゆえに、訂正事項2は、一群の請求項1~10全てについて行われるものであるから、特許法第126条第4項の規定に適合するものである。
(2)訂正の目的が該当するかについて
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0008】の【化1】に示される化学式について、上記訂正事項1と実質的に同じ訂正をするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更になるかについて
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0008】の【化1】に示される化学式について、上記訂正事項1と実質的に同じ訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされているかについて
訂正事項2は、上記1(4)と同様に、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされているといえ、特許法第126条第5項括弧書きの規定に適合するものである。
(5)特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて
訂正事項1により訂正された、請求項1~10に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件発明1~10」という。)が、本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された発明であるか、または、このような刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとする根拠となり得る刊行物を発見することはできないから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
また、他に、本件発明1~10について、特許を受けることができないとするに足る理由を見いだすこともできない。
したがって、本件発明1~10は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえるから、訂正事項1、2は、特許法第126条第7項に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号を目的とするものであり、かつ、同条第3項~第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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