特許訂正審判
2018-390146
カルコブトロールの製造方法
- 審判番号
- 2018-390146
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2012-537372
- 登録番号
- 特許第5733800号(P5733800)
- 請求日
- 2018年09月21日
- 審決日
- 2019年02月19日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 秀次
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 菅原 洋平
- 分類
- P141 .852-Y (C07D) / P141 .854-Y (C07D) / P141 .855-Y (C07D) / P141 .856-Y (C07D) / P141 .841-Y (C07D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第3項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第126条第4項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5733800号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5733800号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5733800号(以下「本件特許」という。)は、2010年11月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年11月4日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願(特願2012-537372号)の請求項1~11に係る発明について、平成27年4月24日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成30年9月21日に本件訂正審判の請求(以下「本件訂正請求」という。)がなされた。
第2 請求の趣旨及び理由
本件訂正審判請求の趣旨は「特許第5733800号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~11について訂正することを認める、との審決を求める。」というものであり、すなわち、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲を下記訂正事項のとおりに訂正することを求めるというものである。
請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」及び「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」とあるのを、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」及び「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」と訂正する(審決注:下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。
また、請求項1の記載を直接引用する請求項2~11も同様に訂正する。
2 訂正事項2
明細書の段落【0001】、【0002】、【0012】、【0027】及び【0030】にそれぞれ記載された「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ブトロール)」及び「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」とあるのを、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(ブトロール)」及び「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」と訂正する。
第3 当審の判断
1 一群の請求項ごとに訂正を請求すること(特許法第126条第3項及び第4項)について
本件訂正請求は、二以上の請求項が記載された特許請求の範囲の訂正を請求し、また、明細書の訂正を請求するものであるので、本件訂正請求が、特許法第126条第3項及び第4項に規定する要件を満たすものであるかを検討する。
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~11について、訂正事項1は、請求項1の記載を訂正するものであるところ、請求項2~11は請求項1を直接引用しており、請求項1についての訂正事項1により内容が訂正されるものであるから、請求項2~11についての訂正を含むものであるといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正前の請求項1~11は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
(2)訂正事項2について
本件特許明細書の段落【0001】、【0002】、【0012】、【0027】及び【0030】に記載されている訂正事項2は、訂正事項1に係る、訂正後の請求項1及びその請求項1を直接引用して特定されている訂正後の請求項2~11に対応する訂正事項である。
したがって、訂正事項2は、一群の請求項である請求項1~11全てについて行われるものであるから、特許法第126条第4項の記載に適合するものである。
(3)以上のとおり、本件訂正請求は、前記の一群の請求項がある特許請求の範囲について、当該一群の請求項ごとに訂正を請求するものであるから、特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
2 訂正の目的(特許法第126条第1項ただし書)について
(1)訂正事項1について
請求人は、訂正事項1は「誤記・・の訂正」を目的とするものである旨を主張しているので、この点について検討する。
ア 「誤記・・の訂正」を目的とする訂正について
特許法第126条第1項ただし書第2号は、「誤記・・の訂正」を目的とする場合には、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることを認めているが、ここで「誤記」というためには、訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが、当該明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される。
イ 特許請求の範囲の請求項1の記載に何らかの誤記があることに当業者が気付くかどうか
そこで、まず、本件特許請求の範囲の請求項1に接した当業者が、請求項1の記載は原則として正しい記載であることを前提として、本件訂正前の請求項1の記載に何らかの誤記があることに気付くかどうかを検討する。
(ア)請求項1には、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」の製造方法であって、原料化合物として「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」を脱錯化剤を用いて解離させ[a)工程]、沈殿したガドリニウム塩を除去し[b)工程]、(ガドリニウム塩除去後の)遊離のリガンドを酸性イオン交換樹脂に結合させ[c)工程]、該樹脂をアルカリ水溶液で溶出し[d)工程]、該溶出液を酸性イオン交換樹脂で処理し[e)工程]、リガンドをCa2+イオンと錯体化し結晶化させる[f)工程]ことを含む方法が記載されている。
a)工程~f)工程の各処理方法は技術的に理解できるため、前記原料化合物及び前記製造化合物の各記載を、以下検討する。
(イ)原料化合物である「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」の記載について
原料化合物である「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」(以下「原料化合物」という。)は、その名称から、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」部分、「(ガドブトロール)」部分、「ガドリニウム」部分及び「錯体」部分に分けることができ、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」部分は、有機化学命名法による有機化合物を、「ガドリニウム」部分は、ガドリニウムのイオンであることを、「錯体」部分は、前記有機化合物と前記ガドリニウムのイオンが配位していることを、「(ガドブトロール)」部分は、前記有機化合物と前記ガドリニウムのイオンが配位している錯体の別名(本件特許明細書段落【0002】参照)を、それぞれ表している。
そして、前記有機化合物である「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」(以下「化合物A」という。)は、「1,4,7,10-テトラアザシクロデカン」との名称から、炭素原子を含む10員環であって(シクロデカン)、1,4,7,10位(10員環における位置)に窒素原子を4つ有する(テトラアザ)環状化合物であり、1,4,7,10位の窒素原子のうち、1,4,7位の窒素原子に、それぞれの位置に1個ずつ「酢酸」基(アセテート基:-CH2-COOH)が、また、10位の窒素原子に「(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル」基が、それぞれ置換している化学構造を有していることを表している。
これらのことから、当業者は、原料化合物を、4つの窒素原子に特定の置換基を有する10員環の環状化合物である化合物Aとガドリニウムのイオンが配位している錯体(別名ガドブトロール)、と理解することができる。
一方、当業者は、イオンと配位することが知られている窒素原子を4つもつ環状化合物(例えば、ポルフィリン環構造等)が、4つの窒素原子が炭素原子を介して均等に環状化合物上に配置された構造を有しており、いずれの窒素原子も窒素原子どうし直接結合していない構造であることを、技術常識として理解している。
そこで、前記化合物Aについてみると、化合物Aは、10員環の環状化合物であることから、その環を構成する原子の数は4つの窒素原子を含めて10個であり、そのうち1,4,7,10位に窒素原子があることが明らかであることから、1位と10位の窒素原子が隣り合った、すなわち、窒素原子が直接結合した環構造を有する環状化合物を表していることになる。
そうすると、当業者は、前記技術常識に照らして、原料化合物における、化合物Aに少なくとも何らかの誤記があることに気付くものと認められる。
(ウ)製造される化合物である「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」の記載について
製造される化合物である「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」(以下「製造化合物」という。)は、その名称から、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」部分、「(カルコブトロール)」部分、「カルシウム」部分及び「錯体」部分に分けることができ、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」部分は、有機化学命名法による有機化合物を、「カルシウム」部分は、カルシウムのイオンであることを、「錯体」部分は、前記有機化合物と前記カルシウムのイオンが配位していることを、「(カルコブトロール)」部分は、前記有機化合物と前記カルシウムのイオンが配位している錯体の別名(本件特許明細書段落【0001】参照)を、それぞれ表している。
そして、前記有機化合物である「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」は、前記(イ)の「化合物A」と同じ化学構造を有していることを表している。
これらのことから、当業者は、製造化合物を、4つの窒素原子に特定の置換基を有する10員環の環状化合物である化合物Aとカルシウムのイオンが配位している錯体(別名カルコブトロール)、と理解することができる。
そうすると、化合物Aについては、前記(イ)で既に検討したとおりであるから、当業者は、前記技術常識に照らして、製造化合物における、化合物Aに少なくとも何らかの誤記があることに気付くものと認められる。
ウ 特許請求の範囲の請求項1の誤記が、本件訂正に係る訂正前の前記化合物Aのどこにあるのか当業者が分かるかどうか
当業者は、前記イ(イ)及び(ウ)で述べたとおり、原料化合物及び製造化合物における、化合物Aに少なくとも何らかの誤記があることに気付くものと認められる。
そこで、化合物A、すなわち、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」のいずれに誤記があると当業者が分かるかどうかを検討する。
化合物Aについてみると、前記イ(イ)及び(ウ)で述べたとおり、化合物Aは、10員環の環状化合物であることから、その環を構成する原子の数は4つの窒素原子を含めて10個であり、そのうち1,4,7,10位に窒素原子があることが明らかであることから、1位と10位の窒素原子が隣り合った、すなわち、窒素原子が直接結合した環構造を有する環状化合物を表していることになる。
そこで、化合物Aの10員環の構造に着目すると、10員環の環状化合物のうち、窒素原子の位置は、1,4,7,10位であることから、1位の窒素原子と4位の窒素原子の間、4位の窒素原子と7位の窒素原子の間、及び、7位の窒素原子と10位の窒素原子の間には、それぞれ炭素原子が2個存在し、10位の窒素原子と1位の窒素原子は、直接結合しており、その間には、炭素原子が存在していない。
そして、前記イ(イ)及び(ウ)で述べたとおり、当業者は、イオンと配位することが知られている窒素原子を4つもつ環状化合物(例えば、ポルフィリン環構造等)が、4つの窒素原子が炭素原子を介して均等に環状化合物上に配置された構造を有しており、いずれの窒素原子も窒素原子どうし直接結合していない構造であることを、技術常識として理解していることを考慮すると、1位の窒素原子と4位の窒素原子の間、4位の窒素原子と7位の窒素原子の間、及び、7位の窒素原子と10位の窒素原子の間に、それぞれ炭素原子が2個存在しているのに対し、10位の窒素原子と1位の窒素原子の間に2個の炭素原子が存在していない状況は、明らかに不自然であり、当業者は、化合物Aが「10員環」、すなわち、シクロ環の原子数に誤記があることが分かると認められる。
なお、化合物Aの10員環の環状化合物が有している1,4,7,10位の窒素原子に結合している特定の置換基は、化学的に矛盾がなく、そこに誤記があるとは認められない。
エ 正しい記載が本件訂正に係る訂正後の化合物Aの「シクロドデカン」部分であると当業者が分かるかどうか
前記ウのとおり、特許請求の範囲の請求項1の原料化合物及び製造化合物に共通して記載されている化合物Aの「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」における誤記が、「シクロデカン」部分にあることに気付いた当業者が、正しい記載が「シクロドデカン」であると分かるかどうかを検討する。
前記ウで述べたとおり、化合物Aは、1位の窒素原子と4位の窒素原子の間、4位の窒素原子と7位の窒素原子の間、及び、7位の窒素原子と10位の窒素原子の間に、それぞれ炭素原子が2個存在するのに対し、10位の窒素原子と1位の窒素原子の間には、2個の炭素原子が存在していない状況は、明らかに不自然であり、当業者は、化合物Aが「10員環」、すなわち、シクロ環の原子数に誤記があることが分かると認められる。
そして、前記のとおり、化合物Aは、10位の窒素原子と1位の窒素原子の間に、前記他の窒素原子間と同様に、炭素原子が2個存在しないことが不自然であることから、10位の窒素原子と1位の窒素原子の間も、前記他の窒素原子間と同様に、炭素原子が2個存在すると理解するのが自然である。すなわち、窒素原子4個及び炭素原子8個の合計12個の原子を有する12員環の環状化合物が正しい化学構造であると理解するのが合理的であり、12員環は、「シクロドデカン」にほかならない。
このことは、本件特許明細書の段落【0004】記載された論文「Inorg. Chem. 1997, 36, 6086-6093」の「図式3」[審決注:p.6088-6089に記載されている図式は「スキーム3」であるから、「スキーム3」を意味するものと認める。]中の化合物番号12のカルシウム錯体化合物の化学構造式からも裏付けられている。
したがって、当業者は、化合物Aの誤記である「シクロデカン」部分の正しい記載が「シクロドデカン」であると分かるといえるから、化合物Aの正しい記載は、「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸」であるといえる。
オ 小括
以上によると、本件特許明細書に接した当業者であれば、本件訂正事項1に係る訂正前の請求項1の原料化合物及び製造化合物に共通の化合物Aにおける「シクロデカン」部分の記載に誤りがあり、訂正後の「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸」という記載が正しいことが、本件特許明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるということができる。
したがって、本件訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記・・の訂正」を目的とするものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0001】、【0002】、【0012】、【0027】及び【0030】にそれぞれ記載された、製造化合物の「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体」、原料化合物の「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体」、及び、化合物Aの「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ブトロール)」という記載について、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載とを整合させ、原料化合物、製造化合物及び化合物Aに共通して記載されている化合物Aの「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」における「シクロデカン」部分の誤記を、「シクロドデカン」に訂正するという、訂正事項1と実質的に同じ訂正をするものである。
したがって、前記(1)で述べたとおりであるから、本件訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記・・の訂正」を目的とするものである。
(3)以上のとおり、訂正事項1及び2は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記・・の訂正」を目的とするものである。
3 新規事項の追加の有無(特許法第126条第5項)について
(1)前記2で判断したとおり、訂正事項1及び2は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記・・の訂正」を目的とするものであるから、訂正事項1及び2が特許法第126条第5項の規定に適合するかどうかについては、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初明細書等」という。)を基準として判断する(特許法第126条第5項括弧書)。
(2)本件当初明細書等の請求項4~14の記載、段落【0001】、【0002】及び【0004】の記載(それぞれ、前記2で示した本件特許明細書の段落【0001】、【0002】及び【0004】と同一の記載である。)並びに前記2で示した技術常識を踏まえると、前記2で示したことと同様の理由により、本件当初明細書等に接した当業者であれば、本件当初明細書等の請求項4~14、段落【0001】、【0002】、【0012】、【0027】及び【0030】の、原料化合物、製造化合物及び化合物Aに共通して記載されている、化合物Aの「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸」における「シクロデカン」という記載が誤りであり、これを「シクロドデカン」の趣旨に理解するのが妥当であるといえる。
したがって、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11、並びに、本件特許明細書の段落【0001】、【0002】、【0012】、【0027】及び【0030】の、原料化合物、製造化合物及び化合物Aに共通して記載されている、化合物Aの「10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸」は、本件当初明細書等の記載から自明な事項として定まるものであるということができるから、訂正事項1及び2が、本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。
(3)以上によると、訂正事項1及び2は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるといえ、特許法第126条第5項括弧書の規定に適合するものである。
4 特許請求の範囲の拡張・変更(特許法第126条第6項)について
前記2のとおり、訂正事項1及び2は、いずれも誤記を正しい記載に訂正するものであるから、実質上、特許請求の範囲は、拡張・変更されないものと認められる。
したがって、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
5 独立特許要件(特許法第126条第7項)について
前記訂正事項1及び2の訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1~11に係る発明は、いずれも発明の特定事項の誤記を訂正するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、本件訂正請求により特許法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たし、訂正事項1及び2は、特許法第126条第7項に規定される要件に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求に係る訂正事項1及び2は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第3項~第7項の規定に適合するものであるから、本件訂正請求による訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
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