特許訂正審判
2018-390018
半導体装置
- 審判番号
- 2018-390018
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2013-182595
- 登録番号
- 特許第6242633号(P6242633)
- 請求日
- 2018年01月25日
- 審決日
- 2018年03月16日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 東芝
- 【請求人代理人】日向寺 雅彦
- 審判長/審判官
- 審判長 深沢 正志
- 審判官 小田 浩
- 審判官 大嶋 洋一
- 分類
- P141 .852-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6242633号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第6242633号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6242633号(以下、「本件特許」という。)は、平成25年9月3日を出願日とする出願(特願2013-182595号)の請求項1ないし20に係る発明について平成29年11月17日に特許権の設定登録がなされ、平成30年1月25日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正事項
本件審判の請求の要旨は、特許第6242633号発明の明細書及び特許請求の範囲を、審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、すなわち、下記1ないし3のとおり訂正することを求めるものである。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」を、「前記第3部分の前記第2不純物の濃度よりも高く」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2乃至17及び20も同様に訂正する)。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項18の「前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」を、「前記第3部分の前記第2不純物の濃度よりも高く」に訂正する(請求項18の記載を直接的又は間接的に引用する請求項19及び20も同様に訂正する)。
3 訂正事項3
明細書の段落【0005】における「前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」を、「前記第3部分の前記第2不純物の濃度よりも高く」に訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正事項1について
(1) 訂正の目的について
ア 訂正前の請求項1の記載
訂正前の請求項1の記載は以下のとおりである。
「第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2導電形の第3半導体領域であって、第1導電形の第1不純物と、第2導電形の第2不純物とを含む第3半導体領域と、
前記第1半導体領域、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域と電気的に接続された第1電極と、
を備え、
前記第3半導体領域は、第1部分、第2部分及び第3部分を含み、
前記第2部分は前記第1部分と前記第1半導体領域との間に設けられ、
前記第3部分は前記第2部分と前記第1半導体領域との間に設けられ、
前記第2部分の前記第1不純物の濃度は、前記第1部分の前記第1不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第1不純物の濃度よりも高く、
前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く、
前記第2部分の前記第1不純物の濃度に対する前記第2部分の前記第2不純物の濃度の比は、1よりも大きく3よりも小さい半導体装置。」
イ 訂正前の請求項1における誤記の存在について
上記のとおり、訂正前の請求項1には、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」と記載されているが、訂正前の請求項1には、この記載の前に「第3不純物」という記載は存在しない。
したがって、訂正前の請求項1において、「前記第3不純物」という記載が誤記であることは明らかである。
ウ 訂正後の請求項1の記載が本来の意を表しているかについて
(ア) 訂正前の請求項1には、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度」が「前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高」いと、記載されていた。
すなわち訂正前の請求項1では、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度」が「前記第3部分」の何らかの不純物濃度よりも高いことが記載されている。
ここで、訂正前の請求項1には、
a 「前記第3不純物」の記載以前に「不純物」について、「第1不純物」および「第2不純物」しか記載されていないこと
b 「第3半導体領域」には「第1不純物」および「第2不純物」しか含まれていないから、「第3半導体領域」の一部である「第3部分」にも「第1不純物」および「第2不純物」しか含まれていないこと
c 「前記第3部分の前記第3不純物の濃度」の比較の対象が「前記第2部分の前記第2不純物の濃度」であること
が記載されている。
したがって、訂正前の請求項1の記載を総合すれば、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」において、上記「イ」から明らかな誤記と認められる「前記第3不純物」という記載は、「前記第2不純物」の誤記であると解するのが合理的である。
(イ) これに対して、明細書には、
「【0040】
第3半導体領域30における第1導電形の不純物の濃度及び第2導電形の不純物の濃度は、例えばSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)によって検出される。
図4(a)及び(b)は、不純物濃度を例示する図である。
図4(a)及び(b)において、横軸は深さ、縦軸は不純物濃度を表している。図4(a)には、第3半導体領域のn形の不純物が少ない場合のSIMSの結果が例示される。図4(b)には、第3半導体領域のn形の不純物が多い場合のSIMSの結果が例示される。
・・・ 中 略 ・・・
【0042】
図4(b)に表した例においても、第3半導体領域30からn形の不純物(N)とp形の不純物(Al)とが検出されているが、n形の不純物(N)の濃度が第1半導体領域10のn形の不純物(N)の濃度よりも高い。図4(b)に表した例では、第3半導体領域30におけるp形の不純物(Al)の濃度/n形の不純物(N)の濃度が、1よりも大きく3よりも小さくなっている。」
と記載され、【図4】(b)には、
図4
と記載されている(下線は当審で付与した。以下、同じ。)。
すなわち、第3半導体領域30には、n形の不純物(N)とp形の不純物(Al)しかなく、n形の不純物(N)濃度とp形の不純物(Al)濃度は、第3半導体領域30のうち中間の領域(訂正前の請求項1に係る「第2部分」に相当する。)が最も高いことが記載されている。
よって、訂正前の請求項1の「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」の記載において、「前記第3不純物」の記載は前記「第2不純物」の誤記であるという上記「(ア)」の理解は、明細書の記載と整合している。
(ウ) 以上から、訂正後の請求項1の「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第2不純物の濃度よりも高く」という記載は、明細書から把握される本来の意を表していると認められる。
エ 訂正の目的のまとめ
以上から、訂正事項1は、特許法第126条第1項但し書き第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものと認められる。
(2) 新規事項の有無
上記「(1)ウ(イ)」で指摘したのと同旨の記載が本件出願の願書に最初に添付した明細書及び図面にあるから、訂正事項1は、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内でなされたものと認められる。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記「(1)ウ」で指摘したように、訂正後の請求項1の記載は、明細書から把握される本来の意を表していると認められる。
そして、訂正事項1は、上記「(1)ウ(イ)」で指摘したように、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4) 独立特許要件
訂正事項1による訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし17および20に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
2 訂正事項2について
(1) 訂正の目的について
ア 訂正前の請求項18の記載
「第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2導電形の第3半導体領域であって、第1導電形の第1不純物と、第2導電形の第2不純物とを含む第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の上であって、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第1導電形の第8半導体領域と、
第1電極と、
前記第1半導体領域と前記第1電極との間に設けられた絶縁膜と、
前記第1半導体領域と導通する第2電極と、
前記第2半導体領域、前記第3半導体領域及び前記第8半導体領域と電気的に接続された第3電極と、
を備え、
前記第3半導体領域は、第1部分、第2部分及び第3部分を含み、
前記第2部分は前記第1部分と前記第1半導体領域との間に設けられ、
前記第3部分は前記第2部分と前記第1半導体領域との間に設けられ、
前記第2部分の前記第1不純物の濃度は、前記第1部分の前記第1不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第1不純物の濃度よりも高く、
前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く、
前記第2部分の前記第1不純物の濃度に対する前記第2部分の前記第2不純物の濃度の比は、1よりも大きく3よりも小さい半導体装置。」
イ 訂正前の請求項18における誤記の存在について
上記のとおり、訂正前の請求項18には、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」と記載されているが、訂正前の請求項18には、この記載の前に「第3不純物」という記載は存在しない。
したがって、訂正前の請求項1において、「前記第3不純物」という記載が誤記であることは明らかである。
ウ 訂正後の請求項18の記載が本来の意を表しているかについて
(ア) 訂正前の請求項18には、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度」が「前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高」いと、記載されていた。
すなわち訂正前の請求項18では、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度」が「前記第3部分」の何らかの不純物濃度よりも高いことが記載されている。
ここで、訂正前の請求項18には、
a 「前記第3不純物」の記載以前に「不純物」について、「第1不純物」および「第2不純物」しか記載されていないこと
b 「第3半導体領域」には「第1不純物」および「第2不純物」しか含まれていないから、「第3半導体領域」の一部である「第3部分」にも「第1不純物」および「第2不純物」しか含まれていないこと
c 「前記第3部分の前記第3不純物の濃度」の比較の対象が「前記第2部分の前記第2不純物の濃度」であること
が記載されている。
したがって、訂正前の請求項18の記載を総合すれば、「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」において、上記「イ」から明らかな誤記と認められる「前記第3不純物」という記載は、「前記第2不純物」の誤記であると解するのが合理的である。
(イ) これに対して、明細書には、上記「1(1)ウ(イ)」で指摘したように、第3半導体領域30には、n形の不純物(N)とp形の不純物(Al)しかなく、n形の不純物(N)濃度とp形の不純物(Al)濃度は、第3半導体領域30のうち中間の領域(訂正前の請求項18に係る「第2部分」に相当する。)が最も高いことが記載されている。
よって、訂正前の請求項18の「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第3不純物の濃度よりも高く」の記載において、「前記第3不純物」の記載は前記「第2不純物」の誤記であるという上記「(ア)」の理解は、明細書の記載と整合している。
(ウ) 以上から、訂正後の請求項18の「前記第2部分の前記第2不純物の濃度は、前記第1部分の前記第2不純物の濃度、及び、前記第3部分の前記第2不純物の濃度よりも高く」という記載は、明細書から把握される本来の意を表していると認められる。
エ 訂正の目的のまとめ
以上から、訂正事項2は、特許法第126条第1項但し書き第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものと認められる。
(2) 新規事項の有無
上記「1(1)ウ(イ)」で指摘したのと同旨の記載が本件出願の願書に最初に添付した明細書及び図面にあるから、訂正事項2は、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内でなされたものと認められる。
よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記「(1)ウ」で指摘したように、訂正後の請求項18の記載は、明細書から把握される本来の意を表していると認められる。
そして、訂正事項2は、上記「(1)ウ(イ)」で指摘したように、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。
よって、訂正事項2は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4) 独立特許要件
訂正事項2による訂正後における特許請求の範囲の請求項18ないし20に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。
よって、訂正事項2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
3 訂正事項3について
(1) 訂正の目的
上記「1(1)イ」で指摘したと同じ理由により、訂正前の明細書の段落【0005】の記載において、「前記第3不純物」という記載は誤記であることは明らかである。
そして、上記「1(1)ウ」で指摘したと同じ理由により、「前記第3不純物」という記載を「前記第2不純物」に訂正した後の段落【0005】の記載は、明細書から把握される本来の意を表していると認められる。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項但し書き第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものと認められる。
(2) 新規事項の有無
上記「1(2)」および「2(2)」で指摘したと同じ理由により、訂正事項3は、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内でなされたものと認められる。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記「1(3)」および「2(3)」で指摘したと同じ理由により、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4) 独立特許要件
上記「1(4)」および「2(4)」で指摘したと同じ理由により、訂正事項3による訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載されている事項により構成される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ではない。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第4 むすび
したがって、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項但し書き第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-390018