特許拒絶査定不服審判
2018-015803
魚由来のコラーゲン及びその誘導体を含有する飲食品
- 審判番号
- 2018-015803
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-118356外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月28日
- 審決日
- 2020年08月21日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】共栄化学工業株式会社
- 分類
- P18 .121-WZ (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第44条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-118356「魚由来のコラーゲン及びその誘導体を含有する飲食品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開、特開2016-195599〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月16日を出願日とする特願2011-276500号の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成28年6月14日に新たな特許出願としたものであって、平成29年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年7月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、令和2年3月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年6月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハモ科の魚コラーゲンの加水分解物を有効成分とする皮膚のシワ改善及び弾力向上用の経口組成物。」
第3 当審が通知した拒絶理由
当審が令和2年3月16日付けで通知した拒絶理由は、概略、以下のとおりのものである。
「本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
請求項1
引用文献1:特開2009-102311号公報(拒絶査定の引用文献2)
引用文献2:特開2011-10605号公報
引用文献3:特開2010-222287号公報
引用文献4:特開2007-254398号公報
引用文献5:編集部,“美容食品素材の市場動向”,
食品と開発,2004年,Vol.39,No.8,
pp.43~49
引用文献6:特開2003-238597号公報
引用文献7:特開2004-238365号公報
引用文献8:特開2011-111434号公報(拒絶査定の引用文献1)
引用文献9:菊地数晃,又平芳春,
“ヒトの乾燥肌および肌荒れに対する
海洋性コラーゲンペプチド含有飲料の有用性”,
フレグランス ジャーナル,2003年,
Vol.31,No.9,pp.97~102
引用文献10:兎束直昭,神園恭世,
“魚由来コラーゲンペプチドの機能と応用”,
月刊フードケミカル,2005年,
Vol.21,No.9,pp.29~33」
第4 当審の判断
当審は、上記第3の当審が通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
その理由は、以下のとおりである。
1 刊行物の記載事項
(1)本願優先日前の平成21年5月14日に頒布された「特開2009-102311号公報」(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、以下の下線は当審で付したものである。
(1a)「【請求項1】
ハモ科、ウナギ科及びアナゴ科から選ばれた魚から得られる魚コラーゲン及び/又はその誘導体を1種又は2種以上配合することを特徴とする化粧料。
・・・
【請求項4】
コラーゲン誘導体がアシル化物又は加水分解物である請求項1又は3に記載の化粧料。」
(1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関するものであって、ハモ科、ウナギ科及びアナゴ科から選ばれた魚から得られるコラーゲンを含有し、優れた保湿効果を有し、皮膚や毛髪に対して潤いを与え、皮膚や毛髪を生き生きとした健全な状態に維持、改善する上で有用な化粧料を提供するものである。すなわち、本発明は皮膚に対して、乾燥、肌荒れ、ヒビ、アカギレ、炎症性疾患等を予防、軽減又は改善し、さらに肌に艶や滑らかさを与える効果を奏し、毛髪に対しては、乾燥、パサツキ等に有効な化粧料に関する。」
(1c)「【背景技術】
【0002】
従来、各種用途(化粧料、食品等の配合原料、或いは医療用材料)に用いられているコラーゲンは、一般に、牛や豚等の哺乳動物のコラーゲン組織から抽出されることが多かったが、牛の狂牛病やブタの口蹄疫などの伝染病が頻繁に発生して以来、哺乳動物由来のコラーゲンの使用が回避される傾向にあり、近年、魚由来のコラーゲンが注目されている。これまで、魚由来コラーゲンとしては、例えば、ヒラメ、タラ、マグロ、サメ、サケ等の魚類の皮を原料とするものが知られているが、このような魚類の皮を原料としたコラーゲンは、魚臭さを有し、しかも白濁を生じ透過率が低いといった問題があった。」
(1d)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、魚由来のコラーゲンにみられる上述の如きの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の魚コラーゲンに比してより高い保湿作用、水分保持作用を有し、皮膚や毛髪に適用したとき、それらに潤いと艶、さらには張りを与えるなど肌質及び髪質改善に著効を示す新規な魚コラーゲンが配合された化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ハモ科、ウナギ科及びアナゴ科から選ばれた魚から得られる魚コラーゲンが、従来の魚コラーゲンに勝るすぐれた保湿作用、水分保持作用とそれに基づく顕著な肌質改善効果及び髪質改善効果を有することを見い出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0006】
本発明の魚種を原料として得られるコラーゲンは、従来の魚コラーゲンに勝る高い保湿作用、水分保持作用を有しており、皮膚や毛髪に適用したとき、すぐれた肌質及び髪質改善効果を示す。又、ここに得られる魚コラーゲンの高品質に対応して、それから誘導されるアシル化物、加水分解物などのコラーゲン誘導体についてもまた品質にすぐれたものを得ることが容易であって、本発明の魚コラーゲン及びその誘導体は、化粧料の配合原料等として用いて有用である。従って本発明によれば、それら魚コラーゲン類を配合してなり、安全性にすぐれることはもとより、特に肌質及び髪質の改善に著効を示す化粧料が提供される。
【0007】
本発明の化粧料で有効成分として用いる特定の魚種のコラーゲン、即ちハモ科、ウナギ科或いはアナゴ科の魚から得られるコラーゲンが、上記の如き従来の魚コラーゲンに勝るすぐれた保湿作用、水分保持作用を示す要因としては、本発明者らの研究の結果によれば、本発明のコラーゲンに、従来のほ乳類或いは魚のコラーゲンには確認されていない以下の如き化学構造上の特徴が共通して見られることから、かかる化学構造が関与しているものと推察される。
【0008】
即ち、本発明のハモ科、ウナギ科或いはアナゴ科の魚の代表例であるハモ、ウナギ及びマアナゴより得られるI型コラーゲンは、電気泳動によってコラーゲンを構成する3本鎖を分析すると、図1(C)に示すハモの電気泳動図に見られるように、共通してα鎖が従来のウシ、ブタ及びその他魚類などのコラーゲン〔図1(B)〕と異なるバンドを示す。従来のウシ、ブタ及びその他魚類などのI型コラーゲンには、鎖組成が[α1(I)]2α2(I)およびα1(I)α2(I)α3(I)と表記される2種類の分子形が存在する。しかし、図1(c)に示す電気泳動図の分析結果から、ハモのI型コラーゲンについて、どちらの分子形もあてはまらない。ウナギやハモには、第4のα鎖、α4(I)が存在している。ウナギやハモには、このα4(I)という特有成分があるため、ウシやブタおよびその他魚類などのI型コラーゲンとは鎖組成が異なる。つまりは従来のウシ、ブタ及びその他魚類より得られるI型コラーゲンとは異なり、複数のI型コラーゲンを有しているがために、それらが複合的に働くことによって高い保湿、保水効果を発揮していると考えられる。」
(1e)「【0016】
ここに得られる精製魚コラーゲンは、その製造工程中、魚皮細断物の水洗工程及び酸抽出工程に於いて、体表色素の殆どすべてが除去され、実質的に無着色でかつ純度も高く、そのままでも化粧料等の配合原料として十分使用可能なものであるが、所望によりこれにさらに、以下に述べる有機溶媒処理を施すことにより、より高品質のコラーゲンとすることもできる。
・・・
【0020】
以上の如くして得られる本発明の魚コラーゲンは、そのまま化粧料配合原料として用いて有用なものであるが、これにさらにコハク化処理等を施して化学修飾されたコラーゲン(例えばサクシニル化コラーゲン等)としたり、或いは酸、アルカリ、酵素等によって加水分解を行って加水分解物(例えば、加水分解コラーゲン、トリペプチド等)とした上、化粧料等の原料として供することもできる。又このようなコラーゲン誘導体とした場合、原料として用いた本発明の魚コラーゲンの高品質に対応して、従来の魚コラーゲンを出発原料としたものに比してより品質にすぐれた誘導体を得ることが可能である。
・・・
【0024】
本発明の魚コラーゲンの加水分解物の調製も、従来のコラーゲン加水分解物の調製法と同様の方法によりこれを行って何ら差し支えない。
例えば、精製魚コラーゲンの水溶液に、コラーゲンの0.0005~0.01倍量(重量比)のタンパク質分解酵素を添加し、酵素の至適pH、至適温度に1~4時間保持して加水分解を行わしめた後、酵素を失活させ、次いで濾過等を行って夾雑物を除き、さらに所望によりpH調整を行うことにより、魚コラーゲン加水分解物の溶液を得ることができる。
必要ならば、該溶液より常法に従って魚コラーゲン加水分解物を固形物として分離してもよい。
【0025】
以上の如くして得られる本発明の魚コラーゲン及びその誘導体(以下、それらを総称して魚コラーゲン類と言うことがある)は、魚由来であることから人体に対する安全性にすぐれるばかりでなく、品質面に於いても、従来にない高い保湿能、水分保持能を有するなどすぐれた特性を有しており、化粧料用の配合原料、として用いて有用である。」
(1f)「【0040】
実施例1.ハモコラーゲンの調製
冷凍されたハモ(Muraenesox cinereus)の皮30gを解凍して10~20mm角に細断した。この細断物に精製水900mLを加えてジューサーミキサーでホモジナイズし、液相部を捨てる操作を3回繰り返し、魚皮細断物を十分水洗した。
次に、水洗した魚皮を十分水切りし、これにペプシン0.03gを含む0.5M酢酸水溶液900mLを加え、4~10℃で24時間攪拌してコラーゲンを抽出した。
この抽出液を濾過して抽出残渣の魚皮を除いた後、得られた清澄化抽出液に、攪拌下10%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを8.5とし、添加終了後さらに1時間攪拌を続けてコラーゲンを析出させた。
析出したコラーゲンを遠心分離により回収し、これを50mMNa2HPO4液900mLに懸濁して24時間攪拌した後、再び遠心分離を行ってコラーゲンを回収した。
次に、回収されたコラーゲンを精製水900mLに懸濁し、攪拌水洗後遠心分離する操作を3回繰り返した後、得られた精製コラーゲンを0.02重量%りん酸水溶液に溶解して、固形分濃度0.3重量%で略々無色のコラーゲン水溶液450gを得た。
なお、以上の操作は、室温及び液温がいずれも15℃以下となるような条件下にこれを行った。
・・・
【0043】
実施例4.ハモコラーゲン粉末の調製
実施例1に於いて、精製コラーゲンを0.02重量%リン酸水溶液に溶解してコラーゲン水溶液とする代わりに、精製コラーゲンを凍結乾燥し、粉砕するほかは実施例1と同様にして、白色のコラーゲン粉末1.3gを得た。
・・・
【0046】
実施例7.加水分解ハモコラーゲン液の調製
実施例4と同様にして得られたハモコラーゲン粉末を精製水に分散させて固形分濃度1重量%のコラーゲン分散液100gを調製し、この液に加水分解型の蛋白分解酵素を0.01重量%添加し、40~50℃に保温下で、1時間撹拌して酵素加水分解を行った。加水分解終了後、80℃に昇温し、30分間保温して酵素を失活させ、ろ過して濃度1%の加水分解ハモコラーゲン液90gを得た。」
(1g)「【0052】
処方例2.乳液
[A成分] 部
スクワラン 10.0
オリーブ油 4.0
ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸グリセリル 1.0
モノステアリン酸グリセリル 1.0
[B成分]
1,3-ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
エチルパラベン 0.05
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 0.1
実施例1のコラーゲン水溶液 15.0
A成分及びB成分をそれぞれ80℃以上に加温後、A成分にB成分を加えて攪拌し、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。
これを40℃以下まで冷却した後、C成分を加えて攪拌混合し、さらに30℃以下まで冷却して均質な乳液を得た。
・・・
【0059】
処方例9.乳液
処方例2のC成分中、実施例1のコラーゲン水溶液に代えて実施例7の加水分解ハモコラーゲン水溶液を用いるほかは処方例2と同様にして均質な乳液を得た。」
(1h)「【0085】
試験例3.モニター試験
実施例及び比較実施例で製造した各種コラーゲン水溶液を含有するエッセンスを製造し、モニターテストによる保湿効果及び肌改善効果試験を実施した。
・・・
[試験方法]
無作為に抽出した20才から55才の女性40名を被験者とし、1グループ10名の4グループ(A,B,C,D)に分け、グループ毎に本発明試料(試料(1))と各比較試料(試料(2),(3),(4),(5))を顔面の左右に、別々に、1日2回(朝、晩)1ヶ月間塗布し、比較テストを行った。
・・・
【0086】
[評価法]
左右顔面の肌の「つや」「滑らかさ」「キメ」「張り」「しっとり感」及び「くすみ」の5項目を自己判断により、以下の5段階の評価言語から該当すると思われる数値を選択し、評価点とした。
5:非常によい。(著しく改善された。)
4:良い。(かなり改善された。)
3:やや良い。(多少改善された。)
2:良くも悪くもない。(変化がない。)
1:悪い。(状態が悪くなった。)
また、モニターテスト終了後、各グループの被験者に、左右に塗布していた試料について、総合的にどちらの試料の方が保湿、肌質改善効果が高かったか(総合評価での優位判定)を自己評価により選択させた。
【0087】
[結果]
5項目の評価結果を表3及び表4に、又総合的評価の結果を表5に示した。その結果、ハモの魚皮から得られるコラーゲンは、サケ、マグロ、ウシノシタなどの魚皮あるいはタイウロコから得られるコラーゲンよりも、優れた保湿効果及び肌にキメや張りを与える肌改善効果を有することが認められた。」
(2)本願優先日前の平成23年1月20日に頒布された「特開2011-10605号公報」(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2a)「【0004】
コラーゲンは、動物組織における主要な構成タンパク質であり、皮膚、血管、内臓、骨等のいたるところに存在していることが知られている。特に、コラーゲンは皮膚の真皮部分に多く存在し、皮膚の弾力性に関わると共に、加齢に伴い減少し、皮膚のシワやタルミの原因になっていることから、コラーゲンを補給するよう化粧品の中に含有させる美容化粧品が開発されてきた。近年では、食品として経口摂取により美肌効果を狙った食品も多々開発されている。」
(2b)「【0026】
(コラーゲンペプチド)
本発明に用いられるコラーゲンペプチドは、コラーゲンあるいはゼラチン等の変性コラーゲンを酸やアルカリあるいは酵素等で加水分解させることで得られる。現在コラーゲンは豚、牛、鳥、魚等多様な動物から抽出されたものを食品として用いている。何れのコラーゲンも特有のコラーゲン臭が存在することが明らかである。中でも、コラーゲンを酵素等で加水分解させたものを用いた場合には、分解物中に存在するコラーゲン、コラーゲンペプチド、及びゼラチンによる様々な生理活性効果が期待されるので好ましい。
【0027】
前記コラーゲンペプチドを作製する際に用いられる酵素としては、コラーゲンを部分加水分解できるものであればよく、例えば、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィチン等のシステインプロテアーゼや、ペプシン、及びこれらの酵素を混合した酵素群等が挙げられるが、特に限定されるものではない。このような加水分解は、水又は各種バッファー等の緩衝液中で行われることが好ましい。本発明では、前記の加水分解された水溶液をそのまま使用してもよいし、乾燥処理等で粉末化したものを用いてもよい。
【0028】
本発明のグミキャンディ中に含まれるコラーゲンペプチドとしては、分子量5,000以下のコラーゲンペプチドを50%(W/W)以上含有していることが、好ましい。すなわち、体内に吸収されるコラーゲンペプチドの分子量は500~15,000とされており、低分子量のコラーゲンペプチドはコラーゲンに比べてより体内に吸収されやすい。そのため、体内への吸収の観点から、本発明のグミキャンディ中に含まれるコラーゲンペプチドとしては、分子量5,000以下にコラーゲンペプチドの50%が含有されるものを用いることが好ましい。コラーゲンの分子量に関する情報は、粘度測定やHPLC及びゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。なお、ここで分子量とは重量平均分子量をいう。」
(3)本願優先日前の平成22年10月7日に頒布された「特開2010-222287号公報」(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3a)「【0002】
コラーゲンペプチド等のタンパク質分解ペプチドは、肌の弾力性を高めシワを防ぐ美肌効果や、血液流動性改善効果等の機能を有する優れた成分であり、これを含有する外用剤、経口製剤が市販されている。」
(4)本願優先日前の平成19年10月4日に頒布された「特開2007-254398号公報」(以下、「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
(4a)「【0008】
一方、ペプチドの原料として美容食品によく利用されているコラーゲンは皮膚の真皮部分に多く存在し、皮膚の弾力性にかかわると共に、加齢にともない減少し、皮膚のシワやタルミの原因となっていることからコラーゲンを補給するよう化粧品の中に含有させる美容化粧品が開発されてきた。近年では、食品として経口摂取により美肌効果をねらった食品等も開発されている。」
(5)本願優先日前の平成16年8月1日に頒布された「編集部,“美容食品素材の市場動向”,食品と開発,CMPジャパン株式会社,2004年,Vol.39,No.8(通巻558号),p.43-49」(以下、「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
(5a)「美肌素材の開発動向
■コラーゲン(ペプチド)
コラーゲンは真皮を構成する成分として知られ、真皮中の約70%を占める。その補給により保湿性をもち、肌の潤い、滑らかさに寄与するといわれている。化粧品のコラーゲンはもちろん食品素材としてのコラーゲンペプチドも高い認知度を誇り、主剤としての利用が圧倒的に多いが、美容素材をバックアップする副剤としても採用が進んでいる。
国内市場において、化粧品・美容食品の基礎となるコラーゲン素材は牛由来が中心であったが、近年はBSEの影響もあり、豚皮・魚鱗(皮)由来の素材にシフトしている。昨年来フィッシュコラーゲンの需要が急増しており、新規参入企業も増加している。その影響もあり、ハイグレード品の原料となる魚種(ティラピアなど)のタイト感は続いているようだ。そんな中、魚臭マスキング、ブレの少ない原料供給に各社努めている。
新田ゼラチンでは、フィッシュコラーゲンペプチド「イクオス」が好調に美容食品業界で実績を伸ばしている。同品は、硬質有鱗魚の鱗と皮を原料に製造、味や臭いがほとんどない製品になっている。・・・
焼津水産化学工業は、魚由来の水溶性コラーゲン「マリンマトリックス」を取り扱う。昨年は臨床試験データを取り、経口摂取による皮膚水分量に対する影響と皮膚の滑らかさに対する影響をテストし、どちらも有意差を確認している。」(44頁左欄2行~中央欄15行)
(6)本願優先日前の平成15年8月27日に頒布された「特開2003-238597号公報」(以下、「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
(6a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、魚特有の味や臭いがなく、ヒ素含量の少ない魚類由来のコラーゲンペプチド及びその製造方法、該コラーゲンペプチドを含有する飲食品及び化粧品に関する。
・・・
【0004】また、コラーゲンの加水分解物であるコラーゲンペプチドは、高分子のコラーゲンに比べて水への溶解度が高く低粘度であり、生体内への吸収性が高く、様々な生理効果が期待できることから、機能性素材として飲食品や化粧品分野で盛んに利用されるようになっている。
【0005】コラーゲンは、工業的には牛や豚等の家畜や魚を解体、加工する際に副生する骨、腱、皮等から抽出して製造されているが、近年の狂牛病や豚口蹄疫等の家畜疫病の発生によって、安全性の面から畜肉由来のコラーゲンは敬遠される傾向にあり、より安全な魚類由来のコラーゲンが注目されるようになった。
・・・
【0010】そして、従来の魚類由来のコラーゲンやコラーゲンペプチドは、魚特有の味や臭いを有すること、特にコラーゲンペプチドは加熱した際に着色しやすいことなどから、その利用範囲が非常に限られてしまうという問題があった。
【0011】したがって、本発明の目的は、飲食品や化粧品等にも好適に使用でき、魚特有の味や臭いが少なく、安全性に優れた魚類由来のコラーゲンペプチド及びその製造方法を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、上記コラーゲンペプチドを含有する飲食品及び化粧品を提供することにある。」
(6b)「【0035】魚類由来のコラーゲンペプチドを配合する飲食品は特に制限はなく、例えば、飲料、焼き菓子、冷菓、錠菓、キャンディー、グミ、ゼリー、キャラメル、ジャム、チョコレート、ガム、和菓子(羊羹、モナカなど)、スープ類、パン、各種レトルト食品、魚肉練製品、ハム、ソーセジ類、調味料(出汁つゆ、醤油、味噌など)、サプリメント(カプセル剤、錠剤、顆粒、シロップなど)等が挙げられる。
・・・
【0037】コラーゲンペプチドを配合した飲食品を摂取することにより、・・・皮膚コラーゲンの代謝促進による美肌効果等の生理活性効果が期待される。
【0038】また、魚類由来のコラーゲンペプチドを配合する化粧品は特に制限はなく、例えば、化粧水、肌水、乳液、フェイスパック剤、石鹸、口紅、リップクリーム、ハンドクリーム、クレンジングクリーム、シャンプー、リンス、コンディショナー、整髪料、ヘアカラー、パーマ液、育毛剤、入浴剤、マニキュア、香水等が挙げられる。
・・・
【0040】例えば、化粧水等にコラーゲンペプチドを配合することにより、皮膚の保湿性を高め、肌荒れなどを改善、防止する効果が期待できる。また、シャンプー等に配合することにより、キューティクル保護作用、毛髪の傷みの改善、防止効果等が期待される。」
(6c)「【0044】実施例2
予め脱灰したカツオの骨・・・コラーゲンを含む抽出液・・・を得た。
【0045】この抽出液・・・タンパク質分解酵素製剤・・・酵素反応を行なった。・・・
【0046】・・・白色のコラーゲンペプチド粉末730gを得た。・・・
・・・
【0050】実施例4
ミンチしたオヒョウの皮・・・コラーゲンを含む抽出液・・・を得た。
【0051】この抽出液・・・タンパク質分解酵素製剤・・・酵素反応を行なった。・・・
【0052】・・・白色のコラーゲンペプチド粉末1.5kgを得た。・・・
・・・
【0059】実施例5
以下、本発明のコラーゲンペプチドを用いた飲食品の配合例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の例において、コラーゲンペプチドとしては、実施例2で得られたものを使用した。
【0060】(a)錠剤
表2に示す配合により各原料を調合して、打錠機により250mg/錠の丸型錠剤(コラーゲンペプチド含量125mg/錠)を作った。この錠剤は魚特有の味や臭いもなく、打錠製も良好であった。
・・・
【0062】(b)飲料
表3に示す配合により各原料を調合して、常法に従って飲料を作った。この飲料は魚特有の味や臭いがなく、粘度も低く、非常に飲みやすい飲料であった。また、コラーゲンペプチドの溶解性も良好であり、加熱による着色も認められなかった。
・・・
【0064】(c)クッキー
表4に示す配合により各原料を調合して、常法に従ってクッキー生地を作り、180℃で15分間焼成してクッキーを作った。このクッキーは魚特有の味や臭いがなく非常に美味しいものであった。
・・・
【0066】実施例6
以下、本発明のコラーゲンペプチドを用いた化粧品の配合例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の例において、コラーゲンペプチドとしては、実施例4で得られたものを使用した。
【0067】(d)化粧水
表5に示す配合により各原料を調合して、常法に従って化粧水を調製した。この化粧水は肌につけても魚特有の臭いがなく、肌がしっとりとした。
・・・
【0069】(e)クリーム
表6に示す配合により各原料を調合して、常法に従ってクリームを調製した。このクリームは肌につけても魚特有の臭いがなく、皮膚に弾力を感じるようになった。」
(7)本願優先日前の平成16年8月26日に頒布された「特開2004-238365号公報」(以下、「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
(7a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、経口摂取することにより、皮膚の潤いと張りを向上し、肌荒れや小じわ等の予防・改善を促進する美肌促進剤及びそれを含有する美容健康食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
コラーゲンは、皮膚・血管・内臓・骨等の動物組織のいたるところに存在していることが知られている。そして、真皮のタンパク質の70%、骨のタンパク質の90%はコラーゲンであり、個々の筋肉を包む筋膜もコラーゲンでできており、人体を構成するタンパク質の3分の1を占めているといわれている。
・・・
【0004】
更に、近年、コラーゲンやゼラチンを加水分解することにより、溶解性、分散性、消化・吸収性を高めた可溶性の低分子コラーゲン、すなわちコラーゲンペプチドが開発され、健康食品や機能性飲料分野等への利用も進んでいる。
例えば、皮膚組織において酸性ムコ多糖類やコラーゲンは、真皮層に多く存在して皮膚の保水性や弾力性に大きく関与している。そして、加齢等により、これらの量が減少すると、皮膚の保水性や弾力性が失われてしまい、肌荒れや小じわ等の原因となることが知られている。
【0005】
コラーゲンは、経口摂取した場合、消化液によってアミノ酸やペプチドレベルまで分解されて吸収される。そのため、皮膚の潤いと張りを保持し、肌荒れや小じわ等を予防・改善する目的でコラーゲンやコラーゲンペプチドを配合した美容健康食品が開発されている。
・・・
【0011】
したがって、本発明の目的は、魚類由来のコラーゲンペプチドを含み、経口摂取することにより、皮膚の潤いと張りを向上させ、肌荒れや小じわ等の予防・改善効果、すなわち美肌促進効果を有する美肌促進剤及び美容健康食品を提供することにある。
・・・
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の美肌促進剤の有効成分の一つである魚類由来のコラーゲンペプチドは、平均分子量が1,000~10,000、より好ましくは1,000~5,000、更に好ましくは2,000~4,000である。上記範囲内の平均分子量のコラーゲンペプチドは消化性に優れているので、経口摂取することにより、容易に吸収されて、コラーゲン合成の材料として使用され、皮膚の潤いと張りを向上させ、肌荒れや小じわ等の予防・改善効果をもたらすことができる。また、溶解性が高く、低粘度であり、起泡性が低いので、取り扱い性にも優れている。なお、本発明において平均分子量は数平均分子量を意味する。」
(7b)「【0065】
試験例1(消化性)
上記製造例1で得られた魚類由来のコラーゲンペプチドと、市販の畜肉由来のコラーゲンペプチドの消化性について、以下の方法により試験した。・・・
・・・
【0069】
更に、図3から、魚類由来のコラーゲンペプチドは、畜肉由来のコラーゲンペプチドに比べて、遊離したヒドロキシプロリンとプロリンの量が多いことが分かる。したがって、ヒドロキシプロリンやプロリンの吸収効率が高く、コラーゲンの体内生合成に効率よく利用されると考えられる。
【0070】
試験例2(肌の改善作用)
乾燥肌や肌荒れの症状を持つ女性21名を、試験群(10名)と対照群(11名)に分け、試験群の人には、魚類由来のコラーゲンペプチドとビタミンCとビタミンB2とを配合した飲料50ml(コラーゲンペプチド5g/本)を、1日1本、4週間摂取してもらった。一方、対照群の人には、魚類由来のコラーゲンペプチドを含まない飲料(プラセボ)を同様に摂取してもらった。表10に試験に用いた飲料の組成を示す。
・・・
【0073】
・皮膚表面の水分量
・・・
図4に示されるように、試験群では、摂取4週目で左上腕内側部における皮膚表面の水分量が有意な増加が認められ、対照群と比較しても有意差が認められた。
【0074】
・皮膚表面の滑らかさ
・・・
【0076】
・・・
図5、6に示されるように、試験群においては、摂取2週間目以降から有意にSEsm及びSEscが低下しており、皮膚の滑らかさや角質の乾燥度合いが改善されていることが分かる。一方、対照群では有意差は認められず、皮膚の滑らかさや角質の乾燥度合いが改善されていないことが分かる。
また、図7に示されるように、摂取前と摂取4週間目の皮膚の状態を比べると、皺の幅や深さが明らかに減少していることが分かる。」
(8)本願優先日前の平成23年6月9日に頒布された「特開2011-111434号公報」(以下、「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。
(8a)「【0008】
本発明者らは、乾燥肌を実験的に誘発させたマウスにおける皮膚の遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法によって研究し、乾燥肌ではアクアポリン遺伝子AQP3、AQP5、AQP8、AQP9の発現が亢進されていること、アクアポリンの発現を抑えることにより細胞からの水分損失を抑えられることを見出した。そして、コラーゲンを経口投与することにより皮膚においてアクアポリンの発現が低下すること、その発現低下により細胞からの水分損失を抑え、乾燥肌にかかわる皮膚機能が改善されることを見出した。
また、コラーゲンペプチド投与マウスの皮膚では、角化細胞分化に関わるスモールプロリンリッチタンパク質(Sprr1b、Sprr2a、Sprr2d、Sprr2h)や角化細胞の増殖に関わる上皮細胞成長因子であるエピレグリン(EREG)やサイクリン依存性キナーゼCDK2の発現が抑制されることを確認し、コラーゲンを経口投与することにより角化細胞の分化増殖が正常化し、それにより肌水分を保持し、皺形成を抑制することを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成し得たものである。」
(8b)「【0012】
本発明で用いられるコラーゲンとしては、コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドのいずれでも良いが、コラーゲンペプチドが好ましい。・・・
本発明で用いられるコラーゲンの原料由来は陸上動物性及び水生動物性のいずれでも構わない。・・・水性動物性としては、海水性(海洋性)、淡水性のいずれでもよく、例えば、鮭、・・・ウナギ、・・・等が挙げられ、鮭等が好ましい。
・・・
【0016】
本発明で用いるコラーゲンは、後述する実施例からも明らかなように、乾燥肌における皮膚の水分損失を抑制し、皺形成を抑制する効果を有することから、乾燥肌に基づく疾病、症状、病態を予防、改善する飲食品、特定保健用飲食品、健康飲料、健康食品、栄養食品、機能性食品として用いることができる。」
(8c)「【0020】
参考例1:コラーゲンペプチドの調製
原料には国内産のシロ鮭(学名:Oncorhynchus keta)の真皮を用いた。
・・・
【0030】
実施例2:コラーゲンペプチド含有皮膚機能改善剤例
下記組成に基づき、常法に従って1錠200mgの錠剤を製造した。
組成 1錠中の配合量(mg)
参考例1で製造したコラーゲンペプチド 100
セラミドパウダー 58
ビタミンC 2
乳糖 40
合計 200
【0031】
実施例3:コラーゲンペプチド含有皮膚機能改善剤の効果確認
実施例2で得られた錠剤をヒトに経口投与し、乾燥肌改善効果を検討した。
・・・
効果について1ヶ月後及び2ヶ月後にヒアリング調査を行った。乾燥肌の改善評価を、「改善した」、「やや改善した」、「変わらない」、「やや悪化した」、「悪化した」の5段階で評価した。
[結果と考察]
・・・
表3より、試験区の被検者はプラセボ区に比べ、乾燥肌が改善したと感じた人が有意に増加していることから、コラーゲンペプチドの皮膚機能改善効果が認められた。
・・・
【0033】
実施例4:コラーゲンペプチド含有皮膚機能改善食品の調製
<コラーゲン含有食品素材の調製>
参考例1で得られたコラーゲンペプチド780g、セラミドパウダー200g、ビタミンC20gを混合し、コラーゲンペプチドを78質量%含有する均質な「コラーゲン含有食品素材A」を調製した。
【0034】
<コラーゲン入り食品の調製>
定法に従い、コラーゲン含有食品素材Aを用いて以下の食品を調製した。
寒天0.4gに水を50g添加して80℃で加熱撹拌して溶解して放置後、粘度上昇による液性変化を確認して(~50℃前後)、コラーゲン含有食品素材A2.54gと水を混合して100gとし、固化後に破砕してゼリー状のコラーゲン含有食品1を得た(得られたゼリー状のコラーゲン含有食品1の1g中には、0.0198gのコラーゲンペプチドを含有する)。
【0035】
実施例5:コラーゲンペプチド含有皮膚機能改善食品の効果確認
実施例4で調製したコラーゲン含有食品を、ヒトに経口投与し、乾燥肌改善効果を検討した。
・・・
効果について1ヶ月後及び2ヶ月後にヒアリング調査を行った。乾燥肌の改善評価を、「改善した」、「やや改善した」、「変わらない」、「やや悪化した」、「悪化した」の5段階で評価した。
[結果と考察]
・・・
表3より、試験区の被検者はプラセボ区に比べ、乾燥肌が改善したと感じた人が有意に増加していることから、コラーゲンペプチドの皮膚機能改善効果が認められた。」
(9)本願優先日前の平成15年9月15日に頒布された「菊地数晃,又平芳春,“ヒトの乾燥肌および肌荒れに対する海洋性コラーゲンペプチド含有飲料の有用性”,フレグランス ジャーナル,フレグランス ジャーナル社,2003年,Vol.31,No.9,通巻276,p.97-102」(以下、「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。
(9a)「1.はじめに
コラーゲンは,細胞本体を取り囲むマトリックスの主タンパク質であり,哺乳動物の場合体重の6%,全タンパク質の約1/3を占めるなど全身に広く分布し,生体の保持,クッションとしての保護,各臓器間の結合など物理的な役割を担っている。
特に,皮膚(真皮)におけるコラーゲンの機能について関心が寄せられており,その量的・質的変化が皮膚の弾力性,柔軟性に影響を及ぼすと考えられている。近年,機能性食品としてのコラーゲンが話題となり,美容効果を目的とした食品向けのコラーゲンあるいはコラーゲンペプチドが開発されるようになった。既に,動物性コラーゲンペプチドを配合した食品のヒトヘの美肌効果が報告されており,経口摂取による有効性が実証されている。
一方,国内では狂牛病などの問題が発生し,コラーゲンをはじめとする動物性由来原料の安全性が懸念されている。従来,コラーゲンペプチドの原料は牛や豚,鶏などが主流であったが,この動物性コラーゲンペプチドに代わるものとして海洋性コラーゲンペプチドが注目を浴びている。
本稿では,海洋性コラーゲンペプチドを配合した飲料の肌への効果について報告する。試験は,乾燥肌あるいは荒れ肌で悩んでいるヒトに対し,海洋性コラーゲンペプチド配合飲料を4週間連続で摂取させて,皮膚の水分量,弾力性,柔軟性,および皮膚状態(顕微鏡による表面解析)について検討を行なった。」(97頁左欄1~27行)
(9b)「4.考察
最近,コラーゲンペプチドの経口摂取が皮膚状態に及ぼす作用について報告がなされ,コラーゲンの有用性をより積極的に追求しようとする動きがみられる。・・・今回我々は,海洋性コラーゲンペプチドを配合した飲料の,肌への改善効果を検討するために,ヒトを対象とした臨床試験を実施した。
コラーゲンベプチド飲料摂取群およびプラセボ飲料摂取群において,左眼下部,頚背部および左上腕部の皮膚水分量を測定した結果,摂取2週目あるいは4週目で有意な増加が認められた。特に,コラーゲンペプチド飲料を摂取した群ほど顕著な増加が認められた。
皮膚弾力性では,両群とも摂取後有意な増加は認められなかったが,いずれも改善傾向は認められた。皮膚柔軟性においては,両群とも有意な増加が認められ,特にコラーゲンペプチド飲料摂取群の方が顕著な増加を示した。・・・本試験においては,加齢による皮膚弾力性および柔軟性の変化は確認していないが,比較的被験者の年齢層は高くないことから,加齢に伴う皮膚柔軟性とは関係なく,皮膚の改善,つまり真皮構成成分が改善方向へ変化したと解釈できる。
顕微鏡的皮膚表面解析結果についても,両群ともに飲料摂取後に改善を示したが,コラーゲンペプチド飲料摂取群の方が顕著な改善を示した。顕微鏡画像からも肌状態に及ぼすコラーゲンペプチド飲料摂取の改善効果が確認された。
・・・
なお,本試験に供したコラーゲンペプチド飲料およびプラセボ飲料には,いずれもビタミンCが配合されていた。皮膚水分量の増加や皮膚柔軟性の改善効果はプラセボ飲料の摂取によっても認められたため,飲料に配合したビタミンCの影響が現われた可能性が考えられた。しかし,明らかにプラセボ飲料摂取群よりもコラーゲンペプチド飲料摂取群で,皮膚状態の改善効果が有意に大きく,海洋性コラーゲンペプチドそのものの作用,もしくはビタミンCとの相乗効果として理解することができる。
以上の結果より,海洋性コラーゲンペプチド含有飲料の摂取が,皮膚の乾燥状態,柔軟性および滑らかさの改善に有効であることが明らかとなり,海洋性コラーゲンペプチドは内面美容素材として期待できるものであることが示された。」(101頁右欄1行~102頁右欄5行)
(10)本願優先日前の平成17年9月1日に頒布された「兎束直昭,神園恭世,“魚由来コラーゲンペプチドの機能と応用”,月刊フードケミカル,株式会社食品科学新聞社,2005年,Vol.21,No.9,通巻245号,p.29-33」(以下、「引用文献10」という。)には、次の事項が記載されている。
(10a)「1.はじめに
コラーゲンは平均分子量30万のタンパク質である。・・・ほ乳類では身体を構成する全タンパク質の25~30%を占め,最も量が多い。身体の各部位に分布しており,とりわけ皮膚,骨,軟骨,血管壁,腱,靭帯に多い。コラーゲンは分子間の架橋により強靭な線維構造をつくる。これにより,身体の各部の結合,各器官の支持や保護,区分けの役割を担っている。
コラーゲンはその丈夫な構造と水に難溶性である点から,そのままでは食用に適さない。食用とするのはゼラチンとコラーゲンペプチドである。ゼラチンはコラーゲンの熱変成物で,水に溶けて粘性の高い溶液になり,温度が約20℃を下回るとゲル化する。コラーゲンペプチドはゼラチンを加水分解により低分子化したもので,低温でも水に溶け,溶液の粘性が低い。一般にコラーゲンと名のつく商品は,コラーゲンペプチドを指すことが多い。」(29頁左欄1~20行)
(10b)「現在流通している魚由来コラーゲンペプチドの平均分子量は1,000~5,000が多い。最近はより高い吸収性を狙って,低分子化が進む傾向にある。
3.2 肌質の改善作用
全身のコラーゲンの40%は皮膚にあり,真皮の乾燥重量の70%を占めている。この試験では,コラーゲンペプチドの経口摂取が皮膚へ与える影響を評価するため,女性ボランティアを対象に試験を実施した。
<方法>被験者と被験食品:乾燥肌や肌荒れの症状を持つ女性10名(平均年齢34.1±13.3)に,マリンマトリックス5gおよびビタミンC,B2を配合した清涼飲料50mlを,1日1本,4週間摂取してもらった。対照群(同様の女性10名,平均年齢32.8±11.5)にはマリンマトリックスを含まない飲料(他成分は共通)を用意した。試験の実施にあたっては二重盲検とした。
・・・
<結果>マリンマトリックス摂取群では,対照群と比較して,皮膚水分量が摂取4週間で有意に上昇し,乾燥肌の改善効果が認められた(図3)。皮膚の滑らかさを示す指標(SEsm)を比較した場合も,マリンマトリックス摂取群は対照群に比べ,有意に滑らかさが改善され(図4),顕微鏡画像でも顕著に肌のキメが細かくなっていることが確認できた。このことから,マリンマトリックスの継続摂取で肌質の改善が期待できる。」(30頁右欄6行~31頁右欄2行)
2 引用文献1に記載された発明
引用文献1は、請求項1に記載のとおりの、ハモ科、ウナギ科及びアナゴ科から選ばれた魚から得られる魚コラーゲン及び/又はその誘導体を1種又は2種以上配合することを特徴とする化粧料に関する技術を開示するものである(上記(1a))。
そして、この化粧料は、優れた保湿効果及び水分保持作用を有し、皮膚に対して潤い、艶、滑らかさ、張りを与えるなどの肌質改善効果を有するものであり(上記(1b)、(1d))、実施例では、肌の「つや」「滑らかさ」「キメ」「張り」「しっとり感」及び「くすみ」について評価したことが記載されている(上記(1h))。
これらのことからすると、引用文献1の化粧料は、美肌効果を期待する化粧料といえる。
また、請求項4には、ハモ科、ウナギ科及びアナゴ科から選ばれた魚から得られる魚コラーゲン誘導体がアシル化物又は加水分解物であることが記載され(上記(1a))、これを具体化した実施例7には、実施例4と同様にして得られたハモコラーゲン粉末に酵素加水分解を行って、加水分解ハモコラーゲン水溶液を得たことが記載され(上記(1f))、処方例9に、実施例7の加水分解ハモコラーゲン水溶液を用いて乳液を得たことが記載されている(上記(1g))。
以上のことからみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
引用発明:
「加水分解ハモコラーゲンを有効成分とする美肌用化粧料。」
3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「加水分解ハモコラーゲン」は、本願発明の「ハモ科の魚コラーゲンの加水分解物」に相当する。
引用発明の「美肌用化粧料」は、本願発明の「皮膚のシワ改善及び弾力向上用の経口組成物」と、「肌質改善用組成物」である点で共通する。
よって、両発明は、次の一致点及び相違点を有する。
一致点:
「ハモ科の魚コラーゲンの加水分解物を有効成分とする肌質改善用組成物。」である点。
相違点:
「肌質改善用組成物」が、本願発明は「皮膚のシワ改善及び弾力向上用の経口組成物」であるのに対し、引用発明は「美肌用化粧料」である点。
4 判断
そこで、上記相違点ついて検討する。
(1)引用文献1に、コラーゲンは従来から化粧料や食品の配合原料に用いられていることが記載されているように(上記(1c))、コラーゲンを化粧料及び食品、すなわち外用・局所適用及び経口摂取の両方で利用することは、本願優先日前に周知の技術的事項であったといえる。
加えて、コラーゲンやコラーゲンペプチド(コラーゲンの加水分解物)を、皮膚のシワ、タルミ、弾力性、肌荒れ、潤いや滑らかさの改善などの美肌効果を期待して、化粧料及び経口組成物の両方で利用することも、引用文献2~5(上記(2a)、(3a)、(4a)、(5a))に記載されているとおり、本願優先日前に周知の技術的事項であり、引用文献6(上記(6a)~(6c))には、具体的に化粧料と飲食品の両方に用いたことが示されている。
さらに、引用文献7~10(上記(7a)~(7b)、(8a)~(8c)、(9a)~(9b)、(10b))には、魚由来のコラーゲンペプチドを経口摂取することで、皮膚の乾燥状態、滑らかさ、シワ、弾力性の改善などの美肌効果を奏することが、具体的な検証を伴うなどして記載されており、引用文献2、6~7には、コラーゲンペプチドは、水への溶解度が高く、生体内への吸収性が高いこと(上記(2b)、(6a)、(7a))、引用文献10(上記(10a)~(10b))には、コラーゲンは丈夫な構造と水に難溶性であるためそのままでは食用に適さず、食用とするのはコラーゲンペプチドであることが記載されている。
そうすると、引用発明の加水分解ハモコラーゲンを、美肌用化粧料の有効成分として用いるのにかえて、飲食品などの経口組成物の有効成分として用いて、美肌用経口組成物とすること、また、その際に美肌用について、魚由来のコラーゲンペプチドの経口摂取による効果が知られている、皮膚のシワ改善及び弾力向上用と特定することは、当業者が容易になし得たことである。
(2)本願発明の皮膚のシワ改善及び弾力向上用の経口組成物の効果について検討する。
上記(1)のとおり、引用文献1~6の記載から、コラーゲンやコラーゲンペプチドは、皮膚のシワ、タルミ、弾力性、肌荒れ、潤いや滑らかさの改善などの美肌効果を期待して化粧料や食品に用いることが知られたものであり、引用文献2、6~7、10の記載から、一般的にコラーゲンペプチドを用いることで、コラーゲンそのものより吸収が良くなり、経口摂取によっても美肌効果を発揮することが予想されるとともに、引用文献7~10の具体的に示された魚由来コラーゲンの経口摂取による皮膚の乾燥状態、滑らかさ、シワ、弾力性の改善などの肌質改善効果から、加水分解ハモコラーゲンについても本願発明と同様な効果を奏することは、当業者が予測し得たことである。
(3)本願明細書の【0002】~【0006】には、ヒラメ、タイ、タラ、マグロ、サメ、サケ等の魚類の皮や鱗を原料とする魚由来のコラーゲンは、魚臭及び白濁(着色)を生じ透過率が低いという欠点があったのに対し、ハモ科の魚コラーゲンの加水分解物は、魚臭及び着色が改善されたものであるという効果を奏することが記載されているので、これについても検討する。
引用文献1に、魚由来コラーゲンとして、ヒラメ、タラ、マグロ、サメ、サケ等の魚類の皮を原料とするものが知られているが、このような魚類の皮を原料としたコラーゲンは、魚臭さを有し、しかも白濁を生じ透過率が低いといった問題があったことが記載されている(上記(1c))。
引用文献1には、加水分解ハモコラーゲンの臭いや色についての評価は直接記載されていないが、実質的に無着色で純度の高いコラーゲンが得られること、それから得られる加水分解物も、従来の魚コラーゲンを出発原料としたものに比べて品質に優れたものが得られることが記載されている(上記(1d)、(1e))。
そうすると、引用発明の加水分解ハモコラーゲンも、引用文献1に記載された従来の欠点である魚臭や着色が改善されたものであるという、本願発明と同様な効果を奏することは、当業者が予測し得たことである。
(4)請求人は、令和2年6月8日付けの意見書において、「引用文献1には、ハモ由来のコラーゲン又は誘導体が皮膚の保湿、潤いの改善効果、すなわち、表皮ケアについては開示されているものの、本願発明の特徴である真皮ケア(シワ改善、弾力「ハリ、タルミ改善」)に有用であることについては、開示も示唆もされていません。また、引用文献2~9には、魚由来のコラーゲンが化粧料又は飲食品に有用であることは開示されているものの、その中でも、特に、ハモ由来のコラーゲンの加水分解物が、特に、真皮ケア(シワ改善、弾力「ハリ、タルミ改善」)用の飲食品の有効成分として有用であることについては開示も示唆もされていません。従いまして、本願発明は、引用文献1~9の記載から容易に想到し得るものでもないことが明確になり、特許法第29条第2項の規定に該当しないものである」と主張しているので、これについても検討する。
(なお、上記主張における「引用文献1(又は2)~9」は、引用文献2~10が、いずれも本願優先日前に公知の技術的事項を示すものであることから、「引用文献1(又は2)~10」の誤記と解される。)
引用文献2、4~10(上記(2a)、(4a)、(5a)、(7a)、(9a)~(9b)、(10a)~(10b))に記載されているように、コラーゲンは皮膚の真皮部分に多く存在し、皮膚の弾力性に関わり、皮膚のシワやタルミの原因になっていることは、本願優先日前から広く知られた技術的事項であり、上記(1)で述べたとおり、魚由来のコラーゲンペプチドが経口摂取によって、皮膚のシワや弾力性の改善に有用であることも知られている。
そして、本願明細書において皮膚のシワや弾力性の改善を確認したのは、一般人10名からなる被験者に、コラーゲン配合飲料を8週間継続して経口投与し、投与前後の肌の状態変化について、肌の潤い感、弾力、キメ、及び小ジワの4項目で、著しく改善、かなり改善、やや改善、変化無し、及び悪化の5段階で評価してもらったものとある。
そうすると、請求人の主張する「真皮ケア」(シワ改善、弾力「ハリ、タルミ改善」)とは、引用文献7~10などで確認されている魚由来のコラーゲンペプチドを経口摂取することで奏される肌質改善と同じことであり、本願発明が格別顕著な効果を奏するものとはいえない。
また、本願明細書において、ハモ科の魚コラーゲンの加水分解物が、鯛鱗コラーゲン或いは鮭皮コラーゲンに比べて肌質改善に効果を奏することが示されているが、引用文献1にも、ハモ科の魚由来のコラーゲンが、ウシやブタ及びその他魚類よりも、高い保湿、保水効果を発揮することが記載されており(上記(1d))、ハモ科の魚コラーゲンの加水分解物を化粧料(外用剤)にかえて経口摂取することでも優れた効果を奏するであろうことを当業者が予測し得たことといえることは、上記(2)で述べたとおりである。
よって、請求人の主張は採用できない。
5 まとめ
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~10に記載の周知の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~10に記載の周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-015803