特許拒絶査定不服審判
2022-020072
皮膚外用剤
- 審判番号
- 2022-020072
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-195318外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2024年10月18日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】共栄化学工業株式会社
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第44条第1項、特許法第44条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-195318「皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月31日出願公開、特開2019-189597〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年4月26日に出願した特願2018-85850号(以下「原出願」という。)の一部を、平成30年10月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は次のとおりである。
令和4年 5月13日付け 拒絶理由通知
同年 8月 8日 意見書・手続補正書の提出
同年 8月26日付け 拒絶査定
同年12月 9日 拒絶査定不服審判の請求
令和6年 2月27日付け 当審における拒絶理由通知
同年 5月20日 意見書・手続補正書の提出
第2 特許請求の範囲の記載
本願の請求項1に係る発明は、令和6年5月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本願発明」ということがある。)である。
「【請求項1】
アマモ属に属するアマモ(Zostera marina)の水と1,3-ブチレングリコールの混合溶媒の抽出物或いはアマモ属に属するアマモ(Zostera marina)の酵母(Saccharomyces cerevisiae)発酵物を有効成分とする体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制用の皮膚外用剤(アロマターゼ阻害剤及びノコギリヤシ果実抽出物を含むものを除く)。」
第3 当審において通知した拒絶理由
令和4年8月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明について、令和6年2月27日付けで当審において通知した拒絶理由は、理由1~4からなるところ、そのうちの理由2は次のとおりのものである。
「[理由2](進歩性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
そして、令和6年2月27日付け拒絶理由通知書では、本願の分割は適法にされたものであるとはいえない旨を指摘したうえで、理由2について説示しており、引用文献として次の文献A~文献Cを引用している。
文献A:特開2001-288095号公報
文献B:特開2006-306816号公報
文献C:特開2012-77035号公報
ここで、上記理由2(進歩性)の対象となった請求項1に係る発明は、令和4年8月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「旧本願発明」ということがある。)である。
「【請求項1】
アマモ属に属するアマモ(Zostera marina)、コアマモ(Zostera japonica)、オオアマモ(Zostera asiatica)、スゲアマモ(Zostera caespitosa)及びタチアマモ(Zostera caulescens)のいずれか1以上の植物の抽出物又は発酵物を有効成分とする体毛成長抑制用の皮膚外用剤(アロマターゼ阻害剤及びノコギリヤシ果実抽出物を含むものを除く)。」
また、上記文献Cは、旧本願発明のうち、「アマモ属に属するアマモ(Zostera marina)、・・・のいずれか1以上の植物」の「発酵物」を有効成分とする場合についてのみ、引用されたものである。
第4 当審の判断
当審合議体は、当審において通知した拒絶理由のうちの理由2(進歩性)に示したとおり、本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である文献A及び文献Bに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
その理由は次のとおりである。
1 本願の分割の適法性について
本願発明の進歩性の判断に先立ち、本願の分割の適法性について検討する。
(1)本願の分割の経緯
上記「第1 手続の経緯」のとおり、本願は、平成30年4月26日に出願した原出願の一部を、平成30年10月16日に新たな特許出願として分割出願されたものである。
(2)分割要件について
特許出願の分割は、二以上の発明を包含する特許出願(原出願)の一部を新たな特許出願とするものである(特許法第44条第1項柱書き)から、適法に分割されたものであるというためには、次の(要件1)及び(要件3)が満たされる必要があり、また、分割出願が原出願の時にしたものとみなされる(特許法第44条第2項本文)という特許出願の分割の効果を考慮すると、さらに以下の(要件2)も満たされる必要がある(参考:『特許・実用新案 審査基準』 第VI部 第1章 第1節「2.2 特許出願の分割の実体的要件」)。
(要件1)原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。
(要件2)分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
(要件3)分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
ただし、原出願の明細書等について補正をすることができる時期に特許出願の分割がされた場合は、(要件2)が満たされれば、(要件3)も満たされるものといえる。
なお、上記(要件1)~(要件3)における「明細書等」は、「特許請求の範囲、明細書又は図面」を意味する。以下、原出願の出願当初の明細書等のことを「原出願当初明細書等」という。
(3)本願の分割要件の判断
本願明細書には、次の事項が記載されている(なお、摘記中の下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。)。
「【0043】
製造例1.アマモ抽出物の調製
アマモ(Zostera marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し細切した。この乾燥物20gを水と1,3-ブチレングリコールの混液(体積比70:30)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出した。これを濾過し、粉末活性炭を濾液重量の2%添加し、10分間撹拌した。この液を濾過して淡黄色の処理物(固形分濃度0.16重量%)795gを得た。
【0044】
製造例2.アマモ発酵物の調製
・・・
【0045】
試験例1.外毛根鞘細胞増殖抑制効果
・・・
【0046】
試験例1の結果を表1に示す。
・・・
【0047】
表1に示すように、本発明に係る抽出物及び発酵物は、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することが確認された。・・・
【0048】
処方例1.化粧水
[成分] 部
オリーブ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
ブチルパラベン 0.1
製造例1の抽出物 3.0
エタノール 5.0
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量 」
一方、原出願当初明細書等には、上記本願明細書の記載事項に対応する事項として、次の事項が記載されている。
「【0044】
製造例1.アマモ抽出物の調製
アマモ(Zostera marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し細切した。この乾燥物20gを水と1,3-ブチレングリコールの混液(体積比70:30)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出した。これを濾過し、粉末活性炭を濾液重量の2%添加し、10分間撹拌した。この液を濾過して淡黄色の処理物(固形分濃度0.16重量%)795gを得た。
【0045】
製造例2.アマモ発酵物の調製
・・・
【0046】
製造例3.ハイビスカス抽出物の調製
ハイビスカス(Hibisucas sabdariffa L.)の花部50gに精製水950gを加えて懸濁液を作り40℃で2時間抽出して、抽出物溶液722g(固形分濃度1.20%)
【0047】
製造例4.ムクゲ抽出物の調製
・・・
【0048】
製造例5.ハイビスカス発酵物の調製(1)
・・・
【0049】
製造例6.ハイビスカス発酵物の調製(2)
・・・
【0050】
製造例7.ムクゲ発酵物の調製
・・・
【0051】
試験例1.外毛根鞘細胞増殖抑制効果
・・・
【0052】
試験例1の結果を表1に示す。
・・・
【0053】
表1に示すように、本発明に係る抽出物及び発酵物は、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することが確認された。・・・
【0054】
処方例1.化粧水
[成分] 部
オリーブ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
ブチルパラベン 0.1
製造例1の抽出物 3.0
製造例3の抽出物 3.0
エタノール 5.0
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量 」
しかしながら、原出願当初明細書等に記載された上記「処方例1」は、「製造例3の抽出物」(ハイビスカス抽出物)が配合されている点で、本願明細書に記載された上記「処方例1」とは、その成分組成が異なっている。そして、原出願当初明細書等には、他の箇所にも本願明細書に記載された上記「処方例1」と同じ成分組成を有する化粧水は記載されておらず、化粧水の具体的な配合例である当該「処方例1」が、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるともいえない。
また、本願明細書に記載された処方例2、4~6、9、11、13についても、同様に、原出願当初明細書等に同じ成分組成を有する処方例の記載がなく、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であるともいえない(これらの処方例については、配合された抽出物の製造例の番号が異なるものに置き換わっている。なお、本願明細書に記載された処方例3、7、8、10、12については、それぞれ原出願当初明細書等に記載された処方例4、7、8、11、15と同一の成分組成を有するものと認められる。)。
したがって、本願の分割については、上記(2)の「要件2」を満たすものでないから、上記(2)の「要件1」及び「要件3」について検討するまでもなく、適法にされたものであるとはいえない。
(4)本願の分割の適法性についてのまとめ
以上のとおり、本願の分割は適法にされたものでないから、本願を原出願の時にしたものとみなすことはできない。
以下の検討では、本願を現実の出願日(平成30年10月16日。以下「本願出願日」という。)に出願されたものとして扱う。
2 引用文献の記載事項
(1)文献A(特開2001-288095号公報)の記載事項
本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である文献Aには、以下の事項が記載されている。
A1)
「【請求項1】デハイドロテストステロンの生成を抑えるまたはその働きを阻害する植物エキスを含有してなる体毛の発毛抑制剤。
【請求項2】植物エキスが、オウゴン、センブリ、チョウジ、アロエ、ホップ、カンゾウ、サンショウ、ジオウ、ニンジン、ラカンマキ、アマチャズル、ヘンナ葉、シコン(紫根)、ヨクイニン、米胚芽から選ばれたる群よりなる少なくとも一つ以上の植物のエキスである請求項1に記載の体毛の発毛抑制剤。」
A2)
「【0009】また、デハイドロテストステロンとは、正式には5α-デハイドロテストステロン(5α-DHT)と呼ばれており、男性ホルモンであるテストステロンが、還元酵素である5αリダクターゼの作用で変換されることにより得られる強力な活性型男性ホルモンであって、一般に頭髪における抜け毛の原因物質として知られている。
【0010】すなわち、本発明は、頭髪の薄い人、禿げている人ほど体毛が濃い傾向があるという事実から、男性ホルモンの中でも、頭髪における抜け毛の原因物質として知られている強力な活性型男性ホルモンであるデハイドロテストステロンの抑制を行うことで体毛の発生を抑制させていくことができるのではないかという仮説に基づいてなされた。
【0011】したがって、上記構成における植物エキスは、デハイドロテストステロンの生成を抑えるまたはその働きを阻害する性質を有していれば、デヒドロステロンの生成に関与している還元酵素である5α-リダクターゼの活性を抑える働きを有するもの、テストステロンに直接働きかけてテストステロンの還元を抑える働きを有するもの、デヒドロステロンが体毛の発育促進に関与しないようにしないように化学変化を起こさせるもの、これらを併せ持った性質を有するものなど、特に限定されないが、・・・」
A3)
「【0023】まず、脱毛処理として、従来から行われている機械的またはケミカル的な方法を行い、図1(A)に示したよう状態にある体毛Hを、図1(B)に示した状態となるように脱毛する。図1(B)に示した状態の皮膚Sにおける脱毛後の毛穴内によく浸透させるように体毛抑制剤1を塗布する。以上の操作を行うと、体毛抑制剤に含まれる植物エキスやフラボステロンがデハイドロステロンの生成を抑えたり、またはその働きを阻害したりすることにより体毛の発生が抑制される。
【0024】したがって、たとえ体毛が発生したとしても、図1(A)に示した体毛Hと比べて、図1(C)に示したように非常に発育が抑制された産毛hのような形態となっているため目立たない。しかも、以上の操作を数回繰り返すと完全に毛が生えてこない状態となり、煩わしい脱毛処理を行う必要もなくなる。」
A4)
「【0027】以下に本発明の実施例を詳細に説明する。まず、以下の表に示した配合の発毛抑制剤を用意した。
【0028】
【表1】
[図:0001418499000001.jpg]
【0029】この発毛抑制剤は、ローションの携帯をしており、たとえば、以下のようにして用いることができる。無駄毛の処理をしたい部分(図1(A)参照)の脱毛を行って、図1(B)に示した状態となった肌に、発毛抑制剤1をこすりつけるように塗布していく。
【0030】以上の操作を繰り返すと、ほとんど体毛が発生しないように、体質が改善され、濃い体毛に悩ませられている人でも、容易に発毛を抑制することができ、結果として自然に体毛を除去していくことができる。実際に、本発明の発毛抑制剤と、市販されているパパイン酵素が主成分の発毛抑制剤とを使用比較したところ、明らかに本発明の発明抑制剤のほうが、発毛抑制効果を有していた。
【0031】
【発明の効果】以上のことより本発明にかかる体毛の発毛抑制剤を用いると、自然かつ確実に体毛の発生を抑制することができ、痛い思いをしたり、肌を傷めたりするおそれのある脱毛処理を極力減らして除毛を行うことができる。・・・
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる発毛抑制剤を使用する前後における体毛の様子を示した説明図である。
【符号の説明】
1 (体毛の)発毛抑制剤
H (発毛抑制剤を用いる前の)体毛
h (発毛抑制剤を用いた後の)体毛
S 皮膚 」
A5)
「【図1】
[図:0001418499000002.jpg]
」
(2)文献B(特開2006-306816号公報)の記載事項
本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である文献Bには、以下の事項が記載されている。
B1)
「【請求項1】
海産顕花植物より得られる抽出物を有効成分とするテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤。
【請求項2】
海産顕花植物がアマモ科(Zosteraceae)アマモ属(Zostera sp.)の植物である請求項1記載のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤。
【請求項3】
アマモ属(Zostera sp.)の植物がアマモ(Zostera marina)である請求項2記載のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤。
【請求項4】
請求項1記載のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤を含有する皮膚化粧料。」
B2)
「【0002】
皮脂の分泌の変動は、表皮の角化、脱毛に密接に係わっており、又この皮脂の分泌は様々なホルモンに調節されていることが知られている。特に皮脂腺や毛嚢などにおける皮脂分泌の調節が、男性ホルモンであるテストステロンの分泌とジヒドロテストステロンなどの生成に依存していると考えられている。また、男性型脱毛症あるいは多毛症等の疾患、アポクリン腺の機能障害が原因の一つに考えられている化膿性汗腺炎あるいは前立腺ガン等の疾患においては、男性ホルモンによる作用がその発症原因あるいは増悪因子と考えられ、これらの疾患の治療に様々な抗男性ホルモン剤が用いられている。しかし、先天的なテストステロン-5α-リダクターゼ欠損症においては前立腺の肥大は認められず、男性型脱毛症は発症せず、ニキビはできても軽度であることが知られており、これらの事実から実際に前立腺、毛包、皮脂腺で生理作用をあらわすのはテストステロンがテストステロン-5α-リダクターゼにより還元されて生成されるジヒドロテストステロンであることが明らかになりつつある。また、ジヒドロテストステロンの活性亢進が皮脂の分泌亢進又は頭皮においては毛母細胞レベルのタンパク合成不全、毛包の血流量の低下、酵素活性レベルの低下を引き起こす主要因であるとされている。この様なジヒドロテストステロンの過剰産生や活性亢進により引き起こされる脂性肌や脱毛を抑制するために、テストステロンがより高活性な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンに還元される際に関与するテストステロン-5α-リダクターゼの活性を阻害することが有効であると考えられ、種々のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤が開発されている。」
B3)
「【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤の調製に用いる海産顕花植物としては、アマモ属(Zostera sp.)の植物の使用が好ましく、アマモ属植物としては、例えばアマモ[Zostera marina]、 コアマモ[Zostera japonica]、オオアマモ[Zostera asiatica]、スゲアマモ[Zostera caespitosa]、タチアマモ[Zostera caulescens]などがあり、本発明に於いては、それらアマモ属植物の全草が抽出原料として好適に用いられる。
又、それらアマモ属植物のうちでも、抽出物のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害作用の観点からアマモ[Zostera marina]の全草の使用が最も好ましい。」
B4)
「【0010】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、2 -エチルヘキシルグリセライドなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;n-ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、それらは単独でもしくは二種以上混合して用いられる。
なかでも化粧料への幅広い適用が可能であるという点から、水、低級アルコール類及び多価アルコール類から選ばれた一種の単独溶媒又は二種以上の混合溶媒の使用が好ましく、なかでも水の単独使用が最も好ましい。
【0011】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば水とエチルアルコールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で1:1~25:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば1:1~20:1、又水と1,3-ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、1:1~20:1の範囲とすることが好ましい。」
B5)
「【0034】
実施例1.テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤の調製(1)
アマモの全草の細切物50gに精製水1000gを混合し、60℃で4時間抽出を行った後ろ過し、淡褐色透明のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤850gを得た(固形分濃度0.5%)。
【0035】
実施例2.テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤の調製(2)
アマモの全草の細切物100gに精製水と1,3‐ブチレングリコールの7:3(重量比)混液900gを混合し、4℃で1週間抽出を行った後ろ過し、淡褐色透明のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤720gを得た(固形分濃度0.9%)。
【0036】
実施例3.テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤の調製(3)
アマモの全草の細切物100gに精製水1000gを混合し、80℃で2時間抽出を行った後ろ過した。ろ液に、繊維素分解酵素のセルラーゼ、澱粉分解酵素のグルコアミラーゼ及びペクチン分解酵素のペクチナーゼを各0.005%添加し、40℃、2時間の加水分解処理を行った後、80℃、1時間で酵素を失活し、ろ過して淡褐色透明のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤660gを得た(固形分濃度1.0%)。
・・・
【0040】
試験例1.テストステロン-5α-リダクターゼ阻害試験
実施例で得られた抽出物溶液(テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤)について、ラット肝ホモジネートを用いてテストステロン-5α-リダクターゼ阻害活性を調べた。
[試料]
(1)実施例1の抽出物溶液(テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤)
(2)実施例3の抽出物溶液(テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤)
(3)実施例4の抽出物溶液(テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤)
(4)エチニルエストラジオール(陽性対照)
[試験方法]
(イ)酵素反応
各実施例の抽出物溶液は、水で1.48倍に希釈して(試験系内での終濃度を5%とするため)試料として用いた。又、陽性対照のエチニルエストラジオールは、同じく終濃度が5%となるようにエタノールに溶解したものを試料とした。
試料0.2mLに500μg/mLのテストステロン溶液(溶媒:プロピレングリコール/10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.2)=1/1)1mLを添加、混合した。
これに1mLのラット肝臓由来S-9(オリエンタル酵母社製)を加え、酵素反応を開始するために0.77mg/mLのNADPH溶液(溶媒:10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.2))0.5mLを加えて37℃で30分間酵素反応を行った。次に、ジクロロメタンを5mL加えて酵素反応を停止させ、そこに内部標準(以下I.S.)として0.1mg/mLのp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルエステル溶液(溶媒:メタノール)を0.5mL加えて攪拌した後、900×gで10分間遠心分離を行い、下層(有機相)を採取した。採取した有機相を減圧濃縮で乾固し、乾固物を5mLのメタノールに溶解し、高圧液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)用の試料とした。
(ロ)HPLCによる残存テストステロンの定量
HPLCの条件としては、下記の条件で実施した。
カラム; TSK-GEL ODS-80Ts(150×4.6mm I.
D.)
温度 ; 40℃
移動相; メタノール-水(65:35)
流速 ; 0.5mL/分
検出 ; 紫外部 254nm
保持時間(Retention time); テストステロン 15分, I.S. 8 分.
注入量(Injection volume); 10μL
同時に対照(0分)としてNADPHを加える前にジクロロメタンを加えた系と、対照(30分)として試料の代わりに精製水を加えた系についても同様の操作を行った。
テストステロン-5α-リダクターゼ阻害活性については下記に示した式により算出した。
阻害率(%)=
試料のピーク面積比-対照(30分)のピーク面積比
対照(0分)のピーク面積比-対照(30分)のピーク面積比
ここに言うピーク面積比とは、テストステロンのピーク面積をI.S.のピーク面積で除したときの商である。
【0041】
[結果]
結果をを表1に示す。
表1に示す通り、アマモ科アマモ属植物の抽出物(実施例1のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤)はテストステロン-5α-リダクターゼの活性を顕著に阻害する効果を有する。
【0042】
【表1】
[図:0001418499000003.jpg]
」
3 引用発明
文献Aには、デハイドロテストステロンの生成を抑えるまたはその働きを阻害する植物エキスを含有してなる体毛の発毛抑制剤について記載されている(摘記A1~A5)ところ、上記植物エキスとしては、5α-リダクターゼの活性を抑える働きを有するものを用いることができることが記載されている(摘記A2、【0011】)。
したがって、文献Aには、次の発明(以下「文献A発明」という。)が記載されていると認められる。
文献A発明:
「5α-リダクターゼの活性を抑える働きを有する植物エキスを含有してなる体毛の発毛抑制剤。」
4 本願発明と文献A発明との対比
本願発明と文献A発明とを対比する。
本願発明における「アマモ属に属するアマモ(Zostera marina)」は植物であるから、文献A発明における「植物エキス」は、本願発明における「アマモ属に属するアマモ(Zostera marina)の水と1,3-ブチレングリコールの混合溶媒の抽出物或いはアマモ属に属するアマモ(Zostera marina)の酵母(Saccharomyces cerevisiae)発酵物」と、「植物の抽出物」である点において一致する。
また、文献A発明において、「植物エキス」が発毛抑制剤の「有効成分」であることは明らかである。
してみると、本願発明と文献A発明とは、
「植物の抽出物を有効成分とする剤。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
「有効成分」が、本願発明では、「アマモ属に属するアマモ(Zostera marina)の水と1,3-ブチレングリコールの混合溶媒の抽出物或いはアマモ属に属するアマモ(Zostera marina)の酵母(Saccharomyces cerevisiae)発酵物」と特定されているのに対し、文献A発明では、「5α-リダクターゼの活性を抑える働きを有する植物エキス」とされている点。
<相違点2>
「剤」について、本願発明では、「体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制用の皮膚外用剤(アロマターゼ阻害剤及びノコギリヤシ果実抽出物を含むものを除く)」と特定されているのに対し、文献A発明では、「体毛の発毛抑制剤」とされている点。
5 相違点の判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
文献Bには、
「【0008】・・・テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤の調製に用いる海産顕花植物としては、アマモ属(Zostera sp.)の植物の使用が好ましく、アマモ属植物としては、例えばアマモ[Zostera marina]、・・・などがあり、本発明に於いては、それらアマモ属植物の全草が抽出原料として好適に用いられる。
又、それらアマモ属植物のうちでも、抽出物のテストステロン-5α-リダクターゼ阻害作用の観点からアマモ[Zostera marina]の全草の使用が最も好ましい。」
との記載(摘記B3)、及び、
「【0010】
抽出溶媒としては、水;メタノール、・・・、1,3-ブチレングリコール、・・・などの多価アルコール類;・・・などが挙げられ、それらは単独でもしくは二種以上混合して用いられる。
なかでも化粧料への幅広い適用が可能であるという点から、水、低級アルコール類及び多価アルコール類から選ばれた一種の単独溶媒又は二種以上の混合溶媒の使用が好ましく、なかでも水の単独使用が最も好ましい。
【0011】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば水とエチルアルコールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で1:1~25:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば1:1~20:1、又水と1,3-ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、1:1~20:1の範囲とすることが好ましい。」
との記載(摘記B4)があり、実施例2として、アマモの全草の細切物を精製水と1,3‐ブチレングリコールの7:3(重量比)混液で抽出して得たテストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤が具体的に記載されている(摘記B5)。
そして、「テストステロン-5α-リダクターゼ阻害剤」が「5α-リダクターゼの活性を抑える働きを有する」ことは明らかであるから、文献A発明における「5α-リダクターゼの活性を抑える働きを有する植物エキス」として、文献Bの上記記載に基づいて、「アマモ属に属するアマモの水と1,3-ブチレングリコールの混合溶媒の抽出物」を用いることは、当業者が容易になし得た事項である。
(2)相違点2について
体毛の発毛抑制がされれば、体毛成長の抑制がされるといえる(体毛の発毛がなければ、体毛は成長もしない。)。そして、文献Aには、
「【0023】・・・。以上の操作を行うと、体毛抑制剤に含まれる植物エキスやフラボステロンがデハイドロステロンの生成を抑えたり、またはその働きを阻害したりすることにより体毛の発生が抑制される。
【0024】したがって、たとえ体毛が発生したとしても、図1(A)に示した体毛Hと比べて、図1(C)に示したように非常に発育が抑制された産毛hのような形態となっているため目立たない。・・・」
と記載されている(摘記A3、A5)ことから、文献Aには、「体毛の発毛抑制剤」は、体毛の成長抑制作用を有していることも記載されている。
また、文献A発明は、脱毛処理に代えて用いられることをも意図して用いられるものであるといえるところ(摘記A3、【0024】)、少なくとも手、足、胴は脱毛処理を行う部位として通常のものであるから、文献A発明の発毛抑制剤は、体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制用であるといえる(なお、「体毛(手、足、腋、胴及び顔)」とは「体毛(手、足、腋、胴及び顔の毛)」の意味であると解される。)。
さらに、文献Aには、発毛抑制剤をローション(皮膚外用剤であるといえる。)とすることが記載されている(摘記A3、【0029】)。
そして、文献A発明の剤は、アロマターゼ阻害剤及びノコギリヤシ果実抽出物を含むものではない。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に、本願発明が「体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制用」及び「皮膚外用剤」と特定している点で相違するものであるとしても、文献A及び文献Bの記載及び出願時の技術常識に基づいて、かかる事項に該当するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。
6 本願発明の効果について
本願明細書には、本願発明の効果について、
「【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生体安全性にすぐれ、かつ、すぐれた体毛成長抑制効果を有する皮膚外用剤を提供することができる。」と記載されている。
「生体安全性」については、本願明細書に、
「【0003】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑みて、生体安全性の観点から天然物由来の新たな有効成分を見出すべく鋭意研究を行った。」
と記載されていることからみて、天然物由来の有効成分を用いたことによる効果であるといえるところ、文献A発明は、植物エキス、すなわち、天然物由来の成分を用いるものであって、同様の効果を奏するといえるから、この点において本願発明は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するとはいえない。
「体毛成長抑制効果」については、上記5(2)において相違点2について述べたとおり、文献Aには、「体毛の発毛抑制剤」は、体毛の成長抑制作用を有していることも記載されているといえるし、仮に、体毛の成長抑制作用を有していることが記載されているとはいえないとしても、文献Aの【0023】、【0024】及び図1の記載に基づいて当業者が予測し得る事項であるといえる。
さらに、本願明細書には、【0045】及び【0046】に、本願発明の有効成分(製造例1及び2)が、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することが記載され、【0047】に、
「表1に示すように、本発明に係る抽出物及び発酵物は、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することが確認された。すなわち、本発明に係る抽出物及び発酵物は、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を示すことから、同じ毛包上皮由来細胞である毛母細胞の増殖も抑制するものと考えられる。よって、毛の伸長抑制効果が示唆され、体毛成長抑制用(抑毛用)の皮膚外用剤として有用であることが確認された。さらに、脱毛用、又は除毛用の皮膚外用剤にも適用することもできる。」
と記載されているところ、本願発明は、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を発明特定事項とするものではなく、また、体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長の抑制が、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することに基づくものであったとしても、当該効果が認識されていない体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制用の皮膚外用剤と比較して、体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制という用途において、何らかの新たな効果を奏するものであるもいえない。また、文献A発明は、「体毛の発毛抑制剤」であって、脱毛処理に代えて用いられることをも意図して用いられるものであるといえる(摘記A3、【0024】)から、脱毛用、又は除毛用の皮膚外用剤にも適用することもできることも当業者が予測し得る事項であるといえる。
したがって、本願発明は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。
7 まとめ
したがって、本願発明は、文献A及びBに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、仮に本願の分割が適法にされたものであったとしても、文献A及び文献Bは、いずれも原出願の出願日(平成30年4月26日)より前に頒布された刊行物であるから、本願発明が、文献A及び文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることに変わりはない。
8 請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は、令和6年5月20日提出の意見書において、以下のア及びイの主張をしているので、検討する。
主張ア
文献Aには、カンゾウ等の植物エキスがデハイドロテストステロンの生成を抑えるまたはその働きを阻害することの根拠となるデータについては何ら開示も示唆もされていないことから、文献Aにおいて、デハイドロテストステロンの生成の阻害と体毛の発生の抑制との因果関係については全く証明されていないと言え、したがって、文献Aは、デハイドロテストステロンの生成を抑えるまたはその働きを阻害する効果が体毛の発生を抑制することを示す引用文献としての適格性を欠く。
主張イ
文献Bには、アマモ属に属するアマモ等の植物抽出物がテストステロン-5α-リダクターゼ阻害効果を有すること、頭皮に適用した場合に、育毛・養毛効果を有すること、また、顔に適用した場合皮脂分泌抑制に基づくニキビ予防効果を有することが開示されているが、5α-リダクターゼの阻害は、男性ホルモンを高活性型男性ホルモンに変換するための酵素の活性を抑制するものであり、これにより皮脂の分泌を抑制し、ニキビの予防などにつながるものであるのに対して、本願発明の外毛根鞘細胞増殖抑制効果は、細胞の増殖を抑えるものであり、本効果により体毛(手、足、腋、胴及び顔)の成長を抑制するものであり、引用文献Bから到底予測できない効果を有するものである。
(2)請求人の主張の検討
ア 請求人の主張アについて
文献Aには、カンゾウ等の植物エキスがデハイドロテストステロンの生成を抑える又はその働きを阻害することを示す具体的なデータ等の記載はないが、文献Aには、デハイドロテストステロンの生成を抑えるまたはその働きを阻害する植物エキスとして、オウゴン、カンゾウ等の植物エキスが記載されており(摘記A1)、「本発明は、頭髪の薄い人、禿げている人ほど体毛が濃い傾向があるという事実から、男性ホルモンの中でも、頭髪における抜け毛の原因物質として知られている強力な活性型男性ホルモンであるデハイドロテストステロンの抑制を行うことで体毛の発生を抑制させていくことができるのではないかという仮説に基づいてなされた。」(摘記A2、【0010】)として、デハイドロテストステロンの抑制と体毛の発生の抑制との技術的な関連性について一応の説明が記載され、当該エキスを用いることで発毛抑制効果を有していたことが具体的に記載されている(摘記A4、【0030】)ところ、これらの記載に技術的な誤りがある等の特段の不備も認められないから、具体的なデータがないことをもって、文献Aが、デハイドロテストステロンの抑制を行うことで体毛の発生を抑制させることができることを示す文献としての適格性を欠くとまではいえない。
また、デハイドロテストステロン(5α-DHT)の抑制と体毛の発生の抑制との技術的な関連性については、文献Aのほかにも、例えば、
特開2003-73374号公報には、
「【0002】・・・。テストステロンは標的細胞に取り込まれ、5α-リダクターゼにより生物学的活性の強いジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、テストステロンとともに男性の二次性徴発現(皮脂腺の増殖、ざ瘡、体毛の発生、声変り、顎鬚の発生)や外性器(陰茎、睾丸)、副性器(前立腺、精嚢腺)の発育、性的衝動と勃起の発現などに重要な役割を演じている。」
との記載があり、
特表平8-501771号公報には、
「5α-レダクターゼが欠失している男性は、女性のような外部生殖器を持って生まれる。思春期になると、テストステロンの血漿濃度は正常値か、上昇したとしても僅かである。筋肉の成長は促進され、陰茎は大きく、声は太くなり、女性に対するリビドも現れてくる。しかしながら、前立腺は触診不能であり、体毛が少なく、アクネや禿頭が現れてこない。5α-レダクターゼが欠失している女性には臨床症状がない[Imperato-McGinIey,Trend Genet 2:130(1986)]。
5α-レダクターゼ欠失患者が発見されてから、5α-レダクターゼの抑制剤があれば前立腺癌、BPH、アクネ、禿頭、および女性の多毛の治療に有用であろうと言われるようになった。」(9頁3~12行)、
「BPH、アクネ、男性型禿頭、および女性の特発性多毛を始めとするいくつかのアンドロゲン依存性病理状態は、過度のDHTに起因している。」(10頁4~5行)、
「何人かの特発性多毛の女性は、循環テストステロン濃度が正常値であるが、多毛部位では多毛でない女性よりも5α-レダクターゼ活性が高い[Serafini and Lobo,Fert Steril43:74(1985)]。」(10頁14~16行)
との記載があるように、本願出願日前(原出願の出願日前でもある)に、当業者にとって周知の技術的事項であったといえる。
したがって、請求人の上記主張アは採用できない。
イ 請求人の主張イについて
文献Bは、アマモの抽出物が5α-リダクターゼの活性を抑える働きを有することが記載されている文献として引用したものであるから、当該文献に体毛(手、足、腋、胴及び顔)の成長を抑制することについての記載がないことは、本願発明の進歩性を否定できないことの根拠とはならない。
また、本願明細書には、本願発明の抽出物等が外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することによって体毛成長を抑制する旨が記載されているところ(【0047】)、文献A及び文献Bのいずれにも、アマモの水と1,3-ブチレングリコールの混合溶媒の抽出物が外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することについての記載はない。しかし、本願発明は、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を発明特定事項とするものではなく、また、体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長の抑制が、外毛根鞘細胞増殖抑制効果を有することに基づくものであったとしても、当該効果が認識されていない体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制用の皮膚外用剤と比較して、体毛(手、足、腋、胴及び顔)成長抑制という用途において、何らかの新たな効果を奏するものであるもいえない。
したがって、請求人の上記主張イも採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願については、その余の事項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020072