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特許拒絶査定不服審判

2018-013559

高純度および優れた収率の正確に折り畳まれたエタネルセプト

審判番号
2018-013559
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-531311外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年10月11日
審決日
2019年09月03日
公報発行日
2020年03月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C07K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-531311「高純度および優れた収率の正確に折り畳まれたエタネルセプト」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日国際公開、WO2014/043103、平成27年11月26日国内公表、特表2015-533797〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成25年9月10日(パリ条約による優先権主張 平成24年9月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月21日付け拒絶理由通知に対して、平成30年1月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 そして、本願の請求項1~14に係る発明は、平成30年1月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 正確に折り畳まれたエタネルセプトを、不正確に折り畳まれたエタネルセプトから分離するための混合モードクロマトグラフィー方法であって、 (a)エタネルセプトの正確に折り畳まれたおよび不正確に折り畳まれた両方の立体構造を含む第1のエタネルセプト含有タンパク質混合物を、イオン交換部分および疎水性部分の両方を有する混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させるステップ; (b)正確に折り畳まれたエタネルセプトを、混合モード樹脂を塩溶液と接触させることにより混合モード樹脂から溶出し、第1のエタネルセプト混合物より高い割合の正確に折り畳まれたエタネルセプトを含む第2のエタネルセプト含有タンパク質混合物を得るステップ を含む方法。」 第2 原査定の理由 原査定の理由は、この出願の請求項1~14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記1、3の文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 1.特表2011-514895号公報 3.Coen Maas, et al.,A Role for Protein Misfolding in Immunogenicity of Biopharmaceuticals,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2007年,Vol.282,p.2229-2236 第3 当審の判断 1.引用文献の記載事項 (1)引用文献1 本願の優先日前の公知文献である引用文献1には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 生物学的に活性なリンホトキシン-β-受容体免疫グロブリン(LT-β-R-Ig)融合タンパク質を含む組成物であって、該LT-β-R-Ig融合タンパク質の6%未満が生物学的に不活性であり、該LT-β-R-Ig融合タンパク質の2%未満が凝集している組成物。 ・・・・ 【請求項7】 前記LT-β-R-Ig融合タンパク質がIgG1アイソタイプのIg定常領域を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。 ・・・・ 【請求項41】 生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を、生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質から分離するための方法であって、以下の: i)生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を混合モード樹脂に結合させる条件下で、該生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質および生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を含む混合物を該混合モード樹脂上に充填するステップ、 ii)溶液でステップi)の混合モード樹脂から該生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を溶出して、生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物を得るステップ、 iii)該生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、ステップii)の第一溶出物を該HIC樹脂上に充填するステップ、そして iv)ステップiii)の生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を溶液で溶出して、生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質の存在に関してさらに濃化された第二溶出物を得るステップを、包含し、 それにより、生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質から分離する方法。」 イ 「【背景技術】 【0001】 発明の背景 生物製剤が、認可された治療法としてますます受け入れられていることを考慮すれば、これらの種類の薬剤の詳細な特性評価は重要である。不測の生成物分解または不純物の存在によって、治療的有効性および患者の安全性が脅かされ得る。生物製剤の製造中に見られる不純物の例としては、生成物の凝集体が挙げられ得る。凝集体は免疫原性となる場合があり、インビボ使用の安全性に対する懸念があり得るため、製剤組成物においては望ましくない。凝集体は、患者体内で産生される抗体を中和するため、生成物のインビボでの安定性を低下させる場合もある。 【0002】 さらに、不活性タンパク質もまた、製造中に生成される場合がある。不活性タンパク質は、製造工程中の誤ったフォールディングに起因し得る。例えば、特許文献1(Browningら)には、哺乳動物細胞中で発現した場合のリンホトキシンβ受容体免疫グロブリン(LTβR-Ig)融合タンパク質の、活性型および不活性型という2つの型が記載されている。また特許文献1は、Ig融合タンパク質産生中の細胞培養温度を低下させることにより、調製物中の不活性分子の割合が減少し得ることを教示している。この公開公報には、リガンドと結合する能力のない不活性型のLTβR-Igが1種のみ記載されている。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、生じる組成物が、大量のタンパク質の製造可能性および純度の両方に関して薬学的使用に適するように、哺乳動物細胞培養、例えばCHO細胞における生物製剤の発現中に生じる不純物から、抗体ベースの生物製剤、例えばLT-β-R-Ig融合タンパク質を精製する際の問題に取り組む。 【0006】 本明細書に記載のように、哺乳動物細胞中でのLT-β-R-Ig融合タンパク質発現では、2種類の不活性型のLT-β-R-IgおよびLT-β-R-Ig凝集体が生じる。患者に使用するために十分な純度を提供するためには、このような不純物を、生物学的に活性なモノマー型のLT-β-R-Igから分離しなければならない。不活性型のLT-β-R-Igは、精製工程において固有の難題を生じさせる。例えば、本明細書に記載されている2種類の不活性型のLT-β-R-Igは、例えば、大きさおよび電荷に関して、活性のあるモノマー型の融合タンパク質によく似ている。さらに、(治療剤の製造に求められるように)LT-β-R-Igの生産規模が拡大されて生産量が増加すると、高濃度の凝集したLT-β-R-Igが生じる。したがって、活性のあるモノマー型のLT -β-R-Ig融合タンパク質を、十分な濃度および臨床使用に要求される純度で製造するために、凝集を最小限に抑え、不活性型のタンパク質の存在を最小化し、LT-β-R-Ig融合タンパク質の損失を最小限に抑える工程が必要とされていた。本発明は、この複雑な問題に対する解決法を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0007】 より具体的には、本発明は、抗体ベースの生物製剤、すなわち、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質の精製中に、複数の生成物関連の不純物を除去することが可能な高分解能の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を提供する。本発明は、リンホトキシンβ受容体免疫グロブリン(LTβR-Ig)のような活性型のIg融合タンパク質を、不活性型のタンパク質から精製するための手段を提供する。本発明のさらなる態様は、(例えば、哺乳動物細胞中でのタンパク質発現に起因する場合が多い、他のタンパク質、不適切にフォールディングされて完全な生物製剤活性をもたない変異体およびタンパク質凝集体の夾雑が最少量である)精製されたIg融合タンパク質組成物を含む。本発明はさらに、不活性型のタンパク質および/またはタンパク質凝集体のような不純物を30%を超えて含むタンパク質混合物、例えば哺乳動物細胞培養液由来の出発供給材料(例えば、バイオリアクター中の培養液由来の大量の供給材料)を精製するための手段を提供する。一実施形態において、本発明は、50%を超える不純物、例えば、約35%の凝集タンパク質と約19%の不活性タンパク質とを有する出発タンパク質混合物を精製するための手段を提供する。」 エ 「 【0012】 本発明はまた、生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を、混合モード樹脂を用いて生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質から分離する方法も提供する。」 オ 「V.免疫グロブリン融合タンパク質 【0109】 本明細書中に記載される方法は、例えば多重ジスルフィド架橋のため、不適切なフォールディングをおそらくは有すると思われるIg融合タンパク質に関して有用である。このようなタンパク質は、おそらくは不完全なまたは異常なフォールディングを有し、その結果、サイズおよび特質が活性タンパク質に非常によく似ているにもかかわらず、不活性で治療的使用に望ましくない異なる形態の不活性タンパク質を生じる。 【0110】 一態様では、本発明の方法を用いて、複雑なフォールディングを有する融合タンパク質、例えば、ジスルフィド結合を形成する多数のシステイン残基を有するタンパク質を精製し得る。 【0111】 一実施形態では、Ig融合タンパク質は、リガンドまたは受容体の結合ドメイン(例えば、受容体の細胞外ドメイン(ECD))(単数または複数)が、少なくとも1つの重鎖ドメインおよび連結ペプチド(単数または複数)と結合している。一実施形態では、本発明の融合タンパク質を調製する場合、リガンドの結合ドメインまたは受容体ドメインをコードする核酸は、免疫グロブリン定常ドメイン配列のN末端をコードする核酸と、C末端で融合される。N末端融合もあり得る。一実施形態では、融合タンパク質は、CH2およびCH3ドメインを含む。融合はまた、定常ドメインのFc部分のC末端となされ得、あるいは重鎖のCH1または軽鎖の対応する領域のN末端と直接なされ得る。 【0112】 一実施形態では、リガンドまたは受容体結合ドメインの配列は、免疫グロブリン分子のFcドメインのN末端に融合される。全重鎖定常領域をリガンドまたは受容体結合ドメイン配列と融合することも可能である。一実施形態では、パパイン切断部位(すなわち残基216、重鎖定常領域の最初の残基を114であるとみなす)のすぐ上流のヒンジ領域で開始する配列(化学的にIgG Fcと定義する)または他の免疫グロブリンの類似の部位が、融合に用いられる。融合が成される正確な部位は重要ではない;特定部位はよく知られており、分子の生物学的活性、分泌または結合特質を最適化するために、選択され得る。融合タンパク質の製造方法は、当該技術分野で知られている。一実施形態では、結合ドメインを含有するタンパク質は、例えば1~5アミノ酸長であるアミノ酸リンカーを介してFcドメインに連結される。一実施形態では、TNF受容体およびFcドメインは、単一アミノ酸を介して連結される。 【0113】 好ましい一実施形態では、本明細書中に記載される精製方法は、TNF受容体Ig融合タンパク質を分離するために用いられ得る。他の実施形態において特許請求される本発明は、本明細書中で考察される方法により得られるTNFファミリー受容体-Ig融合タンパク質、ならびにそれらを含む薬学的調製物に関する。TNF受容体の一例は、LTβRである。他の例としては、HVEMが挙げられる。 【0114】 一態様では、本発明の方法は、LTβR-Ig融合タンパク質の精製組成物を達成する。 【0115】 一実施形態では、LTβR-Ig融合タンパク質は、ヒトLTβRの細胞外ドメイン(膜貫通ドメインを欠く形態)および免疫グロブリンFc領域(IgG1 Fcドメイン)を含む。配列番号1は、細胞外ドメインを含めたヒトLTβRの全長配列を記載する。LT-β-R-Ig融合物のスキームは、図10で提供される。 」 カ 「【0117】 本発明の融合タンパク質に含まれうるリガンドおよびそれらの受容体のさらなる例としては、以下のものが挙げられる。 サイトカインおよびサイトカイン受容体 【0118】 サイトカインは、リンパ球の増殖、分化および機能的活性化に及ぼす多面的作用を有する。種々のサイトカインまたはそれらの受容体結合部分は、本発明の融合タンパク質で利用され得る。サイトカインの例としては、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13およびIL-18)、コロニー刺激因子(CSF)(例えば、顆粒球CSF(G-CSF)、顆粒球-マクロファージCSF(GM-CSF)、および単球マクロファージCSF(M-CSF))、腫瘍壊死因子(TNF)αおよびβ、ならびにインターフェロン、例えばインターフェロン-α、βまたはγが挙げられる(米国特許第4,925,793号および第4,929,554号)。サイトカイン受容体は、典型的には、リガンド特異的α鎖および共通β鎖からなる。サイトカイン受容体の例としては、GM-CSF、IL-3(米国特許第5,639,605号)、IL-4(米国特許第5,599,905号)、IL-5(米国特許第5,453,491号)、IFNγ(EP0240975)およびTNFファミリーの受容体(例えば、TNFα(例えばTNFR-1(EP417,563)、TNFR-2(EP417,014)リンホトキシンβ受容体)に関するものが挙げられる。」 (2)引用文献3 本願の優先日前の公知文献である引用文献3には以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による翻訳文を記載する。また、下線は当審が付したものである。 ア 「いくつかの市販のバイオ医薬品は、誤って折り畳まれたタンパク質を含むことがわかった。場合によっては、誤って折りたたまれたタンパク質のレベルは、製造業者が規定した条件下での保管時に増加することがわかっている。我々の結果は、治療用タンパク質のミスフォールディングが免疫原性シグナルであり、免疫原性の危険因子であることを示している。これらの発見は、tPAで免疫原性タンパク質実体を検出し、バイオ医薬品の免疫原性を低下させる新しい可能性を提供する。」(2229頁、要約) イ 「結果 さまざまなバイオ医薬品は、タンパク質のミスフォールディングを示すストレス状態にさらされると、アミロイド様の特性を示す - 製造および保管中に、バイオ医薬品は、タンパク質のミスフォールディングおよびアミロイド様特性の形成の根底にある可能性のあるさまざまなストレス状態にさらされる可能性がある。安定性試験を模倣するために、低pHや熱などのストレス状態へのバイオ医薬品の暴露がアミロイド様特性を誘発するかどうかを調べた。図1は、これらの厳しい変性条件にさらされると、エタネルセプト、グルカゴン、アブシキシマブ、およびインフリキシマブにおけるアミロイド様の特性を示している。」(2232頁左欄6行~右欄7行) ウ 「図1 (図1には、“さまざまなバイオ医薬品は、ストレス条件にさらされるとタンパク質のミスフォールディングを示し、アミロイド様の特性を示す”として、ThT蛍光( A )およびtPA活性化アッセイ( B )によるアミロイド様特性の存在についての分析結果が示され、エタネルセプトの結果も示されている。)」 エ 「さまざまなバイオ医薬品におけるアミロイド様特性を持つミスフォールドタンパク質の存在 - 次に、市販のバイオ医薬品にアミロイド様特性を持つタンパク質が存在するかどうかを調べた。アミロイド様特性の指標として、ThT、コンゴレッドの蛍光、tPAの結合と活性化、溶液中のタンパク質中のアミロイドクロスβ構造コンフォメーションの存在に関するすべての定性的測定を測定した( 17、18 )。表1に示すように、いくつかのバイオ医薬品は、チオフラビンTおよび/またはコンゴレッドの蛍光を増強する重要な可能性を示し、アミロイド様構造の存在を示している。これらのバイオ医薬品は、高親和性でtPAにも結合し、tPAを介したプラスミノーゲン活性化を活性化した。これらの発見は、アミロイド様特性を有する誤って折り畳まれたタンパク質が、様々な市販の治療用タンパク質に存在することを示している。」(2232頁右欄11~25行) オ 「表1 (表1には、“さまざまなバイオ医薬品におけるアミロイド様特性を持つミスフォールドタンパク質の存在”として、ThTおよびコンゴレッド蛍光の強化、tPAおよびtPA依存性プラスミノーゲン活性化の結合(標準化された陽性対照の%)によって決定された、各バイオ医薬品におけるアミロイド様特性を持つタンパク質の含有量について示されており、エタネルセプトについても示されている。)」 2.引用発明 上記1.(1)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「生物学的に活性なリンホトキシン-β-受容体免疫グロブリン(LT-β-R-Ig)融合タンパク質を、誤ったフォールディングに起因する生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質から分離するための方法であって、以下の: i)生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を混合モード樹脂に結合させる条件下で、該生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質および生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を含む混合物を該混合モード樹脂上に充填するステップ、 ii)溶液でステップi)の混合モード樹脂から該生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を溶出して、生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物を得るステップ、を包含し、 それにより、生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質から分離する方法。」 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 本願明細書の段落【0002】にも記載されるように、「エタネルセプト」とは、「ヒト免疫グロブリンG(IgG1)のFc領域」に連結された「75キロダルトン(p75)のヒト腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分」からなる二量体融合ポリペプチドである(必要であれば、周知例として特表2011-511627号公報(【0002】)、特表2010-524504号公報(【0071】)を参照。)。そして、引用文献1に「TNFファミリーの受容体(例えば、TNFα(例えばTNFR-1(EP417,563)、TNFR-2(EP417,014)リンホトキシンβ受容体)」(上記カ)と記載されるように、引用発明のリンホトキシンβ受容体である「LT-β-R」と、TNFR-2である「75キロダルトン(p75)のヒト腫瘍壊死因子受容体」(上記特表2011-511627号公報(【0002】)を参照。)とは、いずれも「TNFファミリーの受容体」に該当するものである。また、引用発明のLT-β-R-Ig融合タンパク質のIgは、IgG1アイソタイプのIg定常領域(Fc)である場合を包含する(上記ア(請求項7)、上記エ(段落【0111】【0112】)。 そうすると、引用発明の「生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質」、「誤ったフォールディングに起因する生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質」は、それぞれ、本願発明の「正確に折り畳まれたエタネルセプト」、「不正確に折り畳まれたエタネルセプト」と、「正確に折り畳まれた『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』」、「不正確に折り畳まれた『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』」である点で共通する。 また、引用発明の「混合モード樹脂」は本願発明の「イオン交換部分および疎水性部分の両方を有する混合モードクロマトグラフィー樹脂」に相当すると認められる。 さらに、引用発明の「混合モード樹脂上に充填する」、「生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質および生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を含む混合物」は、本願発明の「第1の・・・タンパク質混合物」に相当し、引用発明の「生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物」は、本願発明の「第2の・・・タンパク質混合物」に相当すると認められる。 したがって、両者は、 「正確に折り畳まれた『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』を、不正確に折り畳まれた『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』から分離するための混合モードクロマトグラフィー方法であって、 (a)『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』の正確に折り畳まれたおよび不正確に折り畳まれた両方の立体構造を含む第1の『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』混合物を、イオン交換部分および疎水性部分の両方を有する混合モードクロマトグラフィー樹脂に結合させるステップ; (b)正確に折り畳まれた『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』を、混合モード樹脂を塩溶液と接触させることにより混合モード樹脂から溶出し、第2の『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』含有タンパク質混合物を得るステップ を含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 (相違点1) 『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』が、本願発明では「エタネルセプト」に特定されているのに対して、引用発明ではLT-β-R-Ig融合タンパク質である点、すなわち『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』においてFcに融合されているのが、本願発明では「75キロダルトン(p75)のヒト腫瘍壊死因子受容体の細胞外リガンド結合部分(TNFR(p75))」であるのに対して、引用発明では「LT-β-R」である点。 (相違点2) 本願発明では、溶出された第2のエタネルセプト(『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』)含有タンパク質混合物について「第1のエタネルセプト(『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』)混合物より高い割合の正確に折り畳まれたエタネルセプト(『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』)を含む第2のエタネルセプト含有タンパク質混合物」と特定されているのに対して、引用発明では、溶出された第一溶出物について「生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質(『TNFファミリーの受容体-Fc融合タンパク質』)の存在に関して濃化された第一溶出物」である点。 4.判断 (相違点1)について 引用文献1には、引用発明の方法が適用されるタンパク質として、IgとTNFファミリー受容体とを融合したものが記載され(上記オ、段落【0113】)、TNFファミリーの受容体として、特許請求の範囲に記載されるリンホトキシン-β-受容体(LT-β-R)だけでなく、ヒト腫瘍壊死因子受容体(TNFR-1、TNFR-2)も記載されている(上記カ、段落【0118】)。 そして、TNFR-2とIgとの融合タンパク質として「エタネルセプト」は周知であると認められる(必要であれば、上記周知例を参照。)ところ、引用文献3に記載されるように、「エタネルセプト」もミスフォールディングするタンパク質であること、すなわち、正確に折り畳まれたものと不正確に折り畳まれたものとがあることが知られている。 そうすると、引用発明のLT-β-R-Ig融合タンパク質に替えて、LT-β-Rと同じくTNF受容体ファミリーである「75キロダルトン(p75)のヒト腫瘍壊死因子受容体(TNFR-2)」とIgとの融合タンパク質(TNFR-2-Ig)について、正確に折り畳まれたものを不正確に折り畳まれたものから分離する目的で、引用発明の方法を適用することは当業者が容易になし得ることであり、該TNFR-2-Igとして周知の「エタネルセプト」を特定することにも格別の困難性はない。 (相違点2)について 引用発明の溶出物を得るステップii)では、「生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物」が得られており、このステップにおいて生物学的に活性なタンパク質は生物学的に不活性なタンパク質から分離され、混合モード樹脂上に充填した混合物よりも生物学的に活性なタンパク質の割合が高まっているといえる。 そして、引用文献1の記載(上記イ~オ)からみて、TNF受容体ファミリータンパク質部分と、多数のシステイン残基の多重ジスルフィド架橋により複雑なフォールディングを与えるIg部分との融合タンパク質である「エタネルセプト」に対して、引用発明の方法を適用する場合にも、同様に生物学的に活性なタンパク質の割合が高まるといえる。つまり、「エタネルセプト」を引用発明の方法を用いて分離すれば、第一溶出物(第2のエタネルセプト含有タンパク質混合物)は「混合モード樹脂上に充填する」組成物(第1のエタネルセプト混合物)より高い割合の生物学的に活性なエタネルセプトを含むもの、すなわち、「第1のエタネルセプト混合物より高い割合の正確に折り畳まれたエタネルセプトを含む第2のエタネルセプト含有タンパク質混合物」となるといえる。 したがって、相違点2も当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明において、引用文献1、3の記載から予測できない効果が奏されたとは認められない。 したがって、本願発明は、引用文献1、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.審判請求人の主張について 審判請求人は審判請求書において、概ね以下の点を主張している。 ア 引用文献1に記載の技術は二段階方法であり、HIC工程が必須であるが、本願発明ではHIC工程が必須ではない。 イ 引用文献1ではLT-B-R-Igを精製対象としており、これはエタネルセプトとは異なる物理的および化学的性質を有する異なるタンパク質である。引用文献1に開示された方法をエタネルセプトの分離方法として用いることの動機づけはない。引用文献3は、エタネルセプトなどの市販されている材料に見出される時間依存性プロセスであり得る不純物および凝集物を含むことを開示するに過ぎない。 ア について 本願発明は「・・・(a)・・・ステップ;(b)・・・ステップ を含む方法。」であって、他の精製手段が付加されることを除外してはいない。実際、本願明細書には、混合モード樹脂による分離を2回以上行うこと(段落【0029】)や、追加のろ過を行うこと(段落【0038】)も記載されている。 また、引用文献1には「本発明はまた、生物学的に活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質を、混合モード樹脂を用いて生物学的に不活性なLT-β-R-Ig融合タンパク質から分離する方法も提供する。」(上記エ)と、混合モード樹脂を用いる工程によって融合タンパク質を分離することについて言及されており、引用発明において、分離方法を簡素化するためにHIC工程を省略することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 そうすると、審判請求人の主張は採用できない。 イ について 引用文献1には、LT-B-R-IgだけでなくTNFR-2-IgのようなTNFファミリー受容体-Ig融合タンパク質を精製対象とすることも記載されている(上記オ、段落【0113】)。そして、上記4.で述べたとおり、引用発明の方法をエタネルセプトに適用することは当業者が容易になし得ることである。 そうすると、審判請求人の主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-013559

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