特許拒絶査定不服審判
2018-013116
車両
- 審判番号
- 2018-013116
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-055800外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月02日
- 審決日
- 2019年07月01日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤマハ発動機株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 信栄特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B62K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016- 55800号「車両」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-170931号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月18日を出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下の通りである。
平成29年 6月29日付け:拒絶理由通知
平成29年 8月29日 :意見書
平成29年11月10日付け:拒絶理由通知
平成30年 6月27日付け:拒絶査定
平成30年10月 2日 :審判請求
平成30年10月 2日 :手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
第2 本件補正について
1 本件補正の内容
(1)本願の出願当初の願書に添付された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1~12は、以下のとおりである。
「【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームの左右方向に並んで設けられた右前輪および左前輪と、
前記右前輪にブレーキ力を付与可能な右ブレーキ装置と、
前記左前輪にブレーキ力を付与可能な左ブレーキ装置と、
運転者が把持するためのグリップ部と、
前記グリップ部に入力された操舵力を前記右前輪および前記左前輪に伝達する操舵力伝達機構と、を有し、
前記操舵力伝達機構は、
前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線回りに回動可能なステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの上部に設けられたハンドルバーと、
前記ステアリングシャフトの回動を前記右前輪および前記左前輪に伝達するタイロッドと、を有し、
前記ハンドルバーの少なくとも一方の端部に、前記右ブレーキ装置および前記左ブレーキ装置の少なくとも一方を操作するブレーキ操作子と、前記グリップ部とが設けられており、
前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する振動が前記グリップ部に伝達されることを抑制するゴム部品が、前記操舵力伝達機構に設けられている、車両。
【請求項2】
下部で前記右前輪を回転可能に支持し、かつ、前記右前輪を上部に対して相対変位可能に支持する右緩衝装置と、
下部で前記左前輪を回転可能に支持し、かつ、前記左前輪を上部に対して相対変位可能に支持する左緩衝装置と、
を有する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車体フレームの前後方向に延びるリンク軸線回りに回動可能に前記車体フレームに支持されたクロス部材を有し、前記車体フレームの上下方向について前記右前輪と前記左前輪を前記車体フレームに対して相対変位可能に支持することにより、前記車体フレームを右旋回時に前記車両の右方に傾斜させ左旋回時に前記車両の左方に傾斜させるリンク機構を有する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記リンク機構は、
前記クロス部材の右部で前記車体フレームの前後方向に延びる右軸線回りに回動可能に支持され、前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに前記右前輪を回動可能に支持する右サイド部材と、
前記クロス部材の左部で前記右軸線と平行な左軸線回りに回動可能に支持され、前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに前記左前輪を回動可能に支持する左サイド部材と、を有する、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記操舵力伝達機構は、一端が前記ステアリングシャフトに固定されて、他端が前記タイロッドと回動可能に連結されたピットマンアームを有し、
前記ゴム部品は、前記タイロッドと前記ピットマンアームとの間に設けられ、前記グリップ部に入力された操舵力が前記ゴム部品を介して前記ピットマンアームから前記タイロッドに伝達されるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記車体フレームは、前記ステアリングシャフトが挿通されるヘッドパイプを有し、
前記ゴム部品は、前記ヘッドパイプと前記ステアリングシャフトの間に設けられている
、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記ゴム部品は、前記ハンドルバーと前記ステアリングシャフトの間に設けられ、前記グリップ部に入力された操舵力が前記ゴム部品を介して前記ハンドルバーから前記ステアリングシャフトに伝達されるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記ゴム部品は、
金属製の環状または筒状のアウタ部材と、
前記アウタ部材の内側に設けられた金属製のインナ部材と、
前記アウタ部材と前記インナ部材との間の空間の少なくとも一部を埋めて前記アウタ部材と前記インナ部材とに結合されたゴム部と、を有し、
前記インナ部材および前記アウタ部材が弾性変形することにより、前記インナ部材と前記アウタ部材とが相対変位可能とされている、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両。
【請求項9】
前記インナ部材および前記アウタ部材は前記車体フレームの上下方向に延びており、
前記ゴム部が弾性変形することより、前記アウタ部材と前記インナ部材とが相対変位可能とされている、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記ゴム部が弾性変形することにより、前記アウタ部材と前記インナ部材とが、前記車体フレームの前後方向に相対変位可能とされている、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記ゴム部が弾性変形することにより、前記アウタ部材と前記インナ部材とが、前記車体フレームの前後方向および前記車体フレームの左右方向に相対変位可能とされている、請求項9に記載の車両。
【請求項12】
前記右緩衝装置は、前記車体フレームの上下方向に延びる右伸縮軸線方向に前記右前輪を上部に対して相対変位可能に支持し、
前記左緩衝装置は、前記右伸縮軸線と平行な左伸縮軸線方向に前記左前輪を上部に対して相対変位可能に支持し、
前記ゴム部品の前記ゴム部が弾性変形することにより、前記インナ部材と前記アウタ部材とが、前記右伸縮軸線に沿った軸線回りに相対変位可能とされている、請求項8から11のいずれか一項に記載の車両。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項12は、以下のとおりである。(下線は、当審で付した。以下同様。)
「【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームの左右方向に並んで設けられた右前輪および左前輪と、
前記右前輪にブレーキ力を付与可能な右ブレーキ装置と、
前記左前輪にブレーキ力を付与可能な左ブレーキ装置と、
運転者が把持するためのグリップ部と、
前記グリップ部に入力された操舵力を前記右前輪および前記左前輪に伝達する操舵力伝達機構と、を有し、
前記操舵力伝達機構は、
前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線回りに回動可能なステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの上部に設けられたハンドルバーと、
前記ステアリングシャフトの回動を前記右前輪および前記左前輪に伝達するタイロッドと、を有し、
前記ハンドルバーの少なくとも一方の端部に、前記右ブレーキ装置および前記左ブレーキ装置の少なくとも一方を操作するブレーキ操作子と、前記グリップ部とが設けられており、
前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する振動が前記グリップ部に伝達されることを抑制するゴム部品が、前記操舵力伝達機構に設けられている、車両。
【請求項2】
下部で前記右前輪を回転可能に支持し、かつ、前記右前輪を上部に対して相対変位可能に支持する右緩衝装置と、
下部で前記左前輪を回転可能に支持し、かつ、前記左前輪を上部に対して相対変位可能に支持する左緩衝装置と、
を有する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車体フレームの前後方向に延びるリンク軸線回りに回動可能に前記車体フレームに支持されたクロス部材を有し、前記車体フレームの上下方向について前記右前輪と前記左前輪を前記車体フレームに対して相対変位可能に支持することにより、前記車体フレームを右旋回時に前記車両の右方に傾斜させ左旋回時に前記車両の左方に傾斜させるリンク機構を有する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記リンク機構は、
前記クロス部材の右部で前記車体フレームの前後方向に延びる右軸線回りに回動可能に支持され、前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに前記右前輪を回動可能に支持する右サイド部材と、
前記クロス部材の左部で前記右軸線と平行な左軸線回りに回動可能に支持され、前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに前記左前輪を回動可能に支持する左サイド部材と、を有する、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記操舵力伝達機構は、一端が前記ステアリングシャフトに固定されて、他端が前記タイロッドと回動可能に連結されたピットマンアームを有し、
前記ゴム部品は、前記タイロッドと前記ピットマンアームとの間に設けられ、前記グリップ部に入力された操舵力が前記ゴム部品を介して前記ピットマンアームから前記タイロッドに伝達されるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記車体フレームは、前記ステアリングシャフトが挿通されるヘッドパイプを有し、
前記ゴム部品は、前記ヘッドパイプと前記ステアリングシャフトの間に設けられている
、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記ゴム部品は、前記ハンドルバーと前記ステアリングシャフトの間に設けられ、前記グリップ部に入力された操舵力が前記ゴム部品を介して前記ハンドルバーから前記ステアリングシャフトに伝達されるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記ゴム部品は、
金属製の環状または筒状のアウタ部材と、
前記アウタ部材の内側に設けられた金属製のインナ部材と、
前記アウタ部材と前記インナ部材との間の空間の少なくとも一部を埋めて前記アウタ部材と前記インナ部材とに結合されたゴム部と、を有し、
前記インナ部材および前記アウタ部材が弾性変形することにより、前記インナ部材と前記アウタ部材とが相対変位可能とされている、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両。
【請求項9】
前記インナ部材および前記アウタ部材は前記車体フレームの上下方向に延びており、
前記ゴム部が弾性変形することより、前記アウタ部材と前記インナ部材とが相対変位可能とされている、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記ゴム部が弾性変形することにより、前記アウタ部材と前記インナ部材とが、前記車体フレームの前後方向に相対変位可能とされている、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記ゴム部が弾性変形することにより、前記アウタ部材と前記インナ部材とが、前記車体フレームの前後方向および前記車体フレームの左右方向に相対変位可能とされている、請求項9に記載の車両。
【請求項12】
下部で前記右前輪を回転可能に支持し、かつ、前記右前輪を上部に対して相対変位可能に支持する右緩衝装置と、
下部で前記左前輪を回転可能に支持し、かつ、前記左前輪を上部に対して相対変位可能に支持する左緩衝装置と、
を有し、
前記右緩衝装置は、前記車体フレームの上下方向に延びる右伸縮軸線方向に前記右前輪を上部に対して相対変位可能に支持し、
前記左緩衝装置は、前記右伸縮軸線と平行な左伸縮軸線方向に前記左前輪を上部に対して相対変位可能に支持し、
前記ゴム部品の前記ゴム部が弾性変形することにより、前記インナ部材と前記アウタ部材とが、前記右伸縮軸線に沿った軸線回りに相対変位可能とされている、請求項8から11のいずれか一項に記載の車両。」
2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲における請求項12について補正しようとするものであるところ、本件補正後の請求項12に追加された事項は、以下第3に示す原査定の拒絶の理由における[理由2](特許法第36条第6項第2号)に示されるとおり、本件補正前の請求項12が請求項2を引用しない場合に、「前記右緩衝装置」と「前記左緩衝装置」が指し示すものが不明確となるのを、本件補正後の請求項12において上記1(2)に示すとおり、請求項2に特定された「右緩衝装置」と「左緩衝装置」と同様の事項を特定することにより、明確とすることを意図したものといえる。
そうしてみると、本件補正は、本件補正前の請求項12を本件補正後の請求項12にすることで拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項について明りょうでない記載の釈明をしたものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。
したがって、請求項12に係る本件補正は適法になされたものである。
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成29年11月10日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由であり、以下の2つの理由を含むものである。
[理由1]
本願の請求項1~4、6~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2015-110408号公報
引用文献2.特開昭57-11178号公報
[理由2]
本願は、特許請求の範囲が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項12には「前記右緩衝装置は、前記車体フレームの上下方向に」との記載があるが、この記載に対応する「右緩衝装置」の記載は、選択的に引用される請求項2にしか存在せず、請求項12が請求項2を引用しない場合に、「前記右緩衝装置」が指し示すものが不明確となる。
また、請求項12には「前記左緩衝装置は、前記右伸縮軸線と平行な」との記載もあるが、この記載に対応する「左緩衝装置」の記載は、選択的に引用される請求項2にしか存在せず、請求項12が請求項2を引用しない場合に、「前記左緩衝装置」が指し示すものが不明確となる。
よって、請求項12に係る発明は明確でないから、本願の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第2号に掲げる、特許を受けようとする発明が明確であること、なる要件を満たしていない。
第4 当審の判断
[理由1(特許法第29条第2項)について]
1.引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1
ア.原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1a)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備える車両用ブレーキシステムおよび車両に関する。」
(1b)「【0020】
本発明は、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つの種類のブレーキシステムとは異なる作動のブレーキシステムを提供することを目的とする。本発明は、従来採用されている3つの種類のブレーキシステムとは異なる作動のブレーキシステムと、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両を提供することを目的とする。」
(1c)「【0049】
〈第1の実施形態の全体構成〉
図1は、車両を車体フレームの左右方向の左方から見た全体側面図を示す。
図1に示すように、車両1001は、車両本体部1002を備えている。車両1001は、左右一対の前輪1003を備えている。車両1001は、中央後輪1004を備えている。車両1001は、操舵機構1007を備えている。車両1001は、リンク機構1005を備えている。車両本体部1002は、車体フレーム1021と、車体カバー1022と、シート1024と、パワーユニット1025とを含んでいる。
・・・
【0057】
〈操舵機構〉
図2は、図1の車両1001の前部を正面から見た正面図である。図2は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見た図である。図3は、図1の車両1001の前部を上方から見た平面図である。図3は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を上方から見た図である。図2および図3では、車体カバー1022を透過させた状態で図示している。
図2および図3に示すように、操舵機構1007は、操舵力伝達機構1006、左緩衝器1033、右緩衝器1034、および左右一対の前輪1003を有する。
【0058】
左右一対の前輪1003は、左前輪1031および右前輪1032を含んでいる。左前輪1031は、車体フレーム1021の一部であるダウンフレーム1212の車体フレーム1021の左右方向の左方に配置されている。右前輪1032は、車体フレーム1021の一部であるダウンフレーム1212の車体フレーム1021の左右方向の右方に配置されている。車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、左前輪1031および右前輪1032は、車体フレーム1021の左右方向に並べて配置されている。また、左前輪1031の上方には、左フロントフェンダー1227が配置されている。右前輪1032の上方には、右フロントフェンダー1228が配置されている。左前輪1031は左緩衝器1033に支持されている。右前輪1032は右緩衝器1034に支持されている。
【0059】
左緩衝器1033は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器であり、支持する左前輪1031が路面から受ける荷重による振動を減衰させるものである。左緩衝器1033は、左下部1033a(左アウター要素)および左上部1033b(左インナー要素)を有する。左緩衝器1033は、左サイド部材支持部1053Aを有する。左前輪1031は左下部1033aに支持されている。左下部1033aは、車体フレーム1021の上下方向に延び、その下端に左車輪軸1314が支持されている。左車輪軸1314は、左前輪1031を支持している。左上部1033bは、その一部が左下部1033aに挿入された状態で、左下部1033aの上方に配置されている。左緩衝器1033は、左上部1033bが、左下部1033aの延びる方向において、左下部1033aに対して相対移動することで伸縮可能である。左上部1033bの上部は、左ブラケット1317に固定されている。左サイド部材支持部1053Aの下部は、左ブラケット1317に固定されている。なお、左下部1033aの延びる方向は、左緩衝器1033の伸縮方向である。
・・・
【0061】
右緩衝器1034は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器であり、支持する右前輪1032が路面から受ける荷重による振動を減衰させるものである。右緩衝器1034は、右下部1034a(右アウター要素)および右上部1034b(右インナー要素)を有する。右緩衝器1034は、右サイド部材支持部1054Aを有する。右前輪1032は右下部1034aに支持されている。右下部1034aは、車体フレーム1021の上下方向に延び、その下端に右車輪軸1324が支持されている。右車輪軸1324は、右前輪1032を支持している。右上部1034bは、その一部が右下部1034aに挿入された状態で、右下部1034aの上方に配置されている。右緩衝器1034は、右上部1034bが、右下部1034aの延びる方向において、右下部1034aに対して相対移動することで伸縮可能である。右上部1034bの上部は、右ブラケット1327に固定されている。右サイド部材支持部1054Aの下部は、右ブラケット1327に固定されている。なお、右下部1034aの延びる方向は、右緩衝器1034の伸縮方向である。
・・・
【0063】
車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、操舵力伝達機構1006は、左前輪1031および右前輪1032より上方に配置されている。操舵力伝達機構1006は、乗員の操舵力を入力する部材として、操舵部材1028を備えている。操舵部材1028は、ステアリングシャフト1060と、ステアリングシャフト1060の上部に連結されたハンドルバー1023とを有する。ステアリングシャフト1060は、その一部がヘッドパイプ1211に回転可能に支持されている。ステアリングシャフト1060は、その下部よりその上部が車体フレーム1021の後方に位置する。ステアリングシャフト1060の回転軸線は、車体フレーム1021の後方かつ上方に延びる。ステアリングシャフト1060は、乗員によるハンドルバー1023の操作に連動して回転する。
【0064】
操舵力伝達機構1006は、操舵部材1028、タイロッド1067、左ブラケット1317および右ブラケット1327を有する。操舵力伝達機構1006は、乗員がハンドルバー1023を操作する操舵力を、左ブラケット1317および右ブラケット1327に伝達する。
・・・
【0075】
図4に示すように、ハンドルバー1023が回されると、操舵機構1007の操舵力伝達機構1006が動作し、操舵動作が行われる。
例えば、ステアリングシャフト1060が図4の矢印Tの方向に回転すると、タイロッド1067が左後方に移動する。タイロッド1067の左後方への移動に伴って、左ブラケット1317および右ブラケット1327が矢印Tの方向に回転する。左ブラケット1317および右ブラケット1327が矢印Tの方向に回転すると、左前輪1031が左中心軸Y1(図2参照)を中心として回転し、右前輪1032が右中心軸Y2(図2参照)を中心として回転する。
・・・
【0110】
<第1実施形態の詳細説明>
図8A、図8B、図8Cおよび図8Dは、車体フレームの上下方向の上方から見た車両と車輪の前後方向の位置を示す説明図である。以降の説明では、便宜的に、図8Aから図8Dをまとめて図8と呼ぶことがある。図8Aに示した(a)は、車体フレームが直立状態の車両を示している。このとき、右前輪、左前輪および中央後輪の各ブレーキは作動していない。図8Aから図8Dに示した(b)から(f)は、車体フレームを車両の左右方向の左方に傾斜させて旋回している車両を示している。なお、図8の理解を容易にするために、(b)を図8Aと図8Bの両方に示し、(c)を図8Bと図8Cの両方に示した。
【0111】
図8Aの(a)は、車体フレームが直立状態の車両を示している。このとき、右前輪、左前輪および中央後輪の各ブレーキは作動していない。車両1001は、ブレーキシステム1702を備えている。車両1001は、車体フレーム1021を備えている。車両1001は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、車体フレーム1021の左右方向に並ぶ右前輪1032および左前輪1031を備えている。車両1001は、右前輪1032および左前輪1031より車体フレーム1021の前後方向の後方に設けられ、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、右前輪1032および左前輪1031の間に配置される中央後輪1004を備えている。右緩衝器1034は、その下部に右前輪1032を支持する。右緩衝器1034は、その上部に対する右前輪1032の車体フレーム1021の上下方向における変位を緩衝する。左緩衝器1033は、その下部に左前輪1031を支持する。左緩衝器1033は、その上部に対する左前輪1031の車体フレーム1021の上下方向における変位を緩衝する。リンク機構1005は、車体フレーム1021が直立状態の車両を前方から見て、車体フレーム1021の上下方向において右前輪1032および左前輪1031より上方に設けられる。リンク機構1005は、右緩衝器1034の上部および左緩衝器1033の上部を回転可能に支持する。リンク機構1005は、少なくてもその一部が車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びる回転軸線回り
に回転可能に車体フレーム1021に支持される。ブレーキシステム1702は、右前輪1032に設けられ、右前輪1032の制動力を発生させる右前ブレーキ1072を含む。ブレーキシステム1702は、左前輪1031に設けられ、左前輪1031の制動力を発生させる左前ブレーキ1071を含む。ブレーキシステム1702は、車両1001を運転する運転者が手で操作可能な入力部材1751を含む。入力部材1751は、レバー形状である。ブレーキシステム1702は、ブレーキ作動装置1756を含む。ブレーキ作動装置1756は、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071を作動させる。ブレーキシステム1702は、右前輪のスリップ状態を検出するための右検出部1822を備える。ブレーキシステム1702は、左前輪のスリップ状態を検出するための左検出部1812を備える。ブレーキシステム1702は、中央後輪1004のスリップ状態を検出するための後検出部1832(中央後輪スリップ検出部の一例)を備える(図8Aの(a)参照)。
・・・
【0116】
車両1001は、ブレーキシステム1702を含む。ブレーキシステム1702は、入力部材1751を含む。ブレーキシステム1702は、ブレーキ作動装置1756を含む。ブレーキ作動装置1756は、前マスターシリンダー1753rを含む。入力部材1751が運転者によって操作されると、前マスターシリンダー1753rは作動して液圧を発生する。発生した液圧は、前ブレーキホース1704を介して液圧制御ユニット1755に伝えられる。液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を右キャリパ1722に右前ブレーキホース1724を介して伝える。これにより、右前ブレーキ1072は作動する。液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を左キャリパ1712に左ブレーキホース1714を介して伝える。これにより、左前ブレーキ1071は作動する。
・・・
【0131】
図1に示すように、液圧制御ユニット1755は、リンク機構1005の車両1001の前後方向の前方に配置されている。液圧制御ユニット1755は、ブラケットを介して車体フレーム1021に支持されている。なお、図1に示すように、液圧制御ユニット1755は、運転者が足を置くフートボードの下方の車体フレーム1021の間に配置しても良い。また、液圧制御ユニット1755は、運転者が着座するシート1024の下方に配置しても良い。液圧制御ユニット1755は、車体カバー1022の内方で車体フレーム1021の間に配置しても良い。操舵機構1007のハンドルバー1023は、車体フレーム1021の左右方向に延びる棒状に形成されている。ハンドルバー1023は、その右端部に運転者が把持する右グリップ1007rを備えている。ハンドルバー1023は、その左端部に運転者が把持する左グリップ1007lを備えている。運転者は、右グリップ1007rおよび左グリップ1007lを把持した状態で、入力部材1752および第2入力部材1752を操作できる。」
(1d)引用文献1には、以下の図が示されている。
イ.以上の記載事項及び図面から、引用文献1には、次の事項が認定できる。
a.引用文献1に記載された技術は、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備える車両用ブレーキシステムおよび車両に関するものであり(【0001】)、従来採用されている3つの種類のブレーキシステムとは異なる作動のブレーキシステムと、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両を提供することを課題としたものである(【0020】)。
b.車両1001は、車体フレーム1021を備えている(【0111】)。
c.車両1001は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、車体フレーム1021の左右方向に並ぶ右前輪1032および左前輪1031を備えている(【0111】)。
d.車両1001は、ブレーキシステム1702を備えており、ブレーキシステム1702は、右前輪1032に設けられ、右前輪1032の制動力を発生させる右前ブレーキ1072を含み、ブレーキシステム1702は、左前輪1031に設けられ、左前輪1031の制動力を発生させる左前ブレーキ1071を含む(【0111】)。
e.車両1001は、操舵機構1007を備えており(【0049】)、操舵機構1007のハンドルバー1023は、車体フレーム1021の左右方向に延びる棒状に形成されており、ハンドルバー1023は、その右端部に運転者が把持する右グリップ1007rを備え、ハンドルバー1023は、その左端部に運転者が把持する左グリップ1007lを備えている(【0131】)。
f.操舵機構1007は、操舵力伝達機構1006を有する(【0057】)。
また、操舵力伝達機構1006は、乗員の操舵力を入力する部材として、操舵部材1028を備え(【0063】)、さらに、タイロッド1067、左ブラケット1317および右ブラケット1327を有する(【0064】)。さらに、操舵部材1028は、ステアリングシャフト1060と、ステアリングシャフト1060の上部に連結されたハンドルバー1023とを有する(【0063】)。
操舵力伝達機構1006は、乗員がハンドルバー1023を操作する操舵力を、左ブラケット1317および右ブラケット1327に伝達する(【0064】)。
ステアリングシャフト1060が回転すると、タイロッド1067が移動し、タイロッド1067の移動に伴って、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転する(【0075】)。
さらに、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転すると、左前輪1031が左中心軸Y1を中心として回転し、右前輪1032が右中心軸Y2を中心として回転する(【0075】)。
g.上記摘記(1c)における段落【0063】の「ステアリングシャフト1060は、その一部がヘッドパイプ1211に回転可能に支持されている」、「ステアリングシャフト1060の回転軸線は、車体フレーム1021の後方かつ上方に延びる」との記載及び上記摘記(1d)における図2のステアリングシャフト1060における左右方向の傾きを踏まえると、上記摘記(1d)における図1には、以下の事項が示されているといえる。
「ステアリングシャフト1060の回転軸線は、車体フレーム1021の後方かつ上方に延び、さらに、車体フレーム1021の前後方向および左右方向と比較して、車体フレームの上下方向に近い傾きで延びている。」
h.ブレーキシステム1702は、車両1001を運転する運転者が手で操作可能な入力部材1751を含み(【0111】)、入力部材1751が運転者によって操作されると、前マスターシリンダー1753rは作動して液圧を発生し、発生した液圧は、前ブレーキホース1704を介して液圧制御ユニット1755に伝えられ、液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を右キャリパ1722に右前ブレーキホース1724を介して伝え、右前ブレーキ1072は作動するとともに、液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を左キャリパ1712に左ブレーキホース1714を介して伝え、左前ブレーキ1071は作動する(【0116】)。
i.上記(1d)に示すとおり、図2には、以下の事項が示されているといえる。
「入力部材1751がハンドルバー1023の端部に設けられる。」
j.左緩衝器1033は、左下部1033aを有し、左前輪1031は左下部1033aに支持されており(【0059】)、右緩衝器1034は、右下部1034aを有し、右前輪1032は右下部1034aに支持されている(【0061】)。
ウ.上記ア.及びイ.から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「車両1001は、車体フレーム1021を備え、
車両1001は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、車体フレーム1021の左右方向に並ぶ右前輪1032および左前輪1031を備えるとともに、
車両1001は、ブレーキシステム1702を備えており、ブレーキシステム1702は、右前輪1032に設けられ、右前輪1032の制動力を発生させる右前ブレーキ1072を含み、ブレーキシステム1702は、左前輪1031に設けられ、左前輪1031の制動力を発生させる左前ブレーキ1071を含むものであって、
車両1001は、操舵機構1007を備えており、操舵機構1007のハンドルバー1023は、車体フレーム1021の左右方向に延びる棒状に形成されており、ハンドルバー1023は、その右端部に運転者が把持する右グリップ1007rを備え、ハンドルバー1023は、その左端部に運転者が把持する左グリップ1007lを備えるものであり、
操舵機構1007は、操舵力伝達機構1006を有し、
操舵力伝達機構1006は、乗員の操舵力を入力する部材として操舵部材1028を備え、さらに、タイロッド1067、左ブラケット1317および右ブラケット1327を有し、操舵部材1028は、ステアリングシャフト1060と、ステアリングシャフト1060の上部に連結されたハンドルバー1023とを有し、
ステアリングシャフト1060の回転軸線は、車体フレーム1021の後方かつ上方に延び、さらに、車体フレーム1021の前後方向および左右方向と比較して、車体フレームの上下方向に近い傾きで延びており、
操舵力伝達機構1006は、乗員がハンドルバー1023を操作する操舵力を、左ブラケット1317および右ブラケット1327に伝達するものであって、
ステアリングシャフト1060が回転すると、タイロッド1067が移動し、タイロッド1067の移動に伴って、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転し、
さらに、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転すると、左前輪1031が左中心軸Y1を中心として回転し、右前輪1032が右中心軸Y2を中心として回転するものであり、
ブレーキシステム1702は、車両1001を運転する運転者が手で操作可能な入力部材1751を含み、入力部材1751が運転者によって操作されると、前マスターシリンダー1753rは作動して液圧を発生し、発生した液圧は、前ブレーキホース1704を介して液圧制御ユニット1755に伝えられ、液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を右キャリパ1722に右前ブレーキホース1724を介して伝え、右前ブレーキ1072は作動するとともに、液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を左キャリパ1712に左ブレーキホース1714を介して伝え、左前ブレーキ1071は作動するものであって、
入力部材1751がハンドルバー1023の端部に設けられ、
左緩衝器1033は、左下部1033aを有し、左前輪1031は左下部1033aに支持されており、右緩衝器1034は、右下部1034aを有し、右前輪1032は右下部1034aに支持されている、
車両1001。」
(2)引用文献2
ア.同じく原査定の拒絶の理由である、平成29年11月10日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された引用文献2(以下、単に「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)1頁左下欄 3.発明の詳細な説明 1~2行
「本発明は自動二輪車のハンドル支持構造に関する。」
(2b)1頁右下欄12行~15行
「本発明は叙上事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は防振効果に優れ、しかもハンドルのぐらつきを有効に防止し得るようにしたハンドル支持構造を提供することにある。」
(2c)1頁右下欄16行~2頁左上欄2行
「本発明実施の一例を図面により説明すると、第1図において(1)は前輪(2)を支持するフロントフオーク、(3)はフロントフオーク(1)をその中間部で連結する下ブラケツト、(4)はフロントフオーク(1)をその上端部で連結する上ブラケツト、(5)はハンドルである。」
(2d)2頁左上欄2行~16行
「(6)は前記上ブラケツト(4)に挿着された保持部材であり、ハンドル(5)を支持するようにするが、その支持構造を第2図に拡大して示す。保持部材(6)は上側部材(6a)と下側部材(6b)に分割して構成されており、その下側部材(6b)が上ブラケツト(4)に挿着されるようになつている。下側部材(6b)の挿着部(6b1)は上ブラケツト(4)の挿着孔(4a)に遊嵌する軸状とされ、その下端部が上ブラケツト(4)下方へ突出している。(7)は前記挿着部(6b1)外周に嵌め合う内筒であり、その上下両端が上ブラケツト(4)より突出している。(8)は挿着部(6b1)の下端部に嵌め合つて前記内筒(7)の下端に係合するワツシヤであり、(9)はワツシヤ(8)の下側において挿着部(6b1)に螺合するナツトである。」
(2e)2頁左上欄17行~2頁右上欄6行
「しかして、前記ナツト(9)を締め付けることにより内筒(7)がワツシヤ(8)と下側部材(6b)の挿着部(6b1)上端に連なる平坦部(6b2)との間に挾持されて固定される。(10)は前記内筒(7)とその外周に設けられる外筒(11)との間に保持された弾性部材であり、内外筒(7)(11)間にゴム材を射出してなる。この弾性部材(10)としてのゴム材は上ブラケツト(4)からの振動を有効に吸収し得るよう柔らかいものが使用されている。」
(2f)2頁右上欄7~10行
「一方、前記外筒(11)は内筒(7)よりも短い筒体であつて弾性部材(10)を介して内筒(7)に一体に連結され、上ブラケツト(4)の挿着孔(4a)に圧入されて、それに嵌め合い固定されている。」
(2g)2頁左下欄3行~5行
「一方、上側部材(6a)は間にハンドル(5)の水平杆部(5a)を挾んで下側部材(6b)にボルト(14)により連結され、ハンドル(5)を固定するようにする。」
(2h)2頁左下欄6~7行
「斯くてハンドル(5)は上記保持部材(6)を介して上ブラケツト(4)に支持される。」
(2i)2頁左下欄8~11行
「しかして、斯る支持構造とされたハンドル(5)は上ブラケツト(4)からの振動が弾性部材(10)によつて吸収されることによりその振動が防止される。」
(2j)引用文献2には、以下の図が示されている。
イ.上記摘記事項及び第1~3図から、引用文献2には、次の事項が認定できる。
a.引用文献2に記載の技術は、「自動二輪車のハンドル支持構造に関する」ものであり(摘記(2a))、「防振効果に優れ、しかもハンドルのぐらつきを有効に防止し得るようにしたハンドル支持構造を提供する」ことを課題とする(摘記(2b))。
b.ハンドル(5)は上ブラケツト(4)からの振動が弾性部材(10)によつて吸収されることによりその振動が防止されるものであること(摘記(2i))。
c.上記摘記(2c)及び第1図の図示内容を参酌すると、以下の事項が理解できる。
上ブラケツト(4)はフロントフオーク(1)をその上端部で連結し、フロントフオーク(1)は前輪(2)を支持するものであるとともに(摘記(2c)、第1図)、ハンドル(5)の両端部にグリップが設けられていること(第1図)。
d.上記摘記(2d)の「保持部材(6)は上側部材(6a)と下側部材(6b)に分割して構成されており」、「下側部材(6b)の挿着部(6b1)は上ブラケツト(4)の挿着孔(4a)に遊嵌する軸状とされ」、「(7)は前記挿着部(6b1)外周に嵌め合う内筒であり」との記載、
上記摘記(2e)の「ナツト(9)を締め付けることにより内筒(7)がワツシヤ(8)と下側部材(6b)の挿着部(6b1)上端に連なる平坦部(6b2)との間に挾持されて固定される」、「(10)は前記内筒(7)とその外周に設けられる外筒(11)との間に保持された弾性部材であり、内外筒(7)(11)間にゴム材を射出してなる」との記載、及び、
上記摘記(2f)の「外筒(11)は内筒(7)よりも短い筒体であつて弾性部材(10)を介して内筒(7)に一体に連結され、上ブラケツト(4)の挿着孔(4a)に圧入されて、それに嵌め合い固定されている」との記載、
及び、第1図~第3図の図示内容を参酌すると、以下の事項が理解できる。
内外筒(7)(11)間にゴム材を射出してなる弾性部材(10)は、内筒(7)とその外周に設けられる外筒(11)との間に保持され、
外筒(11)は上ブラケツト(4)の挿着孔(4a)に圧入されて、それに嵌め合い固定され、
内筒は上側部材(6a)と下側部材(6b)に分割して構成された保持部材(6)の下側部材(6b)の挿着部(6b1)外周に嵌め合うものであり、
ナツト(9)を締め付けることにより内筒(7)がワツシヤ(8)と下側部材(6b)の挿着部(6b1)上端に連なる平坦部(6b2)との間に挾持されて固定されること。
e.ハンドル(5)は上記保持部材(6)を介して上ブラケツト(4)に支持されること(上記摘記(2g))。
2.対比・判断
(1)対比
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「車両1001」は、本願発明1の「車両」に相当する。
b.引用発明の「車両1001」が備える「車体フレーム1021」は、本願発明1の「車両」が有する「車体フレーム」に相当する。
c.引用発明の「右前輪1032」は、本願発明1の「右前輪」に相当し、引用発明の「左前輪1031」は本願発明1の「左前輪」に相当する。
また、上記b.の対比を踏まえると、引用発明の「車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、車体フレーム1021の左右方向に並ぶ右前輪1032および左前輪1031」は、本願発明1の「前記車体フレームの左右方向に並んで設けられた右前輪および左前輪」に相当する。
d.引用発明の「制動力」は本願発明1の「ブレーキ力」に相当するから、引用発明の「右前輪1032の制動力を発生させる右前ブレーキ1072」は、「右前輪1032」にブレーキ力を付与可能であるということができ、引用発明の「左前輪1031の制動力を発生させる左前ブレーキ1071」は、「左前輪1031」にブレーキ力を付与可能であるということができる。
そして、上記c.の対比を踏まえると、引用発明の「右前輪1032の制動力を発生させる右前ブレーキ1072」は、本願発明1の「前記右前輪にブレーキ力を付与可能な右ブレーキ装置」に相当し、引用発明の「左前輪1031の制動力を発生させる左前ブレーキ1071」は、本願発明1の「前記左前輪にブレーキ力を付与可能な左ブレーキ装置」に相当する。
e.引用発明の「ハンドルバー1023」に備えられた「運転者が把持する右グリップ1007r」及び「運転者が把持する左グリップ1007l」は、本願発明1の「運転者が把持するためのグリップ部」に相当する。
f.上記e.で検討したとおり、「ハンドルバー1023」には「運転者が把持する右グリップ1007r」及び「運転者が把持する左グリップ1007l」が備えられていることを踏まえると、引用発明の「乗員がハンドルバー1023を操作する操舵力」は、本願発明1の「前記グリップ部に入力された操舵力」に相当するといえる。
そして、引用発明の「操舵力伝達機構1006」は、「乗員がハンドルバー1023を操作する操舵力を、左ブラケット1317および右ブラケット1327に伝達するものであって、ステアリングシャフト1060が回転すると、タイロッド1067が移動し、タイロッド1067の移動に伴って、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転し、さらに、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転すると、左前輪1031が左中心軸Y1を中心として回転し、右前輪1032が右中心軸Y2を中心として回転するものであ」るから、「乗員がハンドルバー1023を操作する操舵力」は「左前輪1031」と「右前輪1032」に伝達するものということができる。
そうすると、引用発明の「操舵力伝達機構1006」は、本願発明1の「前記グリップ部に入力された操舵力を前記右前輪および前記左前輪に伝達する操舵力伝達機構」に相当する。
g.引用発明の「ステアリングシャフト1060」、「ステアリングシャフト1060の回転軸線」は、それぞれ、本願発明1の「ステアリングシャフト」、「中間操舵軸線」に相当する。
また、引用発明の「回転軸線」は、「車体フレーム1021の後方かつ上方に延び、さらに、車体フレーム1021の前後方向および左右方向と比較して、車体フレームの上下方向に近い傾きで延びて」いるものであり、本願明細書の段落【0035】の「本明細書において、「車体フレームの上下方向に延びる」とは、車体フレームの上下方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの前後方向および左右方向と比較して、車体フレームの上下方向に近い傾きで延びることを意味する。」との記載を参酌すれば、本願発明1の「前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線」に相当する。
さらに、引用発明の「ステアリングシャフト1060」が回転軸線回りに回動可能であることは技術的に明らかである。
そして、上記f.の対比も踏まえると、引用発明の「ステアリングシャフト1060」は、本願発明1の「前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線回りに回動可能なステアリングシャフト」に相当する。
h.上記g.の対比も踏まえると、引用発明の「ステアリングシャフト1060の上部に連結されたハンドルバー1023」は、本願発明1の「前記ステアリングシャフトの上部に設けられたハンドルバー」に相当する。
i.引用発明の「タイロッド1067」は、「ステアリングシャフト1060が回転すると、タイロッド1067の移動に伴って、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転し、さらに、左ブラケット1317および右ブラケット1327が回転すると、左前輪1031が左中心軸Y1を中心として回転し、右前輪1032が右中心軸Y2を中心として回転するもの」であるから、「ステアリングシャフト1060の回転」を「右前輪1032」及び「左前輪1031」に伝達するものといえる。
そして、上記c.、f.及びg.の対比も踏まえると、引用発明の「操舵力伝達機構1006」の有する「タイロッド1067」は、本願発明1の「操舵力伝達機構」が有する「前記ステアリングシャフトの回動を前記右前輪および前記左前輪に伝達するタイロッド」に相当する。
j.引用発明の「入力部材1751」は、「ハンドルバー1023の端部に設けられる」ものであって、「運転者によって操作されると、前マスターシリンダー1753rは作動して液圧を発生し、発生した液圧は、前ブレーキホース1704を介して液圧制御ユニット1755に伝えられ、液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を右キャリパ1722に右前ブレーキホース1724を介して伝え、右前ブレーキ1072は作動するとともに、液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を左キャリパ1712に左ブレーキホース1714を介して伝え、左前ブレーキ1071は作動する」ものであるから、上記f.、h.の対比も踏まえると、本願発明1の「前記ハンドルバーの少なくとも一方の端部」に設けられている「前記右ブレーキ装置および前記左ブレーキ装置の少なくとも一方を操作するブレーキ操作子」に相当する。
また、引用発明の「右グリップ1007r」は「ハンドルバー1023」の「右端部」に備えられ、「左グリップ1007l」は「ハンドルバー1023」の「左端部」に備えられるものである。
そして、上記f.及びh.の対比も踏まえると、引用発明の「右グリップ1007r」及び「左グリップ1007l」は、本願発明1の「前記ハンドルバーの少なくとも一方の端部に」設けられている「前記グリップ部」に相当する。
以上によれば、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「車体フレームと、
前記車体フレームの左右方向に並んで設けられた右前輪および左前輪と、
前記右前輪にブレーキ力を付与可能な右ブレーキ装置と、
前記左前輪にブレーキ力を付与可能な左ブレーキ装置と、
運転者が把持するためのグリップ部と、
前記グリップ部に入力された操舵力を前記右前輪および前記左前輪に伝達する操舵力伝達機構と、を有し、
前記操舵力伝達機構は、
前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線回りに回動可能なステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの上部に設けられたハンドルバーと、
前記ステアリングシャフトの回動を前記右前輪および前記左前輪に伝達するタイロッドと、を有し、
前記ハンドルバーの少なくとも一方の端部に、前記右ブレーキ装置および前記左ブレーキ装置の少なくとも一方を操作するブレーキ操作子と、前記グリップ部とが設けられている、車両。」
<相違点>
本願発明1は、「前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する振動が前記グリップ部に伝達されることを抑制するゴム部品が、前記操舵力伝達機構に設けられている」構成を有しているのに対して、引用発明では、かかる構成を有していない点。
(2)判断
ア.相違点について
以下、相違点について検討する。
a.「振動が前記グリップ部に伝達されることを抑制するゴム部品が、前記操舵力伝達機構に設けられている」構成について
(a)引用文献2は、上記1(2)イ.a.~c.によれば、「防振効果に優れ、しかもハンドルのぐらつきを有効に防止し得るようにした自動二輪車のハンドル支持構造」において、「内外筒(7)(11)間にゴム材を射出してなる弾性部材(10)は、内筒(7)とその外周に設けられる外筒(11)との間に保持され、外筒(11)は上ブラケツト(4)の挿着孔(4a)に圧入されて、それに嵌め合い固定され、内筒は上側部材(6a)と下側部材(6b)に分割して構成された保持部材(6)の下側部材(6b)の挿着部(6b1)外周に嵌め合うものであり、ナツト(9)を締め付けることにより内筒(7)がワツシヤ(8)と下側部材(6b)の挿着部(6b1)上端に連なる平坦部(6b2)との間に挾持されて固定され、
ハンドル(5)の両端部にグリップが設けられ、
ハンドル(5)は上記保持部材(6)を介して上ブラケツト(4)に支持される」との技術が示されている(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)。
引用文献2に記載された技術の「ハンドル(5)」及び「グリップ」は、本願発明1の「ハンドルバー」及び「グリップ部」に相当する。
引用文献2に記載された技術の「弾性部材(10)」は、「ハンドル(5)」が支持される「保持部材(6)」の「下側部材(6b)の挿着部(6b1)外周に嵌め合う」「内筒(7)」と、「上ブラケツト(4)の挿着孔(4a)に圧入されて、それに嵌め合い固定され」る「外筒(11)」間に「ゴム材を射出してなる」ものである。
そして、引用文献2に記載された技術の「上ブラケツト(4)はフロントフオーク(1)をその上端部で連結し、フロントフオーク(1)は前輪(2)を支持するものであるとともに、ハンドル(5)の両端部にグリップ部が設けられて」いるものであり、「前輪(2)」に生じる振動は支持する「フロントフオーク(1)」を介して「上ブラケツト(4)」に伝達されること、「ハンドル(5)」の振動が両端部に連続する「グリップ部」へと伝達されることは技術的に明らかであるから、引用文献2に記載された技術の「弾性部材10」は、「上ブラケツト(4)からの振動」を吸収して「ハンドル(5)」の「グリップ部」に伝達される「振動が防止されるよう構成」されるものといえる。
そうすると、引用文献2に記載された技術の「弾性部材10」は、本願発明1の「振動が前記グリップ部に伝達されることを抑制するゴム部品」であって、「前記操舵力伝達機構に設けられている」ものに相当する。
(b)引用発明に引用文献2に記載された技術を適用する動機付けが存在するかにつき検討する。
(b-1)技術分野及び構造の共通性について
引用発明と引用文献2に記載された技術とは、いずれも鞍乗型車両に関するものであるから、発明の属する技術分野が共通しており、かつ、両者は上記a.にて示したように、前輪を支持する緩衝装置を有し、端部にグリップ部が設けられるハンドルを備えているものである点で構造的にも共通している。そして、引用発明の「ステアリングシャフト1060」と引用文献2に記載された技術の「上ブラケツト(4)」とは、「ハンドルバー」が上部に設けられる部材であることで共通するものである。
(b-2)課題について
前輪を支持する緩衝装置を有し、端部にグリップ部が設けられるハンドルを備える車両において、端部にグリップ部が設けられるハンドルバーに伝達される振動を防止することは周知の技術課題といえる。
このことは、例えば、自動二輪車の分野において、引用文献2に記載された技術に加え、国際公開第2008/123056号にも「路面から前輪に入力される上下動の振動も、フロントフオークからハンドルバーを介してライダに伝達される」([0007])、「路面からの振動がライダに伝達されることを抑制できる自動二輪車を提供することを課題としている」([0008])と記載されることからも裏付けられている。
そして、引用発明も「左緩衝器1033は、左下部1033aを有し、左前輪1031は左下部1033aに支持されており、右緩衝器1034は、右下部1034aを有し、右前輪1032は右下部1034aに支持されている」ものであり、「ハンドルバー1023は、その右端部に運転者が把持する右グリップ1007rを備え、ハンドルバー1023は、その左端部に運転者が把持する左グリップ1007lを備えるものであ」るところ、引用発明においてもそのような技術課題が内在することは明らかである。
(b-3)以上を併せ考慮すれば、引用発明において、引用文献2に記載された技術を適用する動機付けは充分存在するものといえる。
(c)そうすると、引用発明の「ハンドルバー1023」と「ステアリングシャフト1060」に、引用文献2に記載された技術を適用して、内外筒間にゴム材を射出してなる弾性部材は、内筒とその外周に設けられる外筒との間に保持され、外筒は「ステアリングシャフト1060」の挿着孔に圧入されて、それに嵌め合い固定され、内筒は上側部材と下側部材に分割して構成された保持部材の下側部材の挿着部外周に嵌め合うものであり、ナットを締め付けることにより内筒がワッシャと下側部材の挿着部上端に連なる平坦部との間に挾持されて固定され、「ハンドルバー1023」は上記保持部材を介して「ステアリングシャフト1060」に支持されるよう構成することで、相違点に係る本願発明1の「振動が前記グリップ部に伝達されることを抑制するゴム部品」であって、「前記操舵力伝達機構に設けられている」ものを備えさせることは、当業者が容易に想到し得たものである。
b.グリップ部に伝達されることを抑制する振動が、「前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する」ものであること(以下、「事項A」ということもある。)について
(a)本願発明の「ゴム部品」と引用文献2に記載された技術の「弾性部材10」との間には、事項Aの振動を抑制するための構成上の差異は認められないが、効果の予測性の有無として検討する。
(b)引用文献2の上記1(2)(2j)に示した第2図には、「弾性部材10」が、「内外筒」を相対的に上下、左右、前後いずれにも移動させうる構成が示されている。
路面から前輪に入力される上下動の振動がフロントフォークからハンドルバーを介して伝達されることは技術常識といえる(以下、「技術常識1」という。)。このことは、上記国際公開第2008/123056号の段落[0007]、[0008]からも裏付けられている。
また、ハンドルがフロントフォークに支持されるものにおいて、ハンドルに伝えられる振動に上下、左右、前後いずれの方向の振動も含まれることも技術常識といえる(以下、「技術常識2」という。)。このことは、特開平3-224888号公報の「ハンドルが弾性体を介してフロントフォークに弾持されることになる」、「車体からハンドルへ伝えられる上下、左右いずれの方向の振動をも弾性体によって緩和することができる」(3頁左下欄20行~右下欄4行)との記載、特開2000-219184号公報に示される、フロントフォークの上部にハンドルを支持し、ハンドル振動に前後方向成分、左右方向成分、上下方向成分が含まれること(【0009】、【0012】、図4)、からも裏付けられている。
上記技術常識1及び2を踏まえると、引用文献2の「弾性部材10」が、「内外筒」の相対的な上下、左右、前後の移動を通じて、「内筒(7)」と「下側部材(6b)の挿着部(6b1)外周」が嵌め合う「保持部材(6)」の支持する「ハンドル(5)」の「グリップ」に伝達される上下、左右、前後を含むあらゆる振動を抑制し得ることは技術的に明らかである。
(c)上記(b)を参酌すると、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用した際に設けられる「内外筒間にゴム材を射出してなる弾性部材10」も、上下、前後又は左右成分を含むあらゆる振動を抑制するものといえる。
(d)他方、「前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する」振動は、「操舵力伝達機構」における「グリップ部」に「ハンドルバー」を介して伝達される際には、「右前輪」、「左前輪」の一方又は双方に起因した振動が連成されて、上下、前後又は左右成分を含むあらゆる振動成分のいずれかを含む振動を生じさせるものと解される。そうすると、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用した際に設けられる「内外筒間にゴム材を射出してなる弾性部材10」は、上下、前後又は左右成分を含むあらゆる振動成分のいずれかを含む、事項Aの振動についても、ハンドルバー1023と連続する右グリップ1007r及び左グリップ1007lに伝達されることを抑制するものといえる。
そうすると、「前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する振動を抑制する」ことは、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用した構成である、「振動を抑制するゴム部品が、前記操舵力伝達機構に設けられている」ことから、その構成上当然に奏される効果に留まる事項といえる。
イ.請求人の主張について
請求人は、審判請求書の4.において、以下のとおり主張している。
「このように、引用文献1,2のいずれにも、本願発明が抑制しようとする振動に関する言及がなく、引用文献1,2から本願発明をする動機が全くありません。したがって、この点のみにおいても、引用文献1,2から本願発明に容易に想到できる理由がありません。」
(以下、「主張1」という。)
「また当然のことですが、このような課題に全く着目していない引用文献1,2のいずれにも、「前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する振動を抑制するゴム部品が、前記操舵力伝達機構に設けられている」構成を教示も示唆もしておらず、引用文献1,2を組み合わせることができたとしても本願発明に容易に想到することはできません。」(以下、「主張2」という。)
「さらに言えば引用文献1,2においては、鞍乗型車両であることと、なんらかの「振動」についての開示があるということしか共通点がありません。引用文献1,2に、振動源、伝達経路、防振したい対象、の何れにおいても共通点は見られません。したがって、当業者にとっても、引用文献1,2を組み合わせる動機づけがなく、審査官殿の見解には同意できません。」(以下、「主張3」という。)
a.主張1、3について
上記ア.a.(b)にて示したように、引用発明において、引用文献2に記載された技術を適用する動機付けは充分存在するものといえるから、出願人の主張を採用することはできない。
b.主張2について
上記ア.b.にて示したように、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用した構成と本願発明1との間に、「ゴム部品がグリップ部に伝達されることを抑制する振動」についての「前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する振動」であることの特定を除いた構成上の差異は見いだせず、「前記右前輪と路面との間に生じる摩擦力と前記左前輪と路面との間に生じる摩擦力との相違に起因する振動を抑制する」ことは、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用した構成である、「振動を抑制するゴム部品が、前記操舵力伝達機構に設けられている」ことから、その構成上当然に奏される効果に留まる事項といえるから、出願人の主張を採用することはできない。
よって、請求人の主張は採用できない。
3.小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって、他の請求項に係る発明及び他の理由について検討するまでもなく、本願は、原査定の理由1(特許法第29条第2項)により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-013116