特許拒絶査定不服審判
2025-000287
レベル出し支援装置及び基板製造用装置
- 審判番号
- 2025-000287
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-034635
- 請求日
- 2025年01月09日
- 審決日
- 2026年01月20日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤマハ発動機株式会社
- 【請求人代理人】小谷 昌崇
- 【請求人代理人】福成 勉
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 藤崎 詔夫
- 審判官 草野 顕子
- 分類
- P18 .113-Z (H05K) / P18 .121-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-34635号「レベル出し支援装置及び基板製造用装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年9月15日出願公開、特開2022-135057号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年3月4日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 6年 4月23日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 7月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 6年10月21日付け:拒絶査定
令和 7年 1月 9日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明は、令和6年7月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
アジャスタ装置を備えた基板製造用装置に備えられ、前記アジャスタ装置の操作によるレベル出し作業を支援する装置であって、
前記基板製造用装置の高さ及び/又は傾きの計測結果を取得可能な情報取得部と、
予め定められた位置の前記計測結果に基づき、レベル出しに必要なアジャスタ装置の高さ補正量を求める補正量算出部と、
前記補正量だけ高さを変化させるために必要な前記アジャスタ装置の操作を教示する情報である操作支援情報を生成する支援情報生成部と、
画像及び/又は音声により前記操作支援情報を報知することが可能な報知装置に対して前記操作支援情報を出力する情報出力部と、を備え、
前記アジャスタ装置は、ねじ軸からなる脚柱を備え、当該脚柱が回転操作を受けることにより基板製造用装置の高さを変更可能に構成され、
前記操作支援情報は、前記脚柱の回転方向及び回転量を含む、ことを特徴とするレベル出し支援装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりのものを含むものである。
【理由1】(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
【理由2】(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2012-220444号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審で付したものである。以下同様。)
ア 「【請求項1】
底面部に複数の高さ調整機構を有する設備機械を床面に設置する際に、水平度の調整作業を支援する水平度調整支援装置であって、
前記設備機械の平坦な水平基準面に載置した水準器を撮像して画像データを得る撮像カメラ部と、
前記画像データから得られる前記水準器が示す傾斜指示量に基づいて、調整を行う高さ調整機構を特定し、さらに当該高さ調整機構による前記底面部の高さ調整量を演算する画像処理部と、
前記特定した高さ調整機構および前記高さ調整量を指示する指示部と、を備える水平度調整支援装置。」
イ 「【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項において、
前記設備機械の前記高さ調整機構は、前記床面上に配置される台座と、前記台座から略鉛直方向に立設され鉛直軸線の周りに回転可能でかつ高さ方向の移動が不能であって上部に雄ねじが刻設された調整ねじと、前記設備機械の前記底面部に刻設されて前記調整ねじの前記雄ねじが螺合する雌ねじとを有し、前記調整ねじを回転駆動すると前記雌ねじが上下動して前記底面部の高さが調整されるねじ駆動高さ調整機構であり、
前記画像処理部は、前記高さ調整量を前記ねじ駆動高さ調整機構のねじピッチで除算して前記調整ねじの回転量を演算し、
前記指示部は、前記高さ調整量として前記調整ねじの回転量を指示する水平度調整支援。」
ウ 「【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項において、前記設備機械は、基板に生産作業を施すはんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、および基板検査機のいずれかの基板生産機であり、前記撮像カメラ部および前記画像処理部および前記指示部のうちの少なくとも一つを前記基板生産機と兼用する水平度調整支援装置。」
エ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機械を床面に設置する際に水平度の調整作業を支援する水平度調整支援装置に関する。」
オ 「【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る水平度調整支援装置の発明では、水準器の画像データに基づいて、調整を行う高さ調整機構を特定し、さらに当該高さ調整機構による底面部の高さ調整量を演算して、作業者に指示する。これにより、作業者は仮に熟練度が低くとも、どの高さ調整機構をどの程度調整すればよいかを正しく把握でき、短時間で水平度の調整を完了できる。換言すれば、水平度調整支援装置は、作業者が熟練度によらず短時間で水平度の調整を完了することを支援できる。」
カ 「【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態の水平度調整支援装置について、図1~図3を参考にして説明する。図1は、床面9に水平に設置する設備機械6を例示説明する図である。図示されるように、設備機械6は略矩形の筺体61で構成されており、略中間高さに平坦な水平基準面62が設けられている。設備機械6を床面9に設置する際に、水平基準面62上に2個1組の水準器71、75を載置して傾斜具合を把握する。水準器71、75はそれぞれ、水平面に対して単一方向の傾斜指示量を示す気泡管式の表示器であり、互いに直交配置する。水準器71、75には、検出方向に延在する透明な気泡管の中に液体を密閉し、液体中を移動する気泡の位置で傾斜指示量を示す構成の指示器を用いることができる。また、気泡に代えて、液体中を移動する浮動体を封じ込んだ構成の指示器を用いてもよい。
【0022】
設備機械6の底面部63の四隅にはそれぞれ、ねじ駆動高さ調整機構8が設けられている。図2は、図1のA部拡大側面図であり、設備機械6の底面部63に設けられたねじ駆動高さ調整機構8を説明する図である。ねじ駆動高さ調整機構8は、台座81、調整ねじ83、および雌ねじ87により構成されている。台座81は薄い円柱状で、下底面が床面9に接するように配置され、上底面の中央には座孔82が形成されている。
【0023】
調整ねじ83は略鉛直方向に延在する部材であり、鉛直下方から順番に回転軸84、六角ナット85、および雄ねじ86が一体的に形成されている。回転軸84の下端は、台座81の座孔82に嵌入して、鉛直軸線の周りに回転可能でかつ高さ方向の移動ができないようになっている。六角ナット85は、レンチなどの工具により回転駆動される部分である。雄ねじ86は、六角ナット85の上側から調整ねじ83の上端にわたり刻設されている。雌ねじ87は、設備機械6の底面部63側に下向きに開口して刻設されている。調整ねじ83の雄ねじ86と底面部63側の雌ねじ87は、同一のねじピッチPを有して螺合している。
【0024】
したがって、作業者が六角ナット85を回転駆動すると調整ねじ83全体が回転し、雌ねじ87が上下動して底面部63の床面9に対する高さHが調整されるようになっている。四隅のねじ駆動高さ調整機構8で適宜高さHを調整することにより、設備機械6を床面9に対して水平に設置できる。
【0025】
次に、設備機械6を床面9に設置する際に、水平度の調整作業を支援する第1実施形態の水平度調整支援装置1について説明する。図3は、第1実施形態の水平度調整支援装置1を模式的に説明する図である。水平度調整支援装置1は、撮像カメラ部2、画像処理部3、および指示部に相当する表示モニタ4で構成されている。撮像カメラ部2は、2個の水準器71、75の上部表示面を撮像して画像データを得る。このとき、2個の水準器71、75を一緒に1枚の画像データに撮像してもよく、2個の水準器71、75をそれぞれ別の画像データに撮像してもよい。また、移動式の撮像カメラ部2を用いて各水準器71、75を真上から撮像すれば、傾斜指示量の読み取り精度が向上する。いずれにしても、画像データは、水準器71、75の気泡72、76の位置および目盛73,77を正確に読み取れる程度に鮮明であることが好ましい。撮像カメラ部2は、撮像した画像データを画像処理部3に転送する。
【0026】
画像処理部3は、受け取った画像データから得られる傾斜指示量に基づいて、調整を行うねじ駆動高さ調整機構8を特定し、さらに当該高さ調整機構8による底面部63の高さ調整量ΔHを演算する。画像処理部3は、CPUやメモリを内蔵する制御コンピュータで構成し、ねじ駆動高さ調整機構8を特定する方法および高さ調整量を演算する方法をプログラムで実現することができる。この方法として、高さ調整テーブルを用いる方法または演算による方法を具備することができ、2つの方法を具備して実際の調整作業時に選択使用するようにしてもよい。
【0027】
高さ調整テーブルを用いる方法では、対象となる設備機械6の設置に先立ち、水準器71、75が示す傾斜指示量と調整を行う高さ調整機構8および高さ調整量ΔHとの関係を実測などにより予め求めて、高さ調整テーブルを作成しておく。この調整テーブルは、画像処理部3のメモリに格納されて保持される。そして、作業者が水平度の調整作業を行うときに、画像処理部3は、画像データから得られる傾斜指示量を高さ調整テーブルに照合して、調整を行う高さ調整機構8を特定しさらに高さ調整量ΔHを演算する。この方法は、設備機械6の底面部63を完全な剛体と見なせず撓みなどが影響し、演算による方法で精度を得られない場合に有効である。なお、複数種類の設備機械に対応するためには、設備機械の種類ごとに予め高さ調整テーブルを作成して、画像処理部3のメモリに格納しておく。
【0028】
演算による方法では、対象となる設備機械6の設置に先立ち、設備機械6に関する情報、例えばねじ駆動高さ調整機構8の個数や配置、ねじ駆動高さ調整機構8間の離間距離DやねじピッチPの値などを画像処理部3に入力設定しておく。そして、作業者が水平度の調整作業を行うときに、画像処理部3は、まず画像データから得られる傾斜指示量を傾斜角度Aに換算する。この換算は、例えば水準器71、75の気泡72、76の中心が位置する目盛73,77の指示値と傾斜角度Aとの関係を予め求めておくことで、容易に実施できる。画像処理部3は、次に傾斜角度Aに基づいて高さ調整機構8間の高低差、すなわち高さ調整量ΔHを演算する。例えば、一次元に単純化して考えた場合、高さ調整量ΔHは次式で演算できる。
高さ調整量ΔH=D×sinA
この高さ調整量ΔHだけ低い側の高さ調整機構8を高く調整するか、あるいは、高い側の高さ調整機構8を低く調整する。実際には、2つの水準器71、75の画像データから得られる直交2方向の傾斜指示量に基づいて二次元上で演算を行い、調整を行う高さ調整機構8を特定し、高さ調整量ΔHを求める。
【0029】
高さ調整テーブルを用いる方法および演算による方法のいずれの場合も、次式で示されるように、高さ調整量ΔHをねじ駆動高さ調整機構8のねじピッチPで除算して調整ねじ83の回転量Rに換算する。
回転量R=ΔH/P
画像処理部3は、特定したねじ駆動高さ調整機構8、高さ調整量ΔH、および調整ねじ83の回転量Rを表示モニタ4に転送する。
【0030】
表示モニタ4は、取得した情報をモニタ画面41上にシンボル表示および数値表示して、作業者Mに調整内容を指示する。図3には、ねじ駆動高さ調整機構8を示す4つのシンボル42のうち手前右側のシンボル42Aが黒塗り表示されて調整対象であることが例示されている。また、高さ調整量ΔHが“○○○○‘、回転量Rが“××בと数値表示されている。」
キ また、以下の図面が示されている。
「
[図:0001433834000001.jpg]
」
(2)引用文献1の認定事項
上記(1)の記載事項及び図示内容から、引用文献1には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 上記(1)アの請求項1、同ウの請求項6、同カの【0022】、【0025】の記載から、引用文献1に記載された技術は、複数のねじ駆動高さ調整機構8を有する基板生産機を床面9に設置する際に、水平度の調整作業を支援する水平度調整支援装置1に関するものと認められる。
イ 上記(1)アの請求項1、同ウの請求項6、同カの【0021】、【0025】、【0027】の記載から、水平度調整支援装置1は、基板生産機の平坦な水平基準面62に載置した傾斜指示量を示す水準器71,75を撮像して画像データを得る撮像カメラ部2を備えると認められる。
ウ 上記(1)アの請求項1、同イの請求項4、同カの【0025】~【0026】、【0028】~【0029】の記載から、水平度調整支援装置1は、画像データから得られる水準器71,75が示す傾斜指示量に基づいて、調整を行うねじ駆動高さ調整機構8を特定し、さらに前記ねじ駆動高さ調整機構8間の離間距離D、前記傾斜指示量から換算される傾斜角度Aに基づいて、前記ねじ駆動高さ調整機構8による底面部63の高さ調整量ΔHを、高さ調整量ΔH=D×sinAの式より演算し、前記高さ調整量ΔHを前記高さ調整機構8のねじピッチPで除算して調整ねじ83の回転量Rに換算し、特定した前記ねじ駆動高さ調整機構8、前記高さ調整量ΔH、及び前記調整ねじ83の前記回転量Rを表示モニタ4に転送する画像処理部3を備えると認められる。
エ 上記(1)イの請求項4、同ウの請求項6、同カの【0022】~【0024】の記載から、ねじ駆動高さ調整機構8は、上部に雄ねじ86が刻設された調整ねじ83を備え、前記調整ねじ83がレンチなどの工具により回転駆動されると基盤生産機の高さHが調整されるものであると認められる。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数のねじ駆動高さ調整機構8を有する基板生産機を床面に設置する際に、水平度の調整作業を支援する水平度調整支援装置1であって、
前記基板生産機の平坦な水平基準面62に載置した傾斜指示量を示す水準器71,75を撮像して画像データを得る撮像カメラ部2と、
前記画像データから得られる前記水準器71,75が示す傾斜指示量に基づいて、調整を行う前記ねじ駆動高さ調整機構8を特定し、さらに前記ねじ駆動高さ調整機構8間の離間距離D、前記傾斜指示量から換算される傾斜角度Aに基づいて、前記ねじ駆動高さ調整機構8による底面部63の高さ調整量ΔHを、高さ調整量ΔH=D×sinAの式より演算し、前記高さ調整量ΔHを前記高さ調整機構8のねじピッチPで除算して調整ねじ83の回転量Rに換算し、
特定した前記ねじ駆動高さ調整機構8、前記高さ調整量ΔH、及び前記調整ねじ83の前記回転量Rを表示モニタ4に転送する画像処理部3と、を備え、
前記ねじ駆動高さ調整機構8は、上部に雄ねじ86が刻設された調整ねじ83を備え、前記調整ねじ83がレンチなどの工具により回転駆動されると基盤生産機の高さHが調整されるものである、
水平度調整支援装置1。」
第5 対比 ・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「ねじ駆動高さ調整機構8」及び「基板生産機」は、前者の「アジャスタ装置」及び「基板製造用装置」にそれぞれ相当する。また、後者の「水平度調整支援装置1」は、前者の、「レベル出し作業を支援する装置」及び「レベル出し支援装置」に相当する。
そして、後者の「複数のねじ駆動高さ調整機構8を有する基板生産機を床面に設置する際に、水平度の調整作業を支援する水平度調整支援装置1」は、前者の「アジャスタ装置を備えた基板製造用装置に備えられ、前記アジャスタ装置の操作によるレベル出し作業を支援する装置」に相当する。
(2)後者の「前記基板生産機の平坦な水平基準面62に載置した」「水準器71,75」が「示す」「傾斜指示量」は、前者の「前記基板製造用装置」の「傾きの計測結果」に相当するから、後者の「前記基板生産機の平坦な水平基準面62に載置した傾斜指示量を示す水準器71,75を撮像して画像データを得る撮像カメラ部2」は、前者の「前記基板製造用装置の」「傾きの計測結果を取得可能な情報取得部」に相当する。
(3)上記(2)に加え、後者の「高さ調整量ΔH」は、前者の「高さ補正量」に相当するから、後者の「前記画像データから得られる前記水準器71,75が示す傾斜指示量に基づいて、調整を行う前記ねじ駆動高さ調整機構8を特定し、さらに」「前記ねじ駆動高さ調整機構8による前記底面部63の高さ調整量ΔHを」「演算」する「画像処理部3」は、前者の「予め定められた位置の前記計測結果に基づき、レベル出しに必要なアジャスタ装置の高さ補正量を求める補正量算出部」に相当する。
また、後者の「表示モニタ4」は、前者の「報知装置」に相当し、後者の「特定した前記ねじ駆動高さ調整機構8」「及び前記調整ねじ83の回転量R」は、前者の「操作支援情報」に相当する。そして、後者の「調整を行う前記ねじ駆動高さ調整機構8を特定し」、「高さ調整量ΔHを」「演算し」、「前記高さ調整量ΔHを調整ねじ83の回転量Rに」「換算」する「画像処理部3」は、前者の「前記補正量だけ高さを変化させるために必要な前記アジャスタ装置の操作を教示する情報である操作支援情報を生成する支援情報生成部」に相当する。
さらに後者において、これらの情報を「表示モニタ4に転送する画像処理部3」は、前者の「画像」「により前記操作支援情報を報知することが可能な報知装置に対して前記操作支援情報を出力する情報出力部」に相当する。
(4)後者の「上部に雄ねじ86が刻設された調整ねじ83」は、前者の「ねじ軸からなる脚柱」に相当するから、後者の「前記高さ調整機構8は、上部に雄ねじ86が刻設された調整ねじ83を備え、前記調整ねじ83がレンチなどの工具により回転駆動されると基盤生産機の高さHが調整されるものである」態様は、前者の「前記アジャスタ装置は、ねじ軸からなる脚柱を備え、当該脚柱が回転操作を受けることにより基板製造用装置の高さを変更可能に構成され」るとする態様に相当する。
(5)後者の「前記調整ねじ83の前記回転量R」は、前者の「前記脚柱の」「回転量」に相当する。
また、後者は、「調整を行う前記ねじ駆動高さ調整機構8を特定し、さらに前記ねじ駆動高さ調整機構8間の離間距離D、前記傾斜指示量から換算される傾斜角度Aに基づいて、前記ねじ駆動高さ調整機構8による底面部63の高さ調整量ΔHを、高さ調整量ΔH=D×sinAの式より演算」するものであるところ、同明細書の段落【0028】の「この高さ調整量ΔHだけ低い側の高さ調整機構8を高く調整するか、あるいは、高い側の高さ調整機構8を低く調整する。」との記載を考慮すると、傾斜角度Aは、特定されたねじ駆動高さ調整機構8からみて、水平を基準として正(+)となることも負(-)となることもあり得る。例えば、特定された高さ調整機構8が低ければ、傾斜角度Aは水平を基準として正となり、特定された高さ調整機構8が高ければ、傾斜角度Aは水平を基準として負となる。そうすると、sinAの値は正及び負の両方の値をとり得ることになり、これに合わせて高さ調整量ΔHも正及び負の両方の値をとり得ることになる。そして、後者は「前記高さ調整量ΔHを前記高さ調整機構8のねじピッチPで除算して調整ねじ83の回転量Rに換算し」て求めるものであるから、該「回転量R」も正及び負の両方の値をとり得ることになり、この「回転量R」の正及び負は、回転方向を表しているといえる。以上のことから、後者は、操作支援情報として、調整ねじ83の回転方向を含むものといえる。そうすると、後者の「前記調整ねじ83の前記回転量R」は、回転方向を含むといえるから、前者の「前記脚柱の回転方向及び回転量」に相当し、後者の「特定した前記ねじ駆動高さ調整機構8、前記高さ調整量ΔH、 及び前記調整ねじ83の前記回転量R」は、前者の「前記脚柱の回転方向及び回転量を含む」「前記操作支援情報」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「アジャスタ装置を備えた基板製造用装置に備えられ、前記アジャスタ装置の操作によるレベル出し作業を支援する装置であって、
前記基板製造用装置の傾きの計測結果を取得可能な情報取得部と、
予め定められた位置の前記計測結果に基づき、レベル出しに必要なアジャスタ装置の高さ補正量を求める補正量算出部と、
前記補正量だけ高さを変化させるために必要な前記アジャスタ装置の操作を教示する情報である操作支援情報を生成する支援情報生成部と、
画像により前記操作支援情報を報知することが可能な報知装置に対して前記操作支援情報を出力する情報出力部と、を備え、
前記アジャスタ装置は、ねじ軸からなる脚柱を備え、当該脚柱が回転操作を受けることにより基板製造用装置の高さを変更可能に構成され、
前記操作支援情報は、前記脚柱の回転方向及び回転量を含む、レベル出し支援装置。」
で一致し、相違点は存在しない。
2 判断
したがって、引用発明は本願発明である。
仮に、本願発明と引用発明との間に相違点が存在するとしても微差であり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、審判請求書の3.(3)において、
「請求項1発明では、情報出力部により画像及び/又は音声により報知される操作支援情報が、脚柱の回転量に加えて回転方向を含むのに対して(構成要件G)、引用文献1のものは、回転量のみで回転方向は含みません。従って、請求項1発明と引用文献1のものとは、上記構成要件Gについて構成が明らかに相違しています。」と述べるとともに、
「引用文献1の段落0028の『この高さ調整量ΔHだけ低い側の高さ調整機構8を高く調整するか、あるいは、高い側の高さ調整機構8を低く調整する。』という記載は、高さ調整量ΔHだけ低い方を高くするか、高い方を低くすれば良い、という脚柱の調整方法をただ単に説明しているだけとしか解釈できません。少なくとも、引用文献1には明示的な記載がありませんので、上記『回転量R』は文字通り、正負何れの値も取り得る物理量、すなわち正負の何れも特定されていない絶対値と解釈すべきと思料します。」
と主張している。
(2)検討
引用発明は、「調整を行う前記ねじ駆動高さ調整機構8を特定」するものであるから、特定された調整を行うねじ駆動高さ調整機構8が低ければ高くすることを、高ければ低くすることを指示するためのものと解することは妥当であり、このことは、上記1(5)で説示したとおり、回転量Rの正及び負で表していると解することに矛盾はない。
したがって、引用発明は、審判請求人が主張するような「高さ調整ΔHだけ低い方を高くするか、高い方を低くすれば良い、という脚柱の調整方法をただ単に説明しているだけ」で、「『回転量R』は文字通り、正負何れの値も取り得る物理量、すなわち正負の何れも特定されていない絶対値と解釈すべき」ものではないことが明らかであり、審判請求人の上記主張は当を得たものではなく、採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから特許法29条1項3号に該当し、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-000287