特許拒絶査定不服審判
2018-010068
静電潜像現像用キャリアの製造方法及び二成分現像剤の製造方法
- 審判番号
- 2018-010068
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-222560外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月24日
- 審決日
- 2019年09月02日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人光陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-222560「静電潜像現像用キャリアの製造方法及び二成分現像剤の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 90748、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月13日の出願であって、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年10月30日付け:拒絶理由通知書
平成29年12月27日:意見書の提出
平成30年5月8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年7月24日:審判請求書の提出
令和元年6月17日付け:拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由通知」という。)
令和元年7月11日:意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は、この出願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
1.特開2014-48455号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。
第4 本件発明
本願請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。
「 【請求項1】
芯材粒子表面が樹脂を含む被覆材によって被覆されてなるキャリア粒子を含有する静電潜像現像用キャリアの製造方法であって、
a)置換基に窒素原子を有するアゾ化合物を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第1の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
b)過硫酸塩を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第2の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
c)少なくとも前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる被覆材により芯材粒子表面を被覆し、キャリア表面に前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる被覆材を存在させる工程と、
を有することを特徴とする静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項2】
前記第1の被覆用樹脂粒子と前記第2の被覆用樹脂粒子との比が、10:90~90:10の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項3】
前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を得るために用いられる単量体のうち、前記脂環式メタクリル酸エステル単量体の割合が、全単量体質量に対して20~100質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項4】
前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を得るために用いられる前記脂環式メタクリル酸エステル単量体が、炭素数5~8の範囲内のシクロアルキル基を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項5】
前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を得るために用いられる前記脂環式メタクリル酸エステル単量体が、同一の炭素数のシクロアルキル基を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項6】
前記芯材粒子の平均形状係数が、110~140の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項7】
前記芯材粒子のメディアン径が、25~70μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項8】
前記被覆材が、乾式コート法を用いて作製されるものであることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項9】
トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナー粒子と、芯材粒子表面が樹脂を含む被覆材によって被覆されてなるキャリア粒子と、を含む二成分現像剤の製造方法であって、
a)置換基に窒素原子を有するアゾ化合物を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第1の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
b)過硫酸塩を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第2の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
c)少なくとも前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる被覆材により芯材粒子表面を被覆し、キャリア表面に前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる被覆材を存在させる工程と、
d)トナー母体粒子に外添剤を付着させてトナー粒子を形成する工程と、
e)前記被覆したキャリア粒子と前記トナー粒子を混合して二成分現像剤を得る工程と、
を有することを特徴とする二成分現像剤の製造方法。
【請求項10】
前記トナーが結晶性樹脂と非晶性樹脂を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の二成分現像剤の製造方法。」
第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前の平成26年3月17日に頒布された刊行物である特開2014-48455号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、下線は合議体が発明の認定等に用いた箇所を付与した。
(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像剤、二成分現像剤の製造方法、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置に関する。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、多数枚プリントしてもトナーの帯電量が安定で、高濃度でかぶりが無い高品質のプリント物が継続して得られ、複写機内へのトナー飛散も少ない高耐久の二成分現像剤、二成分現像剤の製造方法、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、キャリアの樹脂被覆層が、少なくとも窒素原子含有アクリル樹脂と導電性微粒子とを含有し、該樹脂被覆層の膜厚方向に対して、該芯材粒子側に含まれる窒素原子濃度が、樹脂被覆層の表面側に含まれる窒素原子濃度より高く、表面側に含まれる導電性微粒子濃度が、芯材粒子側に含まれる導電性微粒子濃度より高くすることによって樹脂被覆層が摩耗してもキャリアの帯電性と抵抗を一定範囲内に維持できることを見出し本発明に至った。
・・・(省略)・・・
【0025】
現像機内で現像剤が長期間攪拌されると、キャリア表面にスペントを生じてしまい、トナーへの帯電付与能力が低下する。ここで、スペントとは、トナーの破片やトナー母体中の成分あるいはトナーから脱離した外添剤等がキャリア表面に付着することをいう。従来、このスペントによるキャリア汚染を防ぐため、樹脂被覆層に減耗代(減耗を許容する領域)を設けて厚くし、攪拌等の機械的ストレスによって樹脂被覆層を少しずつ摩耗させることで、キャリア表面をリフレッシュして初期同様の帯電付与能力(以下帯電性ともいう。)を保持させていた。しかし、樹脂被覆層が減耗して、ある膜厚以下になると帯電性の急速な低下を生じることがあり、高耐久の現像剤としては不十分であった。
【0026】
このような問題に対して、キャリア芯材粒子近傍の窒素原子の濃度が高い構成の樹脂被覆層を有するキャリアを用いると樹脂被覆層の膜厚(層厚ともいう。)が薄くなるにつれて窒素原子の濃度の高い、すなわちプラス帯電性(トナーはマイナスに帯電する。)の高い樹脂面が表出するため、摩耗が進んでも帯電性の低下が起こらず、帯電付与能力の安定した現像剤を得ることができる。
【0027】
一方、耐久性を上げるために樹脂被覆層を厚くすると、キャリア芯材粒子よりも被覆樹脂の体積固有抵抗が大きいために、キャリアの使用初期においては、キャリアの体積抵抗値が大きくなってしまう。そのため現像性が低下し、必要な画像濃度が得られなくなってしまう。この問題を解決するため、樹脂被覆層に抵抗調整剤として導電性微粒子を含有させ、かつ芯材粒子側より表面側に導電性微粒子を多く含有させることによって、樹脂被覆層が摩耗するにしたがい、導電性微粒子の含有量が減少することの効果で、樹脂被覆層の体積抵抗値(体積抵抗率ともいう。)が大きくなる。一方、樹脂被覆層の膜厚の減少は、樹脂被覆層を有するキャリアの体積抵抗値を低下させる方向に働く。これら両方の効果がバランスして、樹脂被覆層が摩耗してもキャリアの体積抵抗値を一定の範囲内に保つことができ、長期にわたって安定した現像性を確保できたものと考えられる。
【0028】
これにより、樹脂被覆層の摩耗によるキャリアの体積抵抗値の変動を抑制することが可能となり、大量プリントによる長期使用においても画像濃度が安定し、現像剤の耐久性を大幅に向上させることができたものと考えられる。」
(2)「【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の二成分現像剤は、トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナーと、芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアとを含む二成分現像剤であって、該樹脂被覆層が、少なくとも窒素原子含有アクリル樹脂と導電性微粒子とを含有し、該樹脂被覆層の膜厚方向に対して、該芯材粒子側に含まれる窒素原子の濃度が、該樹脂被覆層の表面側に含まれる窒素原子の濃度より高く、該表面側に含まれる導電性微粒子濃度が、該芯材粒子側に含まれる導電性微粒子の濃度より高いことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項9までの請求項に係る発明に共通の技術的特徴である。
【0031】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記樹脂被覆層が、アクリル樹脂を含有し、該アクリル樹脂が、少なくとも脂環式メタクリル酸エステルと鎖式(メタ)アクリル酸エステルとを重合して得られたアクリル共重合体樹脂であることが温湿度変動に対しても帯電量の変動が小さく、キャリア表面がリフレッシュされやすく、かつ現像機内でのストレス耐性に優れるので好ましい。
【0032】
さらに、本発明においては、前記窒素原子含有アクリル樹脂が、少なくとも脂環式メタクリル酸エステルと鎖式(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたアクリル共重合体樹脂であることが、温湿度の環境変動に対しても帯電量の変動が小さく、キャリア表面がリフレッシュされやすく、かつ現像機内でのストレス耐性に優れるので好ましい。
【0033】
また、本発明においては、前記樹脂被覆層が、前記芯材粒子側の下層とその上に積層される1層以上の上層との積層構造を有し、該下層が、窒素原子の濃度が最も高く、かつ導電性微粒子の濃度が最も低い層であり、該下層における窒素原子の濃度と導電性微粒子の濃度が膜厚方向で一定であり、該上層が、膜厚方向に対して該下層側の窒素原子の濃度が表面側より高く、表面側の導電性微粒子の濃度が該下層側より高いことが、樹脂被覆層が摩耗しても帯電性と現像性が安定して維持され、耐久性が向上する効果が得られるので好ましい。
・・・(省略)・・・
【0051】
〈被覆用樹脂〉
キャリアの樹脂被覆層を形成する被覆用樹脂としては、窒素原子含有アクリル樹脂が用いられる。また被覆用樹脂としては、必要に応じて窒素原子非含有アクリル樹脂を含有することができる。窒素原子含有アクリル樹脂と窒素原子非含有アクリル樹脂とを混合して用いることにより、樹脂被覆層中の窒素原子濃度を調整することもできる。
【0052】
(窒素原子含有アクリル樹脂)
本発明において、窒素原子含有アクリル樹脂とは、アクリル樹脂の分子中に窒素原子を有する樹脂をいい、以下の二つの樹脂のことをいう。
(1)共重合成分として窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体を重合して得られる成分を含有するアクリル樹脂
(2)樹脂を合成するときに用いる重合開始剤の分子構造中に構成原子として窒素原子を有している重合開始剤を用いて得られるアクリル樹脂
・・・(省略)・・・
【0058】
(2)重合開始剤として窒素原子含有重合開始剤を用いる方法
樹脂を合成するときに窒素原子含有開始剤を使用して分子鎖末端(樹脂構造中)に窒素原子を配置して導入することができる。
【0059】
なお、窒素原子含有開始剤の分解により残る分解物が高分子鎖の末端基として残る。この末端基の分極の度合いがキャリア自身の極性と電荷付与能力を支配する。
【0060】
窒素原子含有開始剤としては、・・・(省略)・・・、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、・・・(省略)・・・を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
【0065】
図2において、1aはキャリア粒子の断面、2aは芯材粒子、3aは芯材粒子の表面、4aは樹脂被覆層、5aは樹脂被覆層の膜厚、6aは樹脂被覆層の膜厚を二分したときの表面側の樹脂被覆層、7aは樹脂被覆層の膜厚を二分したときの芯材粒子側の樹脂被覆層、8aは樹脂被覆層の表面、10aは導電性微粒子を示す。
【0066】
(樹脂被覆層中の窒素原子の濃度)
本発明で用いるキャリアは、樹脂被覆層中に窒素原子含有アクリル樹脂を含有するものであり、該樹脂被覆層の膜厚方向に対して、該芯材粒子側に含まれる窒素原子の濃度が、該樹脂被覆層の表面側に含まれる窒素原子の濃度より高いことを特徴としている。
【0067】
樹脂被覆層中の窒素原子の濃度は、樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側とに二分したとき、芯材粒子側の窒素原子の濃度が表面側の窒素原子の濃度より高いものとする。芯材粒子側の窒素原子の濃度は表面側の窒素原子の濃度の1.05倍以上であることが好ましく、1.10倍以上2.00倍以下であることが、長期の使用において安定した帯電性能を得る上でより好ましい。
・・・(省略)・・・
【0072】
(窒素原子非含有アクリル樹脂)
本発明においては、上記窒素原子含有アクリル樹脂の他に、必要に応じて窒素原子非含有アクリル樹脂を用いることができる。窒素原子非含有アクリル樹脂とは、分子構造中に構成原子として窒素原子を有していない重合開始剤を用いて重合されたアクリル樹脂、及び(メタ)アクリル酸エステルの分子構造中に窒素原子を構成成分として含まない単量体を重合して得られたアクリル樹脂をいう。
【0073】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの鎖式(メタ)アクリル酸エステルの重合体、炭素原子数3~7個のシクロアルキル環を有する(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘプチルなどの脂環式(メタ)アクリル酸エステルの重合体が挙げられる。
【0074】
本発明においては、被覆用樹脂としては、窒素原子含有アクリル樹脂及び窒素原子非含有アクリル樹脂とも脂環式メタクリル酸エステルをと鎖式メタクリル酸エステルを重合して得られた生成物を含有するアクリル樹脂が好ましく、脂環式メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘプチルが好ましい。
【0075】
中でも脂環式メタクリル酸エステルと鎖式メタクリル酸エステルを重合して得られた樹脂は、プリント時の温湿度環境が変化しても帯電量の変動が少なく好ましい。
【0076】
これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて共重合体として使用することができる。例えばメタクリル酸シクロヘキシルとメタクリル酸メチルの共重合体を用いると、キャリア表面がリフレッシュされやすく、かつ現像機内でのストレス耐性に優れるため好ましい。
・・・(省略)・・・
【0079】
《キャリアの作製》
キャリアは、芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたものである。
【0080】
芯材粒子の表面に、樹脂被覆層を設ける方法としては、湿式塗布法、乾式塗布法が挙げられ、いずれの方法でも樹脂被覆層を設けることができる。以下に各方法について説明する。
【0081】
(湿式塗布法)
・・・(省略)・・・
(乾式塗布法)
乾式塗布法は、機械的衝撃や熱を加えて被覆用樹脂を芯材粒子の表面に塗布する方法(以下、メカノケミカル法ともいう。)であり、下記の工程1、2及び3により樹脂被覆層を形成する方法
工程1:被覆しようとする被覆用樹脂粒子、必要により添加する固形物(例えば、樹脂粒子)を分散した塗布材を、芯材粒子とともに機械的に撹拌し、芯材粒子表面に塗布材を付着させる。
【0082】
工程2:その後、機械的衝撃や熱を加えて芯材粒子表面に付着させた塗布材中の被覆用樹脂粒子を溶融あるいは軟化させて固着し、樹脂被覆層を形成する。
【0083】
工程3:必要に応じ1~2の工程を繰り返し、所望の膜厚の樹脂被覆層を形成する。
・・・(省略)・・・
【0087】
(樹脂被覆層の芯材粒子側と表面側の窒素原子濃度を変化させる方法)
樹脂被覆層中の芯材粒子側と表面側の窒素原子濃度を変化させる方法としては、段階的又は連続的に窒素原子の濃度を変えて樹脂被覆層を形成する方法を挙げることができる。
段階的に窒素原子の濃度を変えた多層構成の樹脂被覆層は、窒素原子含有樹脂の種類や量を変えた樹脂被覆層を複数層形成することによって作製することができる。
【0088】
また、連続的に窒素原子の濃度を変えた樹脂被覆層を形成する方法では、窒素原子含有樹脂と窒素原子非含有樹脂を準備し、芯材粒子を投入した後、窒素原子含有樹脂の投入量を多くし、窒素原子非含有樹脂の投入量を少なくし、その後、窒素原子非含有樹脂の投入量を多くし、窒素原子含有樹脂の投入量を少なくすることで、芯材粒子側の窒素原子濃度が高く、表面側の窒素原子濃度が低い樹脂被覆層を形成することができる。
【0089】
また、スプレー塗布法では、窒素原子含有樹脂と窒素原子非含有樹脂とを混合した被覆用樹脂溶液を準備し、スプレー塗布中に窒素原子非含有樹脂の添加割合を順次連続的に増加させれば良い。
【0090】
乾式塗布法の場合は、窒素原子非含有樹脂の比率を段階的に変化させた薄層の被覆層を積層することによって窒素原子濃度を実質的に連続的に変化させることができる。
・・・(省略)・・・
【0096】
(樹脂被覆層の膜厚)
樹脂被覆層の膜厚は、耐久性を向上させるため、摩耗していくことを前提に設定される。100万枚の耐久性を得るための減耗許容膜厚としては、一般的な現像器で約1μmであり、さらにそれ以上の減耗許容膜厚を持たせることで、より高い耐久性を得ることができる。すなわち、減耗許容下限がキャリア使用時の下限の膜厚となり、積層構造の膜構造を取りうる場合には、下層となる部分である。本発明において、キャリア樹脂被覆層の下層とは、樹脂被覆層が積層構造を有する際、キャリア芯材側に最も近い層を指すものである。
【0097】
本発明においては樹脂被覆層の膜厚は1.1~3.5μmであることが高耐久性を確保する上で好ましく、100万枚以上の耐久性を確保するためには、1.5μm以上の膜厚であることが好ましい。
【0098】
しかし、樹脂被覆層が摩耗し膜厚が初期の膜厚の約35~49%まで摩耗すると、膜厚減耗速度と抵抗変動速度のバランスが崩れやすくなることが分かった。具体的には、それ以上膜厚が減少してもキャリアの体積抵抗値が下がらなくなる傾向が見られる。理由は明らかではないが、キャリア芯材粒子の表面が平滑でなく凹凸があるため、樹脂被覆層に部分的な膜厚差があり、減耗するにしたがい、その膜厚差の影響が顕著に出てくるものと推察される。
【0099】
この現象を解消するため、樹脂被覆層の総膜厚のキャリア芯材粒子側35~49%までの領域においては、窒素原子の濃度と導電性微粒子の濃度に膜厚方向の濃度差を設けず、一定(均一)とする樹脂被覆層における下層を設けることが好ましい。下層を設けることで、減耗によるキャリア体積抵抗値の急激な変動をより抑制することができると考えられる。」
(3)「【0100】
《トナー》
トナーとしては、トナー母体粒子に外添剤を付着させて得られたものが用いられる。なお、トナー母体粒子に外添剤を付着させて得られたトナーは、二成分現像剤の流動性が向上し好ましい。
【0101】
〈トナーの作製〉
トナーは、トナー母体粒子に外添剤を付着させて作製することができる。
・・・(省略)・・・
【0118】
(現像剤の作製)
本発明の二成分現像剤は、キャリアとトナーを、混合装置を用い混合することで得ることができる。」
(4)「【実施例】
【0146】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。
【0147】
《キャリアの作製》
キャリアは、以下のようにして作製した。
【0148】
〈芯材粒子の準備〉
体積平均径が60μm、飽和磁化が63A・m2/kgのMn-Mg系の「フェライト粒子1」を準備した。
【0149】
〈被覆用樹脂の作製〉
(被覆用樹脂1の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチルの各単量体を(50:50)の比率(質量比)で添加し、重合開始剤として該単量体総量の0.5質量%のペルオキソ二硫酸アンモニウムを添加して乳化重合を行い、窒素原子非含有アクリル樹脂である「被覆用樹脂1」を作製した。得られた被覆用樹脂1の重量平均分子量は50万であった。なお、重量平均分子量は公知の測定装置を用いて測定した値である。
【0150】
(被覆用樹脂2の作製)
被覆用樹脂1の作製において、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチルの各単量体を(50:50)の比率(質量比)を(95:5)の比率(質量比)に変更し、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウムを2,2′-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩に変更したほかは同様にして乳化重合を行い、窒素原子含有アクリル樹脂である「被覆用樹脂2」を作製した。得られた被覆用樹脂2の重量平均分子量は、48万であった。この被覆用樹脂2は窒素原子含有開始剤を使用して分子鎖末端(樹脂構造中)に窒素原子を配置したアクリル樹脂である。
【0151】
(被覆用樹脂3の作製)
被覆用樹脂2の作製において、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチルの各単量体をメタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチルの各単量体(93:3:4)の比率(質量比)に変更した他は同様にして乳化重合を行い、窒素原子含有アクリル樹脂である「被覆用樹脂3」を作製した。得られた被覆用樹脂3の重量平均分子量は55万であった。この被覆用樹脂3は、窒素原子を含有する単量体を重合して得られるアクリル樹脂である。
【0152】
表1に、被覆用樹脂の作製に用いた単量体、共重合比、重合開始剤と、得られた被覆用樹脂の重量平均分子量を示す。なお、ここで、単量体の比率(共重合比)は質量比を表す。
【0153】
【表1】
【0154】
〈キャリアの作製〉
(キャリア1の作製)
水平攪拌翼つき高速攪拌混合機に、キャリア芯材として上記で準備した「フェライト粒子1」100質量部と、「被覆用樹脂3」を1.20質量部投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌混合した後、120℃で50分間攪拌して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆用樹脂3からなる樹脂被覆層1(下層)を形成した。
【0155】
次に、22℃まで冷却し、「被覆用樹脂2」を2.00質量部と導電性微粒子としてカーボンブラック「Mogul-L(キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製)0.10質量部を添加し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間攪拌混合した後、120℃で50分間攪拌し、樹脂被覆層1の上に被覆用樹脂2にカーボンブラックが分散された樹脂被覆層2を形成した。
【0156】
次に、22℃まで冷却し、「被覆用樹脂1」0.50質量部とカーブンブラック「Mogul-L」0.05質量部を添加し、22℃で15分間攪拌混合した後、120℃で50分間攪拌し被覆用樹脂1にカーボンブラックが分散された樹脂被覆層3を形成した。これをキャリア1とした。
【0157】
樹脂被覆層1、2、及び3の膜厚は、それぞれ0.71μm、1.19μm、0.30μmであった。樹脂被覆層の総膜厚は2.20μmであった。
・・・(省略)・・・
【0173】
(キャリア6の作製)
水平攪拌翼つき高速攪拌混合機に、キャリア1で用いた「フェライト粒子1」100質量部と「被覆用樹脂3」0.90質量部を投入し、キャリア1と同様にして芯材粒子の表面に樹脂被覆層1(下層)を形成した。
【0174】
次に22℃まで冷却し、「被覆用樹脂1」0.45質量部と「被覆用樹脂3」0.45質量部及びカーボンブラック「Mogul-L」0.05質量部を添加し、キャリア1と同様にして樹脂被覆層1の上に、被覆用樹脂1と被覆用樹脂3の混合樹脂にカーボンブラックが分散された樹脂被覆層2を形成した。
【0175】
次に、22℃まで冷却し、「被覆用樹脂1」0.50質量部とカーボンブラック「Mogul-L」0.05質量部を添加し、キャリア1と同様にして樹脂被覆層2の上に、被覆用樹脂1にカーボンブラックが分散された樹脂被覆層3を形成した。これキャリア6とした。
【0176】
樹脂被覆層1の膜厚は、0.63μm、樹脂被覆層2の膜厚は、0.63μm、樹脂被覆層3の膜厚は0.34μm、総膜厚は1.60μmであった。
・・・(省略)・・・
【0211】
表2~表4に、キャリア1~10、及びキャリア12~14の樹脂被覆層の構成、膜厚、窒素原子の濃度比を示した。
【0212】
【表2】
・・・(省略)・・・
【0216】
《トナーの作製》
・・・(省略)・・・
【0231】
(トナー母体粒子へ外添剤の混合(トナー1の作製))
上記で作製したトナー母体粒子に、疎水性シリカ(数平均一次粒径12nm、疎水化度68)を1.0質量%、及び、疎水性酸化チタン(数平均一次粒径20nm、疎水化度64)を1.5質量%添加した。ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)を用いて混合を行った後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去することにより「トナー1」を作製した。
【0232】
《二成分現像剤1~14の作製》
上記で作製した「キャリア1~14」各々100質量部に対して「トナー1」6質量部をV型混合機に投入し、常温常湿環境下で5分間混合して「二成分現像剤1~14」を作製した。なお、二成分現像剤1~9、及び14は本発明の二成分現像剤であり、二成分現像剤10~13は比較用の二成分現像剤である。
【0233】
表5に、二成分現像剤の作製に用いたキャリアとトナーを示した。
【0234】
【表5】
【0235】
《評価》
二成分現像剤の評価装置として、市販の複写機「bizhub PRO 1250」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を準備し、プリントは、上記の複写機に上記で作製した各二成分現像剤を順次装填し、常温常湿(20℃・55%RH)、あるいは高温高湿(30℃・80%RH)の環境で以下の評価を行った。
【0236】
〈プリント画像の評価〉
(画像濃度)
画像濃度は、高温高湿(30℃、80%RH)のプリント環境で、初期(スタート)と印字率5%の文字画像をA4判の転写紙150万枚プリント後に、10cm角のベタ画像をプリントし、画像濃度を反射濃度計「RD-918(マクベス社製)」でランダムに10カ所測定し、その平均濃度で評価した。なお、◎と○を合格とした。
【0237】
画像濃度評価基準
◎:画像濃度が1.40以上
○:画像濃度が1.20以上1.40未満
×:画像濃度が1.20未満
画像濃度差評価基準
◎:初期の1500kP後の濃度差が、0.005未満
○:初期と1500kP後の濃度差が、0.005以上、0.10未満
×:初期と1500kP後の濃濃度差が0.10以上
(かぶり)
かぶりは、常温常湿(20℃・50%RH)のプリント環境で、印字率5%の文字画像をA4判の転写紙100万枚、150万枚プリント後、それぞれ白紙をプリントし、転写材の白紙濃度で評価した。転写材の白紙濃度はA4判の20カ所を測定し、その平均値を白紙濃度とする。濃度測定は反射濃度計「RD-918」(マクベス社製)を用いて行った。なお、◎と○を合格とした。
【0238】
評価基準
◎:かぶり濃度が、0.003未満で良好なレベル
○:かぶり濃度が、0.003以上、0.010未満で実用上問題ないレベル
×:かぶり濃度が、0.010以上で実用上問題となるレベル。
【0239】
(トナー飛散)
トナー飛散は、常温常湿(20℃・50%RH)の環境下で、印字率を0%、5%、30%と3段階の帯画像をA4判の転写紙1000枚単位での繰り返しにより行った。100万枚、150万枚プリント後、トナーの複写機内への飛散状況を目視で観察し評価した。なお、トナー飛散は○と△を合格とした。
【0240】
評価基準
○:現像機汚れが検知できず良好
△:現像機汚れが検知できる(わずかに現像機周りにトナー飛散が見られる程度)
×:現像機汚れが検知でき、画像上にこぼれたトナーが検知できる。
【0241】
表6に、評価結果を示した。
【0242】
【表6】
【0243】
表6に示したように、本発明の「二成分現像剤1~9、及び14」は、150万枚プリントしても画像濃度が安定して、かぶりが無い高品質のプリント物を継続して得られ、トナーの機内飛散が無く、本発明の効果を奏していることが確認された。一方、比較用の「二成分現像剤10~13」では上記評価項目のいずれかに問題があり本発明の効果を奏していないことが確認された。」
(5)「【図2】
」
2 引用発明
(1) 引用発明1
前記1の記載事項(4)に基づけば、引用文献1には、「キャリア6の作製方法」に関する事項が記載されている。そうしてみると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていたと認める。
「 ベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチルの各単量体を(50:50)の比率(質量比)で添加し、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウムを添加して乳化重合を行い、窒素原子非含有アクリル樹脂である「被覆用樹脂1」を作製し、
ベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチルの各単量体を(93:3:4)の比率(質量比)で添加し、重合開始剤として2,2′-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩を添加して乳化重合を行い、窒素原子含有アクリル樹脂である「被覆用樹脂3」を作製し、
水平攪拌翼つき高速攪拌混合機に、フェライト粒子と、「被覆用樹脂3」を投入し、機械的衝撃力の作用で芯材粒子の表面に被覆用樹脂3からなる樹脂被覆層1(下層)を形成し、次に、「被覆用樹脂1」と「被覆用樹脂3」及びカーボンブラックを添加し、樹脂被覆層1の上にカーボンブラックが分散された樹脂被覆層2を形成し、次に、「被覆用樹脂1」とカーボンブラックを添加し、樹脂被覆層2の上に、カーボンブラックが分散された樹脂被覆層3を形成する、
キャリア6の作製方法。」
(2) 引用発明2
前記1の記載事項(4)に基づけば、引用文献1には、「二成分現像剤6の作製」に関する事項が記載されている。そうしてみると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていたと認める。
「 トナー母体粒子に、疎水性シリカ及び、疎水性酸化チタンを添加し、混合を行った後、粗大粒子を除去することにより「トナー1」を作製し、
作製した「キャリア6」100質量部に対して「トナー1」6質量部をV型混合機に投入し、混合する
二成分現像剤6の作製方法。」
第6 対比・判断
1 本件発明1
(1) 引用発明1との対比
ア 第1の被覆用樹脂粒子を得る工程
引用発明1の「キャリア6の作製」は、「被覆用樹脂3」を作製する工程を含む。また、引用発明1の「被覆用樹脂3」は、「メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチルの各単量体を(93:3:4)の比率(質量比)で添加し、重合開始剤として2,2′-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩を添加して乳化重合を行」って作製されるものである。
ここで、引用発明1の「メタクリル酸シクロヘキシル」は、技術常識からみて、「脂環式メタクリル酸エステル単量体」である。また、引用発明1の「2,2′-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩」は、その名称が意味する化学構造からみて、「アゾ化合物」である(なお、本願明細書の段落【0034】には、「2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド」(技術常識からみて、引用発明1でいう「2,2′-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩」と同じ化合物)が、「アゾ化合物」であることが記載されている。)。
そうしてみると、引用発明1の「被覆用樹脂3」の作製工程は、本件発明1の「a)置換基に窒素原子を有するアゾ化合物を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第1の被覆用樹脂粒子を得る工程」に相当する。
イ 第2の被覆用樹脂粒子を得る工程
引用発明1の「キャリア6の作製」は、「被覆用樹脂1」を作製する工程を含む。また、引用発明1の「被覆用樹脂1」は、「メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチルの各単量体を(50:50)の比率(質量比)で添加し、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウムを添加して乳化重合を行」って作製されるものである。
ここで、引用発明1の「メタクリル酸シクロヘキシル」は、技術常識からみて、「脂環式メタクリル酸エステル単量体」である。また、引用発明1の「ペルオキソ二硫酸アンモニウム」は、その名称が意味する化学構造からみて、「過硫酸塩」である。
そうしてみると、引用発明1の「被覆用樹脂1」の作製工程は、本件発明1の「b)過硫酸塩を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第2の被覆用樹脂粒子を得る工程」に相当する。
ウ 被覆材により芯材粒子表面を被覆する工程
引用発明1の「キャリアの作製」は、「フェライト粒子1」からなる「芯材粒子の表面に被覆用樹脂3からなる樹脂被覆層1(下層)を形成し」、次に、「樹脂被覆層1の上」に、「被覆用樹脂1」と「被覆用樹脂3」からなる「樹脂被覆層2」を形成し、次に、「樹脂被覆層2の上」に、「被覆用樹脂1」からなる「樹脂被覆層3を形成」する工程を含む。
引用発明1の「キャリア6」は、「芯材粒子の表面に被覆用樹脂3からなる樹脂被覆層1(下層)」が形成されたものであるから、「芯材粒子表面が樹脂を含む被覆材によって被覆されてなる」ものである。また、引用発明1の「キャリア6」は、その製法からみて、表面に「樹脂被覆層3」が形成されているから、「キャリア表面に」「被覆材を存在させる」ものである。
そうしてみると、引用発明1の「芯材粒子の表面」を「樹脂被覆層」で被覆する工程と、本件発明1の「少なくとも前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる被覆材により芯材粒子表面を被覆し、キャリア表面に前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる被覆材を存在させる工程」とは、「被覆材により芯材粒子表面を被覆し」、「キャリア表面に」「被覆材を存在させる工程」の点で共通する。
エ 静電潜像現像用キャリアの製造方法
引用発明1は、「キャリア6の作製方法」である。
ここで、引用発明1の「キャリア6の作製方法」は、「キャリア6の製造方法」といえる。また、引用発明1の「キャリア6」は、技術常識からみて、「静電潜像現像用キャリア」である。
そうしてみると、引用発明1の「キャリア6の作製方法」は、本件発明1の「芯材粒子表面が樹脂を含む被覆材によって被覆されてなるキャリア粒子を含有する静電潜像現像用キャリアの製造方法」に相当する。
(2) 一致点
以上より、本件発明1と引用発明1は、以下の点で一致する。
「 芯材粒子表面が樹脂を含む被覆材によって被覆されてなるキャリア粒子を含有する静電潜像現像用キャリアの製造方法であって、
a)置換基に窒素原子を有するアゾ化合物を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第1の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
b)過硫酸塩を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第2の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
c)被覆材により芯材粒子表面を被覆し、キャリア表面に被覆材を存在させる工程と、
を有する静電潜像現像用キャリアの製造方法。」
(3)相違点
本件発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。
(相違点)
「キャリア表面に」「被覆材を存在させる工程」が、本件発明1は、「前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる」のに対して、引用発明1は、「「被覆用樹脂1」を添加し、樹脂被覆層2の上に、樹脂被覆層3を形成する」工程である点。
(4)判断
ア 引用文献1の段落【0011】には、「その解決課題は、多数枚プリントしてもトナーの帯電量が安定で、高濃度でかぶりが無い高品質のプリント物が継続して得られ、複写機内へのトナー飛散も少ない高耐久の二成分現像剤、二成分現像剤の製造方法、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することである。」と記載されていることから、引用発明1は、「多数枚プリントしてもトナーの帯電量が安定」していること及び「高濃度でかぶりが無い高品質のプリント物が継続して得られ」ることが、所望の効果であると考えられる。
一方、本件発明1は、本願明細書【0002】及び【0004】の記載に基づけば、トナー粒子の「帯電量を向上しつつ、温湿度環境の変化による帯電量の変動を抑制」することが解決しようとする課題である。そして、本願明細書の段落【0017】には、「第1の被覆用樹脂粒子及び第2の被覆用樹脂粒子を得るための単量体として、共に脂環式メタクリル酸エステル単量体を用いることで、樹脂の混合性が良くなる。さらに、均一に混合することができるため、窒素元素の高帯電性とスルホン酸基又はスルホン酸塩基の環境特性の両方の性能を発揮でき、一方の樹脂では調整できないレベルで帯電量の向上と温湿度環境の変化に伴う帯電量変動の低減を実現できる」と記載されており、「前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる」「被覆材」を具備する「キャリア1~22」を使用した実施例の結果(段落【0166】【表4】)も、そのことを裏付けている。
そうしてみると、引用文献1に記載された課題は、本件発明1が解決しようとする課題と相違するものである。
その他、引用文献1の記載を参酌しても、引用文献1には、相違点に係る本件発明1の構成は記載されておらず、また、これを採用する示唆もない。
イ また、引用文献1の段落【0066】には、「本発明で用いるキャリアは、・・・(省略)・・・、該樹脂被覆層の膜厚方向に対して、該芯材粒子側に含まれる窒素原子の濃度が、該樹脂被覆層の表面側に含まれる窒素原子の濃度より高いこと」が記載されており、これにより、「キャリア芯材粒子近傍の窒素原子の濃度が高い構成の樹脂被覆層を有するキャリアを用いると樹脂被覆層の膜厚(層厚ともいう。)が薄くなるにつれて窒素原子の濃度の高い、すなわちプラス帯電性(トナーはマイナスに帯電する。)の高い樹脂面が表出するため、摩耗が進んでも帯電性の低下が起こらず、帯電付与能力の安定した現像剤を得ることができる。」(段落【0026】)という、効果を得られることが記載されている。
加えて、引用文献1の段落【0096】には、「樹脂被覆層の膜厚は、耐久性を向上させるため、摩耗していくことを前提に設定され」、「減耗許容下限がキャリア使用時の下限の膜厚となり、積層構造の膜構造を取りうる場合には、下層となる」ことが記載され、段落【0099】には、「樹脂被覆層の総膜厚のキャリア芯材粒子側35~49%までの領域においては、窒素原子の濃度と導電性微粒子の濃度に膜厚方向の濃度差を設けず、一定(均一)とする樹脂被覆層における下層を設けること」及び「下層を設けることで、減耗によるキャリア体積抵抗値の急激な変動をより抑制することができる」ことが記載されている。さらに、引用文献1の段落【0176】には、樹脂被覆層1の膜厚が「キャリア6」の樹脂被覆層の総膜厚の約39%であることが記載されている。(合議体注:段落【0176】の記載によると、樹脂被覆層1の膜厚は、0.63μm、総膜厚は1.60μmであるから、総膜厚に対する樹脂被覆層1の膜厚の割合を計算すると、0.63/1.60=0.394=約39%となる。)
そうしてみると、引用発明1の「樹脂被覆層1」は、「樹脂被覆層」における「減耗許容下限」よりも芯材側に設けられた「減耗によるキャリア体積抵抗値の急激な変動をより抑制する」ための層にすぎないから、引用発明1の「キャリア6」は、「被覆用樹脂3」と「被覆用樹脂1」の混合物からなる「樹脂被覆層2」及び「被覆用樹脂1」からなる「樹脂被覆層3」を順次積層して構成することにより、「該芯材粒子側に含まれる窒素原子の濃度が、該樹脂被覆層の表面側に含まれる窒素原子の濃度より高」くなるように調整したものと認められる。
したがって、引用発明1の「キャリア6の作製方法」において、「樹脂被覆層3」を除き、樹脂被覆層を上記「下層」である「樹脂被覆層1」と「樹脂被覆層2」のみで構成すると、引用発明の段落【0026】に記載された、「摩耗が進んでも帯電性の低下が起こらず、帯電付与能力の安定した現像剤を得ることができる」という効果が損なわれることとなる(阻害要因がある。同様に、導電性微粒子(カーボンブラック)に関する、引用文献1の段落【0027】に記載の効果も損なわれることになるから、この観点からも阻害要因がある。)。そうしてみると、当業者が、「キャリア6」から「樹脂被覆層3」を除き、樹脂被覆層を上記「下層」である「樹脂被覆層1」と「樹脂被覆層2」のみとする構成を採用するとは考え難い。
以上より、引用文献1の記載からは、引用発明1の「キャリア6の作製」において、「樹脂被覆層3」を除き、「樹脂被覆層2」がキャリア表面に存在させるようにする構成には到らない。
ウ 加えて、引用文献1の段落【0067】には、「樹脂被覆層中の窒素原子の濃度は、樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側とに二分したとき、芯材粒子側の窒素原子の濃度が表面側の窒素原子の濃度より高いものとする。芯材粒子側の窒素原子の濃度は表面側の窒素原子の濃度の1.05倍以上であることが好ましく、1.10倍以上2.00倍以下であることが、長期の使用において安定した帯電性能を得る上でより好ましい。」と記載されている。
したがって、引用発明1の「キャリア6の作製」において、キャリアの表面に存在する「樹脂被覆層3」に、「窒素原子含有アクリル樹脂」である「被覆用樹脂3」を混合する構成を設けると、作製されるキャリアは「キャリア6」と比べ、「表面側の窒素原子の濃度」に対する「芯材粒子側の窒素原子の濃度」の倍率は小さくなり、引用文献1の段落【0066】に記載された、「長期の使用において安定した帯電性能を得る」という効果が損なわれることとなる。そうしてみると、当業者が、キャリアの表面に存在する「樹脂被覆層3」に、「窒素原子含有アクリル樹脂」である「被覆用樹脂3」を混合する構成を採用するとは考え難い(引用文献1の段落【0212】の【表2】の記載から明らかなとおり、引用文献1の実施例のキャリア(キャリア1~キャリア9)の表層の樹脂が、全て「樹脂1」(窒素原子非含有アクリル樹脂)であり、「樹脂3」が含まれていないことを考慮すると、引用発明1の「樹脂被覆層3」に「窒素原子含有アクリル樹脂」である「被覆用樹脂3」を混合して相違点に係る本件発明1の構成を具備したものとすることは、本件発明1の構成を知った上での後知恵である。)。
以上より、引用文献1の記載からは、引用発明1の「キャリア6の作製」において、「芯材粒子」を被覆する「樹脂被覆層1」に「被覆用樹脂1」を混合し、「樹脂被覆層3」に「被覆用樹脂3」を混合して、樹脂被覆層の各層に「被覆用樹脂1」及び「樹脂被覆層3」含有させるという構成には到らない。
エ したがって、引用文献1の上記記載は、引用発明1の「キャリア6の作製」において、「前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる」被覆材を具備させる動機づけとはならない。また、引用文献1には、この他に、引用発明1の「キャリア6の作製」に「前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる」被覆材を具備させる動機づけとなりうる記載はない。
オ さらに、本件発明1の上記相違点に係る構成とすることが、本願出願日前において当該技術分野において周知又は公知であったということもできない。
(5)小括
以上のとおりであるから、引用発明1において、本件発明1の上記相違点に係る構成とすることは、当業者であっても、容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。
2 本件発明2~8
本件発明2~8は、「キャリア表面に」「被覆材を存在させる工程」が、「前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる」という構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本件発明2~8も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。
3 本件発明9
(1) 一致点
引用発明1の場合と同様にして本件発明9と引用発明2を対比すると、本件発明9と引用発明2は、以下の点で一致する。
「 トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナー粒子と、芯材粒子表面が樹脂を含む被覆材によって被覆されてなるキャリア粒子と、を含む二成分現像剤の製造方法であって、
a)置換基に窒素原子を有するアゾ化合物を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第1の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
b)過硫酸塩を重合開始剤として用い、脂環式メタクリル酸エステル単量体を重合させて第2の被覆用樹脂粒子を得る工程と、
c)被覆材により芯材粒子表面を被覆し、キャリア表面に被覆材を存在させる工程と、
d)トナー母体粒子に外添剤を付着させてトナー粒子を形成する工程と、
e)前記被覆したキャリア粒子と前記トナー粒子を混合して二成分現像剤を得る工程と、
を有することを特徴とする二成分現像剤の製造方法。」
(2)相違点
本件発明9と引用発明2は、以下の点で相違する。
(相違点)
「キャリア表面に」「被覆材を存在させる工程」が、本件発明9は、「前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる」のに対して、引用発明2は、「「被覆用樹脂1」を添加し、樹脂被覆層2の上に、樹脂被覆層3を形成する」工程である点。
(3)判断
前記1(4)での検討内容と同様に、引用発明2において、本件発明9の上記相違点に係る構成とすることは、当業者であっても、容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明9は、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。
2 本件発明10
本件発明10は、「キャリア表面に」「被覆材を存在させる工程」が、「前記第1の被覆用樹脂粒子及び前記第2の被覆用樹脂粒子を混合させて得られる」という構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本件発明10も、本件発明9と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。
第7 当審拒絶理由通知(特許法第36条第6項第1号)について
本件補正により、当審が通知した拒絶の理由は解消した。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明1~10は、当業者が引用発明1又は2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-010068