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特許拒絶査定不服審判

2018-008316

BaTi(1-y)Zry03をベースにしたセラミック多層デバイス

審判番号
2018-008316
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-519820外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年06月18日
審決日
2019年09月26日
公報発行日
2020年03月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-519820「BaTi(1-y)Zry03をベースにしたセラミック多層デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 9日国際公開、WO2015/049081、平成28年12月 1日国内公表、特表2016-537807〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2014年9月1日(優先権主張 2013年10月2日 DE)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 7月20日付け:拒絶理由通知書 平成29年10月26日  :意見書、手続補正書の提出 平成30年 2月 9日付け:拒絶査定 平成30年 6月18日  :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成29年10月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数のセラミック層(2)および当該セラミック層間に配設された複数の第1の電極層(3)および複数の第2の電極層(4)を有する1つの基体(1)を備えたセラミック多層コンデンサであって、 前記セラミック層(2)は、温度依存の静電容量特異性を有するBaTi1-yZryO3、0≦y≦1をベースにしたセラミック材料を含み、 前記セラミック材料は、Pb,Ca,Sn,Sr,Bi,Hf,およびNbから選択された1つ以上の金属を含み、 かつ/または、前記セラミック材料は、Ni,Al,Mg,Fe,Cr,およびMnから選択された1つ以上の金属を含み、 かつ/または、前記セラミック材料は、Si,Al,B,Cu,およびZnから選択された1つ以上の金属を含み、 かつ/または、前記セラミック材料は、異なるセラミック相の固溶体または混合物を含み、追加的に以下の1つ以上の材料、 -ジルコン酸塩、ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、-希土類の酸化物、具体的にはSc,Y,La,Ce,Pr,Ndの酸化物、 -1A族の金属酸化物、2A族の金属酸化物、 -耐火性酸化物、具体的にはTi,V,Cr,Mn,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの耐火性金属酸化物、 -Al,Si,Sn,Pb,Biの金属酸化物、を含む、 ことを特徴とする多層コンデンサ。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1-4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開昭57-191231号公報 引用文献2.特開2008-189542号公報 引用文献3.特開平11-292637号公報 引用文献4.特開平08-138968号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。 a 「一般にチタン酸バリウム(BaTiO3)のような高誘電率を有する材料をコンデンサ等の電子部品用の材料として用いる場合に、その特性を希望通りに制御するため、各種の添加剤を加える技術が知られている。代表的な高誘電率材料であるBaTiO3を例にとって、この添加剤の効果を説明すると、BaTiO3の場合に単味ではキューリー点(Tc)は約120℃である。キューリー点における比誘電率は6.000~10.000で25℃における比誘電率は約1.500である。このBaTiO3の高誘電率材料をコンデンサに使用する場合に、次の2つの理由で添加剤を加える必要がある。」(第1頁右下欄第13行-第2頁左上欄第5行) b 「すなわち、その第一の理由はBaTiO3の比誘電率がキューリー点付近で最大となり、その前後の温度では比較的小さいので、電子部品が通常使用される温度付近にキューリー点があることが望ましいからである。通常約120℃にあるBaTiO3のキューリー点を常温付近に移動させる目的のために添加される添加剤をシフターという。」(第2頁左上欄第6-12行) c 「シフターとしては一般にチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、錫酸バリウム(BaSnO3)、錫酸カルシウム(CaSnO3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)などが利用されている。第1図、第2図および第3図にBaTiO3の添加剤としてのSrTiO3、BaSnO3、BaZrO3のシフター特性を示す(岡崎清著:セラミック誘電体工学より)。この図から明らかなように、BaTiO3のキューリー点は添加剤の量を15mol%とするとき、SrTiO3の場合には約40℃まで移動し、BaZrO3の場合には約60℃まで移動するが、BaSnO3の場合は約20℃まで移動し、しかもその比誘電率も12,000以上と、RrTiO3、BaZrO3に比べ著しく大きい。」(第2頁右上欄第5-17行) 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 (1)引用文献1に記載された技術は、コンデンサ用の材料に関するものである(上記a)。 (2)BaTiO3の比誘電率がキューリー点付近で最大となり、その前後の温度では比較的小さい(上記b)。 (3)BaTiO3にBaZrO3を添加し、キューリー点を約60℃まで移動する(上記c)。 上記(1)-(3)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「BaTiO3 にBaZrO3 を添加し、キューリー点を約60℃まで移動したコンデンサ用の材料であって、BaTiO3 の比誘電率は、キューリー点付近で最大となりその前後の温度では比較的小さくなるコンデンサ用の材料。」 2 引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0003】 かかるコンデンサ内蔵多層セラミック基板では、一般的に、グリーンシート上に導体ペーストを塗付し、この導体ペースト上に誘電体ペーストを塗付し、この誘電体ペースト上に導体ペーストを塗付した後、その上に別のグリーンシートを積層一体化させて同時焼成することによって、二つの電極の間に誘電体が狭持されたコンデンサをセラミック基板の間に形成させることができる。 かかるコンデンサを作製するために用いられる誘電体ペーストとしては、従来、{(Ba1-xCax)O}m(Ti1-yZry)O2(但し、0.02≦x≦0.22、0.05≦y≦0.20、1.00≦m≦1.05)で表される誘電体成分と、Bi2O3-SiO2系ガラス成分とを含むものがある(例えば、特許文献1参照)。この誘電体ペーストは、比誘電率の高い誘電体を与えることができる。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明は「比誘電率は、キューリー点付近で最大となりその前後の温度では比較的小さくなる」のであるから、その「比誘電率」は、「キューリー点」を極大値とする温度依存性を有している。そして、引用発明は、「コンデンサ用の材料」に関するものであるから、「比誘電率」の温度依存性は、静電容量の温度依存であるといえ、このことは、本願発明の「温度依存の静電容量特異性」に相当する。 また、引用発明の「BaTiO3 にBaZrO3 を添加し」たものは、本願発明の「BaTi1-yZryO3、0≦y≦1」に含まれる。 そうすると、引用発明の「BaTiO3 にBaZrO3 を添加し、」「BaTiO3 の比誘電率は、キューリー点付近で最大となりその前後の温度では比較的小さくなるコンデンサ用の材料」は、本願発明の「温度依存の静電容量特異性を有するBaTi1-yZryO3、0≦y≦1をベースにしたセラミック材料」に相当する。 但し、本願発明は、「複数のセラミック層(2)」「を備えたセラミック多層コンデンサであって、前記セラミック層(2)は、」「セラミック材料を含」む「多層コンデンサ」であるの対して、引用発明は、「コンデンサ用の材料」の特定にとどまる点で相違する。 また、本願発明は、「前記セラミック材料は、Pb,Ca,Sn,Sr,Bi,Hf,およびNbから選択された1つ以上の金属を含み、かつ/または、前記セラミック材料は、Ni,Al,Mg,Fe,Cr,およびMnから選択された1つ以上の金属を含み、かつ/または、前記セラミック材料は、Si,Al,B,Cu,およびZnから選択された1つ以上の金属を含み、かつ/または、前記セラミック材料は、異なるセラミック相の固溶体または混合物を含み、追加的に以下の1つ以上の材料、-ジルコン酸塩、ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、-希土類の酸化物、具体的にはSc,Y,La,Ce,Pr,Ndの酸化物、-1A族の金属酸化物、2A族の金属酸化物、-耐火性酸化物、具体的にはTi,V,Cr,Mn,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの耐火性金属酸化物、-Al,Si,Sn,Pb,Biの金属酸化物、を含む」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。 すると、本願発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。 (一致点) 「温度依存の静電容量特異性を有するBaTi1-yZryO3、0≦y≦1をベースにしたセラミック材料。」 (相違点1) 本願発明は、「複数のセラミック層(2)および当該セラミック層間に配設された複数の第1の電極層(3)および複数の第2の電極層(4)を有する1つの基体(1)を備えたセラミック多層コンデンサであって、前記セラミック層(2)は、」「セラミック材料を含」む「多層コンデンサ」であるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点2) 本願発明は、「前記セラミック材料は、Pb,Ca,Sn,Sr,Bi,Hf,およびNbから選択された1つ以上の金属を含み、かつ/または、前記セラミック材料は、Ni,Al,Mg,Fe,Cr,およびMnから選択された1つ以上の金属を含み、かつ/または、前記セラミック材料は、Si,Al,B,Cu,およびZnから選択された1つ以上の金属を含み、かつ/または、前記セラミック材料は、異なるセラミック相の固溶体または混合物を含み、追加的に以下の1つ以上の材料、-ジルコン酸塩、ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、-希土類の酸化物、具体的にはSc,Y,La,Ce,Pr,Ndの酸化物、-1A族の金属酸化物、2A族の金属酸化物、-耐火性酸化物、具体的にはTi,V,Cr,Mn,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの耐火性金属酸化物、-Al,Si,Sn,Pb,Biの金属酸化物、を含む」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 第6 判断 上記相違点について検討する。 1 相違点1について 複数のセラミック層およびセラミック層間に配設された複数の電極層を有するセラミック多層コンデンサは、例示するまでもなく周知である。 引用発明の「コンデンサ用の材料」を用いてコンデンサを作成する際に、所望の容量を得るために上記周知の電極層の多層構造を適用し、上記相違点1に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 2 相違点2について 引用文献2には、比誘電率の高い誘電体を達成するために、{(Ba1-xCax)O}m(Ti1-yZry)O2(但し、0.02≦x≦0.22、0.05≦y≦0.20、1.00≦m≦1.05)で表されるセラミック材料と、Bi2O3-SiO2系ガラス成分とを含む、コンデンサ用の材料が記載されている(上記「第4 2」)。ここで、上記コンデンサ用の材料は、m=1のときに{(Ba1-xCax)O}(Ti1-yZry)O2 となり、BaTi1-yZryO3をベースにしたセラミック材料に、Ca及びBi2O3-SiO2系ガラス成分とを追加したものであるといえる。 一方、本願発明は「前記セラミック層(2)は、温度依存の静電容量特異性を有するBaTi1-yZryO3、0≦y≦1をベースにしたセラミック材料を含み、 (A)前記セラミック材料は、Pb,Ca,Sn,Sr,Bi,Hf,およびNbから選択された1つ以上の金属を含み、 かつ/または、(B)前記セラミック材料は、Ni,Al,Mg,Fe,Cr,およびMnから選択された1つ以上の金属を含み、 かつ/または、(C)前記セラミック材料は、Si,Al,B,Cu,およびZnから選択された1つ以上の金属を含み、 かつ/または、(D)前記セラミック材料は、異なるセラミック相の固溶体または混合物を含み、追加的に以下の1つ以上の材料、 -ジルコン酸塩、ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、-希土類の酸化物、具体的にはSc,Y,La,Ce,Pr,Ndの酸化物、 -1A族の金属酸化物、2A族の金属酸化物、 -耐火性酸化物、具体的にはTi,V,Cr,Mn,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの耐火性金属酸化物、 -Al,Si,Sn,Pb,Biの金属酸化物、を含む」のであるから((A)(B)(C)(D)は、当審で付した。)、 「BaTi1-yZryO3、0≦y≦1をベースにしたセラミック材料」に、(A)、(B)、(C)または(D)を含めたものである。 そうすると、本願発明は、(A)ないし(D)のいずれかを満たせば足りるところ、引用文献2で使用されるCaは(A)の構成に相当する。また、引用文献2で使用されるBi2O3-SiO2系ガラス成分は(D)の構成に相当する。 そして、コンデンサにおいて、誘電体の比誘電率を高くすることは一般的な課題であるから、引用発明の「コンデンサ用の材料」であるBaTi1-yZryO3をベースにしたセラミック材料を用いてコンデンサを作成する際に、引用文献2に記載されたBaTi1-yZryO3をベースにしたセラミック材料に、Ca及びBi2O3-SiO2系ガラス成分を追加する技術を適用し、誘電体の比誘電率を高くすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、引用発明に、引用文献2に記載された技術を適用し、上記相違点2に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、上記相違点(1)及び(2)を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-008316

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