特許拒絶査定不服審判
2024-006589
2チャンネル検出器
- 審判番号
- 2024-006589
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-514206
- 請求日
- 2024年04月18日
- 審決日
- 2025年06月25日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】弁理士法人相原国際知財事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 喜々津 徳胤
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-514206「2チャンネル検出器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月 3日国際公開、WO2021/104967、令和 5年 1月11日国内公表、特表2023-500772〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)11月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年11月28日(以下「優先日」という。)、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 5月18日 :翻訳文、上申書、手続補正書の提出
令和5年 6月 1日付け:拒絶理由通知書
同年12月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月20日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 4月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項26に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年4月18日に提出された手続補正書により補正された請求項26に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
なお、上記補正後の請求項26は、上記補正前の請求項27に対応するものであり、上記補正の前後でその内容に変更はない。
「【請求項26】
検出器であって、
基板(5)と、
第1のチャンネル(1)と、第2のチャンネル(2)と、を含み、
前記第1のチャンネル(1)は、前記基板(5)の上に取り付けられた複数の第1のセンサ(3)と、第1の接触部位を介して前記第1のセンサ(3)に接続された第1の評価ユニット(6)と、を含み、
前記第2のチャンネル(2)は、前記基板(5)の上に取り付けられた複数の第2のセンサ(4)と、第2の接触部位を介して前記第2のセンサ(4)に接続された第2の評価ユニット(7)と、を含み、
前記複数の第1のセンサ(3)は、前記基板(5)の上で、前記複数の第2のセンサ(4)と横方向に交互に配置されており、
前記第1のセンサ(3)と前記第2のセンサ(4)は、同じ物理量を測定するように設計されており、また、両センサに均等に作用する外的刺激に反応して、値は同じで極性が逆となる測定信号を出力するように設計されている、検出器。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】、【図2】、【図6】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
X 検出器であって、
A 基板(5)と、
第1のチャンネル(1)と、第2のチャンネル(2)と、を含み、
B 前記第1のチャンネル(1)は、前記基板(5)の上に取り付けられた複数の第1のセンサ(3)と、第1の接触部位を介して前記第1のセンサ(3)に接続された第1の評価ユニット(6)と、を含み、
C 前記第2のチャンネル(2)は、前記基板(5)の上に取り付けられた複数の第2のセンサ(4)と、第2の接触部位を介して前記第2のセンサ(4)に接続された第2の評価ユニット(7)と、を含み、
D 前記複数の第1のセンサ(3)は、前記基板(5)の上で、前記複数の第2のセンサ(4)と横方向に交互に配置されており、
E 前記第1のセンサ(3)と前記第2のセンサ(4)は、同じ物理量を測定するように設計されており、また、両センサに均等に作用する外的刺激に反応して、値は同じで極性が逆となる測定信号を出力するように設計されている、
X 検出器。
<参考図>
【図1】
[図:0001429546000001.jpg]
【図2】
[図:0001429546000002.jpg]
【図6】
[図:0001429546000003.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体による。
「【技術分野】
【0002】
人間と機械との間の空間的及び時間的な相互作用がますます密接になっている結果、センサシステムにおける従来の技術は、限定的にしか使用され得ないか、又は、協調動作のために完全に新しく重畳されなければならなくなっている。主眼は、如何なる種類の衝突も検出及び回避すること、又は、衝突の場合の機械を安全に停止させることにある。このために、適切な検出器及びセンサシステムが必要となる。更に、そのような検出器及びセンサシステムは、基本的に、発生する内部の誤動作を検出することができなければならない。そのような誤動作は、例えばセンサの誤った検出又は電子機器による誤った信号処理に起因して、発生する可能性がある。
【0003】
この場合、それぞれのセンサシステムは、採用される技術に応じて異なる監視領域を有する。例えば、光学及び音響システムは、どちらかと言えば比較的大きな距離の検出において、接触保護ストリップをベースとするシステムは、すぐ近くの領域での検出のために、それぞれ採用される。
【0004】
しかしながら、古典的な接触検出システムは、協働動作中の機械の接触検出に限定的に適しているにすぎない。それぞれのプロセスの危険性分析に対応して、機械の潜在的に危険な部分には、それぞれ適切なセンサシステムが装備されなければならない。
【0005】
特許文献1から、このために使用可能な感圧検出器が知られており、それは、圧電性感圧層によって機械的な変形を検出することができ、検出の後に元の状態に戻る。
【0006】
特許文献2には、更に、プラスチック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から成る強誘電性機能層を有する、平坦な単層の圧力センサが記載されている。
【0007】
非特許文献1では、その機能層の材料の特性に起因して、圧力及び熱の両方に反応するセンサが開示される。センサに接続された評価ユニットは、その信号を評価し、圧力と熱とを区別する。
【0008】
特許文献3から、印刷された接触センサが知られている。この場合、局所分解能を改善するために、2つの独立したセンサ層が、層に含まれる個々のセンサ点が一致するように、基板の同じ側又は対向する両側に配置される。
【0009】
特許文献4から、垂直方向に重なり合って配置された2つのセンサ層を有する装置が知られており、その場合、2つのセンサ層は、センサシステムの機能性がこれによって改善又は悪化することなく、異なる極性を有することができる。
【0010】
センサ・マトリクスを用いて、検出されるべき物理量の空間分解能が達成され得ることも、知られている。
【0011】
公知のセンサ装置の問題は、センサシステム又は処理電子機器の誤動作が、更なる補助手段なしには確認され得ない点にある。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の課題は、測定誤差及び信号処理エラーの検出を暗黙的に可能にする検出器を提供することである。」
「【0029】
図1は、第1のチャンネル1及び第2のチャンネル2を含む検出器の一実施形態の概略図を示す。第1のチャンネルは、正の極性を有する第1のセンサ3を含む。第2のチャンネルは、負の極性を有する第2のセンサ4を含む。2つのセンサ3及び4は、基板5の上で横方向に隣接して取り付けられており、それらの端部で接触部位を介して評価ユニット6及び7に接続されている。第1のセンサ3は、第1の評価ユニット6に接続されている。第2のセンサ4は、第2の評価ユニット7に接続されている。
【0030】
図2は、圧力又は接触を検出するための、図1に概略的に示された2チャンネル検出器の、可能な特定の実施形態を示す。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリイミド(PI)のようなプラスチックから成る基板5は、機械的にフレキシブルである。正の極性を有する第1のセンサ3及び負の極性を有する第2のセンサ4が、この上に取り付けられている。センサは、同様に、ポリマーPVDFのような機械的にフレキシブルな材料から成り、圧電特性を有する。電子評価ユニット6は、フレキシブル基板の上に直接取り付けられ、接触部位を介してセンサに接続された、FR4基板8の上にある。検出器が機械的な力の作用により変形すると(太い矢印)、圧電センサ内で電圧信号が発生する。2つのセンサは同様に設計されており、同様に変形するので、2つのセンサからは同じ絶対値の測定信号が出力される。測定信号の極性に基づいて、変形の方向に依存する検出が可能である。しかしながら、2つのセンサの極性が異なるため、測定信号は180°だけ移相されている。これにより、下流の電子機器又は信号処理における付加的な構成要素なしに、簡略化されたエラー検出が可能になる。その弾性特性に起因して、検出器は、発生した変形の後、その初期状態に戻るように変形することができる。」
「【0036】
図6は、複数のチャンネルを含む検出器の更なる可能な実施形態の概略図を示す。検出器は、ここでは、正の極性を有する2つの第1のセンサ3を含む。更に、検出器は、負の極性を有する2つの第2のセンサ4を含む。全てのセンサは、横方向に隣接して、基板5の上に取り付けられている。第1のセンサは、それらの端部で、第1の接触部位を介して第1の評価ユニット6に接続されている。第2のセンサは、それらの端部で、第2の接触部位を介して第2の評価ユニット7に接続されている。システムのスケーラビリティのために、各チャンネルは、任意の数のセンサを含むことができる。更に、検出器は、第1及び第2のチャンネルに加えて、やはり任意の数のセンサを含む更なるチャンネルを含むことができる。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明(令和6年4月18日付け手続補正前の請求項27に係る発明と同じもの)に対する理由4(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである
理由4(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2013/027736号(主たる引用文献)
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2013/027736号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(3)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア [請求項1]、[請求項7]
「[請求項1] 圧電セラミック板と、
前記圧電セラミック板の表面に設けられ互いに平行に配置された第1及び第2の電極と、
前記圧電セラミック板の裏面に設けられ前記第1及び第2の電極と互いに平行に配置された第3及び第4の電極と、
前記第1乃至第4の電極の電位をそれぞれ測定する電位測定手段と、
前記圧電セラミック板に振動が与えられたときに、前記第1乃至第4の電極の電位に基づいて、前記圧電セラミック板に生じた撓みを算出する算出手段と、を備える、
ことを特徴とする圧電振動センサ。
…(中略)…
[請求項7] 前記圧電セラミック板は、前記圧電セラミック板の主面に垂直な方向に分極されており、前記圧電セラミック板の長さ方向の一端の分極の方向が、他端の分極の方向と逆向きである、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電振動センサ。」
イ 段落[0001]~[0011]
「[0001] 本発明は、圧電振動センサ、特に、複数の感度軸を有する圧電振動センサに関する。
…(中略)…
[0002] 振動センサを操作入力手段として備える小型機器、例えば、携帯電話機が知られている。例えば、特許文献1には、使用者によって与えられた振動を振動センサで検知して、通話を保留状態にする携帯電話機が開示されている。また、特許文献2には、携帯電話端末が受ける振動を振動センサで検知して、動作モードを切り換える携帯電話端末が開示されている。
[0003] このような用途に使用される振動センサの例として、例えば、非特許文献1には、圧電セラミック板の表面と裏面のそれぞれに電極を配置したものをシム材に固定してなる圧電振動子の端部を筐体に片持ち支持した圧電振動センサが開示されている。この圧電振動センサの筐体が振動すると、圧電振動子が撓み、圧電セラミック板の表面と裏面の間に、撓みの大きさに応じた電位差が生じるので、その電位差に基づいて振動を検出することができる。
[0004] 振動方向の違いによって、携帯電話機に異なる動作を行わせる機能、例えば、縦方向の振動を与えた場合には着信音の鳴動を停止させ、横方向の振動を与えた場合にはバックライトを点灯させる機能を求められる場合がある。このような場合には、複数の感度軸を有する振動センサが求められる。
[0005] 複数の感度軸を有する振動センサとして、特許文献3に記載の圧電振動センサが知られている。特許文献3に記載の圧電振動センサは、立方体状の感動体の6面にそれぞれ水晶圧電素子を配置して構成される。この圧電振動センサのいずれの面に力が加わっても、感動体には加わった力と等しい反力が働き、該反力によって水晶圧電素子が変形して、加えられた力の大きさに応じた電位が水晶圧電素子に発生するので、この電位に基づいて、複数の方向、つまり、6面全ての方向の振動を検出できる。
…(中略)…
[0008] しかしながら、特許文献3に記載の圧電振動センサは、立方体形状であるので、形状が大きく、携帯電話機に組み込めないという問題がある。
[0009] 本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、コンパクトな圧電振動センサを提供することを目的とする。
…(中略)…
[0011] 本発明によれば、圧電振動センサを板状の圧電体を用いて構成できるので、圧電振動センサをコンパクトに構成できる。」
ウ 段落[0014]~[0020]、[図1A]~[図1C]
「[0014](第1の実施形態)
図1A、図1Bおよび図1Cは、第1の実施形態に係る圧電振動センサ1の全体構成を示している。圧電振動センサ1は、圧電振動子2、ベース3、電位測定手段4および算出手段5から構成される。」
「[図1A]
[図:0001429546000004.jpg]
」
「[図1B]
[図:0001429546000005.jpg]
」
「[図1C]
[図:0001429546000006.jpg]
」
「[0015] 圧電振動子2は、圧電セラミック板6と、圧電セラミック板6の表裏面に配置された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10から構成される。
[0016] 圧電セラミック板6は、チタンジルコン酸鉛などの強誘電体を素材として構成される薄板である。圧電セラミック板6には分極処理が施されて、双極子モーメントの向きは、z軸方向(図2Bおよび図3Bに矢印PLで図示した方向)に揃えられている。
[0017] 第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10は、圧電効果によって圧電セラミック板6に生じる電位を検出する電極であり、銀などの金属を素材とする。図1Cに示すように、第1の電極7と第2の電極8は、圧電セラミック板6の表面に互いに平行に配置されており、第3の電極9と第4の電極10は、圧電セラミック板6の裏面の、第1の電極7と第2の電極8の真裏に配置されている。第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10は、例えば、スパッタリング、スクリーン印刷などにより、圧電セラミック板6の表裏面に形成される。
[0018] ベース3は、圧電振動センサ1の基体であり、例えば、鋼、黄銅、アルミニウムなどを素材として構成され、十分な剛性を備える。本発明の各実施形態を説明する図面においては、便宜上、ベース3を板で図示しているが、ベース3は単なる板である必要はなく、例えば、筐体であってもよい。
[0019] 電位測定手段4は、第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位をそれぞれ測定する電位差計である。
[0020] 算出手段5は、電位測定手段4で測定された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位に基づいて、圧電セラミック板6の撓みを算出するコンピュータである。なお、算出手段5には、後述する撓み算出プログラム20がインストールされており、算出手段5は該プログラムにしたがって、所定の処理を実行して、前記撓みを算出する。」
エ 段落[0021]~[0027]、[図2A]~[図3B]
「[0021] 次に、圧電振動センサ1の動作と検出方法について説明する。
[0022] 圧電振動センサ1がz軸方向(図2A及び図2Bに矢印VBで図示した方向)に振動すると、図2Aに示すようなz軸の正方向に向かって凸となるような撓みが圧電セラミック板6に生じる。」
「[図2A]
[図:0001429546000007.jpg]
」
「[図2B]
[図:0001429546000008.jpg]
」
「[0023] 圧電セラミック板6が、上記のように撓むと、圧電セラミック板6の表面は伸び、裏面は縮む。その結果、圧電セラミック板6の表面の電位は低く、裏面の電位は高くなる。また、圧電セラミック板6が、図2Aとは逆方向、すなわち、z軸の負方向に向かって凸となるように撓むと、圧電セラミック板6の表面は縮み、裏面は伸びる。その結果、圧電セラミック板の表面の電位は高く、裏面の電位は低くなる。
[0024] したがって、圧電セラミック板6が、z軸方向に振動する場合には、第1の電極7と第3の電極9の間、および第2の電極8と第4の電極10の間の電位差は大きくなる。一方、第1の電極7と第2の電極8の間、および第3の電極9と第4の電極10の間の電位差は小さくなる。
[0025] また、圧電振動センサ1がx軸方向に振動すると、図3Aに示すようなx軸の正方向に向かって凸となるような撓みが圧電セラミック板6に生じる。」
「[図3A]
[図:0001429546000009.jpg]
」
「[0026] 圧電セラミック板6が、上記のように撓むと、圧電セラミック板6の右辺は伸び、左辺は縮む。その結果、圧電セラミック板6の右側の電位は低く、左側の電位は高くなる。また、圧電セラミック板6が、図3Aとは逆方向、つまり、x軸の負方向に向かって凸となるように撓むと、圧電セラミック板6の右辺は縮み、左辺は伸びる。その結果、圧電セラミック板6の右側の電位は高く、左側の電位は低くなる。
[0027] したがって、圧電セラミック板6が、x軸方向に振動する場合には、第1の電極7と第2の電極8の間、および第3の電極9と第4の電極10の間の電位差は大きくなる。一方、第1の電極7と第3の電極9の間、および第2の電極8と第4の電極10の間の電位差は小さくなる。」
「[図3B]
[図:0001429546000010.jpg]
」
オ 段落[0028]~[0038]、[図4]
「[0028] 圧電振動センサ1は、上述した方法により、x軸方向およびz軸方向の振動を検出する。算出手段5において撓み算出プログラム20を実行すると、前記振動は自動的に検出される。以下、撓み算出プログラム20による処理について、説明する。
[0029] 算出手段5は、撓み算出プログラム20を所定の周期で繰り返し起動する。これにより、圧電セラミック板6の撓みを所定の周期でサンプリングする。
[0030] 撓み算出プログラム20が起動されると、第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位(Φ1、Φ2、Φ3およびΦ4)が入力される(ステップS1)。
[0031] 次に、第1の電極7と第2の電極8の間の電位差(D12)、第3の電極9と第4の電極10の間の電位差(D34)、第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)、および第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)をそれぞれ算出する(ステップS2)。
[0032] 次に、第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)または第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)のいずれか一方に基づいて、z軸方向の撓みdzを算出する。なお、電位差を撓みに換算する換算式は、事前にキャリブレーションを行って、決定しておく(以下、同じ)(ステップS3)。
[0033] 次に、第1の電極7と第2の電極8の間の電位差(D12)又は第3の電極9と第4の電極10の間の電位差(D34)のいずれか一方に基づいて、x軸方向の撓みdxを算出する(ステップS4)。
[0034] z軸方向の撓みdzが所定のしきい値Tzより大きければ(ステップS5;YES)、ステップS7に進み、外部に信号を出力し、処理を終了する。該信号は、例えば、携帯電話本体を制御するコンピュータに入力されて、携帯電話本体に所定の動作を行わせる。
[0035] z軸方向の撓みdzが所定のしきい値Tz以下であれば(ステップS5;NO)、ステップS6に進む。
[0036]x軸方向の撓みdxが所定のしきい値Txより大きければ(ステップS6;YES)、ステップS8に進み、外部に信号を出力し、処理を終了する。該信号も、例えば、携帯電話本体に所定の動作を行わせる。
[0037]x軸方向の撓みdxが所定のしきい値Tx以下であれば(ステップ6;NO)、何もしないで処理を終了する。
[0038]このように、圧電振動センサ1では、第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9及び第4の電極10の間の電位差に基づいて、x軸方向及びz軸方向の振動を検出している。」
「[図4]
[図:0001429546000011.jpg]
」
カ 段落[0039]~[0042]、[図5]
「[0039](第2の実施形態)
第1の実施形態では、圧電振動子2をベース3に直接固定する例を示したが、図5に示すように、圧電セラミック板6の両端に支持体11を備えて、ベース3に圧電振動子2を固定してもよい。」
「[図5]
[図:0001429546000012.jpg]
」
「[0040] 支持体11は、ベース3から一定の間隔を開けて、圧電振動子2を固定する部材であり、例えば、ステンレスなどの金属材料あるいはABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、ポリカーボネート、ブチルゴムなどの高分子材料で構成される。支持体11の両端は、エポキシ樹脂などを用いて圧電セラミック板6及びベース3にそれぞれ接合すればよい。
[0041] このようにすれば、第1の実施形態の圧電振動センサ1に比べて、圧電セラミック板6を大きく撓ますことができるので、圧電振動センサ1の感度を高めることができる。
[0042] また、第2の実施形態では、圧電セラミック板6の両端を支持体11で支持しているので、圧電セラミック板6を片持ち支持した圧電振動センサに比べて、圧電セラミック板6の機械的共振周波数を高めることができる。このため、高周波数帯域まで周波数特性を平坦にできるので、圧電振動センサ1の周波数帯域を広くできる。」
キ 段落[0046]
「[0046][実施例1]
チタンジルコン酸鉛を組成に有する圧電セラミック材料を、長さ15mm、幅5mm、厚さ1mmの平板状に加工して圧電セラミック板を作製した。次に、圧電セラミック板の表面に、矩形の第1及び第2の電極を互いに平行に配置し、圧電セラミック板の裏面に、同じく矩形の第3及び第4の電極を第1及び第2の電極と互いに平行に配置して、圧電振動子を作製した。第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極には、長さ10mm、幅1mm、厚さ0.05mmの銀板をそれぞれ用いた。次に、圧電セラミック板の長さ方向の両端に支持体の一方の面を接合し、該支持体の他方の面を筐体に接合した。支持体には、長さ1mm、幅1mm、厚さ1mmのステンレス板を用いた。圧電セラミック板と筐体とを支持体で接合した後、電位差計、マイクロコンピュータを筐体内に取り付けた。マイクロコンピュータには、撓み算出プログラムを予め格納しておいた。次に、第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極を電位差計に接続し、電位差計をマイクロコンピュータに接続して、圧電振動センサを作製した。」
ク 段落[0056]~[0057]、[図8]
「[0056] 本明細書の実施形態及び実施例は、本発明の具体的実施態様の例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自在に変形、応用あるいは改良して実施できる。
[0057] 例えば、上記実施形態及び実施例では、圧電セラミック板6を主面に垂直な一方向に分極する例を示したが、本発明に係る圧電振動センサ1は、一方向に分極された圧電セラミック板6を備えるものには限られない。例えば、圧電セラミック板6の長さ方向の中央を境に、圧電セラミック板6に互いに逆向きの電界を印加して、図8に示したように、主面に垂直な方向において、圧電セラミック板6を互いに逆向きに分極させてもよい。」
「[図8]
[図:0001429546000013.jpg]
」
(2) 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
ア 第2の実施形態と第1の実施形態に共通する構成の認定
(ア) 引用文献1には、圧電振動センサに係る第1の実施形態が段落[0014]~[0038]に開示されており(前記(1)の摘記事項ウ~オを参照)、圧電振動センサに係る第2の実施形態が段落[0039]~[0042]に開示されているところ(前記(1)の摘記事項カを参照)、その段落[0039]には、「第2の実施形態」について「第1の実施形態では、圧電振動子2をベース3に直接固定する例を示したが、図5に示すように、圧電セラミック板6の両端に支持体11を備えて、ベース3に圧電振動子2を固定してもよい。」と記載されている。
(イ) そして、引用文献1の第1の実施形態(図1A)と第2の実施形態(図5)は、共通の構成要素として「圧電振動センサ1」、「圧電振動子2」、「ベース3」、「圧電セラミック板6」、「第1の電極7」、「第2の電極8」を備えている。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、圧電振動センサに係る第1の実施形態と第2の実施形態において共通する構成は、第2の実施形態を開示する箇所において明示の記載がなくとも、同様に備えているものとして認定して差し支えないというべきであり、具体的には、次の構成を備えているものとして認定できる。
「圧電振動センサ1は、圧電振動子2、ベース3、電位測定手段4および算出手段5から構成され、([0014])
圧電振動子2は、圧電セラミック板6と、圧電セラミック板6の表裏面に配置された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10から構成され、([0015])
第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10は、圧電効果によって圧電セラミック板6に生じる電位を検出する電極であり、第1の電極7と第2の電極8は、圧電セラミック板6の表面に互いに平行に配置されており、第3の電極9と第4の電極10は、圧電セラミック板6の裏面の、第1の電極7と第2の電極8の真裏に配置されており、([0017])
ベース3は、圧電振動センサ1の基体であり、([0018])
電位測定手段4は、第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位をそれぞれ測定する電位差計であり、([0019])
算出手段5は、電位測定手段4で測定された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位に基づいて、圧電セラミック板6の撓みを算出するコンピュータであり、撓みを算出すること。([0020])」
イ 第2の実施形態の変形例に係る構成の認定
(ア) 引用文献1の段落[0056]には「本明細書の実施形態及び実施例は、本発明の具体的実施態様の例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自在に変形、応用あるいは改良して実施できる。」と記載されている。
(イ) また、引用文献1の段落[0057]には「例えば、上記実施形態及び実施例では、圧電セラミック板6を主面に垂直な一方向に分極する例を示したが、本発明に係る圧電振動センサ1は、一方向に分極された圧電セラミック板6を備えるものには限られない。例えば、圧電セラミック板6の長さ方向の中央を境に、圧電セラミック板6に互いに逆向きの電界を印加して、図8に示したように、主面に垂直な方向において、圧電セラミック板6を互いに逆向きに分極させてもよい。」と記載されており、「上記実施形態」に第2の実施形態も含まれることは明らかである。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、第2の実施形態の変形例として、次の構成を備えているものが認識できる。
「圧電セラミック板6の長さ方向の中央を境に、圧電セラミック板6に互いに逆向きの電界を印加して、主面に垂直な方向において、圧電セラミック板6を互いに逆向きに分極されていること。([0057])」
(3) 引用発明の認定
前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第2の実施形態の変形例([図5]、[図8])に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「圧電セラミック板と、
前記圧電セラミック板の表面に設けられ互いに平行に配置された第1及び第2の電極と、
前記圧電セラミック板の裏面に設けられ前記第1及び第2の電極と互いに平行に配置された第3及び第4の電極と、
前記第1乃至第4の電極の電位をそれぞれ測定する電位測定手段と、
前記圧電セラミック板に振動が与えられたときに、前記第1乃至第4の電極の電位に基づいて、前記圧電セラミック板に生じた撓みを算出する算出手段と、を備える、
圧電振動センサであって、([請求項1])
圧電振動センサ1は、圧電振動子2、ベース3、電位測定手段4および算出手段5から構成され、([0014])
ベース3は、圧電振動センサ1の基体であり、([0018])
圧電セラミック板6の両端に支持体11を備えて、ベース3に圧電振動子2を固定し、([0039])
支持体11は、ベース3から一定の間隔を開けて、圧電振動子2を固定する部材であり、支持体11の両端は、エポキシ樹脂などを用いて圧電セラミック板6及びベース3にそれぞれ接合され、([0040])
圧電振動子2は、圧電セラミック板6と、圧電セラミック板6の表裏面に配置された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10から構成され、([0015])
圧電セラミック板6は、長さ方向の中央を境に互いに逆向きの電界が印加されることにより、主面に垂直な方向において互いに逆向きに分極され、([0057])
第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10は、圧電効果によって圧電セラミック板6に生じる電位を検出する電極であり、第1の電極7と第2の電極8は、圧電セラミック板6の表面に互いに平行に配置されており、第3の電極9と第4の電極10は、圧電セラミック板6の裏面の、第1の電極7と第2の電極8の真裏に配置されており、([0017])
電位測定手段4は、第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位をそれぞれ測定する電位差計であり、([0019])
算出手段5は、電位測定手段4で測定された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位に基づいて、圧電セラミック板6の撓みを算出するコンピュータであり、撓みを算出し、([0020])
算出手段5は、撓み算出プログラム20を所定の周期で繰り返し起動し、圧電セラミック板6の撓みを所定の周期でサンプリングし、([0029])
第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位(Φ1、Φ2、Φ3およびΦ4)が入力され、([0030])
第1の電極7と第2の電極8の間の電位差(D12)、第3の電極9と第4の電極10の間の電位差(D34)、第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)、および第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)をそれぞれ算出し、([0031])
第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)または第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)のいずれか一方に基づいて、z軸方向の撓みdzを算出し、([0032])
第1の電極7と第2の電極8の間の電位差(D12)又は第3の電極9と第4の電極10の間の電位差(D34)のいずれか一方に基づいて、x軸方向の撓みdxを算出し、([0033])
第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9及び第4の電極10の間の電位差に基づいて、x軸方向及びz軸方向の振動を検出する、([0038])
圧電振動センサ1。」
[図5](再掲)
[図:0001429546000014.jpg]
[図8](再掲)
[図:0001429546000015.jpg]
5 引用文献4~6の記載事項並びに技術常識1及び周知技術1の認定
(1) 引用文献4、5に記載された事項及び技術常識1の認定
ア 引用文献4に記載された事項
前置審査において引用され、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2016/027615号(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 段落[0020]、[図1]
「[0020] 図1は、圧電フィルムセンサの概観を示す概略図である。この例にかかる圧電フィルムセンサ1は、センサ部11と、回路部12と、を備え、2つの保持部材13a、13bでセンサ部11と回路部12とを保持している。この圧電フィルムセンサ1は、所定の場所に貼り付けられ、その場所の微小な動きや変形などを検知するセンサである。例えば、センサ部11を皮膚に貼り付け、皮膚の動きや皮下の動きを検知する。」
「[図1]
[図:0001429546000016.jpg]
」
(イ) 段落[0034]~[0039]、[図3]、[図4]
「[0034] 図3は、回路部の構成を示す概略の平面図である。回路部12は、互いに対向する第3主面、および第4主面を備えるリジッドな回路基板200上に、処理回路201、および導電性の接続パターン200a、200bを形成したものである。接続パターン200a、200bは、回路基板200の第3主面に形成されている。一方、処理回路201は、第3主面または第4主面の一方に形成されていてもよいし、両主面にわたって形成されていてもよい。」
「[図3]
[図:0001429546000017.jpg]
」
「[0035] 接続パターン200a、200bの内側には、貫通孔が形成されている。接続パターン200aは、センサ部11に形成されている上述の接続パターン113aと略同じ形状であり、接続パターン200bは、センサ部11に形成されている上述の接続パターン112aと略同じ形状である。また、2つの接続パターン200a、200bの相対的な位置関係と、センサ部11に形成されている2つの接続パターン112a、113aの相対的な位置関係と、は略同じである。接続パターン200a、200bが、この発明で言う入力導体パターンに相当する。
[0036] 処理回路201は、接続パターン200a、200bと接続され、接続パターン200a、200bにおける入力信号(後述するように、圧電フィルム111a、111bにおいて発生した電荷にかかる信号)を処理し、圧電フィルム111a、111bの歪み量を検出するための回路である。
[0037] 保持部材13a、13bは、ハトメやリベット等の接合部材である。保持部材13a、13bは、センサ部11の接続パターン112aと回路部12の接続パターン200bとを電気的に接続し、且つセンサ部11の接続パターン113aと回路部12の接続パターン200aとを電気的に接続した状態で、センサ部11と回路部12(回路基板200)とを保持する。
[0038] 具体的には、圧電フィルムセンサ1は、図4に示すように、センサ部11の第1主面と、回路部12の回路基板200の第3主面とを合わせている。このとき、センサ部11の基準電位電極113に形成されている接続パターン113aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200aとを当接させ、センサ部11のシグナル電極112に形成されている接続パターン112aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200bとを当接させている。すなわち、圧電フィルムセンサ1は、センサ部11の基準電位電極113に形成されている接続パターン113aの内側の貫通孔と、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200aの内側の貫通孔とが重なり、且つセンサ部11のシグナル電極112に形成されている接続パターン112aの内側の貫通孔と、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200bの内側の貫通孔とが重なるように、センサ部11の第1主面と、回路部12の回路基板200の第3主面とを重ね合わせている。保持部材13a、13bは、センサ部11の接続パターン112aと回路部12の接続パターン200bとを圧接し、且つセンサ部11の接続パターン113aと回路部12の接続パターン200aとを圧接した状態で、センサ部11と回路基板200とを保持する。」
「[図4]
[図:0001429546000018.jpg]
」
「[0039] 保持部材13a、13bは、センサ部11の第2主面側、または回路基板200の第4主面側の一方から貫通孔に通し、他方の側に突出した先端をかしめている。」
イ 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2008-241539号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
(ア) 段落【0007】
「【0007】
QCMセンサーは、水晶振動子を基板等に実装して配線を引き出しただけのシンプルな構造であり、測定回路も、水晶振動子の共振周波数を測定するための電子回路のみで構成することが出来ることから、酵素電極法の簡便さと、イムノクロマト法の高感度と、ELISA法の定量性とが同時に得られ、POCT用の高感度定量検出法としてきわめて有望と考えられる。」
(イ) 段落【0010】、【図15】、【図16】
「【0010】
図15は従来の圧電振動子の構造を示す図である。圧電振動子1は圧電基板2の表面(図面上で上面)および裏面(図面上で下面)に1対の駆動用の電極として表電極3と裏電極4を設けてある。それぞれの電極が圧電基板2を挟んで対向する領域が実際に圧電基板が振動する領域であり、電極のこの部分を振動部と呼ぶ。図中では、表電極3の振動部を表電極振動部3Aで、裏電極4の振動部を裏電極振動部4Aでそれぞれ示してある。表電極3および裏電極4を外部回路と電気的に接続するための部分が表電極接続部3Cおよび裏電極接続部4Cである。表電極振動部3Aは表電極引き出し部3Bにより圧電基板1の側面を経由して裏面に配置された表電極接続部3Cに接続されている。裏電極振動部4Aは裏電極引き出し部4Bにより同じく裏面に配置された裏面電極接続部4Cと接続されている。表電極3および裏電極4は蒸着法あるいはスパッタリング法などで形成される。電極材料には、安定性および機能膜の形成し易さから金が使われることが多い。
図16は従来のQCMセンサーの構造を示す図である。QCMセンサーは圧電振動子1をセンサー基板7上に固定用の接着剤14をもちいて固定したものである。接着剤14は圧電振動子1の固定と同時に、圧電振動子1とセンサー基板7の間に液体が進入して表電極3と裏電極4が電気的にショートするのを防ぐシールの役目を兼ねている。表電極3および表電極4は、それぞれ表電極振動部3Aおよび裏電極振動部4Aから表電極引き出し部3Bおよび裏電極引き出し部4Bを経由して圧電基板2の裏面に設けた表電極接続部3Cおよび裏電極接続部4Cに導かれ、導電接着剤101を介してそれぞれセンサー基板側接続電極8および9と接続されている。裏電極4とセンサー基板7との間隔は、センサー基板側接続電極8および9と導電接着剤101の高さで規定されている。センサー基板側接続電極8および9はスルーホール10および11を経由して引き出し配線12および13へ接続され、外部回路と接続する。基板に設けた穴15は固定用の接着剤14と導電接着剤101が硬化する時に発生する反応ガスを逃がすためのもので接着剤が硬化した後、防水のためにテープあるいは接着剤等で塞ぐ。」
「【図15】
[図:0001429546000019.jpg]
」
「【図16】
[図:0001429546000020.jpg]
」
ウ 技術常識1の認定
前記ア及びイに摘記した引用文献4、引用文献5の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。
<技術常識1>
「センサと評価ユニットを、接触部位を介して電気的に接続すること。」
(2) 引用文献6に記載された事項及び周知技術1の認定
ア 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開平5-188081号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
(ア) 段落【0011】~【0014】、【図2】
「【0011】図1を参照して、図示の加速度センサーは圧電体21を備えており、この圧電体21は、例えば、セラミックスで形成されている(以下この圧電体を圧電セラミックス体という)。圧電セラミックス体21は板状であり、第1の主面(図中上側の面)及び第2の主面(図中下側の面)を備えている。第1の主面には帯状電極22及び23が形成されており、これら帯状電極22及び23は図示のように所定の間隔(空隙)をおいて配置されている。つまり、帯状電極22及び23は圧電セラミックス体21の長手方向に平行な中心軸線に対して対称な状態で配置されている。一方、第2の主面にはその全面に亘って電極24が形成されている。そして、圧電セラミックス体21はその長手方向一端においてベース25に支持されている。
【0012】図1において、帯状電極22及び23は出力電極として用いられ、一方、電極24は共通アース電極として用いられる。そして、帯状電極22と電極24との間、帯状電極23と電極24との間にはそれぞれ分極処理が施されており、その分極方向は互いに逆方向になっている。例えば、帯状電極22と電極24との間では電極24から帯状電極22の方向へ分極処理が施され、帯状電極23と電極24との間では帯状電極22から電極24の方向へ分極処理が施されている。
【0013】ここで、図2を参照して、上記の加速度センサーは電極24で接地されており、帯状電極22及び23はそれぞれ差動増幅器26の反転端子(-端子)及び非反転端子(+端子)に接続される。加速度センサー、つまり、圧電セラミックス体21の厚み方向に太線矢印27で示すように振動的な加速度が加わると、圧電セラミックス体21には厚み方向に応力が作用することになる。」
「【図2】
[図:0001429546000021.jpg]
」
「【0014】前述のように帯状電極22と電極24との間には破線矢印28で示す方向に分極処理が施されており、帯状電極23と電極24との間には破線矢印29で示す方向に分極処理が施されているから、帯状電極22に関しては分極28と同一の方向に破線矢印30で示す応力が生じ、一方、帯状電極23に関しては分極29と逆方向に破線矢印31で示す応力が生じることになる。この結果、帯状電極22と電極24との間にはプラス(+)電圧が発生し、帯状電極23と電極24との間には逆極性であるマイナス(-)電圧が発生することになる。これらプラス電圧(第1の出力信号)及びマイナス電圧(第2の出力信号)はそれぞれ差動増幅器26の反転端子及び非反転端子に加えられることになるから、差動増幅器26から出力される差動出力電圧は圧電セラミックス体21に加えられた加速度の大きさにほぼ比例することになる。しかも、第1及び第2の出力信号に同相ノイズが重畳されていても、前述のようにこれら第1及び第2の出力信号は差動増幅器26に与えられるのであるから、差動出力電圧においては同相ノイズが除去されることになる。」
(イ) 段落【0015】~【0018】、【図3】
「【0015】ここで、図3に本発明による加速度センサーの他の実施例を示す。」
「【図3】
[図:0001429546000022.jpg]
」
「【0016】図3を参照して、ここでは圧電セラミックス体21の第1の主面には4個の帯状電極32乃至35が形成され、これら帯状電極32乃至35は予め定められた間隔(空隙)をもって配列されている。つまり、帯状電極32乃至35は圧電セラミックス体21の長手方向に平行な中心軸線に対して対称な状態で配置されている。帯状電極32乃至35と電極24との間ではそれぞれ図3に破線矢印で示す方向に分極処理が施されており、帯状電極32及び34は差動増幅器26の反転端子に接続され、帯状電極33及び35は差動増幅器26の反転端子に接続される。つまり、同一の分極方向に対応する帯状電極同士が同一の端子に接続されることになる。
【0017】このようにして、帯状電極32乃至35を差動増幅器26に接続することによって、差動増幅器25から得られる差動出力電圧は圧電セラミックス体21に加えられた加速度の大きさにほぼ比例し、しかも、同相ノイズが除去されることになる。
【0018】ところで、検出すべき加速度の振動周波数が低い場合には、図4に示すように、圧電セラミックス体21の他端に重り36を設けることによって、圧電セラミックス体21の加速度に対する応答を良好にすることができ、その結果、出力感度を増大することができる。」
イ 周知技術1の認定
前記アに摘記した引用文献6の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「出力感度を増大するために圧電センサの数を増やし、その際に極性の異なる圧電センサを交互に配置すること。」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(検出器)
(ア) 引用発明の「圧電振動センサ」は、「z軸方向の振動を検出する」ものであるから、検出器であるといえる。
(イ) したがって、「検出器」の発明である本願発明と「圧電振動センサ」の発明である引用発明は、「検出器」の発明である点において一致する。
イ 構成Aの観点(基板、第1のチャンネル、第2のチャンネル)
(ア) 構成Aは、「基板(5)と、第1のチャンネル(1)と、第2のチャンネル(2)と、を含[む]」ことである。
(イ) 「基板」の観点
引用発明においては、「圧電セラミック板6の両端に支持体11を備えて、ベース3に圧電振動子2を固定し」ているところ、「ベース3は、圧電振動センサ1の基体であ[る]」ことから、引用発明の「ベース3」は、本願発明の「基板」に相当する。
なお、この相当関係については、令和5年12月7日に提出された意見書において、請求人は、「なお、引用文献1に記載された発明において、本願発明の「基板(5)」に相当する部材は、・・・「ベース3」であ[る]」と主張しており、この点については、争いはないものと認められる。
(ウ) 「第1のチャンネル」の観点
また、引用発明においては、「第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10」が「圧電効果によって圧電セラミック板6に生じる電位を検出[し]」、「電位測定手段4」が「第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位をそれぞれ測定し」、「算出手段5」が「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)、および第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)をそれぞれ算出し」、「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)または第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)のいずれか一方に基づいて、z軸方向の撓みdzを算出し」ている。
ここで、引用発明の「圧電セラミック板6」は、「長さ方向の中央を境に互いに逆向きの電界が印加されることにより、主面に垂直な方向において互いに逆向きに分極され」ているところ、図8に示された配置を踏まえて、「圧電セラミック板6」の「長さ方向の中央を境に」した一方の側を「断面左側」、他方の側を「断面右側」ということにしたとき、断面左側と断面右側とでは、分極する方向が逆であるから、断面左側にある構成要素と断面右側にある構成要素を互いに別なものとして観念することが可能である。
そうすると、引用発明の断面左側においては、「主面に垂直な方向」に「電界が印加」されたとき、「電位測定手段4」が測定した「第1の電極7」の「電位」と「第3の電極9」の「電位」に基づいて、「算出手段5」が「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)」を算出し、「z軸方向の撓みdzを算出」しており、「第1の電極7」、「第3の電極9」、「圧電セラミック板6」、「電位測定手段4」及び「算出手段5」は、断面左側において生じる「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)」に基づいて、「z軸方向の撓みdzを算出[する]」構成であることから、本願発明の「第1のチャンネル」に相当する。
(エ) 「第2のチャンネル」の観点
同様に、引用発明の「第2の電極8」、「第4の電極10」、「圧電セラミック板6」、「電位測定手段4」及び「算出手段5」は、断面右側において生じる「第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)」に基づいて、「z軸方向の撓みdzを算出[する]」構成であることから、本願発明の「第2のチャンネル」に相当する。
(オ) 構成Aの検討のまとめ
前記(イ)~(エ)の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「基板と、第1のチャンネルと、第2のチャンネルと、を含[む]点。
ウ 構成Bの観点(第1のセンサ、第1の評価ユニット)
(ア) 構成Bは、「前記第1のチャンネル(1)は、前記基板(5)の上に取り付けられた複数の第1のセンサ(3)と、第1の接触部位を介して前記第1のセンサ(3)に接続された第1の評価ユニット(6)と、を含[む]」ことである。
(イ) 「第1のセンサ」の観点
前記イ(ウ)において述べたとおり、引用発明においては、断面左側にある構成要素と断面右側にある構成要素を互いに別なものとして観念することが可能であるところ、断面左側においては、「第1の電極7」、「第3の電極9」が「圧電効果によって圧電セラミック板6に生じる電位を検出[している]」から、引用発明の「第1の電極7」、「圧電セラミック板6」の断面左側の部分及び「第3の電極9」は、本願発明の「第1のセンサ(3)」に相当する。
(ウ) 「基板の上に取り付ける」という観点
そして、引用発明においては、「圧電振動子2は、圧電セラミック板6と、圧電セラミック板6の表裏面に配置された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10から構成され[る]」ところ、「圧電セラミック板6の両端に支持体11を備えて、ベース3に圧電振動子2を固定し」ていることから、「圧電セラミック板6」の断面左側の部分及び「圧電セラミック板6の表裏面に配置された」「第1の電極7」、「第3の電極9」は、「ベース3」の上に取り付けられているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明は、「第1のセンサ」が「前記基板の上に取り付けられた」ものである点で共通する。
(エ) 「第1の評価ユニット」の観点
また、引用発明においては、「電位測定手段4は、第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位をそれぞれ測定する電位差計であり」、「算出手段5は、電位測定手段4で測定された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位に基づいて、圧電セラミック板6の撓みを算出するコンピュータであり、撓みを算出[する]」ところ、引用発明の「電位測定手段4」、「算出手段5」は、本願発明の「評価ユニット」に相当する。
(オ) 「第1の接触部位」の観点
そして、引用発明において、「電位測定手段4」が「第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10の電位をそれぞれ測定する」にあたって、「電位測定手段4」が「第1の電極7」、「第3の電極9」に電気的に接続していることは明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明は、「前記第1のセンサ」と「評価ユニット」が接続されたものである点で共通する。
(カ) 構成Bの検討のまとめ
以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Bの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Bの観点における一致点
「前記第1のチャンネルは、前記基板の上に取り付けられた第1のセンサと、前記第1のセンサに接続された評価ユニットと、を含[む]」点。
b 構成Bの観点における相違点
本願発明においては、
「第1のチャンネル(1)」が有する「第1のセンサ(3)」が、「複数」であり、
「評価ユニット」が、「第1のチャンネル(1)」に含まれる「第1の評価ユニット(6)」であり、
「前記第1のセンサ(3)」と「第1の評価ユニット(6)」の接続が、「第1の接触部位を介して」いるのに対して、
引用発明においては、
「第1の電極7」及び「第3の電極9」の組を複数有することは特定されておらず、
「電位測定手段4」及び「算出手段5」が、断面左側のみに属する構成要素ではなく、
断面左側において、どのように「第1の電極7」、「第3の電極9」が「電位測定手段4」及び「算出手段5」に接続されているのか明らかではない点。
エ 構成Cの観点(第2のセンサ、第2の評価ユニット)
(ア) 構成Cは、「前記第2のチャンネル(2)は、前記基板(5)の上に取り付けられた複数の第2のセンサ(4)と、第2の接触部位を介して前記第2のセンサ(4)に接続された第2の評価ユニット(7)と、を含[む]」ことである。
(イ) 引用発明の「第2の電極8」、「圧電セラミック板6」の断面右側の部分及び「第4の電極10」は、本願発明の「第2のセンサ(4)」に相当する。
(ウ) そして、前記ウ(ウ)~(オ)と同様に検討すると、本願発明と引用発明の構成Cの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Cの観点における一致点
「前記第2のチャンネルは、前記基板の上に取り付けられた第2のセンサと、前記第2のセンサに接続された評価ユニットと、を含[む]」点。
b 構成Cの観点における相違点
本願発明においては、
「第2のチャンネル(2)」が有する「第2のセンサ(4)」が、「複数」であり、
「評価ユニット」が、「第2のチャンネル(2)」に含まれる「第2の評価ユニット(7)」であり、
「前記第2のセンサ(4)」と「第2の評価ユニット(7)」の接続が、「第2の接触部位を介して」いるのに対して、
引用発明においては、
「第2の電極8」及び「第4の電極10」の組を複数有することは特定されておらず、
「電位測定手段4」及び「算出手段5」が、断面右側のみに属する構成要素ではなく、
断面右側において、どのように「第2の電極8」、「第4の電極10」が「電位測定手段4」及び「算出手段5」に接続されているのか明らかでない点。
オ 構成Dの観点(第1のセンサ、第2のセンサの配置)
(ア) 構成Dは、「前記複数の第1のセンサ(3)は、前記基板(5)の上で、前記複数の第2のセンサ(4)と横方向に交互に配置されて[いる]」ことである。
(イ) 引用発明においては、「第1の電極7と第2の電極8は、圧電セラミック板6の表面に互いに平行に配置されており、第3の電極9と第4の電極10は、圧電セラミック板6の裏面の、第1の電極7と第2の電極8の真裏に配置されて[いる]」ことから、「第1の電極7」、「圧電セラミック板6」の断面左側の部分及び「第3の電極9」(「第1のセンサ」に相当)と、「第2の電極8」、「圧電セラミック板6」の断面右側の部分及び「第4の電極10」(「第2のセンサ」に相当)は、横方向に「配置されて[いる]」といえる。
(ウ) また、前記ウ(ウ)において検討したとおり、引用発明においては、「圧電セラミック板6」及び「圧電セラミック板6の表裏面に配置された第1の電極7、第2の電極8、第3の電極9および第4の電極10」が「ベース3」の上に「固定」されている。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Dの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Dの観点における一致点
「前記第1のセンサは、前記基板の上で、前記第2のセンサと横方向に配置されて[いる]」点。
b 構成Dの観点における相違点
本願発明においては、
「複数の第1のセンサ(3)」は「複数の第2のセンサ(4)」と「横方向に交互に配置されて[いる]」のに対して、
引用発明においては、
「第1の電極7」及び「第3の電極9」の組と、「第2の電極8」及び「第4の電極10」の組をそれぞれ複数設けておらず、これらを交互に配置することが特定されていない点。
カ 構成Eの観点(第1のセンサ、第2のセンサの測定信号)
(ア) 構成Eは、「前記第1のセンサ(3)と前記第2のセンサ(4)は、同じ物理量を測定するように設計されており、また、両センサに均等に作用する外的刺激に反応して、値は同じで極性が逆となる測定信号を出力するように設計されている」ことである。
(イ) 「同じ物理量を測定する」観点
引用発明においては、「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)または第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)のいずれか一方に基づいて、z軸方向の撓みdzを算出し」ていることから、「第1の電極7」、「圧電セラミック板6」の断面左側の部分及び「第3の電極9」(「第1のセンサ」に相当)と、「第2の電極8」、「圧電セラミック板6」の断面右側の部分及び「第4の電極10」(「第2のセンサ」に相当)は、同じ物理量である「z軸方向の撓みdz」を測定するように設計されているといえる。
(ウ) 「測定信号」の「極性が逆となる」観点
また、引用発明においては、「圧電セラミック板6は、長さ方向の中央を境に互いに逆向きの電界が印加されることにより、主面に垂直な方向において互いに逆向きに分極され」ていることから、「第1の電極7」、「圧電セラミック板6」の断面左側の部分及び「第3の電極9」(「第1のセンサ」に相当)と、「第2の電極8」、「圧電セラミック板6」の断面右側の部分及び「第4の電極10」(「第2のセンサ」に相当)について、両者に均等に外力が作用して「z軸方向の撓み」が生じる場合に、「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)」と「第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)」の極性は逆となることは明らかである。
(エ) 「測定信号」の「値は同じ」となる観点
さらに、「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)または第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)のいずれか一方に基づいて、z軸方向の撓みdzを算出[する]」にあたり、「第1の電極7と第3の電極9の間の電位差(D13)」と「第2の電極8と第4の電極10の間の電位差(D24)」が択一的に選択可能であることを踏まえると、両者の値は同じになるように設計されていると解釈するのが自然である。
(オ) 構成Eの検討のまとめ
前記(イ)~(エ)の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第1のセンサと前記第2のセンサは、同じ物理量を測定するように設計されており、また、両センサに均等に作用する外的刺激に反応して、値は同じで極性が逆となる測定信号を出力するように設計されている」点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。
ア 一致点
「 検出器であって、
基板と、
第1のチャンネルと、第2のチャンネルと、を含み、
前記第1のチャンネルは、前記基板の上に取り付けられた第1のセンサと、前記第1のセンサに接続された評価ユニットと、を含み、
前記第2のチャンネルは、前記基板の上に取り付けられた第2のセンサと、前記第2のセンサに接続された評価ユニットと、を含み、
前記第1のセンサは、前記基板の上で、前記第2のセンサと横方向に配置されており、
前記第1のセンサと前記第2のセンサは、同じ物理量を測定するように設計されており、また、両センサに均等に作用する外的刺激に反応して、値は同じで極性が逆となる測定信号を出力するように設計されている、検出器。」である点。
イ 相違点
本願発明においては、
「第1のセンサ(3)」及び「第2のセンサ(4)」が、いずれも「複数」であり、
「複数の第1のセンサ(3)」は「複数の第2のセンサ(4)」と「横方向に交互に配置されており」、
「評価ユニット」が、「第1のチャンネル(1)」に含まれる「第1の評価ユニット(6)」及び「第2のチャンネル(2)」に含まれる「第2の評価ユニット(7)」であり、
「前記第1のセンサ(3)」と「第1の評価ユニット(6)」の接続が、「第1の接触部位を介して」おり、
「前記第2のセンサ(4)」と「第2の評価ユニット(7)」の接続が、「第2の接触部位を介して」いるのに対して、
引用発明においては、
「第1の電極7」及び「第3の電極9」の組、並びに、「第2の電極8」及び「第4の電極10」の組を、それぞれ複数有することは特定されておらず、
これらを交互に配置することも特定されておらず、
「電位測定手段4」及び「算出手段5」が、断面左側のみ、あるいは、断面右側のみに属する構成要素ではなく、
断面左側において、どのように「第1の電極7」、「第3の電極9」が「電位測定手段4」及び「算出手段5」に接続されているのか明らかではなく、断面右側において、どのように「第2の電極8」、「第4の電極10」が「電位測定手段4」及び「算出手段5」に接続されているのか明らかではない点。
7 判断
(1) 相違点の検討
ア 複数のセンサの交互配置について
(ア) 引用発明においては、「第1の電極7」及び「第3の電極9」の組、並びに、「第2の電極8」及び「第4の電極10」の組を、それぞれ断面左側及び断面右側に設けているところ、振動を検出するにあたって、出力感度を増大させるようにすることは、引用発明の内包する自明の課題であるといえる。
(イ) ここで、「出力感度を増大するために圧電センサの数を増やし、その際に極性の異なる圧電センサを交互に配置すること」は、当業者にとって周知技術である(前記周知技術1を参照)。
(ウ) そうすると、引用発明の上記自明の課題を解決するために、前記周知技術1を適用し、「第1の電極7」及び「第3の電極9」の組、並びに、「第2の電極8」及び「第4の電極10」の組を、それぞれ複数有するようにして、前記相違点に係る複数のセンサの交互配置の構成(「第1のセンサ」及び「第2のセンサ」が、いずれも「複数」であり、「複数の第1のセンサ」は「複数の第2のセンサ」と「横方向に交互に配置されて」いる構成)とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 評価ユニットについて
(ア) 前記アの検討において、反対極性の電極の組を複数設けるように構成した場合に、極性の同じ側の組の出力をまとめて一つの「電位測定手段4」及び「算出手段5」(「評価ユニット」に相当)において処理するようにすることは、信号処理の単純化・迅速化の観点からみて、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
(イ) そうすると、引用発明において、前記相違点に係る評価ユニットの構成(「第1のチャンネル」に含まれる「第1の評価ユニット」及び「第2のチャンネル」に含まれる「第2の評価ユニット」という構成)とすることは、引用発明に周知技術1を適用する際に、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 接触部位について
(ア) 「センサと評価ユニットを、接触部位を介して電気的に接続すること」は、当業者にとって技術常識である(前記技術常識1を参照)。
(イ) 前記技術常識1を踏まえると、前記ア及びイの検討において、反対極性の電極の組を複数設けて、極性の同じ側の組の出力をまとめて一つの「電位測定手段4」及び「算出手段5」(「評価ユニット」に相当)において処理するようにした場合に、各電極の組(各センサ)と、「電位測定手段4」及び「算出手段5」(各評価ユニット)を、接触部位を介して電気的に接続するように構成することは、当業者にとって自明な設計変更にすぎない。
(ウ) そうすると、引用発明において、前記相違点に係る接触部位の構成(「第1のセンサ」と「第1の評価ユニット」の接続が「第1の接触部位を介して」おり、「第2のセンサ」と「第2の評価ユニット」の接続が「第2の接触部位を介して」いるという構成)とすることは、引用発明に周知技術1を適用する際に、前記技術常識1を踏まえて、当業者が容易に想到し得たことである。
(2) 総合評価
前記(1)において検討した結果をまとめると、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、拒絶理由通知で引用された引用文献1~3によっては拒絶されないと拒絶査定において言及された補正前の請求項23を補正後の請求項1としたことから、本願は特許すべきである旨を主張している。
(2) 請求人の主張についての検討
令和6年4月18日に提出された手続補正書による補正は、補正前の請求項27をその内容を変更することなく補正後の請求項26とするものであるところ、補正後の請求項26は、請求項1を引用しない独立請求項であって、請求項1に記載されている事項の全てを含むものでないから、補正後の請求項1についての請求人の上記主張は、補正後の請求項26については直ちには当てはまらないものである。
そして、補正後の請求項26に係る発明(本願発明)については、審判請求書において原査定における拒絶の理由に対する具体的主張が行われていない。
また、補正後の請求項26に係る発明(本願発明)が、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは、前記7において説示したとおりである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-006589