特許拒絶査定不服審判
2018-005479
ビークルおよびV型多気筒4ストロークエンジンユニット
- 審判番号
- 2018-005479
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-531488外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年04月20日
- 審決日
- 2019年03月18日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤマハ発動機株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人梶・須原特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (F01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-531488「ビークルおよびV型多気筒4ストロークエンジンユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年1月7日国際公開、WO2016/002956〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)7月3日(優先権主張2014年(平成26年)7月4日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成28年12月21日 :上申書の提出
平成29年8月16日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年10月11日 :意見書の提出
平成29年11月7日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年12月25日 :意見書の提出
平成30年2月6日(発送日) :拒絶査定
平成30年4月20日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、本願の願書に添付して提出した特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「V型多気筒4ストロークエンジンユニットが搭載されたビークルであって、
前記V型多気筒4ストロークエンジンユニットは、
クランク軸を含むクランクケース部と、
少なくとも一部が前記クランク軸の中心線よりも前記ビークルの前後方向の前方に配置される1つの前燃焼室と、前記1つの前燃焼室から排出される排ガスが流れる単一燃焼室用前シリンダ排気通路部とが形成された1つの前シリンダ部と、
少なくとも一部が前記クランク軸の中心線よりも前記ビークルの前後方向の後方に配置される1つの後燃焼室と、前記1つの後燃焼室から排出される排ガスが流れる単一燃焼室用後シリンダ排気通路部とが形成された1つの後シリンダ部と、を有するエンジン本体と、
前記単一燃焼室用前シリンダ排気通路部の下流端からビークルの前後方向の前方に排ガスを流した後、上下方向の下方に排ガスを流す前上流屈曲部と、前後端口とを有し、前記単一燃焼室用前シリンダ排気通路部の下流端から前記前後端口まで排ガスを流す単一燃焼室用前排気通路部と、
前記単一燃焼室用後シリンダ排気通路部の下流端からビークルの前後方向の後方に排ガスを流した後、上下方向の下方に排ガスを流す後上流屈曲部と、後後端口とを有し、前記単一燃焼室用後シリンダ排気通路部の下流端から前記後後端口まで排ガスを流す単一燃焼室用後排気通路部と、
前記単一燃焼室用前排気通路部の前記前後端口および前記単一燃焼室用後排気通路部の前記後後端口の両方から排ガスが流れ込む集合部と、
前記1つの前燃焼室および前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを大気に前記集合部を介して放出する放出口と、
前記前上流屈曲部と前記集合部の間の前記単一燃焼室用前排気通路部内に配置され、前記1つの前燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの前燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用前メイン触媒と、
前記後上流屈曲部と前記集合部の間の前記単一燃焼室用後排気通路部内に配置され、前記1つの後燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用後メイン触媒と、
前記単一燃焼室用前シリンダ排気通路部または前記単一燃焼室用前排気通路部において前記単一燃焼室用前メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用前上流酸素検出部材と、
前記単一燃焼室用後シリンダ排気通路部または前記単一燃焼室用後排気通路部において前記単一燃焼室用後メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用後上流酸素検出部材と、
前記単一燃焼室用前上流酸素検出部材および前記単一燃焼室用後上流酸素検出部材の信号を処理する制御装置と、
を備えることを特徴とするビークル。」
第3 原査定の拒絶の概要
1.原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の概要は以下のとおりである。
「この出願については、平成29年10月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
●理由(特許法第29条第2項)
・請求項1,8
・引用文献1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2005-220766号公報
2.特開2003-314263号公報
3.特開2008-64110号公報
4.特開2000-356128号公報」
2.平成29年10月30日付け拒絶理由通知書の概要
平成29年10月30日付け拒絶理由通知書(発送日:平成29年11月7日)の概要は以下の通りである。
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1,8
・引用文献等1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2005-220766号公報
2.特開2003-314263号公報
3.特開2008-64110号公報
4.特開2000-356128号公報」
第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2005-220766号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「内燃機関の空燃比制御装置」に関して、図面(特に、図1及び図9を参照。)とともに次の記載が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)
ア 「【0001】
本発明は、内燃機関に供給する燃料噴射量を気筒毎の排気通路の配置構成上の差異に応じて適切に制御する内燃機関の空燃比制御装置に関するものである。」
イ 「【0008】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、内燃機関の配置構成上の制約等にかかわらず、気筒毎の混合気の空燃比のリッチ側及びリーン側への変動幅を抑制してドライバビリティの向上、更には、気筒毎の触媒容量を最適化してエミッションの改善を図ることが可能な内燃機関の空燃比制御装置の提供を課題としている。」
ウ 「【0012】
請求項4の内燃機関の空燃比制御装置では、排気通路中で排気ポートからの距離が異なる位置にそれぞれ配設され、内燃機関から排出される排気ガスを気筒毎に浄化する触媒のうち、排気通路の距離が長い方の触媒容量が、排気通路の距離が短い方よりも大きく設定されることで、気筒毎に長さの異なる排気通路中の排気ガス量に対応する触媒のそれぞれの触媒容量が最適化されエミッションの低減が図られる。
【0013】
請求項5の内燃機関の空燃比制御装置では、内燃機関から排出される排気ガスを気筒毎に浄化する触媒のうち、排気通路の距離が長い方のセル数が、排気通路の距離が短い方よりも多く設定されることで、気筒毎に長さの異なる排気通路中の排気ガス量に対応する触媒のそれぞれの触媒容量が最適化されエミッションの低減が図られる。」
エ 「【0019】
図1は本発明の一実施例にかかる内燃機関の空燃比制御装置が適用された二輪車におけるV型4サイクル2気筒からなる内燃機関のうち排気通路の距離が短い気筒及びその周辺機器を示す概略構成図である。
【0020】
図1において、内燃機関1はV型4サイクル2気筒の火花点火式として構成され、その吸入空気は上流側からエアクリーナ2、吸気通路3、スロットルバルブ4を通過して吸気通路3内でインジェクタ(燃料噴射弁)5から噴射された燃料と混合され、所定空燃比の混合気として吸気ポート6から各気筒内に分配供給される。また、内燃機関1のシリンダヘッドには気筒毎に点火プラグ7が配設され、点火タイミング毎に点火コイル/イグナイタ8から高電圧が各気筒の点火プラグ7に印加され、各気筒内の混合気に点火される。そして、内燃機関1の各気筒で燃焼された排気ガスは排気ポート11から排気通路12の下流側に配設された三元触媒13を通過して大気中に排出される。
【0021】
エアクリーナ2内には吸気温センサ21が配設され、吸気温センサ21によってエアクリーナ2内に流入される吸気温THA〔℃〕が検出される。また、吸気通路3には吸気圧センサ22が配設され、吸気圧センサ22によってスロットルバルブ4の下流側の吸気圧PM〔kPa:キロパスカル〕が検出される。そして、スロットルバルブ4にはスロットル開度センサ23が配設され、スロットル開度センサ23によってスロットルバルブ4のスロットル開度TA〔°〕が検出される。また、内燃機関1のシリンダブロックには水温センサ24が配設され、水温センサ24によって内燃機関1内の冷却水温THW〔℃〕が検出される。そして、内燃機関1のクランクシャフト(図示略)にはクランク角センサ25が配設され、クランク角センサ25によってクランクシャフトの回転に伴い単位時間当たりに発生されるパルス数からなるクランク角信号に基づく機関回転速度NE〔rpm〕が検出される。更に、内燃機関1のカムシャフト(図示略)にはカム角センサ26が配設され、カム角センサ26によってカムシャフト回転角θ2 〔°CA(Crank Angle:クランク角)〕が検出される。
【0022】
また、排気通路12内の三元触媒13の上流側には酸素センサ27が配設され、酸素センサ27によって排気通路12の三元触媒13の上流側の酸素濃度に対応する出力電圧VOX〔V:ボルト〕が検出される。この酸素センサ27に替えて空燃比(A/F)センサを配設し、内燃機関1から排出される排気ガスにおける空燃比をリニアに検出してもよい。この他、車載バッテリ(図示略)には電源電圧センサ29が配設され、電源電圧センサ29によって電源電圧VB 〔V〕が検出される。
【0023】
なお、本実施例において、V型4サイクル2気筒からなる内燃機関1のうち排気通路の距離が長い気筒に対応するものについては、必要に応じて排気通路12′、三元触媒13′、酸素センサ27′及びその出力電圧VOX1〔V〕等として区別するものとする。」
オ 「【0026】
内燃機関1の運転状態を制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)50は、周知の各種演算処理を実行する中央処理装置としてのCPU51、制御プログラムや制御マップ等を格納したROM52、各種データを格納するRAM53、B/U(バックアップ)RAM54等を中心に論理演算回路として構成され、上述の各種センサからの検出信号を入力する入力ポート55及び各種アクチュエータとしてのインジェクタ5に後述の最終燃料噴射時間(最終燃料噴射量に相当)TAU、点火コイル/イグナイタ8に制御信号Ig、燃料ポンプ32に制御信号Ipや2次空気制御弁42に制御信号Iaを出力する出力ポート56に対しバス57を介して接続されている。」
カ 「【0061】
このように、本実施例の内燃機関の空燃比制御装置は、V型4サイクル2気筒からなる内燃機関1の気筒毎に独立して接続された長さの異なる排気通路12,12′と、排気通路12,12′中で排気ポート11,11′からの距離が異なる位置にそれぞれ配設され、内燃機関1から排出される排気ガスの酸素濃度を気筒毎に検出する酸素濃度検出手段としての酸素センサ27,27′と、二輪車の走行状態や内燃機関1の運転状態に伴って変化する物理量としての機関回転速度NE、スロットル開度TA、吸気圧PMを気筒毎に検出する物理量検出手段としてのクランク角センサ25、スロットル開度センサ23、吸気圧センサ22と、酸素センサ27,27′による酸素濃度に応じた検出値としての出力電圧VOX,VOX1がリッチ側とリーン側との間の判定値としての判定電圧αを経て反転遷移したときの反転方向を気筒毎に判別するECU50にて達成される反転方向判別手段と、前記反転方向判別手段で判別された反転方向に対して反対側に、空燃比フィードバック制御における空燃比フィードバック補正係数FAF,FAF1をスキップさせるタイミングを遅らせるためのディレイ時間TDR,TDL,TDR1,TDL1を、機関回転速度NE及びスロットル開度TAに基づき気筒毎に設定するECU50にて達成されるディレイ時間設定手段と、空燃比フィードバック補正係数FAF,FAF1をスキップさせるためのスキップ量KSI,KSD,KSI1,KSD1を、機関回転速度NE及びスロットル開度TAに基づき気筒毎に設定するECU50にて達成されるスキップ量設定手段と、空燃比フィードバック補正係数FAF,FAF1を徐変させるための積分定数KII,KID,KII1,KID1を、機関回転速度NE及びスロットル開度TAに基づき気筒毎に設定するECU50にて達成される積分定数設定手段と、積分定数KII,KID,KII1,KID1を設定するタイミングを遅らせるための積分ディレイ時間KDR,KDL,KDR1,KDL1を、機関回転速度NE及びスロットル開度TAに基づき気筒毎に設定するECU50にて達成される積分ディレイ時間設定手段と、ディレイ時間TDR,TDL,TDR1,TDL1、スキップ量KSI,KSD,KSI1,KSD1、積分定数KII,KID,KII1,KID1、積分ディレイ時間KDR,KDL,KDR1,KDL1により遷移される空燃比フィードバック補正係数FAF,FAF1に応じて気筒毎に供給する最終燃料噴射時間(燃料噴射量)TAU,TAU1を制御するECU50にて達成される燃料噴射量制御手段とを具備するものである。また、本実施例の内燃機関の空燃比制御装置は、内燃機関1が二輪車に搭載されているものである。」
キ 「【0065】
次に、V型4サイクル2気筒からなる内燃機関1の気筒毎に独立して接続された長さの異なる排気通路12,12′に配設されている三元触媒13,13′の触媒容量の最適化について、図9を参照して説明する。ここで、図9はV型4サイクル2気筒からなる内燃機関1を搭載した二輪車の要部構成を示す概略図であり、図中の14,14′はマフラ、二点鎖線にて前後輪のタイヤ外径を示す。なお、図9の内燃機関1の上部に搭載されている吸気系及び燃料供給系等については、図1にて説明されているため省略する。
【0066】
上述したように、V型4サイクル2気筒からなる内燃機関1の気筒毎に独立して接続された長さの異なる排気通路12,12′の空燃比フィードバック補正係数FAF,FAF1に応じて最終燃料噴射時間TAU,TAU1が算出され、これら最終燃料噴射時間TAU,TAU1に基づき気筒毎の混合気の空燃比が最適化されることで二輪車におけるドライバビリティは向上される。
【0067】
ところで、図8に示すように、距離が長い排気通路12′における空燃比フィードバック補正係数FAF′は、図5に示すように、距離が短い排気通路12における空燃比フィードバック補正係数FAFよりも周期が長くなる。これに対処するためには、距離が長い排気通路12′の三元触媒13′と距離の短い排気通路12の三元触媒13とで排気ガス浄化のための許容量を変えればよいことが分かる。
【0068】
そこで、図9に示すように、距離が長い排気通路12′に配設された三元触媒13′の触媒容量が、距離が短い排気通路12に配設された三元触媒13の触媒容量よりも大きく設定する。これにより、気筒毎の触媒容量が最適化されエミッションの改善を図ることができる。なお、三元触媒13,13′に担持されている触媒密度や触媒成分を変えることも有効である。
【0069】
このように、本実施例の内燃機関の空燃比制御装置は、排気通路12,12′中で排気ポート11,11′からの距離が異なる位置にそれぞれ配設され、内燃機関1から排出される排気ガスを気筒毎に浄化する三元触媒13,13′を具備し、三元触媒13,13′は排気通路12′の距離が長い方の触媒容量を、排気通路12の距離が短い方よりも大きく設定するものである。これにより、気筒毎に長さの異なる排気通路12,12′中の排気ガス量に対応する三元触媒13,13′のそれぞれの触媒容量が最適化されエミッションの低減を図ることができる。」
ク 上記エの記載事項及び図1の図示内容、内燃機関は燃焼室及び燃焼室から排出される排ガスが流れるシリンダ排気通路部を有すること、並びに内燃機関はクランクシャフトとともにクランクシャフトを含むクランクケース部を有するとの技術常識からみて、引用文献1のV型4サイクル2気筒の内燃機関1の気筒には燃焼室とシリンダ排気通路部が形成され、さらに引用文献1のV型4サイクル2気筒の内燃機関1はクランクシャフトを含むクランクケース部を有するといえる。
ケ 上記カの記載事項、上記ク及び図9の図示内容並びにV型エンジンはクランクシャフトに対しシリンダ部をV型に配置したエンジンであるとの技術常識からみて、引用文献1のV型4サイクル2気筒の内燃機関1の排気通路12′が設けられる気筒は、二輪車の前後方向の前方に配置される気筒といえる。同様に、排気通路12が設けられる気筒は、二輪車の前後方向の後方に配置される気筒といえる。
コ 上記ク及びケの事項並びに図1、図9の図示内容からみて、引用文献1のV型4サイクル2気筒の内燃機関1の排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室は、少なくとも一部がクランク軸の中心線よりも二輪車の前後方向の前方に配置されているといえる。同様に、排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室は、少なくとも一部がクランク軸の中心線よりも二輪車の前後方向の後方に配置されているといえる。
サ 上記クないしコの事項及び上記エの記載事項からみて、引用文献1の内燃機関1はV型4サイクル2気筒の内燃機関1であることから、引用文献1のV型4サイクル2気筒の内燃機関1の排気通路12′が設けられる気筒は一つの気筒であって、燃焼室は一つであるといえる。同様に、V型4サイクル2気筒の内燃機関1の排気通路12が設けられる気筒は一つの気筒であって、燃焼室は一つであるといえる。
シ 上記キの記載事項及び図9の図示内容からみて、排気通路12′は、排気通路12′が設けられる気筒のシリンダ排気通路部の下流端から二輪車の前後方向の前方に排気ガスを流した後、上下方向の下方に排気ガスを流す排気通路12′の屈曲部及び排気通路12′の後端口を有し、排気ガスを排気通路12′が設けられる気筒から排気通路12′の後端口まで流し、さらにマフラ14′から放出する排気経路を有するといえる。同様に、排気通路12は、排気通路12が設けられる気筒のシリンダ排気通路部の下流端から二輪車の前後方向の後方に排気ガスを流した後、上下方向の下方に排気ガスを流す排気通路12の屈曲部及び排気通路12の後端口を有し、排気ガスを排気通路12が設けられる気筒から排気通路12の後端口まで流し、さらにマフラ14から放出する排気経路を有するといえる。
ス 上記キの記載事項及び図9の図示内容からみて、距離が長い排気通路12′に配設された三元触媒13′は、専ら距離の長い排気通路12′の排気ガスが通過するものであるから、排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排気ガスを最も浄化する三元触媒13′といえる。同様に、距離が短い排気通路12に配設された三元触媒13は、専ら距離の短い排気通路12の排気ガスが通過するものであるから、排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排気ガスを最も浄化する三元触媒13といえる。
これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「V型4サイクル2気筒の内燃機関1が搭載された二輪車であって、
前記V型4サイクル2気筒の内燃機関1は、
クランクシャフトを含むクランクケース部と、
少なくとも一部が前記クランクシャフトの中心線よりも前記二輪車の前後方向の前方に配置される排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室と、前記排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出される排気ガスが流れる排気通路12′が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部とが形成された排気通路12′が設けられる気筒と、
少なくとも一部が前記クランクシャフトの中心線よりも前記二輪車の前後方向の後方に配置される排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室と、前記排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出される排気ガスが流れる排気通路12が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部とが形成された排気通路12が設けられる気筒と、を有するV型4サイクル2気筒の内燃機関1と、
前記排気通路12′が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部の下流端から二輪車の前後方向の前方に排気ガスを流した後、上下方向の下方に排気ガスを流す排気通路12′の屈曲部と、排気通路12′の後端口とを有し、前記排気通路12′が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部の下流端から前記排気通路12′の後端口まで排気ガスを流す排気通路12′と、
前記排気通路12が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部の下流端から二輪車の前後方向の後方に排気ガスを流した後、上下方向の下方に排気ガスを流す排気通路12の屈曲部と、排気通路12の後端口とを有し、前記排気通路12が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部の下流端から前記排気通路12の後端口まで排気ガスを流す排気通路12と、
前記排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室および前記排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排気ガスを大気に放出するマフラ14、14′と、
前記排気通路12′内に配置され、前記排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室から前記マフラ14、14′までの排気経路において、前記排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排気ガスを最も浄化する三元触媒13′と、
前記排気通路12内に配置され、前記排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から前記マフラ14、14′までの排気経路において、前記排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する三元触媒13と、
前記排気通路12′において前記三元触媒13′よりも排気ガスの流れ方向の上流に配置され、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ27′と、
前記排気通路12において前記三元触媒13よりも排気ガスの流れ方向の上流に配置され、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ27と、
前記酸素センサ27′および前記酸素センサ27の信号を処理するECU50と、
を備える二輪車。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2003-314263号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面(特に、図1を参照。)とともに次の記載が記載されている。
ア 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、多気筒エンジンで各気筒を1列ではなく、2列に配置したいわゆる水平対向エンジンやV型エンジンにおいては、各列ごとに排気系統を備えるのが一般的である。こうしたエンジンにおいても2次空気供給系は各排気系統ごとにそれぞれ独立して設置されるのではなく、エアポンプや開閉弁を共用して、その下流側で各排気系統に分岐させる構成が一般的である。」
イ 「【0014】図1は、本発明に係る2次空気供給装置を備える内燃機関の構成を示す概略図である。この2次空気供給装置1は、内燃機関である多気筒ガソリンエンジン(以下、単にエンジンと呼ぶ。)2に取り付けられるものである。このエンジン2は、気筒(シリンダ)20をV字型に配列したV型配列エンジンである。
【0015】このエンジン2の吸気系3は、図示していないスロットルボディの下流に接続された共通のサージタンク30からインテークマニホールド31によって各気筒20へV字の内側から分岐接続されている。
【0016】また排気系4は、同一バンクの気筒20各々に接続され、排気を集合させるエキゾーストマニホールド40a、40bがV字の両脇にそれぞれ接続されている。各エキゾーストマニホールド40a、40bの下流には、三元触媒からなる排気浄化装置41a、41bがそれぞれ配置されており、合流管42によって合流された後、マフラー43を通過して大気中に排出される。各エキゾーストマニホールド40a、40bの排気浄化装置41a、41b近傍(上流)には空燃比検出のためのA/Fセンサ44a、44bが配置されている。」
これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2の記載事項」という。)が記載されている。
「V型配列エンジンであるエンジン2において、下流に三元触媒からなる排気浄化装置41a、41bがそれぞれ配置されたエキゾーストマニホールド40a、40bがV字の両脇にそれぞれ接続され、合流管42によって合流され、マフラー43を通過して排気が大気中に排出される点。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「V型4サイクル2気筒の内燃機関1」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「エンジン本体」に相当し、以下同様に、「クランクシャフト」は「クランク軸」に、「排気ガス」は「排ガス」に、「二輪車」は「ビークル」にそれぞれ相当する。
また、後者の「排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「1つの前燃焼室」に相当し、以下同様に、「排気通路12′が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部」は「単一燃焼室用前シリンダ排気通路部」に、「排気通路12′が設けられる気筒」は「1つの前シリンダ部」に、「排気通路12′の屈曲部」は「前上流屈曲部」に、「排気通路12′の後端口」は「前後端口」に、「排気通路12′」は「単一燃焼室用前排気通路部」に、「酸素センサ27′」は「単一燃焼室用前上流酸素検出部材」にそれぞれ相当する。
同様に、後者の「排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「1つの後燃焼室」に相当し、以下同様に、「排気通路12が設けられる気筒に形成されるシリンダ排気通路部」は「単一燃焼室用後シリンダ排気通路部」に、「排気通路12が設けられる気筒」は「1つの後シリンダ部」に、「排気通路12の屈曲部」は「後上流屈曲部」に、「排気通路12の後端口」は「後後端口」に、「排気通路12」は「単一燃焼室用後排気通路部」に、「酸素センサ27」は「単一燃焼室用後上流酸素検出部材」に、「ECU50」は「制御装置」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「前記排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室および前記排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排気ガスを大気に放出するマフラ14、14′」と前者の「前記1つの前燃焼室および前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを大気に前記集合部を介して放出する放出口」とは、「前記1つの前燃焼室および前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを大気に放出する放出口」という限りで一致する。同様に、後者の「排気通路12′内に配置され、前記排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室から前記マフラ14、14′までの排気経路において、前記排気通路12′が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排気ガスを最も浄化する三元触媒13′」と前者の「前記前上流屈曲部と前記集合部の間の前記単一燃焼室用前排気通路部内に配置され、前記1つの前燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの前燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用前メイン触媒」とは「前記単一燃焼室用前排気通路部内に配置され、前記1つの前燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの前燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用前メイン触媒」という限りで一致し、後者の「前記排気通路12内に配置され、前記排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から前記マフラ14、14′までの排気経路において、前記排気通路12が設けられる気筒に形成される燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する三元触媒13」と前者の「前記後上流屈曲部と前記集合部の間の前記単一燃焼室用後排気通路部内に配置され、前記1つの後燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用後メイン触媒」とは、「前記単一燃焼室用後排気通路部内に配置され、前記1つの後燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用後メイン触媒」という限りで一致する。
また、後者の「三元触媒13′」は前者の「単一燃焼室用前メイン触媒」に相当し、後者の「三元触媒13」は前者の「単一燃焼室用後メイン触媒」に相当する。
そして、後者の「前記排気通路12′において前記三元触媒13′よりも排気ガスの流れ方向の上流に配置され、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ27′」と前者の「前記単一燃焼室用前シリンダ排気通路部または前記単一燃焼室用前排気通路部において前記単一燃焼室用前メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用前上流酸素検出部材」とは、「前記単一燃焼室用前排気通路部において前記単一燃焼室用前メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用前上流酸素検出部材」という限りで一致し、同様に、後者の「前記排気通路12において前記三元触媒13よりも排気ガスの流れ方向の上流に配置され、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ27」と前者の「前記単一燃焼室用後シリンダ排気通路部または前記単一燃焼室用後排気通路部において前記単一燃焼室用後メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用後上流酸素検出部材」とは、「前記単一燃焼室用後排気通路部において前記単一燃焼室用後メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用後上流酸素検出部材」という限りで一致する。
また、後者の「酸素センサ27′」は前者の「単一燃焼室用前上流酸素検出部材」に相当し、後者の「酸素センサ27」は前者の「単一燃焼室用後上流酸素検出部材」に相当する。
そして、後者の「クランクケース部」と「排気通路12′が設けられる気筒」と「排気通路12が設けられる気筒」とを有する「V型4サイクル2気筒の内燃機関1」、「排気通路12′」、「排気通路12」、「マフラ14、14′」、「三元触媒13′」、「三元触媒13」、「酸素センサ27′」、「酸素センサ27」及び「ECU50」からなるものは、前者の「V型多気筒4ストロークエンジンユニット」に相当するものといえる。
したがって、両者は、
「V型多気筒4ストロークエンジンユニットが搭載されたビークルであって、
前記V型多気筒4ストロークエンジンユニットは、
クランク軸を含むクランクケース部と、
少なくとも一部が前記クランク軸の中心線よりも前記ビークルの前後方向の前方に配置される1つの前燃焼室と、前記1つの前燃焼室から排出される排ガスが流れる単一燃焼室用前シリンダ排気通路部とが形成された1つの前シリンダ部と、
少なくとも一部が前記クランク軸の中心線よりも前記ビークルの前後方向の後方に配置される1つの後燃焼室と、前記1つの後燃焼室から排出される排ガスが流れる単一燃焼室用後シリンダ排気通路部とが形成された1つの後シリンダ部と、を有するエンジン本体と、
前記単一燃焼室用前シリンダ排気通路部の下流端からビークルの前後方向の前方に排ガスを流した後、上下方向の下方に排ガスを流す前上流屈曲部と、前後端口とを有し、前記単一燃焼室用前シリンダ排気通路部の下流端から前記前後端口まで排ガスを流す単一燃焼室用前排気通路部と、
前記単一燃焼室用後シリンダ排気通路部の下流端からビークルの前後方向の後方に排ガスを流した後、上下方向の下方に排ガスを流す後上流屈曲部と、後後端口とを有し、前記単一燃焼室用後シリンダ排気通路部の下流端から前記後後端口まで排ガスを流す単一燃焼室用後排気通路部と、
前記1つの前燃焼室および前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを大気に放出する放出口と、
前記単一燃焼室用前排気通路部内に配置され、前記1つの前燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの前燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用前メイン触媒と、
前記単一燃焼室用後排気通路部内に配置され、前記1つの後燃焼室から前記放出口までの排気経路において、前記1つの後燃焼室から排出された排ガスを最も浄化する単一燃焼室用後メイン触媒と、
前記単一燃焼室用前排気通路部において前記単一燃焼室用前メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用前上流酸素検出部材と、
前記単一燃焼室用後排気通路部において前記単一燃焼室用後メイン触媒よりも排ガスの流れ方向の上流に配置され、排ガス中の酸素濃度を検出する単一燃焼室用後上流酸素検出部材と、
前記単一燃焼室用前上流酸素検出部材および前記単一燃焼室用後上流酸素検出部材の信号を処理する制御装置と、
を備えるビークル。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
前者は、「前記単一燃焼室用前排気通路部の前記前後端口および前記単一燃焼室用後排気通路部の前記後後端口の両方から排ガスが流れ込む集合部」を備え、放出口は排ガスを「前記集合部」を介して放出する放出口であり、単一燃焼室用前メイン触媒は、「前記前上流屈曲部と前記集合部の間の」単一燃焼室用前排気通路部内に配置された単一燃焼室用前メイン触媒であり、単一燃焼室用後メイン触媒は、「前記上流屈曲部と前記集合部の間の」単一燃焼室用後排気通路部内に配置された単一燃焼室用後メイン触媒であるのに対し、後者は「集合部」に係る構成を有しておらず、マフラ14、14′、三元触媒13′及び三元触媒13も「集合部」とは関連しない点。
第6 判断
相違点について検討する。
引用文献2の記載事項は以下のとおりである。
「V型配列エンジンであるエンジン2において、下流に三元触媒からなる排気浄化装置41a、41bがそれぞれ配置されたエキゾーストマニホールド40a、40bがV字の両脇にそれぞれ接続され、合流管42によって合流され、マフラー43を通過して排気が大気中に排出される点。」
ここで、引用文献2の記載事項の「V型配列エンジンであるエンジン2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明の「V型多気筒4ストロークエンジンユニット」に相当し、同様に、「排気浄化装置41a」は「単一燃焼室用前メイン触媒」及び「単一燃焼室用後メイン触媒」の一方に、「排気浄化装置41b」は「単一燃焼室用前メイン触媒」及び「単一燃焼室用後メイン触媒」の他方に、「エキゾーストマニホールド40a」は「単一燃焼室用前排気通路部」及び「単一燃焼室用後排気通路部」の一方に、「エキゾーストマニホールド40b」は「単一燃焼室用前排気通路部」及び「単一燃焼室用後排気通路部」の他方に、「合流管42」は「集合部」に、「マフラー43」は「放出口」に、「排気」は「排ガス」にそれぞれ相当する。
してみると、引用文献2の記載事項は以下のものということができる。
「V型多気筒4ストロークエンジンユニットにおいて、単一燃焼室用前メイン触媒、単一燃焼室用後メイン触媒がそれぞれ配置された単一燃焼室用前排気通路部及び単一燃焼室用後排気通路部がそれぞれ接続され、集合部によって合流され、放出口を通過して排ガスが大気中に排出される点。」
そして、引用発明と引用文献2の記載事項とは、V型多気筒4ストロークエンジンユニットである点で共通し、引用発明において引用文献2の記載事項の採用を阻害する格別な事情を見出すこともできない。
また、引用文献1の図9の図示事項からみて、引用発明の三元触媒13′は、排気通路12′の屈曲部とマフラ14′との間の排気通路12′に配置され、同様に三元触媒13は、排気通路12の屈曲部とマフラ14との間の排気通路12に配置されているから、引用発明において、引用文献2の記載事項を踏まえてなし得た発明の三元触媒13′が、「前上流屈曲部と前記集合部の間の単一燃焼室用前排気通路部内に配置」され、同様に、三元触媒13が、「後上流屈曲部と前記集合部の間の単一燃焼室用後前排気通路部内に配置」されることになることは、当業者であれば容易に理解できたことである。
そうすると、引用発明において、引用文献2の記載事項を踏まえて、機能集約その他の理由により、当業者の通常の創作能力の範囲で上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得たことである。
また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「引用文献1に記載の技術は、前側気筒と前側気筒用の酸素センサとの距離が、後側気筒と後側気筒用の酸素センサとの距離よりも長くなることによる課題を解決することを目的としています。引用文献1では、この目的を達成するために、距離が長い排気通路12´に配設されたメイン触媒13´の容量を、距離が短い排気通路12に配設されたメイン触媒13の容量よりも大きく設定しています(引用文献1の段落[0068]参照)。つまり、引用文献1は、前メイン触媒と前燃焼室との距離が、後メイン触媒と後燃焼室との距離よりも長くなるように2つのメイン触媒を配置することを前提とした課題を解決する技術です。
仮に、引用文献1の排気通路12´、12の自由な位置にメイン触媒13´13を配置してもよいのであれば、前メイン触媒13´と前燃焼室との距離が後メイン触媒13と後燃焼室との距離と同じになるように、メイン触媒13´13を配置することも可能です。そうすることで、前メイン触媒13´と前燃焼室との距離が後メイン触媒13と後燃焼室との距離よりも長くなることで生じる課題は、生じなくなります。それにも関わらず、あえて引用文献1では、メイン触媒13´、13をマフラー14´、14の入口に配置しています。
このことから、引用文献1では、前メイン触媒13´と前燃焼室との距離が後メイン触媒13と後燃焼室との距離と同じになるように2つのメイン触媒13´、13を配置することよりも、メイン触媒13´、13をマフラー14´、14の入口に配置することが重要とみなしていると考えられます。つまり、引用文献1では、メイン触媒13´、13をマフラー14´、14の入口以外の位置に配置した場合に生じる課題を解決するために、メイン触媒13´、13をマフラー14´、14の入口に配置していると考えられます。
引用文献2には、集合部より上流(マフラーより上流)に、異なるバンクから排出された排ガスをそれぞれ最も浄化する2つのメイン触媒41a、41bを配置することが開示されています。
仮に、機能集約による部品点数低減のために、集合部を設けて2つのマフラー機能を1つのマフラーに集約させる構成を、引用文献1の自動二輪車に適用するのであれば、前メイン触媒と後メイン触媒を1つのメイン触媒に集約させて、マフラーの入口に配置するはずです。なぜならば、もし、引用文献2に記載されているように、2つのメイン触媒を集合部より上流に配置すると、引用文献1に暗黙に示された、メイン触媒をマフラーの入口以外の位置に配置した場合に生じる課題が生じてしまうからです。」と主張する。
しかしながら、引用文献1の段落【0008】の「気筒毎の触媒容量を最適化してエミッションの改善を図る」との記載及び段落【0068】の「距離が長い排気通路12′に配設された三元触媒13′の触媒容量が、距離が短い排気通路12に配設された三元触媒13の触媒容量よりも大きく設定する。これにより、気筒毎の触媒容量が最適化されエミッションの改善を図ることができる。」との記載からみて、引用発明は、気筒毎の触媒容量を最適化することを目的として、排気通路12′に三元触媒13′を配し、排気通路12に三元触媒13を配するものである。そうすると、仮に、機能集約による部品点数低減を理由として、引用発明において、引用文献2の記載事項を踏まえて当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得た発明についても、引用発明の該目的を果たすために、排気通路12′に三元触媒13′を配し、排気通路12に三元触媒13を配する必要があることは、当業者であれば容易に理解できるものである。また、排気ガス用の触媒の配置において、排気ガスが合流する部分よりも上流に触媒を設けることは、引用文献2の記載事項のみならず、特開平7-63094号公報(段落【0013】及び図1を参照。)にみられるように従来周知の技術である。そうすると、引用発明が請求人の主張するような課題を解決する技術であったとしても、引用発明において、引用文献2の記載事項を踏まえ、当該請求人が主張する課題を解決しつつ、当業者の通常の創作能力の範囲で相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは容易になし得たものといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-005479