特許拒絶査定不服審判
2023-009841
触媒的汚染除去のための水素還元剤
- 審判番号
- 2023-009841
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-554834
- 請求日
- 2023年06月14日
- 審決日
- 2025年04月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ビーエーエスエフ モバイル エミッションズ カタリスツ エルエルシー
- 【請求人代理人】江藤 聡明
- 【請求人代理人】倉脇 明子
- 【請求人代理人】山口 修
- 【請求人代理人】稲垣 謙司
- 【請求人代理人】長山 弘典
- 審判長/審判官
- 審判長 山本 信平
- 審判官 河端 賢
- 審判官 倉橋 紀夫
- 分類
- P18 .121-WZ (F01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-554834「触媒的汚染除去のための水素還元剤」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日国際公開、WO2018/185661、令和2年5月28日特許出願公表、特表2020-515765〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2019-554834号(以下、「本願」という。)は、2018年(平成30年)4月3日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2017年4月4日、アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 6月27日付け :拒絶理由通知(発送日:同年7月5日)
令和4年10月18日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年 2月 6日付け :拒絶査定(発送日:同年2月14日)
令和5年 6月14日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和6年 4月 9日付け :拒絶理由通知(発送日:同年4月16日)
令和6年 7月 1日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 8月22日付け :拒絶理由通知(発送日:同年8月27日)
令和6年11月20日 :意見書の提出
第2 本願発明
令和6年7月1日に提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムであって、
内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒物品と、
触媒物品および内燃機関の排気ガス流と流体連通しており、触媒物品の上流で排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品と、
水素貯蔵物品と
を含むシステムであって、
前記水素噴射物品が、コールドスタート期間中に水素を導入するように構成され、
前記触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃から約180℃の温度にあるときに、前記水素噴射物品が水素を導入するように構成され、
前記システムが、排気ガス流中の1種または複数の汚染物質を除去するのに有効であり、汚染物質が、CO、HC、NOx、およびこれらの組合せからなる群から選択され、
前記触媒物品が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、およびこれらの組合せからなる群から選択される耐火金属酸化物支持体を含む触媒組成物を含み、
前記触媒物品が、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含み、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、マンガン、鉄、クロム、スズ、亜鉛、ニッケル、コバルト、および銅からなる群から選択される1種または複数の金属をさらに含み、さらに
前記触媒物品が、触媒コーティングが表面に配置された流通(flow-through)モノリス基材、または触媒コーティングが表面に配置された壁流フィルター基材を含み、
水素が水から発生され、水の供給源が大気水である、
前記システム。」
第3 拒絶の理由
令和6年8月22日付けで当審より請求項1について通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
1(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3にて例示される周知技術及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、その優先日前(審決注:令和6年8月22日付け拒絶理由通知における「出願前」は「優先日前」の誤記である。)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2003-507631号公報
2.特表2016-539803号公報(周知技術を示す文献)
3.特表2010-519038号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-206928号公報(新たに引用された文献)
第4 引用文献
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
ア 引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「 【0001】
本発明は、殊に自動車におけるリーンバーン型エンジン、例えば直噴ディーゼルエンジンおよび直噴ガソリンエンジンのために排気ガス後処理する方法および装置、ならびにガソリンエンジン中およびディーゼルエンジン中のNOX蓄積触媒ならびにディーゼルエンジン中の粒子フィルターの機能の維持に関する。」
(イ)「 【0005】
本発明の課題は、自動車における現在のリーンバーン型エンジン、殊に直噴部を有するガソリンエンジンおよび直噴部を有するディーゼルエンジンにおいて排気ガスを後処理する際に上述の困難を回避し、内燃機関によって発生される排気ガスを後処理する方法および装置を、必要な際に排気ガス温度を上昇させ、排気ガスの品質を全体的に特に内燃機関の一定の運転条件の際に改善させ、同時にエンジンの音響学的効果を劣化させず、ならびに蓄積触媒および/または粒子フィルターの再生を規則的な時間間隔で可能にしおよび/または硫黄の毒化後にNOX蓄積触媒および粒子フィルターの酸化段階で可能にする程度に記載することである。
【0006】
この課題は、特許請求の範囲の記載により解決される。
【0007】
1つの本質的な視点によれば、排気ガスを後処理するための本発明による方法の場合には、水素を取得するための加水分解ユニットが準備されており、この場合この加水分解ユニットは、一面で水溜めと接続され、他面、計量供給装置と接続されており、この計量供給装置は、一定の運転状態および/または触媒の機能の際に生じる、水素の必要量に依存して、粗製排気ガスおよび/または酸化触媒によって処理された排気ガスに供給される水素量の計量供給のために備えられている。
【0008】
本方法の1つの実施態様の場合、それぞれ必要とされる水素量は、要求に応じて、即ち非連続的に加水分解ユニット中で発生させることができ、次に計量供給のためにそのまま提供されうる。
【0009】
本方法の1つの選択的な実施態様の場合には、加水分解ユニットによって発生される一定量の水素を中間貯蔵する水素溜めが設けられていてよい。
【0010】
この場合、水素溜めの大きさ、ひいては中間貯蔵された水素の量は、NOX蓄積触媒の加熱および再生に十分であるような程度に定められていてよい。
【0011】
計量供給装置と加水分解ユニットとの間に結合管を相応して設計する場合には、溜めは、管路の内径によって表わされていてよい。
【0012】
好ましくは、供給することができる水素の計量供給のために、粗製排気ガスの温度、λ値およびさらに触媒系の一定の運転状態が検出される。
【0013】
殊に直噴部を有するディーゼルエンジンにおいて、エンジン内での炭化水素の発生が不可能である場合には、排気ガスへの水素の添加は、活性化される。
【0014】
ガソリンエンジン、殊に直噴部を有するかかるガソリンエンジンにおいて、瞬間のエンジン運転時点で十分な温度でエンジン内での炭化水素の準備が不可能である場合には、排気ガスへの水素の添加が活性化される。
【0015】
本発明による方法は、水素還元による蓄積触媒または粒子フィルターの酸化段階の再生によってNOX蓄積触媒または粒子フィルターの酸化段階での硫黄毒化後に十分な変換率を再生するために使用することができる。この場合、再生は、NOX蓄積触媒または粒子フィルターの変換率の減少が検出される場合に、水素の添加によって常に活性化されることができる。
【0016】
内燃機関の温度限界の弱い負荷運転において、本発明により行なわれる水素の添加によって、弱い負荷範囲内で粒子フィルター(8)を運転する際に再生条件を保証する目的で排気ガス温度(TA)は、上昇されうる。
【0017】
殊に自動車における内燃機関の排気ガスを後処理する、上記課題を解決する装置の場合には、加水分解ユニットと粗製排気ガスおよび/または酸化触媒によって処理された排気ガスに水素を計量供給して添加する、水素導管を介して前記加水分解ユニットと結合された計量供給装置と制御/調節ユニットが設けられており、加水分解ユニット中での水素の発生および計量供給装置を内燃機関の一定の運転状態および排気ガス系の検出されるパラメーターを制御または調節するために、前記の制御/調節ユニットが加水分解ユニットおよび計量供給装置と機能的に結合されている。
【0018】
計量供給装置は、有利に計量供給弁および遮断弁である。
【0019】
有利に制御/調節ユニットは、排気ガスセンサーと機能的に結合している触媒監視機能を有している。
【0020】
本発明による方法および本発明による装置の上記の他の好ましい特徴は、本発明による方法および本発明による装置の好ましい実施例の次の記載に図に関連して詳説されている。
【0021】
実施例
図1は、本発明による方法の第1の実施例の本質的な機能および要素を説明するブロックを略示的に示す。水タンク19から取り出された水から、加水分解ユニット10は、必要に応じて水素(H2)を一定量で発生させ、この水素は、水素導管17を通じて減圧弁14により計量供給/遮断弁15に添加され、この計量供給/遮断弁からポイント6で粗製排気ガスに混合されおよび/または酸化触媒3によって処理された排気ガスにポイント7で、内燃機関1から案内される排気ガス導管2中に添加される。矢印Aは、排気ガスの流動方向を示す。排気ガス管2において、酸化触媒3には、NOX蓄積触媒が後接続されている。
【0022】
加水分解ユニット10によって発生されるH2ガスは、それぞれ必要とされる量で必要に応じて発生させることができるかまたは加水分解ユニット10と減圧弁14との間に水素溜め11が接続されていてもよく、この水素溜めから凝縮物返送管RKは、遮断弁16を介して水容器19に案内されている。中間貯蔵装置として使用される水素溜め11と結合されているのは、圧力センサー13である。更に、安全弁12が水素溜め11に取り付けられている。また、場合によっては水素溜め11は、H2導管17の内径によって表わされてもよい。
【0023】
計量供給/遮断弁は、必要に応じてポイント6で流入する水素、即ち粗製排気ガスに混合される水素含量および酸化触媒3により(ポイント7で)排気ガスに混合される水素含量を別々に計量供給することができるように設計されていてよい。
【0024】
更に、図1は、制御/調節ユニット18が1つの接点を有し、この接点が加水分解ユニット10と、水素溜め11の圧力センサー13と、計量供給/遮断弁15と、遮断弁16と、排気ガス温度TAを測定する温度センサー5と接続されている。制御/調節ユニット18は、加水分解ユニット10中での水素の発生および計量供給装置15を内燃機関1の一定の運転状態および排気ガス系の検出されたパラメーターに依存して制御および調節するために備えられており、この場合このパラメータの検出のためには、排気ガス温度TAを上昇させる。
【0025】
排気ガスの後処理のために本発明による装置を装備した内燃機関1が例えば直噴ガソリンエンジンである場合には、本発明による方法は、種々の方法で使用することができる:
1.瞬間のエンジン運転時点で十分な温度でエンジン側でのHCの準備が不可能である場合には、NOX蓄積触媒4で再生段階を得るために、H2を粗製排気ガス中へ(ポイント6で)添加する。制御/調節ユニット18による再生の制御は、直噴ガソリンエンジンの場合のNOX触媒制御と同様に行なわれる。
【0026】
2.NOX蓄積触媒4の酸化段階での硫黄毒化後に十分な変換率が再現される。これは、例えば数時間の運転時間後に燃料の硫黄含量に依存して必要とされる。制御/調節ユニット18による再生の制御は、変換率の減少が確認された後に行なわれる。そのために、相応する触媒センサーと接続されている制御/調節ユニット18は、触媒監視機能を有する。
【0027】
図2は、第2の実施例を表わし、この場合本発明による方法は、CRT粒子フィルターを備えた自動車エンジン、例えば直噴部を有するディーゼルエンジンの場合に排気ガスの後処理に使用される。この種の粒子フィルター、例えば図2に示されている粒子フィルターは、直噴ディーゼルエンジン1の排気ガス管2中に含まれている。CRT粒子フィルター8には、酸化触媒3が前接続されている。加水分解ユニット10によって発生されかつ計量供給/遮断弁15によって相応する量で計量供給される水素は、ポイント6で排気ガス管2を貫流する(矢印A)粗製排ガスに混入される。全体的に図示された装置の別の装置の詳細は、上記の図1に示された装置の場合と同様に図2に示されている。
【0028】
この場合も多数の使用例は区別される。
【0029】
1.ディーゼルエンジンにおいて、エンジン内でのHC発生が不可能である場合には、粒子フィルター8の再生段階を作り出すためにH2は、粗製排気ガスに添加される。再生は、NOX触媒制御と同様に直噴ガソリンエンジンの場合に制御される。
【0030】
2.ディーゼルエンジンにおいて、本発明による方法を用いた場合には、粒子フィルター8の硫黄毒化後の十分な変換率は、本発明による方法によって再び得ることができる。これは、例えば数時間の運転時間後に燃料の硫黄含量に依存して必要とされる。粒子フィルター8の再生の制御は、変換率の減少が認められた後に使用することができ、このために制御/調節ユニット18中に触媒監視機能が組み込まれている。
【0031】
3.排気ガス温度は、温度限界の弱い負荷領域において粒子フィルター8を運転する際に再生条件を保証する目的で本発明により水素を導入することによって上昇されることができる。
【0032】
図2の場合にも、H2溜めは単に場合によっては存在し、十分な内径を有する1つのH2管の代わりに中間貯蔵装置として使用されるH2溜め11が代替されうる。
【0033】
結局のところ、殊に自動車における内燃機関の排気ガスを排気ガス後処理するための本発明による方法は、排気ガス温度および触媒温度の上昇に使用され、このことは、殊に冷態始動の場合および弱い負荷運転の場合に必要とされる。更に、本発明による方法を用いた場合には、水素は、”車中で”一時的な運転で発生されることができ、必要に応じて使用する場合には、計量供給/遮断弁15を介して触媒または粒子フィルターに添加されうる。”共通のレール(Common Rail)”の噴射系を前提とするエンジン内でのHCの発生とは異なり、排気ガスの品質、殊に粒子速度およびエンジンの音響効果は、付加的に劣化されない。その上、この系の応答挙動は、水素の添加の際に遙かに迅速になる。」
(ウ)「
[図:0001427166000001.jpg]
」(【図1】)
(エ)「
[図:0001427166000002.jpg]
」(【図2】)
(2)引用発明
上記(1)を総合すると、引用文献1には、実施の形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 内燃機関1の排気ガスを後処理するための装置であって、
内燃機関1から案内される排気ガス導管2において接続されている酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4と、
酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4および内燃機関1の排気ガスが貫流する排気ガス導管2のポイント6及び7で排気ガス中に水素を添加するように構成された計量供給/遮断弁15と、
水素溜め11と
を含む装置であって、
計量供給/遮断弁15が、冷態始動の場合に水素を添加するように構成され、
装置が、排気ガスを酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4により後処理し、
水素が水から発生され、水が水タンク19から取り出される
装置。」
2 引用文献2及び3の記載
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、特に車両の内燃機関から排出される粒子状物質を含む排ガスを処理するための触媒フィルタに関し、このフィルタは、多数の長手方向に延在する第1のチャネル及び第2のチャネルを画定する多数の相互接続する多孔質壁を備えたハニカムウォールフロー型フィルタ基材を備え、第1のチャネルはそれらの側面において第2のチャネルによって境され、第1のチャネルの末端はハニカムの第1端で塞栓され、かつ第2のチャネルの末端はハニカムの第2端で塞栓され、フィルタは触媒ウォッシュコートを備える。本発明はまた、このような触媒フィルタの作製方法にも関する。」
イ 「【0073】
ハニカムフロースルーモノリス基材上にコーティングされた最新のNOx吸収触媒は、典型的には層状に配置される。しかしながら、フィルタ基材上に塗布された複数の層は背圧の問題を生じうる。したがって、本発明に使用されるNOx吸収触媒は「単層」のNOx吸収触媒であることが非常に好ましい。特に好ましい「単層」のNOx吸収触媒は、セリア-ジルコニア混合酸化物又は任意選択的に安定化されたアルミナ(例えばシリカ又はランタナ又は別の希土類元素で安定化された)上に担持された第1の成分のロジウムと、白金及び/又はパラジウムを担持する第2の成分とを組み合わせて含む。第2の成分は、アルミナをベースとした高表面積の担体ならびに粒子「バルク」セリア(CeO2)成分、すなわち、粒子担体上に担持された可溶性のセリアではなく、Pt及び/又はPdを担持することができる「バルク」セリア上に担持された、白金及び/又はパラジウムを含む。粒子セリアはNOx吸収剤成分を含み、白金及び/又はパラジウムに加えて、アルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属、好ましくはバリウムを担持する。アルミナをベースとした高表面積の担体は、例えば、アルミン酸マグネシウム、例えばMgAl2O4などでありうる。
【0074】
好ましい「単層」NAC組成物は、ロジウム及び、白金及び/又はパラジウム担体成分の混合物を含む。これらの成分は、それらを混合物中に混合する前に、別個に調製することができる、すなわちあらかじめ形成することができる、又は、ロジウム、白金及びパラジウムの塩及び担体及び他の成分を合わせて、ロジウム、白金及びパラジウム成分を加水分解して所望の担体上に優先的に堆積させることができる。
【0075】
酸化触媒は、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化、及び未燃焼の炭化水素の二酸化炭素と水への酸化を促進する。酸化触媒がディーゼル排ガスの排出の処理に使用される場合、酸化触媒は、典型的にはディーゼル酸化触媒又はDOCと称される。標準的な酸化触媒は、耐硫黄性及び/又は触媒の耐久性を改善するために任意選択的にドープされた、高表面積担体上、典型的にはガンマアルミナ上に白金及び/又はパラジウムを含み、かつ、より高温で放出及び燃焼するために低温で炭化水素をトラップするために、任意選択的なゼオライト、例えばアルミノシリケートゼオライトベータを含む。適切なアルミナドーパントとしては、ランタン及び/又はプラセオジムなどの希土類金属が挙げられる。DOCの役割は、炭化水素(固体スート粒子及び未燃焼の燃料のエアロゾル液滴上にしばしば吸収される、いわゆる可溶性有機画分を含む)及び一酸化炭素を酸化して(-設計の選択に従って-例えば一酸化窒素の二酸化窒素への酸化)、NO2の下流における捕捉された粒子状物質の燃焼を促進する(いわゆるCRT(登録商標)効果)、又はNO2/NOx比を増大させてSCR触媒の下流においてNOx還元を促進することである。
【0076】
ディーゼル酸化触媒におけるバリエーションは、HC及びCOを酸化するだけでなく、直接接触酸化とCRT(登録商標)効果の組み合わせによってフィルタ上で粒子状物質の燃焼をインサイチュで促進するように設計された組成物である。好みに応じて、製剤は、DOCに関連して上述したように、NO酸化用に適合して、下流のSCR触媒上でのNOxの変換を促進することができる。このような触媒組成物でコーティングされたフィルタは、しばしば、触媒化スートフィルタ又はCSFと称される。CSF触媒組成物は、しばしば、ガンマアルミナ及び任意選択的に安定化されたセリア及び任意選択的なゼオライトの組み合わせ、例えば炭化水素トラップ用のアルミノシリケートゼオライトベータに担持された白金及び/又はパラジウムを含む。任意選択的に安定化されたセリア成分は、スートの燃焼活性を促進する目的で含まれる。好ましいセリア安定剤はジルコニウム(セリアを含む混合酸化物中)であるが、熱耐久性を改善するために、ランタン及び/又はプラセオジムなど、1種類以上のドーパントを含めてもよい。銀などの白金族金属に代わる代替的な貴金属もまた使用することができる。しかしながら、貴金属の代替において、CSF組成物は、例えば、アルカリ金属、例えばカリウムなど、アルカリ土類金属、例えばBa及び/又はSr又はマンガンなどの卑金属を含みうる。」
(2)引用文献3の記載事項
引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、CHA結晶構造を有するゼオライト、その製造方法、及びこのようなゼオライトを含む触媒に関する。より特定的には、本発明の実施の形態は、CHAゼオライト触媒及びその製造方法及び排気ガス処理システムにこの触媒を使用する方法に関する。」
イ 「【0032】
基材
触媒組成物は、基材に設けられる。基材は、触媒を製造するために使用される如何なるものであっても良く、そして通常、セラミック又は金属ハニカム構造を含む。適切な如何なる基材も使用して良く、例えば入口から出口面まで伸びる微細で平行なガス流通路(該ガス流通路は開口しており、流体が通路を流れることができる)を有するモノリス基材(ハニカム流通基材と称される)を使用して良い。その流体入口から流体出口までを実質的にまっすぐに伸びる通路は、壁部によって規定されており、この壁部に触媒材料がワッシュコートとして堆積され、これにより通路を流れるガスが触媒材料と接触する。モノリス基材の流体通路は薄壁の流路(通路:channel)であり、該流路は、台形、長方形、四角形、正弦曲線、六角形、長円形、円形等の適切な如何なる断面形状と大きさを有していても良い。このような構造は、断面の1平方インチ当たり、約60~約400又はそれ以上の入口開口部(すなわちセル)を含んでいても良い。
【0033】
基材は、流路が交互に閉塞されており、そして一方向(入口方向)から流路に入るガス状流を、流路壁を通って流し、そして他方向(出口方向)から、流路から出す後構成の壁流フィルタ基材も可能である。AMOX及び/又はSCR触媒組成物は、流通(貫流)又は壁流フィルターに被覆することができる。壁流基材が使用された場合、得られるシステムは、ガス状汚染物質の他に、粒子状物質も除去することができる。壁流フィルター基材は、コージライト、アルミニウムチタネート又はシリコンカーバイド等のこの技術分野では公知の材料から作ることができる。壁流基材に触媒組成物を積載することは、基材の特性、例えば多孔度(多孔率)及び壁の厚さに依存し、そして一般的には、その積載量は、流通基材への積載量よりも少ない。」
ウ 「【0044】
本発明の一つ以上の実施の形態では、CuCHASCR触媒は、壁流フィルター又は触媒煤フィルターに設けることができる。CuCHAワッシュコートを多孔性(細孔性)フィルターに被覆して、煤燃焼、SCR及びAMOX機能を与えることができる。
【0045】
本発明の一つ以上の実施の形態では、触媒は貴金属成分、すなわち、白金族金属成分を含む。例えば、上述のように、AMOXは代表例では白金成分を含む。適切な貴金属成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物を含む。触媒材料の幾つかの成分(例えば、CuCHA及び貴金属成分)を耐火物担体部材、すなわち基材に、(2種以上の成分の混合物として、又は個々の成分を連続する段階で、触媒製造の分野の当業者にとって容易に理解できる方法で、)施しても良い。上述のように、そして実施例で説明するように、本発明の実施の形態に従う触媒を製造する代表的な方法は、(適切な担体部材のガス流通路の壁への)被覆物又はワッシュコートとして触媒材料を提供することである。
このことは、次ぎのように行って良い。すなわち、微細な粒子状耐火金属酸化物担体材料、例えば、ガンマアルミナを1種以上の触媒金属成分、例えば貴金属、すなわち白金族、化合物又は他の貴金属又は卑金属に浸漬させ、乾燥させ、及び浸漬(含浸)した担体粒子をか焼(焼成)し、及びこれら粒子の水性スラリーを形成することによって行って良い。バルク銅菱沸石の粒子をスラリーに含んでも良い。触媒成分をその上に分散させる前に、活性化したアルミナを熱的に安定化しても良い。この熱的な安定化は、この技術分野では公知のように、例えば、バリウム、ランタン、ジルコニウム、希土類金属の溶解性の塩又は他の適切な安定剤前駆体の溶液に浸漬(含浸)させ、次に乾燥(例えば、110℃で1時間)させ、そして浸漬させて活性化したアルミナを、か焼(例えば、550℃で1時間)させてアルミナ上に分散した安定化金属酸化物を形成することにより行っても良い。卑金属触媒を、任意に活性化アルミナに含浸させて良く、例えば、卑金属の溶液をアルミナ粒子に含浸させ、そしてか焼(焼成)してアルミナ粒子に分散した卑金属酸化物を得ても良い。」
3 引用文献4の記載
(1)引用文献4の記載事項
引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に、燃料電池システムに使用する純水の補給インターバルを長くすることを可能とする燃料電池システムに関する。」
イ 「【0024】
好ましくは、上記水分凝縮手段は、上記空気を急冷することによって空気中の水蒸気を凝固する。例えば、除湿器と同様の構成の熱交換構成によって空気を冷やすことによって水蒸気を凝固させる。また、ペルチェ素子などの熱交換素子によって冷却面を得て、これにより空気中の水蒸気を凝固させ水滴を集めて水を得る。なお、車両の客室内のエアコンディショニングシステムと連携させることが可能である。」
ウ 「【0033】
図1は、本実施形態の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車(FCEV)の主要ブロック図である。同図に示すように、燃料電池自動車10は、車載発電機として機能する燃料電池システム10と、電力配分・電力変換制御を行うパワーコントロールユニット20と、車輪41~44の駆動力を発生するモータ31と、燃料電池10の補助電力源として機能する二次電池32と、空気中の水蒸気を凝固させる凝縮器33と、ワイパー等の車両の運転のための補機類34と、後述のエアポンプモータ、燃料ポンプモータ、水ポンプ、バルブ等の燃料電池10の運転に使用される補機類35等を備えている。図示の例では、燃料電池自動車1は前輪41及び42を駆動する前輪駆動方式を採用しており、車両後部には被駆動輪43,44が配置されている。
【0034】
燃料電池システム10は、メタノールや天然ガスなどの炭化水素系の原燃料を貯蔵する原燃料タンク11と、水を貯蔵する水タンク12と、タンク11及び12から供給された原燃料と水の混合溶液を改質して水素リッチな燃料ガス(改質ガス)を生成する改質器13と、改質器13から供給された燃料ガスが有する化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池14と、エアフィルタ16で濾過した空気を酸化エアとして燃料電池14に供給するポンプ17と、この酸化エアを加湿する加湿器18と、燃料電池システム10全体を制御する制御部15等を備えて構成されている。
【0035】
図2は、改質器13の構成例を示している。改質器は、概略、蒸発部13a、改質部13b、CO低減部13cによって構成されている。蒸発部13aは、燃料と燃焼エアとが供給されて高温の燃焼ガスを得るバーナや、燃料と燃焼エアとを反応させて発熱させる触媒(図示せず)などによって熱源を得て、原燃料と水(改質水)とを高温ガスにする。原燃料は後述の燃料ポンプモータ355によって駆動される図示しない燃料ポンプによって原燃料タンク11から供給される。改質水は後述の水ポンプモータ357によって駆動される図示しないポンプによって水タンク12から供給される。改質部13bはこの高温の混合ガスを触媒によって水蒸気改質して水素を生成する。更に、改質用エアの供給を受けて部分酸化法によって混合ガスから水素を生成する。改質部13bによって水素リッチな改質ガスが得られるが、このガスには燃料電池14の白金触媒の機能を低下させる一酸化炭素が微量含まれる。これをCO低減部13cで選択酸化法によって精製用エアと反応させて低減する。上述した、燃焼エア、改質用エア、精製用エアは後述のエアポンプモータ353によって駆動される図示しないエアポンプから流量調整弁131~133を介してそれぞれ供給される。燃料の供給量や各エアの供給量は制御部15によって要求電力量に応じて設定される。」
エ 「【0044】
インバータ22cは、システムコントローラ21の指令に応じて凝縮器33を動作させる。凝縮器33は空気中の水分(水蒸気)を凝固して液化しこれをタンクに集める。
【0045】
図4は、水収集手段としての凝縮器33の例を示している。この例は、いわゆる圧縮冷凍プロセスによって冷却した面に空気中の水蒸気を凝縮させる凝縮器を構成している。インバータ22cによって駆動されるモータ331は圧縮ポンプ332を駆動し、冷媒ガスを高圧に圧縮する。圧縮された高温冷媒は凝縮器333によって外部に放熱され、タンク334に蓄えられる。更に、ノズル(膨張弁)335を経て減圧された蒸発器336内に冷媒を蒸発させ、蒸発器336の熱を吸収して冷却し、この周囲の空気を冷やして蒸発器336の表面やその周囲に水分を凝固させる。冷媒はポンプ332に戻り、循環する。なお、必要により、凝縮器333及び蒸発器336にはファン337にて適度な送風が行われる。
【0046】
凝固した水分は、下方に集められてイオン交換樹脂膜338によって濾過される。これにより、凝固水は純水となって貯留タンク339に蓄えられる。貯留された水はバルブ340を介して既述の加湿器18に供給され、内部のフィルタを湿らす。それにより、ポンプ17から供給される酸化エアが加湿されて燃料電池に供給される。このようにして集められた水は、フッ酸や硫酸などの成分を含んでいないため、燃料電池セルの電解質膜を侵すおそれが少ない。
【0047】
なお、収集した水は改質ガスの加湿に使用しても良い。また、図1に点線で示すように水タンク12の補給水としても良い。凝縮器33から凝固水を所要部に供給する流路やバルブなどは濾過水供給手段に対応する。」
オ 「
[図:0001427166000003.jpg]
」(【図1】)
カ 「
[図:0001427166000004.jpg]
」(【図2】)
キ 「
[図:0001427166000005.jpg]
」(【図4】)
(2)引用文献4に記載された技術的事項
上記(1)を総合すると、引用文献4には、次の技術的事項(以下、「引用文献4記載技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「車両に搭載された改質器13において水タンク12から供給される水(改質水)から水素を生成し、車両に搭載された凝縮器33により空気中の水分(水蒸気)を凝固して液化して収集した水分を水タンク12の補給水とすること。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「内燃機関1」は本願発明における「内燃機関」に相当し、同様に、「排気ガス」は「排気ガス流」に、「後処理する」ことは「除去する」ことにそれぞれ相当することから、引用発明における「内燃機関1の排気ガスを後処理する」ことは本願発明における「内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去する」ことに相当し、また、引用発明における「装置」は本願発明における「システム」に相当する。
そうすると、引用発明における「内燃機関1の排気ガスを後処理するための装置」は本願発明における「内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステム」に相当する。
(2)引用発明における「内燃機関1から案内される排気ガス導管2において接続されている」ことは本願発明における「内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している」ことに相当し、同様に、「酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4」は「触媒物品」に相当する。
そうすると、引用発明における「内燃機関1から案内される排気ガス導管2において接続されている酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4」は本願発明における「内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒物品」に相当する。
(3)引用発明における「酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4および内燃機関1の排気ガスが貫流する排気ガス導管2のポイント6及び7で」は本願発明における「触媒物品および内燃機関の排気ガス流と流体連通しており、触媒物品の上流で」に相当し、同様に、「水素を添加する」ことは「水素を導入する」ことに、「計量供給/遮断弁15」は「水素噴射物品」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明における「酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4および内燃機関1の排気ガスが貫流する排気ガス導管2のポイント6及び7で排気ガス中に水素を添加するように構成された計量供給/遮断弁15」は本願発明における「触媒物品および内燃機関の排気ガス流と流体連通しており、触媒物品の上流で排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品」に相当する。
(4)引用発明における「水素溜め11」は本願発明における「水素貯蔵物品」に相当する。
(5)引用発明における「冷態始動の場合」は本願発明における「コールドスタート期間中」に相当する。
そうすると、引用発明における「計量供給/遮断弁15が、冷態始動の場合に水素を添加するように構成され」たことは本願発明における「水素噴射物品が、コールドスタート期間中に水素を導入するように構成され」たことに相当する。
(6)引用発明における「装置が、排気ガスを酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4により後処理」することは本願発明における「システムが、排気ガス流中の1種または複数の汚染物質を除去するのに有効であり、汚染物質が、CO、HC、NOx、およびこれらの組合せからなる群から選択され」ることに相当する。
そうすると、引用発明における「装置が、排気ガスを後処理し、酸化触媒3及びNOx蓄積触媒4により後処理され」ることは本願発明における「システムが、排気ガス流中の1種または複数の汚染物質を除去するのに有効であり、汚染物質が、CO、HC、NOx、およびこれらの組合せからなる群から選択され」ることに相当する。
(7)引用発明における「水素が水から発生され、水が水タンク19から取り出される」ことは本願発明における「水素が水から発生され、水の供給源が大気水である」ことと「水素が水から発生され」ることという限りで一致する。
2 一致点、相違点
したがって、本願発明と引用発明は、
「 内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムであって、
内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒物品と、
触媒物品および内燃機関の排気ガス流と流体連通しており、触媒物品の上流で排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品と、
水素貯蔵物品と
を含むシステムであって、
水素噴射物品が、コールドスタート期間中に水素を導入するように構成され、
システムが、排気ガス流中の1種または複数の汚染物質を除去するのに有効であり、汚染物質が、CO、HC、NOx、およびこれらの組合せからなる群から選択され、
水素が水から発生される、
システム。」
である点で一致し、次の点において相違する。
<相違点1>
水素噴射物品が、コールドスタート期間中に水素を導入するように構成されることに関して、本願発明は、「触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃から約180℃の温度にあるときに」、水素噴射物品が水素を導入するように構成されるものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるか明らかでない点。
<相違点2>
触媒物品に関して、本願発明は、「触媒物品が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、およびこれらの組合せからなる群から選択される耐火金属酸化物支持体を含む触媒組成物を含み、触媒物品が、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含み、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、マンガン、鉄、クロム、スズ、亜鉛、ニッケル、コバルト、および銅からなる群から選択される1種または複数の金属をさらに含み、さらに触媒物品が、触媒コーティングが表面に配置された流通(flow-through)モノリス基材、または触媒コーティングが表面に配置された壁流フィルター基材を含む」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるか明らかでない点。
<相違点3>
水素が発生される水に関して、本願発明は、「水の供給源が大気水である」のに対し、引用発明は、「水が水タンク19から取り出される」点。
第6 判断
1 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
コールドスタート期間中として、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のような「触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃から約180℃の温度にあるとき」というのは、例を挙げるまでもなくごく一般的な温度範囲であり、引用発明において、計量供給/遮断弁15(水素噴射物品)が、水素を導入する冷態始動(コールドスタート期間中)の温度範囲として、ごく一般的な温度範囲である「触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃から約180℃の温度にあるとき」を選択し、相違点1に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者の通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。
(2)相違点2について
内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムの技術分野において、「触媒物品が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、およびこれらの組合せからなる群から選択される耐火金属酸化物支持体を含む触媒組成物を含み、触媒物品が、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含み、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、マンガン、鉄、クロム、スズ、亜鉛、ニッケル、コバルト、および銅からなる群から選択される1種または複数の金属をさらに含み、さらに触媒物品が、触媒コーティングが表面に配置された流通(flow-through)モノリス基材、または触媒コーティングが表面に配置された壁流フィルター基材を含むこと。」は周知の技術(例えば、上記第4の2(1)で摘記した引用文献2の段落【0073】ないし【0076】等(触媒組成物が含む耐火金属酸化物支持体として「アルミナ」、「シリカ」、「セリア」、「ランタナ」、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金属金属成分として「白金」が記載されている。)、上記第4の2(2)で摘記した引用文献3の段落【0032】、【0033】、【0044】、【0045】等(触媒組成物が含む耐火金属酸化物支持体として「アルミナ」、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金属金属成分として「白金族金属成分」の「白金」、触媒コーティングが表面に配置された基材として「モノリス基材」、「壁流フィルタ基材」が記載されている。)を参照。以下、「周知技術」という。)である。
そして、引用文献1に記載された発明において、触媒物品の触媒組成物、触媒組成物の耐火金属酸化物支持体上に分散された金属及び触媒コーティングが表面に配置された基材として、周知技術のようなものを採用することに何ら格別な困難性は認められず、相違点2に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
(3) 相違点3について
引用文献4には、上記第4の3(2)のとおり、以下の引用文献4記載技術的事項が記載されている。
「車両に搭載された改質器13において水タンク12から供給される水(改質水)から水素を生成し、車両に搭載された凝縮器33により空気中の水分(水蒸気)を凝固して液化して収集した水分を水タンク12の補給水とすること。」
ここで、引用文献4記載技術的事項における「車両に搭載された改質器13において水タンク12から供給される水(改質水)から水素を生成」することは、本願発明における「水素が水から発生され」ることに相当し、同様に、「車両に搭載された凝縮器33により空気中の水分(水蒸気)を凝固して液化して収集した水分を水タンク12の補給水とする」ことは「水の供給源が大気水であること」に相当する。
そうすると、引用文献4記載技術的事項を本願発明の用語を用いて整理すると以下のようになる。
「水素が水から発生され、水の供給源が大気水であること。」
そして、引用発明における水素(水素)を発生させる(発生させる)水(水)について、引用文献1に記載されたものにおいては、加水分解ユニット10によって必要に応じて水素を発生させる(段落【0022】)ための水を「水タンク19」から取り出しており(段落【0021】)、この水を利用して水素を「車中で」発生させることができるものとしている(段落【0033】)ことから、予め「水タンク19」に溜めておく水以外にも、水素を必要に応じて車中で発生させることが可能とするべく、他に水の供給源を確保しておくことも考慮すべきことの1つといえる。
そこで、他の水の供給源として、同様に水を利用して水素を車中で発生させる、すなわち、車両に搭載された凝縮器33により空気中の水分(水蒸気)を凝固して液化して収集した水分が補給される水タンク12から供給される水(改質水)から車両に搭載された改質器13において水素を生成する引用文献4記載技術的事項のような構成を採用して、相違点3に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明、周知技術及び引用文献4記載技術的事項から当業者が予測し得る程度のものである。
2 小括
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術及び引用文献4記載技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求人の主張について
1 審判請求書及び令和6年7月1日に提出された意見書における主張
(1)審判請求人の主張の内容
審判請求人は、審判請求書において「引用文献1は、水素の導入によって、触媒上の硝酸塩の成長を阻害し、これにより酸素の解離、結果的にCO又はHCの酸化を促進させるという技術的思想に基づき、本願請求項1又は10に特定されるような触媒物品の上流で排気ガス流中に水素を導入するという技術につき、記載及び示唆するものではないと思料します。」(審判請求書の「(4)拒絶査定理由2(進歩性)について」欄)(注:下線は当審において付した。以下同様。)と主張し、令和6年7月1日に提出された意見書において「本願請求項に係る発明は、上記(3)で説明したとおり、COの変換率が従来の方法よりも高いという効果を奏するものです。また、使用される水素が水から発生され、水の供給源として大気水を用いるものです。これに対して、引用文献1~3は、内燃機関の排気ガス流中の汚染物質としてHC及びNOに加えて、特にCOの除去率を高めるという技術的思想に基づき、記載するものではなく、NOxの除去を記載するにとどまるものと思料します。」(上記意見書の「(4)拒絶理由1(進歩性)について」欄)と主張している。
(2)審判請求人の主張の検討
上記(1)の主張中で下線を付した技術的思想及び効果について、請求項1において明示的に特定されていないため、請求項1において明示的に特定された事項に基づく主張とは認められないので上記(1)の主張は採用することができない。
また、仮に、請求項1において特定された事項により、実質的に上記主張中で下線を付した技術的思想が内包され、下線を付した効果を奏すると解されるのであったとしても、上記第6のとおり、相違点1、2及び3に係る本願発明の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものであり、その結果得られるシステムは本願発明において特定された事項からなるシステムと何ら相違するものではないことから、上記主張中で下線を付した技術的思想は実質的に内包され、下線を付した効果を奏するものといえる。
2 令和6年11月20日に提出された意見書における主張
(1)審判請求人の主張の内容
審判請求人は、令和6年11月20日に提出された意見書において、以下のように主張している。
「 一方で、引用文献1に記載の発明は、少なくとも、内燃機関からの排気ガスを処理する装置において、水素発生に用いる水の供給源として大気水を用いることまで開示していないと認められます。
また、この引用文献1に記載の発明は、内燃機関によって発生される排気ガスを後処理することを課題とし、水素を排気ガスに混合させることによって、当該課題を解決しようとするものと認められます。そして当該水素を得るために、引用文献1に記載の発明は、水タンクから取り出された水から、加水分解ユニットを用いて水素を発生させるという技術を開示していると認められます(引用文献1の特許請求の範囲、段落[0005]~段落[0007]、段落[0021]、[0022])。
他方で、引用文献4に記載の発明は、燃料電池車両における水不足を解消することを発明の課題とし、この課題を、燃料電池に水分凝縮手段を備えて空気中の水分を集めることにより解決しようとしたものと認められます(引用文献4の特許請求の範囲、段落[0008]~[0012]、[0019]~[0020])。即ち、当該引用文献4に記載の発明は、課題解決のために水そのものを利用することを前提とするものであり、それを分解するという真逆の手段を提案するものでないと思料します。
これに対して、引用文献1に記載の発明は、課題の解決のために水を分解した水素の利用を前提としたものであり、水そのものを利用して課題解決を図ろうとする引用文献4に記載の発明とは、課題解決の手段からして相違します。抑々、引用文献1に記載の発明は、内燃機関であるリーンバーンエンジンについての課題を対象とするのに対して、引用文献4に記載の発明はそうではなく、燃料電池についての課題を対象とするものであり、両発明は互いに相違する技術的発想に基づくものと思料します。
したがって、上記引用文献1に記載の発明に対して、引用文献4に記載の発明をただちに適用することは容易でないと思料します。
さらにまた、引用文献2及び3もまた引用文献1と同様、水素発生に用いる水の供給源として大気水を用いることまでは開示していないと認められます。
以上より、本願請求項1及び10並びにこれら請求項を引用する請求項2~9及び11~15に係る発明は、引用文献1、2、3及び4に基づき容易想到し得た発明ではなく、本願請求項1~15に係る発明は、進歩性を有するものと思料致します。」(上記意見書の「(4)拒絶理由1(進歩性)について」欄)
(2)審判請求人の主張の検討
上記(1)の主張について検討する。
上記第5の2における相違点3のように、水素が発生される水に関して、引用発明は「水が水タンク19から取り出される」ものであり、引用文献1には、本願発明のように「水の供給源が大気水である」ことまでは開示されていないが、相違点3について、上記第6の1(3)のとおり、引用発明における水素(水素)を発生させる(発生させる)水(水)について、引用文献1に記載されたものにおいては、「水タンク19」から取り出した水を利用して水素を「車中で」発生させることができるものとしていることから、予め「水タンク19」に溜めておく水以外にも、水素を必要に応じて車中で発生させることが可能とするべく、確保しておく他の水の供給源として、同様に水を利用して水素を車中で発生させる、すなわち、車両に搭載された凝縮器33により空気中の水分(水蒸気)を凝固して液化して収集した水分が補給される水タンク12から供給される水(改質水)から車両に搭載された改質器13において水素を生成する引用文献4記載技術的事項のような構成を採用して、相違点3に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
すなわち、引用文献1及び4に記載されたいずれの技術も、水を必要とし水を利用して水素を車中で発生させることを前提として課題を解決する点で共通するものであることから、引用発明における水素(水素)を発生させる(発生させる)水(水)について、その水を確保するための他の供給源として、引用文献4記載技術的事項のような構成を採用する動機づけは十分にあるといえる。
したがって、上記(1)の主張は採用することができない。
3 小括
したがって、審判請求人の主張はいずれも採用することができず、上記第6のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術及び引用文献4記載技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3にて例示される周知技術並びに引用文献4記載技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-009841