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特許拒絶査定不服審判

2018-003822

インクジェット印刷装置、インクジェット印刷方法、印刷制御装置、プログラム及び記録媒体

審判番号
2018-003822
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-012736外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年03月16日
審決日
2018年10月24日
公報発行日
2019年02月22日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B41J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-12736「インクジェット印刷装置、インクジェット印刷方法、印刷制御装置、プログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月3日出願公開、特開2015-139903〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成26年1月27日の出願であって,平成29年7月12日付けで拒絶理由通知がされ,同年9月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月30日付けで,平成29年7月12日付けの拒絶理由通知により通知された理由(以下,「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ,その謄本は同年12月19日に請求人に送達された。 これに対し,平成30年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 平成30年3月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年3月16日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容について (1)本件補正は,特許請求の範囲を全文にわたって補正するものであり,その補正の一部には,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 記録媒体に対してインク滴を吐出して印刷するインクジェットヘッドを備えた印刷手段と, 上記記録媒体上に着弾したインク滴を乾燥させる乾燥手段と, 上記インクジェットヘッドを清掃する清掃手段と, 上記インクジェットヘッドの清掃中のインクの乾燥効率を,上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中のインクの乾燥効率よりも低下させる制御,及び, 上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中のインクの乾燥効率を,上記インクジェットヘッドの清掃中のインクの乾燥効率よりも向上させる制御の少なくとも一方を行う制御手段と, を備え, 上記乾燥手段は,上記記録媒体上に着弾した前記インク滴の乾燥を促すよう印刷面側に送風するファンを備え, 上記制御手段は,上記インクジェットヘッドの清掃中の上記ファンの回転数を,上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記ファンの回転数よりも低下させ, 上記乾燥手段は,上記インクジェットヘッドに対向する位置において,印刷面に背向する面側から上記記録媒体を加熱するヒータを更に備えており, 上記インクジェットヘッドによる上記印刷は,マルチパス方式により行われるものであることを特徴とするインクジェット印刷装置。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 記録媒体に対して溶媒を含むインク滴を吐出して印刷するインクジェットヘッドを備えた印刷手段と, 上記記録媒体上に着弾され,乾燥が進行中の着弾後インク滴から上記溶媒を揮発させて乾燥させる乾燥手段と, 上記インクジェットヘッドを清掃する清掃手段と, 上記インクジェットヘッドの清掃中の上記着弾後インク滴の乾燥効率を,上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記着弾後インク滴の乾燥効率よりも低下させる制御,及び, 上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記着弾後インク滴の乾燥効率を,上記インクジェットヘッドの清掃中の上記着弾後インク滴の乾燥効率よりも向上させる制御の少なくとも一方を行う制御手段と, を備え, 上記乾燥手段は,上記記録媒体の印刷面側に送風するファンと,上記インクジェットヘッドに対向する位置において,印刷面に背向する面側から上記記録媒体を加熱するヒータとを備え, 上記ファンと,上記ヒータとは,上記制御手段によりその駆動が制御され, 上記制御手段は,上記インクジェットヘッドの清掃中の上記ファンの回転数を,上記インクジェットヘッドからインクを吐出中の上記ファンの回転数よりも低下させ, 上記インクジェットヘッドによる上記印刷は,マルチパス方式により行われるものであることを特徴とするインクジェット印刷装置。」(下線は,当審で付加したものである。下線については,以下同じである。) (2)本件補正の目的について ア 本件補正事項アは,本件補正前の請求項1における発明特定事項の「インク滴を吐出して印刷するインクジェットヘッド」において,「溶媒を含むインク滴を吐出して印刷するインクジェットヘッド」と,インク滴が「溶媒」を含むことを限定するものである点で特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。 イ 本件補正事項イは,本件補正前の請求項1における発明特定事項の「記録媒体上に着弾したインク滴を乾燥させる乾燥手段」において,「乾燥が進行中の着弾後インク滴」及び「溶媒を揮発させて乾燥させる」と,着弾したインク滴,すなわち「着弾後インク滴」が,乾燥が進行中という状態にあること,「溶媒を揮発」させることが「乾燥」であることを限定するものである点で特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。 ウ 本件補正事項ウは,本件補正前の請求項1における発明特定事項の「インクジェットヘッドの清掃中のインクの乾燥効率」及び「インクジェットヘッドからインク滴を吐出中のインクの乾燥効率」において,それぞれ「インクジェットヘッドの清掃中の上記着弾後インク滴の乾燥効率」及び「インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記着弾後インク滴の乾燥効率」と,乾燥効率に関係するインクを「着弾後インク滴」であることを限定するものである点で特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。 エ 本件補正事項エは,本件補正前の請求項1における発明特定事項の「上記記録媒体上に着弾した前記インク滴の乾燥を促すよう印刷面側に送風するファン」において,「上記記録媒体の印刷面側に送風するファン」と,ファンの「着弾したインク滴の乾燥を促す」という機能にかかる発明特定事項を削除するものであるから,特許法第17条の2第5項の各号に規定するいずれの目的に該当するものではない。 オ 本件補正事項オは,本件補正前の請求項1における発明特定事項の「制御手段は,上記インクジェットヘッドの清掃中の上記ファンの回転数を,上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記ファンの回転数よりも低下させ」において,「上記ファンと,上記ヒータとは,上記制御手段によりその駆動が制御され」とするものであって,制御手段が「ファン」に加えて「ヒータ」の駆動をも制御することを追加するものであるから,特許法第17条の2第5項の各号に規定するいずれの目的に該当するものではない。 カ 本件補正事項カは,本件補正前の請求項1における発明特定事項において,「乾燥手段は,上記記録媒体上に着弾した前記インク滴の乾燥を促すよう印刷面側に送風するファンを備え」,「乾燥手段は,上記インクジェットヘッドに対向する位置において,印刷面に背向する面側から上記記録媒体を加熱するヒータを更に備えており」と,乾燥手段を構成する「ファン」と「ヒータ」に関して,2箇所に分けて記載されていたものを,「乾燥手段は,上記記録媒体の印刷面側に送風するファンと,上記インクジェットヘッドに対向する位置において,印刷面に背向する面側から上記記録媒体を加熱するヒータとを備え」と,「ファン」と「ヒータ」をまとめて一つの段落に記載する補正を行っているが,これは,特許法第17条の2第5項の各号に規定するいずれの目的に該当するものではない。 (3)独立特許要件についての検討 上記の本件補正事項エ乃至カは特許法第17条の2第5項の各号に規定するいずれの目的に該当するものではないが,仮に,特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するとして,念のために,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 ア 本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)イにおいて摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。 イ 引用例 (ア)原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/094150号(以下,「引用文献1」という。)には,つぎの事項が記載されている。 A 「第1図と第2図に示したインクジェットプリンタは,プリントヘッド14を,プラテンの中央部22上方を左右方向(第1図の表裏面方向)に走行させるプリント手段10と,プラテン20上に搬入されたメディア30を,プラテン20上を前方に向けて搬送する搬送手段60とを有している。プリントヘッド14は,その下面に並ぶノズル12からピエゾ(piezo)方式等によりインク滴を噴射させる構造をしていて,ヘッド駆動ベルト16に左右方向に走行自在に支持されている。搬送手段60は,プラテン20を挟んで,その下方と上方とに対向させて備えられた送りローラ62と押えローラ64とから構成されている。そして,その送りローラ62と押えローラ64との間にメディア30を挟み込んで,送りローラ62を前方(第1図の矢印方向)に回転させることにより,プラテン20上に搬入されたメディア30をプラテン20上を前方に向けて搬送できる構造をしている。 また,プラテンの後部24上をプリントヘッド14の走行経路下方に向けて前方に搬送されるメディア30を予備的に加熱するプリヒータ40と,プリントヘッド14の走行経路下方のプラテンの中央部22上に搬入されて,プリントヘッドのノズル12から噴射されるインク滴を着弾させるメディア30を加熱するプリントヒータ70とが設けられている。プリヒータ40とプリントヒータ70には,セラミックやニクロム線を用いた電熱ヒータ等が用いられている。プリヒータ40は,プラテンの後部24内側に配置されていて,そのプリヒータ40が発する熱を,プラテン20を介して,プラテンの後部24上を搬送されるメディア30に伝えて,そのメディア30を予備的に加熱する構造をしている。プリントヒータ70は,プラテンの中央部22内側に配置されていて,そのプリントヒータ70が発する熱を,プラテン20を介して,プラテンの中央部22上に搬入されるメディア30に伝えて,そのメディア30を加熱する構造をしている。 インク滴を噴射させるプリントヘッド14に供給されるインクには,溶剤インクが用いられている。 また,プラテンの中央部22上に搬入されて,プリントヘッドのノズル12から噴射されるインク滴を着弾させるメディア30の表面温度が,30~70℃となるように,メディア30を加熱するプリヒータ40及びプリントヒータ70の加熱温度を制御する温度制御手段80が備えられている。温度制御手段80は,プリヒータ40及びプリントヒータ70の発熱温度を検知するセンサ及びその発熱温度を制御する電子回路等の組み合わせから構成されている。」(第10頁第10行~第11頁第16行) B 「次いで,その表面温度が所望温度の30~70℃となるように的確に加熱されたメディア30表面に,溶剤インクが供給されるプリントヘッドのノズル12から噴射させた溶剤インクからなるインク滴を着弾させる。 すると,そのメディア30表面に着弾させた溶剤インクからなるインク滴を,その着弾箇所周囲のメディア30に広く浸透させることなく,その30~70℃に的確に加熱されたメディア30表面の着弾部位に小径のドット状に定着させた状態のまま時間をおかずに素早く乾燥させることができる。そして,そのメディア30表面に複数の溶剤インクのドットの配列からなる耐水性,耐候性のある滲みのない鮮明な絵図や文字をプリント可能となる。」(第12頁第16~24行) C 「このインクジェットプリンタにおいては,第2図に示されたように,プリントヘッド14をプラテン20脇部のメンテナンスステーション130に移動させて,そのプリントヘッドのノズル12からインク滴を試吐出(フラッシング)させ,そのプリントヘッドのノズル12内で前記溶剤インクが固化して目詰まりを起こすのを防ぐリフレッシュモード手段140を備えると良い。リフレッシュモード手段140は,プリンタ制御用のホストコンピュータ120の電子回路等から構成すると良い。そして,溶剤インクを用いてメディア30表面に絵図や文字をプリントする途中で,リフレッシュモード手段140を用いて,プリントヘッド14をメンテナンスステーション130に移動させて,そのプリントヘッドのノズル12からインク滴をメンテナンスステーション130に備えられた受け皿110内等に試吐出させると良い。そして,そのプリントヘッドのノズル12内で溶剤インクが固化して,そのノズル12が目詰まりを起こすのを防ぐと良い。そして,その目詰まりを起こしたプリントヘッド14を用いてメディア30表面にプリントされる絵図や文字の一部にドット抜けが生ずるのを,防ぐと良い。 また,そうした場合には,そのリフレッシュモード手段140を,一定の時間毎に,プリントヘッド14をメンテナンスステーション130に移動させて,そのプリントヘッドのノズル12からインク滴を試吐出させる構造とすると良い。そして,溶剤インクを用いて絵図や文字をメディア30表面にプリントする途中の一定時間毎に,リフレッシュモード手段140を用いて,プリントヘッド14をメンテナンスステーション130に移動させて,そのプリントヘッドのノズル12からインク滴を強制的に試吐出させると良い。そして,溶剤インクを用いて絵図や文字をメディア30表面にプリントする途中で,プリントヘッド14をメンテナンスステーション130に移動させて,そのプリントヘッドのノズル12からインク滴を試吐出させるのを怠ったために,そのプリントヘッドのノズル12内で溶剤インクが固化して,そのノズル12が目詰まりを起こすのを,確実に防げるようにする良い。」(第18頁第14行~第19頁第14行) D 「このインクジェットプリンタにおいては,第3図に示したように,プリントヘッド14の走行経路下方からプラテンの前部26上に搬出されるメディア30表面の着弾箇所に付着しているインク滴を乾燥させる乾燥手段150を備えると良い。乾燥手段150は,温風乾燥機,赤外線乾燥機,セラミックやニクロム線等を用いたヒータ乾燥機などを,単独又は組み合わせて用いると良い。そして,プリントヘッド14の走行経路下方からプラテンの前部26上に搬出されるメディア30表面の着弾箇所に付着している一部未乾燥状態にあるインク滴を,乾燥手段150により完全に乾燥させることができるようにすると良い。」(第19頁第15~22行) 引用文献1の上記記載事項によれば,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「プリントヘッドを,プラテンの中央部上方を左右方向に走行させるプリント手段と,プラテン上に搬入されたメディアを,プラテン上を前方に向けて搬送する搬送手段とを有しているインクジェットプリンタであって, プリントヘッドのノズルから噴射されるインク滴を着弾させるメディアを加熱するプリヒータとプリントヒータとが設けられ, インク滴を噴射させるプリントヘッドに供給されるインクには,溶剤インクが用いられ, プラテンの後部上をプリントヘッド14の走行経路下方に向けて前方に搬送されるメディアを予備的に加熱するプリヒータと,プリントヘッドの走行経路下方のプラテンの中央部上に搬入されて,プリントヘッドのノズルから噴射されるインク滴を着弾させるメディアの表面温度が,30~70℃となるように,メディアを加熱するプリヒータ及びプリントヒータの加熱温度を制御する温度制御手段が備えられ, 該プリントヒータは,プラテンの中央部内側に配置されていて,そのプリントヒータが発する熱を,プラテンを介して,プラテンの中央部上に搬入されるメディアに伝えて,そのメディアを加熱することで,メディア表面に着弾された溶剤インクからなるインク滴を,その着弾箇所周囲のメディアに広く浸透させることなく,その30~70℃に的確に加熱されたメディア表面の着弾部位に小径のドット状に定着させた状態のまま時間をおかずに素早く乾燥させることができるものであって, プリントヘッドをプラテン脇部のメンテナンスステーションに移動させて,そのプリントヘッドのノズルからインク滴を試吐出(フラッシング)させ,そのプリントヘッドのノズル内で前記溶剤インクが固化して目詰まりを起こすのを防ぐリフレッシュモード手段を備えることができ, 該リフレッシュモード手段は,溶剤インクを用いて絵図や文字をメディア表面にプリントする途中の一定時間毎に,プリントヘッドをメンテナンスステーションに移動させて,そのプリントヘッドのノズルからインク滴を強制的に試吐出させる構造とし, プリントヘッドの走行経路下方からプラテンの前部上に搬出されるメディア表面の着弾箇所に付着しているインク滴を乾燥させる温風乾燥機を備えるインクジェットプリンタ。」 (イ)原査定の拒絶の理由の引用文献2として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-60018号公報(以下,「引用文献2」という。)には,つぎの事項が記載されている。 A 「【0016】 印刷ヘッド13は,その後側面で形成された凹凸が,ガイドレール14の前側面に形成された凹凸と摺動可能に係合することで,ガイドレール14に沿って左右方向に往復自在であり,印刷ヘッド13の内部には,複数のインクカートリッジ(図示せず)から送られてきた液体インクを,プラテン16上の印刷媒体2に向けて噴射可能となるように下方に向けて設置された複数のノズル(図示せず)が,印刷媒体2と対向して設置されている。また,印刷ヘッド13は,図3に示すように平面視において,その右側面に略三角形状で上下方向に所定幅を有した摺動突起13aが右方向に向けて立設しており,この摺動突起13aの後側面には,左側後方から右側前方に向けて傾斜した摺動斜面13bが形成されて,上下方向において,この摺動斜面13bと後述する当接円柱32とが当接するように構成されている。さらに,印刷ヘッド13は,ガイドレール14に沿って右側端部(待機位置)に移動したときに,印刷ヘッド13と後述するメンテナンス装置20のインク受容室35とが,上下に対向するように構成されている。なお,印刷時には,ノズルから噴射された印刷インクが,印刷ヘッド13の下面で開口した噴出開口13cを通過して,印刷媒体2に付着することで印刷が行われる。」 B 「【0032】 以上,ここまでは,インクジェットプリンタ1の構成について説明したが,以下において,印刷ヘッド13およびメンテナンス装置20の動作を,図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。 【0033】 まず,ステップS1において,図5に示すように,印刷ヘッド13はガイドレール14の右側端部の待機位置におり,このとき,当接円柱32が摺動斜面13bに当接するとともに,揺動部材33が注入パイプ24および固定部材34とともに,枢結ピン31を中心として後方に揺動し,注入パイプ24は,インク受容室35の上面から離れた位置に退避しており,噴出開口13cとインク受容室35の上面開口部とは,平面視において略重なっている。また,戻り突起33aは枢結ピン31を中心として前方に揺動し,ばね33bは前方側に引っ張られて弾性力を蓄えた状態となっており,ワイパー38は,実線で示すように前方側に位置しており,この位置では,印刷ヘッド13がガイドレール14に沿って左方向に移動しても噴出開口13cと当接しない。 【0034】 次に,ステップS2において,図5に示す状態で,各ノズルのノズル先端部分で滞留した残留インクを,インク受容室35に向けて噴射して排出する。このとき,上述のとおり噴出開口13cとインク受容室35の上面開口部とは略重なっているとともに,注入パイプ24がインク受容室35の上面部から退避しているので,噴射された残留インクをインク受容室35で確実に受容可能である。また,この排出された残留インクは,吸着部材36に浸透していき,その後インク受容室35の下方へと流下し,インク受容室35の底部に堆積する。 【0035】 次に,ステップS3に進み,図5に示すように,ワイパー38がワイパー駆動部38aによって,二点破線で示す38bの位置に移動する。このとき,38bの位置に移動することで,印刷ヘッド13がガイドレール14に沿って左方向に移動するときに,噴出開口13cにワイパー38の先端部が当接可能となる。 【0036】 次に,ステップS4において,印刷ヘッド13は,待機位置からガイドレール14に沿って左方向に移動して印刷が開始されるが,このとき,図5に示すように,ワイパー38が破線で示す38bの位置にあり,噴出開口13cにワイパー38の先端が当接しながら左方向に移動することで,噴出開口13c付近に付着した残留インクを,ワイパー38によって拭き取ることができ,よって,噴出開口13cで噴射した印刷インクと残留インクとが混ざり合うことがないので,印刷時の印刷精度を向上させることが可能である。」 引用文献2の上記記載事項によれば,引用文献2には以下の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「印刷ヘッドは,ガイドレールに沿って右側端部(待機位置)に移動したときに,印刷ヘッドとメンテナンス装置のインク受容室とが,上下に対向するように構成されており, 印刷ヘッドはガイドレールの右側端部の待機位置にあるとき, 各ノズルのノズル先端部分で滞留した残留インクを,インク受容室に向けて噴射して排出し, 印刷ヘッドは,待機位置からガイドレールに沿って左方向に移動して印刷が開始されるが,噴出開口にワイパーの先端が当接しながら左方向に移動することで,噴出開口付近に付着した残留インクを,ワイパーによって拭き取るインクジェットプリンタ。」 (ウ)原査定の拒絶の理由の引用文献3として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-101974号公報(以下,「引用文献3」という。)には,つぎの事項が記載されている。 A 「【0009】 本発明の実施形態のインクジェット方式のプリント装置を説明する。図1はプリント装置の全体構成の概略を示す構成図である。装置は大きくは,シートを給送する給送部,シートを搬送する搬送機構,搬送されるシートにインクを付与しプリントを行なうプリント部,及び制御部を有する。」 B 「【0012】 プリント部は,キャリッジ201及びプリントヘッド207を有する。キャリッジ201は,プラテン204の上方において,シート搬送方向である副走査方向と交差(例えば直交)する主走査方向に往復走査可能にガイドシャフト208に滑動可能に支持されている。キャリッジ201の主走査方向における位置情報は後述するエンコーダによって検知される。キャリッジ201には,シート206にインクを付与してプリントを行うためのインクジェット方式のプリントヘッド207が搭載されている。インクジェット方式は,発熱素子を用いた方式,ピエゾ素子を用いた方式,静電素子を用いた方式,MEMS素子を用いた方式などを採用することができる。 【0013】 シートが排出ローラ205から排出された後の経路には乾燥部211が設けられている。乾燥部211はヒータを内蔵し,プリントヘッド207を含むプリント機構でインクが付与されたシートを加熱する乾燥機を備え,短時間でシートを乾燥させることができる。乾燥部211は乾燥能力(単位時間あたりの加熱量)が可変に制御される。制御部212は,搬送機構,プリント部,乾燥部211を始めプリント装置全体の各種制御を司るコントローラを有する。」 C 「【0016】 プリント部で画像形成されたシート206は排出ローラ205によりプリント部から排出され,次いで乾燥部211に導入される。インクが付与されたシートは乾燥部211に通過しながら加熱されることで乾燥促進がなされる。プリント部と乾燥部211とは近接しており,プリント部でのプリント中の画像の下流側の画像が乾燥部211に位置する。言い換えると,プリント部と前記乾燥部の間の搬送経路の長さは,使用するシートの搬送方向の長さよりも短い。このため,プリント部でのプリント動作に伴なうシート搬送の速度に同期した速度で,シート下流側が乾燥部211の位置を移動する。したがって,1つのプリントジョブでプリント実行中にも搬送速度(単位時間あたりのシート搬送量)が変化する搬送制御がなされた場合には,乾燥部211を通過するシートの搬送速度も同期して変化する。 【0017】 図2は乾燥部211の内部構成を示す構成図である。図2(a)は送風式の乾燥機の例である。ヒータ302が熱を発生し,ファン301によってヒータ302で発生した熱をシートのインク付与面に送風することでシートを乾燥させる。ヒータ302に投入される電気エネルギとファン301の回転数を可変にすることで,シートに対する乾燥能力を変えることができる。図2(b)は別例であるところの熱ローラ式の乾燥機の例である。加熱ローラ402は内部にヒータ401を有する。高温の加熱ローラ402がシートのインク付与面に接触して回転することで,シートを乾燥させる。ヒータ401に投入される電気エネルギを可変にすることで,シートに対する乾燥能力を変えることができる。」 D 「【0034】 (3)プリントデューティ プリントデューティに応じてプリントパス数及びシート搬送速度を変えるプリント制御を説明する。特定の単位領域内のプリントデューティを判定して許容値を超える場合に使用ノズルを制限して過大電力消費を回避するものである。 【0035】 図9は,プリントデューティに応じてプリントパス数及びシート搬送速度を変えるプリント制御時のヒータ制御を説明するための図であり。シートに対するヒータ熱量の関係を示す。図9(a)は各タイミングA~Cにおけるヒータ熱量を示す。図9(b)はシートに対して加えられる熱量の分布を示し,白は1パスプリント領域,グレーは2パスプリント領域を示す。また,シートが搬送される間のシートに対する乾燥部211のヒータの加熱位置とヘッドのインク付与位置との位置関係を示す。この例では,ヘッド位置1からヘッド位置3と,これらに対応してヒータ位置1からヒータ位置3がある。 【0036】 図9(a)において,タイミングAは1パスプリント(ヘッド位置1)の場合である。プリントヘッドのインク付与位置におけるプリントデューティが所定の一定値以下のときに標準の1パスプリントが選択される。シートは標準の搬送速度で搬送され,ヒータの熱量は標準の「中」に設定される。タイミングBは2パスプリント(ヘッド位置2)の場合である。プリントヘッドのインク付与位置におけるプリントデューティが所定の一定値よりも大きいときに2パスプリントが選択される。2パスプリントではシートの搬送速度は1パスのときに較べて半分程度になる。その分,ヒータの熱量を「中」より小さな「小」に設定する。タイミングCはプリント動作が終了して排出動作に入った段階である。ヘッド位置3はもはやシート上にはない。搬送速度は標準よりも更に大きくなる。これに合わせてヒータの熱量を「中」よりも大きな「大」に設定する。このときヒータで加熱される領域のトータルの加熱量(熱量×時間)はタイミングA,タイミングBの場合とほぼ等しくなるように,「中」と「大」のそれぞれの値を設定する。本例によれば,シート上のインクが付与された領域は概ねムラなく加熱されることになるので,全体としてムラのない乾燥がなされ,ひいては画像ムラが少ない良好な画質のプリントが実現する。上述したように,プリントパス数はここでは1パス/2パスを例に挙げたが,パス数これに限らず例えば2パス/4パス,あるいは更にパス数を多くしてもよい。」 E 「【0037】 (4)ウェイトイベント発生 プリント動作中にウェイトイベントが発生したら,シート搬送を一時停止させるプリント制御を説明する。 【0038】 図10は,ウェイトが発生した時のヒータ制御を説明するための図であり,シートに対するヒータ熱量の関係を示す。図10(a)はウェイトイベントが発生した場合と無い通常状態とにおけるヒータの熱量を示す。通常はヒータ熱量「大」で加熱する。ウェイトが発生したらヒータをオフにして熱量は「無」にする。図10(b)はシートに対して加えられる熱量の分布を示す。この例では,ヘッド位置1,ヘッド位置2でウェイトイベントが発生して,これらに対応してヒータ位置1,ヒータ位置2がある。 【0039】 先の図4~図6で説明したように,プリント実行中にウェイトイベントが発生することがある。例えば,LANなどのインターフェース経由でホストPCからプリントデータがプリント装置に転送されるシステムでは,データの転送レートが制限され,それが原因でプリントのウェイトが発生する場合がある。逆に,受信バッファが溢れて受信不能となり,ウェイトが発生する場合がある。また,プリントデータの生成が間に合わずにウェイトが発生する場合がある。ウェイトイベントが発生した場合には,ウェイトが解除されるまでの時間を精確に予測することは困難である。そこで,ウェイトイベントが発生してプリント動作が停止したら,ヒータ加熱を一旦オフにして,ウェイトが長引くことで過剰にシートが加熱されるのを防ぐ。そして,ウェイトが解除されたらヒータの熱量を元に戻してプリント動作を再開する。なお,ここでいうオフとはヒータ加熱は完全に停止させるものには限定されず,通常よりも熱量を小さくして乾燥能力を小さくする形態をいう。本例によれば,搬送が停止した位置で過剰に過熱されることがないので全体としてムラのない乾燥がなされ,ひいては画像ムラが少ない良好な画質のプリントが実現する。」 引用文献3の上記記載事項によれば,引用文献3には以下の事項(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「キャリッジと該キャリッジに搭載されシートにインクを付与してプリントを行うためのインクジェット方式のプリントヘッドを有するプリント部と, シートが排出ローラから排出された後の経路に設けられ,インクが付与されたシートを加熱する乾燥機を備えた乾燥部と, 該乾燥部は,制御部が有するコントローラによって,乾燥能力(単位時間あたりの加熱量)が可変に制御されるものであって, ヒータが熱を発生し,ファンによってヒータで発生した熱をシートのインク付与面に送風することでシートを乾燥させているが,ヒータに投入される電気エネルギとファンの回転数を可変にすることで,シートに対する乾燥能力を変えることができ, プリント動作中にウェイトイベントが発生したら,シート搬送を一時停止させるプリント制御が行われ, 該ウェイトイベントが発生してプリント動作が停止したら,ヒータ加熱を一旦オフにして,ウェイトが長引くことで過剰にシートが加熱されるのを防ぎ,ウェイトが解除されたらヒータの熱量を元に戻してプリント動作を再開し, 前記オフとはヒータ加熱は完全に停止させるものや,通常よりも熱量を小さくして乾燥能力を小さくする形態が含まれ, 搬送が停止した位置で過剰に過熱されることがないので全体としてムラのない乾燥がなされ,ひいては画像ムラが少ない良好な画質のプリントが実現する インクジェット方式のプリント装置。」 (エ)原査定において引用文献4として引用され,本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,「株式会社ミマキエンジニアリング,「JV400 Series」発売開始のお知らせ,[online] 2012年2月13日, URL,http://japan.mimaki.com/news/product/entry-34777.htm」(以下,「引用文献4」という。)には,つぎの事項(以下,「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。 A 「プリント速度の項目,『高速モード 18.1m2/h(900×900dpi),6pass,双方向,4色』,『標準モード 14.2m2/h(900×1200dpi),8pass,双方向,4色』」(ラテックスインクプリンタ JV400-130/160LXの【主な仕様】表) ウ 対比 (ア)本件補正発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「メディア」は,本件補正発明の「記録媒体」に相当する。 以下同様に,引用発明1の「インク滴を噴射させるプリントヘッド」及び「プリントヘッド」は,本件補正発明の「インクジェットヘッド」に, 引用発明1の「プリント手段」は,本件補正発明の「印刷手段」に, 引用発明1の「インクジェットプリンタ」は,本件補正発明の「インクジェット印刷装置」に,それぞれ相当する。 引用発明1のプリントヘッドに供給されるインクは「溶剤インク」であるから,プリントヘッドのノズルから噴射されるインク滴には,本件補正発明と同じく「溶媒」が含まれていることは自明である。 引用発明1の「プリントヒータ」は,「メディアを加熱することで,メディア表面に着弾された溶剤インクからなるインク滴を,その着弾箇所周囲のメディアに広く浸透させることなく,その30~70℃に的確に加熱されたメディア表面の着弾部位に小径のドット状に定着させた状態のまま時間をおかずに素早く乾燥」させる機能を有しており,乾燥が進行中の着弾後インク滴から溶媒を揮発させて乾燥させていることに他ならないから,本件補正発明の「乾燥手段」に相当する。 また,引用発明1の「プリントヒータ」は「プラテンの中央部内側に配置されていて,そのプリントヒータが発する熱を,プラテンを介して,プラテンの中央部上に搬入されるメディアに伝え」,「メディア」は「プラテンの中央部上に搬入されて,プリントヘッドのノズルから噴射されるインク滴を着弾させ」られるものであるから,本件補正発明の「インクジェットヘッドに対向する位置において,印刷面に背向する面側から上記記録媒体を加熱するヒータ」に相当する。 引用発明1の「温風乾燥機」は,「プリントヘッドの走行経路下方からプラテンの前部上に搬出されるメディア表面の着弾箇所に付着しているインク滴を乾燥」させる機能を有しており,当該機能が進行中の着弾後インク滴から溶媒を揮発させて乾燥させていることに他ならないから,本件補正発明の「乾燥手段」に相当する。 また,上記「(2)引用例 ア (エ)」の「乾燥手段150は,温風乾燥機…」との記載,及び引用文献1のFIG.3に記載された部材番号150の図の形状より,乾燥手段150は,送風する機能を備えた装置であることは明らかであることからみて,引用発明1の「温風乾燥機」は,本件補正発明の「記録媒体の印刷面側に送風するファン」に相当する。 引用発明1の「リフレッシュモード手段」は,「プリントヘッドをプラテン脇部のメンテナンスステーションに移動させて,そのプリントヘッドのノズルからインク滴を試吐出(フラッシング)させ,そのプリントヘッドのノズル内で前記溶剤インクが固化して目詰まりを起こすのを防ぐ」ためのものであるから,プリントヘッドのメンテナンス手段であるといえる。また,本件補正発明の「清掃手段」は,本願明細書の段落【0030】の「清掃手段としてのワイパー12」,同段落【0037】の「ワイパー12は,インクジェットヘッド11を清掃するものである。…印刷中にインクジェットヘッド11から適切にインクが吐出されなくなる(ノズル抜け等)場合がある。これを防ぐため,インクジェットヘッド11を定期的にメンテナンスして清掃する。」との記載を踏まえると,プリントヘッドのメンテナンス手段であることは明らかであるから,本件補正発明と引用発明1とは,インクジェットヘッドのメンテナンス手段を備えている点で共通している。 引用発明1の「温度制御手段」は,プリントヒータの加熱温度を制御しており,上述のとおり,引用発明1の「プリントヒータ」は,本件補正発明の「ヒータ」に相当するから,引用発明1の「温度制御手段」は,本件補正発明の「制御手段」に相当する。 イ 一致点及び相違点 上記アの対比を踏まえると,本件補正発明と引用発明1とは,つぎの一致点において一致し,つぎの各相違点で相違する。 <一致点> 「記録媒体に対して溶媒を含むインク滴を吐出して印刷するインクジェットヘッドを備えた印刷手段と, 上記記録媒体上に着弾され,乾燥が進行中の着弾後インク滴から上記溶媒を揮発させて乾燥させる乾燥手段と, インクジェットヘッドのメンテナンス手段と, を備え, 上記乾燥手段は,上記記録媒体の印刷面側に送風するファンと,上記インクジェットヘッドに対向する位置において,印刷面に背向する面側から上記記録媒体を加熱するヒータ 上記ヒータは,上記制御手段によりその駆動が制御されるインクジェット印刷装置。」 <相違点1> 本件補正発明は,インクジェットヘッドのメンテナンス手段として「インクジェットヘッドを清掃する清掃手段」を有するものであるのに対して,引用発明1は,インクジェットヘッドのメンテナンス手段として「プリントヘッドのノズル内で前記溶剤インクが固化して目詰まりを起こすのを防ぐリフレッシュモード手段」を有しているものの,インクジェットヘッドを清掃する「清掃手段」を有するものではない点。 <相違点2> 本件補正発明の制御手段は「インクジェットヘッドの清掃中の着弾後インク滴の乾燥効率を,上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記着弾後インク滴の乾燥効率よりも低下させる制御,及び,上記インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記着弾後インク滴の乾燥効率を,上記インクジェットヘッドの清掃中の上記着弾後インク滴の乾燥効率よりも向上させる制御の少なくとも一方を行う」ものであるのに対して,引用発明1の「温度制御手段」は,そのような制御を行うか不明である点。 <相違点3> 本件補正発明において「ファンと,ヒータとは,制御手段によりその駆動が制御され, 上記制御手段は,インクジェットヘッドの清掃中の上記ファンの回転数を,上記インクジェットヘッドからインクを吐出中の上記ファンの回転数よりも低下」しているのに対して,引用発明1において「プリントヒータは,制御手段によりその駆動が制御」されているものの,「ファン」の制御については不明である点。 <相違点4> 本件補正発明において「インクジェットヘッドによる印刷は,マルチパス方式により行わ」れるのに対して,引用発明1は,その点について不明である点。 エ 相違点についての検討 (ア)相違点1について 「インクジェットヘッドを清掃する清掃手段」として,引用文献2記載事項には「印刷ヘッドの噴出開口付近に付着した残留インクを拭き取るワイパー」が記載されている。 そして,インクジェットヘッドのメンテナンス手段として,引用文献2記載事項に記載される「インクジェットヘッドの前面(印刷用紙との対向面)に付着したインクをワイパーで拭き取る手段」,いわゆる「ワイプ手段」又は「ワイピング手段」,及び,引用発明1に記載される「プリントヘッドのノズル内で前記溶剤インクが固化して目詰まりを起こすのを防ぐリフレッシュモード手段」,いわゆる「フラッシング手段」は,両者とも周知技術(以下,「周知技術1」及び「周知技術2」という。)である。 そして,インクジェットヘッドがメンテナンス手段を備えることは,きわめて普通に行われていることであって,そのようなメンテナンス手段として,周知技術1の「ワイプ手段」又は「ワイピング手段」とするか,周知技術2の「フラッシング手段」とするかは,当業者が適宜選択しうるものであって,本件補正発明のように周知技術1の「ワイプ手段」又は「ワイピング手段」を選択して,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計的事項の採用であって,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから,当業者が容易に想到し得たものである。 (イ)相違点2について 本件補正発明のものも,引用発明1のものも,インクジェットヘッドのメンテナンス手段を有しており,該メンテナンス手段が作動中は,印刷動作は中断しており,印刷途中であっても,記録媒体(メディア)が搬送されずに,印刷動作が中断された位置で停止していることは自明である。 引用発明3において,「プリント動作中にウェイトイベントが発生したら,シート搬送を一時停止させるプリント制御」が行われており,シート搬送の一時停止中にシートが過剰に過熱されて画像ムラが生じることを防止するために,「ウェイトイベントが発生してプリント動作が停止したら,ヒータ加熱を一旦オフ」にしている。 また,引用発明3において,「ヒータ加熱を一旦オフ」にするとは,「ヒータ加熱は完全に停止させるものや,通常よりも熱量を小さくして乾燥能力を小さくする形態」が含まれる。 ここで,引用発明3の乾燥部が乾燥するインクは,シートに付与されたものであるから,着弾後のインクであるといえ,引用発明3は,シートの搬送の一時停止中の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力を,プリント動作中の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力よりも低下させる制御を行っているといえる。 上述のとおり,本件補正発明において,インクジェットヘッドの清掃中に記録媒体が搬送されないのであるから,本件補正発明と引用発明3とは「記録媒体の搬送停止中の着弾後インク滴の乾燥効率を,インクジェットヘッドからインク滴を吐出中の上記着弾後インク滴の乾燥効率よりも低下させる制御」を行っている点で共通している。 そして,引用発明1において,リフレッシュモード手段が作動している間はメディアの搬送が停止していることは自明であることを踏まえると,引用発明1も引用発明3も,乾燥手段を備えたインクジェットプリンタである点で共通する技術分野に属し,そのようなインクジェットプリンタにおいて,本願明細書の段落【0041】に記載されているような「インクジェットヘッド11による印刷を停止している間も,記録媒体50上に吐出されたインクの乾燥は進行するため,印刷停止時間に乾燥したインク部分に乾燥ムラが生じることがある。そして,この乾燥ムラは,濃度ムラとして印刷物に現れ,印刷物の質の低下につながる。」という課題は,引用発明1及び引用発明3においても存在する自明な課題にすぎず,当該自明な課題を解決するために,「シートの搬送の一時停止時の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力を,プリント動作中の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力よりも低下させる制御」を,引用発明1のリフレッシュモード手段が作動している間に適用することに何ら技術的困難性はなく,「シートの搬送の一時停止」の原因として,本件補正発明のように「インクジェットヘッドの清掃」とすることについては,「ア 相違点1について」で述べたように「インクジェットヘッドの清掃」が周知技術1であることを踏まえると,引用発明1に引用発明3と周知技術1を適用し,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計的事項の採用であって,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから,当業者が容易に想到し得たものである。 (ウ)相違点3について 引用発明3には,「ヒータに投入される電気エネルギとファンの回転数を可変にすることで,シートに対する乾燥能力を変える」ことが記載されている。 また,引用発明3が「シートの搬送の一時停止時の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力を,プリント動作中の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力よりも低下させる制御」を行っていることは「(イ)相違点2について」で述べたとおりである。 してみると,「シートの搬送の一時停止時の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力を,プリント動作中の着弾後のインクの乾燥部の乾燥能力よりも低下させる制御」において,ファンの回転数に関して「シートの搬送の一時停止時のファンの回転数を,プリント動作中のファンの回転数よりも低下」させるように制御することは,引用発明3に実質的に記載されているといえる。 また,「シートの搬送の一時停止」の原因として,本件補正発明のように「インクジェットヘッドの清掃」とすることについては,「(ア)相違点1について」で述べたように「インクジェットヘッドの清掃」が周知技術1であることを踏まえると,引用発明1に引用発明3と周知技術1を適用し,相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計的事項の採用であって,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから,当業者が容易に想到し得たものである。 (エ)相違点4について 相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項である「マルチパス方式」は,インクジェットヘッドを有するプリンタのみならず,プリンタ全般において周知技術(以下,「周知技術3」という。)である。 必要であれば,引用文献3の段落【0034】乃至【0036】,引用文献4記載事項を参照されたい。 そして,引用発明1において,プリンタの技術分野全般において広く知られた周知技術3を適用することに格別の技術的困難性はなく,引用発明に周知技術3を用いて,相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。 また,本件補正発明の発明特定事項全体によって奏される作用効果も,引用発明1及び3,並びに(引用文献2記載事項に記載された)周知技術1及び(引用文献3及び引用文献4記載事項に記載された)周知技術3から,当業者が予測しうる程度のものである。 したがって,本件補正発明は,引用発明1及び3,並びに(引用文献2記載事項に記載された)周知技術1及び(引用文献3及び引用文献4記載事項に記載された)周知技術3から当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)補正の却下の決定のむすび 以上検討したように,本件補正発明は,引用発明1及び3,並びに(引用文献2記載事項に記載された)周知技術1及び(引用文献3及び引用文献4記載事項に記載された)周知技術3から当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反するから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は,上記「第2」のとおり却下されたので,本願の請求項1乃至10に係る発明は,平成29年9月19日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるものであって,そのうち請求項1に係る発明は,上記第2の1(1)アにおいて説示したとおりのものである。(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 2 引用例及びその記載事項 原査定で引用された引用文献1乃至3に記載の事項並びに引用発明1乃至3は,それぞれ,上記第2の2(2)において説示し,認定したとおりである。 3 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は,上記第2の2で検討した本件補正発明から, (1)インク滴が「溶媒を含む」点, (2)乾燥手段の乾燥が「乾燥が進行中の着弾後インク滴から溶媒を揮発」させる点, (3)乾燥効率が「着弾後インク滴の乾燥効率」である点, (4)ファンとヒータが「制御手段によりその駆動が制御」される点である技術事項を除いたものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の発明特定事項である上記の(1)乃至(4)を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「第2 3」に記載したとおり,引用発明1及び3,並びに(引用文献2記載事項に記載された)周知技術1及び(引用文献3及び引用文献4記載事項に記載された)周知技術3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 上記で検討したとおり,本願発明は,引用発明1及び3,並びに(引用文献2記載事項に記載された)周知技術1及び(引用文献3及び引用文献4記載事項に記載された)周知技術3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,上記結論のとおり審決する。

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2018-003822

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