特許異議申立
2017-701121
化学強化用ガラスおよび化学強化ガラス並びに化学強化ガラスの製造方法
- 審判番号
- 2017-701121
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-552541
- 登録番号
- 特許第6135773号(P6135773)
- 請求日
- 2017年11月28日
- 審決日
- 2018年06月20日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】旭硝子株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人栄光特許事務所
- 【異議申立人】松村 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 新居田 知生
- 審判官 大橋 賢一
- 審判官 宮澤 尚之
- 分類
- P1651.851-YAA(C03C) / P1651.852-YAA(C03C) / P1651.161-YAA(C03C) / P1651.113-YAA(C03C) / P1651.121-YAA(C03C) / P1651.537-YAA(C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条の2、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6135773号発明「化学強化用ガラスおよび化学強化ガラス並びに化学強化ガラスの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6135773号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕〔17~27〕について訂正することを認める。
特許第6135773号の請求項1~25に係る特許を維持する。
特許第6135773号の請求項26,27に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件特許第6135773号は、平成26年12月12日(優先権主張 平成25年12月13日、平成26年2月7日及び3月28日 日本国)を国際出願日とする特願2015-552541号の特許請求の範囲に記載された請求項1~27に係る発明について、平成29年5月12日に設定登録、5月31日に登録公報の発行がされたものであり、その後、その全請求項に係る特許について、平成29年11月28日付けの特許異議の申立てが松村朋子(以下。「申立人」という。)からされ、以下の手続がされたものである。
平成30年 3月 9日付けの取消理由通知
4月27日付けの訂正請求及び意見書提出
5月28日付けの意見書提出(申立人)
第2.訂正請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、次の訂正事項1~46(表を除く訂正箇所に下線を付記)よりなる。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「SiO2を63~75%」を「SiO2を67~75%」と訂正する。
訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「MgOを3~10%」を「MgOを3~5%」と訂正する。
訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7の「請求項1から7のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス」を「請求項1から6のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス」と訂正する。
訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16の「請求項1から15のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス」を「請求項1から13のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス」と訂正する。
訂正事項5~20
願書に添付した明細書の【0012】の
「すなわち、本発明は以下の通りである。
1.酸化物基準の質量百分率表示で、SiO2を63~75%、Al2O3を4~12%、MgOを3~10%、CaOを0.5~10%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、Na2Oを10~18%、K2Oを0~8%、ZrO2を0~3%、及びFe2O3を0.005~0.25%含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1525℃以下であり、かつR2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が2.0以上4以下である化学強化用ガラス。
2.CaOを1%以上含有する前項1に記載の化学強化用ガラス。
3.R2O/Al2O3が2.4以上である前項1または2に記載の化学強化用ガラス。
4.R2Oが10~18%である前項1から3のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
5.MgOが3.5%以上、CaOが5%以上、BaOが1%以下である前項1から4のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
6.CaOが5%未満、BaOが1%以下、R2O/Al2O3が3.2以下である前項1から4のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
7.K2Oが2%以下である前項1から6のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
8.酸化物基準の質量百分率表示で、1%以下のB2O3をさらに含有する前項1から7のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
9.酸化物基準の質量百分率表示で、0.2%以下のTiO2をさらに含有する前項1から8のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
10.T2が1510℃以下である前項1から9のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
11.ガラス転移点(Tg)が530℃以上である前項1から10のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
12.50~350℃における平均線熱膨張係数が100×10-7℃-1以下である前項1から11のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
13.失透温度が、粘度が104dPa・sとなる温度(T4)以下である前項1から12のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
14.前記ガラス板は、フロート法により成形される前項1から13のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
15.前項1から14のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスを化学強化処理して得られる化学強化ガラス。
16.表面圧縮応力が580MPa以上、圧縮応力深さが5μm以上30μm以下である前項15に記載の化学強化ガラス。
17.前項1から16のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスをイオン交化学強化工程を含む化学強化ガラスの製造方法。」を、
「すなわち、本発明は以下の通りである。
1.酸化物基準の質量百分率表示で、SiO2を67~75%、Al2O3を4~10%、MgOを3~5%、CaOを0.5~10%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、Na2Oを10~18%、K2Oを0~8%、ZrO2を0~3%、及びFe2O3を0.005~0.25%含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1525℃以下であり、かつR2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が2.4以上4以下である化学強化用ガラス。
2.CaOを1%以上含有する前項1に記載の化学強化用ガラス。
3.R2Oが10~18%である前項1または2に記載の化学強化用ガラス。
4.MgOが3.5%以上、CaOが5%以上、BaOが1%以下である前項1から3のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
5.CaOが5%未満、BaOが1%以下、R2O/Al2O3が3.2以下である前項1から3のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
6.K2Oが2%以下である前項1から5のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
7.酸化物基準の質量百分率表示で、0%以上1%以下のB2O3をさらに含有する前項1から6のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
8.酸化物基準の質量百分率表示で、0%以上0.2%以下のTiO2をさらに含有する前項1から7のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
9.T2が1510℃以下である前項1から8のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
10.ガラス転移点(Tg)が530℃以上である前項1から9のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
11.50~350℃における平均線熱膨張係数が100×10-7℃-1以下である前項1から10のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
12.失透温度が、粘度が104dPa・sとなる温度(T4)以下である前項1から11のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
13.前記ガラス板は、フロート法により成形される前項1から12のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
14.前項1から13のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスを化学強化処理して得られる化学強化ガラス。
15.表面圧縮応力が580MPa以上、圧縮応力深さが5μm以上30μm以下である前項14に記載の化学強化ガラス。
16.前項1から13のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスをイオン交化学強化工程を含む化学強化ガラスの製造方法。」と訂正する。
訂正事項21,42
願書に添付した明細書の【0067】の「〔実施例1~24、比較例1~3〕」を「〔実施例1、2、4、参考例3、5~24、比較例1~3〕」と訂正する。
訂正事項22~24,43~45
願書に添付した明細書の【0070】(注:訂正請求書では、表2,3に係る訂正事項23,24について【0071】,【0072】と記載されているが、いずれも【0070】の誤記と認める。)の
「【表1】
【表2】
【表3】
」を
「【表1】
【表2】
【表3】
」と訂正する。
訂正事項25,46
願書に添付した明細書の【0071】の「各実施例で調整した本発明の化学強化用ガラスは、」を「各実施例及び参考例で調整した本発明の化学強化用ガラスは、」と訂正する。
訂正事項26
特許請求の範囲の請求項17の「SiO2を63~75%」を「SiO2を67~75%」と訂正する。
訂正事項27
特許請求の範囲の請求項17の「MgOを3~10%」を「MgOを3~5%」と訂正する。
訂正事項28
特許請求の範囲の請求項26を削除する。
訂正事項29
特許請求の範囲の請求項27を削除する。
訂正事項30~41
願書に添付した明細書の【0012】の
「18.酸化物基準の質量百分率表示で、SiO2を63~75%、Al2O3を4~12%、MgOを3~10%、CaOを0.5~10%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、Na2Oを10~18%、K2Oを0~8%、ZrO2を0~3%、及びFe2O3を0.005~0.25%含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1525℃以下であり、かつR2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が2.0以上4以下であるガラス。
19.CaOを1%以上含有する前項18に記載のガラス。
20.R2O/Al2O3が2.4以上である前項18または19に記載のガラス。
21.R2Oが10~18%である前項18から20のいずれか1項に記載のガラス。
22.MgOが3.5%以上、CaOが5%以上、BaOが1%以下である前項18から21のいずれか1項に記載のガラス。
23.CaOが5%未満、BaOが1%以下、R2O/Al2O3が3.2以下である前項18から21のいずれか1項に記載のガラス。
24.K2Oが2%以下である前項18から23のいずれか1項に記載のガラス。
25.酸化物基準の質量百分率表示で、1%以下のB2O3をさらに含有する前項18から24のいずれか1項に記載のガラス。
26.T2が1510℃以下である前項18から25のいずれか1項に記載のガラス。
27.失透温度が、粘度が104dPa・sとなる温度(T4)以下である前項18から26のいずれか1項に記載のガラス。
28.前記ガラス板は、化学強化処理に対応可能である前項18から27のいずれか1項に記載のガラス。
29.前項28に記載のガラスを化学強化処理して得られる化学強化ガラス。」を、
「17.酸化物基準の質量百分率表示で、SiO2を67~75%、Al2O3を4~10%、MgOを3~5%、CaOを0.5~10%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、Na2Oを10~18%、K2Oを0~8%、ZrO2を0~3%、及びFe2O3を0.005~0.25%含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1525℃以下であり、かつR2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が2.4以上4以下であるガラス。
18.CaOを1%以上含有する前項17に記載のガラス。
19.R2Oが10~18%である前項17または18に記載のガラス。
20.MgOが3.5%以上、CaOが5%以上、BaOが1%以下である前項17から19のいずれか1項に記載のガラス。
21.CaOが5%未満、BaOが1%以下、R2O/Al2O3が3.2以下である前項17から19のいずれか1項に記載のガラス。
22.K2Oが2%以下である前項17から21のいずれか1項に記載のガラス。
23.酸化物基準の質量百分率表示で、1%以下のB2O3をさらに含有する前項17から22のいずれか1項に記載のガラス。
24.T2が1510℃以下である前項17から23のいずれか1項に記載のガラス。
25.失透温度が、粘度が104dPa・sとなる温度(T4)以下である前項17から24のいずれか1項に記載のガラス。」と訂正する。
2.訂正要件の判断
(1)訂正事項1,26について
これらの訂正は、請求項1に記載された化学強化用ガラス及び請求項17に記載されたガラスの発明において、SiO2の含有量の下限を63%から67%に上げてその含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、設定登録時の明細書の【0017】には、「SiO2の含有量は、63%以上であり、好ましくは64%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは67%以上である。」と記載されていたから、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2,27について
これらの訂正は、請求項1に記載された化学強化用ガラス及び請求項17に記載されたガラスの発明において、MgOの含有量の上限を10%から5%に下げてその含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、設定登録時の明細書の【0020】には、「MgOの含有量が10%以下であると、失透の起こりにくさが維持され、もしくは充分なイオン交換速度が得られる。より好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下、・・・」と記載されていたから、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
この訂正は、請求項7において請求項7まで引用するという自己矛盾を、請求項6までの引用とすることで解消するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、上記誤記の訂正は、論理的に自明なものであるから、この訂正は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
この訂正は、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この訂正は、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5~20,30~41について
これらの訂正は、発明の詳細な説明に記載された本発明の記載内容を、特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、この訂正は、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項21~25,42~46について
これらの訂正は、発明の詳細な説明に記載された本発明の実施例を、特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、この訂正は、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項28,29について
この訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この訂正は、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1を請求項2~16が引用しているから、訂正前の請求項1~16は一群の請求項であり、請求項1,7,16に係る訂正事項1~4は、この一群の請求項について請求するものと認められる。
また、訂正前の請求項17を請求項18~27が引用しているから、訂正前の請求項17~27は一群の請求項であり、請求項17,26,27に係る訂正事項26~29は、この一群の請求項について請求するものと認められる。
そして、明細書に記載された本発明の記載内容を、請求項1~16の記載に整合させる訂正事項5~20、請求項17~27の記載に整合させる訂正事項30~41は、それぞれの一群の請求項について請求するものと認められ、本発明の実施例に係る訂正事項21~25,42~46は、これら一群の請求項の全てについて請求をするものと認められる。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項第1号または第2号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項から第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~16〕〔17~27〕について訂正することを認める。
第3.本件発明について
本件特許の請求項1~25に係る発明(以下、「本件発明1~25」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~25に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
【請求項1】
酸化物基準の質量百分率表示で、SiO2を67~75%、Al2O3を4~10%、MgOを3~5%、CaOを0.5~10%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、Na2Oを10~18%、K2Oを0~8%、ZrO2を0~3%、及びFe2O3を0.005~0.25%含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1525℃以下であり、かつR2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が2.4以上4以下である化学強化用ガラス。
【請求項2】
CaOを1%以上含有する請求項1に記載の化学強化用ガラス。
【請求項3】
R2Oが10~18%である請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
【請求項4】
MgOが3.5%以上、CaOが5%以上、BaOが1%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項5】
CaOが5%未満、BaOが1%以下、R2O/Al2O3が3.2以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項6】
K2Oが2%以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項7】
酸化物基準の質量百分率表示で、0%以上1%以下のB2O3をさらに含有する請求項1から6のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項8】
酸化物基準の質量百分率表示で、0%以上0.2%以下のTiO2をさらに含有する請求項1から7のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項9】
T2が1510℃以下である請求項1から8のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項10】
ガラス転移点(Tg)が530℃以上である請求項1から9のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項11】
50~350℃における平均線熱膨張係数が100×10-7℃-1以下である請求項1から10のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項12】
失透温度が、粘度が104dPa・sとなる温度(T4)以下である請求項1から11のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項13】
前記ガラス板は、フロート法により成形される請求項1から12のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスを化学強化処理して得られる化学強化ガラス。
【請求項15】
表面圧縮応力が580MPa以上、圧縮応力深さが5μm以上30μm以下である請求項14に記載の化学強化ガラス。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスをイオン交換処理する化学強化工程を含む化学強化ガラスの製造方法。
【請求項17】
酸化物基準の質量百分率表示で、SiO2を67~75%、Al2O3を4~10%、MgOを3~5%、CaOを0.5~10%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、Na2Oを10~18%、K2Oを0~8%、ZrO2を0~3%、及びFe2O3を0.005~0.25%含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1525℃以下であり、かつR2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が2.4以上4以下であるガラス。
【請求項18】
CaOを1%以上含有する請求項17に記載のガラス。
【請求項19】
R2Oが10~18%である請求項17または18に記載のガラス。
【請求項20】
MgOが3.5%以上、CaOが5%以上、BaOが1%以下である請求項17から19のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項21】
CaOが5%未満、BaOが1%以下、R2O/Al2O3が3.2以下である請求項17から19のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項22】
K2Oが2%以下である請求項17から21のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項23】
酸化物基準の質量百分率表示で、0%以上1%以下のB2O3をさらに含有する請求項17から22のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項24】
T2が1510℃以下である請求項17から23のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項25】
失透温度が、粘度が104dPa・sとなる温度(T4)以下である請求項17から24のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項26】(削除)
【請求項27】(削除)
第4.取消理由について
1.概要
申立人が提出した甲第1~6号証(以下、「甲1~6」という。)を引用して通知した取消理由1~3は、次のとおりのものである。
甲1:国際公開第2014/148020号
甲2:特願2013-60489号
甲3:山根正之 外6名編「ガラス工学ハンドブック」株式会社朝倉書店、
1999.7.5、p.286-295、p.358-362
甲4:特開2013-170087号公報
甲5:国際公開第2012/057232号
甲6:国際公開第2013/161967号
取消理由1.訂正前の請求項1~4,6~20,22~27に係る発明は、甲3,4の記載を参酌すると、その優先権の基礎とされた先の出願の日前の特許出願であって、その出願後に甲1により出願公開がされたとみなされる甲2の特許出願の願書に最初に添付された明細書および特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
取消理由2.訂正前の請求項17~20,22~24に係る発明は、その優先権の基礎とされた先の出願前日本国内または外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5,6に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由3.訂正前の請求項7の「・・・請求項1から7のいずれか1項」という引用記載は自己矛盾しており、請求項16の「・・・請求項1から15のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス」という記載は、請求項14,15の記載事項と整合しておらず、請求項26の「化学強化処理に対応可能である」という記載は、用途限定を意味するのか否かが明らかでない。
したがって、これらの請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2.取消理由1について
(1)甲2の明細書【0039】には、化学強化用ガラス組成物について、
「通常Feは、Fe2+又はFe3+の状態でガラス中に存在し、着色剤として作用する。Fe3+はガラスの紫外線吸収特性を高める成分であり、Fe2+は熱線吸収特性を高める成分である。ガラス組成物をディスプレイのカバーガラスとして用いる場合、着色が目立たないことが求められるため、Feの含有率は少ない方が好ましい。しかしFeは工業原料により不可避的に混入することが多い。したがって、Fe2O3に換算した酸化鉄の含有率は、ガラス組成物全体を100質量%として示して0.15質量%以下とすることがよく、0.1質量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.02質量%以下である。」と記載され、【0080】【表2】には、「実施例17」として、
「mol%で示して、SiO2を69.5%、Al2O3を2.5%、MgOを8.4%、CaOを5.6%、Na2Oを13.4%、K2Oを0.6%含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1503℃である化学強化用ガラス組成物。」が記載されている。
(2)ここで、上記実施例17のガラスのmol%を各酸化物の式量を用いて重量百分率に換算し、不可避的なFeの混入を考慮すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「質量百分率表示で、SiO2を69.94%、Al2O3を4.27%、MgOを5.67%、CaOを5.26%、Na2Oを13.91%、K2Oを0.95%、及びFe2O3を0.15%以下含有するガラス板であって、粘度が102dPa・sとなる温度(T2)が1503℃であり、かつR2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が3.48である化学強化用ガラス組成物。」
(3)本件発明1と甲2発明とを対比すると、本件発明1が「MgOを3~5%」含有するのに対し、甲2発明がMgOを5.26%含有する点で実質的に相違する。
また、甲2の明細書において、T2温度が1525℃以下である他の実施例を甲2発明とした場合も、MgOの含有量において本件発明1と実質的に相違する。
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明と同一であるとはいえない。
そして、本件発明2~4,6~20,22~25は、ガラス組成およびT2温度において、本件発明1と同一ないしはさらに限定された発明であるから、同様に甲2に記載された発明と同一であるとはいえない。
よって、取消理由1には理由がない。
3.取消理由2について
(1)甲5の[0062][表1]には、太陽電池や集光ミラー用に適したガラス板について、原料を電気炉にて1500℃で加熱溶融して製造した実施例の「例3」として、
「質量百分率表示で、SiO2を66.5%、Al2O3を5.2%、MgOを9.9%、CaOを1.5%、Na2Oを16.9%、及びFe2O3を0.1%含有するガラス板であって、R2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が3.25であるガラス板。」が記載され、
[0063][表2]には、比較例の「例13」として、
「質量百分率表示で、SiO2を65.8%、Al2O3を5.2%、MgOを6.5%、CaOを9.0%、Na2Oを13.6%、及びFe2O3を0.1%含有するガラス板であって、R2O/Al2O3(式中、R2OはNa2O+K2Oである)が2.26であるガラス板。」が記載されている。
次に、甲6にも、太陽電池や集光ミラー用に適したガラス板について、質量百分率に換算し、甲5の上記「例13」と同様の組成を有する実施例として「例9」が記載されている。
(2)本件発明17と、甲5の上記「例3」「例13」または甲6の上記「例9」のガラス板を対比すると、本件発明17が、「SiO2を67~75%、MgOを3~5%」含有するのに対し、甲5,6に記載されたガラス板は、いずれも、SiO2を67%未満、MgOを5%を超えて含有している点で少なくとも相違する。
したがって、本件発明17は、甲5,6に記載された発明とはいえない。
そして、本件発明18~20,22~24は、ガラス組成およびT2温度において、本件発明17と同一ないしはさらに限定された発明であるから、同様に甲5,6に記載された発明とはいえない。
よって、取消理由2には理由がない。
4.取消理由3について
本件訂正請求により、請求項7の引用請求項は、「請求項1から6のいずれか1項」となり、請求項16の引用請求項は、「請求項1から13のいずれか1項」となり、請求項26およびこれを引用する請求項27は削除された。
したがって、これらの請求項に係る発明についての明確性要件違反は解消した。
よって、取消理由3には理由がない。
第5.採用しなかった申立理由について
1.概要
申立人は甲7~9号証(以下、「甲7~9」という。)も提出し、
「訂正前の請求項1~27に係る発明は、その優先権の基礎とされた先の出願前日本国内または外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5,6に記載された発明及び頒布された刊行物である甲4,7~9に記載された技術的事項に基づいて、その優先権の基礎とされた先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」(以下、「申立理由」という。)と主張している。
甲7:特開2013-48222号公報
甲8:特開2013-139381号公報
甲9:特開2013-247238号公報
2.申立理由について
(1)申立人は本件訂正請求後に提出した意見書にて、甲5に記載の上記「例3」のガラス板において、MgOの含有量を9.9%から5%へ減らし、代わりにSiO2を66.5%から71.4%に増やすことは当業者が容易になし得たことであるから、本件発明17は、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、太陽電池用ガラス板を化学強化することは、甲4,7~9に記載されているように周知であるから、本件発明1は、甲5に記載された発明及び甲4,7~9に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
(2)そこで検討するに、甲5はもちろん甲4,7~9にも、太陽電池や集光ミラー用に適したガラス板において、MgOとSiO2が同様の作用効果を奏する成分であることは記載されていない。むしろ、甲4の【0040】【0043】には、MgOの含有により溶融性や成形性が高まるのに対し、SiO2の含有量を増やすと溶融、成形が困難になることが記載されている。そして、甲5の[0062][表1]には、「例3」のガラス板に対し、実際にMgOの含有量を減らし(9.9%から6.4%または6.5%)、SiO2の含有量を増やし(66.5%から70.7%または70.9%)た実施例として「例8」や「例10」のガラス板も記載されているが、これらの実施例では、同時にCaOの含有量を増やし(1.5%から5.7%または5.8%)、Al2O3の含有量を減らし(5.2%から1.3%または0.9%)ており、MgOに代えてSiO2を含有させるような成分調整がなされているとは認められない。
すなわち、「例3」のガラス板において、仮に、MgOの含有量を9.9%から本件発明17で特定する5%以下へ減らすとしても、その際にAl2O3等の含有量を本件発明17で特定する範囲に維持したままSiO2の含有量を増やすことは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
甲5に記載の「例13」及び甲6に記載の「例9」のガラス板についても同様である。
したがって、上記主張は採用できず、本件発明17は、甲5,6に記載された発明及び甲4,7~9に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。。
そして、本件発明1~16,18~25は、ガラス組成およびT2温度において、本件発明17と同一ないしはさらに限定された発明であるから、同様に甲5,6に記載された発明及び甲4,7~9に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立理由には理由がない。
第6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び申立理由によっては、請求項1~25に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に請求項1~25に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項26,27に係る特許は、訂正により削除されたため、これらの特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701121