特許異議申立
2017-701103
湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物及び化粧造作部材
- 審判番号
- 2017-701103
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-072531
- 登録番号
- 特許第6132139号(P6132139)
- 請求日
- 2017年11月24日
- 審決日
- 2019年03月29日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】DIC株式会社
- 【権利者代理人】小川 眞治
- 【権利者代理人】河野 通洋
- 【異議申立人】山本 美智子
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 秀次
- 審判官 冨士 良宏
- 審判官 川端 修
- 分類
- P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6132139号発明「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物及び化粧造作部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6132139号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6132139号の請求項1ないし3及び5に係る特許を維持する。
特許第6132139号の請求項4に係る特許についての異議申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6132139号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年3月29日の出願であり、平成29年4月28日にその特許権の設定登録がされ、平成29年5月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年11月24日に特許異議申立人山本美智子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成30年2月27日付けで取消理由が通知され、同年4月26日に特許権者より意見書が提出され、同年6月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月29日(受理日)に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から意見書が提出されず、同年11月22日付けで取消理由が通知され、平成31年1月23日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があったものである。
なお、平成30年8月29日(受理日)の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
(当審注:平成30年11月22日付けの取消理由は、同年8月29日(受理日)の訂正請求について、請求項1の「アクリルポリオール(A-4)」に、訂正前の発明特定事項である「ガラス転移温度が30~120℃の範囲である」点が特定されていないことを指摘するものであり、平成31年1月23日の訂正(以下、「本件訂正」という。)は、同年8月29日(受理日)の訂正請求の内容に加えて、請求項1の「アクリルポリオール(A-4)」に、「ガラス転移温度が30~120℃の範囲である」点を特定するものを含むものであり、請求項1の「アクリルポリオール(A-4)」に、「ガラス転移温度が30~120℃の範囲である」点を特定する訂正は誤記の訂正等の軽微なものであるといえることから、平成31年1月23日の訂正の請求について、当審は、申立人に意見書を提出する機会を与えなかった。)
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正の内容は次の(1)~(3)のとおりである。
(1)特許請求の範囲の請求項1を、「1,6-ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに、脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(A-1)、脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)、ポリエーテルポリオール(A-3)及び、ガラス転移温度が30~120℃の範囲であるアクリルポリオール(A-4)を含有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有し、
前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)の数平均分子量が、500~5,000の範囲であり、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)の使用量がポリオール(A)全量中3~35質量%の範囲であり、
前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)の数平均分子量が、500~10,000の範囲であり、前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、10~200質量部の範囲であり、
前記ポリエーテルポリオール(A-3)の数平均分子量としては、500~5,000の範囲であり、前記ポリエーテルポリオール(A-3)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲であり、
前記アクリルポリオール(A-4)の重量平均分子量が、5,000~50,000の範囲であり、前記アクリルポリオール(A-4)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲であり、かつ、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])が、1.1~5.0の範囲であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。」と訂正する。
(2)特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1~4の何れか1項記載の」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項記載の」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、明細書の【0016】、【0019】、【0023】、【0025】、【0027】、【0028】、【0032】、【0034】、【0041】等の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)」、「脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)」、「ポリエーテルポリオール(A-3)」及び「アクリルポリオール(A-4)」について、数平均分子量及び芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対する使用量を特定し、さらに、「ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基とポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])」を特定するものであるから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
上記訂正事項3は、請求項4の削除に伴い、多数項を引用している請求項5において、引用先の請求項4を削除し、引用請求項数を減少する訂正であるから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)一群の請求項について
また、訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
3.まとめ
上記「2.(1)~(4)」より、上記訂正請求による訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許の明細書の特許請求の範囲は、上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1~3及び5に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に対応する特許を「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」などということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3及び5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
1,6-ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに、脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(A-1)、脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)、ポリエーテルポリオール(A-3)及び、ガラス転移温度が30~120℃の範囲であるアクリルポリオール(A-4)を含有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有し、
前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)の数平均分子量が、500~5,000の範囲であり、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)の使用量がポリオール(A)全量中3~35質量%の範囲であり、
前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)の数平均分子量が、500~10,000の範囲であり、前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、10~200質量部の範囲であり、
前記ポリエーテルポリオール(A-3)の数平均分子量としては、500~5,000の範囲であり、前記ポリエーテルポリオール(A-3)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲であり、
前記アクリルポリオール(A-4)の重量平均分子量が、5,000~50,000の範囲であり、前記アクリルポリオール(A-4)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲であり、かつ、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])が、1.1~5.0の範囲であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)に用いる前記脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)に用いる脂肪族ジカルボン酸以外の二塩基酸がテレフタル酸である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を用いて得られたことを特徴とする化粧造作部材。」
第4 取消理由の概要
1.平成30年8月29日(受理日)の訂正請求による訂正前の請求項1~5に係る発明に対して、平成30年2月27日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、「取消理由1」という。)の概要は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤において、ポリオール(A)の各成分(A-1~A-4)について、その数平均分子量及び配合量が特定されない本件発明は、本件発明の課題を解決するものとはいえないから、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。
2.平成30年8月29日(受理日)の訂正請求による訂正前の請求項1~5に係る発明に対して、平成30年6月29日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、「取消理由2」という。)の概要は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤において、ポリオール(A)の各成分(A-1~A-4)について、その数平均分子量及び使用量が特定されず、しかも、ポリイソシアネート(B)であるMDI(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)の使用量が特定されない本件発明は、本件発明の課題を解決するものとはいえないから、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。
3.平成30年8月29日(受理日)の訂正請求によって訂正された請求項1~3、5に係る発明に対して、平成30年11月22日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、「取消理由3」という。)の概要は、請求項1に記載されたアクリル系ポリオール(A-4)について、ガラス転移温度が規定されておらず、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。
第5 当審の判断
1.取消理由3について
本件訂正により、請求項1に記載された「アクリル系ポリオール(A-4)」について、ガラス転移温度が規定され、上記取消理由3は解消した。
2.取消理由1、2について
本件訂正により、本件発明1において、「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)」について、「数平均分子量」が、「500~5,000の範囲」であること、及び、その使用量が、「ポリオール(A)全量中3~35質量%の範囲」であること、「脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)」について、「数平均分子量」が、「500~10,000の範囲」であること、及び、その使用量が、「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、10~200質量部の範囲」であること、「ポリエーテルポリオール(A-3)」について、「数平均分子量」が、「500~5,000の範囲であ」ること、及び、その使用量が、「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲」であること、並びに、「アクリルポリオール(A-4)」について、「重量平均分子量」が、「5,000~50,000の範囲」であること、及び、その使用量が、「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲」であることが規定された。
さらに、MDIの使用量について、MDIは、本件発明1における「ポリイソシアネート(B)」であるところ、本件発明1は、「ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基とポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])が、1.1~5.0の範囲である」ことが規定された。
そして、本件発明が解決しようとする課題は、「表面平滑性及び初期クリープ性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供すること」(【0007】)であり、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤において、ポリオール(A)の各成分(A-1~A-4)の数(重量)平均分子量及び使用量、ポリイソシアネート(B)の使用量によっては、「表面平滑性及び初期クリープ性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物」が得られるかどうかは明らかではないところ、本件訂正により、請求項1に記載されたポリオール(A)の各成分(A-1~A-4)の数(重量)平均分子量及び使用量、ポリイソシアネート(B)の使用量が規定され、本件明細書の発明の詳細な説明及びその実施例を基に、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとなり、上記取消理由1、2は解消した。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由について
1.取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由の概要について
取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由の概要は、訂正前の本件発明1~5は、甲第1号証(特許第3970860号公報)に記載された発明、及び、甲第2号証(甲第2号証:DowChemical社が作成したテクニカルデータシート(http://msdssearch.dow.com/PublishedLiteratureDOWCOM/dh_08fa/0901b803808fa249.pdf?filepath=coatings/pdfs/noreg/884-00176.pdf&fromPage=GetDoc))に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の本件発明1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである(以下、甲第1号証、甲第2号証を、「甲1」、「甲2」などという。)。
2.甲1、2の記載
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「【請求項1】
水分反応性ホットメルト組成物であって、
(a)前記組成物の重量を基準にして30重量%~90重量%の少なくとも1種類のポリオール;
(b)前記組成物の重量を基準にして1重量%~20重量%の、重量平均分子量が40,000以上である少なくとも1種類の非晶性非反応性アクリルポリマー;および、
(c)前記組成物の重量を基準にして5重量%~50重量%の少なくとも1種類のポリイソシアネート、
を含む成分を混合する工程を含む方法によって製造される組成物。
【請求項2】
前記組成物が低糸引き性を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記成分(a)が、
(a)(i)前記組成物の重量を基準にして0重量%~65重量%の少なくとも1種類の結晶性ポリエステルポリオール;
(a)(ii)前記組成物の重量を基準にして0重量%~15重量%の少なくとも1種類のポリエーテルポリオール;および
(a)(iii)前記組成物の重量を基準にして5重量%~50重量%の少なくとも1種類の非晶性ポリエステルポリオール
を含み、
前記成分(a)(i)および(a)(ii)の量の合計が前記組成物の重量を基準にして10重量%~80重量%となる請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(a)(i)が、線状脂肪族ジオールと線状脂肪族二酸との反応生成物である少なくとも1種類の結晶性ポリエステルポリオールを含む請求項3記載の組成物。」
(1-2)「【0007】
本発明の組成物は水分反応性ホットメルト組成物である。本明細書において「水分反応性」とは、組成物がイソシアネート基を含有し、このイソシアネート基が希望通りに水と反応して、組成物の分子量を増加させ、および/または組成物の架橋を引き起こし、それによって水と接触した後の組成物の強度特性を向上させることができることを意味する。本明細書において「ホットメルト」とは、室温(すなわち25℃以下)において固体、半固体、または粘稠体となりうる組成物が、有益に加熱されることによって、1種類以上の基体に適用するのに適した粘度の流動性材料となることができることを意味する。」
(1-3)「【0017】
・・・好適な結晶性ポリエステルポリオールとしては、例えば、線状脂肪族ジオール(すなわち、化学式HO-(CH2)n-OH(式中、nは2~22である)のジオール)と、線状脂肪族二酸(すなわち、化学式HOOC-(CH2)m-COOH(式中、mは2~22である)の二酸)との反応生成物である結晶性ポリエステルポリオールが挙げられる。ある態様において、nは4以上である。ある態様において、nは10以下、または8以下である。ある態様において、nは6である。これとは独立して、ある態様において、mは10以下、または8以下、または6以下である。ある態様において、mは4である。好適な結晶性ポリエステルポリオールの1つは、例えば、ヘキサンジオールアジペートである。
【0018】
少なくとも1種類の結晶性ポリエステルポリオールが使用されるある実施態様において、1種類以上の結晶性ポリエステルポリオールは、1種類以上の線状脂肪族ジオールと二酸混合物との反応によって生成される。ある態様において、二酸混合物は、少なくとも1種類の線状脂肪族二酸、少なくとも1種類の芳香族二酸、および任意の他の二酸を含む。このような結晶性ポリエステルポリオールの一種は、ヘキサンジオールと、アジピン酸および芳香族酸、例えばテレフタル酸との混合物との反応によって生成される。」
(1-4)「【0063】
ある態様において、本発明の水分反応性ホットメルト組成物は、第1の基体を少なくとも1つの次の基体に接着するための接着剤として使用される。・・・
【0065】
NCO-官能基と反応し、それによって適用された水分反応性ホットメルト組成物の極限接着強度を増加させることが期待される水分、すなわち水は、本発明の水分反応性ホットメルト組成物に任意の様々な方法で曝露することができると考えられる。例えば、水分反応性ホットメルト組成物を1つの基体に適用し、次なる基体と接触させる前に、水分反応性ホットメルト組成物を任意の様々な方法で水分へ曝露することができ、例えば、周囲湿度、人工的に増加または調整して加湿した空気、水滴の霧、液体の水のスプレーを適用した水分反応性ホットメルト組成物に接触させる、またはそれらの組み合わせが挙げられる。」
(1-5)「【実施例】
【0070】
以下の実施例においては、以下の略語および成分が使用される:
OH#=ヒドロキシル価、物質1g当たりのKOHのg数で報告される、ヒドロキシル価は概算値である
HDA=ヘキサンジオールアジペート
HDAT=ヘキサンジオールとアジピン酸およびテレフタル酸の混合物とのポリエステル
NPGA=ネオペンチルグリコールアジペート
DMDEE=ジモルホリノジエチルエーテル、2,2’ジモルホリノエチルエーテルとも呼ばれる
NMW=みかけの分子量、値は概算値である
【0071】
【表1】
」
(1-6)「【0092】
(実施例16)
使用する前に、Desmophen(商標)105-30、Desmophen(商標)105-110、およびDynacoll(商標)7345を、別々の容器に入れ、90℃の加熱ボックス中で72時間維持した。以下の手順の間、反応器に窒素をパージしながら、成分を反応器に加えた。
【0093】
反応器を150℃に加熱した。乾燥反応器を加熱しながら、37.4kg(82.3ポンド)のDesmophen(商標)S105-110、37.4kg(82.3ポンド)Arcol(商標)PPG1025、および136g(0.30ポンド)のIrganox(商標)245を投入した。中~高速で混合しながら、塊が形成されないように57.7kg(127.1ポンド)のParaloid(商標)B-60を非常にゆっくりと加えた。成分を混合しながら、反応器を窒素雰囲気下で150℃に加熱した。150℃となった後、十分撹拌しながら反応器を2時間維持してParaloid(商標)B-60を溶解させた。
【0094】
Paraloid(商標)B-60が溶解した後、このバッチを約120℃まで冷却した。次に、ゆっくりと完全真空にして、続いてバッチを90~92℃に冷却しながら30分間維持した。
【0095】
窒素を加えて真空を開放し、バッチを90~92℃に冷却してから、12.9kg(28.4ポンド)の純MDIをできる限り迅速に添加した。発熱が起こった場合には、冷却を行って温度を100~105℃に維持し、溶融物中の気泡を除去するために中程度の減圧下でこれを60分間維持した。空気の取り込みを回避するために必要であれば撹拌速度を低下させた。
【0096】
953g(2.10ポンド)のSilquest(商標)A-171、196.2kg(432.1ポンド)のDesmophen(商標)S105-30、および65.4kg(144.1ポンド)のDynacoll(商標)7345を投入した。再び高真空に減圧し、100~105℃で30分間維持した。窒素を加えて真空を開放し、反応器を90~92℃に冷却した。
【0097】
45.6kg(100.41ポンド)の純MDIを投入した。反応器を100~105℃で60分間維持した。温度維持に必要であれば冷却を実施した。この間、溶融物から気泡を除去するために、撹拌速度を低下させて減圧を行った。
【0098】
窒素を加えて真空を開放し、45g(0.10ポンド)の塩化ベンゾイル、272g(0.60ポンド)のDMDEE、および91g(0.20ポンド)Blankophor(商標)SOLを反応器に加えた。気泡を除去するために、次に反応器を減圧下で30分間混合した。温度は100~105℃に維持した。バッチを加熱したスクリーンフィルターに通して取り出し、窒素をパージした。」
(2)甲2の記載事項
甲2には、「PARALOIDTM B-60 Solid Grade Thermoplastic Acrylic Resin」の「Typical Physical Properties1(当審仮訳:典型的な物理特性)」について、「Chemical Composition(当審仮訳:化学組成)」が「MMA/BMA Copolymer(当審仮訳:メタクリル酸メチル/ブチルメタクリレート共重合体)」であり「Tg,℃」が「75」であることが記載されている。
3.甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1の上記2.(1-1)の【請求項1】を引用する【請求項3】をさらに引用する【請求項4】には、「水分反応性ホットメルト組成物であって、
(a)(i)線状脂肪族ジオールと線状脂肪族二酸との反応生成物である少なくとも1種類の結晶性ポリエステルポリオールを含む、前記組成物の重量を基準にして
0重量%~65重量%の少なくとも1種類の結晶性ポリエステルポリオール;
(a)(ii)前記組成物の重量を基準にして0重量%~15重量%の少なくとも1種類のポリエーテルポリオール;および
(a)(iii)前記組成物の重量を基準にして5重量%~50重量%の少なくとも1種類の非晶性ポリエステルポリオール
を含み、
前記成分(a)(i)および(a)(ii)の量の合計が前記組成物の重量を基準にして10重量%~80重量%となる
前記組成物の重量を基準にして30重量%~90重量%の少なくとも1種類のポリオール;
(b)前記組成物の重量を基準にして1重量%~20重量%の、重量平均分子量が40,000以上である少なくとも1種類の非晶性非反応性アクリルポリマー;および、
(c)前記組成物の重量を基準にして5重量%~50重量%の少なくとも1種類のポリイソシアネート、
を含む成分を混合する工程を含む方法によって製造される組成物。」が記載されているといえる。
そして、上記2.(1-6)には、上記の水分反応性ホットメルト組成物に対応する具体例である(実施例16)について、「反応器を150℃に加熱した。乾燥反応器を加熱しながら、37.4kg(82.3ポンド)のDesmophen(商標)S105-110、37.4kg(82.3ポンド)Arcol(商標)PPG1025、および136g(0.30ポンド)のIrganox(商標)245を投入した。中~高速で混合しながら、塊が形成されないように57.7kg(127.1ポンド)のParaloid(商標)B-60を非常にゆっくりと加えた。成分を混合しながら、反応器を窒素雰囲気下で150℃に加熱した。150℃となった後、十分撹拌しながら反応器を2時間維持してParaloid(商標)B-60を溶解させた。
Paraloid(商標)B-60が溶解した後、このバッチを約120℃まで冷却した。次に、ゆっくりと完全真空にして、続いてバッチを90~92℃に冷却しながら30分間維持した。
窒素を加えて真空を開放し、バッチを90~92℃に冷却してから、12.9kg(28.4ポンド)の純MDIをできる限り迅速に添加した。発熱が起こった場合には、冷却を行って温度を100~105℃に維持し、溶融物中の気泡を除去するために中程度の減圧下でこれを60分間維持した。空気の取り込みを回避するために必要であれば撹拌速度を低下させた。
953g(2.10ポンド)のSilquest(商標)A-171、196.2kg(432.1ポンド)のDesmophen(商標)S105-30、および65.4kg(144.1ポンド)のDynacoll(商標)7345を投入した。再び高真空に減圧し、100~105℃で30分間維持した。窒素を加えて真空を開放し、反応器を90~92℃に冷却した。
45.6kg(100.41ポンド)の純MDIを投入した。反応器を100~105℃で60分間維持した。温度維持に必要であれば冷却を実施した。この間、溶融物から気泡を除去するために、撹拌速度を低下させて減圧を行った。
窒素を加えて真空を開放し、45g(0.10ポンド)の塩化ベンゾイル、272g(0.60ポンド)のDMDEE、および91g(0.20ポンド)Blankophor(商標)SOLを反応器に加えた。気泡を除去するために、次に反応器を減圧下で30分間混合した。温度は100~105℃に維持した。バッチを加熱したスクリーンフィルターに通して取り出し、窒素をパージした。」の記載がある。
ここで、(実施例16)で使用されている「Arcol(商標)PPG1025」は、上記2.(1-5)の【表1】によれば、「ポリエーテルポリオール」であり、「Paraloid(商標)B-60」は、同【表1】によれば、「アクリルポリマー」で、請求項に記載された水分反応性ホットメルト組成物の「(b)重量平均分子量が40,000以上である少なくとも1種類の非晶性非反応性アクリルポリマー」の具体例となるものであり、「Desmophen(商標)S105-30」は、同【表1】によれば、「HDA」(ヘキサンジオールアジペート)であり、上記2.(1-3)の段落【0017】の記載によれば、「結晶性ポリエステルポリオール」の例示とされるものであり、「Dynacoll(商標)7345」は、同【表1】によれば、「HDAT」(ヘキサンジオールとアジピン酸およびテレフタル酸の混合物とのポリエステル)であり、上記2.(1-3)の段落【0018】の記載によれば、「結晶性ポリエステルポリオール」の例示とされるものである。
そして、(実施例16)の組成物を、請求項に記載された水分反応性ホットメルト組成物の表現形式に当てはめ、成分のみを記載すると、
「水分反応性ホットメルト組成物であって、
(a)(i)結晶性ポリエステルポリオールであるヘキサンジオールアジペート;
結晶性ポリエステルポリオールであるヘキサンジオールとアジピン酸およびテレフタル酸の混合物とのポリエステル;
(a)(ii)ポリエーテルポリオール;
を含むポリオール;
(a)(iii)少なくとも1種類の非晶性ポリエステルポリオール
(b)重量平均分子量が40,000以上である非晶性非反応性アクリルポリマー;および、
(c)純MDI
を含む成分を混合する工程を含む方法によって製造される組成物。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
4.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「結晶性ポリエステルポリオールであるヘキサンジオールアジペート」、「アジピン酸」、「ポリエーテルポリオール」、「ポリオール」、及び「(c)純MDI」は、それぞれ本件発明1の「脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)」、「脂肪族ジカルボン酸」、「ポリエーテルポリオール(A-3)」、「ポリオール(A)」、及び「ポリイソシアネート(B)」に相当する。
イ 甲1発明の「水分反応性ホットメルト組成物」は、上記2.(1-4)の段落【0063】の「ある態様において、本発明の水分反応性ホットメルト組成物は、第1の基体を少なくとも1つの次の基体に接着するための接着剤として使用される。」との記載によれば、「接着剤」として使用されるものであり、同(1-4)の段落【0065】の「例えば、水分反応性ホットメルト組成物を1つの基体に適用し、次なる基体と接触させる前に、水分反応性ホットメルト組成物を任意の様々な方法で水分へ曝露することができ、例えば、周囲湿度、人工的に増加または調整して加湿した空気、水滴の霧、液体の水のスプレーを適用した水分反応性ホットメルト組成物に接触させる、またはそれらの組み合わせが挙げられる。」との記載によれば、湿気に反応して硬化するものであるから、本件発明1の「湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤」に相当する。
ウ 甲1発明の「結晶性ポリエステルポリオールであるヘキサンジオールとアジピン酸およびテレフタル酸の混合物とのポリエステル」は、本件発明1の「1,6-ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに、脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(A-1)」と、「ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに、脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(A-1)」の点で共通している。
エ 甲1発明の「水分反応性ホットメルト組成物であって、(a)・・・を含むポリオール・・・および、(c)純MDIを含む成分を混合する工程を含む方法によって製造される組成物」は、上記2.(1-2)の「本発明の組成物は水分反応性ホットメルト組成物である。本明細書において「水分反応性」とは、組成物がイソシアネート基を含有し、このイソシアネート基が希望通りに水と反応して、組成物の分子量を増加させ、および/または組成物の架橋を引き起こし、それによって水と接触した後の組成物の強度特性を向上させることができることを意味する。」との記載によれば、イソシアネート基を含有するものであり、水と反応しさらに分子量の増加および/または架橋が生じるものであるから、「プレポリマー」といえるものであり、さらに、イソシアネート基を含有する化合物が水と反応し、組成物が架橋すれば、「ポリウレタン」となることは技術的な常識であるといえるから、本件発明1の「・・・を含有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する・・・湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤」に相当する。
オ そうすると、本件発明1と甲1発明は、「ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに、脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(A-1)、脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)、及びポリエーテルポリオール(A-3)を含有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点1>
ポリオールの成分のうち、芳香族ポリエステルポリオール(A-1)のヘキサンジオールについて、本件発明1では、1,6-ヘキサンジオールであるのに対し、甲1発明では、1,6-ヘキサンジオールであるのか不明な点。
<相違点2>
ポリオールの成分について、本件発明1では、ガラス転移温度が30~120℃の範囲であるアクリルポリオール(A-4)を含有し、しかも、前記アクリルポリオール(A-4)の重量平均分子量が、5,000~50,000の範囲であり、前記アクリルポリオール(A-4)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲である点が特定されているのに対し、甲1発明では、アクリルポリオールを含んでいない点。
<相違点3>
ポリオールの成分のうち、「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)」、「脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)」及び「ポリエーテルポリオール(A-3)」の分子量及び使用量について、本件発明1は、「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)の数平均分子量が、500~5,000の範囲であり、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)の使用量がポリオール(A)全量中3~35質量%の範囲であり、前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)の数平均分子量が、500~10,000の範囲であり、前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、10~200質量部の範囲であり、前記ポリエーテルポリオール(A-3)の数平均分子量としては、500~5,000の範囲であり、前記ポリエーテルポリオール(A-3)の使用量が、前記芳香族ポリエステルポリオール(A-1)100質量部に対して、20~400質量部の範囲であ」ることが特定されているのに対し、甲1発明の、「結晶性ポリエステルポリオールであるヘキサンジオールとアジピン酸およびテレフタル酸の混合物とのポリエステル」は、甲1発明の組成物の重量を基準にして0重量%~65重量%、「結晶性ポリエステルポリオールであるヘキサンジオールアジペート」は、組成物の重量を基準にして0重量%~15重量%、「アジピン酸」は組成物の重量を基準にして5重量%~50重量%であり、いずれも分子量は不明な点。
<相違点4>
「ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])」について、本件発明1は、「1.1~5.0の範囲」であることが特定されているのに対し、甲1発明の「(c)純MDI」が有するイソシアネート基と「ポリオール」が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])」は、不明な点。
カ 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
本件発明1において、「アクリルポリオール(A-4)」は、ポリオール(A)の成分として、「芳香族ポリエステルポリオール(A-1)」、「脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A-2)」、「ポリエーテルポリオール(A-3)」と共に、ポリイソシアネート(B)と反応し、「ウレタンプレポリマー」を形成するものである。
ここで、本件発明1の「アクリルポリオール(A-4)」は、本件明細書の段落【0029】の「前記アクリルポリオール(A-4)は・・・水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を含有する(メタ)アクリル化合物を重合して得られるものである。」との記載によれば、アクリル重合体(ポリマー)に含まれるものである。
一方、本件発明1の「アクリルポリオール(A-4)」と、「アクリルポリマー」の点では共通するといえる甲1発明の「(b)重量平均分子量が40,000以上である非晶性非反応性アクリルポリマー」は、「非晶性非反応性アクリルポリマー」とされているとおり、「非反応性」であることが必須であり、甲1発明の純MDIと反応するものではない。
そうすると、甲1発明の「(b)重量平均分子量が40,000以上である非晶性非反応性アクリルポリマー」は、本件発明1の「アクリルポリオール(A-4)」ではないし、「非晶性非反応性アクリルポリマー」を、水酸基を有するもの(ポリオール)として、純MDIと反応するものとする、動機付けが甲1発明に存在するともいえない。
さらに、甲1発明には、さらに「(b)重量平均分子量が40,000以上である非晶性非反応性アクリルポリマー」とは別にアクリルポリオールを加える動機付けが存在するともいえない。
また、甲2は、単に、「Paraloid(商標)B-60」が「メタクリル酸メチル/ブチルメタクリレート共重合体」であることを示すものであり、甲1発明の組成物に、さらにアクリルポリオールを加えることを示唆するものではない。
しかも、本件発明1では、アクリルポリマーについて、その重量平均分子量及び使用量が特定されている。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点であるし、上記相違点2に係る本件発明1の特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるともいえないから、上記相違点1、3及び4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2ないし5について
本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、3及び5は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由に関するまとめ
以上のとおり、本件発明1~3及び5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701103