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特許異議申立

2017-701084

接着剤組成物、接着フィルム、貼付方法、および処理方法

審判番号
2017-701084
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-117292
登録番号
特許第6128970号(P6128970)
請求日
2017年11月17日
審決日
2018年05月17日
公報発行日
2018年08月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東京応化工業株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
  • 【異議申立人】袖岡 恭子
審判長/審判官
  • 審判長 川端 修
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 原 賢一
分類
P1651.121-YAA(C09J) / P1651.851-YAA(C09J) / P1651.853-YAA(C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6128970号発明「接着剤組成物、接着フィルム、貼付方法、および処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6128970号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第6128970号の請求項1~15に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6128970号の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成25年6月3日(優先権主張 平成24年8月13日)に特許出願され、平成29年4月21日に特許権の設定登録がされ、同年5月17日にその特許公報が発行され、その請求項1~15に係る発明の特許に対し、平成29年11月17日に袖岡恭子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。 平成30年 1月26日付け 取消理由通知 同年 3月26日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 3月30日付け 通知書 同年 5月 2日   意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 平成30年3月26日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6128970号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1~15について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~2のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、 「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、 上記接着剤組成物は、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含み、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていることを特徴とする接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。」とあるのを、 「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、 上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、 上記接着剤組成物は、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含み、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていることを特徴とする接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。」に訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の明細書の段落0079に、 「なお、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法も本発明の範囲に含まれる。」とあるのを、 「なお、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法も本発明の範囲に含まれる。」に訂正する。 3.訂正の適否 (1)訂正事項1 ア.訂正の目的 訂正事項1の前段の訂正事項は、訂正前の請求項1の「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物」を「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」として、その接着剤組成物の範囲を「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去」するためのものに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1の後段の訂正事項は、訂正前の請求項1の「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」を「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」として、訂正前の請求項1の「220℃における貯蔵弾性率(G’)」及び「220℃における損失弾性率(G”)」の各々が、具体的には「サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したとき」の値であることを明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ.特許請求の範囲の拡張又は変更 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物」を「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」とすることにより「特許請求の範囲の減縮」をするとともに、訂正前の請求項1の「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」を「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」とすることにより「明瞭でない記載の釈明」をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.特許明細書等に記載した事項の範囲内 訂正事項1の前段の訂正事項について、本件特許明細書の段落0080には「本発明に係る接着剤組成物によって接着されたウエハと支持体とを、上記の反応層を変質すること等によって分離した後に、接着層を除去する場合、上述の溶剤を用いれば容易に溶解して除去することができる。」との記載があり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1には「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、」との記載があるから、当該訂正事項1の前段の訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 また、訂正事項1の後段の訂正事項について、本件特許明細書の段落0019には「ここで、貯蔵弾性率および損失弾性率は、公知の動的粘弾性測定装置を用いて測定した、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したときの貯蔵弾性率および損失弾性率を意味している。」との記載があるから、当該訂正事項1の前段の訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (2)訂正事項2 ア.訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の明細書の段落0079の「なお、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法も本発明の範囲に含まれる。」との記載が、本件特許の請求項1の「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、」という事項と齟齬しているために、当該記載にある「、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法」との記載部分を削除して、本件特許の請求項1に係る発明の範囲を明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ.特許請求の範囲の拡張又は変更 訂正事項2は、本件特許の特許請求の範囲の記載と齟齬する明細書の記載箇所を「明瞭でない記載の釈明」を目的として訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.特許明細書等に記載した事項の範囲内 訂正事項2は、訂正前の明細書の段落0079の記載部分から、その「、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法」との記載部分を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (3)一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~15について、その請求項2~15はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~15に対応する訂正後の請求項1~15は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 また、訂正事項2による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~15であるから、訂正事項2と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。 したがって、訂正事項2による本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。 (4)訂正の適否のまとめ 以上総括するに、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正により訂正された請求項1~15に係る発明(以下「本1発明」~「本15発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(訂正箇所に下線を付す。)。 「【請求項1】 ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、 上記接着剤組成物は、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含み、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていることを特徴とする接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。 【請求項2】 上記エラストマーは、スチレン基を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。 【請求項3】 上記エラストマーは、主鎖の両末端がスチレン基であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。 【請求項4】 上記エラストマーのスチレン基含有量は、10重量%以上、65重量%以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の接着剤組成物。 【請求項5】 上記エラストマーの質量平均分子量は、50,000以上、150,000以下であることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の接着剤組成物。 【請求項6】 上記エラストマーは、水添物であることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の接着剤組成物。 【請求項7】 上記エラストマーは、ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の接着剤組成物。 【請求項8】 上記エラストマーは、上記ブロック共重合体の水添物と、シクロオレフィンコポリマーおよびスチレン/1-アダマンチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つと、を含んでなることを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。 【請求項9】 フィルム上に、請求項1~8の何れか一項に記載の接着剤組成物を含有する接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。 【請求項10】 請求項1~8の何れか一項に記載の接着剤組成物を用いて、ウエハに支持体を貼り付ける貼付工程を包含することを特徴とする貼付方法。 【請求項11】 上記支持体に貼り付けたウエハを処理する処理方法であって、 請求項10に記載の貼付方法を行なった後、上記支持体に接着した上記ウエハを、220℃以上の環境下に曝す工程を包含していることを特徴とする処理方法。 【請求項12】 上記220℃以上の環境下に曝す工程を行なった後、上記ウエハから上記支持体を分離する工程を包含していることを特徴とする請求項11に記載の処理方法。 【請求項13】 上記支持体には、厚さ方向に貫通する穴が設けられており、 上記支持体を分離する工程では、当該穴を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体とウエハとを分離することを特徴とする請求項12に記載の処理方法。 【請求項14】 上記支持体と上記ウエハとの間には、上記接着層の他に反応層が介在しており、 当該反応層は、上記支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、 上記支持体を分離する工程では、光を照射することによって当該反応層を変質させることで、上記支持体と上記ウエハとを分離することを特徴とする請求項12に記載の処理方法。 【請求項15】 上記支持体を分離した上記ウエハから、溶剤を用いて接着層を溶解して除去することを特徴とする請求項12~14の何れか一項に記載の処理方法。」 第4 取消理由 1.特許異議申立人が申し立てた取消理由 特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。 (1)特許法第29条第2項について(同法第113条第2号) 訂正前の請求項1~12及び15係る発明は、甲第1号証記載の発明、並びに甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証の記載事項から容易想到である。 訂正前の請求項13に係る発明は、甲第1号証記載の発明、並びに甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載事項から容易想到である。 訂正前の請求項14に係る発明は、甲第1号証記載の発明、並びに甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第6号証の記載事項から容易想到である。 (2)特許法第29条第2項について(同法第113条第2号) 訂正前の請求項1~7、9~12及び15係る発明は、甲第7号証記載の発明、並びに甲第1号証及び甲第8号証~甲第13号証の記載事項から容易想到である。 訂正前の請求項13に係る発明は、甲第7号証記載の発明、並びに甲第1号証、甲第5号証及び甲第8号証~甲第13号証の記載事項から容易想到である。 訂正前の請求項14に係る発明は、甲第7号証記載の発明、並びに甲第1号証、甲第6号証及び甲第8号証~甲第13号証の記載事項から容易想到である。 (3)証拠方法 甲第1号証:特表2010-506406号公報 甲第2号証:特表平11-508924号公報 甲第3号証:Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics, Vol.47, 955-965(2009) 甲第4号証:特開2010-180325号公報 甲第5号証:特開2006-135272号公報 甲第6号証:特開2004-64040号公報 甲第7号証:特許第5679732号公報 甲第8号証:特開2010-90352号公報 甲第9号証:特開2006-83364号公報 甲第10号証:国際公開第2011/158550号 甲第11号証:特開2000-86860号公報 甲第12号証:特開2010-109324号公報 甲第13号証:「株式会社クラレ製 SEPTON 8004、8006、8007 製品安全データシート」(改訂日2010年12月1日) 2.当審が通知した取消理由の概要 訂正前の請求項1~15に係る発明の特許に対して平成30年1月26日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 〔理由1〕本件特許の請求項1~15に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1:特表2010-506406号公報 刊行物2:特表平11-508924号公報 刊行物3:Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics, Vol.47, 955-965(2009) 刊行物4:特開2010-180325号公報 刊行物5:特開2006-135272号公報 刊行物6:特開2004-64040号公報 刊行物7:特開2012-36269号公報(甲7の公開公報) 刊行物8:特開2010-90352号公報 刊行物9:特開2006-83364号公報 刊行物10:国際公開第2011/158550号 刊行物11:特開2000-86860号公報 刊行物12:特開2010-109324号公報 参考例A:「株式会社クラレ製 SEPTON 8004、8006、8007 製品安全データシート」(改訂日2010年12月1日) 参考例B:特開2012-124230号公報 参考例C:特開2012-51258号公報 参考例D:特開2012-92283号公報 よって、本件特許の請求項1~15に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。 なお、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1~12及び参考例Aは、特許異議申立人が提示した甲第1~12号証及び甲第13号証に同じである。 第5 当審の判断 当審は、本1発明~本15発明は、特許異議申立人が申し立てた取消理由及び当審の通知した取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。 理由は以下のとおりである。 1.理由1(特許法第29条第2項)について (1)甲第1号証及び甲第7号証の記載事項 ア.甲第1号証の記載事項 摘記1a:請求項1、37、42、45及び47 「【請求項1】溶媒系に溶解または分散されたポリマーを含有する接合用組成物で形成される接合層を介して接合された、第1の基板と第2の基板とを含むスタックを提供し、 前記スタックを、少なくとも約190℃の温度に曝して前記接合層を軟化させ、 前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に力を印加すると同時に、前記第1の基板および前記第2の基板の他方を、前記力に耐えられるようにすることを含み、前記力は、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するに足る十分な量で印加されるウェーハの接合方法。… 【請求項37】粘着付与剤と、 ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、 前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物。… 【請求項42】前記組成物が、更に、酸化防止剤、界面活性剤、接着促進剤およびそれらの混合物からなる群から選択される成分を含有する請求項37に記載の組成物。… 【請求項45】前記組成物が、本質的に、架橋剤を含有しない請求項37に記載の組成物。… 【請求項47】前記組成物が、250℃で約1,000ポアズ未満の粘度を有する請求項37に記載の組成物。」 摘記1b:段落0028 「【0028】酸化防止剤を用いる場合、該酸化防止剤は、上記組成物中の固体の総重量を100重量%として、上記組成物中に、約0.01重量%~約3重量%存在するのが好ましく、約0.01重量%~約1.5重量%存在するのがより好ましく、約0.01重量%~約0.1重量%存在するのが更に好ましい。適する酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox(R)1010の名称で、チバ(Ciba)から市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート)およびホスファイト系酸化防止剤(例えば、Irgafos(R)168の名称で、チバ(Ciba)から市販されているトリス(2,4‐ジtert‐ブチルフェニル)ホスファイト)からなる群から選択される酸化防止剤が含まれる。」 摘記1c:段落0033~0035、0045及び0047 「【0033】上記組成物は、キャリア基板かアクティブウェーハのいずれか一方に最初に塗布されうるが、アクティブウェーハに最初に塗布されることが好ましい。… 【0034】コーティングの後、上記基板を(例えば、ホットプレート上で)ベークして、溶媒を蒸発させることができる。典型的なベーキングでは、温度が、約150~275℃、好ましくは約150~225℃であり、時間が、約2~15分、より好ましくは約3~10分であるだろう。… 【0035】ベーキングの後、所望のキャリアウェーハを、本発明の組成物の層に接触させ、その層に対して押し付ける。上記キャリアウェーハは、約150~250℃、好ましくは約180~220℃の温度で加熱することにより本発明の上記組成物に接合される。この加熱は、好ましくは、真空下で、約1~10分間、約1~約15キロニュートンの接合力で行われる。… 【0045】所望の処理が行われた後、アクティブウェーハまたは基板は、少なくとも約190℃、好ましくは少なくとも約200℃、より好ましくは少なくとも約220℃、更に好ましくは少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。これらの温度範囲は、上記接合用組成物層の好ましい軟化点を示す。… 【0047】デバイス領域に残存する、いかなる接合用組成物も、乾燥前に上記組成物の一部であった最初の溶媒、または、キシレン、ベンゼン、リモネン等の溶媒を用いて、容易に除去することができる。」 摘記1d:段落0057 「【0057】(実施例5) 塗布、接合および剥離 実施例1~4の配合物について、様々な基板ウェーハ上へのスピンコーティングを行った。ベーキングを行い、溶媒を蒸発させて、上記接合用組成物をリフローさせた後、第2のウェーハを、加圧することにより、コーティングされた各ウェーハに接合した。これらの接合用組成物を用いたウェーハの仮接合の手順を、図2のフローチャートに示す。接合されたウェーハについて、機械的強度、熱安定性、耐薬品性の試験を行った。上記ウェーハについて、許容範囲内の温度で、それらのウェーハを離すように手動でスライドさせることによって剥離試験を行った。」 摘記1e:段落0061~0062 「【0061】【表5】 【0062】【表6】 」 摘記1f:図2 「【図2】 」 イ.甲第7号証の記載事項 摘記7a:段落0006及び0014 「【0006】上述の例以外に、貫通電極の形成などの裏面配線における高温プロセスを伴う工程は、半導体ウエハを接着固定した状態において行われる。高温プロセスを伴う工程において好適に使用され得る接着剤組成物として、耐熱性に優れているという観点から、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂を含んでいる接着剤組成物が数多く提案されている。… 【0014】本発明によれば、以上のような構成によって、高温曝露時の反りを抑制でき、優れた耐熱性を示し、除去が容易な仮止め用の接着剤組成物を提供することができる。」 摘記7b:段落0067~0069及び0079~0082 「【0067】〔接着剤組成物の組成〕 本発明の実施例および比較例の組成物として、組成の異なる複数の接着剤組成物を調製した。調製した接着剤組成物のそれぞれが有する組成を以下の表1に示す。なお、各接着剤組成物は、樹脂および添加剤を溶剤に加えて混合することによって作製された。 【0068】【表1】 【0069】(各接着剤組成物における各成分の詳細) 樹脂1は、SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEPTON8007、クラレ社製)である(以下の化学式(2)によって表される)。… 溶剤は、p-メンタンである。… 【0079】(耐熱性の評価) 実施例および比較例の接着剤組成物のそれぞれについて、半導体ウエハ上に膜厚50μmの層になる量をスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークした。その後、サポート板を接着剤組成物の膜の上において、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた。各接着剤組成物を用いてサポート板に貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)後における接着剤組成物の膜の沈み込み量(膜厚の変量)から評価した。評価基準は以下の通りである。 ○:耐熱性試験後の膜厚>耐熱性試験前の膜厚×60% △:耐熱性試験後の膜厚=耐熱性試験前の膜厚×40~60% ×:耐熱性試験後の膜厚<耐熱性試験前の膜厚×40% この基準にしたがって評価した結果を表2に示す。 【0080】(反りの評価) 耐熱性の評価と同様にして各接着剤組成物の耐熱性試験を行った後に、フィルム反り測定器(TENCOR FLX-2908、KLA Tencor Japan製)を用いて、各接着剤組成物の膜の反りの程度を測定した。測定結果を表2に示す。なお、反りが100μmを超えない限り、実際の使用に耐え得ると見做す。 【0081】(残渣の確認) 耐熱性の評価と同様にして各接着剤組成物の耐熱性試験を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、各接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った。この除去の後に、半導体ウエハ上に接着剤組成物が除去され切らずに残っていないか(残渣の有無)を目視にて確認した。この結果を表に示す。なお、目視にて残渣が確認された場合には可溶性が低く、使用に耐えないと判断した。 【0082】【表2】 」 摘記7d:段落0086 「【0086】本発明によれば、様々な製品の製造に適用される高温プロセスにおいて、好適に使用可能な接着剤組成物を提供することができる。特に、150℃以上の高温環境にさらして半導体ウエハまたはチップを加工する工程にとって、好適な接着剤組成物を提供することができる。」 (2)刊行物1及び7に記載された発明 ア.刊行物1に記載された発明(甲1発明) 摘記1aの「請求項37…粘着付与剤と、ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物。…請求項42…前記組成物が、更に、酸化防止剤…を含有する請求項37に記載の組成物。…請求項45…前記組成物が、本質的に、架橋剤を含有しない請求項37に記載の組成物。」との記載、 摘記1bの「適する酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox(R)1010の名称で、チバ(Ciba)から市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート)…が含まれる。」との記載、 摘記1cの「所望の処理が行われた後、アクティブウェーハまたは基板は、少なくとも約190℃、好ましくは少なくとも約200℃、より好ましくは少なくとも約220℃、更に好ましくは少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。これらの温度範囲は、上記接合用組成物層の好ましい軟化点を示す。…デバイス領域に残存する、いかなる接合用組成物も、乾燥前に上記組成物の一部であった最初の溶媒、または、キシレン、ベンゼン、リモネン等の溶媒を用いて、容易に除去することができる。」との記載、 摘記1dの「(実施例5)…これらの接合用組成物を用いたウェーハの仮接合の手順を、図2のフローチャートに示す。」との記載、及び 摘記1fの「図2…ベークして溶媒を除去 約150-220℃で約2-4分…キャリアウェーハに接合 真空下で約150-250℃…裏面処理(例えば、研削、ビアホールの形成)…剥離 約200-270℃でスライド」との記載からみて、刊行物1には、 『粘着付与剤と、ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物と、市販品の「Irganox(R)1010」などのフェノール系酸化防止剤を含有し、本質的に、架橋剤を含有しない、ウェーハの仮接合の手順として、約150-220℃でベークして溶媒を除去し、約150-250℃でキャリアウェーハに接合し、裏面処理を行い、約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離し、溶媒を用いて除去される接合用組成物。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ.刊行物7に記載された発明(甲7発明) 摘記7aの「貫通電極の形成などの裏面配線における高温プロセスを伴う工程…において好適に使用され得る接着剤組成物として、耐熱性に優れているという観点から、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂を含んでいる接着剤組成物が数多く提案されている。…本発明によれば、…高温曝露時の反りを抑制でき、優れた耐熱性を示し、除去が容易な仮止め用の接着剤組成物を提供することができる。」との記載、 摘記7bの「表1」及び「樹脂1は、SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEPTON8007、クラレ社製)である…溶剤は、p-メンタンである。…実施例および比較例の接着剤組成物のそれぞれについて、半導体ウエハ上に膜厚50μmの層になる量をスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークした。その後、サポート板を接着剤組成物の膜の上において、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた。各接着剤組成物を用いてサポート板に貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)後における接着剤組成物の膜の沈み込み量(膜厚の変量)から評価した。…耐熱性試験を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、各接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った。」との記載、並びに、 摘記7dの「本発明によれば、様々な製品の製造に適用される高温プロセスにおいて、好適に使用可能な接着剤組成物を提供することができる。特に、150℃以上の高温環境にさらして半導体ウエハまたはチップを加工する工程にとって、好適な接着剤組成物を提供することができる。」との記載からみて、刊行物7には、 『樹脂1(SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体としてのSEPTON8007)100質量部、及び溶剤(p-メンタン)400質量部とからなる接着剤組成物であって、当該接着剤組成物を半導体ウエハ上にスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークし、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った、接着剤組成物。』についての発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているといえる。 (3)刊行物1を主引用例とした場合の検討 ア.対比 本1発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物」は、本1発明の「エラストマー」に相当し、 甲1発明の「市販品の「Irganox(R)1010」などのフェノール系酸化防止剤」は、本件特許明細書の段落0100の「熱重合禁止剤としては…IRGANOX(商品名)1010…を用いた」との記載にある「熱重合禁止剤」と合致する添加剤であるから、本1発明の「熱重合禁止剤」に相当し、 甲1発明の「本質的に、架橋剤を含有しない」は、本1発明の「ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない」に相当し、 甲1発明の「接合用組成物」は、本1発明の「接着剤組成物」に相当し、 甲1発明の「ウェーハの仮接合の手順として、約150-220℃でベークして溶媒を除去し、約150-250℃でキャリアウェーハに接合し、裏面処理を行い、約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離し、溶媒を用いて除去される接合用組成物」と、本1発明の「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」とは、両者とも「ウエハと支持体とを接着した後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」である点において共通する。 そして、本1発明は「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであ」る点を発明特定事項とするところ、[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]によれば、「環境」とは「1.めぐり囲む区域。2.四囲の外界。周囲の事物。」を指すものであるから、上記発明特定事項は、「ウエハ」と「支持体」とが「接着剤組成物」によって接合され、その後、「ウエハ」及び「接着剤組成物」は、それらの環境(めぐり囲む区域)が「220℃以上」となった後に、「接着剤組成物」は「溶剤に溶解して除去」されることを意味するといえる。 そして、甲1発明の「約150-250℃でキャリアウェーハに接合」する構成の「約150-250℃」という温度の規定は、接合する前の温度についての規定である。 また、甲1発明の「約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離」する構成の「約200-270℃」という温度の規定は「アクティブウェーハまたは基板」の温度に関するものであって、環境温度についての規定とはいえない。 そうすると、甲1発明は、本1発明の「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝され」る構成及び「支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハ」を含むものではない。 してみると、本1発明と甲1発明は、両者とも『ウエハと支持体とを接着した後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記接着剤組成物は、エラストマーを含む接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含む、接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。』という点において一致し、次の相違点(α)~(γ)において相違する。 (α)ウエハと支持体とを接着した後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物が、本1発明においては、ウエハと支持体を接着した後に「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝され」るのに対して、甲1発明においては、約150-220℃でベークして溶媒を除去し、約150-250℃でキャリアウエハーに接合するという「ウエハと支持体を接着」する工程の後に「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝され」るかどうか不明な点。 (β)接着剤組成物が、本1発明においては「エラストマーを主成分」として含むのに対して、甲7発明においては「ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物」を主成分として含むものとして特定していない点。 (γ)接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)、および、220℃における損失弾性率(G”)の少なくとも一方が、本1発明においては「20,000Pa以上」に特定されているのに対して、甲1発明においては当該「貯蔵弾性率(G’)」及び/又は「損失弾性率(G”)」の値が特定されていない点。 イ.判断 上記(α)の相違点について検討する。 甲1発明に係る接合用組成物は、「約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離」するものであるから、200℃を超える「220℃以上の環境下に曝され」ることは想定されるものではない。 したがって、上記(α)の相違点については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。 そして、上記(α)の相違点について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記(β)~(γ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明が、刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (4)刊行物7を主引用例とした場合の検討 ア.対比 本1発明と甲7発明とを対比する。 甲7発明の「樹脂1(SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体としてのSEPTON8007)100質量部」は、本1発明の「エラストマー」に相当する。 甲7発明の「接着剤組成物」は、架橋剤を含むものではないから、本1発明の「接着剤組成物物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)」に相当する。 甲7発明の「当該接着剤組成物を半導体ウエハ上にスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークし、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った、接着剤組成物」は、本1発明の「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり」に対応して、両者とも『ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に高温の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に高温の環境下に曝されるウエハであり』という点において共通する。 してみると、本1発明と甲7発明は、両者とも『ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に高温の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に高温の環境下に曝されるウエハであり、上記接着剤組成物は、エラストマーを含む接着剤組成物である接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。』という点において一致し、次の(δ)~(η)の点において一応相違する。 (δ)接着剤組成物の曝される高温の環境の温度が、本1発明においては「220℃以上」であるのに対して、甲7発明においては「耐熱性試験」を行う「200℃」である点。 (ε)接着剤組成物が、本1発明においては「エラストマーを主成分」として含むのに対して、甲7発明においては「溶剤(p-メンタン)」を主成分として含むものである点。 (ζ)接着剤組成物が、本1発明においては「さらに熱重合禁止剤を含」むのに対して、甲7発明においては、さらに熱重合禁止剤を含むものではない点。 (η)接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50~250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)、および、220℃における損失弾性率(G”)の少なくとも一方が、本1発明においては「20,000Pa以上」に特定されているのに対して、甲7発明においては当該「貯蔵弾性率(G’)」及び/又は「損失弾性率(G”)」の値が特定されていない点。 イ.判断 上記(δ)の相違点について検討する。 甲7発明は、200℃で耐熱性試験を行っていることから、甲7発明は、せいぜい200℃の環境下に曝されるといえるとしても、200℃を超える「220℃以上の環境下に曝され」ることは想定されるものではない。 したがって、上記(δ)の相違点については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。 そして、上記(δ)の相違点について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記(ε)~(η)の相違点について検討するまでもなく、本1発明が、刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (5)本2発明~本15発明について ア.本2~7発明 本2発明は、本1発明において「上記エラストマーは、スチレン基を含んでいること」を更に特徴とするものであり、 本3発明は、本2発明において「上記エラストマーは、主鎖の両末端がスチレン基であること」を更に特徴とするものであり、 本4発明は、本2又は3発明において「上記エラストマーのスチレン基含有量は、10重量%以上、65重量%以下であること」を更に特徴とするとするものであり、 本5発明は、本1~4発明において「上記エラストマーの質量平均分子量は、50,000以上、150,000以下であること」を更に特徴とするものであり、 本6発明は、本1~5発明において「上記エラストマーは、水添物であること」を更に特徴とするものであり、 本7発明は、本1~6発明において「上記エラストマーは、ブロック共重合体であること」を更に特徴とするものである。 してみると、本1発明の「接着剤組成物」が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本2~7発明が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。 したがって、本2~7発明は、刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。 イ.本8発明 本8発明は、本7発明において「上記エラストマーは、上記ブロック共重合体の水添物と、シクロオレフィンコポリマーおよびスチレン/1-アダマンチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つと、を含んでなること」を更に特徴とするものである。 してみると、本7発明の「接着剤組成物」が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本8発明が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。 したがって、本8発明は、刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。 ウ.本9及び10発明 本9発明は、本1~8発明の接着剤組成物を「フィルム上」に「含有する接着層が形成されていること」を特徴とする「接着フィルム」に関するものであり、 本10発明は、本1~8発明の接着剤組成物を用いて「ウエハに支持体を貼り付ける貼付工程を包含すること」を特徴とする「貼付方法」に関するものである。 してみると、本1~8発明の「接着剤組成物」が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本9及び10発明が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。 したがって、本9及び10発明は、刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。 エ.本11~12及び15発明 本11発明は、本10発明の貼付方法を行った後「上記支持体に接着した上記ウエハを、220℃以上の環境下に曝す工程を包含していること」を特徴とする「支持体に貼り付けたウエハを処理する処理方法」に関するものであり、 本12発明は、本11発明において「上記220℃以上の環境下に曝す工程を行なった後、上記ウエハから上記支持体を分離する工程を包含していること」を更に特徴とするものであり、 本15発明は、本12~14発明において「上記支持体を分離した上記ウエハから、溶剤を用いて接着層を溶解して除去すること」を更に特徴とするものである。 してみると、本10発明の「貼付方法」が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本11~12及び15発明が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。 したがって、本11~12及び15発明は、刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。 オ.本13及び14発明 本13発明は、本12発明において「上記支持体には、厚さ方向に貫通する穴が設けられており、上記支持体を分離する工程では、当該穴を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体とウエハとを分離すること」を更に特徴とするものであり、 本14発明は、本12発明において「上記支持体と上記ウエハとの間には、上記接着層の他に反応層が介在しており、当該反応層は、上記支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、上記支持体を分離する工程では、光を照射することによって当該反応層を変質させることで、上記支持体と上記ウエハとを分離すること」を更に特徴とするものである。 してみると、本12発明の「処理方法」が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本13及び14発明が刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。 したがって、本13及び14発明は、刊行物1~12及び参考例A~Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。 (6)特許異議申立人の意見書の主張について 平成30年5月2日付けの意見書の第2頁において、特許異議申立人は『刊行物1の段落【0045】には、「【0045】所望の処理が行われた後、アクティブウェーハまたは基板は、少なくとも約190℃、好ましくは少なくとも約200℃、より好ましくは少なくとも約220℃、更に好ましくは少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。」と記載されているから、接合用組成物を220℃に加熱することが記載されている点すなわち、上記構成要件Aは、刊行物1に記載ないしは示唆されているものといえる。』と主張している。 しかしながら、刊行物1の段落0045の「約240℃の温度に加熱」とは、アクティブウェーハまたは基板を加熱するものであって、ウエハと支持体とを接着する接着剤組成物を「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝」すものではない。また、平成30年3月26日付けの意見書の第6頁において、特許権者は「刊行物1~刊行物12および参考例A~Dには、構成要件A,Dに相当する構成が一切記載されておらず、示唆する記載さえ全く無い」との主張がなされていることからみて、本1発明の「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後」という高温プロセス及びその温度条件は、刊行物1の段落0045の「所望の処理が行われた後…少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。」との示唆ないし記載にあるプロセスや温度条件とは全く異なる高温プロセスと温度条件を意図していることが明らかである。このため、刊行物1の段落0045の記載をもって、刊行物1に構成要件Aに相当する構成が記載されているとは認められない。 また、平成30年5月2日付けの意見書の第3~4頁において、特許異議申立人は『刊行物12や参考例Dの記載から、「高温プロセス」は普通に知られているものであり、刊行物7にも、「150℃以上の高温環境にさら」すことが記載されており(段落【0086】)、高温プロセスとして220℃以上の環境を設定することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮である。』と主張している。 しかしながら、刊行物12の段落0067の「熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は、高温環境下(特に250℃~350℃)における接着剤組成物の重合反応が抑制される。」との記載、参考例Dの段落0030の「半導体製造工程において、サポートプレートが接着されたウエハを250℃で1時間加熱する高温プロセスがある。」との記載、及び刊行物7の段落0086の「150℃以上の高温環境にさらして半導体ウエハまたはチップを加工する工程によって、好適な接着剤組成物を提供することができる。」との記載にある高温プロセスと温度条件は、平成30年3月26日付けの意見書(特許権者)の第6頁の「刊行物1~刊行物12および参考例A~Dには、構成要件A,Dに相当する構成が一切記載されておらず、示唆する記載さえ全く無い」との主張からみて、本1発明の「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後」という高温プロセス及びその温度条件とは全く異なるものと解されるので、刊行物1~刊行物12および参考例A~Dに構成要件Aについての記載があるとは認められない。 さらに、平成30年5月2日付けの意見書の第4頁において、特許異議申立人は『本件明細書には、本件発明の接着剤組成物は、p-メンタン等の炭化水素系溶剤に溶解することしか記載されておらず、任意の溶剤に溶解するとの記載はない。実際、エラストマーが水添物であるか、分子の両末端がスチレン部位である場合は、レジスト溶剤への耐性により優れると記載されている(段落【0031】、【0033】)。そうすると、本件発明の接着剤組成物がp-メンタン等の炭化水素系溶剤に溶解するという事項を、本件訂正請求項1に特定されている単なる「溶剤」に溶解することにまで拡張ないし一般化することができるとはいえない。』と主張している。 しかしながら、本1発明の「溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」という事項における「溶剤」とは「接着剤組成物」を「溶解して除去」することができる「溶剤」を意図することが明らかであって、本1発明の「接着剤組成物」を「溶解して除去」できない「レジスト溶剤」などの剤は、本1発明の「溶剤」の範疇に含まれないことが明らかである。このため、上記意見書の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1~本15発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本1~本15発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701084

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