特許異議申立
2017-701083
接着剤組成物の製造方法、接着剤組成物及び接着フィルム
- 審判番号
- 2017-701083
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-283680
- 登録番号
- 特許第6128837号(P6128837)
- 請求日
- 2017年11月17日
- 審決日
- 2018年06月29日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東京応化工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 【異議申立人】袖岡 恭子
- 【異議申立人】駒井 佳子
- 審判長/審判官
- 審判長 川端 修
- 審判官 木村 敏康
- 審判官 原 賢一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.536-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J) / P1651.851-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6128837号発明「接着剤組成物の製造方法、接着剤組成物及び接着フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6128837号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕及び〔7~11〕について訂正することを認める。
特許第6128837号の請求項1~8及び11に係る特許を維持する。
特許第6128837号の請求項9及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6128837号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成24年12月26日(優先権主張 平成24年2月21日)に特許出願され、平成29年4月21日に特許権の設定登録がされ、同年5月17日にその特許公報が発行され、平成29年11月17日に、その請求項1~11に係る発明の特許に対し、袖岡恭子(以下「特許異議申立人A」という。)により、特許異議の申立てがされ、請求項1~4、7~11に対し、駒井佳子(以下「特許異議申立人B」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 1月26日付け 取消理由通知
同年 3月30日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 4月11日付け 通知書
同年 5月16日 意見書(特許異議申立人A)
同年 5月16日 意見書(特許異議申立人B)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年3月30日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6128837号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~12のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1において
「接着剤組成物に含まれる、金属成分を含む膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、
上記精製工程において、上記接着剤組成物を含む溶液を濾過することを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項1において
「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、
上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させることを特徴とする、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項2において
「上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤に由来する金属成分の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項2において
「上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項3において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する樹脂を含む樹脂溶液中において当該樹脂を再沈殿させた後、当該樹脂溶液から取り出した樹脂を上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項3において
「上記精製工程の前に、上記炭化水素樹脂またはエラストマーを含む樹脂溶液中において当該炭化水素樹脂またはエラストマーを再沈殿させた後、当該樹脂溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項4において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する樹脂を溶液中において洗浄した後、当該樹脂を含む溶液から取り出した樹脂を上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。
」とあるのを、
訂正後の請求項4において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中において洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項5において
「上記精製工程の前に、風力選別により上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤を集塵することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項5において
「上記精製工程の前に、風力選別により上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤を集塵することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の請求項6において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する樹脂を溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄した後、当該樹脂を含む溶液から取り出した樹脂を上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項6において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の請求項7において
「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み、該膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」とあるのを、
訂正後の請求項7において
「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含むウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物であって、
上記膠着防止剤の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。」に訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の請求項8において
「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に電極形成工程に供されることを特徴とする請求項7に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」とあるのを、
訂正後の請求項8において
「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に電極形成工程に供されることを特徴とする請求項7に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。」に訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の請求項9を削除する。
(10)訂正事項10
訂正前の請求項10を削除する。
(11)訂正事項11
訂正前の請求項11において
「フィルム上に、請求項7~10のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。」とあるのを、
訂正後の請求項11において
「フィルム上に、請求項7または8に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。」に訂正する。
(12)訂正事項12
訂正前の明細書の段落0114において
「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する以外は、」とあるのを
訂正後の明細書の段落0114において
「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する以外は、」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤」について、「金属成分」を「塩鉱物」に特定し、「膠着防止剤」が「塩鉱物により構成される」ものであることを特定し、同「精製工程」における「濾過」について、「塩鉱物の量を低減させる」ものであることに特定し、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後に」、さらに、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるとともに、同「精製工程」において「濾過」される「溶液」について、「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液」であることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
(ア)訂正後の請求項1の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程」について、
本件特許明細書の段落0038に「本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解する溶剤を含んでいる…溶剤としては、例えば、非極性の炭化水素系溶剤…を用いることができる」と記載され、同段落0015に「当該樹脂としては炭化水素樹脂およびエラストマーから選択される少なくとも1種を含む」と記載され、同段落0060に「膠着防止剤の例として、例えば、タルク…等の塩鉱物」と記載されていることから、
上記「精製工程」は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものと認める。
(イ)訂正後の請求項1の「上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」について、
本件特許明細書の段落0061に「接着剤組成物中に含まれる膠着防止剤の量が低減している」と記載され、上記「濾過」の作用についての特定は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
(ウ)訂正後の請求項1の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法」について、
本件特許明細書の段落0077に「ウエハと支持体とを接着した状態で接着剤層に直接溶剤を供給することによって、容易に接着剤層が溶解して当該接着剤層が除去され、ウエハと支持体とを分離することができる」と記載され、同段落0118に、接着剤層の溶解による除去が、有機溶媒の一種である「p-メンタン」を用いて行われることが記載されているから、上記「接着剤組成物」の用途の特定は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(エ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
請求項2は請求項1を引用するものであるところ、訂正事項2は、訂正前の請求項2の「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」について、上記訂正事項1によって、請求項1において、「金属成分」が「塩鉱物」に特定され、「膠着防止剤」が「塩鉱物により構成される」ものであることが特定されたことにともない、「膠着防止剤の含有量」と特定するものであり、また、同「接着剤組成物」の用途について、訂正事項1と同様に、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項2は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
(ア)上記アで述べたように、訂正事項2は訂正事項1にともなうものであるから、訂正事項1と同様に、訂正事項2の訂正事項は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
(ウ)したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
請求項3は請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項3は、訂正前の請求項1の「精製工程」において「濾過」される「溶液」について、「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液」であることを特定する訂正事項1にともない、接着剤組成物を形成する「樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、訂正事項1と同様に、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項3は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
上記アで述べたように、訂正事項3は訂正事項1及び2にともなうものであるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
請求項4は請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項4は、訂正事項3と同様に、接着剤組成物を形成する「樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項4は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項3と同様に、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
請求項5は、請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5は、訂正事項1と同様に、「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後に」、さらに、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項5は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項3と同様に、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的
請求項6は、請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項6は、訂正事項3と同様に、「接着剤組成物を形成する樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項6は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項3と同様に、訂正事項6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、訂正前の請求項7の「金属成分を含む膠着防止剤」について、「金属成分」を「塩鉱物」に特定し、「膠着防止剤」が「塩鉱物により構成される」ものであることを特定し、同「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」を「膠着防止剤の含有量」と特定し、該含有量を規定する固体重量の基準を「接着剤組成物」と特定し、同「接着剤組成物」に含まれる組成について、「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む」点を特定し、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後に」、さらに、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項7は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
本件特許明細書の段落0038に「本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解する溶剤を含んでいる…溶剤としては、例えば、非極性の炭化水素系溶剤、極性及び無極性の石油系溶剤等を用いることができる」と記載され、同段落0015に「当該樹脂としては炭化水素樹脂およびエラストマーから選択される少なくとも1種を含む」と記載され、同段落0060に「膠着防止剤の例として、例えば、タルク…等の塩鉱物」と記載され、同段落0062に「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下である」と記載され、同段落0077に「ウエハと支持体とを接着した状態で接着剤層に直接溶剤を供給することによって、容易に接着剤層が溶解して当該接着剤層が除去され、ウエハと支持体とを分離することができる」と記載されていることから、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的
請求項8は、請求項7を引用するものであるところ、訂正事項8は、訂正前の請求項8の「接着剤組成物」の用途について、訂正事項7と同様に、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項8は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項7と同様に、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的
訂正事項9は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更
訂正事項9は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項9は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(10)訂正事項10
ア 訂正の目的
訂正事項10は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更
訂正事項10は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項10は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(11)訂正事項11
ア 訂正の目的
訂正前の請求項11は、請求項7~10のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項9、10に係る訂正にともない、多数項を引用している請求項11において、引用先の請求項9、10を削除し、引用請求項数を減少し、さらに、訂正前の請求項11の「接着剤組成物」の用途について、訂正事項7と同様に、「接着剤組成物を形成する樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項11は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項8と同様に、訂正事項11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(12)訂正事項12
ア 訂正の目的
訂正事項12は、本件特許明細書の段落0114の記載について、本件特許の出願当時の技術常識に照らして意味不明の「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する」との記載部分を、技術常識に適合する「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する」との記載に改めるためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項12は、本件特許明細書中の記載を本件特許の出願当時の技術常識に適合する記載に改めるためのものであって、訂正前の明細書に記載された「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する」の内容が技術常識に照らして「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する」を本来意図していることが明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項12は、本件特許明細書中の記載を本件特許の出願当時の技術常識に適合する記載に改めるためのものであって、訂正前の明細書に記載された「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する」の内容が技術常識に照らして「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する」を本来意図していることが明らかであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(13)一群の請求項について
訂正事項1~6に係る訂正前の請求項1~6について、その請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項1~6による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
訂正事項7~11に係る訂正前の請求項7~11について、その請求項8~11はそれぞれ請求項7を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項7~11に対応する訂正後の請求項7~8及び11は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項7~11による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
訂正事項12による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~11であるから、訂正事項12と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。
したがって、訂正事項12による本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
(4)訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項1~12による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~11〕について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~11に係る発明(以下「本1発明」~「本11発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(訂正箇所に下線を付す。)。
「【請求項1】(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、
上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させることを特徴とする、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項2】上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項3】上記精製工程の前に、上記炭化水素樹脂またはエラストマーを含む樹脂溶液中において当該炭化水素樹脂またはエラストマーを再沈殿させた後、当該樹脂溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項4】上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中において洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項5】上記精製工程の前に、風力選別により上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤を集塵することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項6】上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項7】(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含むウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物であって、
上記膠着防止剤の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。
【請求項8】上記ウエハは、上記支持体と接着した後に電極形成工程に供されることを特徴とする請求項7に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。
【請求項11】フィルム上に、請求項7または8に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。」
第4 取消理由の概要
1 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1~11に係る発明の特許に対して平成30年1月26日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
〔理由1〕本件特許の請求項1~11に係る発明は、発明の詳細な説明の記載が下記の(1)~(5)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
〔理由2〕本件特許の請求項1~11に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の(1)~(4)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
(1)請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤を除去する」という事項の意味するところが明確ではなく、その実施をすることができない。
(2)請求項7の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」の「のみ」という事項の意味するところが明確ではなく、その実施をすることができない。
(3)請求項1の「除去」と請求項7の「を含み」という事項の意味するところが明確ではなく、その実施をすることができない。
(4)請求項2及び7の「膠着防止剤に由来する金属成分」の意味ないし内容が明確ではなく、その実施をすることができない。
(5)本件特許明細書の「実施例1~10」において「膠着防止剤に由来する金属成分」がどのようなものか明らかではなく、その実施をすることができない。
よって、本件特許の請求項1~11に係る発明に係る特許は、同法第36条第4項第1号及び第6項第2号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。
〔理由3〕本件特許の請求項7及び9に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
刊行物1:特開平11-293224号公報(特許異議申立人Bの甲第6号証)
よって、本件特許の請求項7及び9に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
〔理由4〕本件特許の請求項1~4及び7~11係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第1号証:特開2006-328104号公報
甲第2号証:特開2004-303999号公報
甲第3号証:増補 プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧
甲第4号証:「特集 熱可塑性エラストマー/粘着剤」〔日本ゴム協会誌第61巻第2号(1988)〕
甲第5号証:特開2005-213200号公報
甲第6号証:特開平11-293224号公報
甲第7号証:特表平11-508924号公報
甲第8号証:特開2002-371136号公報
甲第9号証:特開2002-338933号公報
甲第10号証:国際公開第2011/125616号
よって、本件特許の請求項1~4及び7~11に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 特許異議申立人Aが申し立てた取消理由の概要
特許異議申立人Aが申し立てた取消理由の概要は、取消理由1(特許法第36条第4項第1号)及び取消理由2(特許法第36条第6項第2号)により、訂正前の本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであると主張し、その不備として以下の(1)~(5)を指摘しているものである。
(1)本1発明は、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより金属成分を含む膠着防止剤を除去するのか、或いは、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより膠着防止剤に含まれる金属成分を除去するのか、発明が明瞭とは言い難い(特許異議申立書の第15頁第27行~第16頁第2行)。
(2)本件特許明細書の実施例からは、膠着防止剤を含む組成物が明示されていないので、当業者は本1~6発明の実施ができないものである(特許異議申立書の第16頁第15~17行)。
(3)本2発明は、「接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤に由来する金属成分」の文言が不明であり、接着剤組成物に含まれる金属成分が、膠着防止剤に由来するものか、そうでないのかを当業者はどう判別するのか不明である(特許異議申立書の第16頁第26行~第17頁第2行)。
(4)本7発明の構成要件「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」とする「のみ」の表現が何を意味するのかが不明であり、そのような市販品を入手するにはどのようにすべきかは全く不明であるから、当業者が本件特許発明を実施することができない(特許異議申立書の第18頁第18行~第19頁第6行)。
(5)炭化水素樹脂には、通常、重合触媒残渣に由来する金属が含まれており、様々な金属供給源由来の金属が含まれていると考えられる接着剤組成物中の含有金属について、「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」をどのように測定するかを明らかにする記載が見当たらないので、本2及び7発明などを当業者が実施することは不可能である(特許異議申立書の第19頁第25行~第20頁第25行)。
3 特許異議申立人Bが申し立てた取消理由の概要
特許異議申立人Bは、取消理由1(特許法第29条第2項)により、訂正前の本件特許の請求項1~4及び7~11に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであると主張し、証拠として上記『1〔理由4〕』に示した甲第1号証~甲第10号証を提示している。
第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した理由1(実施可能要件)及び理由2(明確性要件)について
上記第4 1(1)~(5)の点について、本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲の記載から、同(1)の訂正前の「金属成分を含む膠着防止剤」という事項、同(2)の訂正前の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」という事項、同(3)の訂正前の「除去」と「を含み」に対応する事項、並びに同(4)及び(5)の訂正前の「膠着防止剤に由来する金属成分」という事項についての記載はなくなり、取消理由通知に記載した理由1及び2はいずれも解消した。
また、同(1)の点について、訂正前の請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤を除去する精製工程」という事項は、訂正後の請求項1の「上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程」という事項に訂正されたので、その「除去」の対象となる成分が「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」のみを意味することが明確になった。
また、同(2)の点について、訂正前の請求項7の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」という事項は、訂正後の請求項7の「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」のみを「含む」という事項に訂正されたので、その膠着防止剤の範囲に、本件特許明細書の段落0060の記載にあるステアリン酸鉛などの鉱物に由来しない金属塩を含まず、タルクやハイドロタルクなどの鉱物に由来する金属塩のみを含むことを意味することが明確になった。
また、同(3)の点について、訂正前の請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤を除去する」という事項と、訂正前の請求項7の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」という事項は、訂正後の請求項1の「上記塩鉱物の量を低減させる」という事項と、訂正後の請求項7の「上記膠着防止剤の含有量が、…10ppb以上、2ppm以下である」という事項に訂正されたので、塩鉱物により構成される膠着防止剤の含有量が一定レベルの濃度にまで低減されることを意味するものとして明確になった。
また、同(4)の点について、訂正前の請求項2及び7の「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」という事項は、訂正後の請求項2及び7の「上記接着剤組成物の全固体重量」に対する「上記膠着防止剤の含有量」という事項に訂正されたので、その「含有量」の意味するところが明確になった。
また、同(5)の点について、本件特許明細書の段落0108には「得られた接着剤組成物中の膠着防止剤に由来する金属成分の含有量(メタル含有量)」を「ICP-MS(アジレントテクノロジー株式会社製、製品名:7500cs)」により測定できると記載されており、同段落0060の記載にあるように、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)などの塩鉱物に含まれる金属成分の割合は当業者の技術常識として知られている。そして、膠着防止剤を添加する前の樹脂材料に含まれる不純物としての金属成分の量も同段落0108の測定装置により測定できることは明らかであり、樹脂材料に配合する膠着防止剤の種類と量を仕様書に指定して原料の調達をできることは当業者に明らかであり、精製工程により塩鉱物の量を低減させた後の接着剤組成物中に含まれる金属成分の含有量を測定する方法も同段落0108に記載されているから、本件特許明細書の実施例1~10で使用された樹脂材料の内容が不明であったとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、本1~8及び11発明を実施できるといえる。
以上のとおりであるから、訂正後の請求項1~8及び11の記載は、特許を受けようとする発明が明確であって、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないとはいえない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本1発明~本8発明及び本11発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであって、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないとはいえない。
そして、取消理由通知に記載した理由1及び2によっては、本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
2 取消理由通知において採用しなかった実施可能要件及び明確性要件に関する特許異議申立理由について
(1)上記第4 2(1)の「本1発明は、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより金属成分を含む膠着防止剤を除去するのか、或いは、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより膠着防止剤に含まれる金属成分を除去するのか、発明が明瞭とは言い難い」という点について、
本件訂正により、訂正前の「金属成分を含む膠着防止剤」という事項についての記載はなくなり、訂正後の本1発明は、濾過により「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を除去することが明らかになったので、当該(1)の点について理由があるとはいえない。
(2)上記第4 2(2)の「本件特許明細書の実施例からは、膠着防止剤を含む組成物が明示されていないので、当業者は本1~6発明の実施ができない」という点について、
本1~6発明の実施に必要な膠着防止剤を含む組成物は、本件特許明細書の段落0060に説明された「タルク」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤」として樹脂材料に配合すれば得られるものであり、そのために必要な塩鉱物や樹枝材料の各々は周知慣用のものであって、樹脂材料のメーカーに普通に発注して得られることが明らかであるから、実施例で使用されている市販品の仕様が不明であったとしても、そのことにより本1~6発明の実施ができないということはできない。このため、当該(2)の点について理由があるとはいえない。
(3)上記第4 2(3)の「本2発明は、「接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤に由来する金属成分」の文言が不明であり、接着剤組成物に含まれる金属成分が、膠着防止剤に由来するものか、そうでないのかを当業者はどう判別するのか不明である」という点について、
本件訂正により、訂正前の「膠着防止剤に由来する金属成分」という事項についての記載はなくなり、訂正後の本2発明は、塩鉱物により構成される膠着防止剤の含有量を2ppm以下にすることが明らかになったので、当該(3)の点について理由があるとはいえない。
(4)上記第4 2(4)の「本7発明の構成要件「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」とする「のみ」の表現が何を意味するのかが不明であり、そのような市販品を入手するにはどのようにすべきかは全く不明であるから、当業者が本件特許発明を実施することができない」という点について、
本件訂正により、訂正前の「のみ」に対応する事項についての記載はなくなり、訂正後の本7発明は、膠着防止剤として「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含むものであることが明らかになったので、当該(4)の点について理由があるとはいえない。
(5)上記第4 2(5)の「炭化水素樹脂には、通常、重合触媒残渣に由来する金属が含まれており、様々な金属供給源由来の金属が含まれていると考えられる接着剤組成物中の含有金属について、「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」をどのように測定するかを明らかにする記載が見当たらないので、本2及び7発明などを当業者が実施することは不可能である」という点について、
本件訂正により、訂正前の「膠着防止剤に由来する金属成分」という事項についての記載はなくなり、訂正後の本2及び7発明は、塩鉱物により構成される膠着防止剤の含有量を2ppm以下にすることが明らかになったので、当該(5)の点について理由があるとはいえない。
(6)したがって、上記第4 2(1)~(5)の理由によっては、本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
3 取消理由通知に記載した理由1及び2に関する意見書の特許異議申立人A及びBの主張について
(1)特許異議申立人Aの平成30年5月16日付けの意見書の第2頁の「訂正後の請求項1は、「上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」を構成要件とし、特許権者は、濾過によって膠着防止剤が減少することを明確に記載していると述べておられるが、濾過の対象となる樹脂溶液中の塩鉱物の量が不明であり定まっていないものであるから、濾過によって膠着防止剤が減少さえすれば発明の目的や解決課題が十分に達成できるとは到底考え難いものである。」との主張について、課題解決の達成の可否は、理由1(実施可能要件)及び理由2(明確性要件)の取消理由と関係のないことはさておき、濾過の対象となる塩鉱物の当初の量が不明であっても、その量が少しでも低減されれば、本件特許明細書の段落0008の「残渣が生じると、基板の電気特性や歩留まりの低下」という問題が少なくなることは明らかなので、当該主張を斟酌しても本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
(2)特許異議申立人Aの同意見書の第3頁の「本件訂正後の請求項1では、「…上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、…」と記載があるが、膠着防止剤を除去することは膠着防止剤が完全に取り除かれるものと解することができるところ、その後の表現には、「上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」と記載しており、塩鉱物(膠着防止剤)を除去することと低減することとは矛盾があるようにも考えられる。従って、本件訂正後の請求項1に係る発明は、依然として、不明瞭である。」との主張について、訂正後の請求項1の「除去」は「完全に除去」として特定されておらず、膠着防止剤の「一部を除去」するものを意味するものと自然には解されるので、当該主張を斟酌しても本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
(3)特許異議申立人Aの同意見書の第3~6頁の「本件特許明細書には、実施例で使用している(濾過前の)接着剤組成物の市販品の入手の際のカタログ・製品情報等から、当該接着剤組成物に含まれる膠着防止剤の種類を把握することができず、…したがって、本件特許明細書の実施例からは、膠着防止剤を含む組成物が明示されておらず、また出願時の技術常識を鑑みても当業者は本件訂正後の請求項1および7に係る発明を実施することができないものである。」との主張、並びに特許異議申立人Bの平成30年5月16日付けの意見書の第7~8頁の「樹脂材料のメーカがそのノウハウ等のため、カタログ等には材料の成分を詳細に記載することはなく、…このため、本件特許発明を実施することは困難である。」との主張について、本1発明~本8発明及び本11発明の実施に必要な樹脂材料は、周知慣用の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマー」に、本件特許明細書の段落0060に説明された「タルク」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤」として配合すれば、普通に得られるものであり、その入手は市販品に限られるものではなく、樹脂材料のメーカーに普通に発注すれば得られることが明らかであるから、当該主張を斟酌しても本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
4 取消理由通知に記載した理由3(訂正前の本7及び9発明の新規性)について
(1)甲第6号証(刊行物1)の記載事項
甲第6号証には、次の記載がある。
摘記6a:請求項1
「【請求項1】シリコンウエハーを加工処理する際に一時的に仮着しておくために使用するアルカリ水溶液可溶性接着剤であって、ロジンまたはその誘導体またはロジンの二塩基酸の変性物の単独またはその混合物からなり、そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であることを特徴とするシリコンウエハー用仮着接着剤。」
摘記6b:段落0001
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンウエハー用仮着接着剤に関し、精密切断、穴開け、研磨加工や、ウエハと定盤との間の仮着といったような種々の加工の際の仮着に有用な接着剤に関するものである。」
(2)甲第6号証に記載された発明
摘記6aの「接着剤であって、…そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であることを特徴とするシリコンウエハー用仮着接着剤。」との記載、及び
摘記6bの「本発明は…ウエハと定盤との間の仮着…に有用な接着剤に関するものである。」との記載、及び
摘記6cの「実施例1」に関する記載からみて、甲第6号証には、
『ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤であって、そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であるシリコンウエハー用仮着接着剤。』についての発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。
(3)対比
本7発明と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤」と本7発明の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物」は、両者とも「ウエハと当該ウエハの支持体とを仮着するための接着剤組成物」という点において共通する。
また、甲6発明の「そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下である」と本7発明の「膠着防止剤の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下」は、両者とも「金属含有成分の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下」という点において共通する。
してみると、本7発明と甲6発明は、『ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物であって、金属含有成分の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であるウエハと当該ウエハの支持体とを仮着するための接着剤組成物。』という点において一致し、次の〔相違点α〕の点において相違する。
〔相違点α〕接着剤組成物が、本7発明においては「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤」を含むものとして特定されているのに対して、甲6発明は、本7発明の「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含まない点。
(4)判断
上記〔相違点α〕について、甲第6号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg3Si4O10(OH)2)」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含むことについて、示唆を含めて記載がなく、上記〔相違点α〕が微差であるともいえない。
そして、本7発明と甲6発明との対比において、上記〔相違点α〕の相違点が実質的な相違点として存在する以上、本7発明が甲第6号証に記載された発明であるとは認められない。
したがって、取消理由通知に記載した理由3によっては、本7発明に係る特許が、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
なお、本9発明は訂正により削除されているので、本9発明について、取消理由通知に記載した理由3は成り立たない。
5 取消理由通知に記載した理由4(訂正前の本1~4及び7~11発明についての進歩性)について
(1)引用した刊行物の記載事項
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「【請求項1】溶融温度が50~300℃であり、溶融温度幅が30℃以下であり、かつ、溶融温度における溶融粘度が0.1Pa・s以下である接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物であって、該接着機能成分の含有量が5~30wt%であり、かつ、該組成物の25℃における溶液粘度が5~100mPa・sの範囲にあることを特徴とする接着剤組成物。」
摘記1b:段落0051
「【0051】なお、以下の実施例で用いた接着機能成分は、予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用いた。」
イ 甲第6号証(刊行物1)の記載事項
甲第6号証には、上記第5 4(1)に示したとおりの記載がある。
(2)刊行物に記載された発明
ア 甲第1号証に記載された発明
摘記1aの「溶融温度が50~300℃であり、溶融温度幅が30℃以下であり、かつ、溶融温度における溶融粘度が0.1Pa・s以下である接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物であって、該接着機能成分の含有量が5~30wt%であり、かつ、該組成物の25℃における溶液粘度が5~100mPa・sの範囲にあることを特徴とする接着剤組成物。」との記載、及び
摘記1bの「なお、以下の実施例で用いた接着機能成分は、予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用いた。」との記載からみて、甲第1号証には、
『予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用いた接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物の製造方法。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
イ 甲第6号証に記載された発明
甲第6号証には、上記第5 4(2)に示したとおりの「甲6発明」が記載されているといえる。
また、甲第6号証には、上記第5 4(2)に示したのと同様な理由により、製造方法の発明として、以下の発明(以下「甲6方法発明」という。)が記載されているといえる。
『ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤の製造方法であって、そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であるシリコンウエハー用仮着接着剤の製造方法。』
(3)甲第1号証を主引用例とした場合の検討(本1~4発明)
ア 対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物」と本1発明の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液」は、本件特許明細書の段落0015の「本発明に係る接着剤組成物は、接着性を付与するための樹脂を含んでいる。当該樹脂としては炭化水素樹脂およびエラストマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。」との記載からみて、本1発明の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマー」は「接着性を付与」するための「接着機能成分」に相当することから、両者とも「(i)接着機能成分と、(ii)金属含有成分と、(iii)溶剤とを含む溶液」という点において共通する。
また、甲1発明の「予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用い」ることと本1発明の「上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」とは、両者とも「上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属の量を低減させる」点において共通する。
そして、甲1発明の「接着剤組成物の製造方法」は、本1発明の「接着剤組成物の製造方法」に相当する。
してみると、本1発明と甲1発明は、『(i)接着機能成分と、(ii)金属含有成分と、(iii)溶剤と、を含む溶液から、上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属の量を低減させる、接着剤組成物の製造方法。』という点において一致し、次の〔相違点β〕~〔相違点ε〕の点において相違する。
〔相違点β〕(i)の接着機能成分が、本1発明においては「(i)炭化水素樹脂またはエラストマー」であるのに対して、甲1発明においては、接着機能成分の具体的な種類が特定されていない点(なお、甲第1号証の請求項3には「分子内にステロイド骨格およびまたは水酸基を含有する化合物またはその誘導体」が例示されている。)。
〔相違点γ〕(ii)の金属含有成分が、本1発明においては「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」であるのに対して、甲1発明においては「Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属」である点。
〔相違点δ〕(iii)の溶剤が、本1発明においては「(iii)炭化水素系溶剤」であるのに対して、甲1発明においては、溶剤の具体的な種類が特定されていない点(なお、甲第1号証の請求項7には「イソプロピルアルコール」などが例示されている。)。
〔相違点ε〕精製工程が、本1発明においては「上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させる」ものであるのに対して、甲1発明においては「予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行」って「Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量」を低減させるものである点。
イ 判断
上記〔相違点γ〕について、甲第1号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg3Si4O10(OH)2)」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含む樹脂溶液について、示唆を含めて記載がない。
また、本1発明は、本件特許明細書の段落0008の「膠着防止剤が含まれる接着剤をウエハとウエハの支持体との接着に使用した場合、…ウエハ上に残渣が生じ…基板の電気特性や歩留まりの低下に繋がる」との記載にある問題を解決課題としているところ、甲1発明は「膠着防止剤が含まれる接着剤」に関するものではないので、膠着防止剤が含まれる接着剤における問題を解決するための手段を採用すべき動機付けがない。
そして、甲第1号証~甲第10号証のうちの公知刊行物の全ての記載を精査しても、甲1発明の接着剤組成物に含まれる金属含有成分の種類を、「タルク」などの「塩鉱物」に置き換えることを示唆する記載は見当たらない。
したがって、甲1発明の「Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属」として、塩鉱物を採用する動機付けは見出せず、上記〔相違点γ〕については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
そして、上記〔相違点γ〕について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記〔相違点β〕、〔相違点δ〕及び〔相違点ε〕について検討するまでもなく、本1発明が、甲第1号証~甲第10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
ウ 本2発明~本4発明について
本2発明~本4発明は、本1発明を更に限定したものであるところ、本1発明が甲第1~10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本2発明~本4発明が、甲第1~10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
(4)甲第6号証を主引用例とした場合の検討(本1、2、7~11発明)
ア 本7~11発明について
(ア)対比
本7発明と甲6発明とを対比すると、両者は、上記第5 4(3)に示した〔相違点α〕の点において相違する。
(イ)判断
上記〔相違点α〕について、甲第6号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg3Si4O10(OH)2)」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含むことについて、示唆を含めて記載がない。
そして、本7発明は、本件特許明細書の段落0008の「膠着防止剤が含まれる接着剤をウエハとウエハの支持体との接着に使用した場合、…ウエハ上に残渣が生じ…基板の電気特性や歩留まりの低下に繋がる」との記載にある問題を解決課題としているところ、甲6発明は「膠着防止剤が含まれる接着剤」に関するものではないので、膠着防止剤が含まれる接着剤における問題を解決するための手段を採用すべき動機付けがない。
そして、甲第1号証~甲第10号証のうちの公知刊行物の全ての記載を精査しても、甲6発明の「シリコンウエハー用仮着接着剤」に「タルク」などの「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含ませるという構成を示唆する記載は見当たらないので、本7発明が、甲第1号証~甲第10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(ウ)本8~11発明について
本8及び11発明は、本7発明を更に限定したものであるところ、本7発明が甲第1~10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本8及び11発明が、甲第1~10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
なお、本9及び10発明は訂正により削除されているので、本9及び10発明について、取消理由通知に記載した理由4は成り立たない。
イ 本1及び2発明について
(ア)対比
本1発明と甲6方法発明とを対比する。
甲6方法発明の「ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤の製造方法」は、本1発明の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を…除去するための接着剤組成物の製造方法」に相当する。
甲6発明の「そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下である」と、本1発明の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させることを特徴とする」とは、両者とも「(ii)金属含有成分を含む溶液から、上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属含有成分の量を低減させる」という点において共通する。
してみると、本1発明と甲6方法発明は、『(ii)金属含有成分を含む溶液から、上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属含有成分の量を低減させる、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を除去するための接着剤組成物の製造方法。』という点において一致し、次の〔相違点ζ〕~〔相違点θ〕において相違する。
〔相違点ζ〕金属含有成分が、本1発明においては「塩鉱物により構成される膠着防止剤」であるのに対して、甲6方法発明においては、ナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、及びアルミニウム金属イオンであって、塩鉱物により構成される膠着防止剤として規定されていない点。
〔相違点η〕溶液の処理が、本1発明においては「濾過」に特定されているのに対して、甲6方法発明においては「濾過」に特定されていない点。
〔相違点θ〕仮着後の接着剤層の除去が、本1発明においては「有機溶剤により除去」されるものとして特定されているのに対して、甲6方法発明においては「有機溶剤により除去」されるものとして特定されていない点。
(イ)判断
上記〔相違点ζ〕について、甲第6号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg3Si4O10(OH)2)」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含むことについて、示唆を含めて記載がない。
また、本1発明は、本件特許明細書の段落0008の「膠着防止剤が含まれる接着剤をウエハとウエハの支持体との接着に使用した場合、…ウエハ上に残渣が生じ…基板の電気特性や歩留まりの低下に繋がる」との記載にある問題を解決課題としているところ、甲6方法発明は「膠着防止剤が含まれる接着剤の製造方法」に関するものではないので、膠着防止剤が含まれる接着剤の製造方法における問題を解決するための手段を採用すべき動機付けがない。
そして、甲第1号証~甲第10号証のうちの公知刊行物の全ての記載を精査しても、甲6方法発明の「シリコンウエハー用仮着接着剤の製造方法」において使用される溶液に「タルク」などの「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含ませるという構成を示唆する記載は見当たらない。
したがって、甲6発明の「ナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン」及び「アルミニウム金属イオン」として、塩鉱物を採用する動機付けは見出せず、上記〔相違点γ〕については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
そして、上記〔相違点ζ〕について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記〔相違点η〕及び〔相違点θ〕について検討するまでもなく、本1発明が、甲第1号証~甲第10号証に記載された発明に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(ウ)本2発明について
本2発明は、本1発明を更に限定したものであるところ、本1発明が甲第1~10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本2発明が、甲第1~10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
(6)取消理由通知に記載した理由4(進歩性)についてのまとめ
以上検討したように、取消理由通知に記載した理由4によっては、本1~4、7~8及び11発明に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
なお、本9及び10発明は訂正により削除されているので、本9及び10発明について、取消理由通知に記載した理由4は成り立たない。
6 取消理由通知において採用しなかった進歩性に関する特許異議申立理由について
上記第4 3の特許異議申立人Bが主張する取消理由1(進歩性)は、甲第1~10号証に基づき、訂正前の本1~4及び7~11発明の進歩性がないという趣旨のものであるところ、その甲第1~10号証は、取消理由通知に記載した理由4(進歩性)において引用した刊行物に同じである。
したがって、上記第4 3の理由によっては、本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
また、本9及び10発明は訂正により削除されているので、本9及び10発明についての理由は成り立たない。
7 取消理由通知に記載した理由3及び4に関する意見書の特許異議申立人Bの主張について
(1)理由3(新規性)に関する特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bは、平成30年5月16日付けの意見書の第4頁第24行~第5頁第5行で「ウエハの仮止めにおいてウエハの良好な電気統制が実現されることとする本件特許発明の目的・解決課題は、ウエハの仮止め接着剤を使用する当業者において周知な課題であり、…シリコンウエハー用仮止接着剤組成物において金属イオンの含有量が極めて低くすることにより半導体デバイスに影響を与えることを極力低減しようとすることと全く異ならない技術事項ないし技術課題である。従って、本件訂正後の請求項7に係る発明は、第1刊行物(甲第6号証)に記載された発明の内容と実質的に同一であり、また上記刊行物から容易に発明し得たものである。」と主張しているが、本7発明と甲6発明との対比において、上記〔相違点α〕の相違点が存在する以上、本7発明が甲第6号証に記載された発明の内容と実質的に同一であるとは認められず、また、上記〔相違点α〕について、当業者が容易に発明し得たといえる事情も見当たらないので、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。
(2)理由4(進歩性)に関する特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bは、平成30年5月16日付けの意見書の第3頁第4~10行で「刊行物1には、塩鉱物により構成される膠着防止剤を含む接着剤組成物が記載されておらず、樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の塩鉱物の量を低減させることが記載されていないが、この点は、異議申立書で述べたように、甲第8,9号証に記載されているように、熱可塑性エラストマーをベース樹脂とするペレット状粘着剤組成物では、樹脂成分に対してタルクやステアリン酸亜鉛等の滑剤(自着防止剤)を添加することは周知事項であり、また、粘着剤組成物に含まれる金属イオンをろ過等により除去することは容易になし得る事項である。」と主張している。
しかしながら、甲第8号証(特開2002-371136号公報)の段落0055~0056には、ブロッキング防止剤として「タルク」を用いた比較例3のものの方が、ブロッキング防止剤として「ポリプロピレン微粒子」を用いた実施例1~2のものに比して、耐ブロッキング性などの面で劣ることが記載されており、甲第9号証(特開2002-338933号公報)の段落0014には「従来、…粘着剤ペレットの表面にタルク等の粉末をまぶしたり…等の工夫が必要であったが、…前記工夫等は特に設ける必要がなく、粘着テープの製造コストダウンを図ることができ、粘着テープ製品の生産性を向上させることが可能となる。」との記載がなされているので、甲第8号証及び甲第9号証の記載に接した当業者にしてみれば、その使用が望ましくないとされている「タルク」等の塩鉱物を、甲1発明に組み合わせるという着想に至るとは認められない。
このため、甲1発明の接着剤組成物に「タルク」などの「塩鉱物」を含ませるという構成を示唆する記載が、甲第8号証又は甲第9号証になされているとは認められず、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。
8 本件特許の請求項9及び10について
本件特許の請求項9及び10は訂正により削除されているので、請求項9及び10に係る特許についての申立てを却下する。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本1発明~本8発明及び本11発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
訂正前の請求項9及び10は削除されているので、請求項9及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701083