特許異議申立
2017-701067
臭気物質の吸着剤
- 審判番号
- 2017-701067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-533672外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月10日
- 審決日
- 2018年03月30日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大阪ガスケミカル株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】特許業務法人 朝日奈特許事務所
- 分類
- P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.16 -YAA(B01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6125103号発明「臭気物質の吸着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6125103号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~23〕について訂正することを認める。
特許第6125103号の請求項1~6、9~20、22、23に係る特許を維持する。
特許第6125103号の請求項7、8、21に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6125103号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~23に係る特許についての出願は、2016年4月12日(優先権主張2015年4月14日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年4月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年11月10日付けで特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所により特許異議の申立てがされ、平成29年12月28日付けで取消理由が通知され、平成30年3月8日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年3月8日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12に記載された「請求項1~11のいずれかに記載の吸着剤。」を、「請求項1~6及び9~11のいずれかに記載の吸着剤。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16に記載された「請求項1~15のいずれかに記載の吸着剤。」を、「請求項1~6及び9~15のいずれかに記載の吸着剤。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項17に記載された「請求項1~16のいずれかに記載の吸着剤を含む、工業製品。」を、「請求項1~6及び9~16のいずれかに記載の吸着剤を含む、工業製品。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項21を削除する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0006】に記載された
「本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒドラジン化合物と、特定のアミン化合物、アミノエタノール、アミノ酸、スルファミン酸、イミダゾール化合物等とを組合せて使用することで、臭気物質(アルデヒド化合物等)の吸着性能及び吸着速度を飛躍的に向上させることができることを見出した。なお、特定のアミン化合物、アミノエタノール、アミノ酸、スルファミン酸、イミダゾール化合物等は、単独で使用した場合にはヒドラジン化合物よりも消臭性能、消臭速度に劣るため、ヒドラジン化合物と、特定のアミン化合物、アミノエタノール、アミノ酸、スルファミン酸、イミダゾール化合物等とを組合せて使用することで、これらの物質の相乗効果により臭気物質(アルデヒド化合物等)の吸着性能及び吸着速度を飛躍的に向上させることができることは予想外の結果である。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下に示す構成を包含する。」を、
「本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒドラジン化合物と、特定のアミン化合物、アミノアルコール、アミノ酸、スルファミン酸、イミダゾール化合物等とを組合せて使用することで、臭気物質(アルデヒド化合物等)の吸着性能及び吸着速度を飛躍的に向上させることができることを見出した。なお、特定のアミン化合物、アミノアルコール、アミノ酸、スルファミン酸、イミダゾール化合物等は、単独で使用した場合にはヒドラジン化合物よりも消臭性能、消臭速度に劣るため、ヒドラジン化合物と、特定のアミン化合物、アミノアルコール、アミノ酸、スルファミン酸、イミダゾール化合物等とを組合せて使用することで、これらの物質の相乗効果により臭気物質(アルデヒド化合物等)の吸着性能及び吸着速度を飛躍的に向上させることができることは予想外の結果である。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下に示す構成を包含する。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0044】に記載された
「化合物(b)としてアミン化合物(b1)又はその塩を使用する場合、当該アミン化合物(b1)又はその塩の含有量は、特に限定されず、消臭性能、消臭速度、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、ヒドラジン化合物(a)と化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、また、例えば、80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。なお、化合物(b)としてアミン化合物(b1)又はその塩と、後述のアミノエタノール(b2)又はその塩、アミノ酸(b3)又はその塩、スルファミン酸(b4)又はその塩、イミダゾール化合物(b5)等とを併用する場合は、化合物(b)の総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。その場合のアミン化合物(b1)又はその塩の含有量は、化合物(b)の総量を100重量%として、例えば1重量%以上、特に5重量%以上、また、例えば、99重量%以下、特に95重量%以下とすることができる。」を、
「化合物(b)としてアミン化合物(b1)又はその塩を使用する場合、当該アミン化合物(b1)又はその塩の含有量は、特に限定されず、消臭性能、消臭速度、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、ヒドラジン化合物(a)と化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、また、例えば、80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。なお、化合物(b)としてアミン化合物(b1)又はその塩と、後述のアミノアルコール(b2)又はその塩、アミノ酸(b3)又はその塩、スルファミン酸(b4)又はその塩、イミダゾール化合物(b5)等とを併用する場合は、化合物(b)の総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。その場合のアミン化合物(b1)又はその塩の含有量は、化合物(b)の総量を100重量%として、例えば1重量%以上、特に5重量%以上、また、例えば、99重量%以下、特に95重量%以下とすることができる。」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0053】に記載された
「化合物(b)としてアミノ酸(b3)又はその塩を使用する場合、上記アミノ酸(b3)の含有量は、特に限定されず、消臭性能、消臭速度、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、ヒドラジン化合物(a)と化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、また、例えば、80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。なお、化合物(b)としてアミノ酸(b3)又はその塩と、上記のアミン化合物(b1)又はその塩、アミノエタノール(b2)又はその塩、後述のスルファミン酸(b4)又はその塩、イミダゾール化合物(b5)等とを併用する場合は、化合物(b)の総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。その場合のアミノ酸(b3)又はその塩の含有量は、化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、特に5重量%以上とすることができ、また、例えば、99重量%以下、特に95重量%以下とすることができる。」を、
「化合物(b)としてアミノ酸(b3)又はその塩を使用する場合、上記アミノ酸(b3)の含有量は、特に限定されず、消臭性能、消臭速度、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、ヒドラジン化合物(a)と化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、また、例えば、80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。なお、化合物(b)としてアミノ酸(b3)又はその塩と、上記のアミン化合物(b1)又はその塩、アミノアルコール(b2)又はその塩、後述のスルファミン酸(b4)又はその塩、イミダゾール化合物(b5)等とを併用する場合は、化合物(b)の総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。その場合のアミノ酸(b3)又はその塩の含有量は、化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、特に5重量%以上とすることができ、また、例えば、99重量%以下、特に95重量%以下とすることができる。」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0055】に記載された
「化合物(b)としてスルファミン酸(b4)又はその塩を使用する場合、上記スルファミン酸(b4)の含有量は、特に限定されず、消臭性能、消臭速度、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、ヒドラジン化合物(a)と化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、また、例えば、80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。なお、化合物(b)としてスルファミン酸(b4)又はその塩と、上記のアミン化合物(b1)又はその塩、アミノエタノール(b2)又はその塩、アミノ酸(b3)又はその塩、後述のイミダゾール化合物(b5)等とを併用する場合は、化合物(b)の総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。その場合のスルファミン酸(b4)又はその塩の含有量は、化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、特に5重量%以上とすることができ、また、例えば、99重量%以下、特に95重量%以下とすることができる。」を
「化合物(b)としてスルファミン酸(b4)又はその塩を使用する場合、上記スルファミン酸(b4)の含有量は、特に限定されず、消臭性能、消臭速度、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、ヒドラジン化合物(a)と化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、また、例えば、80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。なお、化合物(b)としてスルファミン酸(b4)又はその塩と、上記のアミン化合物(b1)又はその塩、アミノアルコール(b2)又はその塩、アミノ酸(b3)又はその塩、後述のイミダゾール化合物(b5)等とを併用する場合は、化合物(b)の総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。その場合のスルファミン酸(b4)又はその塩の含有量は、化合物(b)の総量を100重量%として、例えば、1重量%以上、特に5重量%以上とすることができ、また、例えば、99重量%以下、特に95重量%以下とすることができる。」に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0065】に記載された
「本発明の吸着剤中の酸(c)又はその塩の含有量は、特に限定されず、pHが中性領域(5~9程度)となるように調整することが好ましい。具体的には、化合物(b)としてアミン化合物(b1)を使用する場合はアミン化合物(b1)100重量部に対して20重量部以上(特に40重量部以上)とすることが好ましく、化合物(b)としてアミノエタノール(b2)を使用する場合はアミン化合物(b2)100重量部に対して、例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下である。また、化合物(b)としてイミダゾール化合物(b5)を使用する場合はイミダゾール化合物(b5)100重量部に対して、例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下である。アミン化合物(b1)、アミノエタノール(b2)及びイミダゾール化合物(b5)のうち2種以上を併用する場合は、酸(c)又はその塩の含有量は、アミン化合物(b1)100重量部に対する至適な重量部(例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下)と、アミン化合物(b2)100重量部に対する至適な重量部(例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下)と、イミダゾール化合物(b5)100重量部に対する至適な重量部(例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下)との合計量とすることが好ましい。なお、化合物(b)としてアミノ酸(b3)又はその塩、スルファミン酸(b4)又はその塩のみを使用する場合は酸(c)又はその塩を使用しなくてもよい。」を
「本発明の吸着剤中の酸(c)又はその塩の含有量は、特に限定されず、pHが中性領域(5~9程度)となるように調整することが好ましい。具体的には、化合物(b)としてアミン化合物(b1)を使用する場合はアミン化合物(b1)100重量部に対して20重量部以上(特に40重量部以上)とすることが好ましく、化合物(b)としてアミノアルコール(b2)を使用する場合はアミノアルコール(b2)100重量部に対して、例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下である。また、化合物(b)としてイミダゾール化合物(b5)を使用する場合はイミダゾール化合物(b5)100重量部に対して、例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下である。アミン化合物(b1)、アミノアルコール(b2)及びイミダゾール化合物(b5)のうち2種以上を併用する場合は、酸(c)又はその塩の含有量は、アミン化合物(b1)100重量部に対する至適な重量部(例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下)と、アミノアルコール(b2)100重量部に対する至適な重量部(例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下)と、イミダゾール化合物(b5)100重量部に対する至適な重量部(例えば、20重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、例えば、200重量部以下、好ましくは180重量部以下)との合計量とすることが好ましい。なお、化合物(b)としてアミノ酸(b3)又はその塩、スルファミン酸(b4)又はその塩のみを使用する場合は酸(c)又はその塩を使用しなくてもよい。」に訂正する。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1~5について
訂正事項1及び2は、訂正前の請求項7及び8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3~5は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、請求項12、16及び17における引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項21を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項7~11について
本件特許の願書に最初に添付された明細書(以下、「本件当初明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0006】の「ヒドラジン化合物と、特定のアミン化合物、アミノエタノール、アミノ酸、スルファミン酸、イミダゾール化合物等とを組合せて使用する」との記載、及び、同段落【0007】の「アミン化合物(b1)又はその塩、アミノアルコール(b2)又はその塩、アミノ酸(b3)又はその塩、スルファミン酸(b4)又はその塩、並びにイミダゾール化合物(b5)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)」との記載からみて、「アミン化合物」、「アミノ酸」、「スルファミン酸」、「イミダゾール化合物」と同列の化合物として記載されている「アミノエタノール」あるいは「アミノアルコール(b2)」のいずれかは誤記であることは明らかである。
そして、同段落【0008】に「前記アミノアルコール(b2)は、一般式(2):
NH2-R4a-(NH-R4b)n4-OH (2)
[式中、R4aは炭素数1~8のアルキレン基を示す。R4bは同一又は異なって、炭素数1~8のアルキレン基を示す。n4は0~4の整数を示す。]
で表されるアミノアルコールである」と記載され、「アミン化合物」、「アミノ酸」、「スルファミン酸」、「イミダゾール化合物」と同列の化合物として記載されている「アミノエタノール」あるいは「アミノアルコール(b2)」には、炭素数が1~8のアルキレン基を有するアミノアルコールを含むことが示されているから、段落【0006】、【0044】、【0053】、【0055】及び【0065】の「アミノエタノール」との記載は誤りであって、「アミノアルコール」との記載が正しい記載であるといえる。
また、同段落【0065】の「化合物(b)としてアミノエタノール(b2)を使用する場合はアミン化合物(b2)」との記載において、同段落【0065】に「アミン化合物(b1)」と記載されていることから、同段落【0065】の「アミン化合物(b2)」との記載は誤りであって、上記検討を踏まえると、「アミノアルコール(b2)」との記載が正しい記載であるといえる。
よって、訂正事項7~11は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、本件当初明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)一群の請求項について
訂正事項1~5に関連する請求項7、8、12、16及び17は、訂正前の請求項8、12、16及び17が訂正前の請求項7を引用するため、一群の請求項である。また、訂正事項6は、訂正前の請求項21を訂正するものである。そして、本件特許の明細書に係る訂正事項7~11は、明細書の誤記を訂正するものであるから、訂正前の請求項1~23に関連するものと認められる。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項1~23について請求するものと認められる。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~23〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~6、9~20、22、23に係る発明(以下「本件発明1~6、9~20、22、23」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~23に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
ヒドラジン化合物(a)と、アミノ酸(b3)又はその塩とを含有する臭気物質の吸着剤であって、
前記アミノ酸(b3)は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸着剤。
【請求項2】
ヒドラジン化合物(a)と、イミダゾール化合物(b5)とを含有する臭気物質の吸着剤であって、
前記イミダゾール化合物(b5)は、一般式(3):
【化1】
[式中、R5a、R5b、R5c及びR5dは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾール化合物であり、且つ、
前記ヒドラジン化合物(a)と前記イミダゾール化合物(b5)の総量を100重量%として、前記イミダゾール化合物(b5)の含有量が1~70重量%である、吸着剤。
【請求項3】
前記イミダゾール化合物(b5)が、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、4,5-ジメチルイミダゾール、1,2,4-トリメチルイミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール及び2,4,5-トリメチルイミダゾールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
ヒドラジン化合物(a)と、スルファミン酸(b4)又はその塩(ただし、スルファミン酸グアニジンを除く)とを含有する臭気物質の吸着剤。
【請求項5】
前記スルファミン酸(b4)又はその塩が、スルファミン酸、スルファミン酸遷移金属塩、スルファミン酸アルカリ金属塩、スルファミン酸アルカリ土類金属塩、スルファミン酸アンモニウム塩、スルファミン酸イミダゾール及びスルファミン酸メラミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の吸着剤。
【請求項6】
さらに、イミダゾール化合物(b5)を含有する、請求項4又は5に記載の吸着剤。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
ヒドラジン化合物(a)と、アミノアルコール(b2)又はその塩とを含有し、尿素又はその誘導体を含まない、臭気物質の吸着剤。
【請求項10】
前記アミノアルコール(b2)は、一般式(2):
NH2-R4a-(NH-R4b)n4-OH (2)
[式中、R4aは炭素数1~8のアルキレン基を示す。R4bは同一又は異なって、炭素数1~8のアルキレン基を示す。n4は0~4の整数を示す。]
で表されるアミノアルコールである、請求項9に記載の吸着剤。
【請求項11】
前記アミノアルコール(b2)が、メタノールアミン、エタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノールアミノアルコール、2-(2-アミノエチル)アミノエタノール及びN-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項9又は10に記載の吸着剤。
【請求項12】
前記臭気物質が、アルデヒド化合物である、請求項1~6及び9~11のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項13】
ヒドラジン化合物(a)と、アミノアルコール(b2)又はその塩とを含有する、アセトアルデヒド吸着剤。
【請求項14】
前記アミノアルコール(b2)は、一般式(2):
NH2-R4a-(NH-R4b)n4-OH (2)
[式中、R4aは炭素数1~8のアルキレン基を示す。R4bは同一又は異なって、炭素数1~8のアルキレン基を示す。n4は0~4の整数を示す。]
で表されるアミノアルコールである、請求項13に記載のアセトアルデヒド吸着剤。
【請求項15】
前記アミノアルコール(b2)が、メタノールアミン、エタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノールアミノアルコール、2-(2-アミノエチル)アミノエタノール及びN-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項13又は14に記載のアセトアルデヒド吸着剤。
【請求項16】
前記ヒドラジン化合物(a)が、カルボジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ターシャリーブチルヒドラジン塩酸塩、及びベンズヒドラジドよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6及び9~15のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項17】
請求項1~6及び9~16のいずれかに記載の吸着剤を含む、工業製品。
【請求項18】
アルデヒド化合物を含有する気体を、吸着剤と接触させることで、吸着剤に臭気物質を吸着させる方法であって、
前記吸着剤は、ヒドラジン化合物(a)と、アミノ酸(b3)又はその塩とを含有し、且つ、
前記アミノ酸(b3)は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、方法。
【請求項19】
アルデヒド化合物を含有する気体を、吸着剤と接触させることで、吸着剤に臭気物質を吸着させる方法であって、
前記吸着剤は、ヒドラジン化合物(a)と、イミダゾール化合物(b5)とを含有し、
前記イミダゾール化合物(b5)は、一般式(3):
【化2】
[式中、R5a、R5b、R5c及びR5dは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾール化合物であり、且つ、
前記ヒドラジン化合物(a)とイミダゾール化合物(b5)の総量を100重量%として、前記吸着剤中のイミダゾール化合物(b5)の含有量が1~70重量%である、方法。
【請求項20】
アルデヒド化合物を含有する気体を、吸着剤と接触させることで、吸着剤に臭気物質を吸着させる方法であって、
前記吸着剤は、ヒドラジン化合物(a)と、スルファミン酸(b4)又はその塩(ただし、スルファミン酸グアニジン塩を除く)とを含有する、方法。
【請求項21】
(削除)
【請求項22】
アルデヒド化合物を含有する気体を、吸着剤と接触させることで、吸着剤に臭気物質を吸着させる方法であって、
前記吸着剤は、ヒドラジン化合物(a)と、アミノアルコール(b2)又はその塩とを含有し、尿素又はその誘導体を含まない、方法。
【請求項23】
アセトアルデヒドを、アセトアルデヒド吸着剤と接触させることで、アセトアルデヒド吸着剤にアセトアルデヒドを吸着させる方法であって、
前記アセトアルデヒド吸着剤は、ヒドラジン化合物(a)と、アミノアルコール(b2)又はその塩とを含有する、方法。
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~3、7~19、21~23に係る特許に対して、平成29年12月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
(1)優先権主張の検討
請求項2に係る発明が備える発明特定事項のうち「臭気物質の吸着剤」が「ヒドラジン化合物(a)と、イミダゾール化合物(b5)とを含有する」ことについて、優先権主張の基礎とされた特願2015-82410号の出願時における明細書、請求の範囲又は図面(以下、「優先権基礎明細書等」という。)には、「臭気物質の吸着剤」の成分として、「イミダゾール化合物(b5)」を含有することを導くことのできる記載はなされておらず、請求項2に係る発明は、優先権基礎明細書等に記載された発明といえない。
また、請求項2に係る発明を引用する請求項3、12、16、17に係る発明も、優先権基礎明細書等に記載された発明といえない。
さらに、請求項19に係る発明が備える発明特定事項のうち「臭気物質の吸着剤」が「ヒドラジン化合物(a)と、イミダゾール化合物(b5)とを含有する」ことについても同様であるから、請求項19に係る発明は、優先権基礎明細書等に記載された発明といえない。
したがって、請求項2に係る発明及びこれを引用する請求項3、12、16、17に係る発明、並びに、請求項19に係る発明については、優先権主張の効果が認められないから、これらの発明に対しての特許法第29条の規定の適用については、優先権主張の基礎とされた出願の出願日でなく、現実の出願日の2016年(平成28年)4月12日を基準日とする。
(2)取消理由1(特許法第29条に関する取消理由)
ア 取消理由1-1
請求項1、12、16~18に係る発明は、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。あるいは、請求項1、12、16~18に係る発明は、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
イ 取消理由1-2
請求項2、3、12、16、17及び19に係る発明は、甲第11号に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
ウ 取消理由1-3
請求項7、8、12、16、17、21に係る発明は、甲第15号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第19号証、甲第20号証または甲第21号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。あるいは、請求項7、8、12、16、17、21に係る発明は、甲第15号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第19号証、甲第20号証または甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
エ 取消理由1-4
請求項9~17、22、23に係る発明は、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。あるいは、請求項9~17、22、23に係る発明は、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(甲号証一覧)
甲第5号証:特開2005-137785号公報
甲第11号証:特開2015-213897号公報
甲第15号証:特開2009-221621号公報
甲第16号証:特開2004-24330号公報
甲第17号証:特開2000-312809号公報
甲第19号証:特開2008-80328号公報
甲第20号証:特開2000-107275号公報
甲第21号証:特開2005-312801号公報
(3)取消理由2(特許法第29条の2に関する取消理由)
請求項1、12、16~18に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた先願3の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願3に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願3の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
(先願一覧)
先願3:特願2015-554800号(国際公開第2015/098687号(甲第3号証))
3 甲号証について
(1)甲第5号証
ア 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、「アルデヒド生成源からアルデヒドの発生を抑制するための抑制剤組成物であって、カルボン酸ヒドラジドとヒドロキシ多価カルボン酸金属塩とを含むアルデヒド抑制剤組成物。」(【請求項1】)の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
イ 甲第5号証の段落【0005】に「・・・カルボン酸ヒドラジドのアルデヒド捕捉能を高めて、アルデヒド生成源からのアルデヒドの発生を効率よく抑制できるアルデヒド抑制剤組成物を提供することにある。」と記載されているから、甲第5号証には、「甲5発明のアルデヒド抑制剤組成物を用いて、アルデヒド生成源からのアルデヒドの発生を効率よく抑制する方法。」の発明(以下、「甲5方法発明」という。)が記載されているといえる。
ウ 甲第5号証の【請求項10】に「ポリアセタール樹脂と、請求項1~9のいずれかの項に記載のアルデヒド抑制剤組成物とを含むポリアセタール樹脂組成物。」と記載され、段落【0055】に「本発明のポリアセタール樹脂組成物では、前記アルデヒド抑制剤組成物を配合するだけで、ホルムアルデヒドの発生を顕著に抑制でき、加工安定性を改善できる、さらに、・・・、耐熱安定剤、・・・を含んでもいてもよい。・・・」と記載され、さらに、段落【0075】及び【0076】に「・・・前記耐熱安定剤には、(a)塩基性窒素化合物、・・・が含まれる。・・・塩基性窒素化合物としては、・・・、アミノ酸化合物、アミノアルコール化合物、・・・から選択された少なくとも一種が使用できる。」と記載されていることから、甲第5号証には、アルデヒド抑制剤組成物を含むポリアセタール樹脂組成物に、アミノ酸化合物あるいはアミノアルコール化合物から選択された耐熱安定剤を含有させることが記載されているといえる。
(2)甲第21号証
ア 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲第21号証の【請求項1】に「アルデヒド臭を消臭するための消臭剤であって、アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド、アリールアルカンカルボン酸のヒドラジド、非アクリル系ポリヒドラジド、及びアミノウラゾール化合物から選択された少なくとも一種のヒドラジン化合物で構成されており、前記アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド及びアリールアルカンカルボン酸のヒドラジドが、アリール基上に、少なくとも1つのヒドロキシル基又はその誘導体基を有している消臭剤。」と記載され、【請求項9】に「さらに、塩基性窒素含有化合物、弱酸又はその金属塩、金属化合物、アルコール類、ポリフェノール類及び吸着性無機化合物から選択された少なくとも一種の消臭助剤を含む請求項1記載の消臭剤。」と記載されているから、甲第21号証には、「アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド、アリールアルカンカルボン酸のヒドラジド、非アクリル系ポリヒドラジド、及びアミノウラゾール化合物から選択された少なくとも一種のヒドラジン化合物で構成されており、前記アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド及びアリールアルカンカルボン酸のヒドラジドが、アリール基上に、少なくとも1つのヒドロキシル基又はその誘導体基を有している消臭剤であって、さらに、塩基性窒素含有化合物、弱酸又はその金属塩、金属化合物、アルコール類、ポリフェノール類及び吸着性無機化合物から選択された少なくとも一種の消臭助剤を含む、アルデヒド臭を消臭するための消臭剤。」の発明(以下、「甲21発明」という。)が記載されているといえる。
イ 甲第21号証の段落【0001】に「本発明は、アルデヒド臭(特にホルムアルデヒド臭)を消臭するのに有用な消臭剤及び樹脂組成物に関する。」と記載されているから、甲第21号証には、「甲21発明の消臭剤を用いて、アルデヒド臭(特にホルムアルデヒド臭)を消臭する方法。」の発明(以下、「甲21方法発明」という。)が記載されているといえる。
ウ 甲第21号証の段落【0075】及び【0076】に「・・・本発明の消臭剤は、さらに消臭助剤を含んでもよい(このような消臭剤を消臭剤組成物と称する場合がある)。・・・消臭助剤としては、塩基性窒素含有化合物(i)、弱酸又はその金属塩(ii)、金属化合物(iii)、アルコール類(iv)、ポリフェノール類(v)、吸着性無機化合物(vi)、ポリビニルアルコール、シクロデキストリンなどが使用できる。」と記載され、段落【0077】に「・・・塩基性窒素含有化合物には、・・・アミノ酸類、アミン類、・・・などが含まれる。」と記載され、さらに、段落【0085】に「アミン類としては、例えば、・・・メタノールアミン、・・・、エタノールアミン、・・・などが挙げられる。」と記載されているから、甲第21号証には、消臭助剤の選択肢の1つとして、アミノ酸類、メタノールアミン、あるいは、エタノールアミンを用いることが記載されている。
エ 甲第21号証の段落【0190】及び【0191】に「・・・消臭剤としてのヒドラジン化合物(b-8)1g及び消臭助剤としての酢酸ナトリウム0.1gの混合物に水に加えてヒドラジン化合物の濃度が約10重量%の水溶液を調製した。・・・ヒドラジン化合物及び消臭助剤としての酢酸ナトリウムは、不織布に保持させた状態でもホルムアルデヒド消臭及び除去効果を有することが明らかとなった。」と記載され、段落【0193】に「また、酢酸ナトリウム0.1gに代えて、ステアリン酸マグネシウム、ベンゾグアナミン、酸化マグネシウム、グリセリン、又はレゾルシンを0.1g用いる以外は上記と同様の操作を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。・・・」と記載され、さらに、段落【0197】に「2.ヒドラジン化合物・・・(b-8):4-アミノウラゾール。・・・」と記載されていることから、甲第21号証には、4-アミノウラゾールを含む消臭剤に、酢酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ベンゾグアナミン、酸化マグネシウム、グリセリン、又はレゾルシンの消臭助剤を含有させることが記載されているといえる。
(3)甲第11号証
ア 本件特許に係る出願の前に頒布された刊行物である甲第11号証の【請求項2】に「吸脱着を繰返すためのアルデヒド類除去材であって、金属及び有機配位子から構成される多孔性金属錯体を用いており、かつ多孔性金属錯体中にNH基を有する化合物が担持されていることを特徴とするアルデヒド類除去材。」と記載され、さらに、【請求項6】に「前記NH基を有する化合物がヒドラジド基、一級アミノ基、二級アミノ基またはイミノ基を有する請求項2~5のいずれかに記載のアルデヒド類除去材。」と記載されているから、甲第11号証には、「金属及び有機配位子から構成される多孔性金属錯体を用いており、かつ多孔性金属錯体中にヒドラジド基を有する化合物が担持されている、吸脱着を繰返すためのアルデヒド類除去材。」の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されているといえる。
イ 甲第11号証の段落【0013】に「・・・本発明における除去材は、アルデヒド類を含む被処理ガスと接触させて、前記アルデヒド類を吸着除去し、次にその吸着したアルデヒド類を脱着するという吸脱着を繰返すための除去材であり、多孔性金属錯体から構成されている。・・・」と記載されているから、甲第11号証には、「甲11発明のアルデヒド類除去材を用いて、アルデヒド類を含む被処理ガスと接触させて、前記アルデヒド類を吸着除去する方法」の発明(以下、「甲11方法発明」という。)が記載されているといえる。
ウ 甲第11号証の段落【0016】に「有機配位子としては、骨格を構築する上で二座以上必要であり、またNH基として一級アミノ基または二級アミノ基またはイミノ基を含む有機配位子を少なくとも一種使用することが望ましい。加えて、NH基を含まない二座以上で配位可能な有機配位子を用いても良い。・・・」と記載され、さらに、段落【0017】に「NH基を含まない二座以上で配位可能な有機配位子としては、例えば、・・・イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類及びその誘導体・・・が挙げられる。・・・」と記載されていることから、甲第11号証には、多孔性金属錯体の有機配位子として、NH基として一級アミノ基または二級アミノ基またはイミノ基を含む有機配位子に加えて、NH基を含まない二座以上で配位可能な有機配位子としてのイミダゾール類及びその誘導体を用いることが記載されている。
(4)甲第3号証(先願3)
ア 先願3の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願3明細書等」という。)には、「ジヒドラジド化合物及び金属酸化物ゾルを含有し、ジヒドラジド化合物の含有量が、ガス吸着液全量に対して1.3~6質量%であり、かつ、ジヒドラジド化合物及び金属酸化物ゾル固形分の合計含有量が、ガス吸着液全量に対して18~45質量%であることを特徴とするアルデヒド系ガス吸着液。」([請求項1])の発明(以下、「先願3発明」という。)が記載されている。
イ 先願3明細書等の段落[0014]に「・・・本発明のアルデヒド系ガス吸着液は、アルデヒド系ガスの吸着性能が高いことから、室内や車内などの各種製品に塗布するのみで、空気中のアルデヒド系ガスを低減させ、製品からのアルデヒド系ガスの放散も抑制することができる。・・・」と記載されているから、先願3明細書等には、「先願3発明のアルデヒド系ガス吸着液を、室内や車内などの各種製品に塗布することで、空気中のアルデヒド系ガスを低減させる方法。」の発明(以下、「先願3方法発明」という。)が記載されているといえる。
ウ 先願3明細書等の段落[0031]には、「・・・本発明のアルデヒド系ガス吸着液は、本発明のアルデヒド系ガス吸着液以外のアルデヒド系ガス吸着剤と一緒に用いてもよい。当該アルデヒド系ガス吸着剤としては、硫酸アンモニウム、ポリアリルアミン塩酸塩、EDTA・ナトリウム塩、トリエタノールアミン、ピリジン、ジメチルヒダントイン、カゼイン、尿素、チオ尿素、カゼインナトリウム、グリシン、ヘキサメチレンテトラミン、硝酸グアニジン、及び硫酸ヒドロキシルアミン等が例示できる。ただし、金属酸化物ゾルに加えるとゲル化や変色などの問題もあるため、1液の吸着液にせず、塗布加工は別としたほうが良い。」と記載されている。
4 取消理由に対する当審の判断
(1)優先権主張の検討
上記2(1)で検討したとおり、請求項2に係る発明及びこれを引用する請求項3、12、16、17に係る発明、並びに、請求項19に係る発明については、優先権主張の効果が認められないから、これらの発明に対しての特許法第29条の規定の適用については、優先権主張の基礎とされた出願の出願日でなく、現実の出願日の2016年(平成28年)4月12日を基準日とする。
(2)取消理由1(特許法第29条に関する取消理由)について
ア 取消理由1-1について
(ア)本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「カルボン酸ヒドラジド」、「アルデヒドの発生を抑制するための抑制剤組成物」は、それぞれ、本件発明1の「ヒドラジン化合物(a)」、「臭気物質の吸着剤」に相当するから、両者は、「ヒドラジン化合物(a)を含有する臭気物質の吸着剤」である点で一致し、本件発明1は「グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である」「アミノ酸(b3)又はその塩」を含有しているのに対して、甲5発明はアミノ酸を含有してない点で相違している。
上記相違点について検討すると、甲第5号証には、上記3(1)ウのとおり、アルデヒド抑制剤組成物を含むポリアセタール樹脂組成物に、アミノ酸化合物の耐熱安定剤を含有させることが記載されているものの、これは、アミノ酸化合物の耐熱安定剤をアルデヒド抑制剤組成物に対して含有させるものといえない。しかも、甲第5号証に記載されたアミノ酸化合物の耐熱安定剤は、ポリアセタール樹脂組成物の耐熱性向上のために使用されるものであって、ヒドラジン化合物を含有するアルデヒド抑制剤組成物の吸着性能及び吸着速度を相乗的に向上させるものではないから、甲5発明のアルデヒド抑制剤組成物に、アミノ酸化合物を含有させることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明といえないし、甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
(イ)本件発明1と甲21発明とを対比すると、甲21発明の「アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド、アリールアルカンカルボン酸のヒドラジド、非アクリル系ポリヒドラジド、及びアミノウラゾール化合物から選択された少なくとも一種のヒドラジン化合物で構成されており、前記アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド及びアリールアルカンカルボン酸のヒドラジドが、アリール基上に、少なくとも1つのヒドロキシル基又はその誘導体基を有している」こと、「アルデヒド臭を消臭するための消臭剤」は、それぞれ、本件発明1の「ヒドラジン化合物(a)」、「臭気物質の吸着剤」に相当するから、両者は、「ヒドラジン化合物(a)を含有する臭気物質の吸着剤」である点で一致し、本件発明1は「グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である」「アミノ酸(b3)又はその塩」を含有しているのに対して、甲21発明は、塩基性窒素含有化合物、弱酸又はその金属塩、金属化合物、アルコール類、ポリフェノール類及び吸着性無機化合物から選択された少なくとも一種の消臭助剤を含有している点で相違している。
上記相違点について検討すると、甲第21号証には、上記3(2)ウのとおり、消臭助剤の選択肢の1つとして、アミノ酸類を用いることが記載されているが、上記3(2)エのとおり、具体的に記載された消臭助剤は、酢酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ベンゾグアナミン、酸化マグネシウム、グリセリン、又はレゾルシンであって、アミノ酸類を消臭助剤として用いた具体例は記載されていない。しかも、甲第21号証には、消臭助剤によって、アルデヒド臭を消臭するための消臭剤の吸着性能及び吸着速度を相乗的に向上させることは記載されていないから、甲21発明において、アミノ酸類を選択することで吸着性能等を向上させることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、本件発明1は、甲第21号証に記載された発明といえないし、甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
(ウ)本件発明1を引用する本件発明12、16及び17は、上記(ア)及び(イ)と同様であるから、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明といえないし、さらに、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
(エ)本件発明18と甲5方法発明とを対比すると、少なくとも上記(ア)で示した点が相違するから、上記(ア)で検討したと同様に、本件発明18は、甲第5号証に記載された発明といえないし、さらに、甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
また、本件発明18と甲21方法発明とを対比すると、少なくとも上記(イ)で示した点が相違するから、上記(イ)で検討したと同様に、本件発明18は、甲第21号証に記載された発明といえないし、さらに、甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
イ 取消理由1-2について
(ア)本件発明2と甲11発明とを対比すると、甲11発明の「ヒドラジド基を有する化合物」、「吸脱着を繰返すためのアルデヒド類除去材」は、それぞれ、本件発明1の「ヒドラジン化合物(a)」、「臭気物質の吸着剤」に相当するから、両者は、「ヒドラジン化合物(a)を含有する臭気物質の吸着剤」である点で一致し、本件発明2は「一般式(3):
【化1】
[式中、R5a、R5b、R5c及びR5dは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾール化合物」を含有しているのに対して、甲11発明は、その点が明示されていない点で相違している。
上記相違点について検討すると、甲第11号証には、上記3(3)ウのとおり、多孔性金属錯体の有機配位子として、NH基を含まない二座以上で配位可能な有機配位子としてのイミダゾール類及びその誘導体を用いることが記載されているが、金属に配位した状態のイミダゾール類及びその誘導体が示されているに過ぎず、本件発明2のイミダゾール化合物そのものを用いることは記載されていないから、甲11発明において、イミダゾール化合物を含有させることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、本件発明2は、甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
(イ)本件発明2を引用する本件発明3、12、16及び17は、上記(ア)と同様であるから、甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
(ウ)本件発明19と甲11方法発明とを対比すると、少なくとも上記(ア)で示した点が相違するから、上記(ア)で検討したと同様に、本件発明19は、甲第11号証に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
ウ 取消理由1-3について
請求項7、8及び21は、訂正により削除されたため、取消理由1-3の対象となる請求項は存在しない。
エ 取消理由1-4について
(ア)本件発明9と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「カルボン酸ヒドラジド」、「アルデヒドの発生を抑制するための抑制剤組成物」は、それぞれ、本件発明9の「ヒドラジン化合物(a)」、「臭気物質の吸着剤」に相当するから、両者は、「ヒドラジン化合物(a)を含有する臭気物質の吸着剤」である点で一致し、本件発明9は「アミノアルコール(b2)又はその塩」を含有しているのに対して、甲5発明はアミノアルコールを含有してない点で相違し、さらに、本件発明9は「尿素又はその誘導体を含まない」ことを特定しているのに対して、甲5発明では、その点は明示されていない点で相違している。
上記相違点について検討すると、甲第5号証には、上記3(1)ウのとおり、アルデヒド抑制剤組成物を含むポリアセタール樹脂組成物に、アミノアルコール化合物の耐熱安定剤を含有させることが記載されているものの、これは、アミノアルコール化合物の耐熱安定剤をアルデヒド抑制剤組成物に対して含有させるものといえない。しかも、甲第5号証に記載されたアミノアルコール化合物の耐熱安定剤は、ポリアセタール樹脂組成物の耐熱性向上のために使用されるものであって、ヒドラジン化合物を含有するアルデヒド抑制剤組成物の吸着性能及び吸着速度を相乗的に向上させるものではないから、甲5発明のアルデヒド抑制剤組成物に、アミノアルコール化合物を含有させることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明9は、甲第5号証に記載された発明といえないし、甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
(イ)本件発明9と甲21発明とを対比すると、甲21発明の「アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド、アリールアルカンカルボン酸のヒドラジド、非アクリル系ポリヒドラジド、及びアミノウラゾール化合物から選択された少なくとも一種のヒドラジン化合物で構成されており、前記アリール基を含む多価カルボン酸ヒドラジド及びアリールアルカンカルボン酸のヒドラジドが、アリール基上に、少なくとも1つのヒドロキシル基又はその誘導体基を有している」こと、「アルデヒド臭を消臭するための消臭剤」は、それぞれ、本件発明9の「ヒドラジン化合物(a)」、「臭気物質の吸着剤」に相当するから、両者は、「ヒドラジン化合物(a)を含有する臭気物質の吸着剤」である点で一致し、本件発明9は「アミノアルコール(b2)又はその塩」を含有しているのに対して、甲21発明は、塩基性窒素含有化合物、弱酸又はその金属塩、金属化合物、アルコール類、ポリフェノール類及び吸着性無機化合物から選択された少なくとも一種の消臭助剤を含有している点で相違し、さらに、本件発明9は「尿素又はその誘導体を含まない」ことを特定しているのに対して、甲21発明では、その点は明示されていない点で相違している。
上記相違点について検討すると、甲第21号証には、上記3(2)ウのとおり、消臭助剤の選択肢の1つとして、メタノールアミン、あるいは、エタノールアミンを用いることが記載されているが、上記3(2)エのとおり、具体的に記載された消臭助剤は、酢酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ベンゾグアナミン、酸化マグネシウム、グリセリン、又はレゾルシンであって、メタノールアミン、あるいは、エタノールアミンを消臭助剤として用いた具体例は記載されていない。しかも、甲第21号証には、消臭助剤によって、アルデヒド臭を消臭するための消臭剤の吸着性能及び吸着速度を相乗的に向上させることは記載されていないから、甲21発明において、メタノールアミン、あるいは、エタノールアミンを選択することで吸着性能等を向上させることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明9は、甲第21号証に記載された発明といえないし、甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
(ウ)本件発明9を引用する本件発明12、16及び17、並びに、本件発明13及びこれを引用する本件発明14~17は、上記(ア)及び(イ)と同様であるから、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明といえないし、さらに、甲第5号証または甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
(エ)本件発明22及び23と甲5方法発明とを対比すると、少なくとも上記(ア)で示した点が相違するから、上記(ア)で検討したと同様に、本件発明22及び23は、甲第5号証に記載された発明といえないし、さらに、甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
また、本件発明22及び23と甲21方法発明とを対比すると、少なくとも上記(イ)で示した点が相違するから、上記(イ)で検討したと同様に、本件発明22及び23は、甲第21号証に記載された発明といえないし、さらに、甲第21号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
(3)取消理由2(特許法第29条の2に関する取消理由)について
ア 本件発明1と先願3発明とを対比すると、先願3発明の「ジヒドラジド化合物」、「アルデヒド系ガス吸着液」は、それぞれ、本件発明1の「ヒドラジン化合物(a)」、「臭気物質の吸着剤」に相当するから、両者は、「ヒドラジン化合物(a)を含有する臭気物質の吸着剤」である点で一致し、本件発明1は「グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である」「アミノ酸(b3)又はその塩」を含有しているのに対して、先願3発明はアミノ酸を含有することを明示してない点で相違している。
上記相違点について検討すると、先願3明細書等には、上記3(4)ウのとおり、先願3発明のアルデヒド系ガス吸着液と、それ以外のアルデヒド系ガス吸着剤であるグリシンと一緒に用いてもよいことが記載されているが、「ただし、金属酸化物ゾルに加えるとゲル化や変色などの問題もあるため、1液の吸着液にせず、塗布加工は別としたほうが良い。」と記載され、グリシンを先願3発明のアルデヒド系ガス吸着液に含有させないことが記載されている。
よって、上記相違点は実質な相違点であるから、本件発明1は、先願3明細書等に記載された発明と同一であるといえない。
イ 本件発明1を引用する本件発明12、16及び17は、上記アと同様であるから、先願3明細書等に記載された発明と同一であるといえない。
ウ 本件発明18と先願3方法発明とを対比すると、少なくとも上記アで示した点が相違するから、上記アで検討したと同様に、本件発明18は、先願3明細書等に記載された発明と同一であるといえない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 本件発明1、12、16~18について
特許異議申立人は、本件発明1、12、16及び17は、甲第1号証(特開2006-116093号公報)、甲第2号証(特開平11-91060号公報)、甲第4号証(特開2007-297535号公報)、甲第6号証(特開2002-338897号公報)、甲第7号証(特開2006-88383号公報)、甲第8号証(特開2015-147211号公報)または甲第9号証(特開2013-63635号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
また、特許異議申立人は、本件発明18は、甲第1号証、甲第2号証または甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
この点について検討すると、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証及び甲第9号証には、吸着剤の成分としてのヒドラジン化合物またはアミノ酸を含有することの網羅的な記載(甲第1号証の段落【0011】、甲第2号証の段落【0053】、甲第4号証の段落【0011】~【0012】、甲第6号証の段落【0008】~【0009】、甲第7号証の段落【0038】~【0039】、甲第8号証の【請求項2】、甲第9号証の段落【0028】参照)が示されているのみであり、ヒドラジン化合物とアミノ酸を組み合わせた吸着剤は具体的に記載されていないし、ヒドラジン化合物とアミノ酸を組み合わせる動機付けとなるような記載もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。
なお、甲第8号証の公開日は平成27年8月20日であって、本件特許に係る出願の優先日(平成27年4月14日)の後に公開されたものであるから、甲第8号証が公知文献であることを前提とする特許異議申立人の主張はそもそも妥当でない。
イ 本件発明2、3、12、16、17について
特許異議申立人は、本件発明2、3、12、16及び17は、甲第10号証(特開2005-137601号公報)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
この点について検討すると、甲第10号証には、吸着剤の成分としてのヒドラジン化合物またはイミダゾール化合物を含有することの網羅的な記載(段落【0070】参照)が示されているのみであり、ヒドラジン化合物とイミダゾール化合物を組み合わせた吸着剤は具体的に記載されていないし、ヒドラジン化合物とイミダゾール化合物を組み合わせる動機付けとなるような記載もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。
ウ 本件発明4~6、12、16、17、20について
特許異議申立人は、本件発明4、5、12、16、17及び20は、甲第7号証または甲第12号証(特開平11-99194号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
また、特許異議申立人は、本件発明6は、甲第7号証または甲第12号証に記載された発明、並びに、甲第10号証及び甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
この点について検討すると、甲第7号証及び甲12号証には、吸着剤の成分としてのヒドラジン化合物またはスルファミン酸を含有することの網羅的な記載(甲第7号証の段落【0009】及び【0038】、甲第12号証の段落【0014】参照)が示されているのみであり、ヒドラジン化合物とスルファミン酸を組み合わせた吸着剤は具体的に記載されていないし、ヒドラジン化合物とスルファミン酸を組み合わせる動機付けとなるような記載もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。
エ 本件発明9~17、22、23について
特許異議申立人は、本件発明9~12、16及び17は、甲第1号証、甲第4号証、甲第11号証、甲第14号証(特開2000-169757号公報)または甲第22号証(特開2010-240332号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
また、特許異議申立人は、本件発明14~17は、甲第1号証、甲第14号証または甲第22号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
さらに、特許異議申立人は、本件発明22及び23は、甲第1号証または甲第22号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを主張している。
この点について検討すると、甲第1号証、甲第4号証、甲第11号証、甲第14号証及び甲第22号証には、吸着剤の成分としてのヒドラジン化合物またはアミノアルコールを含有することの網羅的な記載(甲第1号証の段落【0011】、甲第4号証の段落【0011】~【0012】、甲第11号証の段落【0029】~【0030】、甲第14号証の段落【0014】~【0015】、甲第22号証の段落【0010】~【0011】参照)が示されているのみであり、ヒドラジン化合物とアミノアルコールを組み合わせた吸着剤は具体的に記載されていないし、ヒドラジン化合物とアミノアルコールを組み合わせる動機付けとなるような記載もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。
なお、甲第11号証の公開日は平成27年12月3日であって、本件特許に係る出願の優先日(平成27年4月14日)の後に公開されたものであるから、甲第11号証が公知文献であることを前提とする特許異議申立人の主張はそもそも妥当でない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6、9~20、22及び23に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項1~6、9~20、22及び23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項7、8及び21は、訂正により削除されたため、本件請求項7、8及び21に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701067