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特許異議申立

2017-701057

繊維強化熱可塑性樹脂成形品および繊維強化熱可塑性樹脂成形材料

審判番号
2017-701057
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-565713外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年11月10日
審決日
2018年10月05日
公報発行日
2019年01月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6123956号発明「繊維強化熱可塑性樹脂成形品および繊維強化熱可塑性樹脂成形材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6123956号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、8、9〕及び〔7-9〕について訂正することを認める。 特許第6123956号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 特許第6123956号の請求項9に係る特許に対する本件異議申立を却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨 1.本件特許の設定登録までの経緯 本件特許第6123956号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2016-565713号、以下「本願」という。)は、平成28年10月21日(優先権主張:平成27年10月30日、特願2015-214363号)の国際出願日にされたものとみなされる出願人東レ株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成29年4月14日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、平成29年5月10日に特許公報が発行されたものである。 2.本件異議申立の趣旨 本件特許につき平成29年11月10日付けで特許異議申立人村戸良至(以下「申立人」という。)により「特許第6123956号の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がなされた。 3.以降の手続の経緯 以降の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 2月 1日付け 取消理由通知 平成30年 4月 2日   意見書 平成30年 5月11日付け 取消理由通知(決定の予告) 平成30年 7月11日   訂正請求書・意見書(特許権者) 平成30年 7月24日付け 通知書(申立人あて) 平成30年 8月27日   意見書(申立人) 第2 申立人が主張する取消理由 申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第5号証を提示し、申立書における取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由1及び2が存するとしているものと認められる。 取消理由1:本件発明は、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明の記載を請求項1、6及び7に記載された範囲まで拡張又は一般化できないものであり、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1、6及び7並びに同各項を引用する請求項2ないし5、8及び9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2:本件発明1ないし9は、いずれも、甲第1号証又は甲第2号証のいずれかに記載された発明に基づき、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 ・申立人提示の甲号証 甲第1号証:特開2015-143339号公報 甲第2号証:国際公開2014/098103号 甲第3号証:特開2011-89060号公報 甲第4号証:特開平8-20651号公報 甲第5号証:特開2009-13331号公報 (以下、それぞれ「甲1」ないし「甲5」と略していうことがある。) 第3 当審が取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要 当審が平成30年5月11日付けで通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。 「当審は、特許権者が提出した意見書の内容を踏まえ、再度検討しても、 申立人が主張する上記取消理由1により、依然として、本件発明1ないし9についての特許はいずれも取り消すべきもの、 と判断する。・・(中略)・・ 1.取消理由1についての検討 ・・(中略)・・ したがって、本件の請求項1ないし9の記載は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていない。 2.特許権者の主張について ・・(中略)・・ (d)してみると、特許権者の上記主張は、根拠を欠くものであって、本件特許明細書の記載に基づかないものであり、採用することができず、当審の上記1.の検討結果を左右するものではない。 3.当審の判断のまとめ 以上のとおり、本件の請求項1ないし9に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(取消理由1)から、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」 第4 平成30年7月11日付け訂正請求の適否 1.訂正請求の内容 上記平成30年7月11日付け訂正請求では、本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1ないし5、請求項6及び8並びに請求項7及び8についてそれぞれ一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、以下の(ア)ないし(キ)の訂正事項を含むものである。(なお、下線は、当審が付したもので訂正箇所を表す。) (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項5を「前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。」に訂正する。 (イ)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6を「炭素繊維(A)、有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を10~94重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmであり、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」に訂正する。 (ウ)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7を「炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を35~94重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(H)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(H)より低い化合物(I)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(H)を35~94重量部、化合物(I)を1~25重量部含み、前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmである有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」に訂正する。 (エ)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8を「前記繊維強化熱可塑性樹脂成形材料中における前記有機繊維(B)のアスペクト比(LB/dB)が10~500である、請求項6または7に記載の成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」に訂正する。 (オ)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (カ)訂正事項6 明細書の段落【0008】を「また、本発明の成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、次のいずれかの構成を有する。すなわち、炭素繊維(A)、有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を10~94重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmであり、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料、または、 炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を35~94重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(H)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(H)より低い化合物(I)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(H)を35~94重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(I)を1~25重量部含み、前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmである有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料、である。」に訂正する。 (キ)訂正事項7 明細書の段落【0108】を「次に、本発明の成形品を得るために適した、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(「成形材料」という場合がある)について説明する。本発明においては、(1)炭素繊維(A)、有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部(5重量部以上45重量部以下)、有機繊維(B)を1~45重量部(1重量部以上45重量部以下)、熱可塑性樹脂(C)を10~94重量部(10重量部以上94重量部以下)、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部(1重量部以上25重量部以下)含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μm(35μm以上300μm以下)であり、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(以下、「第一の態様の成形材料」という場合がある)や、(2)炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部(5重量部以上45重量部以下)、熱可塑性樹脂(C)を35~94重量部(35重量部以上94重量部以下)、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部(1重量部以上25重量部以下)含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(H)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(H)より低い化合物(I)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1~45重量部(1重量部以上45重量部以下)、熱可塑性樹脂(H)を35~94重量部(35重量部以上94重量部以下)、化合物(I)を1~25重量部(1重量部以上25重量部以下)含み、有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μm(35μm以上300μm以下)である有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(以下、「第二の態様の成形材料」という場合がある)を、本発明の成形品を得るための成形材料として好適に用いることができる。」に訂正する。 2.検討 なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし9を「旧請求項1」ないし「旧請求項9」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし9を「新請求項1」ないし「新請求項9」という。 (1)訂正の目的要件について 上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。 上記訂正事項1に係る訂正は、旧請求項5における有機繊維に係る並列選択枝の一部を削除すると共に、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき熱可塑性樹脂の種別に係る事項を直列的に付加して減縮し新請求項5としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 上記訂正事項2ないし4に係る訂正は、旧請求項6及び7について、それぞれ、旧請求項9及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、有機繊維の種別、熱可塑性樹脂の種別並びに有機繊維及び炭素繊維の平均繊維長に関する事項を直列的に付加して減縮し新請求項6及び7としたものであり、旧請求項6及び7を引用する旧請求項8についても、上記減縮に伴い減縮され新請求項8となっているものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。(なお、「成形品用」なる事項を付加する点については、「成形材料」が、もともと「成形するための材料」、すなわち「成形品を製造するための材料」を意味するものと認められるから、「成形品用」なる事項を付加したとしてもそれ自体で特許請求の範囲が減縮されるものとは認められない。) 上記訂正事項5に係る訂正は、旧請求項9に記載された事項の全てを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかである。 上記訂正事項6及び7に係る訂正は、それぞれ、上記訂正事項2ないし4に係る訂正により特許請求の範囲が減縮された新請求項6及び7に記載された事項と不整合となる明細書の記載を単に正したものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 したがって、上記訂正事項1ないし7による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものである。 (2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について 上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし5に係る訂正により、新請求項5ないし9の特許請求の範囲が旧請求項5ないし9に記載された事項に対して減縮されていることが明らかであり、訂正事項6及び7に係る訂正は、訂正事項2ないし4に係る訂正により対応関係が不明瞭となった明細書の記載につき単に正したものであるから、上記訂正事項1ないし7による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。 してみると、上記訂正事項1ないし7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。 (3)一群の請求項等について 本件訂正前の旧請求項2ないし5は、いずれも旧請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、また、旧請求項8及び9は、旧請求項6又は7を択一的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1ないし5、請求項6、8及び9並びに請求項7ないし9は、それぞれ、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 さらに、上記訂正事項6及び7に係る訂正は、上記訂正事項2ないし4に係る訂正により特許請求の範囲が減縮された新請求項6及び7に記載された事項と不整合となる明細書の記載に係る訂正であって、請求項6、8及び9並びに請求項7ないし9の各一群の請求項の全てについて訂正されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定を満たすものである。 (4)訂正に係る検討のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、8〕及び〔7、8〕について訂正を認める。 第5 本件特許に係る請求項に記載された事項 本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし9には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 炭素繊維(A)、有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を10~94重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、 繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、 繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmであり、数平均繊維径(dB)が35~300μmである繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 【請求項2】 前記繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)のアスペクト比(LB[μm]/dB[μm])が5~100である、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 【請求項3】 前記繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の換算本数nAに対する前記有機繊維(B)の換算本数nBの比(nB/nA)が0.001~0.01である、請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 【請求項4】 前記繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が50~150μmである、請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 【請求項5】 前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 【請求項6】 炭素繊維(A)、有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を10~94重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmであり、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。 【請求項7】 炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を35~94重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~25重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(H)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(H)より低い化合物(I)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(H)を35~94重量部、化合物(I)を1~25重量部含み、前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmである有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であり、前記有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、前記熱可塑性樹脂(C)がポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂より選択される少なくとも1種であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。 【請求項8】 前記繊維強化熱可塑性樹脂成形材料中における前記有機繊維(B)のアスペクト比(LB/dB)が10~500である、請求項6または7に記載の成形品用繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。 【請求項9】 (削除)」 (以下、上記請求項1ないし9に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明9」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。) 第6 当審の判断 当審は、 当審が通知した取消理由については理由がなく、また、申立人が主張する上記取消理由1及び2についてもいずれも理由がないから、本件発明1ないし8についての特許は取り消すことはできず、維持すべきものである、 本件の請求項9に係る特許に対する異議の申立ては、同項の記載事項が上記第4で説示した理由により適法なものと認められる訂正により全て削除されたことにより、申立ての対象を欠く不適法なものとなったところ、当該不適法とされる点は、その補正ができないものであるから、請求項9に係る特許に対する本件異議申立は、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである、 と判断する。以下、詳述する。 I.当審が取消理由通知で通知した理由について 1.通知した理由の内容 当審が上記取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由に係る検討内容は、要約すると以下のとおりである。 「本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載(【0005】~【0006】等)からみて、本件特許に係る発明の解決課題は、「衝撃強度および表面外観に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品」及び「樹脂成形材料」の提供にあるものといえる。 しかるに、本件の各請求項の記載を検討すると、本件請求項1では、炭素繊維の平均繊維長及び有機繊維の平均繊維長並びに数平均繊維径が規定されているのみであり、また、本件請求項6及び7では、有機繊維の数平均繊維径が規定されているのみ(なお、炭素繊維及び有機繊維の平均繊維長については規定されていない。)であり、有機繊維の材料種別及び熱可塑性樹脂の種別については規定されておらず、請求項1、6又は7を引用する請求項5又は9において、有機繊維の材料種別が4種から選択されることに規定されているのみである。 そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、実施例(比較例)に係る部分以外の部分(【0001】~【0152】)の記載を検討すると、いかなる種別の炭素繊維、有機繊維及び熱可塑性樹脂(並びに化合物(D))を使用した場合であっても、本件の上記各請求項に記載された事項を具備することにより、上記課題を解決できる、すなわち従来の繊維強化熱可塑性樹脂組成物を使用した成形品に比して、その衝撃強度及び表面外観がいずれも改善されるであろうと当業者が認識できるような作用機序につき記載されていない。 なお、申立人が申立書第12頁下から第6行ないし第17頁第6行で主張するとおり、繊維強化熱可塑性樹脂組成物又はその成形品の技術分野において、繊維自体の物性、熱可塑性樹脂の物性、繊維と熱可塑性樹脂との相互作用(繊維の配向状態、繊維と樹脂との親和性など)、成形方法により、樹脂組成物又はその成形品の耐衝撃性などの物性及び成形品表面外観が有意に変化することは、特に論証するまでもなく、当業者の技術常識であるものと認められる。 してみると、本件明細書の上記部分の記載では、本件発明が、各請求項記載の事項を具備することにより、上記解決課題を解決できると当業者が認識することはできないものである。 また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、実施例(比較例)に係る部分(【0153】~【0217】)の記載を検討すると、単一種の炭素繊維、6種のPET有機繊維及びそれぞれ単一種のPP又はPCである熱可塑性樹脂を組み合わせた場合に係る極めて限られた実施例(及び比較例)が記載されているのみであり、当該実施例(及び比較例)に係る記載からみて、当該限られた場合においては、実施例の「成形品」の場合に衝撃強度及び「成形品表面外観」(この点については下記2.(b)参照。)が改善されている傾向にあることは一応確認できるものの、本件の各請求項に記載された事項を具備する場合につき、成形品の衝撃強度及び表面外観のいずれもが従来の繊維強化熱可塑性樹脂組成物を使用した場合に比して改善されているか否かを当業者が客観的に認識することができるものではない。 さらに、当該限られた実験例である実施例1と比較例5及び6の各結果を対比すると、各例とも「成形材料」の点では同一であり、請求項6又は7に記載された事項を具備するものであると理解されるところ、成形方法の差異によって、「成形品」となった時点で、衝撃強度につき有意な差異(比較例5及び6が明らかに劣っている。)が発現していることが看取できるから、特に、炭素繊維及び有機繊維の繊維長に係る規定がない請求項6及び7に記載された事項を具備する発明であれば、たとえ成形品とした場合に請求項1における炭素繊維及び有機繊維の繊維長に係る規定を満たさない場合(例えば有機繊維の繊維長が0.5mm未満となった場合)であっても、成形品の衝撃強度及び表面外観のいずれもが従来の繊維強化熱可塑性樹脂組成物を使用した場合に比して改善されるであろうと当業者が認識することができるものではない。 してみると、本件明細書の上記実施例に係る部分の記載では、本件発明が、各請求項記載の事項を具備することにより、上記解決課題を解決できると当業者が認識することはできないものである。 さらに、本願の出願日(優先日)前の当業者において、本件の各請求項に記載された事項を具備する場合につき、成形品の衝撃強度及び表面外観のいずれもが従来の繊維強化熱可塑性樹脂組成物に比して改善されるであろうと認識すべき技術常識が存するものとも認められない。 以上を総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、たとえ当業者の技術常識に照らしても、本件の各請求項に記載された事項を具備する場合に、本件発明に係る上記課題を解決できるであろうと当業者が認識することができるように記載したものということはできないから、本件発明1、6及び7並びにそれらを引用する本件発明2ないし5、8及び9が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということはできない。(知財高裁平成17年(行ケ)10042号判決参照。) したがって、本件の請求項1ないし9の記載は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていない。」 2.検討 上記1.で示した理由について、訂正された本件請求項1ないし8の記載に対する当否を以下検討する。 (1)請求項5ないし8について まず、請求項5ないし8の各記載につき検討すると、上記第4で示したとおりの理由により適法にされたものと認められる本件訂正により、請求項5では、引用する請求項1に記載された炭素繊維の平均繊維長並びに有機繊維の平均繊維長及び数平均繊維径に係る各事項に加えて、請求項5に訂正前に記載されていた有機繊維の材料種別及び熱可塑性樹脂の種別に係る事項を概ね実施例で使用されている範囲に限定されており、また、本件請求項6ないし8では、訂正前に記載されていた有機繊維の数平均繊維径に係る事項に加えて、炭素繊維及び有機繊維の平均繊維長に係る事項が付加されると共に、概ね実施例で使用されている範囲の有機繊維の材料種別及び熱可塑性樹脂の種別に係る事項についても付加されているから、請求項5ないし8に記載された事項で特定される発明は、明細書の発明の詳細な説明における実施例に係る記載により概ね裏付けられた範囲となったものと認められる。 そして、明細書の発明の詳細な説明における実施例(及び比較例)に係る対比からみて、当該実施例の「成形品」の場合に衝撃強度及び「成形品表面外観」が改善されている傾向にあることは一応確認できるのであるから、当該実施例を含めた本件訂正後の明細書(以下「本件訂正明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載された事項に基づいて、請求項5ないし8に記載された事項を具備する発明が、本件発明に係る解決課題を解決できるであろうと当業者が認識することができるものと認めるのが自然である。 したがって、請求項5ないし8に記載された事項を具備する発明は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができ、特許法第36条第6項第1号に適合する。 (2)請求項1ないし4について 請求項1ないし4の各記載につき検討すると、請求項1ないし4は、上記本件訂正による訂正がされておらず、請求項1ないし4につき、先の取消理由通知(決定の予告)において示した取消理由が直ちに解消されているものではない。 しかるに、特許権者は、平成30年7月11日付け意見書において、本件訂正明細書の【0048】における「有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35μm未満の場合、数平均繊維径(dB)が35μm以上の有機繊維と比較して、同じ重量でもより多い本数の有機繊維が成形品中に存在することになり、有機繊維同士の絡み合いを抑制しにくく、成形品の表面外観を向上させることができない。・・(中略)・・一方、有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が300μmを超えると、成形品表面で繊維の凹凸が目立つようになり、結果として表面外観が低下する。」との記載に基づいて、他の条件が同一の有機繊維において、繊維径の大小により繊維の絡み合いの発生が大きく左右され、繊維径が小さくなれば絡み合いが起きやすくなり、繊維が絡み合うことによりいわゆるだんご状となり空隙を持つ部分となって、成形収縮により凹部を形成する原因となり、当該「だんご状」部分が成形品の表面付近に存在することにより成形品の表面外観が悪化するとの繊維径の大小による絡み合いの発生に係る作用機序につき説明・主張している(意見書5/7頁第10行~第36行)。 そして、特許権者が主張する上記作用機序に係る説明・主張につき検討すると、特別な事情が存する場合(例えば、成形温度において有機繊維の破断、融解などが起きる場合、有機繊維が剛直で屈曲が起きない場合等)を除き、上記作用機序につき首肯できるものであって、当該作用機序を否定できるような技術常識が存するものとも認められないから、本件訂正明細書の【0048】の記載に接した当業者は、当該作用機序に基づき、有機繊維の繊維径を適当な範囲のものとすることにより、有機繊維同士の絡み合いを制御し、成形品の表面外観を向上させることができるであろうと認識することができるものと理解するのが自然である。 してみると、請求項1ないし4についても、本件訂正明細書の発明の詳細な説明において、各項に記載された事項を具備する発明が、本件発明に係る解決課題が解決されるであろうと当業者が認識できるように記載されたものということができるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものと認められる。 (3)小括 以上のとおり、本件訂正後の請求項1ないし8の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たすものである。 3.まとめ よって、本件訂正後の請求項1ないし8に係る記載については、当審が通知した取消理由は理由がない。 II.申立人が主張する取消理由について 申立人が主張する上記取消理由につき、再度検討する。 1.取消理由1について 申立人が主張する取消理由1は、当審が通知した取消理由と同旨のものと認められるところ、上記I.で説示した理由により、本件訂正後の請求項1ないし8に係る記載については、理由がない。 なお、申立人は、平成30年8月27日付けの意見書において、取消理由1につき、要約すると、本件訂正明細書の発明の詳細な説明においては、限られた繊維及び樹脂を用いて得た特殊形態の成形材料を中間材料として用い、それを更に限られた条件にて射出成形した成形品についてのみ、効果が確認されているに過ぎず(「指摘事項1」及び「指摘事項2」)、各成分の種別(特に有機繊維の種別、引張破断強度、密度等)、繊維の分散度及び成形方法などにより、効果が得られない場合があることが想起できる(「指摘事項2」及び「指摘事項3」)から、本件の請求項1ないし8の記載では、いわゆるサポート要件に適合しない旨主張している(意見書第2頁~第34頁中段)。 しかしながら、上記I.でも説示したとおり、請求項1ないし4については、特に有機繊維の選択(繊維径)による効果に至る作用機序につき明確化され、その作用機序を否定するような技術常識等が存するものとは認められず、また、請求項5ないし8については、本件訂正明細書の実施例等で効果の発現の有無につき裏付けられるものと評価できる範囲まで、訂正により減縮されているから、請求項1ないし8の記載は、いわゆるサポート要件に適合すると認められるべきものであって、上記申立人の主張は、当該認定を覆すことができるような具体的挙証(追試結果等)又は技術説明を伴うものではなく、積極的にサポート要件に適合しないと評価すべきものでもないから、採用することができず、上記判断の結果を左右するものではない。 2.取消理由2について (1)甲1ないし5に記載された事項及び甲1及び甲2に記載された発明 以下、上記取消理由につき検討するにあたり、当該取消理由2は特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし5に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1及び甲2に記載された発明の認定を行う。 ア.甲1 (ア)甲1に記載された事項 上記甲1には、申立人が申立書第17頁下から第5行ないし第22頁第9行で指摘したとおりの事項を含めて、【特許請求の範囲】には、「炭素繊維(A)、引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20~93重量部、難燃剤(D)を1~20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」(【請求項1】)、「さらに、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(E)を、炭素繊維(A)、引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して1~20重量部含む請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」(【請求項4】)、「炭素繊維(A)と引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)を含む繊維束(F)に、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(E)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、複合体(G)内および/またはその外側に難燃剤(D)を含み、繊維束(F)断面において炭素繊維(A)と引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)が偏在し、繊維束(F)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである請求項4に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」(【請求項6】)、「請求項1~7のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を成形して得られる繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~1.5mmであり、かつ、炭素繊維(A)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DA)と平均繊維長(LA)が下記式[1]を満たし、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が1.5~4mmであり、かつ、有機繊維(B)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DB)と平均繊維長(LB)が下記式[2]を満たす繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 0.9×LA≦DA≦LA     [1] 0.1×LB≦DB≦0.9×LB [2]」(【請求項8】) がそれぞれ記載されており、【発明の詳細な説明】には、有機繊維(B)としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂など種々の樹脂からなる繊維が使用できるとともに、熱可塑性樹脂(C)の成形温度(溶融温度)に対して有機繊維(B)の溶融温度が30℃以上高いものを使用すること(【0033】)及び実施例として「テトロン2200T-480-705M」なる商品名の単糸繊度4.6dtex、融点260℃のポリエステル繊維を使用した場合(実施例3)につき記載されている(【0123】~【0127】、【0134】、【0137】、【0149】及び【0150】)が記載されている。 (イ)甲1に記載された発明 上記甲1には、上記(ア)の記載事項からみて、 「炭素繊維(A)、引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20~93重量部、難燃剤(D)を1~20重量部含み、さらに、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(E)を、炭素繊維(A)、引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および難燃剤(D)の合計100重量部に対して1~20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)と引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)を含む繊維束(F)に、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(E)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、複合体(G)内および/またはその外側に難燃剤(D)を含み、繊維束(F)断面において炭素繊維(A)と引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)が偏在し、繊維束(F)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである成形材料。」 に係る発明(以下「甲1発明1」という。)及び 「甲1発明1の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を成形して得られる繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~1.5mmであり、かつ、炭素繊維(A)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DA)と平均繊維長(LA)が下記式[1]を満たし、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が1.5~4mmであり、かつ、有機繊維(B)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DB)と平均繊維長(LB)が下記式[2]を満たす繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 0.9×LA≦DA≦LA     [1] 0.1×LB≦DB≦0.9×LB [2]」 に係る発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているものといえる。 イ.甲2 (ア)甲2に記載された事項 上記甲2には、申立人が申立書第22頁下段(【表3】)ないし第27頁第1行で指摘したとおりの事項を含めて、「請求の範囲」には、「炭素繊維(A)、有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20~94重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~1.5mmであり、かつ、炭素繊維(A)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DA)と平均繊維長(LA)が下記式[1]を満たし、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が1.5~4mmであり、かつ、有機繊維(B)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DB)と平均繊維長(LB)が下記式[2]を満たす繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 0.9×LA≦DA≦LA      [1] 0.1×LB≦DB≦0.9×LB  [2]」([請求項1])、 「前記有機繊維(B)がポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリーレンスルフィド繊維およびフッ素樹脂繊維からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。」([請求項5])、「炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20~93重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」([請求項7])、「炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を94~35重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~20重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(G)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(G)より低い化合物(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(G)を94~35重量部、化合物(H)を1~20重量部含む有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」([請求項10])及び「前記有機繊維(B)がポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリーレンスルフィド繊維およびフッ素樹脂繊維からなる群より選択される少なくとも1種である請求項7~17のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」([請求項18])がそれぞれ記載されており、「明細書」には、有機繊維(B)としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂など種々の樹脂からなる繊維が使用できるとともに、熱可塑性樹脂(C)の成形温度(溶融温度)に対して有機繊維(B)の溶融温度が30℃以上高いものを使用すること([0039])及び実施例として「テトロン2200T-480-705M」なる商品名の単糸繊度4.6dtex、融点260℃のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維を使用した場合(実施例11)につき記載されている([0124]~[0128]及び[0138][表1]ないし[表3])が記載されている。 (イ)甲2に記載された発明 上記甲2には、上記(ア)の記載からみて、 「炭素繊維(A)、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリーレンスルフィド繊維およびフッ素樹脂繊維からなる群より選択される少なくとも1種の有機繊維(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20~94重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~1.5mmであり、かつ、炭素繊維(A)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DA)と平均繊維長(LA)が下記式[1]を満たし、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が1.5~4mmであり、かつ、有機繊維(B)の始点から終点までの平均繊維端部間距離(DB)と平均繊維長(LB)が下記式[2]を満たす繊維強化熱可塑性樹脂成形品。 0.9×LA≦DA≦LA      [1] 0.1×LB≦DB≦0.9×LB  [2]」 に係る発明(以下「甲2発明1」という。)、 「炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリーレンスルフィド繊維およびフッ素樹脂繊維からなる群より選択される少なくとも1種である有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を20~93重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を含む繊維束(E)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、繊維束(E)断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在し、繊維束(E)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」 に係る発明(以下「甲2発明2」という。)及び 「炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5~45重量部、熱可塑性樹脂(C)を94~35重量部、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を1~20重量部含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(F)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリーレンスルフィド繊維およびフッ素樹脂繊維からなる群より選択される少なくとも1種である有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(G)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(G)より低い化合物(H)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1~45重量部、熱可塑性樹脂(G)を94~35重量部、化合物(H)を1~20重量部含む有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」 に係る発明(以下「甲2発明3」という。)が記載されているものといえる。 ウ.甲3ないし甲5に記載された事項 (ア)甲3に記載された事項 上記甲3には、申立人が申立書第27頁第4行ないし第19行で指摘したとおりの事項を含めて、「a)単糸繊維径が20~100μm、繊維長が0.8~15mmであること」との「要件を満足する繊維を含むことを特徴とする繊維強化樹脂複合体。」(【請求項1】)、「本発明の繊維強化樹脂複合体に使用する(補強材)繊維の繊維長は0.8~15mm」「で、繊維径は20~100μm」「のものを用いる必要があ」り、「繊維の繊維長が0.8mm未満や繊維径が100μmを超える場合は、繊維が均一に分散するものの、樹脂との接着が不足して強度や耐久性に乏しくな」り、「逆に繊維長が15mmを超えたり、繊維径が20μm未満であると、繊維同士の絡まりが発生し、樹脂中で繊維が均一に存在せず十分な補強効果が得られない」こと(【0011】)及び「上記繊維強化樹脂複合体に使用する繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、鋼繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、セルロース繊維、パルプ繊維等の有機繊維のいずれをも使用することができる」こと(【0016】)がそれぞれ記載されている。 (イ)甲4に記載された事項 上記甲4には、申立人が申立書第27頁第22行ないし第26行で指摘したとおりの事項を含めて、「少なくとも4.0GPaの引張強度と少なくとも140GPaの初期引張弾性率を有し、且つボイド直径が35Å以下のポリベンザゾール繊維を主たる補強材としたことを特徴とする繊維強化複合材料。」(【請求項1】)において、「ポリベンザゾール繊維の単糸繊度に特に制限はないが通常0.3~10デニールの範囲が好ましい。単糸繊度を下げて繊維本数を多くすると複合材にした時に外力が分散して衝撃強度は向上する」こと及び「他方、単糸繊度が太くすると紡出糸中のポリリン酸の除去に要する時間が長くなり糸条洗浄装置の長大化と糸掛け操作性の低下につながる」と共に「同一ヤーン繊度の場合、単糸繊度を太くすれば繊維本数は減ることになり複合材にした時に外力は分散しにくくなり衝撃強度が低下する」こと(【0010】)が記載されている。 (ウ)甲5に記載された事項 上記甲5には、申立人が申立書第28頁第3行ないし第6行で指摘したとおりの事項を含めて、「プロピレン系樹脂である」「オレフィン系樹脂、」「ポリエステル繊維またはポリアミド繊維である」「有機長繊維、炭素繊維を含有して成り、オレフィン系樹脂100重量部に対する、有機長繊維の割合が10~150重量部、炭素繊維の割合が0.1~30重量部であることを特徴とする長繊維強化複合樹脂組成物。」(【請求項1】、【請求項2】及び【請求項7】)において、「有機長繊維の繊維径が太すぎると成形品のアイゾット衝撃強度が低下する」「一方、繊維径が細すぎても何ら問題はなく、ナノサイズの繊維まで使用可能と思われ、成形品の用途によっては良好な結果をもたらす」こと(【0020】)が記載されている。 (2)対比・検討 以下、事案に鑑み、まず、本件発明6及び7(並びに本件発明8)につき、各甲号証に記載された発明と個々に対比・検討し、さらに本件発明1(及び本件発明2ないし5)につき対比・検討する。 ア.本件発明6ないし8について (ア)甲1発明1に基づく対比・検討 (a)対比 本件発明6と甲1発明1とを対比すると、下記の相違点1で明らかに相違し、その余で実質的に一致するものと認められる。 また、本件発明7と甲1発明1とを対比すると、下記相違点1’に加えて下記相違点2で明らかに相違し、その余で一致するものと認められる。 相違点1:本件発明6では「前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmであり」、「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである」のに対して、甲1発明1では、「成形材料」中の上記「有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)」並びに「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における・・炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)」及び「有機繊維(B)の平均繊維長(LB)」につき特定されていない点 相違点1’:本件発明7では「前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmである」及び「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである」のに対して、甲1発明1では、「成形材料(Y)」中の上記「有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)」並びに「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における・・炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)」及び「有機繊維(B)の平均繊維長(LB)」につき特定されていない点 相違点2:「成形材料」につき、本件発明7では「炭素繊維(A)・・、熱可塑性樹脂(C)・・、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(D)を・・含み、炭素繊維(A)に化合物(D)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(H)および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(H)より低い化合物(I)・・を・・含み、前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmである有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)とを含む」のに対して、甲1発明1では、「炭素繊維(A)と引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)を含む繊維束(F)に、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い化合物(E)を含浸させてなる複合体(G)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含み、複合体(G)内および/またはその外側に難燃剤(D)を含み、繊維束(F)断面において炭素繊維(A)と引張破断伸度が10~50%である有機繊維(B)が偏在し、繊維束(F)の長さと繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さが実質的に同じである」点 (b)検討 (b-1)相違点1及び1’について 上記相違点1及び1’につき併せて検討すると、上記(1)ウ.で示した甲3ないし甲5にも記載されているとおり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の技術分野において、強化繊維である有機繊維の繊維径につき、その成形材料から形成される成形品の機械的強度などに係る所望に応じて、繊維径を調節すべきであることは、当業者の技術常識であると理解できるものの、本件発明においては、当該繊維径を「35~300μm」なる特定の範囲とすることにより、成形品の機械的強度のみならず、特に35μm未満の場合(本願訂正明細書の「比較例1」及び「比較例7」参照。)に比して表面外観につき改善されているのであるから、甲1発明1において、成形材料における有機繊維の繊維径につき、上記「35~300μm」なる特定の範囲、特に下限を「35μm」とすることは、上記当業者の技術常識に照らしたとしても、当業者が適宜なし得ることということはできない。 (b-2)小括 してみると、上記相違点1又は1’は、たとえ甲2ないし甲5の記載に照らしたとしても、甲1発明1において、当業者が適宜なし得たものということはできない。 (c)甲1発明1に基づく対比・検討のまとめ したがって、上記相違点2につき検討するまでもなく、本件発明6又は7は、甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (イ)甲2発明2又は3に基づく対比・検討 (a)対比 上記甲2発明2と本件発明6及び甲2発明3と本件発明7とをそれぞれ対比すると、いずれも下記の相違点1’’で明らかに相違し、その余で実質的に一致するものと認められる。 相違点1’’:本件発明6及び7では「前記有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)が35~300μmであ」る及び「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmであ」るのに対して、甲2発明2又は3では、上記「有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)」並びに「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における・・炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)」及び「有機繊維(B)の平均繊維長(LB)」につき特定されていない点 (b)検討 上記相違点1’’につき検討すると、上記(1)ウ.で示した甲3ないし甲5にも記載されているとおり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の技術分野において、強化繊維である有機繊維の繊維径につき、その成形材料から形成される成形品の機械的強度などに係る所望に応じて、繊維径を調節すべきであることは、当業者の技術常識であると理解できるものの、本件発明においては、当該繊維径を「35~300μm」なる特定の範囲とすることにより、成形品の機械的強度のみならず、特に35μm未満の場合(本願訂正明細書の「比較例1」及び「比較例7」参照。)に比して表面外観につき改善されているのであるから、甲2発明2又は3において、成形材料における有機繊維の繊維径につき、上記「35~300μm」なる特定の範囲、特に下限を「35μm」とすることは、上記当業者の技術常識に照らしたとしても、当業者が適宜なし得ることということはできない。 以上のとおり、上記相違点1’’は、たとえ甲1及び甲3ないし甲5の記載に照らしたとしても、甲2発明2又は3において、当業者が適宜なし得たものということはできない。 (c)甲2発明2又は3に基づく対比・検討のまとめ したがって、本件発明6又は7は、甲2発明2又は3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (ウ)本件発明6又は7についての検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明6又は7及び同各発明を引用する本件発明8は、甲1又は2に記載された発明あるいは同各発明に甲3ないし5に記載された当業者の技術常識を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 イ.本件発明1ないし5について (ア)甲1発明2に基づく対比・検討 (a)対比 本件発明1と甲1発明2とを対比すると、下記の相違点3でのみ明らかに相違し、その余で実質的に一致するものと認められる。 相違点3:本件発明1では「有機繊維(B)の・・数平均繊維径(dB)が35~300μmである」のに対して、甲1発明2では「有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)」につき特定されていない点 (b)検討 上記相違点3につき検討すると、上記(1)ウ.で示した甲3ないし甲5にも記載されているとおり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の技術分野において、強化繊維である有機繊維の繊維径につき、その成形材料から形成される成形品の機械的強度などに係る所望に応じて、繊維径を調節すべきであることは、当業者の技術常識であると理解できるものの、本件発明においては、当該繊維径を「35~300μm」なる特定の範囲とすることにより、成形品の機械的強度のみならず、特に35μm未満の場合(本願訂正明細書の「比較例1」及び「比較例7」参照。)に比して表面外観につき改善されているのであるから、甲1発明2において、成形材料における有機繊維の繊維径につき、上記「35~300μm」なる特定の範囲、特に下限を「35μm」とすることは、上記当業者の技術常識に照らしたとしても、当業者が適宜なし得ることということはできない。 なお、甲2に記載された事項に照らしても、本件発明1の上記相違点3における「有機繊維(B)の・・数平均繊維径(dB)が35~300μmである」との事項を想到すべき事項が存するものとは認められない。 (b-2)小括 してみると、上記相違点3は、たとえ甲2ないし甲5の記載に照らしたとしても、甲1発明2において、当業者が適宜なし得たものということはできない。 (c)甲1発明2に基づく対比・検討のまとめ したがって、本件発明1は、甲1発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (イ)甲2発明1に基づく対比・検討 (a)対比 上記甲2発明1と本件発明1とを対比すると、下記の相違点3’で明らかに相違し、その余で実質的に一致するものと認められる。 相違点3’:本件発明1では「有機繊維(B)の・・数平均繊維径(dB)が35~300μmである」のに対して、甲2発明1では「有機繊維(B)の数平均繊維径(dB)」につき特定されていない点 (b)検討 上記相違点3’につき検討すると、上記(1)ウ.で示した甲3ないし甲5にも記載されているとおり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の技術分野において、強化繊維である有機繊維の繊維径につき、その成形材料から形成される成形品の機械的強度などに係る所望に応じて、繊維径を調節すべきであることは、当業者の技術常識であると理解できるものの、本件発明においては、当該繊維径を「35~300μm」なる特定の範囲とすることにより、成形品の機械的強度のみならず、特に35μm未満の場合(本願訂正明細書の「比較例1」及び「比較例7」参照。)に比して表面外観につき改善されているのであるから、甲2発明1において、成形材料における有機繊維の繊維径につき、上記「35~300μm」なる特定の範囲、特に下限を「35μm」とすることは、上記当業者の技術常識に照らしたとしても、当業者が適宜なし得ることということはできない。 なお、甲1に記載された事項に照らしても、本件発明1の上記相違点3’における「有機繊維(B)の・・数平均繊維径(dB)が35~300μmである」との事項を想到すべき事項が存するものとは認められない。 以上のとおり、上記相違点3’は、たとえ甲1及び甲3ないし甲5の記載に照らしたとしても、甲2発明1において、当業者が適宜なし得たものということはできない。 (c)甲2発明1に基づく対比・検討のまとめ したがって、本件発明1は、甲2発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (ウ)本件発明1ないし5についての検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1及び同発明を引用する本件発明2ないし5は、甲1又は2に記載された発明あるいは同各発明に甲3ないし5に記載された当業者の技術常識を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3)取消理由2についての検討のまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし8は、甲1発明1及び2並びに甲2発明1ないし3、すなわち、甲1に記載された発明並びに甲2に記載された発明に基づいて、たとえ甲3ないし甲5に記載された当業者の技術常識を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 よって、申立人が主張する取消理由2は、理由がない。 3.新たな取消理由について 申立人は、平成30年8月27日付けの意見書において、本件訂正後の請求項6ないし8の記載では、同各項記載の発明が明確でないとして、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないとする旨(いわゆるクレームの明確性違反)の新たな取消理由につき主張している(意見書第34頁第17行ないし第35頁第10行)ので、念のため検討する。 申立人が主張する上記理由は、要約すると、成形後の成形品中における炭素繊維及び有機繊維の各繊維長は、成形前の成形材料における各繊維長及び成形時の成形条件などにより変動するものであるところ、上記本件訂正で請求項6及び7にそれぞれ加入された「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである」との事項が、成形前の「成形材料」に係る本件発明6又は7のいかなる技術事項を特定するのか不明であるという点に基づくものと認められる。 しかるに、成形前の「成形材料」に係る本件発明6又は7について、上記「繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記炭素繊維(A)の平均繊維長(LA)が0.3~3mmであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における前記有機繊維(B)の平均繊維長(LB)が0.5~5mmである」との事項を訂正により加入することは、請求項6又は7に記載された他の事項を具備する「成形材料」につき、当業界慣用の成形方法により成形する場合、その成形方法の種別・条件等を問わず、当然に当該成形品における繊維長に係る各事項を具備する「成形材料」に意図的に限定したものと理解するのが自然であり、例えば、当業界慣用の成形方法により成形する場合であっても、その成形方法の種別・条件等により、上記成形品における繊維長に係る各事項を具備するかしないかが変化するような「成形材料」については、除外されたものと理解するのが自然である。 してみると、本件の請求項6又は7並びに同各項を引用する請求項8の記載では、同各項に記載された事項で特定される発明(本件発明6ないし8)が明確であり、特に明確でないとすべき理由が存するものとも認められない。 したがって、申立人が主張する上記新たな取消理由は、理由がない。 4.申立人が主張する取消理由に係る検討のまとめ 以上のとおり、申立人が主張する上記取消理由1及び2並びに上記新たな取消理由につき、いずれも理由がない。 III.当審の判断のまとめ 以上のとおり、申立人が主張する取消理由及び当審が通知した取消理由は、いずれも理由がないから、本件訂正後の請求項1ないし8に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、申立人が主張する理由及び提示した証拠によっては、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許を取り消すことができない。 また、ほかに本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件の請求項9に対する異議の申立ては、適法な訂正によりその内容が全て削除されたから、申立ての対象を欠くものであり、不適法なものであるから、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701057

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