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特許異議申立

2017-700817

高温環境用セメント組成物、および高温環境用コンクリート

審判番号
2017-700817
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-565710
登録番号
特許第6086465号(P6086465)
請求日
2017年08月31日
審決日
2020年03月27日
公報発行日
2020年08月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】太平洋セメント株式会社
  • 【権利者代理人】新井 範彦
  • 【異議申立人】廣瀬 敏一
  • 【異議申立人】一條 淳
  • 【異議申立人】浜 俊彦
審判長/審判官
  • 審判長 豊永 茂弘
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.537-ZAA(C04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6086465号発明「高温環境用セメント組成物、および高温環境用コンクリート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6086465号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6086465号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 特許第6086465号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6086465号の請求項1~6に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)9月6日を国際出願日とする出願であって、平成29年2月10日にその特許権の設定登録がされ、平成29年3月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について3件の特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。 平成29年 8月31日付け 特許異議申立人廣瀬敏一(以下、「申立人1              」という。)による特許異議の申立て 平成29年 9月 1日付け 特許異議申立人一條淳(以下、「申立人2」 という。)による特許異議の申立て 平成29年 9月 1日付け 特許異議申立人浜俊彦(以下、「申立人3」 という。)による特許異議の申立て 平成29年12月27日付け 取消理由通知 平成30年 3月 8日付け 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成30年 4月27日付け 申立人1~3による意見書の提出 平成30年 9月20日付け 取消理由通知 平成30年11月22日付け 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成31年 2月 6日付け 申立人1による意見書の提出 平成31年 3月28日付け 特許権者に対する審尋 平成31年 4月25日付け 特許権者による回答書の提出 令和 1年 7月18日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和 1年 9月20日付け 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 1年11月13日付け 申立人1による意見書の提出 令和 1年12月20日付け 特許権者に対する審尋 なお、令和 1年12月20日付けの特許権者に対する審尋に対して、指定した期間内に特許権者からの応答はなかった。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 令和1年9月20日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(28)のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す)。 なお、平成30年11月22日付け及び平成30年 3月 8日付けの訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「高温環境用セメント組成物」とあるのを、「セメント組成物」に訂正する(二箇所)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2~5に「高温環境用セメント組成物」とあるのを、それぞれ「セメント組成物」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記フライアッシュの含有率が15~55質量%である、」とあるのを、「前記フライアッシュの含有率が15~55質量%であり、かつ、マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート用の」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「フライアッシュのブレーン比表面積が2500~6000cm2/g」とあるのを、「フライアッシュのブレーン比表面積が2900~4000cm2/g」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に「フライアッシュを975±25℃で15分間加熱した後の、フライアッシュの質量減少率が5質量%以下」とあるのを、「フライアッシュを975±25℃で15分間加熱した後の、フライアッシュの質量減少率が2.2~4.0質量%」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1に「フライアッシュ中のSiO2の含有率が50質量%以上」とあるのを、「フライアッシュ中のSiO2の含有率が 51.3~63.1質量%」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項1に「フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が0.2~1.0」とあるのを、「フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が0.34~0.7」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項5に「下記の減水剤(R1)、該減水剤(R1)を除く減水剤(R2)、細骨材、粗骨材、および水を含む、高温環境用コンクリート。減水剤(R1):超遅延性減水剤、遅延形減水剤、遅延形AE減水剤、および遅延形高性能AE減水剤から選ばれる1種以上の減水剤。」とあるのを、「マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート。」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (10)訂正事項10 本件明細書の段落【0008】の[1]に「高温環境用セメント組成物」とあるのを、「セメント組成物」に訂正する(二箇所)。 (11)訂正事項11 本件明細書の段落【0008】の[2]~[5]に「高温環境用セメント組成物」とあるのを、それぞれ「セメント組成物」に訂正する。 (12)訂正事項12 本件明細書の段落【0008】の[1]に「前記フライアッシュの含有率が15~55質量%である、」とあるのを、「前記フライアッシュの含有率が15~55質量%であり、かつ、マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート用の」に訂正する。 (13)訂正事項13 本件明細書の段落【0008】の[1]に「フライアッシュのブレーン比表面積が2500~6000cm2/g」とあるのを、「フライアッシュのブレーン比表面積が2900~4000cm2/g」に訂正する。 (14)訂正事項14 本件明細書の段落【0008】の[1]に「フライアッシュを975±25℃で15分間加熱した後の、フライアッシュの質量減少率が5質量%以下」とあるのを、「フライアッシュを975±25℃で15分間加熱した後の、フライアッシュの質量減少率が2.2~4.0質量%」に訂正する。 (15)訂正事項15 本件明細書の段落【0008】の[1]に「フライアッシュ中のSiO2の含有率が50質量%以上」とあるのを、「フライアッシュ中のSiO2の含有率が51.3~63.1質量%」に訂正する。 (16)訂正事項16 本件明細書の段落【0008】の[1]に「フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が0.2~1.0」とあるのを、「フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が0.34~0.7」に訂正する。 (17)訂正事項17 本件明細書の段落【0008】の[5]に「下記の減水剤(R1)、該減水剤(R1)を除く減水剤(R2)、細骨材、粗骨材、および水を含む、高温環境用コンクリート。 減水剤(R1):超遅延性減水剤、遅延形減水剤、遅延形AE減水剤、および遅延形高性能AE減水剤から選ばれる1種以上の減水剤。」とあるのを、「マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート。」 (18)訂正事項18 本件明細書の段落【0008】に「[6]環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用される、前記[5]に記載の高温環境用コンクリート。」とあるのを、「[6](削除)」に訂正する。 (19)訂正事項19 本件明細書の段落【0018】に「本発明の高温環境用コンクリートは、前記高温環境用セメント組成物、減水剤(R1)、該減水剤(R1)を除く減水剤(R2)、細骨材、粗骨材、および水を含むコンクリートである。」とあるのを、「本発明の高温環境用コンクリートは、前記高温環境用セメント組成物、マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含むコンクリートである。」に訂正する。 (20)訂正事項20 本件明細書の段落【0019】に「本発明で用いる減水剤(R1)は、超遅延性減水剤、遅延形減水剤、遅延形AE減水剤、および遅延形高性能AE減水剤から選ばれる1種以上の減水剤である。」とあるのを、「本発明で用いる減水剤(R1)は、マスターポゾリス(登録商標)138Rである。」 に訂正する。 (21)訂正事項21 本件明細書の段落【0019】の「ここで、遅延形減水剤、遅延形AE減水剤、および遅延形高性能AE減水剤は、JISのA 6204(コンクリート用化学混和剤)に規定する減水剤である。」を削除する。 (22)訂正事項22 本件明細書の段落【0019】の「そして、本発明において、超遅延性減水剤は、前記JISのA 6204(コンクリート用化学混和剤)の遅延形減水剤よりも、高温環境用コンクリートの始発時間および/または終結時間の差分(遅延時間の間隔)が大きい減水剤をいう。」を削除する。 (23)訂正事項23 本件明細書の段落【0019】の「前記減水剤(R1)の減水成分は特に制限されず、例えば、リグニンスルホン酸、ナフタレンスンホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、およびこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。」を削除する。 (24)訂正事項24 本件明細書の段落【0019】に「また、減水剤(R1)は、前記減水成分に加えて、さらにクエン酸、酒石酸、およびショ糖等から選ばれる1種以上の凝結遅延剤を含んでもよい。」とあるのを、「また、減水剤(R1)は、さらにクエン酸、酒石酸、およびショ糖等から選ばれる1種以上の凝結遅延剤を含んでもよい。」に訂正する。 (25)訂正事項25 本件明細書の段落【0019】の「本発明で用いる減水剤(R1)は、好ましくは超遅延性減水剤または遅延形減水剤、より好ましくは超遅延性減水剤である。該超遅延性減水剤は、具体的には、BASF社製のマスターポゾリス(登録商標)No.89やBASF社製のマスターポゾリス(登録商標)138R等が挙げられる。」を削除する。 (26)訂正事項26 本件明細書の段落【0020】に「本発明で用いる減水剤(R2)は、前記減水剤(R1)を除く減水剤であり、具体的には、JISのA 6204(コンクリート用化学混和剤)に規定される標準形減水剤、標準形AE減水剤、高性能減水剤、および標準形高性能AE減水剤から選ばれる1種以上が挙げられる。」とあるのを、「本発明で用いる減水剤(R2)は、マスターレオビルド(登録商標)1000である。」に訂正する。 (27)訂正事項27 本件明細書の段落【0020】の「これらの中でも、減水剤(R2)は、好ましくは高性能減水剤である。」を削除する。 (28)訂正事項28 本件明細書の段落【0020】の「 また、前記減水剤(R2)は、減水成分で表わせば、ポリカルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。」を削除する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「高温環境用セメント組成物」を、「セメント組成物」と訂正するものであって、「高温環境用」の意味を下記訂正事項3により明確にすることに伴って、「高温環境用」という明確でない記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2~5の「高温環境用セメント組成物」を、「セメント組成物」と訂正するものであって、「高温環境用」の意味を下記訂正事項3により明確にすることに伴って、それぞれ「高温環境用」という明確でない記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1の「前記フライアッシュの含有率が15~55質量%である、」を、「前記フライアッシュの含有率が15~55質量%であり、かつ、マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート用の」と訂正するものであって、訂正前の請求項1の「セメント組成物」を限定したものであり、また、同「高温環境用」の意味を明確にするために、環境温度を具体的(25℃以上)に特定するものであるから、明瞭でない記載の釈明、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項5の「下記の減水剤(R1)、該減水剤(R1)を除く減水剤(R2)、細骨材、粗骨材、および水を含む・・・コンクリート。」との記載、段落【0026】の表1中の「R1 マスターポゾリス138R 登録商標」及び「R2 マスターレオビルド1000 登録商標」の記載、並びに訂正前の請求項6の「環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用される・・・高温環境用コンクリート。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項1の「フライアッシュのブレーン比表面積が2500~6000cm2/g」を、「フライアッシュのブレーン比表面積が2900~4000cm2/g」と訂正するものであって、数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4は、本件明細書の段落【0012】の「さらに、前記フライアッシュは、(1)ブレーン比表面積が2500~6000cm2/g・・・を全て満たすものである。 ・・・ なお、該ブレーン比表面積は、・・・より好ましくは2900~4000cm2/gである。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項1の「フライアッシュを975±25℃で15分間加熱した後の、フライアッシュの質量減少率が5質量%以下」を、「フライアッシュを975±25℃で15分間加熱した後の、フライアッシュの質量減少率が2.2~4.0質量%」と訂正するものであって、数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5は、本件明細書の段落【0027】の【表2】におけるフライアッシュFA3の質量減少率が2.2質量%であるとの記載、及び同【0012】の「・・・質量減少率は、入手の容易性や強度発現性から ・・・ より好ましくは1.5~4.0質量%である。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項1の「フライアッシュ中のSiO2の含有率が50質量%以上」を、「フライアッシュ中のSiO2の含有率が51.3~63.1質量%」と訂正するものであって、数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、本件明細書の段落【0027】の【表2】におけるフライアッシュFA5のSiO2含有率が51.3質量%であるとの記載、及び同フライアッシュFA3のSiO2含有率が63.1質量%であるとの記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項1の「フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が0.2~1.0 」を、「フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が0.34~0.7」と訂正するものであって、数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項7は、本件明細書の段落【0027】の【表2】におけるフライアッシュFA2の質量比「(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)」の値が0.34である点、及び同じく段落【0012】の「さらに、フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が・・・。なお、該比は、・・・より好ましくは0.28~0.7・・・である。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項5の「下記の減水剤(R1)、該減水剤(R1)を除く減水剤(R2)、細骨材、粗骨材、および水を含む、高温環境用コンクリート。減水剤(R1):超遅延性減水剤、遅延形減水剤、遅延形AE減水剤、および遅延形高性能AE減水剤から選ばれる1種以上の減水剤。」を、「マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート。」に訂正するものであって、減水剤(R1)及び減水剤(R2)を具体的に限定し、また、「高温環境用」の意味を明確にするために、環境温度を具体的(25℃以上)に特定したものであるから、訂正事項8は、明瞭でない記載の釈明、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項8は、訂正前の請求項5の「下記の減水剤(R1)、該減水剤(R1)を除く減水剤(R2)、細骨材、粗骨材、および水を含む・・・コンクリート。」との記載、段落【0026】の表1中の「R1 マスターポゾリス138R 登録商標」及び「R2 マスターレオビルド1000 登録商標」の記載、並びに訂正前の請求項6の「環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用される・・・高温環境用コンクリート。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない (10)訂正事項10~18について 訂正事項10~18は、訂正事項1~9により特許請求の範囲を訂正したことに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、本件明細書の段落【0008】の記載を特許請求の範囲の訂正と同様に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項10~18は、訂正事項1~9と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (11)訂正事項19について 訂正事項19は、訂正事項8により、特許請求の範囲の請求項5を訂正したことに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、本件明細書の段落【0018】の記載を特許請求の範囲の訂正と同様に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項19は、訂正事項8と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (12)訂正事項20~28について 訂正事項20~28は、訂正事項3、8により、特許請求の範囲1、5に記載の減水剤(R1)及び減水剤(R2)を、それぞれ「マスターポゾリス(登録商標)138R」及び「マスターレオビルド(登録商標)1000」に限定したことに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、本件明細書の段落【0019】及び【0020】の減水剤(R1)及び減水剤(R2)の記載を、それぞれ「マスターポゾリス(登録商標)138R」及び「マスターレオビルド(登録商標)1000」に訂正するものであり、また、それにより不要となった記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項20~28は、訂正事項3、8と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 一群の請求項について 訂正事項1~9に係る訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が直接的又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、一群の請求項である。 したがって、訂正事項1~9は、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 4 明細書の訂正と関係する請求項についての説明 訂正事項10~28は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、一群の請求項の全ての請求項に関係する訂正である。 したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 5 独立特許要件について 本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、訂正前の請求項1~6に係る訂正事項1~9については、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件についての規定は適用はされない。 6 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正により訂正された請求項1~5に係る発明(これらをまとめて「本件訂正発明」という。)は,次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す)。 「【請求項1】 下記(1)~(4)の条件を全て満たすフライアッシュと、ポルトランドセメントとを少なくとも含むセメント組成物であって、 前記フライアッシュとポルトランドセメントの合計を100質量%として、前記フライアッシュの含有率が15~55質量%であり、かつ、 マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート用のセメント組成物。 (1)フライアッシュのブレーン比表面積が2900~4000cm2/g (2)フライアッシュを975±25℃で15分間加熱した後の、フライアッシュの質量減少率が2.2~4.0質量% (3)フライアッシュ中のSiO2の含有率が51.3~63.1質量% (4)フライアッシュ中の(Na2O+0.658×K2O)/(MgO+SO3+TiO2+P2O5+MnO)の質量比が0.34~0.7(ただし、前記式中の化学式の単位は質量%である。) 【請求項2】 前記フライアッシュが、さらに下記(5)の条件を満たす、請求項1に記載のセメント組成物。 (5)フライアッシュ中の石英の格子体積が113.5~114.5Å 3(ただし、前記格子体積はリートベルト解析法を用いて求めた値である。) 【請求項3】 さらに高炉スラグ粉末を含むセメント組成物であって、 ポルトランドセメント、フライアッシュ、および高炉スラグ粉末の合計を100質量%として、高炉スラグ粉末の含有率が50質量%以下である、請求項1または2に記載のセメント組成物。 【請求項4】 さらに無水石膏、半水石膏、2水石膏から選ばれる1種以上の石膏を含む セメント組成物であって、 ポルトランドセメント、フライアッシュ、高炉スラグ粉末、および前記石膏の合計を100質量%として、前記石膏の含有率がSO3換算で2.5質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント組成物。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント組成物、マスターポゾリス(登録商標)138R、マスターレオビルド(登録商標)1000、細骨材、粗骨材、および水を含み、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリート。 【請求項6】 (削除) 」 第4 取消理由の概要 当審が通知した令和 1年 7月18日付けの取消理由(決定の予告)は、以下に示すとおり、特許法第36条第6項第2号に違反するとの取消理由を含むものである。 請求項1~5(平成30年11月22日付けの訂正請求書により訂正された請求項1~5)について 請求項1~5に係る発明において、超遅延性減水剤(R1)は「減水剤(R1):JISのA 6204(コンクリート用化学混和剤)の遅延形減水剤よりも、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリートの始発時間および/または終結時間の差分(遅延時間の間隔)が大きい超遅延性減水剤であって、減水成分が、リグニンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、およびこれらの塩から選ばれる1種以上である超遅延性減水剤」と特定され、本件明細書の発明の詳細な説明には、段落【0019】に「本発明において、超遅延性減水剤は、前記JISのA 6204(コンクリート用化学混和剤)の遅延形減水剤よりも、高温環境用コンクリートの始発時間および/または終結時間の差分(遅延時間の間隔)が大きい減水剤をいう。」との記載がある。 そこで、当審は、特許権者に対して平成31年3月28日付けで審尋を行って、1.本件明細書における「凝結時間の差分」に関する試験の条件が、「JIS A 6204」の試験条件と異なるものであるのかどうか、及び、2.本件発明の超遅延性減水剤とされている「BASF社製のマスターポゾリス(登録商標)138R」が、上記特定事項を充足すること、について具体的に説明することを求めた。 これに対して、特許権者は、平成31年 4月25日付けの回答書において、JIS A 6204「コンクリート化学混和剤」に準拠し環境温度20℃で、さらに同様にして環境温度27℃で「マスターポゾリス138R」及び「マスターポゾリスNo.89」それぞれの凝結時間の差分を求め、この結果を基に、「マスターポゾリスNo.89」は、前記JISに規定する遅延型減水剤に属し、また、「マスターポゾリス138R」は、環境温度20℃及び27℃において「マスターポゾリスNo.89」よりも始発及び凝結時間の差分が大きいことから、本件発明の「超遅延性減水剤」である旨を回答した。 しかし、JIS A 6204の遅延型減水剤は、減水剤として様々な成分のものがあるところ、リグニンスルホン酸系以外の「JIS A 6204の遅延型減水剤」に対して、上記「マスターポゾリス138R」が「マスターポゾリスNo.89」に対してと同様に25℃以上の高温環境下で「始発時間及び終結時間の差分(遅延時間の間隔)」が大きくなることは、本件明細書の記載から当業者に自明なことではない。 そうすると、上記回答では「マスターポゾリス138R」が上記特定事項を充足する(本件発明の「超遅延性減水剤」に属する)ものであるとはいい難い。 以上のことから、請求項1~5に係る発明の「減水剤(R1):JISのA 6204(コンクリート用化学混和剤)の遅延形減水剤よりも、環境温度(コンクリートの周囲の温度)が25℃以上の環境下で使用されるコンクリートの始発時間および/または終結時間の差分(遅延時間の間隔)が大きい超遅延性減水剤」の特定事項によっては、本件明細書に超遅延性減水剤として例示されていた「BASF社製のマスターポゾリス(登録商標)138R」を含め、どのような超遅延性減水剤が当該特定事項で特定された「超遅延性減水剤」に該当するのか明らかではないから、請求項1~5に係る発明は明確であるとはいえない。 第5 当審の判断 本件訂正により、本件訂正発明において、コンクリートに含まれる「超遅延性減水剤」は、「マスターポゾリス(登録商標)138R」に特定された。 そこで、上記「マスターポゾリス(登録商標)138R」を発明特定事項とする本件訂正発明が明確であるといえるかどうかについて検討する。 (1)「マスターポゾリス(登録商標)138R」について 本件訂正発明で特定される「マスターポゾリス(登録商標)138R」は、本件明細書の表1及び段落【0036】の記載によると、BASF社製のリグニンスルホン酸系の「超遅延性減水剤」に係る製品であることは理解できる。 しかし、リグニンスルホン酸系であるということ以外は、「マスターポゾリス(登録商標)138R」は、発明の詳細な説明を参照しても、その組成は何ら明らかでない。 そして、一般的に、登録商標(商品名)により特定される製品は、品質などが継続的に一定化されているといえるものの、取得が困難である等により、当業者における認知度が極めて低い場合、当業者であっても発明を理解し得ないことになる。具体的には、「マスターポゾリス138R」が、当業者において十分に認知された、若しくは、認知され得るレベルのものであるか不明である。 そこで、合議体は、令和1年12月20日付けの審尋により、 本件訂正発明で特定された「マスターポゾリス(登録商標)138R」について、 (ア)一般的に流通し、取得が容易なものであるか否か、 (イ)当業者であれば、一定の品質であることを容易に認識(把握)することができるものであるか否か、 (ウ)品質、組成などを示すデータを過大な労力を要することなく取得できるものであるか否か、 (エ)品質、組成などを示すデータの取得に過大な労力を要するのであればその事情(理由)について、 それぞれ回答するように求めた。 (なお、BASF社が公開している「MasterPozzolish R138」(マスターポゾリス138Rの後継品)のデータシートを参照しても、その組成は不明であり、また、このデータシートをもって、これが、本件特許明細書に記載された「超遅延性減水剤」に属するものとして広く(一般に)知られているとの立証になるとまでは言い難い。 「MasterPozzolith R138」データシート、[online]、[令和2年3月16日検索]、インターネット、<URL:https://assets.master-builders-solutions.basf/en-sg/basf-masterpozzolith-r138-tds.pdf]>) しかし、上記「第1 手続の経緯」に記載したとおり、当該審尋に対して、特許権者からは何ら回答はないから、依然として、本件訂正発明の上記「マスターポゾリス(登録商標)138R」が、当業者一般において、本件特許明細書に記載された「超遅延性減水剤」として、どのような特性を有するものであるのか認識(断定)することができない。 (2)まとめ 上記(1)に記載のとおり、上記「マスターポゾリス(登録商標)138R」を発明特定事項とする本件訂正発明は明確であるとはいえないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、請求項6に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項6に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700817

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