特許異議申立
2017-700586
排ガス処理装置及び排ガス処理方法
- 審判番号
- 2017-700586
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-151440外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月07日
- 審決日
- 2017年10月13日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】JFEエンジニアリング株式会社
- 【権利者代理人】藤岡 徹
- 【権利者代理人】藤岡 努
- 【異議申立人】鈴木 友子
- 【異議申立人】一條 淳
- 分類
- P1651.121-Y (B01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6070971号発明「排ガス処理装置及び排ガス処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6070971号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6070971号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成28年2月2日に出願された特願2016-519397号(優先権主張 平成27年2月18日 平成27年11月18日)の一部を平成28年8月1日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 鈴木友子 及び 一條淳によりそれぞれ特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第6070971号の請求項1ないし10の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第3 異議申立の理由について
A.異議申立人 鈴木友子 の異議申立について
異議申立人 鈴木友子は、次の甲各号証を証拠として提出し、以下に示す理由により、本件発明1ないし10に係る特許は取り消されるべきである旨を主張している。
<証拠>
甲第1号証:特開平9-308817号公報
甲第2号証:特開2015-196127号公報
甲第3号証:特開2016-169124号公報
甲第4号証:特開平6-258418号公報
甲第5号証:特開2009-662号公報
甲第6号証:特開2000-93798号公報
<異議申立理由の概要>
本件発明1ないし10に係る特許は、同発明が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証のいずれかに記載された技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
B.異議申立人 一條淳 の異議申立について
異議申立人 一條 淳は、次の甲各号証を証拠として提出し、以下に示す理由により、本件発明1ないし10に係る特許は取り消されるべきである旨を主張している。
<証拠>
甲第1号証:米国特許出願公開第2011/0197760号明細書
甲第2号証:特開平9-308817号公報
甲第3号証:特開2009-202106号公報
甲第4号証:特開2001-198434号公報
<異議申立理由の概要>
本件発明1ないし10に係る特許は、同発明が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証のいずれかに記載された技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
A.異議申立人 鈴木友子 の異議申立について
A-1.本件発明6について
A-1-1.甲第1号証の記載
甲第1号証には以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】塩化水素、重金属、有機ハロゲン化合物、炭化水素のうちの1種以上の有害物を含有する排ガスを、それらを吸収、濾過または捕捉する粉粒体を供給して形成されるバグフィルタ濾布表面の粉粒層で除去する方法において、バグフィルタ出口の排ガス中の上記有害物の濃度のうちの1つ以上を測定し、該濃度の増減に基づいてバグフィルタ表面の粉粒層形成に使用される当該有害物除去用粉粒体の供給量を増減することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】請求項1において、上記有害物濃度が増加したときに、該有害物除去用粉粒体の供給を、所定期間で供給すべき必要量を一気に供給するか、または供給量増加変動初期時の供給量を変動終了時供給量より一時的に大きくして供給するようにしたことを特徴とする排ガス処理方法。」
(イ)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、排ガス処理方法および装置に係り、特に塩化水素、水銀などの重金属、有機ハロゲン化合物、炭化水素等を含有する、都市ごみ焼却炉などから排出される排ガスの処理方法および装置に関するものである。」
(ウ)「【0016】【発明の実施の形態】本発明の排ガス処理システムの実施例1を図1に示した。焼却炉1で発生した排ガスは排熱回収器2と冷却器(例えば水スプレ式冷却器)3で温度180℃まで温度低下した後に消石灰供給器4と活性炭供給器5より消石灰と活性炭が添加されてバグフィルタ6に入り、煤塵とともに塩化水素、重金属、有機ハロゲン系化合物が除去され、煙突7から大気に放出される。バグフィルタ6出口の排ガスは必要に応じて塩化水素分析計8、水銀分析計9で分析され監視される。」
(エ)「【0020】水銀濃度の制御においても、濃度の検出値を取込み、あらかじめ設定している濃度の下限値、上限値と比較して制御する。水銀濃度検出値が下限値より小さい場合には過剰の活性炭が供給されている状態にあるので、活性炭供給量の設定値を減少させ、粉体流量調節器22を変動させて活性炭供給量を減少させる。水銀濃度検出値が下限値と上限値の間にある場合には適量の活性炭が供給されている状態にあるので、活性炭供給量の設定値は変更せずに所定の時間を置いてもとの塩化水素濃度制御の段階に戻る。」
(オ)「【0021】水銀濃度検出値が上限値より大きい場合には単純に活性炭が不足している状態にある場合と何らかの原因で粉末層が不良の場合がある。消石灰供給量制御で塩化水素が低減する場合には前者と判定して不足している活性炭を追加した後に、所定の時間を置いてもとの塩化水素濃度制御の段階に戻る。消石灰供給量制御で塩化水素が低減せず塩化水素の上限値を超えている場合には後者と判定してオペレータが原因を判定して対策すべく、自動制御のルーチンを終了させる。」
(カ)「【0022】排ガス濃度と各種操作の経時変化を図3に模式化して示す。横軸は時間経過を示す。縦軸はバグフィルタ出口の塩化水素濃度、水銀濃度、バグフィルタ入口への消石灰供給量、活性炭供給量、バグフィルタ出入口の差圧、バグフィルタ剥離用のパルスジェット空気のパルス圧を示す。塩化水素濃度と水銀濃度の図中における各々2本の平行線は、制御用にあらかじめ設定した濃度の上限値と下限値を示す。曲線は濃度検出値を平滑化処理して示す。・・・
【0023】塩化水素濃度は図中A点で塩化水素濃度の上限値を超え、本発明による制御で消石灰が不足していると判定され、消石灰供給量が増加される。消石灰供給量の増加は図中に点線で示したように一定量を増加させるだけでもよいが、図中に実線で示したように変動の開始時に変動終了後よりも多い量を供給すれば応答が速くなるので好ましい。対応する塩化水素濃度変化も点線と実線で示したが、粉体層に保持されている消石灰の新旧の入れ替えが速まるので、塩化水素濃度の復旧が実線の場合は点線の場合に較べて速くなる。
【0024】水銀濃度は図中B点で水銀濃度の上限値を超え、本発明による制御で、例えば活性炭が不足していると判定され、活性炭供給量が増加された・・・」
(キ)「本発明の排ガス処理システムを採用した焼却システムのフローを示す図」(【図面の簡単な説明】)と説明される【図1】を以下に示す。
(ク)「焼却システム運転状態の経時変化を示す図」と説明される【図3】を以下に示す。
A-1-2.甲第1号証に記載された発明
i)甲第1号証の記載事項(ア)から、請求項1を引用する請求項2を独立形式で記載すれば、甲第1号証には、
「塩化水素、重金属、有機ハロゲン化合物、炭化水素のうちの1種以上の有害物を含有する排ガスを、それらを吸収、濾過または捕捉する粉粒体を供給して形成されるバグフィルタ濾布表面の粉粒層で除去する方法において、
バグフィルタ出口の排ガス中の上記有害物の濃度のうちの1つ以上を測定し、該濃度の増減に基づいてバグフィルタ表面の粉粒層形成に使用される当該有害物除去用粉粒体の供給量を増減するものであって、
上記有害物濃度が増加したときに、該有害物除去用粉粒体の供給を、所定期間で供給すべき必要量を一気に供給するか、または供給量増加変動初期時の供給量を変動終了時供給量より一時的に大きくして供給するようにした、排ガス処理方法。」について記載されている。
ii)同(キ)の図1と同(ウ)の記載から、上記「排ガス処理方法」は、「焼却炉1」から排出され「有害物」を含有する「排ガス」を「バグフィルタ6」で「煤塵と共に」処理し、「焼却炉1」から「バグフィルタ6」へ排ガスを導く「煙道11」へ「消石灰供給器4」と「活性炭供給器5」から「消石灰」と「活性炭」を供給し、「バグフィルタ6出口」に位置する「塩化水素分析計8」と「水銀分析計9」で「排ガス」の「有害物」の濃度を計測し、同(エ)(オ)から、「流量設定器21」「粉体流量調節器22」で「消石灰」と「活性炭」の供給量を制御するものである。
iii)すると、上記「排ガス処理方法」は、
「焼却炉1」から排出され「有害物」を含有する「排ガス」を「バグフィルタ6」で「煤塵と共に」処理し、「焼却炉1」から「バグフィルタ6」へ排ガスを導く「煙道11」へ「消石灰供給器4」と「活性炭供給器5」から「消石灰」と「活性炭」を供給する「排ガス処理方法」において、
「バグフィルタ6出口」に位置する「塩化水素分析計8」と「水銀分析計9」で「排ガス」の「有害物」の濃度を計測し、「流量設定器21」「粉体流量調節器22」で「消石灰」と「活性炭」の供給量を制御するものであり、「バグフィルタ出口の排ガス中の上記有害物の濃度のうちの1つ以上を測定し、該濃度の増減に基づいてバグフィルタ表面の粉粒層形成に使用される当該有害物除去用粉粒体の供給量を増減するものであって、
上記有害物濃度が増加したときに、該有害物除去用粉粒体の供給を、所定期間で供給すべき必要量を一気に供給するか、または供給量増加変動初期時の供給量を変動終了時供給量より一時的に大きくして供給するようにした、排ガス処理方法。」であるといえる。
iv)ここで、同(イ)から「有害物」として「重金属」である「水銀」の活性炭による吸着処理に着目し、本件請求項6の記載に則して整理すれば、 甲第1号証には、
「焼却炉から排出され水銀を含有する排ガスをバグフィルタで煤塵と共に処理し、焼却炉からバグフィルタへ排ガスを導く煙道へ活性炭供給器から活性炭を供給する排ガス処理方法において、
バグフィルタ出口に位置する水銀分析計で排ガスの水銀の濃度を計測し、流量設定器及び粉体流量調節器で活性炭の供給量を制御するものであり、 該濃度の増減に基づいてバグフィルタ表面の活性炭層形成に使用される当該活性炭の供給量を増減するものであって、
上記水銀濃度が増加したときに、該活性炭の供給を、所定期間で供給すべき必要量を一気に供給するか、または供給量増加変動初期時の供給量を変動終了時供給量より一時的に大きくして供給するようにした、排ガス処理方法。」(以下、「引用発明A」という。)の発明が記載されていると認められる。
A-1-3.本件発明6と引用発明Aとの対比
i)引用発明Aの「焼却炉」、「バグフィルタ」は本件発明6の「炉」、「集塵装置」に相当する。
また、引用発明Aの「排ガス」を「バグフィルタ」で「煤塵と共に処理」することは、本件発明6の「排ガス」を「集塵装置」で「除塵処理」することに相当する。
ii)引用発明Aの「バグフィルタ出口に位置する水銀分析計」は本件発明6の「集塵装置の下流側」の「下流側水銀濃度計」に相当し、引用発明Aの「流量設定器及び粉体流量調節器」は本件発明6の「制御装置」に相当するから、引用発明Aの「バグフィルタ出口に位置する水銀分析計で排ガスの水銀の濃度を計測し、流量設定器及び粉体流量調節器で活性炭の供給量を制御する」ことは、本件発明6の「集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え」ることに相当する。
iii)以上から、本件発明6と引用発明Aとは、
「炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備える、排ガス処理方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>「活性炭」の供給の制御に関して、
本件発明6では、
a)制御工程で、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、水銀濃度測定値と活性炭供給量との予め定める対応関係に基づき活性炭供給量を制御し、
b)さらに、制御工程で、
b-1)排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、
b-2)水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、
b-3)水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つように活性炭供給量を制御し、
c)活性炭供給量を所定の最小値以上に維持して、集塵装置のバグフィルタに活性炭を付着させ活性炭吸着層を予め十分に形成しておき、高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際に速やかに、既に形成されている活性炭吸着層とその際に吹き込まれる活性炭により水銀を吸着除去して集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下にまで低下させるものであるのに対して、
引用発明Aでは、
d)水銀の濃度の増減に基づいてバグフィルタ表面の活性炭層形成に使用される当該活性炭の供給量を増減するものであって、
e)上記水銀濃度が増加したときに、該活性炭の供給を、所定期間で供給すべき必要量を一気に供給するか、または供給量増加変動初期時の供給量を変動終了時供給量より一時的に大きくして供給するようにしたものである点。
なお、上記「a)」~「e)」は当審で付与したものである。
A-1-4.相違点の検討
(1)相違点が引用発明から示唆されるかについて
上記相違点が引用発明と甲第1号証の記載から示唆されるものか否かについて検討する。
i)上記引用発明Aのd)の詳細について、上記甲第1号証の記載事項(エ)(オ)には、「水銀濃度」の「検出値」を予め設定された上下限値と比較して、「下限値より小さい場合」は「活性炭」が過剰なので「活性炭供給量を減少」させ、上下限値の間である場合は「活性炭」は適量なので「活性炭供給量」を変更せず、「上限値より大きい場合」は活性炭が不足なので「活性炭供給量」を「追加」する旨が示され、引用発明Aにおいてそのようになされている。
そして、上記引用発明Aのe)の詳細について、同(カ)と同(ク)の【図3】には、「活性炭供給量」を「追加」する場合には、「水銀濃度」が「B点」(【図3】)で「上限値」を越えた場合に、「活性炭」を大略一度に多く供給して応答を速くすることが示され、実際に、同【図3】ではそのように具体的になされている。
ii)本件発明6の上記b-1)及びb-3)は、引用発明A及び甲第1号証の記載から示唆されるかについて検討する。
ii-1)本件発明6の上記b-1)について
本件特許明細書【0020】には、「水銀濃度測定値」が「零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲」では「活性炭」を「所定の最小値」で供給することにおいて、「所定の最小値」とは、「集塵装置のバグフィルタ」に「活性炭の吸着層が常に形成され」るようにし、「上記所定値よりも高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際にも、予め形成された上記吸着層による吸着除去作用とその際に吹き込まれる活性炭による吸着除去作用とにより水銀を速やかにかつ確実に吸着除去でき」る活性炭供給量を意味するものであることが示されている。
それゆえ本件発明6の「b-1)」は、「活性炭の吸着層が常に形成され」るように、「水銀濃度測定値」が「零又は測定可能な限界最小値未満の値」でも「所定の最小値」の活性炭が供給されることを意味するものといえる。
しかし、上記引用発明Aのd)e)からは、時間軸(横軸)の最初(時刻ゼロ)の時点から一定の「活性炭供給」のあること、また、「水銀濃度測定値」が「下限値より小さい場合」は「活性炭」が過剰なので「活性炭供給量を減少」させることが示されるにとどまり、それらは「活性炭の吸着層が常に形成され」るように、「水銀濃度測定値」が「零又は測定可能な限界最小値未満の値」でも「所定の最小値」の活性炭が供給されることまでも示唆するものとはいえない。
したがって、引用発明A及び甲第1号証の記載は本件発明6のb-1)を示唆するものとまではいえない。
ii-2)本件発明6の上記b-3)について
上記引用発明Aのd)e)からは、「水銀濃度」の「検出値」が「上限値より大きい場合」には活性炭が不足なので、「活性炭供給量」を大略一度に多く供給することが示されているにとどまり、「水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにする」(本件特許明細書【0022】)ようにすることまでも示唆するものとはいえない。
したがって、引用発明Aは本件発明6のb-3)を示唆するものとまではいえない。
iii)以上から、上記a)、b-2)及びc)について論ずるまでもなく、上記相違点は引用発明Aと甲第1号証の記載から示唆されるものではない。
(2)引用発明Aの他の甲各号証に記載の技術手段の適用について
そこで、引用発明Aへの他の甲各号証に記載の技術手段の適用により、上記相違点が当業者が容易に推考し得るものといえるかについて検討する。
(2-1)甲第2号証の適用について
本件特許についての出願は、平成28年2月2日に出願された特願2016-519397号(優先権主張 平成27年2月18日 平成27年11月18日)の一部を平成28年8月1日に新たな特許出願としたものであるのに対して、甲第2号証は平成27年11月9日に公開された刊行物であるから公知文献でなく、本件発明の容易想到性の判断に用い得ない。
ここで仮に、甲第2号証が公知文献であった場合について以下に検討する。
甲第2号証には、「通常活性炭と添着活性炭とを併用して、排ガス中の水銀の吸着除去を良好に行い、添着活性炭の使用量を最小限として除去費用を抑制できる排ガス処理装置及び方法を提供することを課題」(【0011】)として、「測定された全水銀濃度が第一の設定値以下のとき、添着活性炭の吹込みを行わず、通常活性炭の吹込み量を一定量として維持し、全水銀濃度が第一の設定値より上昇したとき、通常活性炭の吹込み量を増加させ、全水銀濃度が第二の設定値より上昇したとき、第一の設定値より上昇したときに行う通常活性炭の吹込み量の増加を行うと共に、添着活性炭を吹き込み、全水銀濃度が第二の設定値以下で第一の設定値より高い値になったとき、添着活性炭の吹込みを停止し、第一の設定値より上昇したときに行う通常活性炭の吹込み量の増加を行い、全水銀濃度が第一の設定値以下になったとき、通常活性炭の吹込み量を上記一定量に戻すように制御する」(【0019】)排ガス処理方法の技術手段が開示されている。
したがって、引用発明Aが「通常活性炭」のみの使用を前提とするのに対して、甲第2号証に記載の技術手段は「通常活性炭と添着活性炭」を必ず併用するものであることから、引用発明Aへ甲第2号証に記載の技術手段を適用する動機付けがない。
(2-2)甲第3号証の適用について
上記(2-1)を参照。
甲第3号証は平成28年9月23日に公開された刊行物であるから公知文献でなく、本件発明の容易想到性の判断に用い得ない。
(2-3)甲第4号証の適用について
甲第4号証には「レーダにおけるアンテナパターンのビーム圧縮処理方法」が記載され、排ガス中の水銀を除去することに関して何ら示唆するものはなく、引用発明Aへ甲第4号証に記載の技術手段を適用する動機付けがない。
(2-4)甲第5号証の適用について
甲第5号証には「廃棄物処理設備での廃棄物の焼却処理、熱分解処理、または溶融処理により発生した排ガスを処理するための方法であって、前記排ガス中からダストを除去することが可能でかつ前記排ガス中のダイオキシン類を吸着する活性炭が付着可能なろ布を有する第1バグフィルタに当該活性炭及び当該排ガスを導入することにより、当該排ガス中からダストを除去するとともに当該第1バグフィルタのろ布に前記活性炭を付着させてこの活性炭に前記排ガス中のダイオキシン類を吸着させる第1吸着工程と、ダイオキシン類を吸着する活性炭が付着可能なろ布を有する第2バグフィルタに、前記第1バグフィルタに導入される活性炭とは別の活性炭及び前記第1バグフィルタから排出されるガスを導入することにより、当該第2バグフィルタのろ布に当該別の活性炭を付着させてこの活性炭に前記ガス中のダイオキシン類を吸着させる第2吸着工程と、前記第2バグフィルタのろ布に付着した活性炭を回収して前記第1バグフィルタに供給する循環供給工程と、を含み、 前記第1吸着工程では、前記循環供給工程により供給される活性炭を前記第1バグフィルタに導入して当該第1バグフィルタのろ布に付着させることを特徴とする廃棄物処理設備の排ガス処理方法。」(【請求項1】)及び「第2バグフィルタ22への活性炭の供給流量:10~200mg/Nm3 」(【0061】)であることが記載されている。
しかし、甲第5号証で処理対象とされるのは「ダイオキシン」であって「水銀」ではなく、「ダイオキシン」の処理のために要する「活性炭の供給流量」が「水銀」の処理のために直ちに用い得るものとはいえないから、上記相違点に係るb-1)及びb-3)について記載も示唆もない。
したがって、引用発明Aへ甲第5号証に記載の技術手段を適用する動機付けがない。
(2-5)甲第6号証の適用について
甲第6号証には「【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、排ガス中に含まれる有害な有機塩素化合物、例えばダイオキシン類を吸着した活性炭の後処理を不要とする、有機塩素化合物分解触媒、その製法、および該触媒を用いた排ガス処理方法を提供することにある。」(【0003】)、「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本願で特許請求する発明は以下のとおりである。(1)有機塩素化合物を含有する排ガスから該有機塩素化合物を分解除去する触媒において、メソポアカーボンを担体とし、これに触媒活性成分として、Cu、Fe、Ce、AgおよびPdから選ばれた金属またはその化合物が担持されている有機塩素化合物分解触媒。」(【0004】)と記載されている。
しかし、甲第6号証で処理対象とされるのは「ダイオキシン」であって「水銀」ではなく、「ダイオキシン」の処理のために用いるのは「メソポアカーボンを担体とし、これに触媒活性成分として、Cu、Fe、Ce、AgおよびPdから選ばれた金属またはその化合物が担持されている有機塩素化合物分解触媒」であって「活性炭」ではなく、「ダイオキシン」処理のために当該「有機塩素化合物分解触媒」を用いる技術を「水銀」の処理のために直ちに用い得るものとはいえないから、上記相違点に係るb-1)及びb-3)について記載も示唆もない。
したがって、引用発明Aへ甲第6号証に記載の技術手段を適用する動機付けがない。
A-1-5.本件発明6についての結言
以上から、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない出願に対してされたものでないから、取り消されるべきものでない。
A-2.本件発明1ないし5及び本件発明7ないし10について
本件発明7は、本件発明6の
「水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つように活性炭供給量を制御し」を、
「水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つように活性炭供給量を制御し」とする点でのみ相違(下線部が相違箇所)する。
これは端的には、本件発明6が「所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大」させるものであるのに対して、本件発明7が「階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ」ることを繰り返すものである点でのみ相違するものであり、活性炭の供給について、本件発明6では「直線的」に増大させていたものが、本件発明7では「階段状」に増大させるものに変更されたといえるものであり、本件発明7も上記相違点に係るb-1)及びb-3)を構成とするものである。
したがって、本件発明7に係る特許は、本件発明6に係る特許と同様に取り消されるべきものでない。
また、本件発明8ないし10は請求項6ないし7を直接又は間接的に引用し、上記b-1)及びb-3)を構成とするものであるから、本件発明8ないし10に係る特許は、本件発明6又は7に係る特許と同様に取り消されるべきものでない。
さらに、本件発明1ないし5の「排ガス処理装置」は、本件発明6ないし10の「排ガス処理方法」と、それぞれ発明のカテゴリーが相違するのみで実質的に同一発明であるから、本件発明1ないし5に係る特許は、本件発明6ないし10に係る特許と同様に取り消されるべきものでない。
B.異議申立人 一條淳 の異議申立について
B-1.本件発明6について
B-1-1.甲第1号証の記載
甲第1号証には以下の記載がある。なお、<翻訳>は、異議申立人 一條 淳が提出した「甲第1号証抄訳文」を参考にした。
(ア)「[0003]In the combustion of a fuel,such as coal,oil,peat,waste,etc.,in a combustion plant,such as a power plant,a hot process gas is generated,such hot process gas containing,among other components,mercury,Hg.Since mercury is hazardous to the human health and to the environment it is usually necessary to remove mercury from the process gas before it can be discharged into the ambient air.The removal of mercury is often accomplished by mixing the hot process gas with a solid sorbent,such as pulverized activated carbon,which adsorbs the mercury and which can then be removed from the hot process gas in a filter,such as a bag house.」
<翻訳>「[0003]発電所などの燃焼プラントにおける石炭、石油、泥炭、廃棄物などの燃料の燃焼では、高温のプロセスガスが生成され、この高温のプロセスガスは、特に水銀Hgを含んでいる。水銀は、人間の健康および環境に有害であるので、通常は、プロセスガスが周囲空気中に排出され得る前にプロセスガスから水銀を除去する必要がある。水銀の除去は、高温のプロセスガスを微粉活性炭などの固体の吸収剤と混合することによって行われることが多く、この吸収剤が水銀を吸着するので、これをその後にバッグハウスなどのフィルタで高温のプロセスガスから除去すればよい。」
(イ)「[0017]In accordance with one embodiment the concentration of mercury ismeasured both upstream and downstream of the filter,at least one of such measured concentrations being utilized for determining said first parameter,at least the other of such measured concentrations being utilized for determining a third parameter,which is utilized for controlling the supply of said sorbent.An advantage of this embodiment is that the control systemcan control both the cleaning of the filtering surfaces of the filter,and the dosage of sorbent to obtain the most efficient removal of mercury,with regard to consumption of energy and sorbent.」
<翻訳>「[0017]一実施形態によれば、水銀の濃度は、フィルタの上流側および下流側の両方で測定され、この測定濃度のうちの少なくとも1つを利用して、前記第1のパラメータを決定し、測定濃度のうちの少なくとも他方を利用して、前記吸収材の供給を制御するために利用される第3のパラメータを決定する。この実施形態の利点は、制御システムが、エネルギーおよび吸収剤の消費に関連して、フィルタの濾過表面の洗浄と、最も効率的な水銀の除去が得られる吸収剤の投入量とを両方とも制御することができる点てある。」
(ウ)「[0022]An advantage of this gas cleaning system is that it is effective for removing mercury,also in a situation of varying mercury concentrations,a situation in which the prior art gas cleaning systems would require a substantial increase in the sorbent supply.Thus,the present gas cleaning system provides for a low sorbent supply,and,consequently,also a low formation of waste products,without increasing the emission of mercury.」
<翻訳>「[0022]このガス洗浄システムの利点は、このガス洗浄システムが、従来技術のガス洗浄システムであれば吸収剤供給量の大幅な増加が必要になるような状況である水銀濃度が変動する状況でも、水銀の除去に有効である点である。したがって、本ガス洗浄システムは、水銀の排出を増加させることなく、低吸収剤供給量を実現し、その結果として低廃棄物形成を実現する。」
(エ)「[0036]FIG.1 is a schematic side view and illustrates a power plant 1,as seen from the side thereof.The power plant 1 comprises a boiler 2.During combustion of a fuel,such as coal or oil,a hot process gas,often referred to as a flue gas,is generated in the boiler 2.The flue gas,which contains polluting substances,including dust particles and mercury, leaves the boiler 2 via a gas duct 4.The gas duct 4 is operative for forwarding the flue gas to a primary dust collector 6,which is optional,in the form of,e.g.,an electrostatic precipitator,an example of which is described in U.S.Pat.No.4,502,872,or a bag house, an example of which is described in U.S.Pat.No.4,336,035.The primary dust collector 6 is operative for removing the major amount of dust particles from the flue gas.」
<翻訳>「[0036]図1は、発電所1の側面図であり、発電所1を側方から見た様子を示している。発電所1は、ボイラ2を備える。石炭または石油などの燃料の燃焼中には、燃焼ガスと呼ばれることも多い高温のプロセスガスが、ボイラ2で生成される。粉塵および水銀などの汚染物質を含む燃焼ガスは、ガスダクト4を介してボイラ2から出る。ガスダクト4は、例えば米国特許第4,502,872号にその1例が記載される静電集塵器または米国特許第4,336,035号にその1例が記載されるバッグハウスなどの形態をした任意選択の1次ダストコントローラ6に、燃焼ガスを送るように作用することができる。1次ダストコントローラ6は、燃焼ガスの粉塵の大部分を除去するように作用することができる。」
(オ)「[0037]A gas duct 8 is operative for forwarding the flue gas from the primary dust collector 6 to a secondary dust collector 10.The secondary dust collector 10 is a fabric filter,by which is meant that the flue gas is forced to passthrough a filtering surface formed from a fabric material.The secondary dust collector 10 illustrated in FIG.1 is a fabric filter of the so-called bag house type,which comprises a plurality of filter bags 12 made of a textile fabric. The fabric of the filter bags 12 form filtering surfaces by means of which particulate material can be removed from the flue gas.A detailed description of an example of a bag house can be found in U.S.Pat.No.4,336,035.The bag house 10 has three compartments 14,16,18.Each such compartment 14,16,18 may comprise typically 2 to 20000 filter bags 12.As can be seen from a reference to FIG.1,the duct 8 is operative for supplying a separate flow of flue gas to each of the compartments 14,16,18.」
<翻訳>「[0037]ガスダクト8は、燃焼ガスを1次ダストコントローラ6から2次ダストコントローラ10に送るように作用することができる。2次ダストコントローラ10は、布フィルタであり、このことは、燃焼ガスが布材料で構成された濾過表面を通過させられることを意味する。図1に示す2次ダストコントローラ10は、布地で構成された複数のフィルタバッグ12を含む、いわゆるバッグハウス型の布フィルタである。フィルタバッグ12の布が濾過表面を形成し、この濾過表面によって、粒子状物質を燃焼ガスから除去することができる。バッグハウスの1例の詳細な説明は、米国特許第4,336,035号に見ることができる。バッグハウス10は、3つの区画14、16、18を有する。各区画14、16、18は、通常は、2個から20000個のフィルタバッグ12を含むことができる。図1を参照すると分かるように、ダクト8は、区画14、16、18のそれぞれに、別個の燃焼ガス流を供給するように作用することができる。」
(カ)「[0038]The flue gas passes through the textile fabric material of the respective filter bag 12,such that dust particles contained in the flue gasis captured on the outside of the bags 12.When passing through the fabric material of the filter bags 12 also very small dust particles are removed from the flue gas, resulting in a very efficient removal of dust particles.The cleaned flue gas enters a clean gas plenum 20,22,24 of the respectivecompartment 14,16,18.A clean gas duct 26 is operative for forwarding the cleaned flue gas from each of the respective plenums 20,22,24 to a stack 28,which is operative for discharging the cleaned flue gas to the ambientair.」
<翻訳>「[0038]燃焼ガスがそれぞれのフィルタバッグ12の織布材料を通過して、燃焼ガスに含まれる粉塵がバッグ12の外側に捕捉されるようになっている。フィルタバッグ12の布材料を通過するときには、非常に細かい粉塵も燃焼ガスから除去され、非常に効率的に粉塵が除去されることになる。洗浄済み燃焼ガスは、それぞれの区画14、16、18の清浄ガスプレナム20、22、24に入る。清浄ガスダクト26は、洗浄済み燃焼ガスを各プレナム20、22、24のそれぞれから煙突28に送るように作用することができ、煙突28は、この洗浄済み燃焼ガスを周囲空気に排出するように作用することができる。」
(キ)「[0039]A sorbent storage silo 30 is operative for containing a sorbent which is suitable for adsorbing mercury,in particular mercury in gaseous form.A suitable sorbent could be activated carbon or coke in powdered form.A sorbent supply duct 32 is operative for forwarding the sorbent from the silo 30 tothe duct 8,in which the sorbent is mixed with the flue gas.」
<翻訳>「[0039]吸収剤格納サイロ30は、水銀、特に気体状の水銀を吸着するのに適した吸収剤を収容するように作用することができる。適当な吸収剤は、粉末状の活性炭またはコークスであることもある。吸収剤供給ダクト32は、吸収剤をサイロ30からダクト8に送るように作用することができ、このダクト8内で、吸収剤は燃焼ガスと混合される。」
(ク)「[0040]The sorbent,being a particulate material,will be collected on the fabric of the filter bags 12.The fabric material supports the formation of a dust cake on the outer face of each of the filter bags 12.Such a dust cake,which will contain sorbent supplied from the silo 30,is very efficient in removing mercury from the flue gas,because the flue gas has to pass through the dust cake.」
<翻訳>「[0040]粒子状物質である吸収剤は、フィルタバッグ12の布上に収集されることになる。布材料は、各フィルタバッグ12の外側面上でダストケーキの形成を補助する。燃焼ガスはこのダストケーキを通過しなければならないので、サイロ30から供給される吸収剤を含むことになるこのダストケーキは、燃焼ガスから水銀を除去するのに非常に効率的である。」
(ケ)「[0044]A first mercury analyser 52 is operative for measuring the concentration of mercury in the flue gas in the duct 8,upstream of the bag house 10.The first mercury analyser 52 thus measures the concentration of gaseous mercury, Hg,in the flue gas before the sorbent has had any effect.A second mercury analyser 54 is operative for measuring the concentration of gaseous mercury in the flue gas in the clean gas duct 26,downstream of the bag house 10.The second mercury analyser 54 thus measures the concentration of mercury in the cleaned flue gas.The mercury analysers 52,54 are operative for sending signals to the control unit 48.Preferably measurements are performed by the mercury analysers 52,54,and corresponding signals are sent to the control unit 48,at least once every 30 minutes to obtain a quick response to changing conditions.The control unit 48 takes the signals from the pressure transducers, of which only one transducer 50 is illustrated in FIG.1,and the signals from the mercury analysers 52,54 into account when controlling the operation of the tanks 34,36,38,i.e.,when controlling the cleaning of the filter bags 12 of the respective compartment 14,16,18 by means of pulsing,in a manner which will be described in more detail hereinafter. Furthermore,the control unit 48 may also control the supply of sorbent from the sorbent silo 30 in a manner which will be described in more detail hereinafter.」
<翻訳>「[0044]第1の水銀分析器52は、バッグハウス10の上流側のダクト8内の燃焼ガスの水銀濃度を測定するように作用することができる。したがって、第1の水銀分析器52は、吸収剤が何らかの効果を生じる前に燃焼ガス中の気体状の水銀Hgの濃度を測定する。第2の水銀分析器54は、バッグハウス10の下流側の清浄ガスダクト26内の燃焼ガス中の気体状の水銀の濃度を測定するように作用することができる。したがって、第2の水銀分析器54は、洗浄済み燃焼ガス中の水銀濃度を測定する。水銀分析器52、54は、制御装置48に信号を送信するように作用することができる。好ましくは、測定は、水銀分析器52、54によって実行され、対応する信号は、少なくとも30分に1回、制御装置48に送信されて、変化する状態に対する迅速な応答を得る。制御装置48は、タンク34、36、38の動作を制御するときに、すなわち本明細書の以下でさらに詳細に述べる方法でパルシングによって各区画14、16、18のフィルタバッグ12の洗浄を制御するときに、図1にそのうちの1つの変換器50のみを示す複数の圧力変換器からの信号と、水銀分析器52、54からの信号とを考慮する。さらに、制御装置48は、本明細書の以下でさらに詳細に述べる方法で、吸収剤サイロ30からの吸収剤の供給を制御することもできる。」
(コ)「[0047]However,in situations where the measured concentration of mercury HGIN is higher than the mercury set point HGMEAN it is desirable to maintain a comparably thick dust cake on the filter bags 12, since such a thick dust cake is more efficient for removing mercury from the flue gas compared to a thin dust cake.Hence,in such situations,where the inlet concentration of mercury,i.e.,HGIN,is comparably high, the control unit 48 delays the cleaning of the filter bags 12, such that the cleaning of the filter bags 12 does not start until the measured pressure drop DP exceeds the second pressure drop set point DPHighHigh.Thus,in situations of high inlet concentration of mercury a higher pressure drop over the bag house 10 is accepted,since such higher pressure drop also results in the filter bags 12 having on them a thicker dust cake,which contains sorbent and which is effective for removing such high concentration of mercury,without requiring an increased dosage of sorbent from the silo 30.The pressure drop DP measured over the bag house 10 thus functions as an indirect indicator of the removal efficiency of the bag house 10,since there is a relation between the pressure drop DP and the thickness of the dust cake on the filter bags 12,and a similar relation between the thickness of the dust cake on the filter bags 12 and the mercury removal efficiency of the bag house 10.」
<翻訳>「[0047]しかしながら、測定された水銀HGINの濃度が水銀設定点HGMEANより高い状況では、フィルタバッグ12上に比較的厚いダストケーキを維持することが望ましい。そのような厚いダストケーキは、煙道から水銀を除去するのにガスを薄いダストケーキと比較して好ましい。従って、水銀の入口濃度HGINが比較的高いこのような状況では、制御ユニット48は、フィルタバッグ12の清掃を遅らせるので、フィルタバッグ12の清掃は、測定された圧力液滴DPは、第2の圧力降下設定点DPHighHighを超える。従って、高い入口濃度の水銀の状況では、バッグハウス10上のより高い圧力降下が受け入れられる。なぜなら、そのようなより高い圧力降下はまた、フィルタバッグ12の上に吸収剤を含み、サイロ30からの吸収剤の量を増加させる必要なしに、このような高濃度の水銀を除去することができる。バッグハウス10上で測定された圧力降下DPは、バッグハウス10の除去効率の間接的指標として機能する。フィルタバッグ12のダストケーキの厚さとバッグハウス10の水銀除去効率との間の類似の関係があるからである。」
(サ)「[0058]In a still further embodiment the control unit 48 could utilize information from both the first and the second mercury analysers 52,54.For example,the control unit 48 could control the cleaning of the filter bags 12 based on the signal from the first mercury analyser 52,and could control the dosage of sorbent from the silo 30 based on a third parameter,which would be based on the signal from the second mercury analyser 54.In such an alternative embodiment a high concentration of mercury,i.e.,HGIN>HGMEAN,is,first of all,handled by delaying the cleaning of the filter bags 12, in accordance with the method illustrated hereinbefore with reference to FIG.2.If this is not sufficient,such that an increased emission of mercury,HGOUT,is measured by the second mercury analyser 54,then the dosage of sorbent from the silo 30 is increased,to increase further the capacity of the bag house 10 to remove mercury from the flue gas.Hence,the cleaning of the filter bags 12 is controlled based on the inlet concentration of mercury,HGIN,and the dosage of sorbent is based on the outlet concentration of mercury,HGOUT.」
<翻訳>「[0058]さらに別の実施形態では、制御装置48は、第1の水銀分析器52および第2の水銀分析器54の両方の情報を利用することができる。例えば、制御装置48は、第1の水銀分析器52からの信号に基づいてフィルタバッグ12の洗浄を制御し、第2の水銀分析器54からの信号に基づく第3のパラメータに基づいてサイロ30からの吸収剤の投入量を制御することができる。この代替の実施形態では、高い水銀濃度、すなわちHGIN〉HGMEANには、図2を参照して上記で説明した方法によれば、第1に、フィルタバッグ12の洗浄を遅延させることによって対処する。これでは不十分で、第2の水銀分析器54で増加した水銀排出量HGOUTが測定された場合には、サイロ30からの吸収剤の投入量を増加させて、バッグハウス10の容量をさらに増大させて、燃焼ガスから水銀を除去する。したがって、フィルタバッグ12の洗浄は、水銀の入口濃度HGINに基づいて制御され、吸収剤の投入量は、水銀の出口濃度HGOUTに基づく。」
(シ)[0059]FIG.4 illustrates a schematic example of the effect of the control unit 48 controlling the cleaning of the bag house 10 in accordance with the method described hereinbefore with reference to FIG.2.For reasons of clarity the example of FIG.4 refers to simultaneous cleaning of all compartments 14,16,18,which is not necessarily the best way of performing the cleaning,as described hereinbefore.The left y-axis refers to the concentration of mercuryin mg/Nm3 dry gas, and the right y-axis refers to the pressure drop over the bag house 10,in Pascal.The X-axis is a time scale. Between the times T0 and T1 illustrated in FIG.4 the measured concentration of mercury in the duct 8,HGIN,is less than the mercury set point, which is the average concentration of mercury,HGMEAN,as measured during,e.g.,the last 10 days.Thus, during T0 to T1 a full cleaning of the filter bags 12 is initiated,in accordance with the second alternative third step 68 described hereinbefore with reference to FIG.2,each time the pressure drop DP over the bag house 10 exceeds DPHigh.However,at the time T1 the control unit 48 detects,in accordance with the first step 60 according to FIG.2,that HGIN exceeds themercury set point HGMEAN.In response to this observation the control unit 48 delays the cleaning of the filter bags 12,in accordance with the first alternative second step 62 illustrated in FIG.2,until the pressure drop DPover the bag house 10 exceeds DPHighHigh.When the pressure drop DP exceeds DPHighHigh a partial cleaning of the filter bags 12 is performed in accordance with the first alternative third step 66 illustrated in FIG.2.Such a partial cleaning results in that, as is illustrated in FIG.4,the pressure drop DP over the bag house 10 is reduced from DPHighHigh to about DPHigh.Thus,starting at T1,the dust cake is allowed to grow thicker on the filter bags 12,until DP exceeds DPHighHigh,and the dust cake is not entirely removed by the partial cleaning.」
<翻訳>「[0059]図4は、図1を参照して上述した方法によるバッグハウス10の清掃を制御する制御ユニット48の効果の概略的な例を示す。明瞭化の理由から、図2の例は、上述したように、必ずしもクリーニングを実行する最良の方法ではないが、すべての区画14,16,18の同時クリーニングを指す。左側のy軸は、乾燥ガスmg/Nm3中の水銀の濃度を示し、右側のy軸は、バッグハウス10上の圧力降下をパスカルで示す。x軸は時間スケールである。図3に示す時間T0と時間T1の間に、図4では、ダクト8内の水銀の測定濃度HGINは、例えば過去10日間に測定された水銀HGMEANの平均濃度である水銀設定点よりも小さい。したがって、T0~T1の間に、図2を参照して説明した第2の代替の第3のステップ68に従って、フィルタバッグ12の完全な洗浄が開始される。図2に示すように、バッグハウス10上の圧力降下DPがDPHighを超える毎に、しかし、時間T1において、制御ユニット48は、図3の第1のステップ60に従って、図2に示すように、HGINは水銀設定点HGMEANを超える。この観察に応答して、制御ユニット48は、図2に示す第1の代替の第2のステップ62に従って、フィルタバッグ12のクリーニングを遅らせる。バッグハウス10上の圧力降下DPがDPHighHighを超えるまで、圧力降下DPがDPhighHighを超えると、図2に示す第1の代替第3ステップ66に従って、フィルタバッグ12の部分的な清掃が実行される。このような部分的なクリーニングは、図2に示すように、図4に示すように、バッグハウス10上の圧力降下DPはDPHighHighから約DPHighに減少する。したがって、T1から始まり、DPがDPhighHighを超えるまで、フィルターバッグ12上でダストケーキをより厚く成長させることができ、部分的なクリーニングによってダストケーキを完全に除去することはできない。」
(ス)「[0063]Hereinbefore it has been described that the mercury set point is the average inlet mercury concentration HGMEAN.The HGMEAN value could either be a fixed value,based on experience,or could be a real long term rolling average,such as a monthly average of the mercury concentration as measured in the duct 8.It will be appreciated that other mercury set points could alsobe used.Examples of such mercury set points include a fixed specific value,not related to the average, such as 10 mg/Nm3,or a value that is related to the average inlet mercury concentration,e.g.,a mercury set point could be 120% of the HGMEAN value.Furthermore the mercury set point could be calculated continuously based on a mathematical equation.The basis for such mathematical equation could be parameters like temperature,flue gas flow,sorbent flow,etc.The control unit 48 could also be operative for optimizing the sorbent supply and the pressure drop DP at which the cleaning of the filterbags 12 is initiated in such a manner that overall operating costs are minimized,and mercury emission is kept below the emission limit as specified by authorities.」
<翻訳>「[0063]ここまでは、水銀の設定点は平均入口水銀濃度HGMEANであると述べた。HGMEAN値は、実験に基づく固定値であってもよいし、ダクト8内で測定される水銀濃度の月平均など、実際の長期ローリング平均であってもよい。その他の水銀設定点を使用することもできることは、理解されるであろう。このような水銀設定点の例としては、10mg/Nm3など平均に関係しない固定特性値、または平均入口水銀濃度に関係する値が含まれ、例えば、水銀設定点は、HGMEAN値の120%とすることができる。さらに、水銀設定点は、数式に基づいて継続的に計算することもできる。このような数式の基本は、温度、燃焼ガス流、吸収剤流などのパラメータとすることができる。制御装置48は、吸収剤供給量とフィルタバッグ12の洗浄が開始される圧力降下DPとを、全体としての運転コストが最小限に抑えられ、水銀排出量が当局によって指定された排出限界未満に保たれるように最適化するように作用することもできる。」
(セ)「[0036]FIG.1 is a schematic side view and illustrates a power plant 1,as seen from the side thereof.」
<翻訳>図1は、発電所1の側面図であり、発電所1を側方から見た様子を示している。
以下に、FIG.1を示す。
B-1-2.甲第1号証に記載された発明
i)甲第1号証の記載事項(ア)ないし(ウ)から、甲第1号証には、「水銀」を含む「燃焼プラント」の排ガスである「高温のプロセスガス」から「微粉活性炭などの固体の吸収剤」で「水銀」を吸着し、その後で「バッグハウスなどのフィルタ」で除去する際に、「吸収剤供給量」を少なくする排ガス処理方法について示されているといえる。
ii)そして当該方法の詳細として、同(エ)ないし(ケ)及び(セ)のFig.1には、
「ボイラ2」からの「粉塵および水銀などの汚染物質を含む燃焼ガス」を、「燃焼ガスの粉塵の大部分を除去するように作用」する「バッグハウスなどの形態をした任意選択の1次ダストコントローラ6」と、その後段の「フィルタバッグ12」を有する「2次ダストコントローラ10」(「バッグハウス10」)で、「燃焼ガスに含まれる粉塵」及び「粒子状物質である吸収剤」を「除去」し、「ボイラ2」「1次ダストコントローラ6」から「バッグハウス10」に「燃焼ガス」を導く「ガスダクト8」へ「吸収剤」としての「粉末状の活性炭」を「送る」排ガス処理方法において、
「バッグハウス10」の上流側に「第1の水銀分析器52」及び下流側に「第2の水銀分析器54」を置いて「燃焼ガスの水銀濃度を測定」する工程と、当該「水銀濃度」の測定値の信号と「圧力変換器50」からの「バッグハウス10」内の圧力変化の信号により、「制御装置48」で「フィルタバッグ12」の洗浄と「粉末状の活性炭」の供給量を制御する工程を備え、
制御する工程では、同(コ)(サ)から、「第1の水銀分析器52」で「測定された水銀濃度」が設定水銀濃度である「水銀設定点」より高い場合に、「高い圧力降下」があっても「フィルタバッグ12の洗浄を遅延させることによって対処」し、それでも「第2の水銀分析器54」で「増加した水銀排出量」が測定される場合には「吸収剤の投入量を増加」させて「燃焼ガスからの水銀を除去」する排ガス処理方法、について示されているといえる。
iii)ここで、「バッグハウスなどの形態をした任意選択の1次ダストコントローラ6」は「燃焼ガスの粉塵の大部分を除去するように作用」するものであるから、「任意選択」とはされるが、甲第1号証に記載の「排ガス処理方法」においては、「1次ダストコントローラ6」は存在するものとして理解(把握)すべきである。
iv)以上から、本件請求項6の記載に則して整理すれば、甲第1号証には、
「ボイラからの粉塵および水銀などの汚染物質を含む燃焼ガスを、燃焼ガスの粉塵の大部分を除去するように作用する1次ダストコントローラと、その後段のフィルタバッグを有するバッグハウスで、燃焼ガスに含まれる粉塵及び粒子状物質である吸収剤を除去し、ボイラ、1次ダストコントローラからバッグハウスに燃焼ガスを導くガスダクトへ吸収剤としての粉末状の活性炭を送る排ガス処理方法において、
バッグハウスの上流側に第1の水銀分析器及び下流側に第2の水銀分析器を置いて燃焼ガスの水銀濃度を測定する工程と、当該水銀濃度の測定値の信号と圧力変換器からのバッグハウス内の圧力変化の信号により、制御装置でフィルタバッグの洗浄と粉末状の活性炭の供給量を制御する工程を備え、
制御する工程では、第1の水銀分析器で測定された水銀濃度が設定水銀濃度より高い場合に、高い圧力降下があってもフィルタバッグの洗浄を遅延させることによって対処し、それでも第2の水銀分析器で増加した水銀排出量が測定される場合には、吸収剤の投入量を増加させて燃焼ガスからの水銀を除去する排ガス処理方法。」(以下、「引用発明B」という。)の発明が記載されていると認められる。
B-1-3.本件発明6と引用発明Bとの対比
i)引用発明Bの「ボイラ」、「粉塵および水銀などの汚染物質を含む燃焼ガス」は、本件発明6の「炉」、「水銀を含む排ガス」に相当する。
ii)引用発明Bの「燃焼ガスの粉塵の大部分を除去するように作用する1次ダストコントローラと、その後段のフィルタバッグを有するバッグハウス」と、本件発明6の「集塵装置」とは、「バッグハウス」が「フィルタバッグ」を有することから「集塵装置」にあたり、「集塵装置」である点で一致する。
iii)引用発明Bの「燃焼ガスを導くガスダクト」は、本件発明6の「排ガス流路」に相当する。
iv)すると上記i)~iii)から、引用発明Bの「ボイラからの粉塵および水銀などの汚染物質を含む燃焼ガスを、燃焼ガスの粉塵の大部分を除去するように作用する1次ダストコントローラと、その後段のフィルタバッグを有するバッグハウスで、燃焼ガスに含まれる粉塵及び粒子状物質である吸収剤を除去し、ボイラ、1次ダストコントローラからバッグハウスに燃焼ガスを導くガスダクトへ吸収剤としての粉末状の活性炭を送る排ガス処理方法」と、本件発明6の「炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法」とは、「炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法」の点で一致する。
v)引用発明Bの「バッグハウスの上流側に第1の水銀分析器及び下流側に第2の水銀分析器を置いて燃焼ガスの水銀濃度を測定する工程」と、本件発明6の「集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定する測定工程」とは、「集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定する測定工程」の点で一致する。
vi)引用発明Bの「当該水銀濃度の測定値の信号と圧力変換器からのバッグハウス内の圧力変化の信号により、制御装置でフィルタバッグの洗浄と粉末状の活性炭の供給量を制御する工程」と、本件発明6の「制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程」とは、「制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程」の点で一致する。
v)以上から、本件発明6と引用発明Bとは、
「炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備える、排ガス処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>「集塵」について、本件発明6では(一つの)「集塵装置」のみで集塵するのに対して、引用発明Bでは「粉塵の大部分を除去するように作用する1次ダストコントローラと、その後段のフィルタバッグを有するバッグハウス」とで集塵する点。
<相違点2>「水銀」の濃度計測について、本件発明6では「集塵装置の下流側」の「下流側水銀濃度計」で計測するのに対して、引用発明Bでは「バッグハウス」の「上流側」の「第1の水銀分析器」及び「下流側」の「第2の水銀分析器」で計測する点。
<相違点3>「測定」される物理量と「制御」される対象について、本件発明6では「下流側水銀濃度計」で測定された「水銀濃度」に基いて、「活性炭供給量」を制御するのに対して、引用発明Bでは「上流側」の「第1の水銀分析器」及び「下流側」の「第2の水銀分析器」で測定された「水銀濃度」と、「圧力変換器からのバッグハウス内の圧力変化」に基いて、「フィルタバッグの洗浄」と「活性炭の供給量」を制御する点。
<相違点4>「活性炭」の供給の制御に関して、
本件発明6では、
a)制御工程で、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、水銀濃度測定値と活性炭供給量との予め定める対応関係に基づき活性炭供給量を制御し、
b)さらに、制御工程で、
b-1)排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、
b-2)水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、
b-3)水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つように活性炭供給量を制御し、
c)活性炭供給量を所定の最小値以上に維持して、集塵装置のバグフィルタに活性炭を付着させ活性炭吸着層を予め十分に形成しておき、高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際に速やかに、既に形成されている活性炭吸着層とその際に吹き込まれる活性炭により水銀を吸着除去して集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下にまで低下させるものであるのに対して、
引用発明Bでは、
f)制御する工程では、第1の水銀分析器で測定された水銀濃度が設定水銀濃度より高い場合に、高い圧力降下があってもフィルタバッグの洗浄を遅延させることによって対処し、それでも第2の水銀分析器で増加した水銀排出量が測定される場合には、吸収剤の投入量を増加させて燃焼ガスからの水銀を除去するものである点。
なお、上記「a)」~「c)」及び「f)」は当審で付与したものである。
B-1-4.相違点の検討
事案に鑑み、相違点4について検討する。
(1)相違点4が引用発明Bから示唆されるかについて
上記相違点4が引用発明Bと甲第1号証の記載から示唆されるものか否かについて検討する。
i)上記「A-1-4.(1)ii-1)」に記載したように、本件発明6の上記b-1)は、「活性炭の吸着層が常に形成され」るように、「水銀濃度測定値」が「零又は測定可能な限界最小値未満の値」でも「所定の最小値」の活性炭が供給されることを意味するものである。
一方、上記引用発明Bのf)は、「第1の水銀分析器で測定された水銀濃度が設定水銀濃度より高い場合に、高い圧力降下があってもフィルタバッグの洗浄を遅延させることによって対処し、それでも第2の水銀分析器で増加した水銀排出量が測定される場合には、吸収剤の投入量を増加させる」ものであって、これは、既に「厚いダストケーキ」の存在することを前提とするものであり、そうである以上、「厚いダストケーキ」を改めて生成するために「活性炭」を「所定の最小値」で供給することまでも示唆するものとはいえないから、本件発明6の上記b-1)を示唆するものとはいえない。
ii)また、上記「A-1-4.(1)ii-2)」に記載したように、本件発明6の上記b-3)は、「水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにする」ものであるのに対して、引用発明Bのf)は、水銀濃度が高くなったときに活性炭供給量をどのように増加させるかを具体的に示すものではないから、本件発明6の上記b-3)を示唆するものとはいえない。
iii)さらに、同(シ)(ス)には「フィルタバッグ12」の清掃に関する技術的な内容が記載され、これは「吸収剤」である「活性炭」の投入に直接的に関係するものではない。
iv)以上から、上記a)、b-2)及びc)について論ずるまでもなく、上記相違点4は引用発明Bと甲第1号証の記載から示唆されるものではない。
(2)引用発明Bへの他の甲各号証に記載の技術手段の適用について
そこで、引用発明Bへの他の甲各号証に記載の技術手段の適用により、上記相違点4が当業者に容易に推考し得るものといえるかについて検討する。
(2-1)甲第2号証の適用について
異議申立人 一條淳 の異議申立の甲第2号証と、同 鈴木友子 の異議申立の甲第1号証は同一の公知文献であるので、同文献に記載されている技術手段は、上記「A-1-3.」「A-1-4.」に記載したように、本件発明6のb-1)及びb-3)を示唆するものではない。
したがって、仮に引用発明Bに甲第2号証に記載の技術手段を適用できたとしても、本件発明6は容易に成し得るものではない。
(2-2)甲第3号証の適用について
i)甲第3号証には、「キルンで発生する排ガスを吸着材に接触させることにより、排ガス中の水銀を含む有害物質を吸着材に吸着させる吸着工程と、前記吸着材を酸素含有雰囲気で加熱することにより、吸着した前記有害物質を蒸発させて吸着材から分離させる蒸発工程と、蒸発した前記有害物質を含む蒸気を加熱することにより、有害物質の一部を熱分解する再加熱工程と、熱分解後のガスを冷却することにより、水銀を凝集除去する水銀除去工程とを有することを特徴とするキルン排ガスの処理方法。」(【請求項1】)において、「排ガス中に投入された吸着材を捕捉して排ガスを通過させるフィルタ装置22と、フィルタ装置22を通過した排ガス中の水銀濃度を測定する水銀測定器23と、水銀測定器23の測定結果に基づき吸着材投入手段21における吸着材の散布量を調整する調整手段24とを備える」(【0023】)ものであり、「吸着剤」は「平均粒径が100~5000μmの粉状又は粒状の活性炭や粉炭活性炭」(【0024】)が用いられ、「この調整手段24による吸着材の投入量の調整は、水銀測定器23において排ガス中から例えば40μg/m3N以上の水銀濃度が検知された場合に、吸着材の投入量を排ガス1m3N当たり0.02gの割合で増加させ、その水銀濃度を下回ったら吸着材の投入量を徐々に減少させて前述の排ガス1m3N当たり0.01~1.0gに維持するように制御することが行われる。」(【0028】)ものである。
ii)ここで、上記「A-1-4.(1)ii-1)」に記載したように、本件発明6の上記b-1)は、「活性炭の吸着層が常に形成され」るようにし、「水銀濃度測定値」が「零又は測定可能な限界最小値未満の値」でも「所定の最小値」の活性炭が供給されることを意味するものである。
しかし、上記の甲第3号証に記載の技術手段における「活性炭」の「散布量」の「制御」では、「40μg/m3N以上の水銀濃度が検知」される前の「吸着材の投入量」は明らかでないし、同「検知」前に「活性炭の吸着層が常に形成」されていたかも明らかでないから、同技術手段は本件発明6の上記b-1)を示唆するものとまではいえない。
iii)また、上記「A-1-4.(1)ii-2)」に記載したように、本件発明6の上記b-3)は、「水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにする」ものであるのに対して、上記の甲第3号証に記載の技術手段は、同「検知」後に「吸着材の投入量を排ガス1m3N当たり0.02gの割合で増加させ、その水銀濃度を下回ったら吸着材の投入量を徐々に減少させ」るものであり、「所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ」ものではないから、同技術手段は本件発明6の上記b-3)を示唆するものとまではいえない。
iv)さらに、引用発明Bに甲第3号証に記載の技術手段を適用し得るとしても、本件発明6を成すためには、引用発明Bの「1次ダストコントローラ」を用いないことが容易に成し得ることを要するが、上記甲第2号証の記載事項(エ)にあるように、引用発明Bの前段の「1次ダストコントローラ」は、「粉塵の大部分を除去するように作用」させることを目的とし、後段の「バッグハウス」は残部の粉塵を処理するものであり、その機能も残部の粉塵の処理に適したものといえるから、前段の「1次ダストコントローラ」を用いない場合に、後段の「バッグハウス」が「粉塵の大部分」を含む全ての粉塵を処理できるのか明らかでなく、引用発明Bにおいて「1次ダストコントローラ」を用いないとすることは技術的に考え難い。
v)したがって、甲第3号証に記載の技術手段は、相違点4に係るb-1)及びb-3)について示唆するものではなく、さらに、引用発明Bに同技術手段を適用できたとしても、「1次ダストコントローラ」を用いないようにして本件発明6を発明することは容易に成し得ることとはいえない。
(2-3)甲第4号証の適用について
甲第4号証には、「・・・多量な排ガスを脱硫するシステムにおいて、排ガス中から金属水銀を有効に除去する方法」(【0001】)について記載され、「・・・金属水銀は水に溶けにくいので、脱硫装置を通過してしまうが、水溶性にできれば脱硫装置で除去可能である。そこで・・・脱硝装置の前段に、金属水銀を塩化水銀に変換する塩素化剤(塩化水素等)を注入する排煙処理方法が有効であるが・・・必要以上の塩素化剤を添加することは、システム中の煙道や後流装置の腐食原因物質とな」る(【0004】)ので、「・・・塩素化剤を単に脱硫装置前段で導入するのではなく、例えば脱硫後である脱硫吸収塔出口、集塵器出口、あるいは、再加熱器出口等において、水銀濃度を連続的にモニタリングして、そのための必要十分量の塩素化剤を適切に添加することによって、かかる問題点が解決されることを見い出した」(【0005】)ことが記載されている。
しかしながら、引用発明Bの排ガスから水銀除去は活性炭による乾式の吸収除去であり、甲第4号証に記載された技術手段は、塩素化材を注入して金属水銀を塩化水銀に変換して水に溶けやすくして処理する湿式の除去であり、活性炭を水銀吸収に用いるものではないから、相違点4に係るb-1)及びb-3)について示唆するものはない。
したがって、引用発明Bへ甲第4号証に記載の技術手段を適用する動機付けがない。
B-1-5.本件発明6についての結言
以上から、他の相違点について考慮するまでもなく、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証に記載された技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない出願に対してされたものでないから、取り消されるべきものでない。
B-2.本件発明1ないし5及び本件発明7ないし10について
上記「A-2.」に記したのと同様の論理で、活性炭の供給について、本件発明6では「直線的」に増大させていたものが、本件発明7では「階段状」に増大させるものに変更されたといえるものであり、本件発明7も上記相違点4に係るb-1)及びb-2)を構成とするものである。
したがって、本件発明7に係る特許は、本件発明6に係る特許と同様に取り消されるべきものでない。
また、本件発明8ないし10は請求項6ないし7を直接又は間接的に引用し、上記b-1)及びb-3)を構成とするものであるから、本件発明8ないし10に係る特許は、本件発明6又は7に係る特許と同様に取り消されるべきものでない。
さらに、本件発明1ないし5の「排ガス処理装置」は、本件発明6ないし10の「排ガス処理方法」と、それぞれ発明のカテゴリーが相違するのみで実質的に同一発明であるから、本件発明1ないし5に係る特許は、本件発明6ないし10に係る特許と同様に取り消されるべきものでない。
第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700586