特許異議申立
2025-700781
プロペラシャフトのヨーク及びプロペラシャフト
- 審判番号
- 2025-700781
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-505153
- 登録番号
- 7652882
- 請求日
- 2025年07月30日
- 審決日
- 2026年01月28日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日立Astemo株式会社
- 【権利者代理人】小林 博通
- 【異議申立人】鈴木 友子
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 岩瀬 昌治
- 分類
- P1651.121-Y (B60K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7652882号発明「プロペラシャフトのヨーク及びプロペラシャフト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7652882号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7652882号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和4年1月14日(優先権主張 令和3年3月12日)を国際出願日とする出願であって、令和7年3月18日にその特許権の設定登録がされ、同年3月27日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、同年7月30日に特許異議申立人 鈴木友子(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
以降の経緯は、以下のとおりである。
令和7年10月 6日付け 手続補正指令(方式)
令和7年11月 4日 異議申立人による手続補正書(方式)、上申書の提出
第2 本件発明
特許第7652882号の請求項1~7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
プロペラシャフトのヨークであって、
回転軸に固定される固定部と、
前記固定部から前記回転軸の回転軸線の方向である軸方向に沿って延出し、前記回転軸線を挟んで前記軸方向に直交する径方向に対向する一対のアーム部である第1アーム部及び第2アーム部と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部を軸支する十字軸と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の基端側に設けられたアーム基部と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部において前記アーム基部よりも先端側に設けられ、前記径方向の内側部が凹状に窪むことにより前記アーム基部に対して比較的薄肉に形成されたアーム先端部と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の前記アーム基部の前記径方向の内側における前記回転軸線の周方向の両側縁部に前記軸方向に沿って延びるアーム内側縁面取り部と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部において、前記アーム基部の前記径方向の外側であって、かつ前記周方向の両側端縁に沿って設けられ、前記アーム内側縁面取り部よりも大きな前記周方向の幅を有し、かつ前記周方向の幅が概ね一定となるように前記軸方向に延在し、前記アーム基部の外側から前記回転軸線に向かって凹むアーム外側縁面取り部と、
を備えたことを特徴とするプロペラシャフトのヨーク。
【請求項2】
請求項1に記載のプロペラシャフトのヨークであって、
前記アーム外側縁面取り部は、切削面が平面状に形成されてなるC面取り状のアーム外側縁C面取り部と、前記アーム外側縁C面取り部と前記アーム基部の前記周方向の一側面とを滑らかに接続するR面取り状のアーム外側縁第1R面取り部と、前記アーム外側縁C面取り部と前記アーム基部の前記周方向の他側面とを滑らかに接続するR面取り状のアーム外側縁第2R面取り部と、を有することを特徴とするプロペラシャフトのヨーク。
【請求項3】
請求項2に記載のプロペラシャフトのヨークであって、
前記アーム外側縁第1R面取り部及び前記アーム外側縁第2R面取り部は、いずれも半径3mmのR面取りによって構成されたことを特徴とするプロペラシャフトのヨーク。
【請求項4】
請求項1に記載のプロペラシャフトのヨークであって、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の前記周方向の側面と前記回転軸線とのなす角が3度以下に設定されていることを特徴とするプロペラシャフトのヨーク。
【請求項5】
請求項1に記載のプロペラシャフトのヨークであって、
前記アーム基部は、外側面が外方へ向かって膨出する円弧状の曲面によって形成されていることを特徴とするプロペラシャフトのヨーク。
【請求項6】
請求項1に記載のプロペラシャフトのヨークであって、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、前記十字軸が挿入されるアーム貫通孔の外側端部にザグリ部を有し、
前記ザグリ部は、前記軸方向において、一部が前記アーム外側縁面取り部と重なるように設けられたことを特徴とするプロペラシャフトのヨーク。
【請求項7】
軸部と、ヨークとを備えたプロペラシャフトであって、
前記ヨークは、
回転軸に固定される固定部と、
前記固定部から前記回転軸の回転軸線の方向である軸方向に沿って延出し、前記回転軸線を挟んで前記軸方向に直交する径方向に対向する一対のアーム部である第1アーム部及び第2アーム部と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部を軸支する十字軸と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の基端側に設けられたアーム基部と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部において前記アーム基部よりも先端側に設けられ、前記径方向の内側部が凹状に窪むことにより前記アーム基部に対して比較的薄肉に形成されたアーム先端部と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の前記アーム基部の前記径方向の内側における前記回転軸線の周方向の両側縁部に前記軸方向に沿って延びるアーム内側縁面取り部と、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部において、前記アーム基部の前記径方向の外側であって、かつ前記周方向の両側端縁に沿って設けられ、前記アーム内側縁面取り部よりも大きな前記周方向の幅を有し、かつ前記周方向の幅が概ね一定となるように前記軸方向に延在し、前記アーム基部の外側から前記回転軸線に向かって凹むアーム外側縁面取り部と、
を有することを特徴とするプロペラシャフト。」
第3 申立理由の概要
異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2~8号証を提出し、請求項1~7に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~8号証に記載された発明又は甲2~8号証に記載された事項に基いて、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~7に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
(証拠方法)
甲第1号証:2003年4月1日に株式会社ナジコにより製作されたユニバーサルジョイントのヨークの図面
甲第2号証:特開2015-117741号公報
甲第3号証:特開2017-122830号公報
甲第4号証:特開2005-163179号公報
甲第5号証:特開平5-118343号公報
甲第6号証:特開2018-128139号公報
甲第7号証:1995年5月10日に株式会社ナジコにより製作されたヨークの図面
甲第8号証:昭和59年7月10日に株式会社ナジコにより製作されたヨークの図面
なお、甲第1号証、甲第7号証、第8号証の右側の記載は、証拠説明書における標目である。
以下、甲第1号証、甲第2号証などを、それぞれ「甲1」、「甲2」などという。
第4 各甲号証の記載1 甲1について
(1)甲1として、次の2枚の図面が示されている。
「
[図:0001433108000001.jpg]
[図:0001433108000002.jpg]
」
甲1は、その体裁からみて機械部品の設計図面であると考えられるところ、機械製図における図面には、その右下隅に表題欄を設け、図面番号、図名、企業(団体)名、責任者の署名、図面作成年月日、尺度、投影法などを記入するのが一般的であるから(参考:JIS B0001:2019 7ページ 5.2)、これを前提として、甲1に記載された事項について検討する。
(2)甲1の1枚目の図面について
ア この図面の右下隅の表題欄の、「DATE」すなわち日付の欄には「’03.4.1」と記載され、これは図面作成年月日が「’03.4.1」であるものと理解される。ここで、アポストロフィは、前2桁を省略する際に用いられるものであって、「03」の前の省略された2桁については不明であるが、「’03」に該当する最も新しい西暦であるとするならば、上記図面作成年月日は2003年4月1日であると推認される。なお、この図面作成年月日は、異議申立人の「甲第1号証は、2003年4月1日に」「製作され」た旨の主張とも矛盾しない。
イ この図面の右下隅の表題欄には、「NAME」すなわち図名の欄には「UNIVERSAL JOINT」と記載され、この図面がユニバーサルジョイントを図示したものであることがわかる。
ウ この図面の右下隅の表題欄の最下欄には「NAKAMURAJICO CO.,LTD.」と記載されていることから、この図面は、「NAKAMURAJICO」という株式会社のものであることがわかる。
エ 上記イのとおり、この図面は、ユニバーサルジョイントに係るものであるところ、ユニバーサルジョイントの構造として、2本の回転軸を直交して固定した十字軸を中間節とし、これと回転対偶される穴を原動軸または従動軸に垂直な平面内で回転させる二股支持部品で構成されるもの(参考:機械工学事典、一般社団法人 日本機械学会、https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=16:1005133)が当業者に周知であることを踏まえれば、この図面は、回転軸と、その回転軸の両端のそれぞれにユニバーサルジョイントを固定したものを表す図面であることが理解できる。
そして、この図面において、上記回転軸の一方の端部のユニバーサルジョイントにおける、回転軸に固定された二股支持部品に着目すると、この図面からは、二股支持部品が回転軸に固定された部分から回転軸の軸線に沿う方向に延びる一対のアームを有し、この一対のアームの先端部がアームの基端部に対して比較的薄肉に掲載されたことが看取されるが、この図面そのものからは、ユニバーサルジョイントが備える上記十字軸までは看取されない。
オ 以上によれば、2003年4月1日に、「NAKAMURAJICO」という株式会社により作成されたユニバーサルジョイントの図面である甲1の1枚目の図面には次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。
「回転軸に固定された部分と、
前記回転軸に固定された部分から前記回転軸の軸線に沿う方向に延びる一対のアームを備えた、
二股支持部品。」
(3)甲1の2枚目の図面について
ア この図面の右下隅の表題欄の、「DATE」すなわち日付の欄には「’03.4.1」と記載されており、これは、上記(2)アにおいて検討したとおりであるから、この図面の図面作成年月日は2003年4月1日であると推認される。
イ この図面の右下隅の表題欄には、「NAME」すなわち図名の欄には「WEY」と記載されているが、このような用語は当業者に周知ではないから、何を意味するのかは不明である。
ウ この図面の右下隅の表題欄の最下欄には「NAKAMURAJICO CO.,LTD.」と記載されていることから、この図面は、「NAKAMURAJICO」という株式会社のものであることがわかる。
エ この図面の3つの図は、それぞれの図示内容及び相互の配置から見て、部品の三面図と考えることが自然であるから、これを前提とするならば、この図面から、断面略円形の部分と、当該断面略円形状の部品から当該断面略円形状の部分の中心線に沿う方向に延びる一対のアームを備え、延在部の半径方向外側の周方向両端部に符号12及び22で示された面、延在部の半径方向内側の周方向両端部に符号11及び21で示された面が看取される。
オ 以上によれば、2003年4月1日に、「NAKAMURAJICO」という株式会社により作成された「WEY」の図面である甲1の2枚目の図面には次の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されているといえる。
「断面略円形の部分と、当該断面略円形状の部品から当該断面略円形状の部分の中心線に沿う方向に延びる一対のアームを備え、
前記延在部の半径方向外側の周方向両端部に面を有し、
前記延在部の半径方向内側の周方向両端部に面を有する、
部品。」
2 甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている(下線は当審合議体が付した。以下同様。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジヨークに関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、図1~図9を参照して説明する。
【0018】
≪推進軸の構成≫
本実施形態に係る推進軸200(プロペラシャフト)は、FFベースの四輪駆動車(車両)に搭載されており、車両の前側に配置された変速装置(図示しない)の出力する動力を、車両の後側に配置された終減速装置(図示しない)に伝達させる動力伝達軸であり、前後方向かつ水平方向で延びている。変速装置は車両の前側のボンネット下に配置された内燃機関(原動機)が出力する動力を変速するものである。
【0019】
推進軸200は、2ピース構造(2分割構造)を有しており、前側の第1軸211と、後側の第2軸212と、第1軸211の後端部及び第2軸212の前端部を連結する等速ジョイント220と、推進軸200の前後方向中間で推進軸200を車体に対して回転自在で支持する中間軸受ユニット230と、前側の第1十字軸継手101(十字軸ジョイント)と、後側の第2十字軸継手102と、を備えている。等速ジョイント220は、例えば、トリポート型、ダブルオフセット型、レブロ型、バーフィールド型で構成されている。
この他、推進軸200が等速ジョイント220を備えず、第1軸211と第2軸212が十字軸ジョイントで連結された構成でもよい。
【0020】
第1十字軸継手101は、変速装置の出力軸と一体であるコンパニオンフランジ310(図2参照)と、第1軸211の前端部とを連結するジョイントである。第2十字軸継手102は、第2軸212の後端部と、終減速装置の入力軸と一体であるコンパニオンフランジ320とを連結するジョイントである。第1十字軸継手101及び第2十字軸継手102は同様の構成であるので、以下、第1十字軸継手101について説明する。
【0021】
≪第1十字軸継手≫
第1十字軸継手101は、図2に示すように、フランジヨーク1(第1ヨーク)と、スタブヨーク110(第2ヨーク)と、十字軸120(スパイダー)と、ニードルローラーベアリング130(軸受)と、を備えている。
【0022】
<スタブヨーク>
スタブヨーク110は、鍛造品であって、第1軸211の前端に固定された円筒状を呈する円筒部111と、円筒部111の前側において平断面視で横U字形を呈するヨーク112と、を備えている。ヨーク112を構成する一対のヨーク部113、113(アーム部)には、十字軸120が装着される装着孔113aが形成されている。
【0023】
<十字軸>
十字軸120は、前後方向視において十字形を呈しており、径方向外向きに延びる4本の軸部121を備えている。4本の軸部121は、円柱状を呈し、周方向において等間隔(90°間隔)で配置されている。第1直径線上に配置された一対の軸部121は、ニードルローラーベアリング130を介して、スタブヨーク110の装着孔113aに装着されている。第1直径線と直交する第2直径線上に配置された一対の軸部121は、フランジヨーク1の後記する装着孔31に装着されている。
【0024】
<ニードルローラーベアリング>
ニードルローラーベアリング130は、軸部121と、スタブヨーク110のヨーク部113またはフランジヨーク1のヨーク部30との間に介装され、軸部121とヨーク部113またはヨーク部30とを相対的に揺動(回動)自在にするラジアル軸受である。」
「図1
[図:0001433108000003.jpg]
」
「図2
[図:0001433108000004.jpg]
」
3 甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、ICパッケージ、プリント基板、液晶ディスプレイあるいは有機ELディスプレイ等を製造する際に、フォトマスクのゴミよけとして使用されるペリクルに関する。」
「【発明の効果】
【0018】
本発明のペリクルは、ペリクル完成時に実施するペリクルフレーム外観異物検査において、ペリクルフレーム内側面の上下エッジ部のパーティクルのように見られる傷や突起を減少させ、以て前記検査精度を向上せしめるため、厳格なパーティクル管理を可能とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明を含むペリクルの一般的な構成について説明する。図1は、一般的なペリクルの構成を示した概念断面図である。通常、ペリクルは、ペリクルフレーム1、ペリクル膜2、ペリクルフレーム1とペリクル膜2を接着するための接着剤層3、ペリクルをフォトマスク5に装着するための粘着剤層4、さらに輸送、保管時においては粘着剤層4を保護するためのライナー(図示せず)から構成される。本発明のペリクルの構成も同様であり、一般的なペリクルの構成を適用できる。」
「【0030】
図6は、請求項3に係る発明の一例を示した概念断面図である。図6に示すように、ペリクルフレームの内側面11と上端面13とが成すエッジが、C面取りされており、さらにペリクルフレームの内側面11と該C面取りされてできたC面15とが成すエッジが、R面取りされており、その結果、R面25が形成されている。ここでは、その他のエッジが面取りされていてもよく、例えば、ペリクルフレームの上端面及び下端面と該C面とが成すエッジが、二次面取りされていてもよい。」
「【0033】
また、エッジ26及びエッジ27には、さらにR面取り又はC面取りを施してもよく、該C面取りを行うことによって生じるエッジをさらに面取りすることに制限はない。このように、C面取りを複数回行えば、エッジ部の傷や突起を減少させる効果が高まるが、作業性等を考慮して、実施の有無を決定すればよい。」
「図1
[図:0001433108000005.jpg]
」
「図6
[図:0001433108000006.jpg]
」
「図7
[図:0001433108000007.jpg]
」
4 甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム合金を用いて塑性加工により成形して成形品を得る成形品の製造方法およびその生産ラインに関するもので、例えば、詳しくは、各種車両たとえば自動車、二輪車、鉄道車両などの輸送装置に用いられるユニバーサルジョイントヨークのような、アルミニウム合金からなる成形品の製造方法およびその生産ラインに関するものである。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施形態の一例を説明する。
【0036】
図2に素形材を機械加工した後の成形品の例としてユニバーサルジョイントヨークの一例を示す。ユニバーサルジョイントヨークは、少なくともシャフトへの接合部(カップ状部)(95)、ピンボス部(43)、ピン孔(94a、94b)、プレート部(42)とから構成されている。夫々の部位はさらに必要に応じて機械加工により最終製品に加工される。
【0037】
図1に本発明のユニバーサルジョイントヨーク素形材の一例を示す。素形材は、少なくともシャフトへの接合部(カップ状部)(41)、ピンボス部(43)、プレート部(42)とから構成されている。
【0038】
図3(a),(b)にプロペラシャフト用に用いるユニバーサルジョイントヨーク素形材の別の例の概略見取り図を示す。ユニバーサルジョイントヨーク素形材10は、円筒部11と、この円筒部11の一端を閉塞する底12と、この底12の円筒部11と反対側へ対向して延びる2つのピンボス部13とで構成されている。なお、カップ形状部(有底円筒形状部)は、円筒部11と底12とで構成され、接続部として機能する。
【0039】
本発明のユニバーサルジョントヨーク及びそれを組み込んだパワートレインシステムの構成の例を図4に基づいて具体的に説明する。符号112a、112b、112cはヨークで、このヨークは図2に示すように、ピンボス部(43)に機械加工により設けた十字軸との接続部となるピン穴(94a、94b)を有している。ピン穴へは十字軸(113a、113b、113c)を介して対となるヨークへと接続される。一方、カップ状に形成された部位(95)は機械加工によりシャフト(114a、114b)の径に合せて仕上げられ、シャフトへミグ溶接(MIG:Metal Inert Gas arc welding)、ティグ溶接(TIG:Tungsten Inert Gas arc welding)などの溶接、摩擦圧接、摩擦攪拌接合などの接合により、シャフト(114a、114b)へ固定される。
【0040】
ユニバーサルジョイントヨークおよびその素形材において、符号41、符号11が有底の薄肉円筒形状部位、符号43、符号13が該底部の円筒形状と反対側へ延びる凸状部位に対応している。ユニバーサルジョイントヨークおよびその素形材は、肉厚部位(耳部(ピンボス部))と薄肉部(カップ形状部位(円筒形状部位))とを有する成形品となっている。」
「図2
[図:0001433108000008.jpg]
」
「図4
[図:0001433108000009.jpg]
」
5 甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車用プロペラシャフト等に用いられる自在継手の軸受固定方法に関する。」
「【0013】また、ヨーク部材1の軸受孔2の開口端は座ぐりが施され後述するかしめ工具のかしめパンチと同径に拡径されている。」
「図1
[図:0001433108000010.jpg]
」
6 甲6について
(1)甲6には、以下の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在継手用ヨークに関し、さらに詳しくは、十字軸式自在継手(カルダンジョイント)に用いられる自在継手用ヨークに関する。」
「【0031】
{2.自在継手10A,10Bの構成}
図2は、図1に示すステアリングシャフト2とインターミディエイトシャフト3との接続状態、及び、インターミディエイトシャフト3とピニオンシャフト4との接続状態を示す図である。
【0032】
図2を参照して、自在継手10Aは、十字軸式自在継手(カルダンジョイント)であり、ヨーク11A,12Aと、十字軸13Aとを備える。ヨーク11Aは、締付ボルト14Aにより締め付けられることによって、ステアリングシャフト2の下方の端部と接合される。ヨーク12Aは、インターミディエイトシャフト3の上方の端部と接合される。ヨーク12Aとインターミディエイトシャフト3との接合は、例えば、溶接により行われる。ヨーク11A,12Aは、十字軸13Aにより連結される。」
「【0035】
[第1の実施の形態]
{3.自在継手用ヨーク11Aの構成}
図3は、図2に示すヨーク11Aの斜視図である。図3を参照して、ヨーク11Aは、基部21と、腕部22,23とを備える。
【0036】
図3を参照して、中心軸線CLの延びる方向を軸方向と称し、中心軸線CLに対して垂直な方向を径方向と定義する。軸方向のうち、図3における紙面右方を軸方向一方と定義し、図3における紙面左方を軸方向他方と定義する。つまり、軸方向一方は、基部21から腕部22,23が延びる方向と反対の方向であり、軸方向他方は、基部21から腕部22,23が延びる方向である。また、径方向のうち、腕部22と腕部23とが対向する方向を対向方向と定義する。
【0037】
基部21は、ステアリングシャフト2の下方の端部と接合される。腕部22,23は、基部21の軸方向他方の端部から軸方向他方に延びており、十字軸13Aと連結される。基部21と、腕部22,23とは、例えば、冷間鍛造により一体的に形成されている。」
「【0053】
腕部22,23は、対をなしており、中心軸線CLを挟んで対向して配置される。腕部22,23は、軸方向に見て、筒状部211の外周側面よりも径方向外方に位置するように配置される。腕部22は、基部21における締付部212の軸方向他方の端部から軸方向他方に延びる。腕部23は、基部21における接続部216の軸方向他方の端部から軸方向他方に延びる。腕部22,23の各々には、十字軸13Aを連結するための連結孔221,231が形成されている。」
「
[図:0001433108000011.jpg]
」
「
[図:0001433108000012.jpg]
」
(2)甲6に記載された技術的事項
前記(1)の内容を総合すると、甲6には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ステアリングシャフト(2)のヨーク(11A)であって、
ステアリングシャフト(2)に接合され、
軸方向に沿って延出し、対向する一対の腕部(22、23)と、
前記一対の腕部(22、23)を軸支する十字軸(13A)と、
を備えたことを特徴とするステアリングシャフトのヨーク。」
7 甲7について
(1)甲7として、次の図面が示されている。
「
[図:0001433108000013.jpg]
」
甲7は、その体裁からみて機械部品の設計図面であると考えられるところ、機械製図における図面には、その右下隅に表題欄を設け、図面番号、図名、企業(団体)名、責任者の署名、図面作成年月日、尺度、投影法などを記入するのが一般的であるから(参考:JIS B0001:2019 7ページ 5.2)、これを前提として、甲7に記載された事項について検討する。
(2)甲7の図面について
ア この図面の右下隅の表題欄の、「DATE」すなわち日付の欄には「95-5-10」と記載され、これは図面作成年月日が「95-5-10」であるものと理解される。ここで、「95」の前に「’」がないことからすれば、和暦と考えられるが、一方で95年が存在する元号はないから、「95」は西暦を示すものと考えられる。そうすると、最も新しい西暦であるとするならば、上記図面作成年月日は1995年5月10日であると推認される。なお、この図面作成年月日は、異議申立人の「甲第7号証は、1995年5月10日に」「製作され」た旨の主張とも矛盾しない。
イ この図面の右下隅の表題欄には、「NAME」すなわち図名の欄には「FLY」と記載されているが、このような用語は当業者に周知ではないから、何を意味するのかは不明である。
ウ この図面の右下隅の表題欄の最下欄には「NAKAMURAJICO CO.,LTD.」と記載されていることから、この図面は、「NAKAMURAJICO」という株式会社のものであることがわかる。
エ この図面の4つの図は、それぞれの図示内容及び相互の配置から見て、部品の四面図と考えることが自然であるから、これを前提とするならば、この図面から、断面略円形の部分と、当該断面略円形状の部品から当該断面略円形状の部分の中心線に沿う方向に延びる符号61及び71で示された一対のアームが看取される。
8 甲8について
(1)甲8として、次の図面が示されている。
「
[図:0001433108000014.jpg]
」
甲8は、その体裁からみて機械部品の設計図面であると考えられるところ、機械製図における図面には、その右下隅に表題欄を設け、図面番号、図名、企業(団体)名、責任者の署名、図面作成年月日、尺度、投影法などを記入するのが一般的であるから(参考:JIS B0001:2019 7ページ 5.2)、これを前提として、甲8に記載された事項について検討する。
(2)甲8の図面について
ア この図面の右下隅の表題欄の、「DATE」すなわち日付の欄には「59.7.10」と記載され、これは図面作成年月日が「59.7.10」であるものと理解される。ここで、「59」が何年を示すものであるのかは不明であるが、「59」の前に「’」がないことからすれば、和暦と理解するのが自然であり、かつ、59年が存在する元号は「昭和」のみであるから、上記図面作成年月日は昭和59年7月10日であると推認される。なお、この図面作成年月日は、異議申立人の「甲第8号証は、昭和59年7月10日に」「製作され」た旨の主張とも矛盾しない。
イ この図面の右下隅の表題欄には、「NAME」すなわち図名の欄には「FLY」と記載されているが、このような用語は当業者に周知ではないから、何を意味するのかは不明である。
ウ この図面の右下隅の表題欄の最下欄には「NAKAMURAJICO CO.,LTD.」と記載されていることから、この図面は、「NAKAMURAJICO」という株式会社のものであることがわかる。
エ この図面の3つの図は、それぞれの図示内容及び相互の配置から見て、部品の三面図と考えることが自然であるから、これを前提とするならば、この図面から、断面略円形の部分と、当該断面略円形状の部品から当該断面略円形状の部分の中心線に沿う方向に延びる一対のアームを備え、延在部の半径方向外側の周方向両端部に符号R6で示された面、延在部の半径方向内側の周方向両端部に符号R6で示された面が看取される。
第5 当審における判断
1 本件発明1~7について
甲1は、上記第4の1(2)(3)のとおり、「NAKAMURAJICO」という株式会社により作成された図面にとどまり、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものではないから、甲1発明A及び甲1発明Bのいずれの発明も、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明ではない。
そうすると、本件発明1~7と甲1発明A及び甲1発明Bとを対比するまでもなく、本件発明1~7は、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された発明又は甲2~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 異議申立人の主張について
(1)異議申立人は、「甲第1号証は、2003年4月1日に株式会社ナジコにより製作され、同年6月13日に同社工場に出図されたユニバーサルジョイントのヨークに関する図面である。」と主張するが、そもそも、甲1の1枚目の図面及び2枚目の図面の記載された事項については、上記第4の1(2)及び(3)のとおりであって、そもそも、株式会社ナジコなる記載は存在せず、2003年6月13日に同社工場へ出図したという事実を示す記載もないから、異議申立人の主張は、その前提を欠く。
それは措くとしても、図面を完成させ出図したことが、ただちに、甲1が「本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」又は「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった」ものであることを意味するわけではないから、上記主張のとおりの事実があったとしても、上記1の判断を左右するものではない。
(2)異議申立人は「甲第1号証には以下の記載がある。「ユニバーサルジョイント100のヨーク1、固定部2、第1アーム部10及び第2アーム部20、十字軸3、アーム基部4、アーム内側縁面取り部11及び21、アーム外側面取り部12及び22」」と主張するが、甲1については上記1のとおりであるから、当該主張はその前提を欠く。
それは措いて、具体的な記載事項を検討しても、「十字軸」については上記第4の1(2)エのとおりであり、また、「面取り」については、甲1には、面取りを示す明示的な記載(例えば機械製図に係る規格(JIS B0001:2019)において規定される表記)は存在しないから、異議申立人の主張は採用できない。
また、「面取り」とは、「工作物のかど又はすみを斜めに削ること。」(JIS用語辞典機械編)を意味するから、本件発明1~7における「面取り部」は、かど又はすみを斜めに削った部分と理解され、この理解は本件特許明細書の「また、第1、第2アーム基部111,121の外側における周方向の両側縁部には、図5に示すように、当該両側縁部に沿って伸びる第1、第2アーム外側縁面取り部115,125が形成されている。第1、第2アーム外側縁面取り部115,125は、主として、平面状の切削面を有するC面取りによって構成されている。なお、この第1、第2アーム外側縁面取り部115,125は、軸方向において概ね一定の周方向幅となるように形成されている。」(【0035】)、「また、第1、第2アーム基部111,121の内側における周方向の両側縁部には、図6に示すように、当該両側縁部に沿って伸びる第1、第2アーム内側縁面取り部116,126が形成されている。第1、第2アーム内側縁面取り部116,126は、主として、平面状の切削面を有するC面取りによって構成されている。」(【0036】)との記載とも矛盾しないところ、上記第4の2~8によれば、甲2、甲4、甲5及び甲6には、面取りについて記載又は示唆されておらず、甲3には面取りについて記載されているものの、プロペラシャフトのヨークとは無関係の部品に施されるものであるから、仮に、甲1発明A又は甲1発明Bに、甲2~6に記載された事項を適用したとしても、本件発明1~7にはなりえない。そして、甲7及び甲8は、そもそも、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないし、プロペラシャフトのヨークに係る図面であるか否かも不明である。
第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7にかかる特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700781