特許異議申立
2017-700415
軒樋曲り継手
- 審判番号
- 2017-700415
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-080003
- 登録番号
- 特許第6013753号(P6013753)
- 請求日
- 2017年04月25日
- 審決日
- 2018年06月04日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】タキロンシーアイ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人IPRコンサルタント
- 【権利者代理人】仲 晃一
- 【権利者代理人】河▲崎▼ 眞樹
- 【異議申立人】西山 智裕
- 【異議申立人】井上 登美子
- 審判長/審判官
- 審判長 小野 忠悦
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 井上 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(E04D) / P1651.121-YAA(E04D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6013753号発明「軒樋曲り継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6013753号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
特許第6013753号の請求項1,2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6013753号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成24年3月30日に特許出願され、平成28年9月30日に特許の設定登録がされ、その後、平成29年4月25日に特許異議申立人西山智裕(以下「申立人西山」という。)及び特許異議申立人井上登美子(以下「申立人井上」という。)より、請求項1~2に対して特許異議の申立てがされ、同年7月24日付けで取消理由が通知され、同年9月22日に意見書の提出がされ、同年12月19日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成30年2月14日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年4月19日に申立人西山より意見書が提出されたものである(「申立人井上」は、意見書を提出しなかった。)。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(3)のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を
「平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁と、両端部に形成された軒樋嵌合部と、を備えた平面形状が略L字形の軒樋曲り継手であって、
上記曲り継手の入隅部が湾曲壁で形成されているか、又は、上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されており、
この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増しており、
上記入隅部の湾曲壁の曲率半径が、上記曲り継手の上端から上記底壁と接続する下端まで連続して漸増していること、
を特徴とする軒樋曲り継手。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許明細書の【0009】を
「上記目的を達成するため、本発明に係る軒樋曲り継手は、平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁と、両端部に形成された軒樋嵌合部と、を備えた平面形状が略L字形の軒樋曲り継手であって、上記曲り継手の入隅部が湾曲面で形成されているか、又は、上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されており、この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増しており、上記入隅部の湾曲壁の曲率半径が、上記曲り継手の上端から上記底壁と接続する下端まで連続して漸増していることを特徴とするものである。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許明細書の【0011】を
「本発明の軒樋曲り継手のように、入隅部が湾曲壁で形成されているか、又は、入隅側の側壁と底壁との角部及び入隅部の双方が湾曲壁で形成され、その曲率半径が入隅部の下端に近くなるほど漸増しており、上記入隅部の湾曲壁の曲率半径が、上記曲り継手の上端から上記底壁と接続する下端まで連続して漸増していると、両端の軒樋嵌合部に嵌合接着された双方の軒樋が温度変化により伸縮して圧縮力や引張力が曲り継手に繰り返し作用しても、上記の湾曲壁によって応力が分散され、この湾曲壁による応力分散作用は、曲り継手の入隅部下端に近づいて湾曲壁の曲率半径が大きくなるほど強くなる。従って、本発明の軒樋曲り継手は、入隅部下端への応力集中を上記の湾曲壁によって効果的に分散、緩和できるので、入隅部の下端付近から亀裂や破壊が生じるのを防止することができる。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、入隅部の湾曲壁の曲率半径が連続して漸増する範囲を、曲り継手の上端から底壁と接続する下端までと限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記アで説示したように、訂正事項1は入隅部の湾曲壁の曲率半径が連続して漸増する範囲を、曲り継手の上端から底壁と接続する下端までと限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
明細書の発明の詳細な説明の「曲り継手の入隅部5、・・・を、円弧状に湾曲した曲率半径が徐々に変化する湾曲壁50,60で形成している点にある。」(【0019】)、「・・この軒樋曲り継手10の入隅部5は、出隅側に向かって円弧状に凸湾曲する湾曲壁50で形成されており、図1,図3,図4の(a)(b)に示すように、この湾曲壁50の曲率半径Rと幅は、曲り継手10の入隅部5の下端5aに近くなるほど徐々に大きくなっている。」(【0020】)及び図1の記載から、訂正事項1は明細書又は図面に記載されているものと認められる。
(2)訂正事項2及び3ついて
訂正事項2及び3は、発明の詳細な説明の記載を、訂正後の請求項1の記載と整合するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。
また、訂正前の請求項1~2は、請求項2が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び3号に掲げる目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1,2について訂正を認める。
第3 本件発明
上記訂正請求により訂正された請求項1~2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、以下のとおりのものである。(下線は、訂正箇所を示す。)
本件発明1
「【請求項1】
平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁と、両端部に形成された軒樋嵌合部と、を備えた平面形状が略L字形の軒樋曲り継手であって、
上記曲り継手の入隅部が湾曲壁で形成されているか、又は、上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されており、この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増しており、
上記入隅部の湾曲壁の曲率半径が、上記曲り継手の上端から上記底壁と接続する下端まで連続して漸増していること、
を特徴とする軒樋曲り継手。」
本件発明2
「【請求項2】
上記底壁の入隅部から出隅部に向かって山部が形成され、この山部の幅が底壁の入隅部に近くなるほど漸増していることを特徴とする請求項1に記載の軒樋曲り継手。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1~2に係る特許に対して平成29年12月19日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
1 請求項1に係る発明について
(1)請求項1に係る発明は、特許出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であり、または、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第113条第2号(特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項違反)に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
(2)請求項1に係る発明は、特許出願前に頒布された刊行物2に記載された発明であり、または、刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第113条第2号(特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項違反)に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
(3)請求項1に係る発明は、特許出願前に頒布された刊行物3に記載された発明であり、または、刊行物3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第113条第2号(特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項違反)に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
(4)請求項1に係る発明は、特許出願前に頒布された刊行物5に記載された発明であり、または、刊行物5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第113条第2号(特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項違反)に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
2 請求項2に係る発明について
(1)請求項2に係る発明は、刊行物1、2、3及び5に記載された発明のいずれかの発明並びに刊行物4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第113条第2号(特許法第29条第2項違反)に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
第5 刊行物について
1 刊行物1
(1)刊行物1の記載事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物1として提示した特開2000-204727号公報には、次の事項が記載されている(下線は当決定で付した。以下同様。)。
ア「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、請求項1の発明では、略L字の平面形状に形成され、軒樋を嵌合可能な軒樋嵌合部が両端に設けられている継手本体を備え、その継手本体の入隅部が、継手本体の出隅部側に膨らんだ壁で形成されている曲り樋継手において、継手本体の入隅部の下端コーナー部の曲率半径が軒樋嵌合部の下端コーナー部の曲率半径より大きくなされているものである。
イ「【0023】
【発明の実施の形態】本発明の一実施例を図1~図4に基づいて、詳述する。図1は曲り樋継手の分解説明図、図2は曲り樋継手の側面図、図3は図1の接続部材のD-D矢視断面図、図4は曲り樋継手吊具で曲り樋継手を吊っている状態を示す説明図、図5は継手本体の入隅部の側壁の外側面に係止部が設けられている状態を示す説明図、図6は間隙保持部材の斜視図である。
【0024】図1及び図2において、1は合成樹脂(塩化ビニル樹脂)製の曲り樋継手であり、曲り樋継手1は、屋外側側壁がほぼ中央部で2つに分割され、略L字の平面形状に形成されている。この曲り樋継手1は、両端部に軒樋5を嵌合可能な軒樋嵌合部12が設けられている継手本体11と、接続部材3と、両端部の上端部に押え片16を有した上壁部8と、軒樋係止部18と、両端部の軒樋嵌合部12の屋内側側壁の上端部に設けられた押え片16とからなっている。
【0025】継手本体11は、屋外側側壁の下壁部9と屋内側側壁と底面とで垂直方向の断面形状がほぼU字形になされている。この下壁部9のコーナー側端部に接続部材3(後述説明)の取付部31が設けられている。継手本体11の入隅部13が出隅部15側に膨らんだ側壁で形成されている。図2に示すように、継手本体11の入隅部13のコーナー部近傍が一段低くなされている。この一段低くなされているところに、曲り樋継手吊具7の腕部が通されるようになされている。
【0026】この両端部の軒樋嵌合部12の端部の屋内側側壁の上端部にそれぞれ押え片16が内側に向けて設けられている。この両端部の軒樋嵌合部12の奥部に軒樋係止部18が設けられている。この両端部の軒樋嵌合部12の下端部の底部と側壁とのコーナー部は、軒樋5の下端部のコーナー部とほぼ同じ形状になされ、角張っている。このコーナー部の曲率半径は約8mm(単位要確認)になされている。軒樋5の端部が軒樋嵌合部12の奥部の軒樋係止部18に差し込まれ、軒樋5の屋内側耳部(図示省略)を押え片16で押え付けて、曲り樋継手1に軒樋5が接続されるようになされている。
【0027】継手本体11の入隅部13の下端部の底部と側壁とのコーナー部は、円弧状になされ、このコーナー部の曲率半径は約23mm(単位要確認)になされ、軒樋嵌合部12の下端コーナー部の曲率半径より大きくなされている。」
ウ「【0039】図7において、1aは合成樹脂(塩化ビニル樹脂)製の曲り樋継手で、曲り樋継手1aは、略L字の平面形状に形成されている。この曲り樋継手1aは、両端部に軒樋5を嵌合可能な軒樋嵌合部12aが設けられている継手本体11aと、継手本体11aの入隅部13aの側壁の内側面に取り付けられた係止部14aと、両端部の軒樋嵌合部12aの上端部に設けられた4つの押え片16aとからなっている。継手本体11aは、屋外側側壁と屋内側側壁と底面とで垂直方向の断面形状がほぼU字形になされ、継手本体11aの屋外側側壁の下端部に屋外側に出っ張り、上方向にゆくに連れて内側に傾斜されている。継手本体11aの入隅部13aが出隅部15a側に膨らんだ側壁で形成されている。
【0040】この軒樋嵌合部12の端部の屋内側側壁と屋外側側壁の上端部に2つの押え片16aが相対して内側に向けて設けられている。この軒樋嵌合部12aの下端部の底部と側壁とのコーナー部は、軒樋5の下端部のコーナー部とほぼ同じ形状になされ、図8の(イ)に示すように、下端部の底部と側壁とのコーナー部は角張っている。このコーナー部の曲率半径は約8mm(単位要確認)になされている。軒樋5の端部が軒樋嵌合部12aに嵌合され、軒樋5の屋内側耳部と屋外側耳部(図示省略)を2つの押え片16aで押え付けて、曲り樋継手1aに軒樋5が接続されるようになされている。
【0041】継手本体11aの入隅部13aの下端部の底部と側壁とのコーナー部は、図8の(ロ)に示すように、円弧状になされ、このコーナー部の曲率半径は約23mm(単位要確認)になされ、軒樋嵌合部12aの下端コーナー部の曲率半径より大きくなされている。この継手本体11aの入隅部13aの側壁の内側面には、係止部14aが設けられ、この係止部14aは2本の小棒17で形成され、この2本の小棒17は間隙保持部材2a(後述説明)の幅とほぼ同じ間隔を開けて、入隅部13aの側壁の内側面に取り付けられている。」
エ 図面について
(ア)図1は、本発明の一実施例であり、曲り樋継手の分解説明図である。当該図のうち一番下方の平面図からは、入隅部の上端より下端が出隅側に位置している点、継手本体11の入隅部13の出隅側に膨らんだ壁の曲がり具合について、入隅部の上端よりも下端の方が緩やかである点が看てとれる。
(イ)図7は、曲り継手を示す斜視図である。当該図からは、曲り樋継手が、略L形の底壁と、底壁の出隅側及び入り隅側の側端から立上がる出隅側及び入隅側の側壁が看てとれる。
(ウ)図8の(イ)は、図7のA-A矢視断面図であり、図8の(ロ)は、図7のB-B矢視断面図である。図8の(ロ)には、入隅部の壁が、途中の部分から下端に向かって徐々に出隅側へと曲がり底壁と接続する点が看てとれる。
(2)刊行物1に記載の発明の認定について
ア 入隅部の出隅部側に膨らんだ壁の構成について
(ア)曲線と曲率半径について
曲線は、局所的にみれば円弧であり、曲線はこのような円弧の連続であると言えるのであるから、曲線はある曲率半径でもって描かれていると言える。また、曲がり具合が緩やかな円弧は、大きな曲率半径で描かれ、曲がり具合が急な円弧は、小さな曲率半径で描かれているといえる。そうすると、全体として曲がり具合が緩やかな曲線は曲率半径が大きいものであるといえ、また全体として曲がり具合が急な曲線は曲率半径が小さいものであるといえる。
(イ)曲率半径の変化について
刊行物1の明細書には、入隅部の湾曲壁の出隅部側に膨らんだ壁の構成が明確には記載されていないが、図8の(ロ)に示される入隅部13aの形状が、途中の部分から下端に向かって徐々に出隅側へと曲がり底壁と接続していることから、入隅部の壁の曲がり具合が途中から下端へ向かって徐々に連続的に緩やかに変化する、すなわち、入隅部の壁の曲率半径が、途中の部分から下端側へと漸増するように形成されていると考えるのが合理的である。また、図8の(ロ)の断面位置を示す図7のB-B線の位置及び図7における入隅部の側壁の形状から見て、入隅側の側壁と底壁との角部についても上記入隅部と同様、出隅部側に膨らんだ壁で形成され、その曲率半径が途中から下端側へと漸増するように形成されていると考えるのが合理的である。
イ 刊行物1発明の認定
上記アを踏まえると、刊行物1には、以下のとおりの発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁と、両端部に形成された軒樋嵌合部12a,12aと、を備えた平面形状が略L字形の曲り樋継手であって、
上記曲り樋継手の入隅部及び入隅側の側壁と底壁との角部が出隅部側に膨らんだ壁で形成されており、この出隅部側に膨らんだ壁の曲率半径が、入隅部の壁の途中の部分から下端に向かって漸増している曲り樋継手」
ウ なお、上記の刊行物1発明で認定した「出隅部側に膨らんだ壁の曲率半径が、入隅部の壁の途中の部分から下端に向かって漸増する」点については、特許権者が平成29年9月22日付け意見書の6-7頁で説示した、刊行物1の図7,8から3D化した図面(図X1、図X2及び図X2’)に示される内容からも把握することができる。
2 刊行物2
(1)刊行物2の記載事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物2として提示した意匠登録第1140054号公報には、次の事項が記載されている。
ア 【意匠に係る物品の説明】には、「・・樋用コーナー連結具である。」と記載されている。
イ 図面について
【斜視図】、【正面図】及び【右側面図】からは、当該図からは、曲り樋継手が、平面形状が略L形の底壁と、底壁の出隅側及び入り隅側の側端から立上がる出隅側及び入隅側の側壁が看てとれる。また、入隅部側の側壁には、段部が形成されている点が形成されている点が看てとれる。さらに、図面に記載されたものが樋用コーナー連結具であることから、両端部に嵌合部が形成されている点が看てとれる。
また、【斜視図】からは、入隅部が湾曲壁で形成されている点が、また【斜視図】及び【平面図】からは、湾曲壁の段部よりも、湾曲壁の下端の方が、平面視で出隅側に位置して緩やかな曲線となっている点が看てとれる。
(2)刊行物2に記載の発明の認定について
ア 湾曲壁の構成について
(ア)曲線と曲率半径について
曲線は、局所的にみれば円弧であり、曲線はこのような円弧の連続であると言えるのであるから、曲線はある曲率半径でもって描かれていると言える。また、曲がり具合が緩やかな円弧は、大きな曲率半径で描かれ、曲がり具合が急な円弧は、小さな曲率半径で描かれているといえる。そうすると、全体として曲がり具合が緩やかな曲線は曲率半径が大きいものであるといえ、また全体として曲がり具合が急な曲線は曲率半径が小さいものであるといえる。
(イ)曲率半径の変化について
刊行物2には、湾曲壁の上端から下端にいたる途中に段部と思われる部位があるものの、湾曲壁の当該段部から下端に至る途中の面には、いずれの図をみても、段状に形成していることを伺わせる記載もみあたらない。そうすると、段部から下端に向かって曲率半径が徐々に変化する、すなわち漸増すると考えるのが合理的である。
イ 刊行物2発明の認定
上記アを踏まえると、刊行物2には、以下のとおりの発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。
「平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁とを備えた平面形状が略L字形の樋用コーナー連結具であって、
底壁と側壁を具備する樋用コーナー連結具において、入隅部が湾曲壁で形成されており、当該湾曲壁には段部が形成されて、湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する軒樋コーナー連結具」
3 刊行物3
(1)刊行物3の記載事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物3として提示した意匠登録第1328385号公報には、次の事項が記載されている。
ア 【意匠に係る物品の説明】には、「・・・・軒樋を直角に接続するための内継ぎ手・・」と記載されている。
イ 【斜視図】、【正面図】及び【右側面図】からは、当該図からは、曲り樋継手が、平面形状が略L形の底壁と、底壁の出隅側及び入り隅側の側端から立上がる出隅側及び入隅側の側壁が看てとれる。また、入隅部側の側壁には、段部が形成されている点が形成されている点が看てとれる。さらに、図面に記載されたものが軒樋を直角に接続するための内継ぎ手であることから、両端部に嵌合部が形成されている点が看てとれる。
また、【斜視図】からは、入隅部が湾曲壁で形成されされる点が、また【斜視図】及び【平面図】からは、湾曲壁の段部よりも、湾曲壁の下端の方が、平面視で出隅側に位置して緩やかな曲線となっている点が看てとれる。
(2)刊行物3に記載の発明の認定について
ア 湾曲壁の構成について
(ア)曲線と曲率半径について
曲線は、局所的にみれば円弧であり、曲線はこのような円弧の連続であると言えるのであるから、曲線はある曲率半径でもって描かれていると言える。また、曲がり具合が緩やかな円弧は、大きな曲率半径で描かれ、曲がり具合が急な円弧は、小さな曲率半径で描かれているといえる。そうすると、全体として曲がり具合が緩やかな曲線は曲率半径が大きいものであるといえ、また全体として曲がり具合が急な曲線は曲率半径が小さいものであるといえる。
(イ)曲率半径の変化について
刊行物3には、湾曲壁の上端から下端にいたる途中に段部と思われる部位があるものの、湾曲壁の当該段部から下端に至る途中の面には、いずれの図をみても、段状に形成していることを伺わせる記載もみあたらない。そうすると、段部から下端に向かって曲率半径が徐々に変化する、すなわち漸増すると考えるのが合理的である。
イ 刊行物3発明の認定
上記アを踏まえると、刊行物3には、以下のとおりの発明(以下、「刊行物3発明」という。)が記載されていると認められる。
「平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁とを備えた軒樋を直角に接続するための内継ぎ手であって、
底壁と側壁を具備する樋用コーナー連結具において、入隅部に湾曲壁が形成されており、当該湾曲壁には段部が形成されて、湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する軒樋を直角に接続するための内継ぎ手」
4 刊行物4
(1)刊行物4の記載の事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物4として提示した実開平7-19449号公報には、次の事項が記載されている。
ア「【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記目的を達成するためになされたものであって、断面溝形の長尺体小片が所定の角度に折曲された軒樋曲がり継手において、折曲された部分に断面方向に長い凹凸条が形成され蛇腹状になされているものである。
本考案軒樋曲がり継手においては、折曲されている部分に断面方向に長い凹凸条が形成され蛇腹状になされているが、この蛇腹状になされている範囲および形状は適宜でよい。特に、外側または内側の角近傍を要にし反対側に扇状に拡がった凹凸条を形成して蛇腹状にするとよい。
【0005】
【作用】
本考案軒樋の曲がり継手は、断面方向に長い凹凸条が形成され蛇腹状になされているから、この凹凸条とほぼ直角方向である長手方向に対しては伸縮し易い形状になっている。 従って、軒樋の温度差によって軒樋が膨張・収縮を繰り返し、曲がり部分で押し合ったり引き合っても、この蛇腹状になっている部分が伸縮することによりこの膨張・収縮が吸収され、曲がり継手が破損することがない。特に、曲がり部分に外側の角近傍または内側の角近傍を要にし反対側に扇状に拡がった凹凸条が形成され蛇腹状になっていると、膨張・収縮を吸収し易い。
【0006】 ・・・
【0007】
【実施例】
次に、本考案の実施例を説明する。
図1は本考案軒樋曲がり継手の一実施例を示すもので、軒樋曲がり継手で軒樋を接続している状態を示す説明図である。
図2は本考案の他の実施例を示すもので、軒樋曲がり継手で軒樋を接続している状態を示す説明図である。
【0008】
図1において、1は塩化ビニル樹脂製の断面半円形の長尺体からなる軒樋である。この軒樋1の両側縁には肉太の耳部11、11が設けられている。
2は塩化ビニル樹脂製の軒樋曲がり継手であり、この軒樋曲がり継手2は断面半円形からなる溝形の長尺体小片がほぼ直角に折曲されたものであり、両端部は軒樋1の先端を係止できる接続片21、21が設けられている接続部22と、両側縁には軒樋1の耳部11を嵌合する耳保持部23とが設けられている。
3は軒樋曲がり継手2の折曲された部分に設けられた蛇腹状部分であり、この蛇腹状部分3には外側の角から若干内側に入った角近傍を要にし内側に扇状に拡がった凹凸条が形成されている。
【0009】
次に、この軒樋曲がり継手2で軒樋1、1を接続する方法および作用について説明する。
軒樋曲がり継手2の両端部の接続部22、22および軒樋1の端部外周面に接着剤を塗布し、両者を当接しながら、軒樋1の先端を接続片21に係止し、耳部11を耳保持部23に嵌合する。
この接着剤が固化すると、軒樋1と軒樋間借り継手2とが強固に接着される。
【0010】
このように軒樋曲がり継手2で軒樋1、1が接続されていると、夏期、接続している両側の軒樋1、1が膨張すると、この軒樋曲がり継手2の角を両側から押し出して、折曲された部分の角度が縮む方向に力が働く。
この軒樋曲がり継手2には、折曲された部分の蛇腹状部分3に外側の角近傍を要にし内側に扇状に拡がった凹凸条が形成されているから、この外側の角を中心にして角度が縮む。即ち、折曲されている部分の内側が縮む。従って、この両側の軒樋1、1の膨張を吸収して軒樋曲がり継手2が破損することがない。
【0011】
尚、この要より外側は短いから伸びる量が少なく、従って、この部分の歪みが小さく破損することがない。
又、逆に、冬期、両側の軒樋1、1が収縮すると、この逆に、蛇腹状部分3が伸びることにより、両側の軒樋1、1の収縮を吸収して軒樋曲がり継手2が破損することがない。
このように、軒樋1の膨張・収縮を蛇腹状部分3が吸収する。その結果、軒樋曲がり継手2は破損することがない。」
イ 図面について
図1からは、以下の点が看てとれる。
(ア)軒樋曲がり継手2の折曲された部分に蛇腹状部分3が設けられ、当該蛇腹状部分3に、底壁の入隅部から出隅部に向かって凹凸条が形成されている点
(イ)前記凹凸条が、外側の角近傍を要にし内側に扇状に拡がっており、蛇腹状部分3は、底壁の入隅部に近くなるほどその幅が漸増しているとともに、また凹凸条のうち、最下端の線から上端の稜線そして再度最下端の線に至る立体形状を複数の山状部分として把握した場合において、山状部分の最下端の線同士の間隔すなわち幅が、いずれの山状部分についても底壁の入隅部に近くなるほど漸増している点
(2)刊行物4に記載の技術事項
上記(1)で摘記された事項及び図示内容をふまえると、刊行物4には、次の技術事項が記載されているといえる。
軒樋の収縮を吸収して軒樋曲り継手の破損を防止をすることを目的として、軒樋曲がり継手2の折曲された部分に蛇腹状部分3が設けられ、当該蛇腹状部分3に、底壁の入隅部から出隅部に向かって凹凸条が形成され、前記凹凸条が、外側の角近傍を要にし内側に扇状に拡がっており、蛇腹状部分3は、底壁の入隅部に近くなるほどその幅が漸増しているとともに、また凹凸条のうち、最下端の線から上端の稜線そして再度最下端の線に至る立体形状を山状部分として把握した場合において、その山状部分の最下端の線同士の間隔すなわち幅が、いずれの山状部分についても底壁の入隅部に近くなるほど漸増している点
5 刊行物5
(1)刊行物5の記載事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物5として提示して提示した特開2003-74155号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【0026】
曲り継手3(3a,3b)は、図7に示すように、溝形状の90度曲り継手本体31と、この継手本体31の両端部に設けられた接続部32,32とから構成されている。この接続部32の内面形状は上記軒樋1の外面形状とほぼ合致する形状とされている。すなわち、図7(b)に示すように、継手本体31の前側壁の方が後側壁よりも高くなっている。接続部32の奥部内周面には係止片321が設けられ、また、両側部上端には押さえ片322が設けられている。曲り継手3は硬質塩化ビニル樹脂製のものである。この場合の曲り継手3aは出隅部にて用いられるものであるが、これとは別に、入隅部にて用いられる曲り継手3bもある。」
イ 図面について
(ア)図7(a)は、出隅用の曲り継手を示す平面図である。当該図からは、溝形状の90度曲り継手本体31が、平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側壁から立ち上がる前側壁及び後壁とを備えていること、曲り継手の入隅部が湾曲壁で形成されていること、入隅部の上端より下端が出隅側に位置していること、入隅部の上端よりも下端の方が緩やかであることが看てとれる。
(イ)図7(b)は、出隅用の曲り継手を示す側面図である。当該図における入隅部に相当する部位にある壁の内面が、上方から下方に至るところの途中の部分から下端に向かって徐々に出隅側へと曲がり底壁と接続する点が看てとれ、また、入隅側の側壁と底壁との角部の曲がり具合が、接続部32に近い側より入隅部の下端の方が緩やかである点が看てとれる。
(2)刊行物5に記載の発明の認定について
ア 湾曲壁の構成について
(ア)曲線と曲率半径について
曲線は、局所的にみれば円弧であり、曲線はこのような円弧の連続であると言えるのであるから、曲線はある曲率半径でもって描かれていると言える。また、曲がり具合が緩やかな円弧は、大きな曲率半径で描かれ、曲がり具合が急な円弧は、小さな曲率半径で描かれているといえる。そうすると、全体として曲がり具合が緩やかな曲線は曲率半径が大きいものであるといえ、また全体として曲がり具合が急な曲線は曲率半径が小さいものであるといえる。
(イ)曲率半径の変化について
刊行物5の明細書には、湾曲壁の構成が明確には記載されていないが、図7(b)に示される湾曲壁が、途中の部分から下端に向かって徐々に出隅側へと曲がり底壁と接続する様子から、曲がり具合が湾曲壁の途中から下端へ向かって徐々に連続的に変化する、すなわち、湾曲壁が曲率半径が、途中の部分から下端側へと漸増するように形成されていると考えるのが合理的である。また、図7(a)及び図7(b)の入隅部に相当する部位にある壁の形状から見て、入隅側の側壁と底壁との角部についても上記入隅部と同様、湾曲壁で形成され、その曲率半径が途中から下端側へと漸増するように形成されていると考えるのが合理的である。
イ 刊行物5発明の認定
上記アを踏まえると、刊行物5には、以下のとおりの発明(以下、「刊行物5発明」という。)が記載されていると認められる。
「平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁と、両端部に形成された接続部32,32と、を備えた溝形状の90度曲り継手本体31であって、
上記曲り継手の入隅部及び入隅側の側壁と底壁との角部が湾曲壁で形成されており、この湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の途中の部分から下端に向かって漸増している溝形状の90度曲り継手本体31」
ウ なお、上記の刊行物5発明で認定した「この湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の途中の部分から下端に向かって漸増する」点については、特許権者が平成29年9月22日付け意見書の12頁で説示した、刊行物5の図7(a)及び(b)等から入隅部の様子を3D化した図面(図X5、図X6)に示される内容からも把握することができる。
第6 判断
1 本件発明1について
(1)刊行物1を主引用例とする新規性欠如・進歩性欠如について
ア 本件発明1と刊行物1発明との対比
(ア)本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「平面形状が略L字形の底壁」は、本件発明1の「平面形状が略L字形の底壁」に相当し、以下同様に「出隅側及び入隅側の側壁」は「出隅側及び入隅側の側壁」に、「軒樋嵌合部12,12a」は「軒樋嵌合部」に、「略L字形の曲り樋継手」は「軒樋曲り継手」にそれぞれ相当する。
(イ)また、刊行物1発明の「曲り樋継手の入隅部及び入隅側の側壁と底壁との角部が出隅部側に膨らんだ壁で形成されており、この出隅部側に膨らんだ壁の曲率半径が、入隅部の壁の途中の部分から下端に向かって漸増している」ことは、本件発明1の「曲り継手の入隅部が湾曲壁で形成されているか、又は、上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されており、この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増していること」に相当する。
そうすると、本件発明1と刊行物1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
入隅部の湾曲壁の曲率半径が、本件発明1では、「曲り継手の上端から上記底壁と接続する下端まで連続して漸増している」のに対して、刊行物1発明では、入隅部の壁の途中の部分から下端に向かって漸増している点。
イ 判断
上記のとおり、本件発明1と刊行物1発明とは相違点1があるので、本件発明1は、刊行物1発明と同一ではない。
また、他の刊行物(刊行物2~5)をみても、相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていない。
取消理由(決定の予告)で言及した樋の水が流れる内面側を連続的に変化させる構造が周知の事項であるとしても、入隅部の湾曲壁の曲率半径が、曲り継手の上端から底壁と接続する下端まで連続して漸増する構成が他の刊行物(刊行物2~5)のいずれにも記載されていないのであるから、上記周知の事項を考慮しても、相違点1に係る本件発明1の構成に想到することはできない。
よって、本件発明1は、刊行物1発明、刊行物2~5に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 意見書における申立人西山の主張について
申立人西山は、「特許権者が意見書の6頁で示した、刊行物1の図X2’の矢印Pで示した部分の下側の湾曲面を見れば、その湾曲面が、上下に延びている湾曲壁の下端から底壁に向かって、曲率半径が徐々に大きくなっている、すなわち構成要件dの湾曲壁に対応する湾曲面の曲率半径が下端まで連続して漸増していることは明らかである。
このとき、入隅部の湾曲壁の曲率半径が、底壁と接続する下端まで連続して漸増する構成を、曲り継手の上端から始めることに、当業者にとって何ら困難性があるとは認められない。また、そのときに得られると特許権者が主張する効果、例えば、「軒樋曲り継手両端の軒樋嵌合部に圧縮力や引張力が作用したときに、入隅部の湾曲壁が入隅部の下端に近くなるほど優れた応力分散作用を発揮する。」の効果は、刊行物1の「湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する」構成から当業者が予測できる程度のものに過ぎない。このため、本件発明1は、刊行物1に対し新規性が欠如していないとしても進歩性が欠如している。
また、特許権者が出願時に明細書において特許文献1として記載した特許第3373034号公報の図1等には、曲り継手の入隅部に、上端から下端まで湾曲壁が連続して形成された構成が記載されている。これにより、上記特許文献1に記載された構成の湾曲壁に、刊行物1に記載された構成のように下端の底壁に向かって曲率半径が徐々に大きくなっている湾曲面を組み合わせて、入隅部の湾曲壁の曲率半径が、曲り継手の上端から底壁と接続する下端まで連続して漸増している、上記構成要件dを含む本件発明1とすることは、当業者によって容易に考え付く事項である。このため、本件発明1は、刊行物1、及び特許文献1からも進歩性が欠如している。」旨、主張する。(意見書3頁下から2行~4頁21行)
申立人西山が主張するように、刊行物1には「湾曲壁に対応する湾曲面の曲率半径が下端まで連続して漸増していること」が記載されていると認められるが、本件発明1の「入隅部の湾曲壁の曲率半径」の「漸増」は、「曲り継手の上端から・・底壁と接続する下端まで連続して」いるものであって、上記アのとおり、本件発明1と刊行物1発明には相違点1があるから、本件発明1は、刊行物1発明と同一ではない。また、刊行物2~5には相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないのであるから上記イのとおり、刊行物1発明、刊行物2~5に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。よって、本件発明1は、刊行物1に対して、新規性及び進歩性はいずれも欠如していない。
また、特許文献1の図1等をみると、曲り継手の入隅部に、上端から下端まで湾曲壁が連続して形成された構成が記載されているものの、当該湾曲壁は、「入隅部の湾曲壁の曲率半径」が、「曲り継手の上端から・・底壁と接続する下端まで連続して漸増している」ものではないから、仮に特許文献1に記載された当該構成を刊行物1発明に適用したとしても本件発明1とはならない。
したがって、申立人西山の主張を採用することができない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ではなく、また、刊行物1発明、刊行物2~5に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)刊行物2を主引用例とする新規性欠如・進歩性欠如について
ア 本件発明1と刊行物2発明との対比
(ア)本件発明1と刊行物2発明とを対比すると、刊行物2発明の「平面形状が略L字形の底壁」は、本件発明1の「平面形状が略L字形の底壁」に相当し、以下同様に「出隅側及び入隅側の側壁」は「出隅側及び入隅側の側壁」に、「嵌合部」は「軒樋嵌合部」に、「略L字型の樋用コーナー連結具」は「軒樋曲り継手」にそれぞれ相当する。
(イ) 刊行物2発明の「湾曲壁」は、本件発明1の「湾曲壁」に相当する。また、刊行物2発明の「入隅部が湾曲壁で形成されて」いることが、本件発明1の「入隅部が湾曲壁で形成されている」に相当する。一方、刊行物2発明には、本件発明1の「上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されて」に相当する構成はないが、本件発明1の上記箇所は、択一的記載であるため、この点は相違点とはならない。
(ウ)さらに、刊行物2発明の「湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する」ことは、本件発明1の「この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増していること」に相当する。
そうすると、本件発明1と刊行物2発明とは、少なくとも上記(1)アで説示した<相違点1>がある。
イ 判断
上記アで述べたように、本件発明1と刊行物2発明とは相違点1があるので、本件発明1は、刊行物2発明と同一ではない。
また、他の刊行物(刊行物1、3~5)をみても、相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないので、上記(1)イで説示したことと同様に相違点1に係る本件発明1の構成に想到することはできない。
よって、本件発明1は、刊行物2発明、刊行物1、3~5に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 意見書における申立人西山の主張について
申立人西山は「刊行物2に、上記構成要件d「上記入隅部の湾曲壁の曲率半径が、上記曲り継手の上端から上記底壁と接続する下端まで連続して漸増していること」が記載されていることが認められないとしても、刊行物2には、「湾曲壁の段部の下側で、入隅部の湾曲壁の曲率半径が、底壁と接続する下端まで連続して漸増している」ことは記載されている。
このとき、入隅部の湾曲壁の曲率半径が、底壁と接続する下端まで連続して漸増する構成を、曲り継手の上端から始めることに、当業者にとって何ら困難性があるとは認められない。また、そのときに得られると特許権者が主張する効果も、刊行物2の「湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する」構成から当業者が予測できる程度のものに過ぎない。このため、本件発明1は、刊行物2に対し新規性が欠如していないとしても進歩性が欠如している。
また、刊行物1の場合と同様に、特許文献1(特許第3373034号公報)の図1等の構成と、刊行物2に記載された構成とを組み合わせることによっても、上記構成要件dを含む本件発明1の構成が得られ、かつ、その組み合わせに困難性は認められない。このため、本件発明1は、刊行物2及び特許文献1からも進歩性が欠如している。」旨、主張する。(意見書5頁下から7行-6頁9行)
しかしながら、上記アのとおり、本件発明1と刊行物2発明には相違点1があるから、本件発明1は、刊行物2発明と同一ではない。また、刊行物1、3~5には相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないのであるから上記イのとおり、刊行物2発明、刊行物1、3~5に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。よって、本件発明1は、刊行物2に対して、新規性及び進歩性はいずれも欠如していない。
また、刊行物2及び特許文献1に基づく進歩性の欠如の主張については、上記(1)ウで説示したことと同様である。
よって、申立人西山の主張を採用することができない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、刊行物2に記載された発明ではなく、また、刊行物2発明、刊行物1、3~5に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)刊行物3を主引用例とする新規性欠如・進歩性欠如について
ア 本件発明1と刊行物3発明との対比
(ア)本件発明1と刊行物3発明とを対比すると、刊行物3発明の「平面形状が略L字形の底壁」は、本件発明の「平面形状が略L字形の底壁」に相当し、以下同様に「出隅側及び入り隅側の側壁」は「出隅側及び入り隅側の側壁」に、「嵌合部」は「軒樋嵌合部」に、「軒樋を直角に接続するための内継ぎ手」は「軒樋曲り継手」にそれぞれ相当する。
(イ)刊行物3発明の「湾曲壁」は、本件発明1の「湾曲壁」に相当する。また、刊行物3発明の「入隅部が湾曲壁で形成されて」いることが、本件発明1の「入隅部が湾曲壁で形成されている」に相当する。一方、刊行物3発明には、本件発明1の「上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されて」に相当する構成はないが、本件発明1の上記箇所は、択一的記載であるため、この点は相違点とはならない。
(ウ)さらに、刊行物3発明の「湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する」ことは、本件発明1の「この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増していること」に相当する。
そうすると、本件発明1と刊行物3発明とは、少なくとも上記(1)アで説示した<相違点1>がある。
イ 判断
上記アで述べたように、本件発明1と刊行物3発明とは相違点1があるので、本件発明1は、刊行物3発明と同一ではない。
また、他の刊行物(刊行物1、2、4及び5)をみても、相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないので、上記(1)イで説示したことと同様に相違点1に係る本件発明1の構成に想到することはできない。
よって、本件発明1は、刊行物3発明、刊行物1、2、4及び5に記載された発明または事項、並びに周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 意見書における申立人西山の主張について
申立人西山は、「刊行物3に、上記構成要件d「上記入隅部の湾曲壁の曲率半径が、上記曲り継手の上端から上記底壁と接続する下端まで連続して漸増していること」が記載されていることが認められないとしても、刊行物3には、平成30年2月14日付の意見書9頁の図X3、図X4において特許権者が3D化した図面で自認しているように、入隅部の段部の上側と下側との両方で湾曲壁の曲率半径が下側に向かって漸増する構成が記載されている。例えば、湾曲壁の段部の下側では、入隅部の湾曲壁の曲率半径が、底壁と接続する下端まで連続して漸増している。
このとき、湾曲壁の曲率半径が、底壁と接続する下端まで連続して漸増する構成を、曲り継手の上端から始めることに何ら困難性があるとは認められない。また、そのときに得られると特許権者が主張する効果も、刊行物3の「湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する」構成から当業者が予測できる程度のものに過ぎない。このため、本件発明1は、刊行物3に対し新規性が欠如していないとしても進歩性が欠如している。
また、刊行物1、刊行物2の場合と同様に、特許文献1(特許第3373034号公報)の図1等の構成と、刊行物3に記載された構成とを組み合わせることによっても、構成要件dを含む本件発明1の構成が得られ、かつ、その組み合わせに困難性は認められない。このため、本件発明1は、刊行物3及び特許文献1からも進歩性が欠如している。」旨、主張する。(意見書7頁8-25行)
しかしながら、上記アのとおり、本件発明1と刊行物3発明には相違点1があるから、本件発明1は、刊行物3発明と同一ではない。また、刊行物1、2、4及び5には相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないのであるから上記イのとおり、刊行物3発明、刊行物1、2、4及び5に記載された発明または事項、並びに周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。よって、本件発明1は、刊行物3に対して、新規性及び進歩性はいずれも欠如していない。
また、刊行物3及び特許文献1に基づく進歩性の欠如の主張については、上記(1)ウで説示したことと同様である。
よって、申立人西山の主張を採用することができない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、刊行物3に記載された発明ではなく、また、刊行物3発明、刊行物1、2、4及び5に記載された発明又は事項、並びに周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)刊行物5を主引用例とする新規性欠如・進歩性欠如について
ア 本件発明1と刊行物5発明との対比
(ア)本件発明1と刊行物5発明とを対比すると、刊行物5発明の「平面形状が略L字形の底壁」は、本件発明の「平面形状が略L字形の底壁」に相当し、以下同様に「出隅側及び入隅側の側壁」は「出隅側及び入隅側の側壁」に、「接続部32,32」は「軒樋嵌合部」に、「溝形状の90度曲り継手本体31」は「軒樋曲り継手」にそれぞれ相当する。
(イ)また、刊行物5発明の「曲り継手の入隅部及び入隅側の側壁と底壁との角部が湾曲壁で形成されており、この湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の途中の部分から下端に向かって漸増している」ことは、本件発明1の「曲り継手の入隅部が湾曲壁で形成されているか、又は、上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されており、この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増していること」に相当する。
そうすると、本件発明1と刊行物5発明とは、少なくとも、上記(1)アで説示した<相違点1>がある。
イ 判断
上記アで述べたように、本件発明1と刊行物5発明とは相違点1があるので、本件発明1は、刊行物5発明と同一ではない。
また、他の刊行物(刊行物1~4)をみても、相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないので、上記(1)イで説示したことと同様に相違点1に係る本件発明1の構成に想到することはできない。
よって、本件発明1は、刊行物5発明、刊行物1~4に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 意見書における申立人西山の主張について
申立人西山は、「刊行物5には、平成30年2月14日付の意見書11頁の図X 5、図X6において特許権者が3D化した図面で自認しているように、上記構成要件d「入隅部の湾曲壁の曲率半径が、上記曲り継手本体の上端から底壁と接続する下端まで連続して漸増している」構成が記載されている。このとき、刊行物5についての上記の図X 5、図X6では、湾曲壁の曲率半径が、下端近くで漸増の程度がその上側より急激になっているだけで、曲り継手本体の上端から底壁と接続する下端まで連続して漸増していることに相違はない。
このため、本件発明1は、刊行物5に対し新規性が欠如している。このとき、本件発明1が刊行物5に対し新規性が欠如していないとしても、湾曲壁の曲率半径が、底壁と接続する下端まで連続して漸増する構成を、曲り継手の上端から始めることに何ら困難性があるとは認められない。また、そのときに得られると特許権者が主張する効果も、刊行物5の「湾曲壁の曲率半径が、湾曲壁の段部より下端に向かって漸増する」構成から当業者が予測できる程度のものに過ぎない。また、刊行物1~3の場合と同様に、特許文献1(特許第3373034号公報)の図1等の構成と、刊行物5に記載された構成とを組み合わせることによっても、構成要件dを含む本件発明1の構成が得られ、かつ、その組み合わせに困難性は認められない。このため、本件発明1は、刊行物5及び特許文献1からも進歩性が欠如している。」旨、主張する。(意見書8頁下から4行-9頁14行)
しかしながら、上記アのとおり、本件発明1と刊行物5発明には相違点1があるから、本件発明1は、刊行物5発明と同一ではない。また、刊行物1~4には相違点1に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないのであるから上記イのとおり、刊行物5発明、刊行物1~4に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。よって、本件発明1は、刊行物5に対して、新規性及び進歩性はいずれも欠如していない。
また、刊行物5及び特許文献1に基づく進歩性の欠如の主張については、上記(1)ウで説示したことと同様である。
よって、申立人西山の主張を採用することができない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、刊行物5に記載された発明ではなく、また、刊行物5発明、刊行物1~4に記載された発明または事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)まとめ
本件発明1は、刊行物1、2、3又は5に記載された発明ではなく、また、刊行物1~5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反したものではない。
2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み更に減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2は、刊行物1~5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、特許法第29条第2項の規定に違反したものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、平成29年7月24日付け取消理由通知並びに平成29年12月19日付け取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700415