特許異議申立
2017-700546
防水シートの固定構造および施工方法
- 審判番号
- 2017-700546
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-136403
- 登録番号
- 特許第6052765号(P6052765)
- 請求日
- 2017年05月30日
- 審決日
- 2018年03月28日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ロンシール工業株式会社
- 【異議申立人】早川ゴム 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人前田特許事務所
- 【異議申立人】アーキヤマデ 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人前田特許事務所
- 【異議申立人】住ベシート防水 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人前田特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小野 忠悦
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 井上 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(E04D) / P1651.121-YAA(E04D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6052765号発明「防水シートの固定構造および施工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6052765号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕,8,9について訂正することを認める。
特許第6052765号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6052765号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成24年6月15日に特許出願され、平成28年12月9日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年5月30日に特許異議申立人早川ゴム株式会社、アーキヤマデ株式会社、住ベシート防水株式会社(以下「申立人」という。)より、請求項1~9に対して特許異議の申立てがされ、平成29年9月26日付け(発送日同年10月4日)で取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月1日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、その後申立人に対し平成29年12月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を送付し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかったものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(3)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記断熱材の一部を被覆するように前記断熱材の上に配置される補強板と、前記補強板の上に複数、配置される固定用ディスクと、」と記載されているのを、「前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に間隔を開けて配置される複数の補強板と、一つの前記補強板に対しその上に複数、配置される固定用ディスクと、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に「断熱材の上に補強板を配置し、」と記載されているのを、「前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に複数の補強板を間隔を開けて配置し、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「断熱材の上に補強板を配置し、」と記載されているのを、「前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に複数の補強板を間隔を開けて配置し、」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、補強板および固定用ディスクの配置をより具体的に限定するものであるといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は、補強板および固定用ディスクの配置をより具体的に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1に関して、段落【0020】には「・・・防水下地の上1の上に断熱材2が設けられ、固定用ディスク5が配置される位置に対応して断熱材2の上に補強板4が配置される。」との記載があり、段落【0021】には「具体的には6つの固定用ディスク5が1つの補強板4によって連結されている。」との記載がある。また【図2】には複数の補強板4が間隔を開けて配置されている状態が図示されており、第1実施形態の変形例である【図3】~【図5】にも同様に複数の補強板4が間隔を開けて配置され、1つの補強板4に対し複数の固定用ディスク5が配置されている状態が図示されている。これらの事項から、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。
(2)訂正事項2、3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2、3は、補強板の配置方法をより具体的に限定するものであるといえるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2、3は、補強板の配置方法をより具体的に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2、3に関して、段落【0046】には「・・・防水下地1の上に断熱材2を敷設し、固定用ディスク5を配置する位置に補強板4を配置する。」との記載があり、【図2】には複数の補強板4が間隔を開けて配置されている状態が図示されており、第1実施例の変形例である【図3】~【図5】にも同様に複数の補強板4が間隔を開けて配置されている状態が図示されている。これらの事項から、当該訂正事項2、3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし7は、それぞれ請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1ないし7は一群の請求項である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕、8、9について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項1~9に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)
本件発明1
「【請求項1】
防水下地の上に敷設される断熱材と、
前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に間隔を開けて配置される複数の補強板と
一つの前記補強板に対しその上に複数、配置される固定用ディスクと、
前記固定用ディスクの上から前記補強板を貫通して前記防水下地に打ち込まれる固定用ビスと、
前記固定用ディスクにより前記断熱材の上に固定される防水シートとを備え、
前記固定用ビスは前記補強板と前記防水下地の2か所で固定されており、
前記補強板は複数の前記固定用ディスクを連結している防水シート固定構造。」
本件発明2
「【請求項2】
前記補強板が金属製、硬質合成樹脂製、木製のいずれかである請求項1に記載の防水シート固定構造。」
本件発明3
「【請求項3】
前記断熱材の上に帯状の前記補強板が並列して配置されている請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の防水シート固定構造。」
本件発明4
「【請求項4】
前記断熱材の上に帯状の前記補強板が交差して配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防水シート固定構造。」
本件発明5
「【請求項5】
前記補強板の交差する部分に前記固定用ディスクが配置されている請求項4に記載の防水シート固定構造。」
本件発明6
「【請求項6】
前記防水シートが前記断熱材の上に敷設され、前記防水シートの上に前記固定用ディスクが配置され、前記固定用ビスが前記固定用ディスクの上から打ち込まれ、前記固定用ディスクを被覆する補強シートをさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防水シート固定構造。」
本件発明7
「【請求項7】
前記防水シートが前記固定用ディスクの上に敷設され、前記防水シートの下面と前記固定用ディスクの上面が接合されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防水シート固定構造。」
本件発明8
「【請求項8】
防水下地の上に断熱材を敷設し、
前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に複数の補強板を間隔を開けて配置し、
前記断熱材と前記補強板を覆うように防水シートを敷設し、
前記防水シートの上から複数の固定用ディスクを前記補強板によって連結可能に配置し、
固定用ビスを前記固定用ディスクの上から前記補強板を貫通し前記防水下地に向けて打ち込み、前記固定用ビスを前記補強板と前記防水下地の2か所で固定する防水シートの固定工法。」
本件発明9
「【請求項9】
防水下地の上に断熱材を敷設し、
前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に複数の補強板を間隔を開けて配置し、
上面に接着層を有する複数の固定用ディスクを前記補強板によって連結可能に前記補強板の上に配置し、
前記固定用ディスクの上から固定用ビスを前記防水下地に向けて打ち込み前記固定用ビスを前記補強板と前記防水下地の2か所で固定し、
前記断熱材と前記固定用ディスクを覆うように防水シートを敷設し、
前記接着層を介して前記防水シートと前記固定用ディスクを接合する防水シートの固定工法。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~9に係る特許に対して平成29年9月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1~4,6,7号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、甲第1~4,6,7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項2に係る発明は、甲第2,1又は7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、甲第2,1,7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1~4号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、甲第1~4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(4)本件特許の請求項4に係る発明は、甲第1~4号証に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(5)本件特許の請求項5に係る発明は、甲第1~4号証に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(6)本件特許の請求項6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、甲第3号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知技術、または甲第7号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(7)本件特許の請求項7に係る発明は、甲第5,1又は7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、本件特許の出願前に頒布された下記甲第5,1,7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(8)本件特許の請求項8に係る発明は、甲第1~4,6,7号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、甲第1~4,6,7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(9)本件特許の請求項9に係る発明は、甲第1,7号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、甲第1~4,6,7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3 刊行物の記載
甲第1号証:特開2002-61339号公報
甲第2号証:特開平7-217104号公報
甲第3号証:特開2007-262698号公報
甲第4号証:特公昭61-51108号公報
甲第5号証:特開2003-90105号公報
甲第6号証:山部亮一、外5名、「機械的固定工法防水層の耐風性評価 その3 いくつかの機械的固定工法の耐風性試験結果」、日本建築学会大会学術講演梗概集、日本建築学会、2012.09.発行、p.899-900
甲第7号証:「金属下地乾式断熱防水工法 リベットルーフ防水 耐火(30分)屋根構法 MD-4工法 システム解説」、アーキヤマデ株式会社、1999.10.22発行、p.1-2,9-10
(1)取消理由通知において引用した甲第1号証には、段落【0016】【0017】【0019】【0021】並びに図2及び図3からみて、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「折板1の上方に敷設される、断熱本体部5bと金属外皮部5aとを一体に形成した耐火断熱パネルと、
固定金具7と、
ビスBと、
防水シート3とを備え、
ビスBは金属外皮部5aと折板1の2か所で固定されており、
金属外皮部5aは複数の固定金具7を連結している防水シート固定構造。」
(2)取消理由通知において引用した甲第2号証には、段落【0009】【0011】【0013】【0014】並びに図1及び2からみて、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「基材層1の上に積層される発泡層2及び硬質板3と、
固定具5と、
ボルト5bと、
防水シート4とを備え、
ボルト5bは硬質板3と基材層1の2か所で固定されている防水シート固定構造。」
(3)取消理由通知において引用した甲第3号証には、段落【0009】【0011】【0012】【0015】【0016】【0017】【0018】【0020】及び図6からみて、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲3発明)
「建物躯体に載設され、上下二枚の金属外皮1に間に断熱材3を介在させて形成される断熱パネル4と、
固定ディスク14と、
固定具13bと、
防水シート6とを備え、
固定具13bは金属外皮1と建物躯体5に対して複数箇所で固定されており、
金属外皮1は複数の固定ディスク14を連結している防水シート固定構造。」
(4)取消理由通知において引用した甲第4号証には、第2頁左欄12-20、34-35行及び左欄43行-右欄1行並びに図6からみて、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲4発明)
「屋根下地構造体外側に敷設される断熱材2及び不燃ボード3と、
ディスク盤5と、
アンカーボルト4と、
防水シート6とを備え、
アンカーボルト4は不燃ボード3と屋根下地構造体1の2か所で固定されている防水シート固定構造。」
(5)取消理由通知において引用した甲第5号証には、段落【0005】【0008】【0015】からみて、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲5発明)
「防水シート7がシート固定具1の上に敷設され、
防水シート7の下面とシート固定具1の上面が接合されている
上面に接着剤層2を有するシート固定具1」
(6)取消理由通知において引用した甲第6号証には、p899、900からみて、以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲6発明)
「デッキ上に配置される、断熱材の表面にスレート板又は鉄板が貼り合わされたものと、
固定ディスクと、
ドリルスクリューと、
防水シート(高強度タイプ)とを備え、
ドリルスクリューはスレート板とデッキの2か所または鉄板とデッキの2か所で固定されている防水シート固定構造。」
(7)取消理由通知において引用した甲第7号証には、p.1,2,9,10からみて、以下の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲7発明)
「折板の上方に下地ボードを敷き並べ、さらにその上方に敷き並べられる断熱材と、
溶融亜鉛メッキ鋼板と、
IHディスクと、
専用セルフドリルアンカーと、
リベットルーフSGMとを備え、
専用セルフドリルアンカーは溶融亜鉛メッキ鋼板と折板の2か所で固定されており、
溶融亜鉛メッキ鋼板は複数のIHディスクを連結している防水シート固定構造」
4 取消理由通知に記載した取消理由(第29条第1項第3号、第29条第2項)について
(1)第29条第1項第3号、第29条第2項について
ア 本件発明1についての判断
甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証には、上記3(1)~(5)、(7)に述べたように、甲1発明ないし甲5発明、甲7発明が記載されており、本件発明1と対応させると、防水下地に敷設された断熱材、固定用ディスク、固定用ディスクを貫通し下地に打ち込まれる部材、固定ディスクにより断熱材の上に固定される防水シートを備えたことが記載されているとともに、本件発明1の「断熱材を覆う補強板」に対応するものとして、甲第1号証には「金属外皮部5a」、甲第2号証には「硬質板3」、甲第3号証には「金属外皮1」、甲第4号証には「不燃ボード3」、甲第7号証には「溶融亜鉛メッキ鋼板」が記載されている(なお、甲第5号証には、「補強板」に相当するものを認定することができない。)。
しかしながら、いずれの「断熱材を覆う補強板」(に対応するもの)も、本件発明1の「断熱材」に対応する各甲号証の構成、すなわち、甲第1号証の「断熱本体部5b」、甲第2号証「発泡層2」、甲第3号証「断熱材3」、甲第4号証の「断熱材2」、甲第7号証の「断熱材」の上面の一部を被覆するように、断熱材の上に間隔を開けて複数で配置されていない。
よって、甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証には、本件発明1の「前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に間隔を開けて配置される複数の補強板」の構成が、記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、上記構成を備えることにより、「・・・これにより固定用ディスク5は帯状に連結され、固定用ビス6に水平方向の応力が作用してもこの応力を連結された他の固定用ビス6で分散して対抗し得るために固定用ディスク5が充分に固定されることとなる。また、このような態様により、補強板4の敷設が容易となりまた、平面における補強板の占める面積が少なくなることから、コストを抑えるとの効果も得られる。」(本件明細書段落【0025】)との作用効果を奏する。
よって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第4号証、甲第7号証に記載されたいずれの発明とも同一ではなく、その特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、上記構成が、甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証に記載も示唆もされていないことから、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
イ 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7は、本件発明1の構成をすべて含み更に減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし7は、甲第1号証ないし甲第4号証、甲第7号証に記載された発明とは同一ではなく、また、本件発明2ないし7は、甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明8及び本件発明9
上記アで述べたとおり、甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証には、「複数の補強板」が「断熱材の上面の一部を被覆するように」「前記断熱材の上に間隔を開けて配置される」構成が記載も示唆もされていないのであるから、本件発明8及び本件発明9の「前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に複数の補強板を間隔を開けて配置」したことの構成についても、記載も示唆もされていないといえる。
そして、本件発明8及び9は、上記構成を備えることにより、上記アで説示したことと同様の作用効果を奏する。
よって、本件発明8は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明のいずれの発明とも同一ではなく、また、本件発明8は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明9は、甲第1号証、甲第7号証に記載された発明とは同一ではなく、また、本件発明9は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ まとめ
したがって、本件発明1ないし9は、甲1発明ないし甲4発明、甲7発明のいずれかと同一ではなく、その特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件発明1ないし9は、甲1発明ないし甲5発明、甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)甲第6号証について
甲第6号証(下部に「899」、「900」と記された頁)は、その899頁の右上に「日本建築学会大会学術講演梗概集 (東海)2012年9月」との記載があることから、日本建築学会大会学術講演梗概集の一部分であって、本件特許の出願日である平成24年6月15日(2012年6月15日)の後である2012年9に発行されたものと認められる。
よって、甲第6号証は、これが刊行物であるとしても、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布されたものであるとはいえない。
申立人は、「甲第6号証は、日本建築学会大会学術講演梗概集に掲載された原稿である。この原稿の応募期間は、電子投稿応募期間が2012年2月24日-4月10日、紙面投稿応募期間が2012年2月24日-4月4日となっており、本願出願日よりも前に原稿の応募が締め切られている。日本建築学会大会学術講演梗概集に掲載されているということは、上記いずれの応募期間にも間に合っているということであり、従って、甲第6号証は、本願出願日よりも前に不特定多数の人に知り得る状態になっていた文献に相当する。」と主張する。
しかしながら、甲第6号証は、上記で説示したように、本件特許の出願日後の平成2012年9月に発行された日本建築学会大会学術講演梗概集の一部分であって、原稿の内容を反映させたものであるとしても、申立人が述べるような原稿そのものではない。
なお、本願出願前に、原稿が一般社団法人日本建築学会に応募期間に受け付けられとしても、通常、このような原稿が不特定多数の人に知り得る状態になるものではないし、当該原稿が不特定多数の人に知り得る状態になっていたことを示す証拠もない。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
甲第6号証に記載された発明について付言すると、甲第6号証に記載の「断熱材」の表面に貼り合わされた「スレート板」又は「鉄板」は、本件発明1の「補強板」に相当するものとはいえるものの、いずれも「断熱材の上面の一部を被覆するように」「前記断熱材の上に間隔を開けて配置される」物ではないため、本件発明1の「前記断熱材の上面の一部を被覆するように前記断熱材の上に間隔を開けて配置される複数の補強板」には該当しない。
したがって、甲第6号証が、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物であるとしても結論に変わりはない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、平成29年9月26日付け取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700546