特許異議申立
2017-700374
端子装置
- 審判番号
- 2017-700374
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-203330外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月17日
- 審決日
- 2017年11月22日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】漆原 六七八
- 分類
- P1652.14 -YAA(H01R) / P1652.121-YAA(H01R) / P1652.537-YAA(H01R) / P1652.856-YAA(H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第2条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6008285号発明「端子装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6008285号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第6008285号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6008285号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成24年9月14日に特許出願され、平成28年9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1に係る特許について、平成29年4月17日に特許異議申立人漆原六七八(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、同年7月7日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月8日に意見書の提出及び訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求があり、その訂正の請求に対して同年11月1日に異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記ハウジングには、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部が設けられている」とあるのを、
「前記ハウジングには、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部が設けられ、
前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」に訂正する。(下線は、特許権者が付与。以下同様。)
(2)訂正事項2
明細書の段落【0008】に「前記ハウジングには、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部が設けられている」とあるのを、
「前記ハウジングには、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部が設けられ、前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に関連する記載として、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)には、「【0036】また、図10に示すように、ねじ操作穴54の寸法形状は、端子ねじ44の頭部441が通過できない程度に十分に小さくされている。つまり、ハウジング5に対する端子ねじ44の可動範囲であって上下方向の外向き(図10での下向き)への可動範囲は、ねじ操作穴54の周縁部によって制限されている。」と記載されており、更に、本件特許明細書等の図10を参照すると、端子ねじ44の下向きへの可動範囲は、ハウジング5が、端子板42と離れる方向から、端子ねじ44の頭部441に接触することにより制限するようになっていることが看取される。
そうすると、「前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」ことは、本件特許明細書等に記載されていると認められる。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において、「ハウジング」について、「前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」ことを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正後の請求項2~4に係る発明は、訂正事項1により間接的に訂正されるとともに、特許異議の申立てがされていない請求項に係る発明である。
そこで、訂正後の請求項2~4に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて検討する。
訂正後の請求項1に係る発明(本件発明1)は、本審決の「第3」において後記するように、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たし(「第3 2(2)」を参照。)、特許法第29条第1項柱書の要件及び特許法第36条第6項第2号の要件を満たすとともに、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない(「第3 3(2)」を参照。)。
そして、訂正後の請求項2~4に係る発明(本件発明2~4)は、訂正後の請求項1に係る発明(本件発明1)を更に限定したものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、本件訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6条(第4号は除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項に適合するものである。
なお、異議申立人は、平成29年11月1日付け意見書において、訂正後の請求項1では、端子ねじの頭部が接触する相手先を「ハウジング」としており、ハウジングの一部分である「ねじ操作穴の周辺部」よりも範囲を広げており、ハウジングの内部に突起を設け、この突起に端子ねじ44の頭部441が接触するようにした構成も、文言解釈上は請求項1に係る発明の技術的範囲に含まれてしまうから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定(特許法第126条第6項:第1項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない。)に違反するものである旨を主張している。
しかし、前述したように、訂正事項1は、ハウジングについて、「前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」ことを限定したもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、本件特許明細書等に記載されているから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1において特許請求の範囲の請求項1を減縮し、これに伴って明細書の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、これらの訂正事項は、一群の請求項に対して請求されたものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正により訂正後の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
導電材料からなる端子板と、
前記端子板に対向する端子ナットと、
前記端子ナットに螺合した端子ねじと、
前記端子板と前記端子ナットと前記端子ねじとをそれぞれ収納したハウジングとを備え、
前記ハウジングには、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部が設けられ、
前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している
ことを特徴とする端子装置。
【請求項2】
前記端子ねじの頭部を露出させるねじ操作穴が前記ハウジングに設けられ、前記ねじ操作穴は、前記頭部が前記端子板から離れる方向に通過できない程度の寸法に形成されていることを特徴とする請求項1記載の端子装置。
【請求項3】
前記端子ねじは、前記端子ナットに螺合した状態に保たれており、
前記端子板と前記端子ナットと前記端子ねじとをそれぞれ収納する収納凹部が前記ハウジングに設けられ、
前記端子ねじは、頭部を外側に向けて前記ハウジングの前記収納凹部に収納され、
前記ハウジングの前記収納凹部には、前記端子ねじの前記頭部を露出させるねじ操作穴が設けられ、前記制限部は、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ナットが前記端子ね
じから分離しないように制限し、
前記ハウジングに対する前記端子ねじの外側への可動範囲は、前記ねじ操作穴の周縁部によって制限されていることを特徴とする請求項1記載の端子装置。
【請求項4】
前記端子ねじの軸部の先端部は、ねじ山が設けられていないストレート部とされていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の端子装置。」
2 取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成29年7月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
請求項1に係る発明の課題は、端子ねじから端子ナットの分離を防止する構造についての製造コストを低減させることと解される。
しかし、請求項1には、「ねじ操作穴54の寸法形状は、端子ねじ44の頭部441が通過できない程度に十分に小さくされている。つまり、ハウジング5に対する端子ねじ44の可動範囲であって上下方向の外向き(図10での下向き)への可動範囲は、ねじ操作穴54の周縁部によって制限されている」ことに関しての特定がないから、請求項1に係る発明の課題を解決できない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
(2)判断
本件訂正により、本件発明1は、制限部に加えて、「前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」との事項を有するものとなっており、これにより、端子ねじから端子ナットの分離を防止する構造についての製造コストを低減させることが可能となるから、本件発明1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されているものである。
よって、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
異議申立人は、訂正前の請求項1に関し、以下の特許異議申立理由を挙げている。
ア 理由1(特許法第29条第1項柱書)
発明の課題を解決するための手段として示された「制限部」だけでは、課題を解決することが不可能であるため、発明に該当しない。
イ 理由2(特許法第36条第6項第2号)
請求項1の「前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部」との記載は、制限部が如何にして端子ナットの可動範囲を端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限するのか不明であるから、明確でない。
ウ 理由3(特許法第29条第2項)
請求項1に係る発明は、甲第2号証(特開平2002-203455号公報)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
(2)判断
ア 理由1(特許法第29条第1項柱書)について
本件発明1は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」にあたるから、特許法第2条第1項でいう「発明」といえる。そして、本件発明1は、特許法第29条第1項柱書でいう「産業上利用することができる発明」にあたる。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項柱書の要件を満たす。
なお、異議申立人は、発明の課題を解決するための手段として示された「制限部」だけでは、課題を解決することが明らかに不可能であるため、発明に該当しないと主張する。
しかし、前記「2(2)」で述べたように、本件訂正により、本件発明1は、制限部に加えて、「前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」との事項を有するものとなっており、これにより、端子ねじから端子ナットの分離を防止する構造についての製造コストを低減させることが可能という、課題を解決することができる。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。
イ 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
本件訂正前の請求項1の「前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部」との発明特定事項は、明確であり、本件訂正前の請求項1に係る発明の範囲は明確であった。
したがって、本件訂正前の請求項1、及び本件訂正後の請求項1の記載は、いずれも特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
なお、異議申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明において、制限部が如何にして端子ナットの可動範囲を端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限するのか不明である旨を主張するところ、前記「2(1)」で述べた取消理由(特許法第36条第6項第1号)は、異議申立人の同主張に対応するものである。
そして、前記「2(2)」で述べたように、本件訂正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。
ウ 理由3(特許法第29条第2項)について
甲第2号証(特に、段落【0059】~【0062】、及び【図66】~【図74】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「ピアノハンドル式スイッチ」に関して、第2の実施の形態として、次の発明(以下、「甲第2号証に記載された発明」という。)が記載されている。
「端子板15と、
前記端子板15に対向するナット17と、
前記ナット17に螺合した端子ねじ16と、
前記端子板15と前記ナット17と前記端子ねじ16とをそれぞれ収納した器体5とを備える、
スイッチ。」
本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比する。
甲第2号証に記載された発明の「端子板15」は、本件発明1の「導電材料からなる端子板」に相当する。
以下同様に、「ナット17」は、「端子ナット」に、
「端子ねじ16」は、「端子ねじ」に、
「器体5」は、「ハウジング」に、
「スイッチ」は、「端子装置」に、それぞれ相当する。
以上のことから、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とは次の点で一致する。
「導電材料からなる端子板と、
前記端子板に対向する端子ナットと、
前記端子ナットに螺合した端子ねじと、
前記端子板と前記端子ナットと前記端子ねじとをそれぞれ収納したハウジングとを備える、
端子装置。」
一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本件発明1では、「前記ハウジングには、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部が設けられ、前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」のに対して、
甲第2号証に記載された発明では、かかる構成を備えていない点。
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る本件発明1の、「前記ハウジングには、前記端子ナットの可動範囲を、前記端子ねじからの分離が発生しない程度までに制限する制限部が設けられ」ている構成、及び「前記ハウジングは、前記端子ねじの頭部が前記端子板と離れる方向から前記端子ねじの頭部に接触することによって前記端子ねじの可動範囲を制限している」構成は、いずれも甲第2号証に記載も示唆もされておらず、本件特許の出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、上記相違点に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、異議申立人は、特許異議申立書(5ページ1行~14行を参照。)において、端子板15の連絡片15dは、本件発明1の「制限部」と同等の機能を備えており、連絡片15dは器体5に組み込まれて、本件発明1の制限部と同じハウジング内の位置でナット17に接触し、ナット17の可動範囲を制限しているから、これを参照して当業者が本件発明1の制限部を想到することは極めて容易である旨を主張している。
しかし、甲第2号証には、連絡片15dがナット17の可動範囲を制限していることについて特に記載はなく、また図面等から明らかな事項であるともいえない。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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