特許無効審判
2014-800014
電気コネクタ組立体
- 審判番号
- 2014-800014
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2013-081080
- 登録番号
- 特許第5362136号(P5362136)
- 請求日
- 2014年01月23日
- 審決日
- 2016年11月24日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本圧着端子製造 株式会社
- 【請求人代理人】正林 真之
- 【請求人代理人】林 一好
- 【請求人代理人】芝 哲央
- 【請求人代理人】小菅 一弘
- 【請求人代理人】岩池 満
- 【請求人代理人】崎間 伸洋
- 【請求人代理人】高野 芳徳
- 【被請求人】ヒロセ電機 株式会社
- 【被請求人代理人】田中 伸一郎
- 【被請求人代理人】高石 秀樹
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】豊島 匠二
- 審判長/審判官
- 審判長 冨岡 和人
- 審判官 中川 隆司
- 審判官 小関 峰夫
- 分類
- P1123.121-YAA(H01R) / P1123.536-YAA(H01R) / P1123.537-YAA(H01R) / P1123.841-YAA(H01R) / P1123.851-YAA(H01R) / P1123.853-YAA(H01R) / P1123.854-YAA(H01R) / P1123.855-YAA(H01R) / P1123.856-YAA(H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第131条の2第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5362136号「電気コネクタ組立体」の特許無効審判事件についてされた平成27年7月10日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成27年(行ケ)第10164号、平成28年7月13日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5362136号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項〔1-3〕として訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本件特許第5362136号の請求項1に係る発明についての出願は、平成22年1月21日に出願した特願2010-11225号の一部を平成24年2月29日に新たな特許出願(特願2012-43761号)とし、更にその一部を平成25年4月9日(優先権主張 平成21年4月16日)に新たな特許出願としたもので、平成25年9月13日に設定登録がされたものである。
また、本件無効審判請求に係る経緯は、以下のとおりである。
平成26年 1月23日 無効審判請求
平成26年 4月18日 答弁書提出
平成26年 6月 2日 弁駁書提出
平成26年 7月14日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成26年 7月22日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成26年 8月 4日 口頭審理陳述要領書(2)提出(被請求人)
平成26年 8月 4日 口頭審理
平成26年 9月16日 審決の予告
平成26年11月21日 訂正請求
(平成27年2月25日付けで取下げ)
平成27年 1月13日 弁駁書(第2回目)提出
平成27年 1月22日 補正許否の決定(請求の理由の補正を許可)
平成27年 2月25日 答弁書(第2回目)提出
平成27年 2月25日 訂正請求
平成27年 4月 3日 弁駁書(第3回目)提出
平成27年 5月13日 上申書提出(被請求人)
平成27年 5月19日 訂正拒絶理由通知(被請求人宛)
平成27年 5月19日 職権審理結果通知(請求人宛)
平成27年 6月 1日 意見書提出(被請求人)
平成27年 6月 1日 手続補正書提出(訂正請求書の補正)
平成27年 6月22日 意見書提出(請求人)
平成27年 7月10日 審決(以下「一次審決」という。)
平成28年 7月13日 判決言渡(平成27年(行ケ)第10164号 、以下「判決」という。)
2.訂正請求について
2-1.補正について
(1)補正の内容
被請求人により提出された平成27年6月1日付け手続補正書による補正は、訂正請求書及びこれに添付した訂正明細書及び特許請求の範囲における訂正事項4に関する記載及び訂正事項6における訂正事項4に関する記載を削除する補正である。
(2)補正の適否
上記補正は、訂正事項を削除するもの又はその削除に伴うものであることから、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法134条の2第9項で準用する特許法第131条の2第1項の規定に適合するので、当該補正を認める。
(3)請求人の主張について
請求人は、平成27年6月22日付け意見書第6頁において、訂正事項1~4及び6は、相互に結びついて請求項1を訂正する、実質的に一体の訂正事項であるので、訂正事項4及び6に関わる事項を削除する上記補正は、訂正請求書の要旨を大きく変更するものである旨主張する。
しかし、訂正事項4は、「突出部」の形状に係るものであるのに対し、訂正事項1は「ロック突部」の形状に係るもの、訂正事項2は「ケーブルコネクタ」の姿勢に係るもの、訂正事項3は「ロック突部」の位置に係るものであって、訂正事項4と訂正事項1~3との間に格別な結びつきは認められない。
また、平成27年5月19日付け訂正拒絶理由通知において指摘したとおり、訂正事項4に係る構成は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項でないことから、それらの記載からは、訂正事項1~3との関連についての判断をし得るものではない。
よって、訂正事項1~4及びそれらの訂正事項に関する訂正事項6は、実質的に一体のものということができないことより、上記請求人の主張は採用できない。
2-2.訂正の内容
上記のように補正が認められることより、被請求人により請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許第5362136号の明細書及び特許請求の範囲を平成27年2月25日付け訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正しようとするものである。すなわち、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「突部前縁と突部後縁が形成されたロック突部」とあるのを、「平坦面部分を有する突部前縁と平坦面部分を有する突部後縁とが前後方向に離間しているロック突部」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「上記ロック突部が嵌合方向で上記ロック溝部内に進入してケーブルコネクタが嵌合終了の姿勢となったコネクタ嵌合状態では、」とあるのを、「上記ロック突部が嵌合方向で上記ロック溝部内に進入してケーブルコネクタが該ケーブルコネクタの前端側が持ち上がった上向き傾斜姿勢から嵌合終了の姿勢となったコネクタ嵌合状態では、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「該ケーブルコネクタが後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、上記ロック突部が上記抜出方向で上記突出部と当接して該ケーブルコネクタの抜出を阻止するようになっており、」とあるのを、「上記姿勢の変化に応じて上記突出部に対する上記ロック突部の位置が変化することにより、該ケーブルコネクタが後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、上記ロック突部が上記抜出方向で上記突出部と当接して該ケーブルコネクタの抜出を阻止するようになっており、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する)。
(4)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「上記ロック突部と上記突出部との当接可能な状態が解除されて、」とあるのを、「上記ロック突部と上記突出部との上記当接可能な状態が解除されて、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する)。
(5)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0009】を、以下のとおり訂正する。
「 かかる電気コネクタ組立体において、本発明では、ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタの一方が、平坦面部分を有する突部前縁と平坦面部分を有する突部後縁とが前後方向に離間しているロック突部を側壁面に有し、他方が前後方向で該ロック突部に対応する位置で溝部前縁と溝部後縁が形成されたロック溝部を側壁面に有し、該ロック溝部には溝部前縁または溝部後縁から溝内方へ突出する突出部が設けられていて、上記ロック突部が嵌合方向で上記ロック溝部内に進入してケーブルコネクタが該ケーブルコネクタの前端側が持ち上がった上向き傾斜姿勢から嵌合終了の姿勢となった後は、上記姿勢の変化に応じて上記突出部に対する上記ロック突部の位置が変化することにより、該ケーブルコネクタが後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、上記ロック突部が上記抜出方向で上記突出部と当接して該ケーブルコネクタの抜出を阻止するようになっており、該ケーブルコネクタの前端部にはコネクタ嵌合状態でレセプタクルコネクタの前方の端壁面の位置から前方へ突出する持上げ部が設けられていて、該持上げ部を抜出方向に持ち上げることにより該ケーブルコネクタの抜出が可能となっていることを特徴としている。」
2-3.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1において、「ロック突部」に形成されている「突部前縁」と「突部後縁」に、それぞれ「平坦面部分を有する」こと及び、それらが「前後方向に離間している」ことの限定を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に該当する。
また、上記付加された各事項は、願書に添付した図1、3及び5~8の記載から容易に理解できることから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1において、嵌合終了の姿勢になる前の姿勢について「ケーブルコネクタの前端側が持ち上がった上向き傾斜姿勢」であることの限定を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に該当する。
また、上記付加された事項は、願書に添付した明細書の段落【0031】、【0037】、【0041】、【0043】、【0051】及び【0052】、並びに図2、3及び5~8の記載から理解できることから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1において、「ケーブルコネクタの抜出の阻止」が、「姿勢の変化に応じて突出部に対するロック突部の位置が変化することにより」行われることの限定を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に該当する。
また、上記付加された事項は、願書に添付した明細書の段落【0037】、【0039】、【0041】、【0051】及び【0052】、並びに図3及び5~8の記載から理解できることから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項1において、「ロック突部と突出部との当接可能な状態が解除され」ることにおける「当接」が、上記されたものと同じであることを明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に該当する。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、訂正事項1~3に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に該当する。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)一群の請求項であること
訂正後の請求項2及び3は、訂正事項1~3及び5を含む訂正後の請求項1の記載をそれぞれ引用しているものであるから、当該訂正後の請求項1~3は、特許法施行規則第46条の2第2号に規定する関係を有する一群の請求項である。
(7)訂正後の請求項2及び3の独立特許要件について
訂正後の請求項2及び3は、訂正事項1~3を含む訂正後の請求項1を引用するものであって、特許無効審判の請求がされていない請求項であり、その訂正については、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定が適用されるところ、それらの記載については「7-1.無効理由2及び3について」で述べるのと同様に不備はなく、また、そのほか請求項2及び3についての請求人からの主張はなく、訂正後の請求項2及び3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるということはできない。
(8)まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項の規定によって準用する同法第126条第5~7項の規定に適合するものであるので、一群の請求項として当該訂正を認める。
3.本件特許発明
上記のように本件訂正が認められることより、本件特許第5362136号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「ハウジングの周面に形成された嵌合面で互いに嵌合接続されるケーブルコネクタとレセプタクルコネクタとを有し、嵌合面が側壁面とこれに直角をなし前方に位置する端壁面とで形成されており、ケーブルコネクタが後方に位置する端壁面をケーブルの延出側としている電気コネクタ組立体において、
ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタの一方が、平坦面部分を有する突部前縁と平坦面部分を有する突部後縁とが前後方向に離間しているロック突部を側壁面に有し、他方が前後方向で該ロック突部に対応する位置で溝部前縁と溝部後縁が形成されたロック溝部を側壁面に有し、該ロック溝部には溝部前縁または溝部後縁から溝内方へ突出する突出部が設けられており、ケーブルコネクタは、前方の端壁面に寄った位置で側壁に係止部が設けられ、レセプタクルコネクタは、前後方向で上記係止部と対応する位置でコネクタ嵌合状態にて該係止部と係止可能な被係止部が側壁に設けられており、上記ロック突部が嵌合方向で上記ロック溝部内に進入してケーブルコネクタが該ケーブルコネクタの前端側が持ち上がった上向き傾斜姿勢から嵌合終了の姿勢となったコネクタ嵌合状態では、上記姿勢の変化に応じて上記突出部に対する上記ロック突部の位置が変化することにより、該ケーブルコネクタが後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、上記ロック突部が上記抜出方向で上記突出部と当接して該ケーブルコネクタの抜出を阻止するようになっており、該ケーブルコネクタの前端部には前方へ突出する持上げ部が設けられていて、上記コネクタ嵌合状態で該持上げ部を抜出方向に持ち上げることにより、上記係止部と上記被係止部との係止可能な状態が解除されるとともに、上記ロック突部と上記突出部との上記当接可能な状態が解除されて、上記ケーブルコネクタの抜出が可能となることを特徴とする電気コネクタ組立体。」
4.請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第5362136号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、その理由の概要として、以下のとおり主張している。
(1)無効理由1
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明、及び周知の甲第2号証から甲第5号証に示される構成に基づいて、もしくは甲第2号証から甲第8号証に示される構成に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由1の要点は以下のとおりである。
請求項1は、持ち上げ部に関する構成が甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証に示されており、甲第1号証に記載された発明に、周知の甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証に記載された構成を適用することにより容易になし得る。
仮にロック突部の形状が実施例のように前縁と後縁を有する略多角形の形状に限定的に解釈されたとしても、周知の甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証に示された形態を適用することにより容易になし得る。
(2)無効理由2(平成27年1月13日付け弁駁書第10~11頁、平成27年1月22日付けで請求の理由の補正の許可、平成27年4月3日付け弁駁書第8~9頁)
本件特許発明は、発明が多義に解釈でき明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。
(3)無効理由3(平成27年1月13日付け弁駁書第11~13頁、平成27年1月22日付けで請求の理由の補正の許可、平成27年4月3日付け弁駁書第9~10頁)
本件特許発明は、ケーブルコネクタの姿勢の変化とロック突部の位置変化が直接的に関係することを特定するものであるなら、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号の規定に違反する。
そして、請求人は、証拠方法として、以下の甲第1号証ないし甲第15号証を提出している。
[証拠方法]
甲第1号証:特開昭63-218174号公報
甲第2号証:特開平6-124747号公報
甲第3号証:特開2003-36928号公報
甲第4号証:実願昭63-80989号(実開平2-3676号)のマイクロフィルム
甲第5号証:特開2000-252007号公報
甲第6号証:特開平10-208784号公報
甲第7号証:特開平10-112340号公報
甲第8号証:特開平10-144366号公報
甲第9号証:実願昭62-140170号(実開昭64-44580号)のマイクロフィルム
甲第10号証:特許第5362136号号公報(本件特許公報)
甲第11号証:特許第5247904号公報
甲第12号証:特開2010-191478号公報
甲第13号証:特開2007-139810号公報
甲第14号証:不服2011-12018号審決
甲第15号証:平成25年(行ケ)第10070号判決
5.被請求人の主張
被請求人は、「本審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、請求人の主張には何れも理由がないものである旨の主張をしている。
また、平成27年5月13日付け上申書に添付して平成26年(行ケ)第10237号の判決文を提出している。
6.甲各号証の記載事項
甲第1号証ないし甲第8号証には、以下の各事項が記載されている。
[甲第1号証]
(1a)「2.特許請求の範囲
1.第1の絶縁体に第1のコンタクトを組込んでなる第1のコネクタ要素と,第2の絶縁体に第2のコンタクトを組込んでなる第2のコネクタ要素とを含むコネクタにおいて,上記第1の絶縁体は上記第2のコネクタ要素の側面に対向するよう延出した側壁を有し,該側壁は,その延出方向に対し実質的に直角にのびて一端が縁部にまで至る溝部を有し,上記第2の絶縁体は上記溝部に挿入された回転中心突起を側面に有し,さらに上記第1及び第2のコンタクトは,上記回転中心突起を支点とした上記第1及び第2の絶縁体の相対的回動により互いに接触・離間されるものであることを特徴とする回転挿抜コネクタ。
2.特許請求の範囲第1)項記載の回転挿抜コネクタにおいて,上記第1及び第2の絶縁体間を上記第1及び第2のコンタクトの接触状態でロックするロック装置を備えたことを特徴とするもの。」(第1頁左下欄4行~右下欄3行)
(1b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は,一方のハウジングを他方のハウジングに対し回動させることで接続又は切離しの作用を得ることのできるコネクタに関する。」(第1頁右下欄5~8行)
(1c)「〔従来例〕
通常のコネクタは,軸方向の挿抜によって電気的な接続又は切離しを得るようになっている。そのコネクタは,第7図に示すように,一方のコネクタ1と,このコネクタ1に着脱可能に嵌合する他方のコネクタ(以下相手コネクタと呼ぶ)3とを有している。一方のコネクタ1は,電気絶縁材料によって作られたハウジング5と,このハウジング5に組込まれたピンコンタクトのような複数の導電性のコンタクト7とを有している。ハウジング5の一側には溝部9が形成されている。溝部9には複数のコンタクト7が並列している。これらのコンタクト7は,溝部9の底面から開口近くにまでのびた接触部11と,ハウジング5の背面から外部に露出した端子部13とを有している。
ハウジング5の溝部9には,相手コネクタ3が着脱可能に嵌合される。相手コネクタ3は電気絶縁材料によって作られた相手ハウジング15と,この相手ハウジング15の内部に組込まれたソケットコンタクトのような複数の導電性の相手コンタクト(図示せず)とを有している。相手コンタクトには相手ハウジング15の外部から導入されたケーブル17の一端が接続されている。このような相手コネクタ3はハウジング5のコンタクト7の接触部11の軸心に沿った方向(即ち,コネクタ突合方向)に動かされることで一方のコネクタlに対し挿抜される。かくして相手コンタクトと接触部11とを,1対1に接続させることができる。
相手ハウジング15の上面には,第8図に示すように,ロックレバー19が形成されている。このロックレバー19は一端が相手ハウジング15の上面に接続されたものである。ロックレバー19の上面には,突起部21が形成されている。突起部21はハウジング5の溝部9の内面から上面にまで貫通して形成された係止穴23に係止される。これによりハウジング5と相手ハウジング15とは嵌合状態にロックされる。また,コンタクト7と相手コンタクトとはロックレバー19を下向きに押すと突起部21が係止穴23から離脱して引き抜きが可能である。」(第1頁右下欄9行~第2頁右上欄10行)
(1d)「〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら,このようなコネクタによれば,挿入が不完全であるとロックレバー19の突起部21が相手の係止穴23に止まらないため,後にケーブル17を引張るような時,コネクタ1から相手コネクタ3が外れてしまうという問題がある。
また,係止穴23とこれに対応する突起部21とを設けるためにハウジング5や相手ハウジング15の所要スペースが大きくなり,したがって,特に高密度化を必要とするコネクタとしては不向きである。
それ故に本発明の目的は,確実な嵌合を得ることができ,かつ小型化が可能なコネクタを提供することにある。」(第2頁右上欄15行~同左下欄8行)
(1e)「〔問題点を解決するための手段及び作用〕
本発明によれば,第1の絶縁体に第1のコンタクトを組込んでなる第1のコネクタ要素と,第2の絶縁体に第2のコンタクトを組込んでなる第2のコネクタ要素とを含むコネクタにおいて,上記第1の絶縁体は上記第2のコネクタ要素の側面に対向するよう延出した側壁を有し,該側壁はその延出方向に対し実質的に直角にのびて一端が縁部にまで至る溝部を有し,上記第2の絶縁体は上記溝部に挿入された回転中心突起を側面に有し,さらに上記第1及び第2のコンタクトは,上記回転中心突起を支点とした上記第1及び第2の絶縁体の相対的回動により互いに接触・離間されるものであることを特徴とする回転挿抜コネクタが得られる。」(第2頁左下欄9行~同右下欄3行)
(1f)「〔実施例〕
第1図は本発明の回転挿抜コネクタの一実施例を示している。
図示の回転挿抜コネクタは,一方のコネクタ31(第1のコネクタ要素)とこのコネクタ31に挿抜可能にして嵌合する相手コネクタ(第2のコネクタ要素)33とを有している。
一方のコネクタ31は,電気絶縁材料によって作られたハウジング(第1の絶縁体)35と,このハウジング35に設けられた複数の導電性のコンタクト37(第1のコンタクト)とを有している。コンタクト37は接触部39と,ハウジング35の外部に露出した端子部(第4図に記号38で示した)とを有している。
また,相手コネクタ33は電気絶縁材料によって作られた相手ハウジング(第2の絶縁体)39とこのハウジング39の内部に設けられた導電性のソケットコンタクトのような相手コンタクト(第2のコンタクト)41とを有している。相手コンタクト41には,第2図に示すように,相手ハウジング39の外部から導入されたケーブル44の一端が接続されている。これらの相手コンタクト41のソケット部46は,一方のハウジング35に設けられたコンタクト37の接触部39に嵌合される形状を有している。なお両コンククト41,37は,互いに1対1に接触されて電気的な接続を得るものである。
一方のコネクタ31のハウジング35は互いに間隔をおいて対向するよう延出した対の側壁(その一方のみを47で示した)を有している。これらの側壁47の内面には,溝部49及び係止穴51がそれぞれ形成されている。これらの溝部49は,側壁47の延出方向,即ち,コネクタ突合方向の軸線とほぼ直角方向(実質的に直角方向)にのびるように形成されている。また溝部49には中間部分に肩部56が形成されている。このようなハウジング35の対の側壁47の間には,相手コネクタ33のハウジング39が嵌込まれる。
一方,相手コネクタ33のハウジング39の対の側面には,それぞれ,ハウジング35の溝部49に嵌込まれる回転中心突起53が形成されている。これらの突起53はまた肩部56に当接するものである。さらに相手コネクタ33のハウジング39の対の側面には,一方のコネクタ31のハウジング35の係止穴51に嵌込まれる係止突起60が形成されている。」(第2頁右下欄4行~第3頁右上欄9行)
(1g)「次に,第3図及び第6図をも参照して回転挿抜コネクタの嵌合について説明する。
先ず,相手コネクタ33は一方のコネクタ31におけるコネクタ突合方向の軸線に対して成る角度を持った状態でその回転中心突起53をハウジング35の溝部49に挿入される。溝部49に挿入された回転中心突起53は,第3図に示すように,溝部49の中間部分の肩部56で停止する深さまで挿入される。この状態では,コンタクト37の接触部39と相手コンタクト46とは,第4図に示すように,互いに軸方向を異にしている。
その後に,相手コネクタ33を反時計方向に回転させる。この結果,相手コネクタ33の係止突起60は,第5図に示すようにコネクタの係止穴51にしっかりと入り込み回転が停止すると共にロックされる。即ち,係止突起60と係止穴51とが協働してロック装置を構成する。その際,コンタクト37の接触部39と相手コンタクト41のソケット部46とは,第6図にも示すように,回転しながら摺動し嵌合接触する。さらに,相手コネクタ33をコネクタ31から引抜く際には,相手コネクタ33を時計方向に回転した後に,溝部49にて案内しつつ上方に引き抜く。」(第3頁右上欄10行~同左下欄12行)
(1h)「〔発明の効果〕
以上実施例により説明したように,本発明の回転挿抜コネクタによれば,コネクタの両側に,相手コネクタの回転中心突起に対応する溝部が係合しているため,コネクタあるいは相手コネクタが破壊しない限り,ケーブルを引張っても嵌合が外れることがない。また,回転挿抜コネクタは,大きな形状のロックレバーや係止穴を必要としないため小型化が可能である。」(第3頁左下欄13行~右下欄1行)
(1i)第1図
(1j)第3図~第6図
ここで、第1,3,5図には、溝部49の肩部56が形成された面と対向する面から溝内方へ突出する「突出部」が形成され、相手コネクタ33とコネクタ31とがロックされた状態において、「回転中心突起53」は溝部49の上記「突出部」の下方に位置していることが図示されている。
さらに、第1図には、一方のコネクタ31のハウジング35は、対の側壁47の内面と直角をなす端部の内面を備え、また、相手コネクタ33の相手ハウジング39は、対の側面と直角をなし、ハウジング35の対の側壁47の間に嵌込まれた際にハウジング35の上記端部の内面に対面する端面を備えることが図示されている。
そして、第1及び5図には、係止突起60が、相手コネクタ33の相手ハウジング39の上記端面に寄った位置に形成されることも図示されている。
以上の記載から、甲第1号証には、下記の発明(以下「甲1発明」ともいう。)が記載されている。
「ハウジング35とこのハウジング35に設けられた複数のコンタクト37とを有する一方のコネクタ31と
相手ハウジング39とこの相手ハウジング39の内部に設けられた複数の相手コンタクト41とを有し、また、相手ハウジング39の外部から導入されたケーブル44の一端が接続された相手コネクタ33と
を有した回転挿抜コネクタにおいて、
一方のコネクタ31のハウジング35は互いに間隔をおいて対向するよう延出した対の側壁47を有し、これらの側壁47の内面には、溝部49及び係止穴51がそれぞれ形成され、これらの溝部49は、側壁47の延出方向、即ち、コネクタ突合方向の軸線とほぼ直角方向にのびるように形成され、また、溝部49には、中間部分に肩部56及び、該肩部56が形成された面と対向する面から溝内方へ突出する突出部が形成され、このようなハウジング35の対の側壁47の間には、相手コネクタ33の相手ハウジング39が嵌込まれるものであり、さらに、ハウジング35は、上記対の側壁47の内面と直角をなす端部の内面を備え、
相手コネクタ33の相手ハウジング39は、対の側面及びこれと直角をなし、一方のコネクタ31のハウジング35の対の側壁47の間に嵌込まれた際にハウジング35の上記端部の内面に対面する端面を備え、上記対の側面には、それぞれハウジング35の溝部49に嵌込まれる回転中心突起53が形成され、さらに上記対の側面には、一方のコネクタ31のハウジング35の係止穴51に嵌込まれる係止突起60が上記端面に寄った位置に形成され、
相手コネクタ33は、一方のコネクタ31におけるコネクタ突合方向の軸線に対して或る角度を持った状態でその回転中心突起53を溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入され、その後に、相手コネクタ33を反時計方向に回転させ、その結果、相手コネクタ33の係止突起60は、一方のコネクタ31の係止穴51に入り込み回転が停止すると共にロックされ、そして、このロックされた状態において、回転中心突起53は溝部49の上記突出部の下方に位置し、
さらに、相手コネクタ33を一方のコネクタ31から引抜く際には、相手コネクタ33を時計方向に回転した後に、回転中心突起53を溝部49にて案内しつつ上方に引き抜く
回転挿抜コネクタ。」
[甲第2号証]
(2a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気回路に使用される多極型コネクタにおける雄雌コネクタ相互の嵌合力を低減し、確実な嵌合が実施できるフレーム結合式コネクタに関するものである。」
(2b)「【0012】フレーム2は、図2に示すように、その両側の側面2cに設けた支持孔2dに、雄コネクタ3のハウジングの側壁3aに設けた支持軸3bを嵌合し、雄コネクタ3を回動自在に支持している。フレーム2の他端には、フレーム2を回動するための操作部2eを突設している。フレーム2内の雄コネクタ3の個数は、とくに限定されるものではなく、必要に応じて多数のコネクタを並列して装着することもできる。」
(2c)「【0015】このときフレーム2は、摺動軸2aを支点とする回動を行うと共に、摺動軸2aがスライド溝1c内を摺動するので、フレーム2に支持された雄コネクタ3の支持軸3bは直線運動を保ちながらコネクタ相互の嵌合が行われる。また、雄コネクタ3は、フレーム2に対して支持軸3bを軸として回動自在に支持されているため、雄コネクタ3は、常に雌コネクタ1と対向した状態を保ちながら直線的に運動して両者が嵌合される。」
(2d)「【0016】雌コネクタ1と雄コネクタ3の嵌合を解除する場合は、操作部2eを上方に押し上げることにより、雄コネクタ3は雌コネクタ1から簡単に抜去される。図4は、本発明の他の実施例を示すもので、フレーム2の側面2cに回動規制手段として回動規制溝4を形成し、雄コネクタ3のハウジング3aの側壁には、支持軸3bの他に被回動規制手段として回動規制突起5を設けている。」
(2e)図1
[甲第3号証]
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レバー式コネクタに関する。」
(3b)「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図1ないし図18によって説明する。この実施形態に示すレバー式コネクタは、分割ハウジング27などを収容するハウジング本体21にレバー35を装着してなる雌コネクタ20と、ジャンクションボックス(図示せず)に一体化された雄コネクタ10とが互いに嵌合されるようになっている。なお以下では両コネクタ10,20における嵌合面側を前方として説明する。」
(3c)「【0020】両アーム部36には、雄コネクタ10のカムピン14に係合可能なカム溝39がそれぞれ設けられている。このカム溝39は、入り口部39aから奥側へ行くのに従って次第に軸受け凹部38に接近するような略渦巻き状に形成されている。またアーム部36の外周縁のうち、カム溝39の入り口部39aを挟んだ左右の所定領域は、軸受け凹部38を中心とする円弧状に形成され、この部分が回動案内リブ34に摺接可能とされている。このレバー35は、図13に示すように、ハウジング本体21に対してカム溝39の入り口部39aが正面を向いた初期位置に装着された状態から、カム溝39にカムピン14を係合させつつ時計回り方向に回動されるのに伴って、カムピン14がカム溝39に沿って変位されることで、両コネクタ10,20の嵌合を助勢できるようになっている。そして、レバー35が、カム溝39の奥端部が軸突部32の真ん前に配される完了位置に達すると、図18に示すように、両コネクタ10,20が完全嵌合に至る。」
(3d)「【0021】連結部37の中央部分には、レバー35が完了位置に達したときに雄コネクタ10のロック突部18に係止することで両コネクタ10,20を嵌合状態に保持可能なロックアーム40が設けられている。このロックアーム40は、連結部37を切欠することで弾性変形可能な片持ち状に形成されているとともに、その延出端(後端)側には、ロック突部18の後面に係止可能な係止段部41が形成されている。また、連結部37の後端部におけるロックアーム40の両側方には、レバー35を回動操作するための一対の操作部42が設けられている。」
(3e)図1
[甲第4号証]
(4a)「<産業上の利用分野>
本考案はコネクタに関する。」(明細書第1頁末行~第2頁1行)
(4b)「このプラグ本体21の正面下部両端には爪211が、正面上部中央には把手212がそれぞれ形成されている。」(明細書第7頁9~11行)
(4c)「プラグ20の爪211は突起111の下面に嵌り込む。爪211と突起111との接触点を支点としてプラグ20を第3図(b)に示す矢印B方向に回転させる。この時、ソケット10のピン12はプラグ20の開口部213を通過し、プラグ20の接続片22の挟持部223に接触する。
さらに、プラグ20を矢印B方向に回転させると、ピン12は接続片22の挟持部223に挟持されるとともに、前記爪211は突起111と、係止溝215は係止突起114と対応し、プラグ20はソケット10に装着される(第3図(C)参照)。」(明細書第8頁14行~第9頁4行)
(4d)「装着完了時には従来の縦型のコネクタと同様に、余分なスペースを必要とせず、装填時には簡単に装填することができる。」(明細書第9頁10~12行)
(4e)第3図
[甲第5号証]
(5a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コネクタに取り付けたレバーを回動させることによりコネクタを相手コネクタに嵌合させるレバー嵌合式コネクタに関する。」
(5b)「【0019】レバー嵌合式コネクタは、図1に示すように、雄コネクタ21と、この雄コネクタ21に回動自在に取り付けられたレバー22と、雄コネクタ21が嵌合する雌コネクタ23と、を備えている。
(5c)「【0021】レバー22は、左右一対の側壁28と、左右の側壁28を後端側で連結する操作部29とを備えている。左右の側壁28には、雄コネクタ21のボス部27が挿入され、この挿入によってレバー22がボス部27を中心に回動するようになっている。操作部29は、左右の側壁28、28を連結する連結板部29aと、この連結板部29aの上面側に設けられた操作接触面29bと、連結板部29aの両側に突設された補強リブ29cとで形成されている。操作接触面29bは山形状に形成されて指等が接触した際に滑らないようになっている。」
(5d)「【0022】また、補強リブ29cは、図4に示すように、両側壁28、28の外側に突設され、下面側に向けて弧状の摘み面29dが形成されている。この補強リブ29cは、両側壁28、28と連結板部29aの連続部分の強度を向上させて、この連続部分への応力の集中を緩和する。さらに、補強リブ29cは、雄コネクタ21をフード部32内から抜き出す方向へレバー22を回動させる際に、弧状の摘み面29d側に指等を引っかけることにより、レバー22を容易に引き上げることができ、レバー22の操作性を向上することができる。」
(5e)「【0024】雌コネクタ23は、雄コネクタ21が嵌合する上面開放のフード部32を有している。このフード部32の内壁面32Aの先端側には、雄コネクタ21の外れ防止リブ26が挿入される長溝33が嵌合方向(上下方向)に沿って形成されている。また、このフード部32には、雄コネクタ21の両側面25に形成された案内突起25Aと対応する内壁面32Aに、嵌合方向に沿って案内溝34が形成されている。この案内溝34の中間部には、レバー22の係合突起30と係合しつつ支点として作用する、前方に突出するように形成された係合溝35が案内溝34に連通して形成されている。また、案内溝34の下部には、レバー22を解除方向へ回転させた際に係合突起30が係当して解除する際に支点となるフード側段部36が形成されている。特に、本実施形態では、フード部32の内壁面32Aのうちレバー22に対向する面には、上記したレバー22の側壁28に形成した側面突起31が嵌合方向に導かれる案内用段差溝37が形成されている。この案内用段差溝37は、第1段差部37Aと第2段差部37Bとを有している。さらに、フード部32の内底面には、上方へ向けて複数の接続端子40が突設されている。」
(5f)「【0026】まず、図1に示すように、雄コネクタ21に対してレバー22が嵌合初期の姿勢をとる状態(レバー22の側壁28の下端と案内突起25Aとが当接する状態)でフード部32に雄コネクタ21を嵌合して、フード部32の長溝33、33に外れ防止リブ26、26を、それぞれの案内溝34に案内突起25Aおよび係合突起30を、案内用段差溝37、37にレバー22の側面突起31、31を、挿入する。このとき、側面突起31は、案内用段差溝37の第1段差部37Aに一旦突き当たり、その後、図3に示すように、第2段差部37Bに載る。このとき、側面突起31は、ボス部27の真下に位置するため、第2段差部37Bに突き当たったときの反力によりレバー22が回動することはない。このため、係合突起30は、係合溝35には係合していない。」
(5g)「【0027】次に、この状態でレバー22の操作部29を押すと、レバー22は回転して、係合突起30は係合溝35に確実に係合する。その後、レバー22の回動に伴って側面突起31は第2段差部37Bから外れるが、図4に示すように、このとき既に係合突起30が係合溝35に係合してレバー22の回動の支点となっている。そして、さらにレバー22を回動操作することにより、係合突起30は係合溝35に入り込み、てこの作用により雄コネクタ21が雌コネクタ23のフード部32内に完全に押し込まれ、雄コネクタ21側の端子(図示省略する)と雌コネクタ23側の接続端子40は完全に接続される。逆に、雄コネクタ21をフード部32から離脱させるときは、レバー22の操作部29を持ち上げることにより、レバー22は回動してフード側段部36に係合突起30が係合して支点となり、操作部29が力点、ボス部27が作用点となり、雄コネクタ21を引き上げる力が作用することにより、雄コネクタ21をフード部32から容易に離脱させることができる。このとき、側面突起31は、第2段差部37Bから僅かに離れているため、レバー22の回動を妨げることはない」
(5h)図1
(5i)図7
[甲第6号証]
(6a)「【0011】本発明の一実施形態によるケーブル用コネクタ1は、ケーブル7に接続されるケーブル側コネクタ3と、ケーブル7の接続対象物であるプリント基板9に接続される接続対象側コネクタ5とを組み合わせて構成される。」
(6b)「【0012】ケーブル側コネクタ3は、図1~図3、並びに図6、図7に示したように、ケーブル7を保持する第1のケーブル側インシュレータ31と、第2のケーブル側インシュレータ32とから構成される。第2のケーブル側インシュレータ32は、第1のケーブル側インシュレータ31を覆うと共に、第1のケーブル側インシュレータ31に係止されて、第1のケーブル側インシュレータ31と共同してケーブル7を保持する。このケーブル7は、絶縁性の被覆70の内側に芯線71を有している(図6(b)参照)。尚、ケーブル7は、図示した例では1本1本分離されたディスクリートワイヤとしたが、複数本が融着された形のFRCでも良い。」
(6c)「【0014】また、第2のケーブル側インシュレータ32は、ケーブル7の延在方向の一端部に形成された凸部32a、及びこの一端部の両側面に形成された突出部32bを有している。尚、上述の延在方向とは、ケーブル7の部分の内で第1及び第2のケーブル側インシュレータ31,32により保持されている部分の延在方向を意味するものとする。尚、第2のケーブル側インシュレータ32にも、ケーブル7の整列溝32eが設けられている。尚、第1のケーブル側インシュレータ31と第2のケーブル側インシュレータ32とをそれらの一端で回動自在に連結し、ケーブル7をこれらの間に差し込む構成とすることもできる。」
(6d)「【0015】接続対象側コネクタ5は、図4、並びに図8~12に示したように、接続対象側インシュレータ50、コンタクト51を有している。接続対象側インシュレータ50は、ケーブル側コネクタ3を収納する形で離脱可能に保持している。コンタクト51は、接続対象側インシュレータ50に固定されており、先端にスリットが形成された接触部51aを有している。接触部51aは、ケーブル側コネクタ3が接続対象側インシュレータ50に保持される際に、ケーブル7の被覆70を裂いてケーブル7の芯線71に離脱可能に接触する。尚、接続対象側コネクタ5は、図4(c)及び図5に示したように、プリント基板9上に実装される。」
(6e)図16
[甲第7号証]
(7a)「【0019】このケーブル用コネクタは、プラグ側コネクタ10と、プラグ側コネクタ10が嵌合されるレセプタクル側コネクタ50とで構成されている。」
(7b)「【0020】前記プラグ側コネクタ10は、複数のケーブル80を保持するインシュレータ(プラグ側インシュレータ)20と、インシュレータ20を覆って、ケーブル80の損傷を防ぐハウジング(ハウジングインシュレータ)30とを備えている。インシュレータ20は矢印A(挿入方向)で示すようにハウジング30内に挿入される。」
(7c)「【0035】更に、ハウジング30の側面33には、図6に示すように、ケーブル整列方向Bの外側へ突き出す突出部40が一体に形成されている。突出部40の開口部31側には、所定の曲率半径を有する曲面部40aが形成されている。」
(7d)「【0036】ハウジング30の開口部31の反対側には、挿入方向Aに対して傾斜する壁部37が形成されている。この壁部37には、空間部38を介してケーブル整列方向Bに、2つの凸部39が形成されている。凸部39は、平面部39aと曲面部39bとで構成されている。平面部39aは挿入方向Cと平行であり、曲面部39bは所定の曲率半径を有する。凸部39は突出部40と一体である。」
(7e)「【0039】インシュレータ60には、プラグ側コネクタ10の凸部39を収容する2つの凹部51が形成されている。凹部51は、プラグ側コネクタ10の凸部39の曲面部39bとほぼ等しい曲率の曲面部51bと、平面部51a(図13参照)とで構成されている。凹部51は、プラグ側コネクタ10の凸部39を回動自在に支持する。一方の凹部51と他方の凹部51との間には補強傾斜部53が形成され、凸部39が凹部51に収容されたとき、補強傾斜部53はハウジング30の空間部38と嵌合する。」
(7f)「【0040】側面部62,64には、ハウジング30の突出部40を収容する溝52、54が形成されている。」
(7g)図13
[甲第8号証]
(8a)「【0012】また、先端をコンタクト側アセンブリ2へ挿入し、後方を押し下げたときに先端が持ち上らないようにするため前方凸部24が設けられており、嵌合した後その嵌合を維持するための係止突起11が左右両側に設けられている。コンタクト側アセンブリ2は、インシュレータブロック13に嵌合凹部25を有し、そこへケーブル側アセンブリ1が嵌合したときの芯線8に対応する位置にコンタクト12を有し、芯線8がコンタクト12に充分押し付けられた状態で保持されるように係止凹部23を有し、ケーブル側アセンブリの係止突起11が係止凹部23に嵌まることによって嵌合が維持される。これはインシュレータブロック3,13の材質の若干の変形復元性を利用している。」
(8b)「【0013】以上のような、ケーブル側アセンブリ1の前方凸部24の方を下げた傾斜状態でコンタクト側アセンブリ2の嵌合凹部25へ挿入し、充分挿入したところでケーブル側アセンブリ1の後部をコンタクト側アセンブリ2へ押し付けるように回動すると芯線8がコンタクト12に押し付けられて電気的接続が得られ、所定の位置まで押し下げるとケーブル側アセンブリ1の係止突起11がコンタクト側アセンブリ2の係止凹部23に嵌まり両アセンブリの嵌合状態が維持される。」
(8C)図2
7.当審の判断
7-1.無効理由2及び3について
特許請求の範囲から発明が多義に解釈できることのみをもって、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。
また、本件特許発明は、ケーブルコネクタの姿勢の変化とロック突部の位置変化が直接的に関係することを特定するものではないことより、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえず、また、発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないともいえない。
よって、請求人の主張する無効理由2及び3により、本件特許発明の特許を無効とすることはできない。
7-2.無効理由1について
7-2-1.対比
本件特許発明と甲1発明とを対比すると、
(1)甲1発明の「相手コネクタ33」は本件特許発明の「ケーブルコネクタ」に相当し、以下同様に、「一方のコネクタ31」は「レセプタクルコネクタ」に、「回転中心突起53」は「ロック突部」に、「溝部49」は「ロック溝部」に、「係止突起60」は「係止部」に、「係止穴51」は「被係止部」に、「回転挿抜コネクタ」は「電気コネクタ組立体」に、それぞれ相当する。(ただし、「回転中心突起53」及び「溝部49」の「ロック」機能については、相違点3として検討する。)
(2)甲1発明の回転挿抜コネクタは、一方のコネクタ31のハウジング35の対の側壁47の間には、相手コネクタ33の相手ハウジング39が嵌込まれるものであって、かつ、相手コネクタ33の相手ハウジング39の対の側面及びそれと直角をなす端面が、一方のコネクタ31のハウジング35の対の側壁47の内面及びそれと直角をなす端部の内面にそれぞれ対面して嵌込まれるものである。そうすると、それら対面するそれぞれの面は、本件特許発明の「ハウジングの周面に形成された嵌合面」といえるので、甲1発明の「相手コネクタ33」と「一方のコネクタ31」とは、本件特許発明の「ハウジングの周面に形成された嵌合面で互いに嵌合接続される」ものといえる。
(3)甲1発明の相手ハウジング39の係止突起60が形成される対の側面の「端面に寄った位置」は、本件特許発明のケーブルコネクタの係止部が設けられる側壁の「前方の端壁面に寄った位置」に相当する。
また、甲1発明のハウジング35の側壁47の内面に形成された「係止穴51」は、相手コネクタ33の係止突起60が入り込みロックされることから、前後方向で上記係止突起60と対応する位置でロックされた状態にて上記係止突起60と係止可能なものといえ、ここで「ロックされた状態」は、本件特許発明の「コネクタ嵌合状態」に相当する。
(4)甲1発明の相手コネクタ33が「外部から導入されたケーブル44の一端が接続され」ていることは、本件特許発明でいう「後方に位置する端壁面をケーブルの延出側としている」ことを意味する。
(5)甲1発明の「溝部49」には、本件特許発明でいう「溝部前縁と溝部後縁」が形成されていることは明らかであり、また、甲1発明の溝内方へ突出する突出部が形成されている「肩部56が形成された面と対向する面」は、上記「溝部後縁」に対応する。
(6)甲1発明の「相手コネクタ33は、一方のコネクタ31におけるコネクタ突合方向の軸線に対して或る角度を持った状態でその回転中心突起53を溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入され、その後に、相手コネクタ33を反時計方向に回転させ、その結果、相手コネクタ33の係止突起60は、一方のコネクタ31の係止穴51に入り込み回転が停止すると共にロックされ、そして、このロックされた状態において、回転中心突起53は溝部49の上記突出部の下方に位置」することについて、
「回転中心突起53を溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入され」ることは、本件特許発明の「ロック突部が嵌合方向でロック溝部内に進入」することに相当し、
「相手コネクタ33は、一方のコネクタ31におけるコネクタ突合方向の軸線に対して或る角度を持った状態」であることは、本件特許発明の「ケーブルコネクタの前端側か持ち上がった上向き傾斜姿勢」に相当し、
相手コネクタ33の「回転が停止すると共にロックされ」た状態は、本件特許発明の「嵌合終了の姿勢となったコネクタ嵌合状態」に相当し、
そして、「回転中心突起53」は、溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入された位置から、溝部49の突出部の下方に位置まで「突出部」に対する位置が変化するものといえる。
したがって、甲1発明の「回転中心突起53」と本件特許発明の「ロック突部」の位置変化については、「ロック突部が嵌合方向でロック溝部内に進入してケーブルコネクタが該ケーブルコネクタの前端側か持ち上がった上向き傾斜姿勢から嵌合終了の姿勢となったコネクタ嵌合状態では、突出部に対するロック突部の位置が変化」する限りにおいて一致する。
(7)甲1発明は、相手コネクタ33と一方のコネクタ31とがロックされた状態において、回転中心突起53は溝部49の突出部の下方に位置していることから、少なくとも回転中心突起53と溝部49の突出部とは、本件特許発明でいう「当接可能な状態」といえ、そして、相手コネクタ33を一方のコネクタ31から引抜く際には、係止突起60とコネクタの係止穴51との係止可能な状態が解除されるとともに、上記「当接可能な状態」が解除され、相手コネクタ33の引抜き(抜出)が可能となることは明らかである。
また、甲1発明の「相手コネクタ33を時計方向に回転した後に、回転中心突起53を溝部49にて案内しつつ上方に引き抜く」ことと、本件特許発明の「コネクタ嵌合状態で持上げ部を抜出方向に持ち上げる」こととは、「コネクタ嵌合状態で解除操作を行う」ことである限りにおいて一致する。
以上(1)~(7)より、両者は、
「ハウジングの周面に形成された嵌合面で互いに嵌合接続されるケーブルコネクタとレセプタクルコネクタとを有し、嵌合面が側壁面とこれに直角をなし前方に位置する端壁面とで形成されており、ケーブルコネクタが後方に位置する端壁面をケーブルの延出側としている電気コネクタ組立体において、
ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタの一方が、ロック突部を側壁面に有し、他方が前後方向で該ロック突部に対応する位置で溝部前縁と溝部後縁が形成されたロック溝部を側壁面に有し、該ロック溝部には溝部前縁または溝部後縁から溝内方へ突出する突出部が設けられており、ケーブルコネクタは、前方の端壁面に寄った位置で側壁に係止部が設けられ、レセプタクルコネクタは、前後方向で上記係止部と対応する位置でコネクタ嵌合状態にて該係止部と係止可能な被係止部が側壁に設けられており、上記ロック突部が嵌合方向で上記ロック溝部内に進入してケーブルコネクタが該ケーブルコネクタの前端側が持ち上がった上向き傾斜姿勢から嵌合終了の姿勢となったコネクタ嵌合状態では、上記突出部に対する上記ロック突部の位置が変化し、上記コネクタ嵌合状態で解除操作を行うことにより、上記係止部と上記被係止部との係止可能な状態が解除されるとともに、上記ロック突部と上記突出部との当接可能な状態が解除されて、上記ケーブルコネクタの抜出が可能となる電気コネクタ組立体。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
相違点1:本件特許発明では、ロック突部は、平坦面部分を有する突部前縁と平坦面部分を有する突部後縁とが前後方向に離間しているのに対し、甲1発明では、回転中心突起53は、そのような特定はない点。
相違点2:本件特許発明では、突出部に対するロック突部の位置の変化が、ケーブルコネクタの姿勢の変化に応じたものとされているのに対し、甲1発明では、回転中心突起53は、相手コネクタ33は、一方のコネクタ31におけるコネクタ突合方向の軸線に対して或る角度を持った状態でその回転中心突起53を溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入され、その後に、相手コネクタ33を反時計方向に回転させ、その結果、相手コネクタ33の係止突起60は、一方のコネクタ31の係止穴51に入り込み回転が停止すると共にロックされ、そして、このロックされた状態において、回転中心突起53は溝部49の上記突出部の下方に位置するものの、回転中心突起53の位置の変化が相手コネクタ33の姿勢の変化に応じたものとはされていない点。
相違点3:本件特許発明では、コネクタ嵌合状態では、ケーブルコネクタが後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、ロック突部が上記抜出方向で突出部と当接して該ケーブルコネクタの抜出を阻止するようになっているのに対し、甲1発明では、相手コネクタ33と一方のコネクタ31とがロックされた状態において、回転中心突起53は溝部49の突出部の下方に位置しているものの、相手コネクタ33が後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、回転中心突起53が上記抜出方向で突出部と当接して、上記相手コネクタ33の抜出を阻止するとはされていない点。
相違点4:本件特許発明では、ケーブルコネクタの前端部には前方へ突出する持上げ部が設けられていて、コネクタ嵌合状態で解除操作が、該持上げ部を抜出方向に持ち上げることにより行われるのに対し、甲1発明では、相手コネクタ33にはそのような持上げ部が設けられているとはされていなく、コネクタ嵌合状態で解除操作が、相手コネクタ33を時計方向に回転した後に、回転中心突起53を溝部49にて案内しつつ上方に引き抜くことにより行われる点。
7-2-2.判断
(1)相違点1について
甲1発明の「回転中心突起56」は、肩部56の中で回転するときの中心となるものであり、相手コネクタ33が円滑に回転するように形成されていると解されることから、その断面の形状は、基本的には円形が想定されていると考えられるが、円滑な回転動作やコネクタの確実な嵌合に支障が出ない限度で、「回転中心突起53」の断面が円形以外の形状となることも許容されるものと解される。
一方、本件特許発明では、「ロック突部」は、「平坦面部分を有する突部前縁と平坦面部分を有する突部後縁とが前後方向に離間している」ていると特定されているものの、各「平坦面部分」の大きさを具体的に特定するものではないことより、その断面の形状には、ほぼ円形のものも含まれる。
そうすると、本件特許発明の「ロック突部」と甲1発明の「回転中心突起53」とは、その形状及び構造において、格別な差があるものとすることはできない。
また、本件特許発明において、ロック突部の「平坦面部分を有する突部前縁と平坦面部分を有する突部後縁」は、ロック溝部などの他の発明特定事項との関係が何ら特定されていないことより、ロック突部が「平坦面部分を有する突部前縁と平坦面部分を有する突部後縁」を有していることにより、他の発明特定事項との関係で特定の機能または作用を奏するものとすることはできない。
したがって、本件特許発明の「ロック突部」と甲1発明の「回転中心突起53」とは、発明特定事項として格別な差があるものではなく、上記相違点1は、当業者が容易になし得たものといえる。
(2)相違点2について
判決では、一次審決における「(2)相違点2に関して」について、
「(3)相違点2が実質的な相違点であるか否かについて
ア 特許請求の範囲(請求項1)には,本件発明が,1’(注:判決では丸付き数字の1)コネクタの嵌合の場面おいては,コネクタ嵌合状態では,ケーブルコネクタの姿勢の変化に応じて突出部に対するロック突部の位置が変化することにより,ケーブルコネクタが後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき,ロック突部が抜出方向で突出部と当接してケーブルコネクタの抜出を阻止するようになっており,2’(注:判決では丸付き数字の2)コネクタの嵌合を解除する場面においては,コネクタ嵌合状態でケーブルコネクタの前端部に設けたれた持上げ部を抜出方向に持ち上げることにより,係止部と被係止部との係止可能な状態が解除されるとともに,ロック突部と突出部との当接可能な状態が解除されて,ケーブルコネクタの抜出が可能となるものであることが規定されている。
そして,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記1(1)のとおりの記載があり,【0040】には,『ケーブルコネクタ10を意図的に抜出するときには,ケーブルコネクタ10の前端に設けられた持上げ部19に比較的大きな力を上方向に向け作用させる。この力は,・・・ケーブルコネクタ10を前端側がもち上がる上向き姿勢にもたらす。この姿勢は,図3(B)における実線の姿勢と同じであり,ロック突部21は突出部59と干渉することがなくロック溝部57の外部へ上昇でき,ケーブルコネクタ10の抜出が可能となる。』と記載されている。
そうすると,本件発明は,嵌合では,ケーブルコネクタの前端側が持ち上がった上向き傾斜姿勢から嵌合終了の姿勢への姿勢の変化に応じて,突出部に対するロック突部の位置が変化することにより,ロック突部が抜出方向で突出部と当接してケーブルコネクタの抜出を阻止する一方,嵌合の解除では,ケーブルコネクタの前端側が持ち上がる上向き姿勢となることで,突出部に対するロック突部の位置が元に戻り,ロック突部における抜出方向の突出部との当接が解除され,ロック溝部の外部へ上昇させることによるケーブルコネクタの抜出が可能となるという作用を奏するものであると認められる。
イ これに対し,引用発明は,嵌合の終了姿勢では,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56のケーブル44側に当接している状態にあるため,本件発明と同様に抜出を阻止する作用を奏しているものの,嵌合の解除姿勢では,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56のケーブル44側に当接されたままであるため,溝部49の突出部の回転中心突起53に対する干渉はなくなっておらず,相手コネクタ33の姿勢を上向き姿勢とするだけでは,相手コネクタ33の抜出はスムーズに行い得ない。
仮に,引用発明において,溝部49の突出部,すなわち,溝部49に形成された肩部56のケーブル44側の形状(角度)をなだらかなものとするならば,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56のケーブル44側に当接したままであっても,抜出可能とすることはできるものの,このような構成にした場合には,本来の嵌合状態での抜出阻止の作用を減じてしまうことになる。
ウ 以上によれば,本件発明において,相違点2に係る構成は,固有の作用を奏するものであって,単なる設計的事項にすぎないものであるということはできない。
したがって,相違点2は実質的なものである。」(判決の第42頁24行~第44頁11行)と判示されている。
さらに、判決では、一次審決における「(2)相違点2に関して」について、
「引用例には,溝部49の突出部に対する回転中心突起53の位置の変化を相手コネクタ33の姿勢の変化に応じたものとすることについて,記載も示唆もなく,また,引用発明と周知例4(注:甲第5号証)及び甲6ないし8(注:甲第6ないし8号証)に記載された各コネクタとでは,その構造や形状が大きく異なるから,引用発明において,上記各コネクタの嵌合過程における突起部と突出部との位置関係を適用しようとする動機付けがあるということはできないし,仮に適用を試みたとしても,引用発明において,相違点2に係る本件発明の構成を備えることが容易に想到することができたとは認められない。」(判決の第47頁19~25行)と判示されている。
そして、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、一次審決を取り消した確定判決で示された裁判所の判断は、当審を拘束する。
したがって、上記相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項は実質的なものであり、甲1発明において、周知の技術であると請求人が主張する証拠である甲第5~8号証に記載されている事項を適用する動機付けがあるということはできないし、仮に、適用できたとしても上記相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(3)相違点3について
甲1発明において、相手コネクタ33が一方のコネクタ31にロックされた状態においては、回転中心突起53が溝部49の突出部の下方に位置する位置関係から、相手コネクタ33が後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、回転中心突起53が上記抜出方向で突出部と当接し、それにより、回転中心突起53の上方への移動が制限されること、すなわち、相手コネクタ33の上方への移動が制限されることは明らかであり、このことは本件特許発明でいう「抜出を阻止する」ようになっていることに他ならない。
したがって、甲1発明において、相手コネクタ33と一方のコネクタ31とがロックされた状態において、回転中心突起53は溝部49の突出部の下方に位置することにより、相手コネクタ33が後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、回転中心突起53が上記抜出方向で突出部と当接して、上記相手コネクタ33の抜出が阻止されるものと認められるから、上記相違点3は、実質的な相違とはいえない。
(4)相違点4について
判決では、一次審決における「(4)相違点4に関して」について、
「ウ 以上によれば,仮に操作性を向上させるために操作部を操作対象となる機械要素に設けることや,コネクタの分野ではコネクタの前端部に前方へ突出する持上げ部を設けることが周知であったとしても,引用発明において,相手コネクタ33の前端部に前方へ突出する持上げ部を設けただけでは,相違点4に係る本件発明の構成には至らない。そして,本件発明において,相違点4に係る構成は,コネクタ嵌合状態の解除操作について固有の作用を奏するものであって,単なる設計的事項にすぎないということはできない。
さらに,引用発明において,相手コネクタ33の前端部に前方へ突出する持上げ部を設けたとしても,上記持上げ部で,相手コネクタ33をコネクタ31の端部内面に向かう突合方向にスライドさせる操作を行うことが,左右端部に持上げ部を設けて,この操作を行う場合に比べ,容易になるものではなく,操作性の向上に寄与するということはできない。そうすると,引用発明において,コネクタの前端部に前方へ突出する持上げ部を設けることにつき,動機付けがあるということもできない。
エ したがって,引用発明において,相違点4に係る本件発明の構成を備えることに当業者が容易に想到することができたということはできない。」(判決の第51頁9~24行)と判示されている。
そして、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、一次審決を取り消した確定判決で示された裁判所の判断は、当審を拘束する。
したがって、甲1発明に、操作性を向上するために操作部を操作対象となる機械要素に設けることが周知の技術であると請求人が主張する証拠である甲第2~5号証(甲第2号証の「操作部2e」、甲第3号証の「操作部42」、甲第4号証の「把手212」、甲第5号証の「レバー22」参照。)に記載されている事項を適用したとしても、上記相違点4に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
7-2-3.まとめ
したがって、上記相違点2及び相違点4に係る本件特許発明の発明特定事項が容易に想到し得たものでないから、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明、及び周知の技術であると請求人が主張する証拠である甲第2号証から甲第5号証に示される構成に基づいて、もしくは甲第2号証から甲第8号証に示される構成に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項に違反するものではなく、本件特許発明についての特許は、無効理由1によっては無効とすることはできない。
8.むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2014-800014