特許異議申立
2017-700270
構造部材の補強方法
- 審判番号
- 2017-700270
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-197728
- 登録番号
- 特許第5997986号(P5997986)
- 請求日
- 2017年03月14日
- 審決日
- 2017年12月08日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】創造技術株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 エビス国際特許事務所
- 【異議申立人】特許業務法人 虎ノ門知的財産事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 博之
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 小野 忠悦
- 分類
- P1651.113-YAA(E01D) / P1651.121-YAA(E01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5997986号発明「構造部材の補強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5997986号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし9について、訂正することを認める。
特許第5997986号の請求項9に係る特許を維持する。
特許第5997986号の請求項1ないし8に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5997986号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成24年9月7日に特許出願され、平成28年9月2日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下、「申立人」という。)より請求項1ないし9に対して特許異議の申立てがされ、平成29年6月20日付けで取消理由(発送日同年6月26日)が通知され、その指定期間内である同年8月18日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、その後申立人に対し平成29年9月8日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を送付し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかったものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、
「【請求項9】
構造部材を構成する金属製の母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所に、該母材の電解腐食を防止する電解腐食防止シートを配置する電解腐食防止工程と、
前記電解腐食防止シートの前記母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所と反対側に、所定方向に並んだ炭素繊維の束が配列された炭素繊維シートを配置する補強工程と、
前記炭素繊維シートと前記電解腐食防止シートを一体的に前記母材側に加圧する加圧工程と、
前記炭素繊維シート及び前記電解腐食防止シートを前記母材と一体的に加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする構造部材の補強方法。」
とあるのを、
「【請求項9】
構造物に既に設置されている構造部材を構成する金属製の母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所としての腐食部分を除去する除去工程と、
前記腐食部分が除去された前記母材の外表面に、該母材の電解腐食を防止する電解腐食防止シートとしてのガラス繊維プリプレグシートを配置する電解腐食防止工程と、
前記ガラス繊維プリプレグシートの前記母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所と反対側に、所定方向に並んだ炭素繊維の束が配列された炭素繊維プリプレグシートを配置する補強工程と、
前記炭素繊維プリプレグシートと前記ガラス繊維プリプレグシートを一体的に前記母材側に加圧する加圧工程と、
前記炭素繊維プリプレグシート及び前記ガラス繊維プリプレグシートを前記母材と一体的に加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする構造部材の補強方法。」
に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。
(10)訂正事項10
ア 明細書の「発明の名称」に「構造部材、構造部材の製造方法及び構造部材の補強方法」とあるのを、「構造部材の補強方法」に
イ 明細書の段落【0001】に「本発明は、建設物等の構造物に用いられる構造部材、その構造部材の製造方法及び補強方法に関する。」とあるのを「本発明は、建設物等の構造物に用いられる構造部材の補強方法に関する。」に
ウ 明細書の段落【0006】に「本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができる構造部材、構造部材の製造方法、及び、構造部材の補強方法を提供することを目的とする。」とあるのを「本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができる構造部材の補強方法を提供することを目的とする。」に
エ 明細書の段落【0007】に
「本発明に係る構造部材は、・・(略)・・ことを特徴とする。
本発明に係る構造部材の製造方法は、・・(略)・・ことを特徴とする。
また、本発明に係る構造部材の補強方法は、構造部材を構成する金属製の母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所に、該母材の電解腐食を防止する電解腐食防止シートを配置する電解腐食防止工程と、前記電解腐食防止シートの前記母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所と反対側に、所定方向に並んだ炭素繊維の束が配列された炭素繊維シートを配置する補強工程と、前記炭素繊維シートと前記電解腐食防止シートを一体的に前記母材側に加圧する加圧工程と、前記炭素繊維シート及び前記電解腐食防止シートを前記母材と一体的に加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする。」とあるのを
「本発明に係る構造部材の補強方法は、構造物に既に設置されている構造部材を構成する金属製の母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所としての腐食部分を除去する除去工程と、前記腐食部分が除去された前記母材の外表面に、該母材の電解腐食を防止する電解腐食防止シートとしてのガラス繊維プリプレグシートを配置する電解腐食防止工程と、前記ガラス繊維プリプレグシートの前記母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所と反対側に、所定方向に並んだ炭素繊維の束が配列された炭素繊維プリプレグシートを配置する補強工程と、前記炭素繊維プリプレグシートと前記ガラス繊維プリプレグシートを一体的に前記母材側に加圧する加圧工程と、前記炭素繊維プリプレグシート及び前記ガラス繊維プリプレグシートを前記母材と一体的に加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1~8について
訂正事項1~8は、それぞれ請求項1~8を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9は、
(ア)「母材」を、「構造物に既に設置」されたものに特定すること
(イ)「電解腐食防止工程」を行う前に、「母材」の「腐食部分を除去する除去工程」を行うことを特定すること
(ウ)「電解腐食シート」を、具体的に「ガラス繊維プリプレグシート」に特定すること
(エ)「ガラス繊維プリプレグシート」を配置する箇所を、「前記腐食部分が除去された前記母材の外表面」であることを特定すること
(オ)「炭素繊維シート」を、具体的に「炭素繊維プリプレグシート」に特定すること
であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
(ア)訂正事項9で訂正した事項のうち「構造物に既に設置されている構造部材を構成する金属製の母材」は、明細書の以下の段落の記載に基づくものである。
a「本発明に係る構造部材が、建設物の構造部材に適用されているが、例えば、家具などの建設物以外の物の構造部材にも適用することが可能である。」(段落【0058】)
b「例えば、当該製造方法は現場などで既に設置されている構造部材の補強方法に適用することもできる。」(段落【0059】)
(イ)訂正事項9で訂正した事項のうち「母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所としての腐食部分を除去する除去工程と、前記腐食部分が除去された前記母材の外表面に、該母材の電解腐食を防止する電解腐食防止シートとしてのガラス繊維プリプレグシートを配置する」は、明細書の以下の段落及び図10の記載に基づいている。
a「例えば、図10(a)に示すように、鋼棒からなる母材31が既に設置されていると仮定する。ここで、一部が腐食などによる断面損傷が生じたとする。この場合、最初に損傷部分Kを研磨などによって腐食を除去する。」(段落【0059】)
b「次いで、図10(b)に示すように、損傷部分Kを覆うようにガラス繊維のプリプレグを巻き付けて電解腐食防止層32を形成させる(電解腐食防止工程)。」(段落【0060】)
(ウ)訂正事項9で訂正した事項のうち「所定方向に並んだ炭素繊維の束が配列された炭素繊維プリプレグシートを配置する」は、明細書の以下の段落に基いている。
a「次に、図10(c)に示すように、図4に示す製造方法と同様に、電解腐食防止層32の所定箇所に第1補強層33及び第2補強層34を形成させる(補強工程)。」(【0060】)
b「図4に示すように、鋼管2は、鋼管2の基体をなす母材21と、・・・第1補強層23と、・・・第2補強層24と、・・・第3補強層25と、・・・第4補強層26と、を有する。」(【0035】)
c「第1補強層23乃至第3補強層25はそれぞれ、数ミリメートルの厚さで、一方向に並んだ炭素繊維の束にエポキシ樹脂を含浸させ、半硬化状態に反応させたプレプリグで構成されている。なお、本実施の形態において、第1補強層23乃至第3補強層25を構成する炭素繊維のプリプレグの炭素繊維の含有率は約60%であり、炭素繊維の径は約7ミクロンである。」(【0038】)
(エ)よって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、訂正前の請求項9記載の特許発明をより具体的にしたもの(特許請求の範囲の減縮を目的とするもの)であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項10
ア 訂正の目的
訂正事項10に係る明細書の訂正は、上記訂正事項1~9に係る特許請求の範囲の訂正との整合を図るためになされたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、上記訂正事項1~9に係る特許請求の範囲の訂正との整合を図るためになされたものにすぎないものである。このため、訂正事項10は、上記訂正事項1~9と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1~9について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項9に係る発明
本件訂正後の請求項9に係る発明は、下記のとおりのものである(以下、「本件発明」という。)。
本件発明
「【請求項9】
構造物に既に設置されている構造部材を構成する金属製の母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所としての腐食部分を除去する除去工程と、
前記腐食部分が除去された前記母材の外表面に、該母材の電解腐食を防止する電解腐食防止シートとしてのガラス繊維プリプレグシートを配置する電解腐食防止工程と、
前記ガラス繊維プリプレグシートの前記母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所と反対側に、所定方向に並んだ炭素繊維の束が配列された炭素繊維プリプレグシートを配置する補強工程と、
前記炭素繊維プリプレグシートと前記ガラス繊維プリプレグシートを一体的に前記母材側に加圧する加圧工程と、
前記炭素繊維プリプレグシート及び前記ガラス繊維プリプレグシートを前記母材と一体的に加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする構造部材の補強方法。」
2 取消理由の概要
本件請求項9に係る特許に対して平成29年6月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一である。または、本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、その特許は、特許法第29条第1項第3号、または特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許の請求項9に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2001-303715号公報
3 取消理由通知書に記載の取消理由について
(1)特許法第29条第1項第3号について
ア 甲第1号証の記載(下線は、当決定で付した。)
(ア)「【請求項1】 金属管柱の外面及び/又は内面にて、応力集中部及び/又はその近傍に繊維強化プラスチックを貼付し、局部応力を緩和したことを特徴とする金属管柱。」
(イ)「【請求項13】 前記繊維強化プラスチックは、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグを管柱表面に貼付して形成されることを特徴とする請求項1~11のいずれかの項に記載の金属管柱。
・・・
【請求項16】 前記強化繊維は、炭素繊維;ガラス繊維;ボロン、チタン、スチールなどの金属繊維;又は、アラミド、ナイロン、ポリエステルなどの有機繊維;などを一種、或いは、複数種混入して使用され、前記マトリクス樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、又は、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を使用することを特徴とする請求項12~15のいずれかの項に記載の金属管柱。」
(ウ)「【請求項26】 金属管柱の外面にて、応力集中部及び/又はその近傍に、又は、金属管柱接続部を取り巻いて、繊維強化プラスチックを貼付することを特徴とする金属管柱の補強方法。
・・・・・
【請求項34】 前記繊維強化プラスチックを貼付する前に、前記金属管柱の前記繊維強化プラスチックを貼付する個所のメッキは除去することを特徴とする請求項26~33のいずれかの項に記載の金属管柱の補強方法。
【請求項35】 前記繊維強化プラスチックは、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させて所定形状に成形し、硬化した後、前記管柱の外面に装着し、接合することを特徴とする請求項26~34のいずれかの項に記載の金属管柱の補強方法。
【請求項36】 前記繊維強化プラスチックは、強化繊維シートを管柱の外面に貼付し、この強化繊維シートにマトリクス樹脂を含浸させて形成されることを特徴とする請求項26~34のいずれかの項に記載の金属管柱の補強方法。
【請求項37】 前記繊維強化プラスチックは、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグを管柱の外面に貼付して形成されることを特徴とする請求項26~34のいずれかの項に記載の金属管柱の補強方法。」
(エ)「【請求項41】 前記繊維強化プラスチックと前記管柱の外面との間に最内層として絶縁体層を設けたことを特徴とする請求項37~40のいずれかの項に記載の金属管柱の補強方法。
・・・・・
【請求項43】 前記絶縁体層は、ガラス繊維又は有機繊維などの非導電性のシート材料にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化プラスチックとされることを特徴とする請求項41の金属管柱の補強方法。」
(オ)「【請求項51】 少なくとも前記繊維強化プラスチックを貼付した前記管柱の外面をエアバッグとシール材により覆い、エアバッグの吸引端子から真空ポンプにより吸気を排出し、エアバッグの内部材に大気圧負荷されるようにし、前記管柱の外面に貼付された前記繊維強化プラスチックなどを前記管柱表面に押圧するようにしたことを特徴とする請求項26~50のいずれかの項に記載の金属管柱の補強方法。
【請求項52】 前記エアバッグの外部にパネルヒータを配置し、樹脂の硬化反応を促進させることを特徴とする請求項51の金属管柱の補強方法。」
(カ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記柱脚下端接合構造2によると、管柱1に荷重を作用させた場合に、管柱1と縦リブ鋼板端部5との廻し溶接部に応力が集中し、局部応力を発生し、構造性能が低下するという問題がある。更に、縦リブ鋼板の上端の廻し溶接部が、溶接熱残留応力と溶接止端部の熱影響部材質劣化とが重複して構造欠陥となり易く、耐荷力や疲労性能が低下するという問題があった。」
(キ)「【0054】本発明によれば、繊維強化プラスチック20の強化繊維22としては、炭素繊維が好適に使用される。しかしながら、炭素繊維のように導電性の強化繊維を使用することにより補強材としての繊維強化プラスチック20が導電性とされる場合には、補強材と管柱との間に電流が流れ電食が起こることが考えられる。従って、繊維強化プラスチック20の強化繊維として導電性のものを使用した場合には、補強材と管柱との間に電流が流れるのを防止するために、管柱1の外面及び内面において、絶縁性付与を目的として、少なくとも補強材としての繊維強化プラスチック20と管柱表面との間に、即ち、最内層に、絶縁体層として例えばガラス繊維或は有機繊維などの非導電性のシート材料に樹脂を含浸して形成される繊維強化プラスチック30(図14)を貼付し、配置するのが好ましい。含浸樹脂としては、繊維強化プラスチック20に使用した樹脂を同様に使用することができる。」
(ク)「【0077】
本発明によれば、上記管柱1の補強個所に補強材としての繊維強化プラスチック20が貼付されるが、本実施例では、管柱補強材としての繊維強化プラスチック20には、強化繊維22として炭素繊維を使用したので、最内層には、補強材20と管柱1との間に電流が流れ電食が発生するのを防止するために、絶縁体層としての繊維強化プラスチック30を設けた。この絶縁体層としての繊維強化プラスチック30は、図10(A)に示すように、網目状とされる支持体シート31の上に強化繊維としてのガラス繊維32を一方向に配列して構成されるガラス繊維シート(日鉄コンポジット株式会社製、商品名:ガラス繊維トウシート「FTS-GE-30」)30’に樹脂を含浸させることにより形成した。」
(ケ)「【0085】
本実施例にて使用した上記炭素繊維シート20’及びガラス繊維シート30’の性能は次に示すとおりであった。
・炭素繊維シート20’
・・・
・ガラス繊維シート30’
・・・
実施例5
上記実施例4では、補強材としての繊維強化プラスチック20及び絶縁体層としての繊維強化プラスチック30は、強化繊維シート20’、30’を使用して形成されたが、例えば、図11(B)及び図10(B)に示すように、強化繊維22、32にマトリクス樹脂23、33が含浸されたプリプレグ20”、30”を利用することもできる。即ち、最内層として管柱表面に積層されたガラス繊維プリプレグ30”の上に補強材としての繊維強化プラスチック20を接着剤にて所望の積層数だけ積層され、その後硬化される。
・・・・
【0087】
本実施例によれば、上記管柱1の補強個所には最内層として絶縁体層とされるプリプレグ30”を貼り付けた。最内層プリプレグ30”は、ガラス繊維平織スクリムクロス(ガラス繊維量25g/m2)と130℃硬化タイプのエポキシ樹脂を用いて作製したガラススクリムプリプレグとした。」
(コ)「【0101】
実施例7
実施例4、5、6にて説明したように、本発明によれば、管柱の被補強部(外面、内面)に、例えば、最内層絶縁体層として1層のガラス繊維強化プラスチック30と、更に補強材としての7層の炭素繊維強化プラスチック20とが積層される。・・・」
(サ)「【0121】
実施例10
本実施例10及び実施例11~22では、既に橋梁上などに据え付けられている管柱に対する補強方法について説明する。橋梁上などに据え付けられている管柱に対する補強をなすに際しても、基本的には、上記実施例1~9にて説明したと同様の補強方法及び管柱の製造方法と同様の補強方法が管柱に対して施工されるが、管柱の内面に対する繊維強化プラスチック20の貼付は、実際上その施工が不可能であるので行われない。」
・・・
【0124】・・・・補強される部位を・・伝動サンダにより入念に処理し、メッキ層を完全に除去する。次いで、メッキ層が除去された個所をアセトンにより洗浄する。
【0125】
本発明によれば、上記管柱1の補強個所に補強材としての繊維強化プラスチック20が貼付されるが、本実施例では、管柱補強材としての繊維強化プラスチック20には、強化繊維22として炭素繊維を使用したので、最内層には、補強材20と管柱1との間に電流が流れ電食が発生するのを防止するために、絶縁体層としての繊維強化プラスチック30を設けた。この絶縁体層としての繊維強化プラスチック30は、図10(A)に示すように、網目状とされる支持体シート31の上に強化繊維としてのガラス繊維32を一方向に配列して構成されるガラス繊維シート(日鉄コンポジット株式会社製、商品名:ガラス繊維トウシート「FTS-GE-30」)30’に樹脂を含浸させることにより形成した。
【0126】
つまり、本実施例によると、上記管柱補強個所に、マトリクス樹脂としてのエポキシ樹脂(日鉄コンポジット株式会社製エポキシ樹脂、商品名「FR-E3P」)をローラを用いて塗布し、その上に上記ガラス繊維シート30’を1枚貼付した。含浸ローラにて上記ガラス繊維シート30’を管柱外表面側へと押圧することにより、ガラス繊維32へとマトリクス樹脂が含浸され、ガラス繊維強化プラスチック30が形成される。
【0127】
次に、上記ガラス繊維強化プラスチック30の上に補強材としての繊維強化プラスチック20が貼付される。本実施例では、補強材としての繊維強化プラスチック20は、上記ガラス繊維強化プラスチック30と同様に、図11(A)に示すように、網目状とされる支持体シート21の上に強化繊維としての一方向に配列した炭素繊維22を設けた炭素繊維シート(日鉄コンポジット株式会社製、商品名:炭素繊維トウシート「FTS-C8-30」)20’に樹脂を含浸させることにより形成した。
【0128】
つまり、本実施例では、上記ガラス繊維強化プラスチック30の上に、上記と同じエポキシ樹脂(日鉄コンポジット株式会社製エポキシ樹脂、商品名「FR-E3P」)をローラを用いて塗布し、その上に炭素繊維シート(日鉄コンポジット株式会社製、商品名:炭素繊維トウシート「FTS-C8-30」)20’を貼り付け、含浸ローラにて炭素繊維へとマトリクス樹脂を含浸させた。」
(シ)「【0134】
実施例10と同様に、照明ポール表面に補強材としての約4mm厚の炭素繊維強化プラスチック20を形成するために、実施例6に示すように、別成形法にて作製された成形品(繊維強化プラスチック)を照明ポール表面に貼付した。
【0135】
つまり、本実施例では、材料として日本グラファイトファイバー株式会社製のピッチ系炭素繊維(商品名:NT-60)を使用したプリプレグを用いた。このプリプレグを所定のサイズにカットし、14枚積層し、エアバッグ法により補強用の成形品、即ち、繊維強化プラスチック20を作製した。
【0136】
尚、本実施例においても、14層の炭素繊維プリプレグシートは、実施例7で説明したように、繊維強化プラスチック20の端部20aがテーパー形状となるように積層した。又、この繊維強化プラスチック20における繊維含有量(Vf)は全体で50%(体積)に調整した。」
(ス)「【0166】
実施例21
上記各実施例では、エアバッグ成形法を使用して補強部を成形し、良好な結果を得ることができた。
【0167】
つまり、繊維強化プラスチック20を貼付した後、更には、その上にカバーシート40を形成した後、繊維強化プラスチック20及びその上に形成されたカバーシート40、更にはエアバッグの内部材をエアバッグ及びシール材により覆う。
【0168】
次いで、エアバッグの吸引端子から真空ポンプにより吸気を排気し、エアバッグの内部材に大気圧が負荷されるようにする。減圧を確認後、エアバッグの吸引端子を閉じ、真空ポンプを脱着する。吸引端子が閉じられているため、真空ポンプ脱着後も内部の減圧状態、即ち、外部から加圧される状態は維持された状態で、樹脂材料の硬化が可能である。
【0169】
この結果、補強材としての繊維強化プラスチック20、剥離防止層20A、或いはカバーシート40などの内部材料が管柱表面に向かって外部から加圧された状態で成形されるため、内部の空隙、過度の樹脂溜り層の発生がなく、より強固に接着された補強部を形成することができた。
【0170】
実施例22
実施例21において、エアバッグにより補強材としての繊維強化プラスチック20、剥離防止層20A、或いはカバーシート40などの内部材料を覆った後、その外部にパネルヒータを配置し、約50℃程度に加温することで、樹脂の硬化反応を促進させた。この加温システムは特に冬期の夜間に外気温度が低下し、樹脂の硬化に時間がかかる際に有効であった。又、パネルヒータの代わりに、市販の携帯カイロを使用することも可能である。」
(セ)図14(a)からは、以下の事項が看てとれる。
・被補強体に対して、繊維強化プラスチック20が外側に、絶縁体層としての繊維強化プラスチック30が内側に位置するように積層される点。
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの(ア)~(セ)によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
甲1発明
「既に橋梁上などに据え付けられている金属管柱の外面にて、応力集中部及び/又はその近傍に、繊維強化プラスチックを貼付する前に、前記金属管柱の前記繊維強化プラスチックを貼付する個所のメッキを除去し、
金属管柱の外面にて、最内層に、絶縁体層として、ガラス繊維シートに樹脂を含浸させることにより形成された繊維強化プラスチック30を設け、
上記繊維強化プラスチック30の上に補強材としての炭素繊維強化プラスチック20を貼付し、
エアバッグにより補強材としての炭素繊維強化プラスチック20などの内部材料を管柱表面に向かって外部から加圧し、
エアバッグにより補強材としての炭素繊維強化プラスチック20、などの内部材料を覆った後、その外部にパネルヒータを配置し、約50℃程度に加温する金属管柱の補強方法」
ウ 判断
本件発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、電解腐食防止シートとしてのガラス繊維プリプレグシートを配置する前に、「構造物に既に設置されている構造部材を構成する金属製の母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所としての腐食部分を除去する除去工程」という構成を備えていない。
よって、本件発明は、甲1発明と同一ではないから、甲第1号証に記載された発明ではない。
(2)取消理由(特許法第29条第2項)について
本件発明と甲1発明とを対比すると、電解腐食防止シートとしてのガラス繊維プリプレグシートを配置する前に、本件発明では、「構造物に既に設置されている構造部材を構成する金属製の母材の断面不足箇所又は断面損傷箇所としての腐食部分を除去する除去工程」という構成を備えているのに対して、甲1発明では、そのような構成を備えていない点で相違する。
そして、本件発明の当該相違点に係る構成は、甲第1号証には記載されておらず、示唆もされていない。なお、甲1発明は、「繊維強化プラスチックを貼付する前に、前記金属管柱の前記繊維強化プラスチックを貼付する個所のメッキを除去」する工程を有しているが、前記工程は、本件発明の上記相違点に係る構成には該当しない。
よって、本件発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 小括
したがって、本件発明は、甲1発明とは同一ではなく、また、本件発明は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 請求項1~8に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項1~8を削除する本件訂正が認められたので、請求項1~8に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項1~8に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1~8に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700270